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明細書 :生分解性中空微粒子およびその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5780507号 (P5780507)
公開番号 特開2012-011268 (P2012-011268A)
登録日 平成27年7月24日(2015.7.24)
発行日 平成27年9月16日(2015.9.16)
公開日 平成24年1月19日(2012.1.19)
発明の名称または考案の名称 生分解性中空微粒子およびその製造方法
国際特許分類 B01J  13/02        (2006.01)
C08G  81/00        (2006.01)
C08L  67/00        (2006.01)
C08J   9/26        (2006.01)
B01F  17/52        (2006.01)
C08L 101/16        (2006.01)
FI B01J 13/02
C08G 81/00
C08L 67/00
C08J 9/26 102
B01F 17/52
C08L 101/16
請求項の数または発明の数 9
全頁数 15
出願番号 特願2010-147437 (P2010-147437)
出願日 平成22年6月29日(2010.6.29)
審査請求日 平成25年6月27日(2013.6.27)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504147243
【氏名又は名称】国立大学法人 岡山大学
発明者または考案者 【氏名】小野 努
【氏名】木村 幸敬
【氏名】村中 誠
個別代理人の代理人 【識別番号】110001070、【氏名又は名称】特許業務法人SSINPAT
審査官 【審査官】近野 光知
参考文献・文献 特開2008-161817(JP,A)
特開2009-096960(JP,A)
特表2010-509046(JP,A)
特開平06-072863(JP,A)
特開2003-238668(JP,A)
国際公開第2009/119578(WO,A1)
特開平06-065064(JP,A)
特開2006-321763(JP,A)
国際公開第2010/101240(WO,A1)
調査した分野 B01J 13/00~13/22
特許請求の範囲 【請求項1】
下記工程(1b)、工程(2)、および工程(3)を含み、かつ、
下記工程(2)における水相(W2)は、乳化剤として、構成成分のヒドロキシカルボ
ン酸またはジカルボン酸の炭素原子数が2~6である脂肪族ポリエステル樹脂(B1)由
来のブロックと親水性高分子(B2)由来のブロックとからなるジブロック共重合体(B
)を含むことを特徴とする、空微粒子を製造する方法:
[工程1b]構成成分のヒドロキシカルボン酸またはジカルボン酸の炭素原子数が2~6である脂肪族ポリエステル樹脂(A)および酢酸エチルである有機溶媒(o)を含み、さらに飽和溶解量以下の水を含んでいてもよい油相(O)を調製する工程;
[工程2]上記工程(1b)を経た調製物と水相(W2)とを乳化しエマルションを調製する工程;
[工程3]上記工程(2)を経たエマルションに含まれる有機溶媒(o)を留去し、脂肪族ポリエステル樹脂(A)を析出させることにより、脂肪族ポリエステル樹脂(A)で構築された外殻層(II)と、当該外殻層(II)の内部に形成された中空部(I)とからなる構造とを有する中空微粒子を形成させる工程。
【請求項2】
前記工程(2)における乳化がマイクロ流路分岐乳化法により行われる、請求項に記載の製造方法。
【請求項3】
前記水溶性ジブロック共重合体(B)が、HLB値が8以上20未満の範囲にある水溶性ジブロック共重合体である、請求項またはに記載の製造方法。
【請求項4】
前記ジブロック共重合体(B)の構成比率が、前記脂肪族ポリエステル樹脂(B1)由来のブロックの重合度100部に対して親水性高分子(B2)由来のブロックの重合度が0.1~100,000部となる範囲である、請求項のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
前記水溶性ジブロック共重合体(B)が、GPCで測定した数平均分子量Mnが500~200,000の範囲にあり、重量平均分子量Mwが500~200,000の範囲にあり、かつ分子量分布Mw/Mnが1.00~2.00の範囲にある水溶性ジブロック共重合体である、請求項のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
前記脂肪族ポリエステル系樹脂(B1)が、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロン酸およびポリブチレンサクシネートからなる群より選ばれる少なくとも1種の脂肪族ポリエステル樹脂である、請求項のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
前記脂肪族ポリエステル樹脂(B1)が、GPCで測定した数平均分子量Mnが100~200,000の範囲にあり、重量平均分子量Mwが100~200,000の範囲にあり、分子量分布Mw/Mnが1.00~2.00の範囲にある脂肪族ポリエステル樹脂である、請求項のいずれかに記載の製造方法。
【請求項8】
前記親水性高分子(B2)が、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル共重合体の部分加水分解物、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリアスパラギン酸、多糖類、ポリイソプロピルアクリルアミド、ポリスチレンスルホン酸ナトリウムおよびそれらの誘導体からなる群から選ばれた少なくとも1種の親水性高分子である、請求項のいずれかに記載の製造方法。
【請求項9】
前記親水性高分子(B2)が、GPCで測定した数平均分子量Mnが100~200,000の範囲にあり、重量平均分子量Mwが100~200,000の範囲にあり、分子量分布Mw/Mnが1.00~2.00の範囲にある親水性高分子である、請求項のいずれかに記載の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ乳酸に代表される生分解性を有する脂肪族ポリエステル樹脂により形成される中空微粒子およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリ乳酸は、生分解性を有する脂肪族ポリエステル樹脂として一般的に知られたものであり、それを被膜とし、内部に所定の機能性物質を内包させた微粒子(マイクロカプセル)の開発も進められている。
【0003】
そのようなポリ乳酸を基材とするマイクロカプセルの製造方法としては、たとえば、W/O/Wエマルションからの油相固化(非特許文献1)、ポリ乳酸マクロモノマーを用いた界
面重合(非特許文献2)、フッ素系アルキル鎖とのブロック共重合体を用いた単分散ポリマーカプセル調製などが報告されている。また、最近では、マイクロバブルを用いた中空ポリ乳酸マイクロカプセルの調製法が報告されているが(特許文献1)、この方法により得られるマイクロカプセルは気体のみを内包するものであり、水溶性の機能性物質等を溶解した水溶液を内包するマイクロカプセルを調製することはできない。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2008-161817号公報
【0005】

【非特許文献1】Pharm. Res., 24, 1007-1013 (2007)
【非特許文献2】Colloid Polym. Sci., 284, 513-519 (2006)
【非特許文献3】Colloid Surf. A,289, 96-104 (2006)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
生分解性樹脂(脂肪族ポリエステル樹脂)を被膜とするマイクロカプセルであって、内部に水溶液等の水相を貯留できる中空部を有するものを製造するための方法、ならびにそのような製造方法によりもたらされる、所望の水溶性物質を内包した中空微粒子などを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、親水性の部位と疎水性の部位とを有する特定のジブロック共重合体を乳化剤として用いる乳化処理により、特定の望ましい有機溶媒に脂肪族ポリエステル樹脂(生分解性樹脂)が溶解した油相を含むエマルションを調製し、このエマルションから当該有機溶媒を留去することにより、当該脂肪族ポリエステル樹脂を被膜とする、内部が中空の微粒子を形成することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明は一つの側面において、構成成分のヒドロキシカルボン酸またはジカルボン酸の炭素原子数が2~6である脂肪族ポリエステル樹脂(A)で構築された外殻層(II)と、当該外殻層(II)の内部に形成された中空部(I)とからなる構造を有することを特徴とする中空微粒子を提供する。
【0009】
前記中空微粒子の数平均粒子径は、好ましくは0.1~500μmの範囲にある。また、前記中空微粒子の粒子径の変動係数(CV)は、好ましくは0.1~10%範囲にあり
、より好ましくは2~5%の範囲にある。
【0010】
前記中空微粒子の中空部(I)の少なくとも一部は、水溶性封入物質(s)が溶解した水相(W1)で満たされていてもよいし、空気または空気以外の気体で満たされていてもよい。
【0011】
前記脂肪族ポリエステル系樹脂(A)は、好ましくは、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロン酸およびポリブチレンサクシネートからなる群より選ばれる少なくとも1種の脂肪族ポリエステル樹脂である。また、前記脂肪族ポリエステル樹脂(A)は、好ましくは、GPCで測定した数平均分子量Mnが100~200,000の範囲にあり、重量平均分子量Mwが100~200,000の範囲にあり、分子量分布Mw/Mnが1.00~2.00の範囲にある脂肪族ポリエステル樹脂である。
【0012】
前記水溶性封入物質(s)は、たとえば、タンパク質、薬効成分、農薬およびキレート剤からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0013】
本発明はもう一つの側面において、下記工程(1a)もしくは(1b)、工程(2)、および工程(3)を含み、かつ、下記工程(2)における水相(W2)は、乳化剤として、構成成分のヒドロキシカルボン酸またはジカルボン酸の炭素原子数が2~6である脂肪族ポリエステル樹脂(B1)由来のブロックと親水性高分子(B2)由来のブロックとからなるジブロック共重合体(B)を含むことを特徴とする、上述したような中空微粒子を製造する方法を提供する:
[工程1a]構成成分のヒドロキシカルボン酸またはジカルボン酸の炭素原子数が2~6である脂肪族ポリエステル樹脂(A)を含む油相(O)と水相(W1)とを乳化してW1/Oエマルションを調製する工程;
[工程1b]構成成分のヒドロキシカルボン酸またはジカルボン酸の炭素原子数が2~6である脂肪族ポリエステル樹脂(A)を含み、さらに飽和溶解量以下の水を含んでいてもよい油相(O)を調製する工程;
[工程2]上記工程(1a)もしくは(1b)を経た調製物と水相(W2)とを乳化しエマルションを調製する工程;
[工程3]上記工程(2)を経たエマルションに含まれる有機溶媒(o)を留去し、脂肪族ポリエステル樹脂(A)を析出させることにより、脂肪族ポリエステル樹脂(A)で構築された外殻層(II)と、当該外殻層(II)の内部に形成された中空部(I)とからなる構造とを有する中空微粒子を形成させる工程。
【0014】
前記工程(1a)または(2)の少なくとも一方における乳化は、好ましくは、マイクロ流路分岐乳化法により行われる。
【0015】
前記水溶性ジブロック共重合体(B)は、好ましくは、HLB値が8以上20未満の範囲にある水溶性ジブロック共重合体である。前記ジブロック共重合体(B)の構成比率は、好ましくは、前記脂肪族ポリエステル樹脂(B1)由来のブロックの重合度100部に対して親水性高分子(B2)由来のブロックの重合度が0.1~100,000部となる範囲である。また、記水溶性ジブロック共重合体(B)は、好ましくは、GPCで測定した数平均分子量Mnが500~200,000の範囲にあり、重量平均分子量Mwが500~200,000の範囲にあり、かつ分子量分布Mw/Mnが1.00~2.00の範囲にある水溶性ジブロック共重合体である。
【0016】
前記脂肪族ポリエステル系樹脂(B1)は、好ましくは、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロン酸およびポリブチレンサクシネートからなる群より選ばれる少なくとも1種の脂肪族ポリエステル樹脂である。前記脂肪族ポリエステル樹脂(B1)は、好ましく
は、GPCで測定した数平均分子量Mnが100~200,000の範囲にあり、重量平均分子量Mwが100~200,000の範囲にあり、分子量分布Mw/Mnが1.00~2.00の範囲にある脂肪族ポリエステル樹脂である。
【0017】
前記親水性高分子(B2)は、好ましくは、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル共重合体の部分加水分解物、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリアスパラギン酸、多糖類、ポリイソプロピルアクリルアミド、ポリスチレンスルホン酸ナトリウムおよびそれらの誘導体からなる群から選ばれた少なくとも1種の親水性高分子である。また、前記親水性高分子(B2)は、好ましくは、GPCで測定した数平均分子量Mnが100~200,000の範囲にあり、重量平均分子量Mwが100~200,000の範囲にあり、分子量分布Mw/Mnが1.00~2.00の範囲にある親水性高分子である。
【0018】
前記有機溶媒(o)は、好ましくは、前記脂肪族ポリエステル樹脂(A)を溶解する、エステル、エーテル、ケトン、芳香族化合物およびアルコールからなる群から選ばれた少なくとも1種の有機溶媒である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、乳化処理のための複雑なノズル構造や特殊なポリ乳酸誘導体の合成を必要としない、一連の簡便な製造方法により、水溶液または他の溶媒を内包した単核構造の生分解性マイクロカプセルを製造することが可能となる。特に、本発明の製造方法では、マイクロリアクタを利用した乳化処理手法を採用することができるため、サイズの揃った単分散のエマルションおよび最終的な中空微粒子を容易に調製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施例および参考例における、マイクロ流路分岐乳化法によるエマルションの調製に用いたマイクロリアクターの概略図。
【図2】実施例で調製されたポリ乳酸微粒子のSEM画像。
【図3】実施例で調製されたポリ乳酸微粒子のうち断面が確認できるもののSEM画像。
【図4】参考例で調製されたポリ乳酸微粒子のうち断面が確認できるもののSEM画像。
【発明を実施するための形態】
【0021】
- 中空微粒子 -
本発明の中空微粒子は、特定の脂肪族ポリエステル樹脂(A)で構築された外殻層(II)と、当該外殻層(II)の内部に形成された中空部(I)とからなる構造を有する。

【0022】
なお、「中空部」とは、脂肪族ポリエステル樹脂(A)で充填されていない部分を指しており、その中空部の少なくとも一部(一部または全部)は、水溶性封入物質(s)が溶解した水相(W1)で満たされていてもよく、あるいは空気または空気以外の気体で満たされていてもよい。

【0023】
<粒子径>
本発明の中空微粒子のサイズは特に限定されるものではなく、用途に応じて、適切な乳化手法を用いることにより調整することができる。特に本発明では、後述するような本発明の製造方法、とりわけマイクロ流路分岐乳化法を利用することができる。そのため、中空微粒子の数平均粒子径は、一般的には0.1~10000μmの範囲で調整することができるが、好ましくは0.1~500μm、より好ましくは0.5~500μmの範囲で調整することができる。また、中空微粒子の粒子径の変動係数(=標準偏差/数平均粒子
径)は、好ましくは0.1~10%、より好ましくは2~5%の範囲とすることができる。このような数平均粒子径および粒子径の変動係数の両方の条件を満たす中空微粒子を製造するためには、たとえば後述するような本発明の製造方法、特にマイクロ流路分岐乳化法を用いることが望ましい。

【0024】
中空微粒子の内部に形成された中空部(I)のサイズは、中空微粒子の用途に応じて調整することができ、特に限定されるものではないが、直径(数平均値)であれば、一般的には1~50μm、好ましくは1~20μmの範囲で調整することができる。また、中空微粒子の粒子径に対する中空部の直径の比率(数平均値)は、一般的には10~90%、好ましくは50~90%の範囲で調整することができる。このようなサイズの中空部(I)を有する中空微粒子は、後述するような本発明の製造方法において、有機溶媒(o)に脂肪族ポリエステル樹脂(A)が溶解した油相(O)に関する条件や溶媒留去に関する条件などを調整することにより作製することができる。

【0025】
なお、中空微粒子の数平均粒子径および変動係数(CV)や、中空部(I)の直径は、たとえば走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて所定の数(たとえば50個)の中空微粒子を観察することにより(中空部の径については、分割されて中空部が現れた中空微粒子を対象とすることにより)算出することができる。

【0026】
<脂肪族ポリエステル樹脂(A)>
本発明で用いられる脂肪族ポリエステル樹脂(A)は、いわゆる生分解性樹脂である、構成成分のヒドロキシカルボン酸またはジカルボン酸の炭素原子数が2~6であるものである。このような脂肪族ポリエステル樹脂(A)としては、公知の各種の脂肪族ポリエステル樹脂を用いることができるが、たとえば、一般的な生分解性樹脂であるポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロン酸、ポリブチレンサクシネートなどが好適である。これらの樹脂は1種単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。

【0027】
炭素原子数が2~6のヒドロキシカルボン酸またはジカルボン酸は、公知の脂肪族ポリエステル樹脂の製造原料として用いられているものの中から選択することができる。たとえば、炭素原子数が2~6のヒドロキシカルボン酸としては、グリコール酸(C2)、乳酸(C3)、3-ヒドロキシ酪酸(C4)、4-ヒドロキシ酪酸(C4)、4-ヒドロキシ吉草酸(C5)、5-ヒドロキシ吉草酸(C5)、6-ヒドロキシカプロン酸(C6)などが挙げられる。なお、脂肪族ヒドロキシカルボン酸が不斉炭素を有する場合、L体、D体、およびその混合物(ラセミ体)のいずれであってもよい。また、炭素原子数が2~6のジカルボン酸としては、シュウ酸(C2)、マロン酸(C3)、コハク酸(C4)、グルタル酸(C5)、アジピン酸(C6)などが挙げられる。これらの化合物は1種単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。

【0028】
一方、上記のようなヒドロキシカルボン酸またはジカルボン酸と共重合させることのできるジアルコールも、公知の脂肪族ポリエステル樹脂の製造原料として用いられているものの中から選択することができ、たとえば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタジオール、1,6-ヘキサンジオールなどが挙げられる。これらの化合物は1種単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。

【0029】
上記のような原料から得られる脂肪族ポリエステル樹脂(A)は、脂肪族ヒドロキシカルボン酸のホモポリマー(たとえばポリ乳酸、ポリグリコール酸)およびコポリマー(たとえば乳酸とグリコール酸とのコポリマー);脂肪族ジアルコールと脂肪族ジカルボン酸とのコポリマー(たとえばポリブチレンサクシネート、ポリエチレンアジペート、ブタン
ジオールとコハク酸およびアジピン酸とのコポリマー、エチレングリコールおよびブタンジオールとコハク酸とのコポリマー);脂肪族ヒドロキシカルボン酸と脂肪族ジアルコールおよび/または脂肪族ジカルボン酸とのコポリマー(たとえばポリ乳酸とポリブチレンサクシネートとのブロックコポリマー)のいずれであってもよく、これらの混合物であってもよい。

【0030】
脂肪族ポリエステル樹脂(A)の、GPCで測定した数平均分子量Mnは100~200,000が好ましく、重量平均分子量Mwは100~200,000が好ましく、分子量分布Mw/Mnは1.00~2.00が好ましい。

【0031】
<水溶性封入物質(s)>
水溶性封入物質(s)は、中空微粒子の内部の中空部(I)に内封される物質である。本発明における水溶性封入物質(s)は特に限定されるものではなく、本発明の中空微粒子の用途に応じて適切なものを選択することができる。

【0032】
本発明における代表的な水溶性封入物質(s)としては、タンパク質、薬効成分、農薬およびキレート剤が挙げられる。

【0033】
タンパク質としては、各種の生体的な反応に関与する酵素や、抗原および抗体などが挙げられる。薬効成分としては、医薬品、化粧品、(機能性)食品などに用いられているもの、たとえば、造影剤、抗がん剤、抗菌剤、抗炎症剤、美白剤、肌荒れ防止剤、老化防止剤、発毛促進剤、保湿剤、ビタミン類、核酸(DNAもしくはRNAのセンス鎖もしくはアンチセンス鎖、プラスミド、ベクター、mRNA、siRNA等)などの物質、特にDDSにおける利用が想定されるものが挙げられる。農薬ないし肥料としては、特に徐放的な使用が想定されているものが挙げられる。キレート剤としては、たとえば金属(レアメタル)を吸着して回収するためのものが挙げられる。このキレート剤は、内封するのに適するよう高分子化したものであってもよい。その他、塗料やインクなどに用いられる顔料、染料、色素、蛍光色素なども、水溶性封入物質(s)として挙げられる。

【0034】
- 中空微粒子の製造方法 -
本発明の中空微粒子の製造方法は、下記工程(1a)もしくは(1b)、工程(2)および工程(3)を含むものであり、必要に応じてその他の工程をさらに含んでいてもよい。そして、下記工程(2)における水相(W2)は、乳化剤として、以下に述べる特定のジブロック共重合体(B)を含む。

【0035】
なお、以下の製造方法で用いられる脂肪族ポリエステル樹脂(A)および水溶性封入物質(s)は、先に説明した通りのものである。

【0036】
・水相および油相の調製方法
水相(W1)および(W2)を構成する水性溶媒としては、基本的に水が用いられ、必要であれば水と相溶性の高い他の溶媒を組み合わせて用いてもよい。

【0037】
一方、油相(O)を構成する有機溶媒としては、たとえば、エステル(酢酸エチルなど)、エーテル、ケトン、芳香族化合物(ベンゼン,キシレンなど)、アルコールなど、多少でも水相への溶解性があり、脂肪族ポリエステルを溶解させることができ、減圧下での液中乾燥が可能なものを用いることができる。

【0038】
水相(W1またはW2)に含まれることとなる成分および油相(O)に含まれることとなる成分の添加方法は特に限定されるものではないが、採用する乳化手法に応じた一般的な手順に従って添加すればよい。

【0039】
たとえば、油相(O)は、本発明では必ず、外殻層(II)を構築するための脂肪族ポリエステル樹脂(A)を含む。また、必要に応じて、外殻層(II)中に封入するための脂溶性封入物質を含んでもよい。この場合、あらかじめ脂肪族ポリエステル樹脂(A)と有機溶媒(o)と、必要に応じて脂溶性封入物質とを混合して油相(O)を調製しておき、これを水相(W1)との乳化処理に供すればよい。

【0040】
一方、水相(W1)は、本発明の典型的な態様において、中空部(I)に内包するための水溶性封入物質(s)を含む。この場合も、あらかじめ水溶性封入物質(s)と水性溶媒(w1)とを混合して水相(W1)を調製しておき、これを油相(O)との乳化処理に供すればよい。

【0041】
さらに、乳化剤(界面活性剤)としてのジブロック共重合体(B)も、少なくとも下記工程(2)における水相(W2)に含まれるようにする。すなわち、本発明の中空微粒子を下記工程(1a)、(2)および(3)により製造する場合には、ジブロック共重合体(B)は、少なくともW1/O/W2エマルションを調製する工程(2)における水相(W2)に含まれるようにし、工程(1a)における水相(W1)には含まれていてもいなくてもよい。一方、本発明の中空微粒子を下記工程(1b)、(2)および(3)により製造する場合には、O/W2エマルションを調製する工程(2)における水相(W2)にジブロック共重合体(B)が含まれるようにしなければならない。いずれの場合であっても、所定の水相が用いられる工程に先だって、ジブロック共重合体(B)と所定の水性溶媒とを混合してその水相を調製しておけばよい。

【0042】
油相(O)中の脂肪族ポリエステル樹脂(A)の濃度は、たとえば形成される外殻層(II)の厚さや、用いる脂肪族ポリエステル樹脂(A)の有機溶媒(o)に対する溶解度などを考慮しながら調整することができるが、通常0.1~20重量%、好ましくは1~10重量%の範囲で調整すればよい。

【0043】
水相(W1)中の水溶性封入物質(s)の濃度は、中空微粒子の用途や、用いる水溶性封入物質(s)の水に対する溶解度などを考慮しながら調整すればよい。

【0044】
水相(W2)中のジブロック共重合体(B)の濃度は、乳化剤として所定の機能を果たすことができる濃度となるよう調整することができるが、通常0.1~10重量%、好ましくは1~5重量%の範囲で調整すればよい。

【0045】
<工程(1a):第1のエマルション調製工程>
本発明の製造方法における工程(1a)は、前述したような脂肪族ポリエステル樹脂(A)を含む油相(O)と水相(W1)とを乳化してW1/Oエマルションを調製する工程である。

【0046】
・乳化方法
本発明の製造方法における乳化処理のための手法は、撹拌、超音波、ホモジナイザー、マイクロリアクター、マイクロチャンネル、多孔質膜などを用いる各種の公知の手法から選択することができる。また、これらの各種の乳化手法の諸条件は、調製されるエマルションが本発明における要件を満たすものとなるよう、当業者であれば調整することが可能である。

【0047】
W1/O/W2エマルションの調製のためには、たとえば、マイクロ流路分岐乳化法が好適である。この乳化手法は、Y字型のマイクロ流路を備えたマイクロリアクターを使用するものであり、その流路の一方から分散相(W1/Oエマルション)を、もう一方から
連続相(水性溶媒相(W2))を流入させ、合流点付近で当該連続相により分散相の流れを切断して液滴を形成するようにして、目的のエマルション(W1/O/W2エマルション)を調製することができる。マイクロ流路分岐乳化法を用いれば、液滴のサイズが所望の範囲にあり、かつ変動係数が極めて小さな(つまり液滴のサイズが揃っている)単分散のエマルションが得られ、しかも内水相(W1)が単核のものが形成されやすいという利点がある。

【0048】
<工程(1b):油相調製工程>
本発明の製造方法における工程(1b)は、前述したような脂肪族ポリエステル樹脂(A)を含み、さらに飽和溶解量以下の水を含んでいてもよい油相(O)を調製する工程である。すなわち、この工程(1b)では、水を全く用いないか、内水相(W1)を形成するには不充分な量の水しか用いない(そのような少量の水は油相(O)に溶解した状態となる)ため、得られる調製物は前記工程(1a)とは異なり、内水相(W1)を含むエマルションとはならない。なお、水を全く用いない場合は、この油相を調製する工程(1b)は、前述したエマルションを調製するための工程(1a)に供される油相をあらかじめ調製する工程と、実質的に同じである。

【0049】
この工程(1b)では、有機溶媒(o)と、脂肪族ポリエステル樹脂(A)と、必要な場合にはその有機溶媒(o)の飽和溶解量以下の水とを、一般的な方法(撹拌等)により混合し、有機溶媒(o)に脂肪族ポリエステル樹脂(A)および飽和溶解量以下の水が溶解するようにすればよい。なお、有機溶媒(o)に対する水の飽和溶解量は公知ないし簡易な測定により決定することができるものであり、たとえば、酢酸エチル100mLに対する水の飽和溶解量は約2.5mLである。

【0050】
<工程(2):第2のエマルション調製工程>
本発明の製造方法における工程(2)は、上述したような工程(1a)もしくは(1b)を経た調製物と水相(W2)とを乳化しエマルションを調製する工程である。

【0051】
すなわち、工程(1a)を経た調製物としてのW1/Oエマルションを乳化に用いる場合、この工程(2)は、当該W1/Oエマルションが水相(W2)中に分散した状態であるW1/O/W2エマルションを調製する工程となる。一方、工程(1b)を経た調製物としての油相(O)を乳化に用いる場合、この工程(2)は、当該油相(O)が水相(W2)中に分散した状態であるO/Wエマルションを調製する工程となる。

【0052】
工程(2)における乳化処理のための手法については、前述した工程(1a)における乳化処理と同様の手法を適用することができ、特にマイクロ流路分岐乳化法が好適である。

【0053】
<工程(3):溶媒留去工程>
本発明の製造方法における工程(3)は、上記工程(2)を経たエマルションに含まれる有機溶媒(o)を留去し、脂肪族ポリエステル樹脂(A)を析出させることにより、脂肪族ポリエステル樹脂(A)で構築された外殻層(II)と、当該外殻層(II)の内部に形成された中空部(I)とからなる構造とを有する中空微粒子を形成させる工程である。

【0054】
有機溶媒(o)を留去するための手法は公知であり、たとえば、エマルションを撹拌しつつ加温または減圧する液中(水中)乾燥法を用いることができる。そのような手法により有機溶媒(o)の留去が進行するにつれて、液滴中の油相(O)に溶解していた脂肪族ポリエステル樹脂(A)が析出して樹脂化し、やがて外殻層(II)が形成されるが、液滴の内部の一部にはその析出が及ばず、中空部(I)も形成される。

【0055】
ここで、ポリエステル樹脂(A)が溶解した油相(O)について、内部の濃度が均一になろうとする速度よりも有機溶媒(o)の留去速度が大きく、またポリエステル樹脂(A)の析出速度も大きい場合、上記のように中空部(I)が形成されるが、そうでない場合は、液滴の内部全体に脂肪族ポリエステル樹脂(A)の析出が及んで中空部(I)が形成されない傾向にある。たとえば、脂肪族ポリエステル樹脂(A)としてポリ乳酸を用いた後記実施例および参考例に示すように、有機溶媒(o)として酢酸エチルを用いると中空部が形成される一方、クロロホルムを用いると中空部は形成されず、得られる微粒子は中実のものとなる。これは、酢酸エチルは留去されるまでの時間が比較的短く、速やかにすべてのポリ乳酸が析出して外殻層となるため、中空部が生じる余地があるのに対して、クロロホルムは留去されるまでの時間が比較的長く、クロロホルムの減少に伴いゆっくりとポリ乳酸が析出していくため、外殻層が中心部まで達して中空部が生じないという違いによる。このような事項を勘案しながら、上記のような、油相(O)の調製に用いる有機溶媒(o)およびポリエステル樹脂(A)の条件や、加熱温度、減圧幅、処理時間などの溶媒留去に関する条件などを調整すればよい。

【0056】
なお、以上のような溶媒留去工程を経て得られる中空微粒子は、通常、中空部(I)が水で満たされたものとなる。この中空部の少なくとも一部が空気または空気以外の気体で満たされたものを調製する場合は、上記の中空微粒子を回収し、必要に応じて洗浄した後、中空部(I)の水を蒸発させるための乾燥工程を行えばよい。そのような乾燥工程は、一般的な乾燥手法を用いて、必要であれば加熱、送風等をしながら行えばよく、諸条件は適切に調整することができる。空気以外の気体の雰囲気下で行えば、空気以外の気体で中空部(I)を満たすことも可能である。

【0057】
<ジブロック共重合体(B)>
本発明の中空微粒子の製造方法では、水溶液相に添加する乳化剤として、構成成分のヒドロキシカルボン酸またはジカルボン酸の炭素原子数が2~6である脂肪族ポリエステル樹脂(B1)由来のブロックおよび親水性高分子(B2)由来のブロックからなる、ジブロック共重合体(B)を用いる。上記脂肪族ポリエステル樹脂(B1)に由来するブロックは疎水性であり、上記親水性高分子(B2)に由来するブロックは文字通り親水性である。これらのブロックが連結した形態のジブロック共重合体(B)は、主として水相に溶解しつつ、脂肪族ポリエステル樹脂(A)が溶解した油相との界面付近に配向し、乳化剤としての機能を果たすことができる。

【0058】
なお、乳化剤としてのジブロック共重合体(B)は、1種単独のジブロック共重合体からなるものであっても、2種類以上のジブロック共重合体の混合物であってもよい。

【0059】
・HLB値
本発明の製造方法において、乳化剤として用いられるジブロック共重合体(B)は基本的に、全体的に親水性となっていて水(ないし水性溶媒)に可溶なものである。ジブロック共重合体(B)の親水性の度合いは、HLB値によって表すことができる。なお、本発明では、HLB値は下記式で表されるグリフィン法により定義することとする。下記式からわかるように、HLB値が20に近いほど親水性の度合いが高い。
HLB=20×(親水性高分子(B2)のMn)/(ジブロック共重合体(B)のMn)
本発明において、乳化剤としての水溶性ジブロック共重合体(B)は、HLB値が通常8以上20未満、好ましくは15以上20未満であるものをいう。HLB値によって、ジブロック共重合体(B)の乳化剤としての機能も変動しうるため、外殻層(II)を形成する脂肪族ポリエステル樹脂(A)の性状ないしその原料として用いられる成分の性状などを考慮しながら、用いるジブロック共重合体(B)のHLB値を調整することが適切である。

【0060】
なお、ジブロック共重合体(B)がエマルションの調製に用いられる水相(W1ないしW2)に可溶かどうかは、水と併用されることのある他の溶媒の存在によって変動することもある。たとえば、酢酸エチルは一定程度水に溶解し、それにともない酢酸エチル中のジブロック共重合体(B)の水に対する溶解性も上がる場合があるため、HLBが上記範囲より低めのジブロック共重合体であっても水溶性ジブロック共重合体(B)として取り扱えることがある。

【0061】
HLB値は、ジブロック共重合体(B)中の、疎水性の部分である脂肪族ポリエステル樹脂(B1)ブロックの分子鎖の長さと、親水性の部分である親水性高分子(B2)ブロックの分子鎖の長さの割合によって調整することができる。一般的に、親水性高分子(B2)ブロックの分子鎖を長くする、たとえば、ジブロック共重合体(B)を合成する際に、脂肪族ポリエステル樹脂(B1)のMnに対する親水性高分子(B2)のMnの比率を比較的大きくした場合、ジブロック共重合体(B)のHLB値は高まる。より具体的には、脂肪族ポリエステル樹脂(B1)由来のブロックの重合度100部に対して、親水性高分子(B2)由来のブロックの重合度が、100(好ましくは400、より好ましくは1,000)~100,000部の割合となる範囲で調整することにより、HLB値が8以上20未満の水溶性ジブロック共重合体(B)を作製することができる。

【0062】
・脂肪族ポリエステル樹脂(B1)ブロック
ジブロック共重合体(B)の一方のブロックを構成する脂肪族ポリエステル樹脂(B1)については、前述した脂肪族ポリエステル樹脂(A)と同様のことが適用できるため、ここでの説明は省略する。主要な点のみを記載すれば、脂肪族ポリエステル樹脂(B1)としても、たとえば、一般的な生分解性樹脂であるポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロン酸、ポリブチレンサクシネートなどが好適である。また、脂肪族ポリエステル樹脂(B1)の、GPCで測定した数平均分子量Mnも100~200,000が好ましく、重量平均分子量Mwも100~200,000が好ましく、分子量分布Mw/Mnも1.00~2.00が好ましい。

【0063】
なお、乳化剤としてのジブロック共重合体(B)のために用いられる脂肪族ポリエステル樹脂(B1)と、外殻層(II)の構築のために用いられる脂肪族ポリエステル樹脂(A)が同一であることは必要とされず、異なるものであってもよい。

【0064】
・親水性高分子(B2)ブロック
ジブロック共重合体(B)のもう一方のブロックを構成する親水性高分子(B2)としては、脂肪族ポリエステル樹脂(B1)ブロックと結合しうる各種の親水性高分子を用いることができる。たとえば、ポリオキシエチレン(ポリエチレングリコール:PEG)、ポリオキシプロピレン、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル共重合体の部分加水分解物、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリアスパラギン酸、多糖類、ポリイソプロピルアクリルアミド、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム、およびこれらの誘導体が挙げられる。これらの親水性高分子は1種単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。

【0065】
親水性高分子(B2)のGPCで測定した数平均分子量Mnは100~200,000が好ましい。重量平均分子量Mwは100~200,000が好ましい。分子量分布Mw/Mnは1.00~2.00が好ましい。

【0066】
・調製方法
ジブロック共重合体(B)は、公知の方法に従って、脂肪族ポリエステル樹脂(B1)および親水性高分子(B2)を合成することにより調製できる。

【0067】
典型的には、本発明の実施例に示すように、末端に脂肪族ポリエステル樹脂(B1)からなるブロックを導入するための官能基を備えた親水性高分子(B2)をあらかじめ調製しておき、ついで、当該官能基を基点とする脂肪族ポリエステル樹脂(B1)の重合反応を進行させることにより、脂肪族ポリエステル樹脂(B1)由来のブロックと親水性高分子(B2)由来のブロックとが連結したジブロック共重合体(B)を合成することができる。

【0068】
このような調製方法により得られるジブロック共重合体(C)の、GPCで測定した数平均分子量Mnは500~200,000が好ましく、重量平均分子量Mwは500~200,000が好ましく、分子量分布Mw/Mnは1.00~2.00が好ましい。

【0069】
- 中空微粒子の用途 -
本発明の中空微粒子は多様な用途を有するものであり、特に、一定の容積を確保できる内部(中空部)に水溶性封入物質の水溶液を封入でき、また被膜(外殻層)が生分解性樹脂(脂肪族ポリエステル樹脂)で形成され、所望であればこの被膜内に脂溶性封入物質を封入できるという特性を活用することができる。そのような中空微粒子の用途としては、たとえば、徐放性農薬,DDS,固定化酵素,触媒担体,分離材料,断熱材,蓄熱材,造影
剤,香粧品,化粧品,塗料,インクなどが挙げられる。なお、中空微粒子を蓄熱材や造影剤として用いる場合は、中空部を気体で満たすようにすればよい。
【実施例】
【0070】
実施例
[1]ジブロック共重合体(B)の合成
本発明におけるジブロック共重合体(B)として、ポリ乳酸(PLA)とポリエチレング
リコール(PEG)鎖を二つのブロック化して繋げた水溶性ジブロックコポリマー(PLE,下図)を、以下の手順に従って合成した。PLA鎖は水に溶けにくく疎水基として働き、逆にPEG鎖は水に易溶で親水基として働くため、PLEは乳化剤として利用することができる。
【実施例】
【0071】
【化1】
JP0005780507B2_000002t.gif
【実施例】
【0072】
MeO-PEG(Mn = 4,000, Mw/Mn = 1.06)を開始剤とするD,L-lactideの開環重合にてジブロック共重合体の合成を行った。この際、MeO-PEG濃度を15 mol%として、仕込み量10 gのスケールで重合を行った。重合の触媒としてはTin (II) 2-ethylhexanoate / toluene(
濃度0.4 g/ 5 mL)溶液を50 μL用いた。重合は、オイルバス中で130℃、24時間行った。得られた生成物はクロロホルムに溶解させ、ヘキサンに再沈殿させることで触媒を生成物から除去した。また、2-プロパノールに再沈殿させることで、未反応モノマーを除去し、その後、遠心分離(15,000 rpm, 5 min)によって生成物を回収した。回収後の生成物を1晩減圧乾燥させることで、ジブロック共重合体(Mn = 4,400 (PEG 4,000+PLA 400), Mw/Mn = 1.05, HLB = 18.2)を得た。収率は73.3 wt%であった。
【実施例】
【0073】
[2]O/Wエマルションの調製
本発明におけるジブロック共重合体(B)として上記工程により調製したPLEを水に溶
解させて(1wt%)水相(W)とし、一方、本発明における脂肪族ポリエステル樹脂(A)
としてD,L-ポリ乳酸ホモポリマー(Mw:3,200、Mn:3,000、Mw/Mn:1.05)1wt%を酢酸エチルに溶解させて油相(O)とした。そして、マイクロリアクター(図1)を用いた乳化により、oil-in-water(O/W)エマルションを調製した。
【実施例】
【0074】
[3]溶媒留去
上記工程により調製したO/Wエマルションを回収し、油相として用いた酢酸エチルを減圧留去(695mmHg)した。油相中のPLAが析出して樹脂化することにより、真球状の緻密な膜を有するD,L-ポリ乳酸微粒子が得られた。特に、本実施例ではマイクロリアクターを用いたマイクロ流路分岐乳化法による乳化処理を行ったので、単分散性に優れた(数平均粒子径=約23μm,変動係数CV=約4%)D,L-ポリ乳酸微粒子を得ることができた(図2)。
【実施例】
【0075】
また,マイクロリアクターではなく撹拌翼によってエマルションを調製したこと以外は上記と同様の手順により調製されたポリ乳酸微粒子の断面形状を確認すると、油相溶媒として酢酸エチルを用いて調製した際には、図3に示すような単核中空構造を有することがわかった。
【実施例】
【0076】
参考例
油相溶媒としてクロロホルムを用いたこと以外は上記実施例1と同様の手順によりポリ乳酸微粒子を調製した。得られたポリ乳酸微粒子の断面形状を確認すると、図4に示すように、この粒子は中空部を有さない構造であることがわかった。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3