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明細書 :新規分岐状アミノ酸、新規分岐状アミノ酸と蛍光性アミノ酸の複合体

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5784295号 (P5784295)
公開番号 特開2012-072075 (P2012-072075A)
登録日 平成27年7月31日(2015.7.31)
発行日 平成27年9月24日(2015.9.24)
公開日 平成24年4月12日(2012.4.12)
発明の名称または考案の名称 新規分岐状アミノ酸、新規分岐状アミノ酸と蛍光性アミノ酸の複合体
国際特許分類 C07K   1/13        (2006.01)
C07K   4/00        (2006.01)
A61K  49/00        (2006.01)
G01N  21/78        (2006.01)
C07C 237/12        (2006.01)
C07C 231/12        (2006.01)
C07C 271/22        (2006.01)
FI C07K 1/13
C07K 4/00
A61K 49/00 A
G01N 21/78 C
C07C 237/12
C07C 231/12
C07C 271/22
請求項の数または発明の数 8
全頁数 17
出願番号 特願2010-216789 (P2010-216789)
出願日 平成22年9月28日(2010.9.28)
審査請求日 平成25年7月25日(2013.7.25)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504147243
【氏名又は名称】国立大学法人 岡山大学
発明者または考案者 【氏名】北松 瑞生
個別代理人の代理人 【識別番号】100088904、【弁理士】、【氏名又は名称】庄司 隆
【識別番号】100124453、【弁理士】、【氏名又は名称】資延 由利子
【識別番号】100135208、【弁理士】、【氏名又は名称】大杉 卓也
【識別番号】100152319、【弁理士】、【氏名又は名称】曽我 亜紀
審査官 【審査官】早川 裕之
参考文献・文献 特開平09-165387(JP,A)
特表平01-500590(JP,A)
特開2009-092654(JP,A)
国際公開第2010/072752(WO,A1)
国際公開第2006/132335(WO,A1)
米国特許出願公開第2002/0168761(US,A1)
J. Chromatogr.,1991年,566,39-55
Cancer Res.,1987年,47,5954-5959
J. Org. Chem.,2002年,67,910-915
調査した分野 C07K 1/13
C07K 4/00
A61K 49/00
C07C 231/12
C07C 237/12
C07C 271/22
G01N 21/78
CAplus/REGISTRY(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
以下の一般式(1)で示される化合物、その塩もしくはその溶媒和物である、分岐状アミノ酸を含む、ペプチド固相合成法用の試薬。
【化1】
JP0005784295B2_000009t.gif
(一般式(1)中、Raは水素原子であり、Rbがホルミル基、アセチル基、トリクロロアセチル基、α-クロロアセチル基、トリフルオロアセチル基、ベンゾイル基、t-ブチルオキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、9-フルオレニルメトキシカルボニル基、2-(3,5-ジメトキシフェニル)プロピル-2-カルボニル基、トシル基、メシチレンスルフォニル基、トリチル基、キサンチル基から選択され、R1~R5は各々独立して、水素原子および低級炭化水素基から選択され、R6は以下の一般式(2)および一般式(3)から選択される:
【化2】
JP0005784295B2_000010t.gif
【化3】
JP0005784295B2_000011t.gif
一般式(2)および一般式(3)中、Rc~Rhがメチル基、エチル基、イソプロピル基、tert-ブチル基、ベンジル基、ニトロベンジル基から選択され、R7~R14およびR17~R20は各々独立して、水素原子および低級炭化水素基から選択され、R15およびR16は一緒になって=Oを形成する。)
【請求項2】
一般式(1)中、R6が一般式(2)により表される分岐状アミノ酸を含む、請求項1に記載のペプチド固相合成法用の試薬。
【請求項3】
一般式(1)中、R6が一般式(3)により表される分岐状アミノ酸を含む、請求項1に記載のペプチド固相合成法用の試薬。
【請求項4】
一般式(1)中、R1、R2、R4は水素原子であり、R3およびR5は各々独立して、水素原子および直鎖状の低級アルキル基から選択される分岐状アミノ酸を含む、請求項1~3のいずれか1に記載のペプチド固相合成法用の試薬。
【請求項5】
一般式(2)および一般式(3)中、R7~R14およびR17~R20は水素原子である分岐状アミノ酸を含む、請求項1~4のいずれか1に記載のペプチド固相合成法用の試薬。
【請求項6】
請求項1~のいずれか1に記載の分岐状アミノ酸と、蛍光性アミノ酸とを含む複合体であるペプチド。
【請求項7】
蛍光性アミノ酸と分岐状アミノ酸が直接結合している、請求項に記載のペプチド。
【請求項8】
請求項1~のいずれか1に記載のペプチド固相合成法用の試薬をペプチド固相合成法に用いて、前記分岐状アミノ酸と、蛍光性アミノ酸とを含む複合体であるペプチドを製造する方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、新規分岐状アミノ酸、新規分岐状アミノ酸と蛍光性アミノ酸の複合体、およびそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
in vitroおよびin vivoで、タンパク質などの生体分子や、タンパク質などを表面に担持する細胞の動態を調べる場合、あるいは、生体分子間の相互作用を調べる場合に、蛍光色素で分析対象物を標識する方法が多く用いられている。
【0003】
近年、蛍光色素として、蛍光発光する分子を側鎖に含んだアミノ酸である蛍光性アミノ酸が注目されている。従来、タンパク質やペプチドを蛍光標識する方法として、蛍光性アミノ酸ではない蛍光色素を用いる方法があるが、特定の部位しか導入できないことや、タンパク質やペプチドの性質に影響を与えてしまうなど問題があった。一方、蛍光性アミノ酸は、公知のペプチド固相合成法によりタンパク質やペプチドの任意の位置に導入でき、所望のタンパク質やペプチドを標識することが可能となる。従って、例えば癌細胞に特異的な生体分子と特異的に相互作用するタンパク質やペプチド、特定の種類の細胞表面に存在する受容体のリガンド等を蛍光性アミノ酸により標識し、かかる標識されたペプチド等を用いることにより、疾患のメカニズムの解明や、診断等を行うことが可能になると期待されている。
【0004】
蛍光性アミノ酸は、分子内の共役長を変化させることや、官能基を変化させることにより、様々な励起/蛍光波長を持つことが可能である。中でも長波長域に励起/発光波長を持つアミノ酸は、種々の実験系におけるバックグラウンドの蛍光と重複しないため、極めて有用である。しかしそのような蛍光性アミノ酸は、分子内の共役長が長く(ベンゼン環の数が多く)なるため、疎水性が増してしまう。疎水性が増すと、周囲に存在するタンパク質や無機材料などの他の材料と、蛍光性アミノ酸とが非特異的に吸着してしまい、標識評価の精度低下や、標識対象物の収量低下の原因となり、蛍光性アミノ酸の標識としての機能が発揮されない。
【0005】
非特許文献1~5には、ペプチド液相合成法もしくはペプチド固相合成法により、リジン骨格を有するデンドリマーを作製することが開示されているが、これらを蛍光性アミノ酸と結合させることについては開示されていない。また上記リジン骨格を有するデンドリマーの合成は、リジンが有する2個のアミノ基に、各々リジンをペプチド結合させることにより、ペプチドの分岐構造を直接増加させることにより行われる。
【0006】
特許文献1および2には、標識するタンパク質やペプチド自体が持つ性質に影響を与えないで、タンパク質やペプチドを効率よく標識できる新規な蛍光標識物質として、蛍光性アミノ酸が開示されている。これらの特許文献では、蛍光性アミノ酸が非特異的に吸着する性質を持つことについては開示されていない。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】特開2008-13456号
【特許文献2】特開2007-197406号
【0008】

【非特許文献1】M.Ohsaki et al., Bioconjugate Chem. 2002, 13, 510-517
【非特許文献2】G.Purohit et al., Int. J. Pharm. 2001, 214, 71-76
【非特許文献3】S.Stiriba et al., Angew. Chem. Int. Ed. 2002, 41, 1329-1334
【非特許文献4】E.Kantchev et al., Biopolymers (Pept. Sci) 2006, 84, 232-240
【非特許文献5】K.Al-Jamal et al., J. Pharm. Sci. 2005, 94, 102-113
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
蛍光性アミノ酸の非特異的吸着の問題については、これまで着目されたことがほとんどないが、かかる問題は蛍光性アミノ酸を用いたアッセイ、診断、医薬スクリーニング等を正確かつ効率よく行うために解決が必須である。従って本発明の課題は、蛍光性アミノ酸の非特異的吸着を低減させる手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は鋭意検討を行った結果、新規な分岐状アミノ酸を合成し、当該新規な分岐状アミノ酸がペプチド固相合成法に使用可能であることを見出した。さらに当該新規な分岐状アミノ酸を用いて、蛍光性アミノ酸を取り囲んだ複合体を容易に作製可能であること、当該複合体が蛍光性アミノ酸の蛍光機能を維持しながら蛍光性アミノ酸の非特異的吸着が低減しているという特徴を有することを見出し、本発明を完成した。
【0011】
すなわち、本発明は以下よりなる。
1.以下の一般式(1)で示される化合物、その塩もしくはその溶媒和物である、分岐状アミノ酸またはその誘導体。
【化1】
JP0005784295B2_000002t.gif
(一般式(1)中、Raは水素原子、低級炭化水素基および保護基から選択され、Rbは水素原子または保護基であり、R1~R5は各々独立して、水素原子および低級炭化水素基から選択され、R6は以下の一般式(2)および一般式(3)から選択される:
【化2】
JP0005784295B2_000003t.gif
【化3】
JP0005784295B2_000004t.gif
一般式(2)および一般式(3)中、Rc~Rhは各々独立して、水素原子、低級炭化水素基および保護基から選択され、R7~R14およびR17R20は各々独立して、水素原子および低級炭化水素基から選択され、R15およびR16は一緒になって=Oを形成する。)
2.一般式(1)中、R6が一般式(2)により表される、前項1に記載の分岐状アミノ酸またはその誘導体。
3.一般式(1)中、R6が一般式(3)により表される、前項1に記載の分岐状アミノ酸またはその誘導体。
4.一般式(1)中、Raは水素原子および直鎖状の低級アルキル基から選択され、Rbは水素原子または保護基であり、R1、R2、R4は水素原子であり、R3およびR5は各々独立して、水素原子および直鎖状の低級アルキル基から選択される、前項1~3のいずれか1に記載の分岐状アミノ酸またはその誘導体。
5.一般式(2)および一般式(3)中、Rc~Rhは各々独立して、水素原子、直鎖状の低級アルキル基および保護基から選択され、R7~R14およびR17R20は、水素原子および直鎖状の低級アルキル基から選択され、R15およびR16は一緒になって=Oを形成する、前項1~4のいずれか1に記載の分岐状アミノ酸またはその誘導体。
6.一般式(1)中、Raは水素原子であり、Rbは水素原子または保護基であり、R1~R5は水素原子であり、
一般式(2)および一般式(3)中、Rc~Rhは保護基であり、R7~R14およびR17R20は各々独立して、水素原子および直鎖状の低級アルキル基から選択され、R15およびR16は一緒になって=Oを形成する、前項1~5のいずれか1に記載の分岐状アミノ酸またはその誘導体。
7.前項1~6のいずれか1に記載の分岐状アミノ酸またはその誘導体を製造する方法。
8.前項1~6のいずれか1に記載の分岐状アミノ酸またはその誘導体と、蛍光性アミノ酸とを含む複合体。
9.蛍光性アミノ酸のアミノ基側および/またはカルボキシル基側に、分岐状アミノ酸が位置している、前項8に記載の複合体。
10.ペプチドもしくはタンパク質を含む、前項8または9のいずれか1に記載の複合体。
11.ペプチドもしくはタンパク質のN末端側もしくはC末端側に、分岐状アミノ酸および蛍光性アミノ酸が位置している、前項10に記載の複合体。
12.ペプチドもしくはタンパク質が、分岐状アミノ酸および蛍光性アミノ酸と、リンカーを介して結合している、前項10または11に記載の複合体。
13.ペプチドもしくはタンパク質が、標的に対して指向性を有するものである、前項10~12のいずれか1に記載の複合体。
14.ペプチド固相合成法を用いて、前項8~13のいずれか1に記載の複合体を製造する方法。
15.前項8~13のいずれか1に記載の複合体である、蛍光複合体。
16.前項15に記載の蛍光複合体を含む、診断用組成物。
【発明の効果】
【0012】
本発明の分岐状アミノ酸は、側鎖がかさ高い分岐状構造であるにも関わらず、ペプチド固相合成法に適用することが可能なアミノ酸である。本発明の分岐状アミノ酸は、例えば市販のグルタミン酸誘導体やアスパラギン酸誘導体を原料として安価に作製することが可能である。
また、本発明の分岐状アミノ酸と蛍光性アミノ酸との複合体は、ペプチド固相合成法を用いることにより作製可能であるため、複合体の精製にほとんど時間を要さず迅速に複合体を作製することができる。本発明の複合体では、分岐状アミノ酸が蛍光アミノ酸を取り囲んだような状態となっており、この分岐状アミノ酸の立体障害のため蛍光性アミノ酸が他の材料との接触(吸着)することを物理的に防ぐことが可能である。また本発明の複合体における蛍光性アミノ酸は多様な種類のものを使用可能であり、かつ本発明の複合体から発せられる蛍光は、通常の蛍光検出機器にて検出可能であるため、種々の用途に本発明の複合体を使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の新規分岐状アミノ酸を合成するスキームを表す図である。(実施例1)
【図2】分岐状アミノ酸1の1H-NMRの結果を表す図である。(実施例1)
【図3】分岐状アミノ酸2の1H-NMRの結果を表す図である。(実施例1)
【図4】実施例2にて使用される蛍光性アミノ酸の化学構造を示す図である。(実施例2)
【図5】分岐状アミノ酸1または2および蛍光性アミノ酸を含むペプチドのペプチド固相合成法による合成を、MALDI-TOF Massにて確認した結果を示す図である。(実施例2)
【図6】分岐状アミノ酸1および蛍光性アミノ酸を含むペプチドの化学構造を示す図である。(実施例3)
【図7】分岐状アミノ酸1および蛍光性アミノ酸を含むペプチドについてゲルろ過を行った結果を示す図である。(実施例3)
【発明を実施するための形態】
【0014】
(分岐状アミノ酸)
本発明は、以下の一般式(1)で示される化合物、その塩もしくはその溶媒和物である、分岐状アミノ酸またはその誘導体(以下単に「分岐状アミノ酸」と称することもある)に関する。
【化1】
JP0005784295B2_000005t.gif

【0015】
一般式(1)中、Raは水素原子、低級炭化水素基および保護基から選択され、Rbは水素原子または保護基であり、R1~R5は各々独立して、水素原子および低級炭化水素基から選択され、R6は以下の一般式(2)および一般式(3)から選択される。

【0016】
【化2】
JP0005784295B2_000006t.gif
【化3】
JP0005784295B2_000007t.gif

【0017】
一般式(2)および一般式(3)中、Rc~Rhは各々独立して、水素原子、低級炭化水素基および保護基から選択され、R7~R20は各々独立して、水素原子および低級炭化水素基から選択される。

【0018】
アミノ酸とは、同一分子内にアミノ基とカルボキシル基を有する化合物を意味する。分岐状アミノ酸とは、側鎖に分岐した炭素鎖を持つアミノ酸を意味する。本発明の分岐状アミノ酸は、分岐部分を一箇所以上有していればよい。例えば、実施例に記載の分岐状アミノ酸1(図1参照)は、R7が結合する炭素に、分岐部分を一箇所有する。また実施例に記載の分岐状アミノ酸2(図1参照)は、R10が結合する炭素、R17が結合する炭素、R12が結合する炭素に、分岐部分を三箇所有する。

【0019】
アミノ酸の誘導体とは、アミノ基あるいはカルボキシル基が保護基で修飾されたアミノ酸を意味する。保護基は、アミノ基、カルボンキシル基の保護基として一般的に用いられるものであれば、特に限定されない。具体的には、アミノ酸の保護基としては、例えば、ホルミル基、アセチル基、トリクロロアセチル基、α-クロロアセチル基、トリフルオロアセチル基、ベンゾイル基、t-ブチルオキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、9-フルオレニルメトキシカルボニル基、2-(3,5-ジメトキシフェニル)プロピル-2-カルボニル基、トシル基、メシチレンスルフォニル基、トリチル基、キサンチル基、などが挙げられる。カルボン酸の保護基としては、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert-ブチル基、ベンジル基、ニトロベンジル基などが挙げられる。

【0020】
また、本発明において、塩とは、アミン部分が塩酸、硫酸、硝酸及び燐酸などの無機酸の塩、トリフルオロ酢酸等の有機カルボン酸の塩、ベンゼンスルボン酸及びメタンスルホン酸等の有機スルホン酸の塩となったもの、及びカルボン酸部分がナトリウム、カリウム、カルシウム等の金属塩、アンモニア、トリエチルアミン等の有機塩基の塩となったものを意味し、溶媒和物とは、水和物、メタノール、エタノール、プロパノール等の低級アルコールが付加した有機溶媒和物、及びアセトン、N,N-ジメチルホルムアミド、ベンゼン等が付加した有機溶媒和物を意味し、水和物は空気中の水分を吸収して生成したものも含む。

【0021】
低級炭化水素基とは、低級アルキル基、低級アルケニル基、低級アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基などが挙げられるが、好ましくは低級アルキル基、低級アルケニル基、低級アルキニル基である。

【0022】
低級アルキル基としては炭素数1~10、好ましくは1~6、より好ましくは1~3の直鎖状又は分枝状のアルキル基が挙げられ、より具体的には、たとえば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、第二級ブチル基、第三級ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などを挙げることができる。

【0023】
低級アルケニル基としては炭素数2~10、好ましくは2~6、より好ましくは2~4の直鎖状又は分枝状のアルケニル基が挙げられ、より具体的には、たとえば、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基などを挙げることができる。

【0024】
低級アルキニル基としては炭素数2~10、好ましくは2~6、より好ましくは2~4の直鎖状又は分枝状のアルキニル基が挙げられ、より具体的には、たとえば、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基、ペンチニル基などを挙げることができる。

【0025】
また、シクロアルキル基としては、炭素数3~12、好ましくは5~9、より好ましくは6~8の単環、多環又は縮合環式のシクロアルキル基が挙げられ、シクロアルケニル基としては、前記したシクロアルキル基に1個以上の二重結合などの不飽和基を有するものが挙げられる。アリール基としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニレニル基などが挙げられる。

【0026】
低級炭化水素基は、置換基を有していてもよいが、有していなくてもよい。置換基としては、低級アルキル基から誘導される低級アルコキシ基、水酸基、アミノ基、ハロゲン原子、複素環基、ニトロ基などが挙げられる。「ハロゲン原子」としては、塩素、臭素、ヨウ素などが挙げられる。「アルコキシ基」としては、前記した低級アルキル基から誘導される低級アルコキシ基が好ましい。また、「置換されていてもよいアミノ基」の置換基としては前記した炭化水素基や、これらの炭化水素基から誘導されるアシル基などが挙げられる。

【0027】
一般式(1)中、好ましくは、Raは水素原子および低級アルキル基から選択され、Rbは水素原子または保護基であり、R1~R5は各々独立して水素原子および低級アルキル基から選択される。
さらに好ましくは、一般式(1)中、Raは水素原子および直鎖状の低級アルキル基から選択され、Rbは水素原子または保護基であり、R1、R2、R4は水素原子であり、R3、R5は各々独立して水素原子および直鎖状の低級アルキル基から選択される。
より好ましくは、一般式(1)中、Raは水素原子であり、Rbは保護基であり、R1~R5は水素原子である。
最も好ましくは、一般式(1)中、Raは水素原子であり、Rbは9-フルオレニルメトキシカルボニル基であり、R1~R5は水素原子である。

【0028】
一般式(2)中、好ましくは、Rc、Rdは各々独立して、水素原子、直鎖状の低級アルキル基、および保護基から選択され、R7~R9は各々独立して、水素原子および直鎖状の低級アルキル基から選択される。
さらに好ましくは、一般式(2)中、Rc、Rdは各々独立して、水素原子または保護基から選択され、R8は水素原子であり、R7、R9は各々独立して水素原子および直鎖状の低級アルキル基から選択される。
より好ましくは、一般式(2)中、Rc、Rdは各々独立して、水素原子または保護基から選択され、R7~R9は水素原子である。
最も好ましくは、一般式(2)中、Rc、Rdは各々独立して、水素原子またはtert-ブチル基から選択され、R7~R9は水素原子である。

【0029】
一般式(3)中、好ましくは、Re~Rhは各々独立して、水素原子、直鎖状の低級アルキル基、および保護基から選択され、R10R14およびR17R20は各々独立して、水素原子および直鎖状の低級アルキル基から選択され、R15およびR16は一緒になって=Oを形成する。
さらに好ましくは、一般式(3)中、Re~Rhは各々独立して、水素原子または保護基から選択され、R10、R11、R13、R17、R18、R20は水素原子であり、R12、R14、R19は各々独立して水素原子および直鎖状の低級アルキル基から選択され、R15およびR16は一緒になって=Oを形成する。
より好ましくは、一般式(3)中、Re~Rhは各々独立して、水素原子または保護基から選択され、R10R14およびR17R18は水素原子であり、R15およびR16は一緒になって=Oを形成する。
最も好ましくは、一般式(3)中、Re~Rhはtert-ブチル基であり、R10R14およびR17R18は水素原子であり、R15およびR16は一緒になって=Oを形成する。

【0030】
(分岐状アミノ酸の製造方法)
本発明の分岐状アミノ酸は、いかなる製造方法により合成してもよいが、例えば天然アミノ酸であるグルタミン酸とアスパラギン酸の誘導体を原料として、ペプチド固相合成法の反応条件を適宜改変して反応させることにより合成することが可能である。例えば、グルタミン酸の主鎖のカルボキシル基を保護基で保護し、側鎖のカルボキシル基に、アスパラギン酸のアミノ基を結合させることにより、分岐状アミノ酸を合成することが可能である。具体的には、後述の実施例を参照することができる。

【0031】
(分岐状アミノ酸と蛍光性アミノ酸との複合体)
本発明は、本発明の分岐状アミノ酸またはその誘導体と、蛍光性アミノ酸とを含む複合体にも及ぶ。分岐状アミノ酸またはその誘導体と、蛍光性アミノ酸とを含む複合体とは、
少なくとも分岐状アミノ酸またはその誘導体と、蛍光性アミノ酸を複合体中に含むものであればよい。複合体中にて、分岐状アミノ酸またはその誘導体と蛍光性アミノ酸とは直接結合していてもよいし、直接結合していなくてもよい。本発明の複合体では、蛍光性アミノ酸のアミノ基側および/またはカルボキシル基側に、好ましくはアミノ基側とカルボキシル基側の両方に、分岐状アミノ酸が位置している。このような構造をとることにより、当該複合体では分岐状アミノ酸が蛍光性アミノ酸を取り囲む構造となる。本発明の複合体において分岐状アミノ酸は、蛍光性アミノ酸に対して、蛍光性アミノ酸の蛍光機能を損なわずに、蛍光性アミノ酸が他の材料と接触することを物理的に防ぐことが可能となるよう位置する必要があり、例えば隣接して位置することが好ましい。

【0032】
本発明の複合体において、分岐状アミノ酸と蛍光性アミノ酸の個数は、特に制限されないが、分岐状アミノ酸の個数は好ましくは2~10残基であり、より好ましくは2~4残基であり、蛍光性アミノ酸は好ましくは1~3残基である。蛍光性アミノ酸は1つの複合体において、同種のものを使用してもよいし、目的に応じて異なる種類のものを組み合わせて使用してもよい。蛍光性アミノ酸としては、以下の表1に記載のものが例示されるが、Pyr、Bad、Mocを用いることが好ましい。
【表1】
JP0005784295B2_000008t.gif

【0033】
さらに本発明の複合体は、分岐状アミノ酸と蛍光性アミノ酸とは別に、ペプチドもしくはタンパク質を含んでいてもよい。本発明の複合体に含まれるペプチドもしくはタンパク質は、いかなるものであってもよいが、標的に対して指向性を有するもの、例えばペプチド性リガンド(抗原)、抗体、細胞内導入性ペプチド、ペプチド性医薬、ペプチド核酸であることが好ましい。

【0034】
本発明の複合体においては、分岐状アミノ酸および蛍光性アミノ酸は、ペプチドもしくはタンパク質に対していかなる位置であってもよく、蛍光性アミノ酸の蛍光機能を損なわずに、蛍光性アミノ酸が他の材料と接触することを物理的に防ぐことが可能となる位置であればよい。また、本発明の複合体における分岐状アミノ酸と蛍光性アミノ酸は、当該ペプチドもしくはタンパク質が特定の機能(例えば、標的に対する指向性)を有する場合は当該機能を阻害しないよう位置する必要がある。例えば、分岐状アミノ酸および蛍光性アミノ酸は、ペプチドもしくはタンパク質のN末端側もしくはC末端側に位置することが好ましい。

【0035】
本発明の複合体において、ペプチドもしくはタンパク質は、分岐状アミノ酸および蛍光性アミノ酸と、リンカーを介して結合していてもよい。リンカーは、ペプチドもしくはタンパク質、分岐状アミノ酸、蛍光性アミノ酸の機能を阻害しないものであればいかなるものであってもよいが、例えば水溶性のリンカーが好ましい。水溶性のリンカーは、ポリエーテル基(ポリ(オキシアルキレン)基またはポリ(オキシアリーレン)基を含む)を有するアミノ酸が例示され、好ましくはポリ(オキシエチレン)基を有するアミノ酸が挙げられる。例えば、かかるアミノ酸において、オキシエチレン単位の繰返し数は、特に制限されないが、通常2以上、好ましくは6以上、また、通常100以下、好ましくは50以下、更に好ましくは30以下の範囲である。

【0036】
(複合体の製造方法)
本発明の複合体は、新規分岐状アミノ酸と蛍光性アミノ酸を用いて、公知のペプチド固相合成法により製造することが可能である。分岐状アミノ酸またはその誘導体はかさ高い構造であるにも関わらず、ペプチド固相合成法に使用できるため、本発明の複合体を簡便に製造することが可能である。具体的な製造方法は後述の実施例を参照することが可能である。

【0037】
(複合体の用途)
本発明の複合体は、蛍光性アミノ酸による非特異的吸着の低減した蛍光性を発揮する蛍光複合体であり、一般的な蛍光物質、蛍光団と同様の用途を有し得る。本発明の複合体は、例えば蛍光性アミノ酸によるゲルろ過材料のゲルなどに対する非特異的吸着性が低減したものである。本発明の複合体は、化合物や細胞等を標識化するための蛍光標識剤として使用することが可能である。さらに本発明の複合体におけるペプチドもしくはタンパク質が標的に対する指向性を有する場合は、標的に対する蛍光プローブとして使用することが可能である。蛍光標識物質や蛍光プローブとしての本発明の複合体は、in vitroもしくはin vivoにおけるアッセイ用もしくは検査用試薬として使用することができる。本発明の複合体と、用途に応じて生理食塩水等の溶液や他の添加剤を含む組成物を、診断用組成物として使用することも可能である。
【実施例】
【0038】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0039】
まず、本実施例で用いられる略号の正式名称を記載する。
(1)有機化合物の保護基
Fmoc: 9-フルオレニルメトキシカルボニル基
tBu: tert-ブチル基
Ac: アセチル基
Bzl: ベンジル基
(2)有機試薬
TFA: トリフルオロ酢酸(trifluoroacetic acid)
TIPS: トリイソプロピルシラン(triisopropylsilane)
DIPEA: ジイソプロピルエチルアミン(diisopropylethylamine)
HATU: O-(7-アザベンゾトリアゾル-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート(O-(7-azabenzotriazol-1-yl)-1,1,3,3-tetramethyluronium hexafluorophosphate)
Pd/C: パラジウム炭素(Palladium carbon)
(3)ペプチド固相合成に用いられる固相樹脂
Fmoc-NH-SAL-PEG-resin: N-α-9-Fluorenylmethoxycarbonyl-Super Acid Labile polyethyleneglycol handle polystylene
(4)有機溶媒
DMF: N,N'-ジメチルホルムアミド(N,N'-dimethylformamide)
DMSO: ジメチルスルホキシド(dimethylsulfoxide)
(5)蛍光性アミノ酸または複合体内における蛍光性アミノ酸ユニット
Pyr: 3-(1-ピレニル)アラニン(3-(1-pyrenyl) alanine)
Bad: 3-(12-オキソ-5,12-ジヒドロ-ベンゾ[b]アクリジン-2-イル]アラニン(3-(12-oxo-5,12-dihydro-benzo[b]acridin-2-yl]alanine)
Moc: 3-(7-メトキシ-クマリン-4-イル)アラニン(3-(7-methoxy-coumarin-4-yl)alanine)
(6)緩衝溶液調製用試薬
HEPES: 4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸(4-(2-hydroxyethyl)-1-piperazineethanesulfonic acid)
(7)その他
X1~X8: Cys(システイン)を除く19種類の天然アミノ酸の当量混合物(なお、天然には20種類の天然アミノ酸が存在する。)
【実施例】
【0040】
(実施例1)新規分岐状アミノ酸の合成
本発明の分岐状アミノ酸1および2を合成した。合成経路を図1に示す。
まず、原料であるFmoc-Glu-OBzlとH-Asp(OtBu)-OtBuとを脱水縮合することでFmoc-Glu{Asp(OtBu)-OtBu}-OBzlを得た(収率82%)。次に、得られた化合物を接触水素添加によりBzl基を脱保護することで分岐状アミノ酸1を得た(収率32%)。
分岐状アミノ酸2は、分岐状アミノ酸1の中間体であるFmoc-Glu{Asp(OtBu)-OtBu}-OBzlを原料として、まず、酸によりカルボン酸tert-ブチルエステルを脱保護し、カルボン酸を得た。次に、その化合物を、H-Asp(OtBu)-OtBuとの脱水縮合および接触水素添加により、分岐状アミノ酸2を得た(Fmoc-Glu-OBzlから考えて収率16%)。
【実施例】
【0041】
これらの分岐状アミノ酸1および2は、1H-NMRよりその構造及び純度を確認した(それぞれ図2および図3)。分岐状アミノ酸1および2は、それぞれ側鎖にカルボン酸誘導体が、2個および4個含まれた構造を有する。得られた分岐状アミノ酸1および2は、ペプチド固相合成法に使用することを考慮して、アミノ基がFmoc基で保護されている。
【実施例】
【0042】
(実施例2)分岐状アミノ酸と蛍光性アミノ酸との複合体を含むペプチドの合成
分岐状アミノ酸と蛍光性アミノ酸との複合体を含むペプチドは、従来法であるFmocペプチド固相合成法によって作製した。
蛍光性アミノ酸のFmoc体である、Fmoc-Ala(Bad)-OH、Fmoc-Ala(Pyn)-OHは渡辺化学工業株式会社から、Fmoc-Lys(Moc)-OHはBachem社から購入した。Fmoc化された水溶性リンカーから成るアミノ酸はMerck社より購入した。蛍光性アミノ酸のFmoc体の化学構造を図4に示す。その他のペプチド合成に必要な試薬類はいずれも渡辺化学工業株式会社より購入した。Fmoc化された蛍光性アミノ酸および天然アミノ酸はいずれもL体である。
【実施例】
【0043】
ペプチド固相合成法は具体的には以下のようにして行った。まず、樹脂Fmoc-NH-SAL-PEG-resinを膨潤させるためにジクロロメタン/DMF混合溶媒で室温3時間撹拌した。樹脂をDMFで洗浄後、20%ピペリジンを含むDMF溶液で40℃にて10分間撹拌した後、DMFで洗浄した(この操作を以下「脱保護」と表記する)。次に、目的のペプチドのシークエンスを作るのに対応する各種アミノ酸のFmoc体、HATUおよびDIPEAをDMFに溶解させた後、樹脂に加えた。40℃にて30~60分間撹拌した後、DMFで洗浄した(この操作を以下「カップリング」と表記する)。続いて、5%無水酢酸および6%ルチジンを含むDMF溶液で40℃にて3分間撹拌した後、DMFで洗浄した(この操作を以下「キャッピング」と表記する)。樹脂表面上に目的の配列のペプチドが伸長するまで、脱保護、カップリング、キャッピングの操作を繰り返した。最後に付加するFmoc体のFmoc基を脱保護した後、樹脂にTFA/水/TIPS(= 95/2.5/2.5 v/v/v)を加えて、室温にて60分間撹拌した。これにより樹脂から切り出された目的のペプチドの溶液は風乾後、メタノール溶液として冷凍庫に保管した。
【実施例】
【0044】
一次構造が以下のペプチドをそれぞれペプチド固相合成法により合成し、分岐状アミノ酸1および2を、ペプチドに導入した。以下のペプチドにおいて、1もしくは2が、分岐状アミノ酸1もしくは2に該当する。
Ac-E-E-Pyr-E-E-G-G-NH2 (E-Pyr)
Ac-1-1-Pyr-1-1-G-G-NH2 (1-Pyr)
Ac-2-2-Pyr-2-2-G-G-NH2 (2-Pyr)
上記ペプチドにおいて、NH2はペプチドのC末端がアミド結合であることを示している。Pyrは9-ピレニルアラニンユニットであり、蛍光性アミノ酸である。
【実施例】
【0045】
合成された上記ペプチドを、MALDI-TOF Massより同定することが可能であった(図5)。分岐状アミノ酸1および2のような非常にかさ高い分岐状アミノ酸を、ペプチド固相合成法によりペプチドに導入できることがわかった。
【実施例】
【0046】
(実施例3)分岐状アミノ酸による蛍光性アミノ酸の非特異反応の防止効果の確認
(1)分岐状アミノ酸と蛍光性アミノ酸との複合体を含むペプチドの合成
分岐状アミノ酸による蛍光性アミノ酸とゲルろ過材との吸着を防止する効果を検討するため、図6に記載のペプチドを作製した(E-Pyr-X, 1-Pyr-X, E-Bad-X, 1-Bad-X, E-Moc-Xおよび1-Moc-X)。図6に記載のペプチドは、ランダムなペプチド8量体と、蛍光性アミノ酸、分岐状アミノ酸を結合させたものである。図6中、X1~X8はいずれもシステインを除く19種類の天然アミノ酸の当量混合物である。ペプチドの合成は、実施例2と同様にペプチド固相合成法により行った。
【実施例】
【0047】
(2)分岐状アミノ酸による蛍光性アミノ酸の非特異反応の防止効果の確認
1-Pyr-X, 1-Bad-Xおよび1-Moc-Xの混合物(それぞれの最終濃度は5 M(300pmol))について、室温で溶出バッファーを50 mM HEPES-NaOH (pH 7.4)として、SuperdexTM 75 prep grade(GEヘルスケアより購入)(カラム体積は0.7 cm (直径) * 20 cm (高さ))を用いて、ゲルろ過を行ない、各フラクションを得た。それぞれのフラクションについて、50%メタノールを含む50 mM HEPES-NaOH (pH 7.4)中で2次元蛍光スペクトルを測定した(日本分光社製 FP-6600)。混合物中のペプチド(蛍光性アミノ酸)のそれぞれの濃度を、各フラクションの2次元蛍光スペクトルの蛍光強度の最小自乗解析により求めた。なお、この解析の際、各々の蛍光性アミノ酸の2次元蛍光スペクトルをコンポーネントスペクトルとした。リファレンスとして、E-Pyr-X, E-Bad-XおよびE-Moc-Xの混合物も同様にゲルろ過を行ない、各フラクションのペプチド(蛍光性アミノ酸)の濃度を求めた。
【実施例】
【0048】
その結果を図7に示す。E-Bad-XおよびE-Pyr-Xは、広い分布で溶出されていることがわかった。すなわち、蛍光アミノ酸BadやPyrが、使用したゲルろ過材に非特異的に吸着していることを示しす。E-Moc-Xは、E-Bad-XおよびE-Pyr-Xより狭い分布で溶出されており、Mocがゲルに非特異的に吸着していないことがわかった。このように蛍光性アミノ酸の種類に応じてゲルに非特異的に吸着しないものと吸着するものがあることがわかった。
【実施例】
【0049】
BadやPyrのようにゲルろ過材に非特異的に吸着するものは、非特異的吸着を防止して、ゲルろ過材に用いる必要がある。ここで図7において、BadやPyrを分岐状アミノ酸で包括した1-Bad-Xおよび1-Pyr-Xは、狭い分布で溶出されている。分布の程度を表すために、FWHM/fmax(全体の溶出量に対する各フラクションの溶出量の割合の最大値(fmax)を半値幅(FWHM)で割った値)を求めた。FWHM/fmax の値が0に近づくほど、その分布は狭い(分布曲線が鋭い)ことを示している。E-Bad-X、E-Pyr-XおよびE-Moc-XのFWHM/fmaxの値はそれぞれ1.37,、0.98 および0.36であった。一方、1-Bad-X、1-Pyr-Xおよび1-Moc-XのFWHM/fmaxの値はそれぞれ0.26、0.27および0.32であった。これらの結果から、分岐状アミノ酸1によって蛍光性アミノ酸BadやPyrを包括することにより、蛍光性アミノ酸とゲルとの間の非特異的吸着を防止できることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、分岐状アミノ酸を予め合成しておくことで、ペプチド固相合成法により簡単にペプチドに導入することができる。分岐状アミノ酸を使用しない従来法では、ペプチド合成中、伸長反応に伴いながら分岐鎖を生成させる必要があるため、合成過程が煩雑であり、また反応条件が繊細であった。
また本発明の分岐状アミノ酸により蛍光アミノ酸の周囲を分岐鎖で取り囲むことができるため、蛍光性アミノ酸と他の材料との接触を防ぎ、蛍光性アミノ酸の非特異的吸着を防ぐことが可能となる。このようにして合成された分岐状アミノ酸と蛍光性アミノ酸の複合体の蛍光機能は、分岐状アミノ酸で取り囲まれていない蛍光性アミノ酸の蛍光機能と同等である。
本発明の複合体は、例えば生体内でのプローブとして用いることができる。蛍光性アミノ酸を生体内で使用する場合、生体材料などとの非特異的吸着は避けられないが、本発明の複合体を用いることにより非特異的吸着を防止することができる。また、本発明の複合体をプローブとして用いた材料と標的材料との結合物を精製する場合、精製するための担体であるゲルろ過材等との非特異的吸着が防止され、蛍光性アミノ酸自体を用いた場合と比較して収量の低下を防ぐことができると考えられる。
以上説明したとおり、本発明の複合体により、生体外もしくは生体内において標的となる物質、細胞等を検査、標識化、モニタリングすることが可能となり、疾患や病態の診断のみならず、医薬のスクリーニング等を有効に行うことができるようになると期待される。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6