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明細書 :焼却汚泥からのリン酸の回収法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5664995号 (P5664995)
公開番号 特開2011-105546 (P2011-105546A)
登録日 平成26年12月19日(2014.12.19)
発行日 平成27年2月4日(2015.2.4)
公開日 平成23年6月2日(2011.6.2)
発明の名称または考案の名称 焼却汚泥からのリン酸の回収法
国際特許分類 C01B  25/32        (2006.01)
C01B  25/30        (2006.01)
B09B   3/00        (2006.01)
FI C01B 25/32 ZABB
C01B 25/30 Z
B09B 3/00 304G
請求項の数または発明の数 2
全頁数 7
出願番号 特願2009-262131 (P2009-262131)
出願日 平成21年11月17日(2009.11.17)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 平成21年10月8日 日本無機リン化学会発行「第19回無機リン化学討論会 講演要旨集」及び平成21年10月8日「第19回無機リン化学討論会」において文書をもって発表
審査請求日 平成24年11月12日(2012.11.12)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】899000057
【氏名又は名称】学校法人日本大学
発明者または考案者 【氏名】遠山 岳史
個別代理人の代理人 【識別番号】110000084、【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
【識別番号】100068700、【弁理士】、【氏名又は名称】有賀 三幸
【識別番号】100077562、【弁理士】、【氏名又は名称】高野 登志雄
【識別番号】100096736、【弁理士】、【氏名又は名称】中嶋 俊夫
【識別番号】100117156、【弁理士】、【氏名又は名称】村田 正樹
【識別番号】100111028、【弁理士】、【氏名又は名称】山本 博人
審査官 【審査官】植前 充司
参考文献・文献 特開昭58-015027(JP,A)
特開昭56-022635(JP,A)
特開昭56-022613(JP,A)
特開2004-223315(JP,A)
特開2008-230940(JP,A)
特開2005-125210(JP,A)
特開2004-267908(JP,A)
調査した分野 C01B 25/32
B09B 3/00
C01B 25/30
特許請求の範囲 【請求項1】
重金属を含む焼却汚泥濃度0.0001~20質量%の水懸濁液に5~40℃で二酸化炭素を吹き込み、次いで固液分離し、ろ液を回収することを特徴とするリン酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩の製造法。
【請求項2】
得られるリン酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩中の重金属含有量が、アルカリ金属及びアルカリ土類金属含有量の1/20以下である請求項1記載の製造法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、焼却汚泥から簡便な操作により、重金属をほとんど含まないリン酸又はその塩を選択的に回収する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、リン資源の枯渇が世界的に問題となっているが、その中でも特にリン肥料などの原料となるリン鉱石のほとんどを輸入に頼っている日本では、環境負荷低減とリン肥料の経済的な生産を確保するために、未利用リン資源の開発が急務となっている。一方、下水汚泥は下水道の設備率の向上や人口の増加などにより年々発生量が増大しており、その中でも生活排水汚泥は年間で3千t程度発生していると見積もられている。この汚泥はリンを多く含んでおり資源化が望まれるが、汚泥中にはその他にも多くの重金属を含んでおり、一部は肥料として緑農地に利用されているが、そのほとんどは焼却後埋め立てられているのが現状である。
【0003】
焼却汚泥からのリン酸の回収法としては、無機酸又はアルカリで抽出する方法(特許文献1~7)、還元溶融法(特許文献8)などが検討されている。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2001-130903号公報
【特許文献2】特開2004-203641号公報
【特許文献3】特開2007-70217号公報
【特許文献4】特開2007-261878号公報
【特許文献5】特開2007-277056号公報
【特許文献6】特開2008-229576号公報
【特許文献7】特開2008-230940号公報
【特許文献8】特開2004-223315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、無機酸やアルカリによる抽出方法では、リン酸水溶液中に重金属イオンも抽出されてしまうため、リン酸のアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩を選択的に回収するには、複雑な工程と多量の溶媒を使用しなければならないという問題がある。また、還元溶融法では、大がかりな設備と1400℃もの高温度が必要であった。
従って、焼却汚泥から、簡便かつ省エネルギー型のリン酸回収方法の開発が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで本発明者は、焼却汚泥中のリン酸を簡便な手段で効率良く回収すべく種々検討したところ、全く意外にも、焼却汚泥の水懸濁液に二酸化炭素を吹き込めば、リン酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩が選択的に溶解し、溶液中の重金属量が無機酸抽出法の場合に比べて顕著に低下し、簡便な後処理で重金属含有量の少ないリン酸又はその塩を効率良く回収できることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、焼却汚泥の水懸濁液に二酸化炭素を吹き込み、次いで固液分離し、ろ液を回収することを特徴とするリン酸又はその塩の製造法を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、特別な設備を必要とせず、簡便かつ省エネルギーの条件で、重金属含有量が低く、肥料その他の用途に直接応用可能なリン酸又はその塩を、焼却汚泥から効率良く回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】各種方法による焼却汚泥からろ液中へのリン酸濃度変化を示す図である。
【図2】二酸化炭素吹き込みによるろ液中のリン酸濃度に及ぼす懸濁液濃度の影響を示す図である。
【図3】各種方法による焼却汚泥からろ液中へのナトリウム濃度変化を示す図である。
【図4】各種方法による焼却汚泥からろ液中へのカルシウム濃度変化を示す図である。
【図5】各種方法による焼却汚泥からろ液中へのマグネシウム濃度変化を示す図である。
【図6】各種方法による焼却汚泥からろ液中へのマンガン濃度変化を示す図である。
【図7】各種方法による焼却汚泥からろ液中への鉄濃度変化を示す図である。
【図8】各種方法による焼却汚泥からろ液中への銅濃度変化を示す図である。
【図9】二酸化炭素吹き込みにより得られた析出物のX線回折図形を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に用いられる焼却汚泥には、下水処理場から排出される汚泥、工業排水処理時に排出される汚泥等を焼却したものが挙げられる。焼却条件は、通常の焼却場の焼却条件であればよく、例えば500~1000℃で、1時間程度焼却するのが好ましい。これらの焼却汚泥は、各地方自治体の焼却場、工場の産廃等として排出されるものを用いることができる。

【0011】
これらの焼却汚泥は、通常リンを20~30%含有するといわれている。また、焼却汚泥中には、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属及びカルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属等の他、鉄、マンガン、銅、カドミウム、鉛、クロム等の重金属が含まれている。ここで重金属とは、遷移元素およびpブロック元素の典型元素をいう。

【0012】
本発明では、まず焼却汚泥を水懸濁液とする、懸濁液中の焼却汚泥濃度は、特に限定されないが、二酸化炭素の吹き込み易さ、抽出したリン酸水溶液の焼却汚泥からの分離等の点から、0.0001~20質量%、さらに0.0001~10質量%が好ましい。

【0013】
焼却汚泥水懸濁液に常温(5~40℃)下で二酸化炭素を吹き込む。二酸化炭素の吹き込みは、焼却汚泥水懸濁液の量及び濃度によっても相違するが、焼却汚泥水懸濁液1Lに対して流量0.1~10dm3/minで10分~2時間程度で十分である。

【0014】
二酸化炭素の吹き込みによって、焼却汚泥中のリン酸のアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩が水中に溶解してくる。一方、焼却汚泥中の重金属は水中にはほとんど溶解してこない。水中に溶解してくる重金属イオン濃度は、アルカリ金属イオン及びアルカリ土類金属イオンの1/20以下である。
硝酸、硫酸等の無機酸でリン酸を回収しようとした場合には、アルカリ金属イオンやアルカリ土類金属イオンと同様に鉄、マンガン、銅等の重金属イオンも水中に溶解してしまう。これに対し、本発明の二酸化炭素吹き込み法によれば、リン酸とともにアルカリ金属イオン及びアルカリ土類金属イオンは水中に溶出してくるが、鉄、マンガン、銅等の重金属イオンはほとんど水中に溶出してこない。

【0015】
従って、固液分離によりろ液を回収すれば、重金属含有量の少ないリン酸又はその塩を選択的に得ることができる。固液分離は、通常のろ過手段、例えば沈降分離を用いたろ過を採用できる。

【0016】
得られるろ液中の重金属イオン濃度は、アルカリ金属及びアルカリ土類金属イオン濃度の1/20以下であるから、このろ液はそのままリン酸水溶液として用いることができる。このろ液から、重金属をさらに除去する手段、例えば凝集剤沈降処理などを行って、さらに重金属を減少させてもよい。また、得られたリン酸又はその塩の水溶液は、水を留去する、あるいはアルカリを添加して沈殿させ、リン酸塩固体として利用することもできる。

【0017】
本発明方法により得られるリン酸又はその塩は、重金属含有量が少ないので、そのまま肥料等として利用できる他、セメント等のスラリー流動性改善のための流動化剤等にも利用することができる。
【実施例】
【0018】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0019】
実施例1
(方法)
焼却汚泥を純水中に懸濁液濃度0.01~0.8質量%となるよう浸漬させ、室温下で二酸化炭素を流量1dm3・min-1で0~60分間吹き込みながら攪拌させ、焼却汚泥を溶解させた。その後、懸濁液はろ過を行うことで残査とリン酸を含有したろ液とに分離した。さらに、ろ液からのリン酸塩の回収は単純に溶液を加熱することにより蒸発乾固させ、粉体試料として回収した。また、比較として硝酸溶液及び純水で焼却汚泥を溶解させ同様の検討を行った。なお、得られた試料のキャラクタリゼーションはX線回折及び誘導結合プラズマ発光分析より行った。
【実施例】
【0020】
(結果)
各種方法により焼却汚泥を溶解させたときの、ろ液中のリン酸濃度の経時変化を図1に示す。純水中に焼却汚泥を浸漬させたときにはリン酸の溶出量はわずかであり、時間が経過しても変化は見られないが、硝酸溶液中に浸漬させた場合には速やかにリン酸が溶出し、約40ppmと高い値を示した。また、二酸化炭素吹き込みによる方法では硝酸処理よりも回収量は低いながらも、約30ppmと硝酸処理の75%程度回収することができた。なお、それぞれの溶液のpHは3(硝酸)、5.3(二酸化炭素吹き込み)、5.8(純水)であるため、二酸化炭素吹き込みにより高い回収率が得られたのは酸による効果ではないものと考えられる。また、焼却汚泥懸濁液濃度を変化させたところ、懸濁液濃度の増大にともないリン酸濃度も直線的に増大する傾向が見られた(図2)。
【実施例】
【0021】
溶液中のナトリウムイオン、カルシウムイオン及びマグネシウムイオン濃度を測定した結果を、図3~5に示す。二酸化炭素吹き込みにより、ナトリウムイオン、カルシウムイオン及びマグネシウムイオンは、リン酸とともに水中に溶出することがわかった。
【実施例】
【0022】
次に、溶液中への鉄、マンガン及び銅の溶出量について測定した結果を図6~8に示す。純水中では鉄、マンガン及び銅ともに溶出は見られないが、硝酸処理では15分程度で急激に溶出量は増大し、鉄イオン濃度1.3ppm、マンガンイオン濃度7.5ppm、銅イオン濃度2.6ppmと高い値を示した。それに対し、二酸化炭素吹き込みでは鉄、マンガン、銅イオン濃度は時間が経過してもほとんど増大せず、1時間経過後の溶液中でも鉄イオン濃度0.2ppm、マンガンイオン濃度0ppm(定量限界以下)、銅イオン濃度0.3ppmと、硝酸処理と比較して1/7程度の溶出に抑えることができた。
【実施例】
【0023】
重金属含有量の少ないリン酸塩水溶液を得ることができたので、このろ液を蒸発乾固させたところ、純水及び二酸化炭素吹き込みでは灰白色の粉体が得ることができたが、硝酸処理物では薄桃色に着色した粉体が得られた。そこで、二酸化炭素吹込みにより得られた析出物のX線回折図形を図9に示す。二酸化炭素吹き込み処理後においても残渣のX線回折図形は、多少結晶性が低下するだけで変化は見られなかった。一方、二酸化炭素吹き込み処理後のろ液を蒸発乾固させて得られた析出物は、リン酸一水素カルシウム(DCPA)であることが確認できたが、高角度側へのピークシフトも確認できた。
以上の結果から、表1に示すように、焼却汚泥に二酸化炭素を吹き込むだけの簡便なプロセスで重金属含有量の少ないリン酸塩を回収することが可能であった。
【実施例】
【0024】
【表1】
JP0005664995B2_000002t.gif
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8