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明細書 :流体式動力装置及び流体式発電装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5574408号 (P5574408)
公開番号 特開2011-169289 (P2011-169289A)
登録日 平成26年7月11日(2014.7.11)
発行日 平成26年8月20日(2014.8.20)
公開日 平成23年9月1日(2011.9.1)
発明の名称または考案の名称 流体式動力装置及び流体式発電装置
国際特許分類 F03B  17/06        (2006.01)
FI F03B 17/06
請求項の数または発明の数 12
全頁数 14
出願番号 特願2010-035968 (P2010-035968)
出願日 平成22年2月22日(2010.2.22)
審査請求日 平成25年2月19日(2013.2.19)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】899000057
【氏名又は名称】学校法人日本大学
発明者または考案者 【氏名】中里 勝芳
個別代理人の代理人 【識別番号】100079108、【弁理士】、【氏名又は名称】稲葉 良幸
【識別番号】100080953、【弁理士】、【氏名又は名称】田中 克郎
審査官 【審査官】山本 崇昭
参考文献・文献 米国特許第03995972(US,A)
特開2008-128144(JP,A)
国際公開第2008/123154(WO,A1)
特開2007-297983(JP,A)
調査した分野 F03B 17/06
特許請求の範囲 【請求項1】
流体の所定方向の流れに対して略直角な方向に延在する固定軸に沿って往復運動するように構成された可動部材と、
前記流れ及び前記固定軸の延在方向に対して略直角な方向に延在する翼回動軸を介して前記可動部材に回動自在に取り付けられることにより前記流れに対する迎え角が変化するように構成された少なくとも一つの翼部材と、
前記流れに対する前記翼部材の迎え角を正から負又は負から正に変化させることにより前記翼部材で発生する力を反転させて前記可動部材の往復運動を実現させる迎角反転手段と、
所定方向に延在する回転軸を中心に回転する回転部材と、
前記可動部材の往復運動を前記回転部材の回転運動に変換する動力変換手段と、を備え
前記翼回動軸は、前記翼部材の翼弦上ないし翼弦近傍に配置され、
前記翼回動軸から前記翼部材の前縁までの距離が、前記翼回動軸から前記翼部材の後縁までの距離よりも長くなるように設定されてなる、
流体式動力装置。
【請求項2】
前記可動部材は、往復運動する方向に所定の長さを有する筒状部材であり、
前記筒状部材の長さ方向に沿って複数の前記翼部材が配置され、前記翼部材が連動するように構成される、請求項1に記載の流体式動力装置。
【請求項3】
前記翼回動軸から前記翼部材の前縁までの距離が、前記翼回動軸から前記翼部材の後縁までの距離の1.2~1.5倍の範囲内になるように設定されてなる、請求項1又は2に記載の流体式動力装置。
【請求項4】
前記翼部材の翼根側から翼端側になるに従って、前記翼部材の前縁の位置が前記流れの方向に漸次変化するように構成されてなる、請求項1からの何れか一項に記載の流体式動力装置。
【請求項5】
前記固定軸は、前記流れに対して略直角な方向に延在するように固定配置された円柱部材であり、
前記可動部材は、前記円柱部材の外周にベアリングを介してスライド可能に配置された筒状部材であり、
前記翼部材が前記筒状部材とともに前記円柱部材を中心に回動するのを阻止する翼回動阻止手段が設けられてなる、請求項1からの何れか一項に記載の流体式動力装置。
【請求項6】
前記翼部材の迎え角の上限を設定する迎角調整手段を備える、請求項1からの何れか一項に記載の流体式動力装置。
【請求項7】
前記迎角調整手段は、前記翼部材の迎え角の上限を45度に設定するものである、請求項に記載の流体式動力装置。
【請求項8】
流体の所定方向の流れに対して略直角な方向に延在する固定軸に沿って往復運動するように構成された可動部材と、
前記流れ及び前記固定軸の延在方向に対して略直角な方向に延在する翼回動軸を介して前記可動部材に回動自在に取り付けられることにより前記流れに対する迎え角が変化するように構成された少なくとも一つの翼部材と、
前記流れに対する前記翼部材の迎え角を正から負又は負から正に変化させることにより前記翼部材で発生する力を反転させて前記可動部材の往復運動を実現させる迎角反転手段と、
所定方向に延在する回転軸を中心に回転する回転部材と、
前記可動部材の往復運動を前記回転部材の回転運動に変換する動力変換手段と、
を備え、
前記迎角反転手段は、前記可動部材が往復運動の中心から最も離隔した位置に到達する直前に、前記翼部材の前縁の移動を阻止し前記翼部材を強制的に回動させることにより前記迎え角を反転させるものであり、
前記迎角反転手段は、前記可動部材の往復運動の中心から最も離隔した位置に到達する直前に、前記翼部材の前縁に向けて局所的に流体を供給するように構成された流体供給手段である、
体式動力装置。
【請求項9】
前記流体は、所定の河川又は用水路の流水であり、
前記翼部材は、前記流水の水深方向における力を発生させるように配置されて前記可動部材の前記水深方向における往復運動を実現させるものである、請求項1からの何れか一項に記載の流体式動力装置。
【請求項10】
前記流体は、所定の河川又は用水路の流水であり、
前記翼部材は、前記河川又は用水路の幅方向における力を発生させるように配置されて前記可動部材の前記幅方向における往復運動を実現させるものである、請求項1からの何れか一項に記載の流体式動力装置。
【請求項11】
請求項1から10の何れか一項に記載の流体式動力装置と、
前記流体式動力装置の前記回転部材の回転運動により電力を発生させる発電機と、
を備える、流体式発電装置。
【請求項12】
前記流体式動力装置の前記翼部材の少なくとも一部は、所定の河川又は用水路の流水の内部に配置され、
前記流体式動力装置の前記可動部材、前記回転部材及び前記動力変換手段は、前記流水の水面よりも上方に配置されるものである、請求項11に記載の流体式発電装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、流体式動力装置及び流体式発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、用水路や河川の流水エネルギを回転エネルギに変換する動力装置や、変換した回転エネルギを用いて発電を行う発電装置に関する技術が種々提案され、実用化されている。例えば、用水路等の流水エネルギを利用する動力装置としては、下部に当たる流水のエネルギにより回転する下射式(下掛け)水車が古くから農村等で使用されている。
【0003】
また、現在においては、比較的浅い河川に小型のプロペラ水車を設置し、このプロペラ水車を用いて、河川の流水のエネルギを電気エネルギに変換する技術が提案されている(特許文献1参照)。さらに近年においては、流水によって生じる揚力を利用して翼部材を上下に往復させ、この翼部材の往復運動を回転エネルギに変換する流体式動力装置(特許文献2参照)等が提案されている。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2007-32338号公報
【特許文献2】国際公開第2008/123154号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記した従来の水車や発電装置においては、以下に述べるように、河川や用水路の水深方向の広い領域における流水エネルギを効率良く取り出すことについて、依然として改善の余地があった。
【0006】
下射式水車は、水車の下部のみで流水を受ける構造を有しているため、例えば水深2m程度の用水路の流水エネルギを発電に有効利用するためには、水車の直径を10m程度にする必要があり、装置の作製と設置に多大な労力及び費用を要するという問題がある。
【0007】
特許文献1に記載されたプロペラ水車は、プロペラの直径を大きくすれば水深の深い領域に適用可能であるが、装置の作製と設置に多大な労力や費用を要する。また、このようなプロペラ水車を採用すると、河川に存在する草やビニール袋等の種々の漂流物がプロペラに付着し易いため、付着したゴミを頻繁に除去する作業が必要となる。特許文献2に記載された流体式動力装置は、水面近くに配置した翼部材を上下に往復運動させるものであるため、水深の深い領域における流水エネルギを有効活用することについては依然として改善の余地があった。
【0008】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、作製や設置に要する労力や費用を抑制しながら、水深方向や水平方向の広い領域における流水エネルギを効率良く取り出すことができ、かつ、流水中に存在する物体の影響を受けることの少ない流体式動力装置及びこれを備えた流体式発電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するため、本発明に係る流体式動力装置は、流体の所定方向の流れに対して略直角な方向に延在する固定軸に沿って往復運動するように構成された可動部材と、前記流れ及び固定軸の延在方向に対して略直角な方向に延在する翼回動軸を介して可動部材に回動自在に取り付けられることにより前記流れに対する迎え角が変化するように構成された少なくとも一つの翼部材と、前記流れに対する翼部材の迎え角を正から負又は負から正に変化させることにより翼部材で発生する力を反転させて可動部材の往復運動を実現させる迎角反転手段と、所定方向に延在する回転軸を中心に回転する回転部材と、可動部材の往復運動を回転部材の回転運動に変換する動力変換手段と、を備えるものである。
【0010】
かかる構成を採用すると、翼部材の迎え角を正から負(又は負から正)に変化させることにより、翼部材で発生する力(抗力及び揚力)の方向を反転させて、流体の所定方向の流れに対して略直角な方向における可動部材の往復運動を実現させることができる。そして、このような可動部材の往復運動を回転部材の回転運動に変換することができる。ここで、可動部材が往復運動の方向に延在する長尺部材であるような場合には、この可動部材の延在方向に沿って多数の翼部材を配置することができるので、可動部材を水深方向(又は水平方向)に延在させて往復運動させることにより、水深(水平)方向の広い領域における流体エネルギを効率良く取り出すことができる。また、大型の下射式水車やプロペラ水車が不要となるので、装置の作成や設置に要する労力や費用を抑制することができる。さらに、可動部材の往復運動の際に翼部材の迎え角が変化するので、河川に漂う種々の物体(草やビニール袋等)が翼部材に付着し難く、付着した場合においても除去され易いという利点を有する。
【0011】
前記流体式動力装置において、可動部材として、往復運動する方向に所定の長さを有する筒状部材を採用することができる。かかる場合において、筒状部材の長さ方向に沿って複数の翼部材を配置し、これら翼部材を連動させることが好ましい。
【0012】
かかる構成を採用すると、流体の所定方向の流れに対して略直角な方向に沿って配置した複数の翼部材を連動させることができる。従って、例えば、比較的深い河川や海において、水深方向に多数の翼部材を配置して連動させることができ、水深の浅いところから深いところまでの広い領域における流水エネルギを回転エネルギに変換することができる。また、比較的幅の広い河川や広大な海において、水平方向(川の流れや海流に対して略直角な方向)に沿って多数の翼部材を配置して連動させることができ、広い水平領域における流水エネルギを取り出すこともできる。
【0013】
また、前記流体式動力装置において、翼回動軸を翼部材の翼弦上ないし翼弦近傍に配置し、翼回動軸から翼部材の前縁までの距離を、翼回動軸から翼部材の後縁までの距離よりも長くすることができる。特に、翼回動軸から翼部材の前縁までの距離を、翼回動軸から翼部材の後縁までの距離の1.3倍程度(1.2~1.5倍の範囲内)に設定することが好ましい。
【0014】
かかる構成を採用すると、翼回動軸から翼部材前縁までの距離を、翼回動軸から翼部材後縁までの距離よりも長くしているため、翼部材の上流側部分で多くの流体を受けることができる。従って、可動部材の往復運動中に翼部材の迎え角を一定にすることが可能となる。また、可動部材が往復運動の両端に到達した時点で翼部材の迎え角を逸早く所定の値まで反転させることが可能になり、翼部材に迎角反転直後から大きな揚力及び抗力を発生させることが可能となる。
【0015】
また、前記流体式動力装置において、翼部材の翼根側から翼端側になるに従って、翼部材の前縁の位置を前記流れの下流側に漸次変化させる(後退翼を採用する)ことが好ましい。
【0016】
かかる構成を採用すると、翼部材の翼根側から翼端側になるに従って、翼部材前縁の位置が後退しているため、河川に漂う種々の物体が翼部材の前縁に溜まり難くなる。
【0017】
また、前記流体式動力装置において、前記流れに対して略直角な方向に延在するように固定配置された円柱部材を固定軸として採用するとともに、この円柱部材の外周にベアリングを介してスライド可能に配置された筒状部材を可動部材として採用することができる。かかる場合において、翼部材が筒状部材とともに円柱部材を中心に回動するのを阻止する翼回動阻止手段を採用することが好ましい。
【0018】
かかる構成を採用すると、翼部材が流体の力によって筒状部材(可動部材)とともに円柱部材(固定軸)を中心に回動するのを阻止することができるので、流体に対する翼部材の姿勢を安定させることができる。
【0019】
また、前記流体式動力装置において、翼部材の迎え角の上限を設定する迎角調整手段を採用することができる。このような迎角調整手段を用いて、翼部材の迎え角の上限を例えば45度に設定することができる。
【0020】
かかる構成を採用すると、翼部材の迎え角の上限が調整可能となるため、例えば比較的遅い流れに適用する場合には、迎え角の上限を比較的大きく設定して大量の流体を翼部材で受け止めることにより、抗力優先の大きな力を発生させることができる。一方、比較的速い流れに適用する場合には、迎え角の上限を比較的小さく設定して、揚力優先の大きな力を発生させることができる。従って、流れの状況に応じて効率良く流体エネルギを取り出すことが可能となる。
【0021】
また、前記流体式動力装置において、可動部材が往復運動の中心から最も離隔した位置に到達する直前に、翼部材の前縁の移動を阻止し翼部材を強制的に回動させることにより迎え角を反転させる迎角反転手段を採用することができる。このような迎角反転手段として、例えば、可動部材の往復運動の中心から最も離隔した位置に到達する直前に、翼部材の前縁(又は前縁近傍部分)に当接するように配置された弾性部材を採用することができる。また、可動部材の往復運動の中心から最も離隔した位置に到達する直前に、翼部材の前縁に向けて局所的に流体を供給するように構成された流体供給手段を迎角反転手段として採用することもできる。
【0022】
また、前記流体式動力装置において、河川又は用水路の流水の水深方向における力を発生させるように翼部材を配置して、可動部材の水深方向における往復運動を実現させることができる。かかる場合においては、可動部材の往復運動の方向(水深方向)に対して垂直方向(水平方向)に延在する翼部材を、水深方向に複数枚並べて設けることができる。この際、翼部材のアスペクト比(翼長/平均翼弦長)を6以上に設定することが好ましい。
【0023】
また、前記流体式動力装置において、翼部材のみを所定の河川、用水路、潮流、海流の水面下に配置し、可動部材の水平方向における往復運動を実現させることもできる。
【0024】
かかる構成を採用すると、可動部材及び固定軸は水面上に配置されるので、流水の圧力を受けないだけでなく、漂流物の影響を受け難くなり、可動部材の安定した移動が可能となる。
【0025】
また、本発明に係る流体式発電装置は、前記した流体式動力装置と、この流体式動力装置の回転部材の回転運動により電力を発生させる発電機と、を備えるものである。
【0026】
かかる構成を採用すると、鉛直方向(水深方向)や水平方向(河川や用水路の幅方向)の広い領域における流水エネルギを効率良く取り出して電気エネルギに変換することができる。
【0027】
前記流体式発電装置において、流体式動力装置の翼部材の少なくとも一部を所定の河川又は用水路の流水の内部に配置し、流体式動力装置の可動部材、回転部材及び動力変換手段を河川又は用水路の水面上に配置することができる。
【0028】
かかる構成を採用すると、本発明に係る流体式発電装置を水力発電装置として使用することができる。この際、流体式動力装置を構成する部材の大半を河川又は用水路の水面よりも上方に配置して水との接触を回避することができるので、装置の故障機会を低減させて耐用年数を延ばすことが可能となる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、作製や設置に要する労力や費用を抑制しながら、水深方向や水平方向の広い領域における流水エネルギを効率良く取り出すことができ、かつ、流水中に存在する物体の影響を受けることの少ない流体式動力装置及びこれを備えた流体式発電装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施形態に係る流体式動力装置を備えた水力発電装置(流体式発電装置)の上面図である。
【図2】図1に示す水力発電装置の正面図である。
【図3】図1に示す水力発電装置の翼部材の拡大正面図である。
【図4】図3に示す翼部材をIV方向から見た図である。
【図5】(A)~(E)何れも図1に示す水力発電装置の動作を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。本実施形態においては、本発明に係る流体式発電装置を、用水路に設置される水力発電装置に適用した例について説明することとする。

【0032】
まず、図1~図4を用いて、本実施形態に係る水力発電装置1の構成について説明する。

【0033】
水力発電装置1は、図1及び図2に示すように、所定深さの用水路Fに設置され、用水路F内を流れる水のエネルギ(図1の矢印方向に流れる流水Wのエネルギ)を回転エネルギに変換して電力を発生させるものである。水力発電装置1は、流水Wのエネルギを所定の回転部材30の回転エネルギに変換する流体式動力装置2と、流体式動力装置2の回転部材30の回転エネルギにより電力を発生させる発電機3と、を備えている。

【0034】
流体式動力装置2は、流水Wに対して略直角な方向(図1~図3における左右方向:用水路Fの幅方向)に延在するように配置された円柱部材11に沿って往復運動するように構成された所定長の可動部材10と、可動部材10の長さ方向に沿って複数配置されて可動部材10に取り付けられた翼部材20と、図2~図4における上下方向(用水路Fの流水Wの水深方向)に延在する回転軸31を中心に回転する回転部材30と、を備えている。流体式動力装置2は、流水Wに対する翼部材20の迎え角を変化させることにより可動部材10の往復運動を実現させ、この往復運動を回転部材30の回転運動に変換するものである。

【0035】
円柱部材11は、図示していない固定手段を用いて、図2~図4に示すように用水路Fの流水Wの水面SFよりも上方に固定配置されており、本発明における固定軸として機能する。可動部材10は、往復運動する方向(図1~図3における左右方向)に所定の長さを有し、円柱部材11の外周にベアリング12を介してスライド可能に配置された円筒状部材である。

【0036】
各翼部材20は、用水路Fの流水Wに対して略直角な方向における力(揚力及び抗力)を発生させることが可能な翼型断面形状を有している。本実施形態における各翼部材20は、図2~図4に示すように、翼根側の約4割程度の部分が用水路Fの流水Wの水面SFよりも上方に配置され、翼端側の約6割程度の部分が流水Wの内部(水面SFよりも下方)に配置されている。なお、本発明においては、所定の基準姿勢から翼部材が一方に回動した場合の迎え角を「正」、反対に回動した場合の迎え角を「負」と称することとする。本実施形態においては、翼部材20が図1のR1方向に回動した場合の迎え角を「正」、図1のR2方向に回動した場合の迎え角を「負」と称する。

【0037】
各翼部材20には、図4に示すように、一方の面から他方の面に貫通する貫通孔22が設けられている。そして、各翼部材20の貫通孔22に可動部材10が挿通された状態で、流水Wの流れ方向及び円柱部材11の延在方向に対して略直角な方向(図2~図4における上下方向:流水Wの水深方向)に延在する翼回動軸21を介して、各翼部材20が可動部材10に回動自在に取り付けられている。これにより、流水Wに対する各翼部材20の迎え角が変化するようになっている。このような翼部材20の迎え角の変化により、図1~図3における左右方向(用水路Fの幅方向)における力が発生するため、翼部材20が取り付けられた可動部材10が左右方向の往復運動を行う。

【0038】
三つの翼部材20は、図1に示すように連結部材23によって連結されている。この際、各翼部材20の前縁20aがヒンジ部材24を介して回動可能に連結部材23に取り付けられており、一つの翼部材20が翼回動軸21を中心に回動すると、残り二つの翼部材20も連動するようになっている。このため、全ての翼部材20の迎え角が同時に変化することとなる。なお、本実施形態においては、連結部材23の両端にキャスタ25が取り付けられている。これらキャスタ25は、可動部材10が往復運動の中心から最も離隔した位置に到達する直前に、後述する弾性部材15に当接するように配置されている。

【0039】
可動部材10の前方(上流)側の面及び後方(下流)側の面には、図1に示すように、翼部材20の迎え角の上限を設定するためのストッパ13が複数個設けられている。ストッパ13は、本発明における迎角調整手段として機能するものである。本実施形態においては、可動部材10の長さ方向に沿って配置された三つの翼部材20のうち中央の翼部材20の正負の迎え角の上限を約45度に設定するストッパ13を採用している。三つの翼部材20は連結部材23を介して連結され、全ての翼部材20の迎え角が同時に変化するように構成されているため、中央の翼部材20の迎え角が制限されると残り二つの翼部材20の迎え角も制限されることとなる。

【0040】
各翼部材20の迎え角の上限は、ストッパ13の形状や構造を変更することにより、容易に調整することができる。例えば、流水Wが比較的遅い場合には、各翼部材20の迎え角の上限を比較的大きく設定して抗力優先の大きな力を発生させるようにストッパ13の形状や構造を決定する。一方、流水Wが比較的速い場合には、各翼部材20の迎え角の上限を比較的小さく設定して揚力優先の大きな力を発生させるようにストッパ13の形状や構造を決定する。なお、ストッパ13は翼部材20の表面に当接するものであるため、ゴム等の弾性材料で構成されることが好ましい。

【0041】
本実施形態においては、図1に示すように、翼回動軸21を翼部材20の翼弦上(ないし翼弦近傍)に配置しており、翼回動軸21から翼部材20の前縁20aまでの距離Aを、翼回動軸21から翼部材20の後縁20bまでの距離Bよりも長く設定している。このようにすると、翼部材20の上流側部分で多くの流水Wを受けることができ、翼部材20の迎え角を反転させた直後においても翼部材20で十分な力が発生するため、可動部材10の往復運動を安定させることが可能となる。距離Aは、距離Bの1.3倍程度(1.2~1.5倍の範囲内)に設定されることが好ましい。

【0042】
また、本実施形態においては、図4に示すように、翼部材20の翼根側から翼端側になるに従って、翼部材20の前縁20aの位置を流水Wの下流側に漸次変化させて(後退翼として)いる。このように翼部材20の前縁20aの延在方向が流水Wに対して直角にならないようにしているため、用水路F内に漂う草やビニール袋等が翼部材20の前縁20aに溜まり難くなる。なお、本実施形態においては、水中における翼部材20の動きを容易にするため、翼部材20の比重を略1に設定している。翼部材20の材料としては、外皮部にステンレス等の金属材料を採用し、内部に発泡スチロール等の軽量の樹脂材料を採用することができる。

【0043】
各翼部材20の翼型(断面形状)は、図1に示すように左右対称とされることが好ましい。また、各翼部材20の翼長(図2~図4の上下方向における長さ)、翼弦長及び翼厚は、用水路Fの幅、用水路Fの流水Wの深さ及び速度、水力発電装置1の規模等を勘案して適宜設定することができる。この際、用水路Fの流水Wの水深方向の70%程度にわたって各翼部材20が配置されるように、各翼部材20の翼長が設定されることが好ましい。また、各翼部材20のアスペクト比(翼長/平均翼弦長)は、6以上に設定されることが好ましい。

【0044】
各翼部材20の翼根近傍部分には、図4に示すように、翼回動軸21を中心に回転するキャスタ26が取り付けられている。キャスタ26の外周面は、図2~図4に示すように、円柱部材11の上方に円柱部材11と略平行な方向(図2及び図3における左右方向:用水路Fの幅方向)に延在するように固定配置された角柱部材14の一側面に当接するようになっている。このように設けられたキャスタ26及び角柱部材14により、流水Wの力によって各翼部材20が可動部材10とともに円柱部材11を中心に回動するのを阻止することができる。キャスタ26及び角柱部材14は、本発明における翼回動阻止手段を構成する。

【0045】
用水路Fには、図1に示すように、往復運動を行う可動部材10及び各翼部材20を左右から挟むように相互に平行に配置された一組の板状の弾性部材15が設けられている。弾性部材15は、可動部材10が往復運動の中心から最も離隔した位置に到達する直前に、翼部材20の前縁20a近傍に配置されたキャスタ25に当接するように配置されている。このように配置された弾性部材15により、可動部材10が往復運動の中心から最も離隔した位置に到達する直前に、翼部材20の前縁20aの移動が阻止されて各翼部材20が強制的に回動させられ、流水Wに対する各翼部材20の迎え角が反転(正から負又は負から正に変化)して、各翼部材20で発生する力が反転する。この結果、可動部材10の往復運動が実現することとなる。弾性部材15は、本発明における迎角反転手段として機能する。

【0046】
回転部材30は、図2に示すように、図示されていない支持部材を介して用水路Fの側方に配置されており、図2~図4における上下方向(用水路Fの流水Wの水深方向)に延在する回転軸31を中心に回転することができるようになっている。回転部材30のさらに側方には発電機3が配置されており、回転部材30の回転エネルギが動力伝達部材4を介して発電機3に伝達されることにより、電力が発生するようになっている。本実施形態においては、図2に示すように、流体式動力装置2を構成する可動部材10及び回転部材30と、発電機3と、動力伝達部材4と、を用水路Fの流水Wの水面SFよりも上方に配置することとしている。

【0047】
回転部材30は、一端が回転軸31に固定され回転軸31を中心に回転して他端が円軌道を描く所定長さの回転アーム32と、回転アーム32と一体的に回転軸31を中心に回転する円板状部材33と、を有している。回転アーム32は、図2に示すように、上下に2本平行に配置された状態で回転軸31の両端部に固定され、回転軸31を中心に同時に回転する。回転部材30の回転力は、円板状部材33に取り付けられた動力伝達部材4を介して発電機3に伝達される。また、回転部材30は、連結柱状部材40を介して可動部材10に連結されている。なお、本実施形態における回転部材30はフライホイール(はずみ車)であり、翼部材20の迎え角がゼロ(翼部材20の翼弦方向が水流方向と平行)になるとき、すなわち翼部材20に左右方向の力(可動部材10を往復運動させる力)が働かないときに、その回転慣性力により回転アーム32の回転をスムーズに行わせる役割を担うものである。

【0048】
連結柱状部材40は、可動部材10の往復運動を回転部材30の回転運動に変換する所定長さの柱状部材である。連結柱状部材40の一端は、図1及び図2に示すように、可動部材10の一端近傍に配置された翼部材20の翼回動軸21を介して回動自在に可動部材10に取り付けられている。連結柱状部材40の他端は、回動軸41を介して回動自在に回転アーム32の他端に取り付けられている。連結柱状部材40は、図2に示すように、上下に2本平行に配置された状態で回動軸41を介して回転アーム32に取り付けられている。可動部材10の往復運動は、連結柱状部材40を介して回転部材30の回転運動に変換される。すなわち、連結柱状部材40は、本発明における動力変換手段として機能する。

【0049】
次に、図5(A)~(E)を用いて、本実施形態に係る水力発電装置1の動作について説明する。なお、図5(A)~(E)においては、各部材の動きが明確になるように、一部の部材(ストッパ13、回転アーム32、連結柱状部材40等)の構成を簡略化して図示している。

【0050】
以下の説明においては、図5(A)に示した状態を初期状態として水力発電装置1を稼働させるものとする。初期状態においては、回転部材30の回転アーム32は、流水Wに対してほぼ直角に配置された状態で図5(A)の左側に位置しており、連結柱状部材40もまた流水Wに対してほぼ直角に配置された状態で回転アーム32に重ねられている。また、初期状態において、可動部材10は往復運動の中心から最も離隔するように図5(A)の左側に移動させられており、可動部材10に取り付けられた各翼部材20の迎え角はわずかに負となっている。

【0051】
各翼部材20は翼回動軸21を中心に回動自在に構成されているため、初期状態において各翼部材20に流水Wが当たることにより、各翼部材20の負の迎え角は増大し、図5(B)に示すようにストッパ13により約45度に設定される。このように迎え角が増大した各翼部材20に右向きの力(揚力及び抗力)が作用することとなるため、可動部材10は、図5(B)に示すように右方向に移動し始める。そして、このような可動部材10の右方向への動きが連結柱状部材40を介して回転アーム32に伝達されることにより、回転部材30が回転軸31を中心に回転し始める。

【0052】
この後、図5(C)に示すように、可動部材10が往復運動の中心から最も離隔する右側の位置の近傍まで移動すると、可動部材10の右側端部近傍に取り付けられた翼部材20の前縁20a近傍に配置されたキャスタ25が弾性部材15に当接し、翼部材20の前縁20aの右側への移動が阻止される。一方、可動部材10自体は、図5(D)に示すように連結柱状部材40と回転アーム32とが一直線になる位置(図5(C)に示す角度θが零になるように往復運動の中心から最も離隔する右側の位置)まで、その慣性力により引き続き右側へ移動する。この結果、各翼部材20は翼回動軸21を中心に強制的に回動させられることとなり、図5(D)に示すように流水Wに対する各翼部材20の迎え角が負から正に変化し、各翼部材20で発生する力が反転して、可動部材10は左方向に移動し始める。可動部材10の移動方向が反転する際には、回転部材30はその慣性力により回転を続行する。反転した可動部材10の左方向への動きは、連結柱状部材40を介して回転アーム32に伝達され、回転部材30の回転駆動が続行される。

【0053】
このように左方向へと移動した可動部材10が、図5(E)に示すように往復運動の中心から最も離隔する左側の位置の近傍まで移動すると、可動部材10の左側端部近傍に取り付けられた翼部材20の前縁20a近傍に配置されたキャスタ25が弾性部材15に当接し、翼部材20の前縁20aの左側への移動が阻止される。一方、可動部材10自体は、図5(A)に示すように連結柱状部材40と回転アーム32とが重なる位置(往復運動の中心から最も離隔する左側の位置)まで、その慣性力により引き続き左側へ移動する。この結果、各翼部材20は翼回動軸21を中心に強制的に回動させられ、流水Wに対する各翼部材20の迎え角が正から負に変化し、図5(A)に示す初期状態に戻ることとなる。

【0054】
水力発電装置1は、以上の動作を順次繰り返すことにより、可動部材10の連続的な左右方向における往復運動を実現させ、可動部材10の往復運動のエネルギを回転部材30の回転エネルギに変換し、発電機3で電力を発生させる。

【0055】
以上説明した実施形態に係る流体式動力装置2においては、各翼部材20の迎え角を正から負(又は負から正)に変化させることにより、各翼部材20で発生する力(抗力及び揚力)を反転させて、流水Wに対して略直角な方向における可動部材10の往復運動を実現させることができる。そして、このような可動部材10の往復運動を回転部材30の回転運動に変換することができる。この際、可動部材10の往復運動の際に各翼部材20の迎え角が変化するので、水中に漂う種々の物体(草やビニール袋等)が各翼部材20に付着し難く、付着した場合においても除去され易いという利点を有する。

【0056】
また、以上説明した実施形態に係る流体式動力装置2においては、翼回動軸21から翼部材20の前縁20aまでの距離を、翼回動軸21から翼部材20の後縁20bまでの距離よりも長くしているため、翼部材20の上流側部分で多くの流水を受けることができる。従って、可動部材10の往復運動中に翼部材20の迎え角を一定にすることが可能となる。また、可動部材10が往復運動の両端に到達した時点で翼部材20の迎え角を逸早く所定の値まで反転させることが可能になり、翼部材20に迎角反転直後から大きな揚力及び抗力を発生させることが可能となる。

【0057】
また、以上説明した実施形態に係る流体式動力装置2においては、翼部材20の翼根側から翼端側になるに従って、翼部材20の前縁20aの位置が流水Wの下流側に漸次変化する(翼部材20の前縁20aの延在方向が流水Wに対して直角にならない後退翼を採用している)ため、水中に漂う種々の物体が翼部材20の前縁20aに溜まり難くなる。

【0058】
また、以上説明した実施形態に係る流体式動力装置2においては、翼回動阻止手段(角柱部材14及びキャスタ26)により、各翼部材20が流水Wの力によって可動部材10とともに円柱部材11を中心に回動するのを阻止することができる。従って、流水Wに対する各翼部材10の姿勢を安定させることができる。

【0059】
また、以上説明した実施形態に係る流体式動力装置2においては、ストッパ13により各翼部材20の迎え角の上限が調整可能であるため、例えば比較的遅い流水Wに適用する場合には、迎え角の上限を比較的大きく設定して大量の流水Wを各翼部材20で受け止めることにより、抗力優先の大きな力を発生させることができる。一方、比較的速い流水Wに適用する場合には、迎え角の上限を比較的小さく設定して、揚力優先の大きな力を発生させることができる。従って、流れの状況に応じて効率良く流水エネルギを取り出すことが可能となる。

【0060】
また、以上説明した実施形態に係る水力発電装置1においては、用水路Fの流水Wの水深方向の広い領域における流水エネルギを効率良く取り出して電気エネルギに変換することができる。また、本実施形態に係る水力発電装置1においては、流体式動力装置2を構成する部材の大半(可動部材10や回転部材30)を用水路Fの流水Wの水面SFよりも上方に配置して水との接触を回避することができるので、装置の故障機会を低減させて耐用年数を延ばすことが可能となる。

【0061】
なお、以上の実施形態においては、用水路Fの幅方向(図1~図3における左右方向)における力を発生させるように各翼部材20を配置して、可動部材10の左右方向(水平方向)における往復運動を実現させた例を示したが、各翼部材20の配置や可動部材10の往復運動の方向はこれに限られるものではない。例えば、用水路Fの流水Wの水深方向(図2~図4における上下方向)における力を発生させるように各翼部材20を配置して、可動部材10の水深方向における往復運動を実現させることもできる。また、以上の実施形態においては、水力発電装置1を用水路Fに設置した例を示したが、水力発電装置1を河川や海に設置することもできる。

【0062】
また、以上の実施形態においては、各翼部材20を連結する連結部材23の端部(両端に位置する翼部材20の前縁20a近傍)にキャスタ25を配置し、これらキャスタ25に弾性部材15を当接させて各翼部材20の迎え角を反転させた例を示したが、キャスタ25を採用することなく、両端に位置する翼部材20の前縁20aに弾性部材15を直接当接させて各翼部材20の迎え角を反転させることもできる。

【0063】
また、以上の実施形態においては、迎角反転手段として、相互に平行に配置された一組の板状の弾性部材15を採用した例を示したが、弾性部材15の構成や形状はこれに限られるものではない。また、以上の実施形態においては、迎角反転手段として弾性部材を採用した例を示したが、同様の機能(流水Wに対する各翼部材20の迎え角を反転させることにより各翼部材20で発生する力を反転させて可動部材10の往復運動を実現させる機能)を果たす構成であれば、いかなる構成を採用してもよい。例えば、可動部材10の往復運動の中心から最も離隔した位置に到達する直前に、各翼部材20の前縁20aに向けて局所的に流水を供給するように構成された流体供給手段(例えば図1に破線で示した平面視ハ字状の湾曲板16)を迎角反転手段として採用することもできる。

【0064】
また、以上の実施形態においては、水力発電装置1に本発明を適用した例を示したが、本発明に係る流体式動力装置を風力発電装置に適用することもできる。
【符号の説明】
【0065】
1…水力発電装置(流体式発電装置)
2…流体式動力装置
3…発電機
10…可動部材
11…円柱部材(固定軸)
12…ベアリング
13…ストッパ(迎角調整手段)
14…角柱部材(翼回動阻止手段)
15…弾性部材(迎角反転手段)
16…湾曲板(流体供給手段、迎角反転手段)
20…翼部材
20a…前縁
20b…後縁
21…翼回動軸
26…キャスタ(翼回動阻止手段)
30…回転部材
31…回転軸
40…連結柱状部材(動力変換手段)
A…翼回動軸から翼部材前縁までの距離
B…翼回動軸から翼部材後縁までの距離
F…用水路
F…用水路の流水の水面
W…流水(流体)
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4