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明細書 :酵母抽出分画物を用いた脳機能改善剤および食品

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4867043号 (P4867043)
公開番号 特開2005-213205 (P2005-213205A)
登録日 平成23年11月25日(2011.11.25)
発行日 平成24年2月1日(2012.2.1)
公開日 平成17年8月11日(2005.8.11)
発明の名称または考案の名称 酵母抽出分画物を用いた脳機能改善剤および食品
国際特許分類 A61K  36/06        (2006.01)
A61P  25/28        (2006.01)
FI A61K 35/72
A61P 25/28
請求項の数または発明の数 3
全頁数 10
出願番号 特願2004-022380 (P2004-022380)
出願日 平成16年1月30日(2004.1.30)
審査請求日 平成19年1月25日(2007.1.25)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】595102178
【氏名又は名称】沖縄県
【識別番号】504145308
【氏名又は名称】国立大学法人 琉球大学
発明者または考案者 【氏名】鎌田 靖弘
【氏名】平良 昭
【氏名】宮城 剛
【氏名】上江洲 榮子
【氏名】崎浜 美智子
個別代理人の代理人 【識別番号】110000590、【氏名又は名称】特許業務法人 小野国際特許事務所
【識別番号】100086324、【弁理士】、【氏名又は名称】小野 信夫
審査官 【審査官】田村 直寛
参考文献・文献 特開平08-198754(JP,A)
特開平04-077430(JP,A)
米国特許出願公開第2004/0001861(US,A1)
和漢医薬学会誌,1990年,Vol.7,pp.388-389
醸造論文集,1996年,No.51,pp.1-8
調査した分野 A61K 36/00
CAPLUS/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
サッカロマイセス属に属する酵母の含水エタノール抽出分画物(米のグルテリン由来の成分を含むものを除く)有効成分とする老人性痴呆症、脳機能障害、学習機能低下又は記憶力低下の改善用脳機能改善剤。
【請求項2】
抽出における酵母の添加濃度が、含水エタノール容量に対して0.1~10%乾燥重量濃度である請求項1記載の老人性痴呆症、脳機能障害、学習機能低下又は記憶力低下の改善用脳機能改善剤。
【請求項3】
酵母の添加濃度が、溶媒容量に対して1~5%乾燥重量濃度である請求項2記載の老人性痴呆症、脳機能障害、学習機能低下又は記憶力低下の改善用脳機能改善剤。



発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、学習能力増強および記憶力増強等の脳機能改善作用を有する酵母抽出分画物を用いた製剤、食品に関する。更に詳述すると、本発明は酵母抽出分画物中の脳機能を改善する成分、即ち、脳機能改善組成物と、その脳機能改善組成物を用いて具現化される薬剤である学習能力増強剤、記憶力増強剤、痴呆予防剤、痴呆治療剤、または脳機能改善効果を有する機能性食品等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、日本では急速に高齢化が進んでいる。それに伴い、加齢が原因で生じる様々な疾病、とりわけ神経細胞の衰退や死滅による脳の萎縮(瀰慢性萎縮)、すなわち“痴呆症”は深刻な社会問題の一つとなっている。そのため、学習能力や記憶力等の脳の機能を高める物質の探索が多方面にわたって検討されている。
【0003】
それによると、アルツハイマー病を含む老人性痴呆患者や、熱病などによる脳代謝又は脳機能に障害のある患者など、脳の一部に損傷を負った患者の脳機能回復剤や、或いはさらなる脳機能障害の進行を阻止し得る脳機能改善剤が開発されている。例えば、ホパンテン酸カルシウム、オザグレルナトリウム、ニルバジピン、アニラセタウムなど種々の薬剤が既に承認されており、近年では米国で承認された抗痴呆薬タクリンである。しかしながら、これら薬剤には副作用も生じるものもあり、また医師の処方箋の下で管理されていることから、気軽に誰でも用いることができない。
【0004】
また、これら脳の一部に損傷を負った患者に対して、機能回復訓練を繰り返し行うことによって、残された神経細胞に再び神経回路を張り巡らさせて脳機能を回復させられることが知られている。しかしながら、効果が現れるまでに長時間を要し、かつ強固な意志を必要とするため、多忙な現代においては持続的な実行が極めて困難であり、理想とする回復までには至らないことが多い。
【0005】
一方、栄養学的に従来より研究されている脳機能を改善することは、学習効果をより高める方法である。具体的には、脳細胞に栄養を効率よく吸収させて、細胞の働きを活性化する脳エネルギー代謝改善法や、脳血行を良くして脳細胞に必要な栄養や酸素を十分に補給しようとする脳循環改善法等がある。
【0006】
この様な観点から、特に日常的に摂取しうる種々の天然物由来の成分で、学習機能改善効果を有する天然の食品成分の探索が精力的に行われている。例えば非特許文献1で開示されているトリプトファンは、脳内セロトニン量が増加することで学習能力が改善されたという報告がある。更に非特許文献2に開示されているホスファチジルコリンは、脳内のアセチルコリンを増加させマウスの記憶改善をすることが報告されている。それ以外にも多数の学術文献報告がある。
【0007】
特許においても特許文献1に各々開示されているドコサヘキサエン酸は、ラットのY字迷路実験で効能が報告されており、また特許文献2に開示されている蕎麦種子に含まれるポリフェノール化合物が脳中プロテインキナーゼCの活性を促し、結果として八方放射状迷路による学習能力改善効果があると報告されている。更に特許文献3に開示されている卵黄プラズマの浮上画分が、ラットの水迷路試験で効果が見られたと報告している。
【0008】
このように脳機能改善に関してこれまで多くの報告がある。しかしながら、これらの素材又は成分は、その調製や加工の煩雑さに時間を要し、結果として経済的にも負荷がかかるものが多い。
【0009】
一方、酵母を用いた医薬品や食品開発は多くの報告があり、代表的なものとして医薬品では整腸剤等がある。また近年は健康ブームの潮流に乗ってビール酵母をダイエット食品として開発している。例えば特許文献4に開示されているミネラル吸収促進剤ならびに貧血改善剤などが報告されている。
【0010】
また、特許文献5に開示されている乳酸菌発酵乳、乳酸菌と酵母との強制発酵乳は、脳機能改善、学習能力増強および記憶力増強作用を有するとの報告がある。しかしながら、この報告では酵母の作用としての脳機能改善ではなく、乳酸菌が有する作用として報告されている。すなわち、酵母は乳酸菌と共生発酵する際の、香気として付与するためのみに用いられている。
【0011】
以上のような観点から、脳機能改善が生体に対して発現できるように設計し、加工された安全でより安価な医薬品や食品の開発が社会的に要望されている。それは高齢化の進行に伴い、当該機能を有する製品開発がますます強く要望されていた。
【0012】

【特許文献1】特開平7-17855(第1~第12頁)
【特許文献2】特開2000-53575(第1~第7頁)
【特許文献3】特開2003-300891(第1~第6頁)
【特許文献4】特開2002-255832(第1~第7頁)
【特許文献5】特開平9-23848(第1~第6頁)
【非特許文献1】J. Neurochem., 41(Suppl.), p104, 1983
【非特許文献2】J. Nutiriton., 125(6), pp1485-1489, 1995
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
高齢化の進行に伴い、脳機能改善が生体に対して発現できるように設計し、加工された安全でより安価な医薬品や食品の開発が要望されている。本発明の課題は、学習機能改善効果及び記憶力改善作用等の脳機能改善作用を有する、抽出分画物中の成分を有効成分とした、安全かつ安価な脳機能改善剤、脳機能改善作用成分を含む食品を提供することにある。具体的には以下の3点である。
学習機能改善効果及び記憶力改善作用等の脳機能改善作用の成分を有すること。
安全性の点で満足できるものであること。
経済性の点で満足できるものであること。
【0014】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、醸造やパン等に古くから用いられてきた微生物である酵母抽出分画物を用いることで、脳機能改善作用を有する成分を提供する。その際、抽出分画に関して条件を定めたことで、安全かつ安価な脳機能改善剤、脳機能改善剤を含む食品を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、天然起源の生物資源について、それらが有する生理作用について鋭意探索を行った。その結果、学習機能改善効果及び記憶力改善作用等の脳機能改善作用を有する請求項1記載の脳機能改善剤および食品を見出し、更に抽出条件も定め、本発明を完成した。
【0016】
本発明の脳機能改善作用を有する脳機能改善剤は、化学合成薬剤に比べて効き目が穏やかであり、また自然界から、醸造等に古くから用いられてきた微生物である酵母の抽出分画物を用いているため安全性が高い。
【0017】
すなわち本発明は、酵母抽出分画物中の成分を有効成分とすることを特徴とする脳機能改善剤および食品を提供するものである。
【0018】
酵母の抽出分画物中成分が、脳機能改善作用を有するような抽出条件として、酵母の抽出溶媒は、水、無水或いは含水有機溶媒として1価アルコール、多価アルコールまたはその誘導体、ケトン、エステル、エーテル、石油エーテル、脂肪族炭化水素またはハロゲン化物、芳香族炭化水素より選択された1種または2種以上であることを特徴とする。
【0019】
抽出溶媒は、好ましくは水と極性溶媒の混合溶媒であることを特徴とする。
【0020】
酵母の抽出分画物中成分が、脳機能改善作用を有するような抽出条件として、酵母の添加濃度は、溶媒容量に対して0.1~10%乾燥重量濃度であることを特徴とする。
【0021】
添加濃度は、溶媒容量に対して好ましくは1~5%乾燥重量濃度であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
これまで知られている脳機能改善に用いる薬剤には、副作用も生じるものもあり、また医師の処方箋の下で管理されていることから、気軽に誰でも用いることができない。また、脳機能改善剤に用いるこれまでの天然物または天然成分は、その調製や加工の煩雑さに時間を要し、結果として経済的にも負荷がかかるものが多い。
【0023】
一方、醸造やパン等に古くから用いられてきた微生物である酵母は、酵母が生産する成分を利用した製品が主である。近年では、健康ブームの潮流に乗って様々な機能性食品が報告されている。酵母を用いた脳機能改善を有するこれまでの報告は、特開平9-23848(第1~第6頁)公報に開示されている、脳機能改善、学習能力増強および記憶力増強作用を有する機能性食品が存在する。しかしながら、この報告では酵母の作用としての脳機能改善ではなく、乳酸菌が有する作用として報告されている。すなわち、酵母は乳酸菌と共生発酵する際の、香気として付与するためのみに用いられている。
【0024】
本発明の酵母抽出分画物を用いた脳機能改善剤および食品は、化学合成薬剤に比べて効き目が穏やかであり、また自然界から、乳酸菌と共に人間にとって古くから利用してきた酵母抽出分画物のため、安全性が極めて高い。また、酵母はその用途によっては最終的に産業廃棄物となる場合がある。例えばビール酵母などである。そのために、原料コストが限りなく安価である。更に抽出条件も定めたことで、学習能力増強および記憶力増強等の脳機能改善作用を有する酵母抽出分画物を用いた、安全かつ安価な製剤、食品を提供することができる。
【0025】
具体的には、請求項1の発明により、酵母抽出分画物中の成分を有効成分とすることを特徴とし、請求項2,3,4,5の発明により、酵母抽出分画物中成分が、脳機能改善作用を有するような抽出溶媒条件と酵母の添加濃度を定めたことが特徴である。この事により、アルツハイマー病を含む老人性痴呆症の人、熱病などによる脳代謝又は脳機能に障害のある人、脳の一部に損傷を負い、脳機能回復を期待する人、最近、物忘れが気になる人や老化により身体機能が低下し、疾病のリスクファクターが増加している高齢者、また日頃から健康維持を心がけている人向けの、請求項1記載の脳機能改善剤および食品として最適である。したがって、医薬、機能性食品、食品添加物として使用することにより、老人性痴呆症、学習能力や記憶力低下などの症状の予防・遅延に極めて有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明の脳機能改善剤、脳機能改善作用成分を含む食品は、学習機能改善効果及び記憶力改善作用等の脳機能改善作用を有する、酵母抽出分画物中の成分を有効成分としたことを特徴とする。
【0027】
前記酵母抽出分画物を製造する際に用いる酵母としては、サッカロマイセス属、カンディダ属、クルイベロマイセス属等に属する菌株を用いることができる。さらに詳しくは、サッカロマイセス・カルルスベルゲンシス(Sacchoromyces carlsbergensis)、サッカロマイセス・パストリアヌス(Sacchoromyces pastorianus)、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、カンディダ・ウチルス(Candida utilis)、クルイベロマイセス・マルキサナス・バー・ラクティス(Kluyveromycesmarxianus var. lactis)等に属する菌株を用いることができる。
【0028】
前記酵母の中でも、その経済性、環境調和性を考慮した場合、醸造製造過程で廃棄される酵母あるいは酵母を含む粕を用いることが好ましい。
【0029】
前記の醸造製造過程で廃棄される酵母あるいは酵母を含む粕は、生で用いてもよいが、安全性、保存性を考慮した場合、乾燥する方が好ましく、その場合の乾燥方法は温熱風乾燥でも噴霧乾燥でもよい。また乾燥温度は特に限定しないが、経済性を考えて70℃以上が好ましい。
【0030】
上記で挙げた酵母抽出分画物は単独で用いることもできるし、既存の脳機能改善作用を有する成分の1種類以上を組み合わせて用いることもできる。この場合、相加的効果はもちろんのこと、相乗効果も有する。ここで言う抽出分画物とは、抽出液もしくは溶媒を除去した抽出乾燥物のことである。また、請求項1記載の脳機能改善剤および食品は、抽出分画物をそのまま或いは濃縮や希釈をして使用することもできるし、更にその抽出残滓、抽出残滓乾燥物等、いかなる状態のものでも使用することができる。その際、必要に応じて細断または粉砕して用いることができる。
【0031】
請求項1記載の酵母抽出分画物を常法にしたがって、痴呆症、脳機能障害、学習機能低下、記憶力低下の予防剤、遅延剤、治療剤、食品、食品添加物として利用することができる。請求項2,3,4,5記載の抽出分画物中成分が、脳機能改善作用を有するような抽出条件は以下の通りである。
【0032】
請求項1記載の酵母抽出分画物中の成分が、脳機能改善作用を有するような条件として、抽出溶媒は、水、無水或いは含水有機溶媒として1価アルコール、多価アルコールまたはその誘導体、ケトン、エステル、エーテル、石油エーテル、脂肪族炭化水素またはハロゲン化物、芳香族炭化水素である。これらは1種で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。具体的な溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n-プロピルアルコール、イソブタノール、n-ヘキサノール、メチルアミルアルコール、2-エチルブタノール、n-オクタノール等の炭素数が1~8の1価アルコール;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の炭素数が2~6の多価アルコール或いはその誘導体;アセトン、メチルアセトン、エチルメチルケトン、イソブチルメチルケトン、メチル-n-プロピルケトン等の炭素数が3~6のケトン;酢酸エチル、酢酸イソプロピル等の炭素数が4~5のエステル;エチルエーテル、イソプロピルエーテル、n-ブチルエーテル等の炭素数が4~8のエーテルや石油エーテル;n-ブタンn-ペンタン、n-ヘキサン、n-オクタン等の炭素数が4~8脂肪族炭化水素;四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロエタン、トリクロロエチレン等の炭素数が1~2の脂肪族炭化水素のハロゲン化物;ベンゼン、トルエン等の炭素数6~7の脂肪族炭化水素等であり、これらは1種で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの溶媒のうち、好ましくは水と極性溶媒の混合溶媒であることを特徴とする。
【0033】
請求項1記載の酵母抽出分画物中の成分が、脳機能改善作用を有するための水と極性溶媒の混合溶媒としては、特に限定されるものではないが、食品類の開発をするためにも、含水エタノールが好ましく、またその場合、水を50%以上含む混合溶媒であることがより好ましい。
【0034】
請求項1記載の酵母抽出分画物中の成分が、脳機能改善作用を有するような条件として、抽出濃度は、生物素材の水分含量と存在密度、それに抽出溶媒の存在密度の割合を考慮した至適濃度が存在するため、溶媒容量に対して0.1~10%、好ましくは1~5%乾燥重量濃度である。
【0035】
請求項1記載の酵母抽出分画物中成分が、脳機能改善作用を有するような温度条件としては室温程度でもよく、また用いられる溶媒の沸点付近で還流抽出してもよい。また抽出時間は10分~12時間、好ましくは30分~6時間である。この抽出操作は数回繰り返すことにより、更に高濃度のものが得られる。
【0036】
請求項1記載の酵母抽出分画物は、そのまま或いは希釈して使用することもできるし、更に抽出溶媒を除去後、使用することもできる。例えば水、含水エタノールおよびエタノールで抽出する場合を除いては、食の安全性からも、抽出物から抽出溶媒を完全に除去して使用する。
【0037】
請求項1記載の酵母抽出分画物を用いた脳機能改善剤、食品は、上記の方法により得られた酵母抽出分画物を更に脱色、脱臭、活性向上等を目的として精製する場合、その精製方法は特に限定されず、精製方法としては、例えば、活性炭処理、樹脂吸着処理、イオン交換樹脂、液・液向流分配等の方法が挙げられ、例えば、液—液分配や液体カラムクロマトグラフィー等を用いる事ができる。液体クロマトグラフィーによる精製処理の場合には、カラムに充填する充填剤として、イオン交換樹脂、アルミナ、シリカゲル、アガロースゲル等を用いることができる。なお、液体カラムクロマトグラフィーによる精製処理は、常法に従って行えばよい。
【0038】
請求項1記載の酵母抽出分画物を製剤化並びに添加物にする場合には、希釈剤と共に、常法に従った充填剤、増量剤、付湿剤、崩壊剤、表面活性剤、結合剤、吸収促進剤、滑沢剤、乳化剤、界面活性剤、酸化防止剤、防腐剤、着色料、香料、甘味料、溶剤、賦形剤などを用いて製剤化され、通常用いられているものを使用することができるが、保存や取扱いを容易にするために、薬学的に許容され得るキャリアーその他任意の助剤を添加することができる。その例としては、デンプン、デキストリン、シクロデキストリン、乳糖、ショ糖、マンニトール、カルボキシメチルセルロース、コーンスターチ、アカシアゴム、リン酸カルシウム、アルギン酸塩、珪酸カルシウム、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース誘導体、トラガカント、ゼラチン、ヒドロキシ安息香酸メチル、タルク、ステアリン酸マグネシウム等の固体流体担体;蒸留水、生理食塩水、ブドウ糖水溶液、エタノール等のアルコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等の液体担体;各種の鉱油、動植物油、白色ワセリン、パラフィン、ロウ類等の油性担体等が挙げられる。製剤化の際には、必要に応じて脳機能改善を有する他の物質を添加してもよい。
【0039】
本発明の製剤は、上記の如くして得られた請求項1記載の酵母抽出分画物を、必要に応じて公知の医薬用担体と組合せ、錠剤、丸剤、散剤、液剤、粉剤、シロップ剤、懸濁剤、乳剤、顆粒剤、カプセル剤等の経口投与剤が挙げられる。またその場合の形態としては、顆粒状、細粒状、錠状、丸状、カプセル状、噴霧状、溶液状、懸濁状、軟膏状、ゲル状、ペースト状、クリーム状などの状態で用いてもよい。
【0040】
製剤の投与量・投与方法は特に限定されず、各種製剤形態、症状、患者の年齢、性別、その他の条件に応じて従来公知の方法のなかから適宜選択すればよく、通常、1日あたり体重1kgに対して精製物であれば10~2,000mg、特に30~500mgの割合で投与するのが好ましい。
【0041】
食品の調製に使用することのできる食品原料は、特に限定されず、その製品の種類に応じて適宜選択することができるが、その例としては、ブドウ糖、果糖、ショ糖、マルトース、ソルビトール、ステビオサイド、ルブソサイド、コーンシロップ、乳糖、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、L-アスコルビン酸、dl-α-トコフェロール、エリソルビン酸ナトリウム、グリセリン、プロピレングリコール、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、アラビアガム、カラギーナン、カゼイン、ゼラチン、ペクチン、寒天、ビタミンB類、ニコチン酸アミド、パントテン酸カルシウム、アミノ酸類、カルシウム塩類、色素、香料、保存剤等通常の食品原料として使用されているものを挙げることができる。
【0042】
請求項1記載の酵母抽出分画物を、食品や食品添加物として使用する場合、添加対象物の風味や使用感に対する悪影響が少ないので、広範な添加対象物に対して使用することができる。そのため添加対象物は特に限定されず、適当な食品や食品添加物の原料と組み合わせて、様々な食品に利用可能である。その例として清涼飲料、炭酸飲料、栄養飲料、果実飲料、牛乳、乳清飲料、乳酸菌飲料等の飲料(これら飲料の濃縮液および調製用粉末を含む)、アイスクリーム、アイスシャーベット、かき氷等の氷菓;そば、うどん、はるさめ、ぎょうざの皮、シュウマイの皮、中華麺、即席麺等の麺類;飴、キャンディー、ガム、チョコレート、スナック菓子、ビスケット、ゼリー、ジャム、クリーム、焼き菓子等の菓子類;かまぼこ、ハム、ソーセージ等の水産・畜産加工食品;加工乳、発酵乳等の乳製品;サラダ油、天ぷら油、マーガリン、マヨネーズ、ショートニング、ホイップクリーム、ドレッシング等の油脂および油脂加工食品;ソース、たれ等の調味料;錠剤状、顆粒状等の様々な形態の健康・栄養補助食品類;その他スープ、シチュー、サラダ、惣菜、漬物等が挙げられる。
【0043】
飲食品への請求項1記載の酵母抽出分画物の配合量は、飲食品や化粧品の種類、及び抽出物の生理活性等によって適宜調製することができるが、好適な配合率は、未精製の標準的な抽出物の乾燥物に換算して、飲食品の場合には通常約0.01~40重量%であり、清涼飲料の場合、飲料の総重量当たり、0.1~30%重量%、好ましくは0.5~5%重量%含めることができる。また麺類の場合、0.01~40%重量%、好ましくは1~10%重量%含めることができる。化粧品の場合には通常約0.001~5%重量%である。
【0044】
食品、医薬品、医薬部外品、化粧品等に一般的に用いられる各種成分としては、アレルギー抑制剤、アトピー性皮膚炎抑制剤、かゆみ抑制剤、肌荒れ抑制剤、低級アルコール、多価アルコール、香料、清涼剤、動植物性多糖類及びその分解物、動植物性糖蛋白質及びその分解物、微生物培養代謝成分、アミノ酸及びその塩、脱臭剤、乳化剤等と共に配合し、併用して用いることができる。
【実施例1】
【0045】
以下、本発明の実施例について動物を用いた学習試験結果の説明する。
ビール醸造で廃棄された酵母を70℃、7分間の温風乾燥したものを乾燥酵母粉末とし、抽出操作に供した。抽出操作は振とう抽出を使用した。すなわち粉末化した乾燥酵母100gを1,500mlの50%エタノールに混合し、振とう数毎分290回、抽出時間2日間の条件で振とう抽出を行い、酵母抽出液1,250mlを得た。
【実施例2】
【0046】
(学習試験1)
24週齢のddY系雌マウスを購入し、環境に慣らしながら高週齢のマウスを作成するために、48週齢まで予備飼育し実験に供した。酵母群、酵母抽出液低用量群、酵母抽出液高用量群にわけて行った。飼育環境は、室温24~26℃、湿度50~60%とし、自然採光とした。飼料組成は全て市販粉末飼料のCE-2に添加する方法で行った。すなわち、酵母群は乾燥酵母粉末を乾燥重量10%添加し、酵母抽出液低用量群は実施例1で得られた酵母抽出液を37.5ml/kgで添加し、酵母抽出液高用量群は酵母抽出液を375ml/kg添加した。いずれの酵母抽出液群もエタノールを揮発させた後、試験に供した。摂取期間は7週間で、その間、週に1度、体重と飼料摂取量・飲水量を測定した。摂取期間終了後、ステップダウン型回避学習テストを行った。統計手法はSASを用い、ダンカンの新多重範囲検定法を用いた。
【0047】
図1に示されるように、各実験食群では対照群と比較してステップダウン型回避学習テストによる電気刺激回数1~3回目の達成率が上昇していた。特に、電気刺激回数が1および2回目時では、対照群と比較して酵母抽出高用量群で有意(P<0.01)に上昇した(図1に示す各電気刺激回数ごとのアルファベットは、文字が異なる場合にのみ、その群間で有意差があること示している。)。電気刺激回数が2回目時では、対照群と比較して酵母群、酵母群と比較して酵母抽出低用量群、酵母抽出低用量群と比較して酵母抽出高用量群の方が上昇した。その傾向は電気刺激回数が3回目目まで見られた。これらの結果より、酵母抽出分画物の成分を経口摂取することにより、短期記憶試験の初期の段階において学習機能が向上することが判明した。また、この結果より、酵母抽出分画物中の成分が、脳機能改善作用を有するような抽出条件として、酵母の抽出溶媒は、エタノールのような水と極性溶媒の混合物がより好ましいとすることが適正であると判断した。【0048】
(学習試験2)
学習試験1の終了後、実験食を各々同一マウスに与えながら1週間飼育を行った後、2回目のステップダウン型回避学習テストを行い、学習試験1の結果に対する2回目の学習効果を調べた。
【0049】
図2は、学習試験1で得られた1回目のステップダウン型回避学習テスト時の達成率に対する2回目のステップダウン型回避学習テストによる達成率の変化から、使用したマウスの匹数で記憶していたマウスの匹数を割って、それに100を乗じて記憶率を算出した結果のグラフである。その結果、長期記憶率は、対照群と比較していずれの実験食群でも上昇していた。更にその記憶率は、酵母群と比較して酵母抽出群の方でより上昇していた。これらの結果より、酵母中の成分を経口摂取することにより、長期記憶試験において学習機能が向上することが判明した。また、この結果からも、酵母抽出分画物の成分が、脳機能改善作用を有するような抽出条件として、酵母の抽出溶媒は、エタノールのような水と極性溶媒の混合物がより好ましいとすることが適正であると判断した。
【実施例4】
【0050】
(学習試験3)
学習試験2の終了後、更に実験食を各々同一マウスに与えながら学習試験2の終了翌日から水慣れを2日間させ、1日1回、3回の水迷路型学習テストを行った。
【0051】
図3は、水迷路学習テストにおける潜時比率の変化を示したものである。対照群と比較して酵母群では変化が見られなかったが、酵母抽出群では低用量、高用量のいずれも、対照群と比較して、水迷路学習テストにおける潜時比率が段階的に低下した。その低下割合は3回の比率による1次関数とその相関係数を求めた結果、対照群ではy = -17.004x + 116(R2 = 0.9974)、酵母群ではy = -16.603x + 109.53(R2 = 0.8801)、酵母抽出低用量群ではy = -21.447x + 117.98(R2 = 0.9808)、酵母抽出高用量群ではy = -19.691x + 112.61(R2 = 0.9116)となった。傾きが大きいほど学習効果が向上したと判断できることから、酵母抽出分画物の成分が、脳機能改善作用を有するような抽出条件として、酵母の抽出溶媒は、エタノールのような水と極性溶媒の混合物がより好ましいとすることが適正であると判断した。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】ステップダウン型回避学習テストによる達成率の変化
【図2】水迷路学習テストにおける潜時比率の変化
【図3】ステップダウン型回避学習テストによる記憶率の変化
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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