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明細書 :チロシナーゼ活性阻害剤およびこれを含有する美白化粧料

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4686720号 (P4686720)
公開番号 特開2007-191427 (P2007-191427A)
登録日 平成23年2月25日(2011.2.25)
発行日 平成23年5月25日(2011.5.25)
公開日 平成19年8月2日(2007.8.2)
発明の名称または考案の名称 チロシナーゼ活性阻害剤およびこれを含有する美白化粧料
国際特許分類 A61K  31/085       (2006.01)
A61K  36/899       (2006.01)
A61P  43/00        (2006.01)
A61K   8/97        (2006.01)
A61K   8/34        (2006.01)
A61Q  19/00        (2006.01)
C12N   9/99        (2006.01)
FI A61K 31/085
A61K 35/78 U
A61P 43/00 111
A61K 8/97
A61K 8/34
A61Q 19/00
C12N 9/99
請求項の数または発明の数 5
全頁数 7
出願番号 特願2006-011100 (P2006-011100)
出願日 平成18年1月19日(2006.1.19)
審査請求日 平成19年3月13日(2007.3.13)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504145308
【氏名又は名称】国立大学法人 琉球大学
発明者または考案者 【氏名】高良 健作
【氏名】照屋 潤二郎
個別代理人の代理人 【識別番号】110000590、【氏名又は名称】特許業務法人 小野国際特許事務所
【識別番号】100086324、【弁理士】、【氏名又は名称】小野 信夫
審査官 【審査官】清野 千秋
参考文献・文献 Organic Letters,2004年,6(19),3297-3300
Journal of Natural Products,1995年,58(1),138-139
調査した分野 A61K 31/00
A61K 8/00
CA/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
次の式(I)
【化1】
JP0004686720B2_000003t.gif
で表される化合物を有効成分とするチロシナーゼ活性阻害剤。
【請求項2】
ラム酒粕から得られたものである請求項第1項記載のチロシナーゼ阻害活性剤。
【請求項3】
ラム酒粕を、スチレン系合成吸着剤処理、シリカゲルカラムクロマトグラフ処理、ゲルろ過処理および液体クロマトグラフ処理から選ばれる処理の2以上を組み合わせた精製処理により得られたものである請求項第1項または第2項記載のチロシナーゼ阻害活性剤。
【請求項4】
請求項第1項ないし第3項の何れかの項記載のチロシナーゼ阻害活性剤を含有する皮膚外用剤。
【請求項5】
請求項第1項ないし第3項の何れかの項記載のチロシナーゼ阻害活性剤を含有する美白化粧料。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、チロシナーゼ活性阻害剤に関し、更に詳細には、メラニン生成に関係するチロシナーゼを効果的に阻害するチロシナーゼ阻害剤およびこれを利用する美白化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、皮膚の日焼けや、シミ、そばかす等を防ぐ目的で、数多くの美白化粧料が市販されている。これらの美白化粧料には、色素物質であるメラニンの生成を防ぐ成分が含まれているが、その多くは、メラニン生成の律速酵素であるチロシナーゼを阻害するチロシナーゼ活性阻害物質である。
【0003】
このチロシナーゼ阻害物質の代表的なものとしては、コウジ酸やアルブチン等が知れている。このうち、コウジ酸は、コウジカビの培養発酵物中に生産されるものであり、そのチロシナーゼ阻害活性は高いが、経口摂取による発癌性の報告や、白血球減少作用等の副作用の報告もあり、安全性が十分に確保されているとは言い難いものである。また、アルブチンは、ウワウルシやコケモモの抽出物中から得ることができる化合物で、安全性はほぼ確認されているものであるが、そのチロシナーゼ阻害活性は、コウジ酸に比べ弱いという問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、優れた活性を有しながら安全性の高い、新しいチロシナーゼ活性阻害剤の開発が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検索を行った結果、ラム酒製造後の廃棄物であるラム酒粕は、チロシナーゼ阻害活性を有することを見出した。そして更に研究を進めたところ、このチロシナーゼ阻害活性を担う物質を見出し、本発明を完成した。
【0006】
すなわち本発明は、次の式(I)
【化3】
JP0004686720B2_000002t.gif
で表される化合物を有効成分とするチロシナーゼ活性阻害剤である。
【0007】
また本発明は、ラム酒粕を、スチレン系合成吸着剤処理、シリカゲルカラムクロマトグラフ処理、ゲルろ過処理および液体クロマトグラフ処理から選ばれる処理の2以上を組み合わせた精製処理に付すことを特徴とする上記式(I)で表される化合物の製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明のチロシナーゼ活性阻害剤の有効成分である、化合物(I)は、例えば、広く使用されているアルブチンと比べ、より強いチロシナーゼ活性阻害作用を有する物質である。しかも、古くから食品として利用されているサトウキビから得られるものであるため、安全性も高いものである。
【0009】
しかも、ラム酒粕という廃棄物中から得ることができるため、コストもきわめて低いものである。
【0010】
従って、本発明のチロシナーゼ活性阻害剤は、美白成分として、皮膚外用剤、美白化粧料などに利用することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の、前記式(I)で得られる化合物は、インペラネン(Imperanene;4-hydroxy-[2-(4-hydroxy-3-methoxyphenyl)ethenyl]-3-methoxy-benzenpropanol)と命名された公知化合物である。
【0012】
過去にインペラネンのグルコース配糖体が黒糖から分離されているので、上記化合物は、サトウキビに由来するインペラネン配糖体がラムの製造中に加水分解されることにより生成され、ラム酒粕に含まれたと考えられる。
【0013】
上記化合物(I)(インペラネン)は、その性質を考慮の上、適切な各種カラムクロマトグラフィーを組み合わせることにより、例えば、スチレン系合成吸着剤処理、シリカゲルカラムクロマトグラフ処理、ゲルろ過処理および液体クロマトグラフ処理から選ばれる処理の2以上を組み合わせた精製処理に付すことによりラム酒粕から分離取得することができる。このようなラム酒粕から化合物(I)を得るための具体的な手段の例を示せば次の通りである。
【0014】
まず、ラム酒粕を遠心分離し、その上清をろ液として得る。このろ液を、スチレン系合成吸着剤に吸着させた後、適当な溶媒で溶出する。使用するスチレン系合成吸着剤としては、アンバーライト(Amberlite)XADタイプ(ローム・アンド・ハース社製)や、HPタイプ(三菱化成製)のものを挙げることができ、溶出溶媒としては、エタノール、メタノール等の低級アルコールやアセトン、あるいはこれと水との混合液を挙げることができる。
【0015】
次いで、上記のようにして得られた画分のうち、チロシナーゼ阻害活性が強い画分を選択し、これをシリカゲルカラムに吸着させた後、適当な溶媒により溶出させる。このクロマトグラフ処理において、使用する溶媒としては、例えば、酢酸エチル-メタノール、クロロホルム-メタノール等の混合溶媒を挙げることができ、これらは段階的ないしはグラジュエントで混合比を変えたものを使用することが好ましい。
【0016】
更に、上記シリカゲルカラム処理により得られた画分のうち、チロシナーゼ阻害活性が強い画分を選択し、これをゲルろ過する。このゲルろ過においては、トヨパール(TOYOPEARL)HWタイプ(東ソー社製)、セファデックス(Sephadex)LHタイプ(ファルマシア社製)等が使用され、また、溶媒としては、メタノール等の低級アルコールと水の混液が使用される
【0017】
最後に、上記のゲルろ過処理により得られた画分のうち、チロシナーゼ阻害活性が強い画分を選択し、これを液体クロマトグラフにより処理する。この液体クロマトグラフにおいては、LiChroprepタイプ(メルク社製)等の逆相系カラムが使用され、溶媒としては、メタノール等の低級アルコールと水の混液が使用される。
【0018】
なお、本発明の化合物(I)は、OD450付近に吸収を有するので、各工程において紫外部の吸光度を測定することでモニターすることが可能である。
【0019】
以上のようにして得られる本発明のチロシナーゼ活性阻害剤は、常法に従い、皮膚外用剤や美白化粧料に配合して使用することができる。
【0020】
例えば、美白化粧料とする場合は、公知の化粧料基剤に、例えば、0.0001ないし10質量%程度配合し、常法に従って、化粧液、乳液、クリーム、ペーストとすればよい。
【実施例】
【0021】
次に実施例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に何ら制約されるものではない。
【0022】
参 考 例 1
ヒト由来粗チロシナーゼによる阻害活性測定法
(1)粗チロシナーゼ溶液の調製
ヒト由来チロシナーゼは、悪性黒色腫由来の永代色素生産株HMV-IIから調製した。すなわち、ダルベッコ変法イーグル培地とハムF12培地の等量混合培地(DMEM/Hum F-12)に10%ウシ胎児血清を添加し、5%炭酸ガス濃度、37℃にて継代および培養を行った。3×10個の密度で90mmデッシュに細胞を蒔き、これに100μMの終濃度のドーパを添加し、10日間培養した。5日目および8日目に100μMの終濃度のドーパを含む培地で交換を行った。
【0023】
培養細胞はトリプシン処理にて回収し、1×10個の細胞に対して1%Triton X-100を含むPBS(-)を1ml加え、4℃下で60分間超音波処理を行ない細胞を破壊した。この細胞破壊液は12000rpm、30分間遠心分離し、さらに0.05Mリン酸緩衝液(pH 6.8)を等量加え、12000rpmで10分間遠心分離を行い、そのうちの上清を粗チロシナーゼ溶液として用いた。
【0024】
(2)チロシナーゼ阻害活性
チロシナーゼ阻害活性は96穴マイクロプレートを用いて行った。各濃度に調製した試料溶液50μlと、1.5mg/mlのl-ドーパ溶液40μlおよび0.05Mリン酸緩衝液(pH 6.8)100μlを加え、攪拌後、37℃で10分間プレインキュベートを行ない、粗チロシナーゼ溶液50μlを加えて攪拌した。その後、37℃で90分間反応を行い、マイクロプレートリーダーにて470nmの吸光度を測定した。
【0025】
実 施 例 1
ラム酒粕からチロシナーゼ阻害物質の取得方法
材料には2004年11月25日に、ヘリオス酒造株式会社にておこなったラム酒蒸留後に残るラム酒粕を原料として用いた。このラム酒粕は分離操作を行うまで冷凍にて保存した。
【0026】
上記ラム酒粕800mlを遠心分離(12,000rpm,4℃,20分)し、その上清を吸引ろ過(ADVANTEC No.5B)した。ろ液はAmberlite XAD-1180を充填したガラスカラム(150ml)に通液し、続けて精製水、25%メタノール、50%メタノールおよび100%メタノールを各600ml順次流した。
【0027】
このうちの100%メタノール溶出液をエバポレートにて濃縮し(収量1.04g)、シリカゲルカラム(Wakogel C-100,カラム 300ml)に通液、吸着させた後、酢酸エチル-メタノールを、それらの混合比が10:0、7:3、5:5、3:7および0:10となるようにした溶出液各600mlで溶出し、それぞれの溶出液ごとに5つのフラクション(Fr1~Fr5)に分画した。
【0028】
このうちチロシナーゼ阻害活性の高かったFr1(168mg)は、HLBカートリッジ(ウォータース社製)にて70%メタノールで溶出される画分を得て、これを更にTOYOPEARL HW‐40Cを充填したガラスカラム(カラムサイズ1.2cm×80cm)に通液、吸着させた後、60%メタノール(120ml)と80%メタノール(120ml)を用いるグラジュエントにて溶出した。溶出液は3gずつ分画し、紫外部の吸光度にて溶出物をモニターした。
【0029】
このうち25から27本目にて溶出するピークのFr1-5(11mg)にチロシナーゼ阻害活性が認められたため、この画分をさらにLiChroprep RP-18カラム(Waters)にて40%メタノールにて溶出した。分画は3gずつ行い、分離状況は紫外部の吸光度を測定することでモニターした。この結果、80本付近のもっとも大きなピーク(Fr1-5-2,5.2mg)に強いチロシナーゼ阻害活性が認められた。
【0030】
活性が認められたFr1-5-2をHPLCにて分析した。HPLC条件は、カラムにDevelosil ODS MG-5(4.6×250mm,野村化学)、溶出液に70%メタノールから100%メタノールの30分直線グラジエント、流速0.7ml/min、検出300nmとした。この結果、溶出時間6.59minに単一ピークとしてチロシナーゼ阻害活性物質が得られ、同画分が単一成分として精製されたことを確認した。なお同化合物のラム酒粕に対する収率は6.5ppmと算出された。
【0031】
実 施 例 2
チロシナーゼ阻害活性物質の構造解析
実施例1で得たチロシナーゼ阻害活性物質について、UV-VISスペクトル、H-NMR、13C-NMRやHMQC、HMBCなどの各種2次元NMRによるスペクトルとエレクトロスプレーイオン(ESI)マススペクトルのデータを解析することにより構造を決定した。この結果分離化合物は既知化合物のインペラネン(imperanene,分子量330,C1922)であると同定された。
【0032】
実 施 例 3
分離化合物のヒトチロシナーゼ阻害活性
同定されたインペラネンはヒトチロシナーゼ阻害活性を、比較としてアルブチンおよびコウジ酸とともに測定した。その結果、インペラネンのID50は、1.11mMと算出され、その値はコウジ酸の0.35mMに比較して弱い値であったが、アルブチンの1.43mMより強い活性が認められた。
【0033】
なお、基質濃度と阻害剤の濃度をさまざまに変化させたときの吸光度値をグラフ化し、ラインウェーバー・バークプロットを作成したところ、得られた3本の回帰直線はY軸上に集約した。このことからインペラネンのチロシナーゼ活性阻害の機構は、基質であるドーパとの競争阻害であることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明で使用する化合物(I)(インペラネン)のヒトチロシナーゼの阻害活性は、アルブチンより強いものであった。
【0035】
従って、本発明のチロシナーゼ阻害活性剤は、皮膚外用剤や美白化粧料の有効成分として有利に使用することができるものである。