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明細書 :経口挿入用気管内チューブ

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5382847号 (P5382847)
公開番号 特開2010-063568 (P2010-063568A)
登録日 平成25年10月11日(2013.10.11)
発行日 平成26年1月8日(2014.1.8)
公開日 平成22年3月25日(2010.3.25)
発明の名称または考案の名称 経口挿入用気管内チューブ
国際特許分類 A61M  16/04        (2006.01)
A61M  27/00        (2006.01)
A61M   1/00        (2006.01)
FI A61M 16/04 Z
A61M 27/00
A61M 1/00 510
請求項の数または発明の数 7
全頁数 8
出願番号 特願2008-231691 (P2008-231691)
出願日 平成20年9月10日(2008.9.10)
審査請求日 平成23年9月7日(2011.9.7)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504145308
【氏名又は名称】国立大学法人 琉球大学
発明者または考案者 【氏名】安里 義秀
個別代理人の代理人 【識別番号】110000590、【氏名又は名称】特許業務法人 小野国際特許事務所
審査官 【審査官】倉橋 紀夫
参考文献・文献 国際公開第2007/066332(WO,A2)
国際公開第2007/050129(WO,A1)
調査した分野 A61M 16/04
A61M 1/00
A61M 27/00
特許請求の範囲 【請求項1】
挿管チューブに吸引用経路と生理食塩水注入用経路とを備えた、カフを有さない経口挿入用気管内チューブであって、前記吸引用経路が、挿管チューブの長さ方向に沿って、吸引用開口部が挿管チューブの外周面上に設けられた声門マーカーに対して挿管チューブの口腔側端部側に位置するよう設けられ、前記生理食塩水注入用経路が、挿管チューブの長さ方向に沿って、生理食塩水用開口部が前記吸引用開口部に対して挿管チューブの口腔側端部側に位置するように設けられたことを特徴とする経口挿入用気管内チューブ。
【請求項2】
前記吸引用経路の吸引用開口部が、前記声門マーカーに対して1~1.5cm挿管チューブの口腔側端部側に位置するものである請求項1記載の経口挿入用気管内チューブ。
【請求項3】
前記生理食塩水注入用経路の生理食塩水用開口部が、前記吸引用開口部に対して1~3cm挿管チューブの口腔側端部側に位置するものである請求項1または2に記載の経口挿入用気管内チューブ。
【請求項4】
前記吸引用経路および/または生理食塩水注入用経路が、前記挿管チューブの外側に配設されたチューブからなるものである請求項1ないし3のいずれかの項記載の経口挿入用気管内チューブ。
【請求項5】
前記吸引用開口部が、前記生理食塩水用開口部に対して前記挿管チューブの周方向に前記挿管チューブの外周の長さの約1/4となる間隔で設けられたものである請求項4項記載の経口挿入用気管内チューブ。
【請求項6】
前記吸引用経路および/または生理食塩水注入用経路が、前記挿管チューブの管壁に形成されたルーメンからなるものである請求項1ないし3のいずれかの項記載の経口挿入用気管内チューブ。
【請求項7】
前記吸引用開口部が、前記生理食塩水用開口部に対して前記挿管チューブの周方向に前記挿管チューブに形成された気道確保用ルーメンの外周の長さの約1/4となる間隔で設けられたものである請求項6記載の経口挿入用気管内チューブ。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は経口挿入用気管内チューブに関し、詳しくは、カフを使用することなく声門下分泌物持続吸引が可能な経口挿入用気管内チューブに関する。
【背景技術】
【0002】
重症呼吸障害患者に対して人工換気を施す場合において、気管内挿管を行うと、挿管チューブを伝って咽頭分泌物が気管内に垂れ込み、肺炎を引き起こす危険性がある(人工換気関連肺炎)。この人工換気関連肺炎を防止するために、声門下吸引システムが適用されている。これは挿管チューブの先端にカフを設け、咽頭分泌物をカフ上部に滞留させて、これを吸引ルーメンなどを通じて除去するものであり、このようなカフおよび吸引ルーメンを備えた気管内チューブが提案されている(特許文献1および2)。
【0003】
この声門下吸引システムは、成人の人工換気関連肺炎の防止には有効である。しかしながら、小児に対しては、カフを膨らませると、抜管時にカフと接触していた部分が浮腫状になり、気管狭窄を来たし抜管困難となる恐れがあるためカフを使用することができない。このため、小児に対しては通常カフの無い挿管チューブを使用することになるが、咽頭分泌物は粘稠度が高く、これを吸引できる程度の陰圧をかけると直接肺内の圧が下がって虚脱してしまうため、持続的に声門下吸引を行うことができなかった。
【0004】

【特許文献1】特開平4-272766号公報
【特許文献2】特表平6-504454号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、小児に対しても声門下分泌物持続吸引が可能な経口挿入用気管内チューブが切望されており、本発明はそのような気管内チューブの提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち本発明は、上記課題を解決するものであり、挿管チューブに吸引用経路と生理食塩水注入用経路とを備えた経口挿入用気管内チューブであって、前記吸引用経路が挿管チューブの長さ方向に沿って、吸引用開口部が挿管チューブの外周面上に設けられた声門マーカーに対して挿管チューブの口腔側端部側に位置するよう設けられ、前記生理食塩水注入用経路が、挿管チューブの長さ方向に沿って、生理食塩水用開口部が前記吸引用開口部に対して挿管チューブの口腔側端部側に位置するように設けられたことを特徴とする経口挿入用気管内チューブである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の経口挿入用気管内チューブは、生理食塩水注入用経路により生理食塩水を咽頭内に滴下させて咽頭分泌物の粘稠度を低下させることができるため、より小さな吸引圧で咽頭分泌物の吸引除去が可能となり、肺の虚脱を防止できる。また、吸引経路内の閉塞を防止して安定した持続吸引が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の経口挿入用気管内チューブの実施態様を、図面に基づいて具体的に説明する。なお、本発明はこれら実施態様に何ら制約されるものではない。
【0009】
図1は、本発明に係る経口挿入用気管内チューブの第1の実施形態を示す模式図である。本実施形態においては、吸引用経路および生理食塩水注入用経路は、挿管チューブの外側に配設されたチューブによって形成されている。図1中、2は挿管チューブ、2Aは気管側端部、2Bは口腔側端部、3はアダプター、4は吸引用チューブ、4aは吸引用開口部、5は生理食塩水注入用チューブ、5aは生理食塩水用開口部、6は声門マーカーをそれぞれ示す。また図2は図1におけるC-C’断面図である。
【0010】
挿管チューブ2は、シリコーン樹脂等の合成樹脂等により形成されている。その内径は通常2.5mm以上であればよく、適用する患者の体格に応じて適宜選択される。挿管チューブ2の口側端部2Bにはアダプター3が設けられ、ここに人口呼吸器や手動換気バッグ等を接続する。挿管チューブ2の気管側端部2A付近には、外周面上に声門マーカー6が設けられている。声門マーカー6は経口挿入用気管内チューブを挿入し固定する際に、挿管チューブの先端が気管分岐部を傷つけず、また挿入部分が浅すぎて事故抜管しない位置とするための目印とするものであり、声門マーカー6が声門を越えた付近で固定される。挿管チューブ2の外周面上における声門マーカー6の位置は、挿管チューブ2の内径に応じて設定され、通常内径2.5mmのときは、気管側端部2Aから2.0cm、内径3.0mmのときは2.5cm、内径3.5mmのときは3.0cmの位置に設けられる。
【0011】
吸引用チューブ4は、挿管チューブ2の外側に、その長さ方向に沿って配設される。吸引用チューブ4もシリコーン樹脂等の合成樹脂等によって形成される。その内径は、挿管チューブの内径に応じて適宜設定され、挿管チューブの内径が2.5mmの時は5Frであることが好ましく、2.5mmよりも大きいときは6Frであることが好ましい。吸引用チューブ4の先端の吸引用開口部4aは、挿管チューブ2の声門マーカー6に対して口腔側端部2B側に設けられ、1~1.5cm口腔側端部2B側に設けられることが好ましい。声門マーカー6と吸引用開口部4aとの距離が1cmよりも近いと気管内挿管した際に咽頭を傷つけ抜管ができなくなる場合がある。一方、この距離が1.5cmよりも遠い場合には、咽頭分泌物の気管内へのたれ込みを有効に防止できない場合がある。吸引用チューブ4を挿管チューブの外側に長さ方向に沿って配設するためには、医療用接着剤等を用いて固定すればよく、チューブを配設する部分の長さは挿管チューブの太さに関わらず口腔側端部2Bから5cm以内に配設することが好ましい。吸引用チューブ4の他方の端部は吸引器に接続される。このようにして形成される吸引用経路は1つであっても複数であってもよい。
【0012】
生理食塩水注入用チューブ5も、吸引用チューブと同様に、挿管チューブの外側に、その長さ方向に沿って設けられ、シリコーン樹脂等の合成樹脂等によって形成される。生理食塩水注入用チューブ5の内径も、挿管チューブの内径に応じて適宜設定することができるが通常4Fr程度であればよい。生理食塩水注入用チューブの生理食塩水用開口部5aは、吸引用開口部4aに対して口腔側端部2B側に設けられ、好ましくは1~3cm口腔側端部2B側に設けられる。生理食塩水注入用チューブ5を挿管チューブ2に固定する手段および開口部5aから配設するチューブの長さについては吸引用チューブ4と同様にすればよい。生理食塩水注入用チューブ5の他方の端部には輸液ポンプ等が接続される。
【0013】
このように挿管チューブ2の外周面上に、口腔側端部2Bから気管側端部2A方向へ、生理食塩水用開口部5a、吸引用開口部4a、声門マーカー6が順次配置される。経口挿入用気管内チューブは、口腔から、咽頭、喉頭を通して気管まで挿入され、声門マーカーが気管上部の喉頭内にある声門を越えた付近で固定される。注入された生理食塩水は、生理食塩水用開口部5aから咽頭内に滴下して咽頭分泌物と混ざり合う。この混合物は、挿管チューブを伝って気管内に垂れ込もうとするが、気管上部の声門付近に固定された正門マーカーよりも上部に吸引用開口部4aがあるため、気管内に垂れ込む前に混合物を吸引することが可能となる。
【0014】
図2に示すように、吸引用開口部4aと生理食塩水用開口部5aは、挿管チューブ2の外周面上に、挿管チューブ2の外周の長さの約1/4となる間隔で設けることが好ましく、開口部をこのように配置した挿管チューブ2を吸引用開口部4aが人体の背側に位置するように挿入すると、生理食塩水用開口部5aから滴下した生理食塩水が咽頭分泌物と混合する前に吸引用開口部4aから吸引されることがなく、また咽頭分泌物をより容易に吸引することが可能となる。
【0015】
図3は、本発明に係る経口挿入用気管内チューブの第2の実施形態を示す模式図である。本実施形態においては、吸引用経路および生理食塩水注入用経路は、挿管チューブの管壁内に形成されたルーメンによって構成されている。図2中、12は挿管チューブ、12Aは気管側端部、12Bは口側端部、12aは気道確保用ルーメン、13はアダプター、14は吸引用ルーメン、14aは吸引用開口部、15は生理食塩水注入用ルーメン、15aは生理食塩水用開口部、16は声門マーカー、17は吸引用チューブ、18は生理食塩水注入用チューブをそれぞれ示す。また図4はD-D’断面図である。
【0016】
挿管チューブ12は、シリコーン樹脂等の合成樹脂等によって形成されるものであり、気道確保用ルーメン12aの内径は通常2.5mm以上であればよく、適用する患者の体格に応じて適宜選択される。アダプター13、声門マーカー16は、上記第1の実施形態と同様であり、声門マーカー16の挿管チューブ12の外周面上における位置も、第1の実施形態と同様にして気道確保用ルーメン12aの内径に応じて設定される。
【0017】
吸引用ルーメン14は、挿管チューブ12の管壁内に長さ方向に沿って形成されたものである。その内径は、気道確保用ルーメンの内径に応じて適宜設定され、気道確保用ルーメンの内径が2.5mmの時は5Fr程度であることが好ましく、2.5mmよりも大きいときは6Fr程度であることが好ましい。吸引用ルーメン14は、吸引用開口部14aにおいて挿管チューブ12の外部に開放されている。吸引用開口部14aは、声門マーカー16に対して口腔側端部12B側にあり、1~1.5cm口腔側端部12B側にあることが好ましい。声門マーカー16と吸引用開口部14aとの距離が1cmよりも近いと気管内挿管した際に喉頭を傷つけ抜管ができなくなる場合がある。吸引用ルーメン14の他方の端部14bは、挿管チューブ12の口腔側端部12B付近で外部に開放され、吸引用チューブ17に接続される。この端部14bの位置は、挿管チューブの太さに関わらず口腔側端部12Bから5cm以内に配設することが好ましい。吸引用チューブ17の他方の端部は吸引器に接続される。このようにして形成される吸引用経路は、1つであっても複数であってもよい。
【0018】
生理食塩水注入用ルーメン15も、吸引用ルーメン14と同様に挿管チューブ12の管壁内に長さ方向に沿って形成されたものである。その内径は、気道確保用ルーメン12aの内径に応じて適宜設定されるが通常4Fr程度であればよい。生理食塩水注入用ルーメン15は、生理食塩水用開口部15aにおいて挿管チューブ12の外部に開放されており、生理食塩水用開口部15aは、吸引用開口部14aに対して口腔側端部12B側に設けられ、1~3cm口腔側端部12B側に設けられることが好ましい。生理食塩水注入用ルーメン15の他方の端部15bは、挿管チューブ12の口腔側端部12B付近で外部に開放され、生理食塩水注入用チューブ18に接続される。この端部15bの位置は、吸引用ルーメンの端部14bと同様に設定すればよい。生理食塩水用チューブ18の他方の端部は輸液ポンプ等に接続される。
【0019】
図4に示すように、吸引用開口部14aと生理食塩水用開口部15aとは、挿管チューブの管壁内において、気道確保用ルーメン12aの外周の長さの約1/4となる間隔で設けることが好ましく、開口部をこのように配置した挿管チューブ12を吸引用開口部14aが人体の背側に位置するように挿入すると、生理食塩水用開口部15aから滴下した生理食塩水が咽頭分泌物と混合する前に吸引用開口部14aから吸引されることがなく、また咽頭分泌物をより容易に吸引することが可能となる。
【0020】
図5は、本発明の第1の実施形態の経口挿入用気管内チューブを患者に装着した図であり、患者は仰向けの姿勢をとっている。経口挿入用気管内チューブは、吸引用開口部4aが背側に位置するように挿入される。
生理食塩水注入用チューブ5に、生理食塩水を0.3~0.5cc/hr程度流すと生理食塩水用開口部5aより生理食塩水が咽頭の後壁に滴下され、これが咽頭内において咽頭分泌物と混ざり合い、咽頭分泌物の粘稠度を低下させる。咽頭分泌物と生理食塩水の混合物は、挿管チューブ12を伝って気管側へ移動するが、その間に吸引用開口部4aがあるため、5~10Pa程度で吸引するとこの開口部から混合物が吸引除去される。咽頭分泌物は、生理食塩水により粘稠度が低下しているため、低い吸引圧で容易に吸引され、また吸引用チューブが閉塞することもない。なお、本発明の経口挿入用気管内チューブは、小児のみならず、成人に対して適用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る第1の実施形態の経口挿入用気管内チューブを示す模式図。
【図2】図1のC-C’断面図。
【図3】本発明に係る第2の実施形態の経口挿入用気管内チューブを示す模式図。
【図4】図1のD-D’断面図。
【図5】本発明に係る第1の実施形態の経口挿入用気管内チューブを人体に挿着した場合の模式図。
【符号の説明】
【0022】
1 … … 経口挿入用気管内チューブ
2 … … 挿管チューブ
2A… … 気管側端部
2B… … 口腔側端部
3 … … アダプター
4 … … 吸引用チューブ
4a… … 吸引用開口部
5 … … 生理食塩水注入用チューブ
5a… … 生理食塩水用開口部
6 … … 声門マーカー
12 … … 挿管チューブ
12A… … 気管側端部
12B… … 口腔側端部
12a… … 気道確保用ルーメン
13 … … アダプター
14 … … 吸引用ルーメン
14a… … 吸引用開口部
15 … … 生理食塩水注入用ルーメン
15a… … 生理食塩水用開口部
16 … … 声門マーカー
17 … … 吸引用チューブ
18 … … 生理食塩水注入用チューブ
21 … … 気管
22 … … 食道
23 … … 声門
以 上
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4