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明細書 :遷移元素触媒およびその製造方法、並びに選択的水素添加方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5605619号 (P5605619)
公開番号 特開2011-020116 (P2011-020116A)
登録日 平成26年9月5日(2014.9.5)
発行日 平成26年10月15日(2014.10.15)
公開日 平成23年2月3日(2011.2.3)
発明の名称または考案の名称 遷移元素触媒およびその製造方法、並びに選択的水素添加方法
国際特許分類 B01J  31/06        (2006.01)
C07C  41/20        (2006.01)
C07C  43/215       (2006.01)
C07C  43/15        (2006.01)
C07C  43/205       (2006.01)
C07C  67/303       (2006.01)
C07C  69/736       (2006.01)
C07B  61/00        (2006.01)
FI B01J 31/06 Z
C07C 41/20
C07C 43/215
C07C 43/15
C07C 43/205 B
C07C 67/303
C07C 69/736
C07B 61/00 300
請求項の数または発明の数 12
全頁数 23
出願番号 特願2010-137031 (P2010-137031)
出願日 平成22年6月16日(2010.6.16)
優先権出願番号 2009145071
優先日 平成21年6月18日(2009.6.18)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成25年5月31日(2013.5.31)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504133110
【氏名又は名称】国立大学法人電気通信大学
発明者または考案者 【氏名】牧 昌次郎
【氏名】丹羽 治樹
個別代理人の代理人 【識別番号】100150142、【弁理士】、【氏名又は名称】相原 礼路
審査官 【審査官】岡田 隆介
参考文献・文献 特開2003-275586(JP,A)
特開2010-013363(JP,A)
国際公開第2010/035325(WO,A1)
調査した分野 B01J 21/00-38/74
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
白金、ロジウム、イリジウム、ルテニウムまたはレニウムから選択される金属イオンおよびパラジウムイオンを含む溶液を水素ガスと反応させて、前記金属イオンおよび前記パラジウムイオンを還元することによって得られ、
複数の不飽和結合を有する反応対象物の特定の二重結合部を選択的に水素添加することを特徴とする合金触媒。
【請求項2】
白金、ロジウム、イリジウム、ルテニウムまたはレニウムから選択される金属イオンおよびパラジウムイオンを含む溶液に含浸させた担体を水素ガス中に保持することによって得られる、請求項1に記載の合金触媒。
【請求項3】
前記金属イオンが白金イオンである、請求項1に記載の合金触媒。
【請求項4】
パラジウムイオンを含む溶液を水素ガスと反応させて前記パラジウムイオンを還元すること、および、
白金、ロジウム、イリジウム、ルテニウムまたはレニウムから選択される金属イオンを含む溶液を、水素ガス中で前記還元されたパラジウムを含む溶液と接触させることによって得られ、
複数の不飽和結合を有する反応対象物の1置換二重結合部または2置換二重結合部を選択的に水素添加することを特徴とする金属触媒。
【請求項5】
前記パラジウムイオンを含む溶液に含浸させた担体を水素ガス中に保持すること、および、
前記金属イオンを含む溶液を含浸させた担体を、水素ガス中で前記還元されたパラジウムを含む溶液に含浸させた担体と接触させることによって得られる、請求項4に記載の金属触媒。
【請求項6】
前記金属イオンが白金イオンである、請求項4に記載の金属触媒。
【請求項7】
パラジウムイオンおよび遷移元素イオンを含む溶液を水素ガスと反応させて前記パラジウムイオンおよび前記遷移元素イオンを還元する工程を含む、複数の不飽和結合を有する反応対象物の特定の二重結合部を選択的に水素添加することを特徴とする遷移元素触媒の製造方法。
【請求項8】
パラジウムイオンおよび遷移元素イオンを含む溶液に含浸させた担体を水素ガス中に保持する工程を含む、請求項7に記載の遷移元素触媒の製造方法。
【請求項9】
パラジウムイオンを含む溶液を水素ガスと反応させて前記パラジウムイオンを還元する工程と、
白金、ロジウム、イリジウム、ルテニウムまたはレニウムから選択される金属イオンを含む溶液を、水素ガス中で前記還元されたパラジウムを含む溶液と接触させる工程と、
を含む、複数の不飽和結合を有する反応対象物の1置換二重結合部または2置換二重結合部を選択的に水素添加することを特徴とする遷移元素触媒の製造方法。
【請求項10】
前記パラジウムイオンを含む溶液に含浸させた担体を水素ガス中に保持する工程と、
前記金属イオンを含む溶液を含浸させた担体を、水素ガス中で前記還元されたパラジウムを含む溶液に含浸させた担体と接触させる工程と、
を含む、請求項9に記載の遷移元素触媒の製造方法。
【請求項11】
請求項1~3のいずれか1項に記載の遷移元素触媒を、複数の不飽和結合を有する反応対象物を含む溶液中に、水素ガスの存在下で反応させることにより、前記反応対象物の1置換二重結合部または2置換二重結合部を選択的に水素添加するための方法。
【請求項12】
請求項4~6のいずれか1項に記載の遷移元素触媒を、複数の不飽和結合を有する反応対象物を含む溶液中に、水素ガスの存在下で反応させることにより、前記反応対象物の1置換二重結合部または2置換二重結合部を選択的に水素添加するための方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、遷移元素触媒および遷移元素の合金の触媒に関する。より詳細には、遷移元素からなる触媒物質を担持させた遷移元素触媒に関する。また、本発明は、遷移元素触媒および遷移元素の合金の触媒の製造方法に関する。さらに、本発明は、選択的水素添加のための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、化学品および医薬品などの有機化合物を合成するために、数々の触媒が使用されている。また、石油の還元脱硫を行うためにも、種々の触媒が使用されている。このような触媒の1つとして、パラジウムブラックと呼ばれるPd微粉末および粉状活性炭にPd微粉末を添着させたもの(Pd-C)などの粉体が使用されている。一般的に、このような触媒を使用する反応では、まず反応基質などの反応対象物を溶媒に溶解させて、この溶液に上記のものなどの粉末触媒を投入することにより、反応対象物の還元反応を進行させる。しかし、上述した粉末触媒の場合、濾紙またはセライトなどのフィルターを通して反応後の溶液から触媒を濾過して回収する必要があり、手間がかかってしまった。また、触媒の耐久性が低いという問題もあった。さらに、触媒が粉末であるために発火性が高く、安全性において大きな問題であった。
【0003】
そこで、本発明者らは、シート状の遷移元素触媒を以前に報告している(特許文献1)。この遷移元素触媒は、パラジウムイオンなどの遷移元素イオンを不織布などの担体に還元担持させることにより製造することができる。たとえば、パラジウム触媒の場合、まず不織布などの担体にパラジウムイオンを含む溶液を含浸させ、次いでこの担体を室温にて水素ガス中に保持する。パラジウムイオンが水素ガス中で還元されて、黒い固体として担体上に析出される。その結果、還元活性を有するシート状のパラジウム触媒を得ることができる。このような方法で製造されたパラジウム触媒は、アモルファス状態の元素として担体に担持されていると考えられる。また、このような方法で製造されたパラジウム触媒は、外見が黒っぽい固体であることから、上記のようにパラジウムブラックと呼ばれている。一般に、パラジウムなどの遷移元素が触媒活性を有するためには、これらの元素がアモルファス状態でなければならないと考えられている。
【0004】
本発明者らは、上記方法により、実際にパラジウムイオンから還元活性を有するパラジウムブラックを得ることができた。しかし、その後の実験において、その他の遷移元素イオンからアモルファス状態の遷移元素の固体を得ることはできなかった。たとえば、白金、イリジウム、ルテニウム、ロジウムおよびレニウムなどの遷移元素は、上記の方法と同様に、担体にそれぞれの遷移元素イオンを含む溶液を含浸させ、次いでこの担体を室温にて水素ガス中に保持しても、元の遷移元素イオンの色から黒色に変化することなく、水素還元されないことが示された。このため、パラジウム以外の遷移元素についても、パラジウムと同様にアモルファス状態の元素を得るための新たな方法の開発が望まれていた。
【0005】
また、従来の反応において、複数種類の遷移元素の合金からなる触媒は、あまり使用されていない。たとえば、複数種類の遷移元素を触媒として使用する際には、それぞれの遷移元素の粉末を混合した粉体が使用される。上記のように、アモルファス状態の合金の触媒は、種々の触媒活性を有すると考えられるが、このような合金はほとんど報告されていない。
【0006】
従来のメッキ法は、還元電位によって所望する金属を陰極表面に析出させる方法である。一般に、還元電位のより低いものから順に金属が析出(還元)されるため、メッキ法では、任意の異なる金属を完全に混合した形で析出させることはできない。従って、従来のメッキ法では、1種類の遷移元素についてアモルファス状態の遷移元素を得ることができるものの、数種類の遷移元素の合金について均一に混合されたアモルファス状態の遷移元素の合金を得ることはできない。また、複数種類のアモルファス状態の遷移元素を混合したとしても、均一に混合することが困難であると共に、合金とは異なる触媒活性を示すと考えられる。
【0007】
一方、遷移元素触媒は、水素添加反応および加水素分解反応のいずれに対しても作用する。これらの反応の反応条件は、同一であることが多く、水素添加反応および加水素分解反応の一方の反応のみを反応基質に対して選択的に行わせることは難しい。
【0008】
本発明者らは、ベンジルオキシアルケンの選択的水素添加方法として、電解による方法を報告している(たとえば、特許文献2および3を参照されたい)。この方法では、陰極として用いるパラジウム薄膜により、反応系を2槽に区切り、そのうちの一方の槽で水を電気分解して水素を発生させる。水素は、水素吸蔵金属であるパラジウム薄膜に吸蔵され、反対面から他の槽中に透過する。この槽の反応液には、反応基質であるベンジルオキシアルケンが溶解されている。この溶液中では、加水分解反応、たとえばベンジルオキシアルケンからのベンジル基の脱離などが抑制された水素添加反応が進行し、反応基質中のアルケンの不飽和基のみが選択的に水素添加される。しかし、上記した選択的水素添加方法の場合、電気分解のための電源および電解セルなどの各種装置を必要とするため、簡便な方法とはいえず、実用的ではなかった。
【先行技術文献】
【0009】

【特許文献1】特開2004-237148号公報
【特許文献2】特開2002-145818号公報
【特許文献3】特開2001-316315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述の状況に鑑み、本発明は、パラジウム以外の遷移元素イオンから還元活性を有する触媒を得るための方法およびその生成物を提供することを目的とする。また、遷移元素および線源その合金からなる触媒元素を担持させた触媒物質およびその製造方法を提供することを目的とする。さらに、本発明は、選択的水素添加のための方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、パラジウムイオンを含む溶液に含浸させた担体を水素ガス中に保持して還元させた後、上記担体を、白金イオンを含む溶液に含浸させた担体と水素ガス中にて接触させることにより、還元活性を有するアモルファス状態の触媒を得ることができることを見いだした。
【0012】
また、パラジウムイオンおよび白金イオンを含む混合溶液に含浸させた担体を水素ガス中に保持することにより、パラジウムおよび白金をアモルファス状態にすることができることを見いだした。
【0013】
さらに、上記方法によって得られたパラジウムおよび白金の合金が担持されたシート状の遷移元素合金触媒は、選択的な水素添加が可能なことを見いだした。より詳細には、複数の二重結合部分を有する化合物において、加水分解を伴わずに、所定の二重結合のみを選択的に水素添加することができることを見いだした。これらの知見により、本発明を完成するに至った。
【0014】
本発明は、白金、ロジウム、イリジウム、ルテニウムまたはレニウムから選択される金属イオンおよびパラジウムイオンを含む溶液を水素ガスと反応させて、金属イオンおよびパラジウムイオンを還元することによって得られ、複数の不飽和結合を有する反応対象物の特定の二重結合部を選択的に水素添加することを特徴とする合金触媒を提供する。
【0015】
また、本発明は、白金、ロジウム、イリジウム、ルテニウムまたはレニウムから選択される金属イオンおよびパラジウムイオンを含む溶液に含浸させた担体を水素ガス中に保持することによって得られる、上記金属触媒を提供する。
【0016】
また、本発明は、金属イオンが白金イオンである、上記金属触媒を提供する。
【0017】
さらに、本発明は、パラジウムイオンを含む溶液を水素ガスと反応させてパラジウムイオンを還元すること、および白金、ロジウム、イリジウム、ルテニウムまたはレニウムから選択される金属イオンを含む溶液を、水素ガス中で還元されたパラジウムを含む溶液と接触させることによって得られ、複数の不飽和結合を有する反応対象物の1置換二重結合部または2置換二重結合部を選択的に水素添加することを特徴とする金属触媒を提供する。
【0018】
また、本発明は、パラジウムイオンを含む溶液に含浸させた担体を水素ガス中に保持すること、および金属イオンを含む溶液を含浸させた担体を、水素ガス中で還元されたパラジウムを含む溶液に含浸させた担体と接触させることによって得られる、上記金属触媒を提供する。
【0019】
また、本発明は、金属イオンが白金イオンである、上記金属触媒を提供する。
【0020】
さらに、本発明は、パラジウムイオンおよび遷移元素イオンを含む溶液を水素ガスと反応させてパラジウムイオンおよび遷移元素イオンを還元する工程を含む、複数の不飽和結合を有する反応対象物の特定の二重結合部を選択的に水素添加することを特徴とする金属触媒の製造方法を提供する
【0021】
また、本発明は、パラジウムイオンおよび遷移元素イオンを含む溶液に含浸させた担体を水素ガス中に保持する工程を含む、上記金属触媒の製造方法を提供する。
【0022】
さらに、本発明は、パラジウムイオンを含む溶液を水素ガスと反応させて前記パラジウムイオンを還元する工程と、白金、ロジウム、イリジウム、ルテニウムまたはレニウムから選択される金属イオンを含む溶液を、水素ガス中で還元されたパラジウムを含む溶液と接触させる工程とを含む、複数の不飽和結合を有する反応対象物の1置換二重結合部または2置換二重結合部を選択的に水素添加することを特徴とする遷移元素触媒の製造方法を提供する。
【0023】
また、本発明は、パラジウムイオンを含む溶液に含浸させた担体を水素ガス中に保持する工程と、金属イオンを含む溶液を含浸させた担体を、水素ガス中で還元されたパラジウムを含む溶液に含浸させた担体と接触させる工程とを含む、上記遷移元素触媒の製造方法を提供する。
【0024】
さらに、本発明は、上記パラジウム以外の遷移元素触媒を、複数の不飽和結合を有する反応対象物を含む溶液中で、水素ガスの存在下で反応させることにより、反応対象物の1置換二重結合部または2置換二重結合部を選択的に水素添加するための方法を提供する。
【0025】
さらに、本発明は、上記パラジウムとパラジウム以外の遷移元素の合金触媒を、複数の不飽和結合を有する反応対象物を含む溶液中で、水素ガスの存在下で反応させることにより、前記反応対象物の1置換二重結合部または2置換二重結合部を選択的に水素添加するための方法を提供する。
【発明の効果】
【0026】
以上の説明により明らかなように、本発明の遷移元素触媒の製造方法によれば、パラジウムイオンと同様の従来の水素ガスによる還元が不可能であった、パラジウム以外の遷移元素イオンを還元することができる。また、還元された遷移元素は、触媒として活性なアモルファス状態の固体の触媒として得ることができる。
【0027】
また、本発明の遷移元素触媒の製造方法によれば、パラジウムとその他の遷移元素との合金について、イオンレベルで完全に混合した状態で水素と接触させて還元するため、ナノレベルで混合された合金ナノ粒子が得られる。また、還元された遷移元素合金は、触媒として活性なアモルファス状態の固体の触媒として得ることができる。
【0028】
さらに、本発明の遷移元素触媒は、3置換および4置換二重結合を還元することなく、1置換および2置換二重結合のみを選択的に還元することができる。しかも、反応完結後、十分な時間反応を継続しても過剰反応は見られない。また、加水素分解反応を伴わない水素添加反応が可能である。
【0029】
また、触媒物質が担体の空隙の周りに担持されるように製造することができるので、触媒の有効表面積が増大し、反応性に優れている。その結果として、従来の粉末触媒に比べて反応に必要な触媒物質の量を低減することもできる。また、触媒物質は担体の空隙内に存在し、外部と接触しにくいため、触媒物質の物理的接触による脱落等が生じにくく耐久性が向上する。また、反応後に触媒を反応系から分離しやすく、従来の粉状触媒に比べて取り扱いも容易になる。
【0030】
本発明の製造方法によれば、担体が液体を吸収しやすいため、担体の内部に遷移元素イオンを含む溶液を確実に含浸させることができ、担体の内部に触媒物質が担持され有効表面積の大きく反応性に優れた触媒を製造することができる。また、担体に上記溶液を含浸させて水素ガス中に保持するだけで触媒を製造することができる。さらに、担持量の調整は、溶液の濃度や含浸量を調整するだけでよいので、担持量の調整を簡便かつ正確に行うことができる。
【0031】
本発明の選択的水素添加方法によれば、不飽和結合を有する反応対象物を含む溶液中に、水素ガスの存在下で、本発明の遷移元素触媒を浸漬するだけで、水素添加反応を選択的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明のパラジウム以外の遷移元素からなる遷移元素触媒を製造する方法の一例を示す図である。
【図2】還元触媒を捕集布で包んだ状態を示す図である。
【図3】本発明のパラジウムとパラジウム以外の遷移元素との合金からなる遷移元素触媒を製造する方法の一例を示す図である。
【図4】本発明の触媒が担持された担体の構成を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明は、パラジウム以外の遷移元素からなる遷移元素触媒を提供する。本発明の遷移元素触媒は、パラジウムイオンを含む溶液を水素ガスと反応させてパラジウムイオンを還元すること、および遷移元素イオンを含む溶液を、水素ガス中で、還元されたパラジウムを含む溶液と接触させることによって得られる。

【0034】
図1は、本発明の遷移元素触媒の製造方法の一例を示す。図1を参照し、遷移元素イオンを担体に含浸させて水素還元する場合を例示する。まず、塩化パラジウム溶液などのパラジウムイオンを含む溶液を担体に含浸させる(図1a)。たとえば、溶液を担体に滴下することによって含浸させることができる。また、担体を溶液に浸漬してもよい。

【0035】
担体は、遷移元素イオンを含む溶液が含浸しやすいように、多数の空隙を有するものを使用することができる。たとえば、織物、メッシュ、スポンジ、綿、紙、セルロース、素焼きの焼物およびモレキュラーシーブズなどの種々の多孔質体を使用することができる。担体の材質は、特に限定されないが、合成樹脂およびセルロースなどの非金属を使用することができる。たとえば、触媒反応を有機溶媒中で進行させる場合、溶液が担体の空隙に侵入しやすくさせるため、溶媒との親和性のよい合成樹脂を使用することが好ましい。合成樹脂としては、ポリプロピレン、ポリエチレンまたはポリイミドを使用することができる。また、担体の形状は、特に限定されない。たとえば、シート状、チューブ状、塊状、棒状、球状とすることができる。取り扱いが容易で表面積の大きいシート状が好ましい。また、空隙の大きさおよび密度なども特に限定されない。一つの態様において、担体は、合成繊維からなる不織布であることができる。特に、担体は、グラフト重合された合成繊維を除く合成繊維からなる不織布であることができる。

【0036】
上記溶液における溶媒として、たとえば水、メタノール、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、酢酸、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミドもしくはヘキサメチルホスホアミドなどの水溶性有機溶媒、または無水酢酸、酢酸エチル、塩化メチレン、ベンゼン、プロピレンカーボネート、ニトロメタンもしくはヘキサメチルホスホアミドなどの非水溶性有機溶媒を使用することができる。これらの溶媒は、単独または二種類以上を組み合わせて使用することができる。

【0037】
パラジウムイオンとしては、二価、三価および四価のイオンを使用することができる。たとえば、塩化パラジウム、硫酸パラジウムまたは硝酸パラジウムなどのパラジウム塩に起因する二価のイオンを使用することができる。また、溶媒に溶解しやすいパラジウム塩に起因するイオンが好ましい。パラジウムイオンを含む溶液は、通常水素イオン濃度が0.3~5mol/l、たとえば酸濃度が1~2mol/lの酸溶液にパラジウム塩を溶媒に溶解させることにより、容易に調整することができる。

【0038】
溶液中のパラジウムイオンの濃度は、通常1×10-6mol/l~過飽和状態まで、たとえば1×10-4mol/l~1×10-1mol/lであることができる。

【0039】
次いで、含浸後の担体を密閉室内に吊り下げ、室内に水素ガスを導入した後で室を密閉し、水素ガス中に担体を保持する(図1b)。保持時間は、担体の形状等に応じて変更することができる。たとえば、通常数分~数時間程度であることができる。これにより、含浸した溶液中のパラジウムイオンがPd0に還元されて、担体表面に析出し、アモルファス状態のパラジウムブラックを得ることができる(図1c)。本明細書において、パラジウムブラックとは、微粉末ではないが、従来のパラジウムブラック(黒色微粉末パラジウム)と同様に黒色であり、同様の触媒活性を有するパラジウムを含む。

【0040】
室内の水素ガスの圧力は、通常1.013×102~1.013×108Pa、たとえば1.013×105~1.013×106Paまたは1.013×105~2.026×105Paであることができる。

【0041】
一方、パラジウム以外の遷移元素イオンを含む溶液を、上記の担体とは別の担体に含浸させる(図1a')。たとえば、白金イオンを含む溶液を含浸さる。含浸は、溶液を担体に滴下することによって行うことができる。担体を溶液に浸漬させてもよい。

【0042】
担体は、上述のパラジウムイオンと同様の担体を使用することができ、たとえば多数の空隙を有するものを使用することができる。一つの態様において、担体は、合成繊維からなる不織布であることができる。特に、担体は、グラフト重合された合成繊維を除く合成繊維からなる不織布であることができる。

【0043】
上記溶液における溶媒として、上述のパラジウムイオンと同様に、水、メタノール、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、酢酸、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミドもしくはヘキサメチルホスホアミドなどの水溶性有機溶媒、または無水酢酸、酢酸エチル、塩化メチレン、ベンゼン、プロピレンカーボネート、ニトロメタンもしくはヘキサメチルホスホアミドなどの非水溶性有機溶媒を使用することができる。これらの溶媒は、単独または二種類以上を組み合わせて使用することができる。また、溶媒は、上記パラジウムイオンの溶媒と同じであっても、異なっていてもよいが、同じ溶媒であることが好ましい。

【0044】
遷移元素イオンとしては、二価、三価および四価のイオンを使用することができる。また、遷移元素としては、3A~7A族、8族および1B族の元素を使用することができる。たとえば、白金、ロジウム、イリジウム、ルテニウムおよびレニウム等を使用することができる。遷移元素イオンとしては、たとえば塩酸、硫酸または硝酸などの酸と形成された遷移元素の塩に起因する二価のイオンを使用することができる。また、溶媒に溶解しやすい遷移元素の塩に起因するイオンが好ましい。遷移元素イオンを含む溶液は、通常水素イオン濃度が0.3~5mol/l、たとえば酸濃度が1~2mol/lの酸溶液に遷移元素の塩を溶解させると、容易に調整することができる。

【0045】
溶液中の遷移元素イオンの濃度は、通常1×10-6mol/l~過飽和状態まで、たとえば1×10-4mol/l~1×10-1mol/lであることができる。

【0046】
次いで、上記のパラジウムイオンを含む溶液を含浸後の担体(図1b'上段担体)と遷移元素イオンを含む溶液に含浸後の担体(図1b'下段担体)とを接触させて、密閉室内に吊り下げる。室内に水素ガスを導入した後で室を密閉し、水素ガス中に担体を保持する(図1b')。本明細書において、「接触させる」とは、2つの溶液が、一方の溶液から他方の溶液への電子の移動が可能なように接触した状態にすることを意味する。たとえば、2つの担体を、一方の担体に含まれる溶液から他方の担体に含まれる溶液への電子の移動が可能なように、一端を重ねた状態にすることにより、接触させることができる。

【0047】
水素ガス中の保持時間は、担体の形状等に応じて変更することができる。たとえば、通常数分~数時間程度であることができる。これにより、含浸した溶液中の遷移元素イオン(たとえば、白金イオン)が遷移元素(たとえば、Pt0)に還元されて、担体表面に析出し、アモルファス状態の遷移元素を得ることができる(図1c')。

【0048】
図1に示した方法では、パラジウムイオンをPd0に還元後に、遷移元素イオンを含む溶液に含浸後の担体を接触させているが、それぞれのイオンの還元および両イオン溶液の接触を接触させる順序は、いずれの順序であってもよい。たとえば、パラジウムイオンを含む溶液に含浸後の担体と、遷移元素イオンを含む溶液に含浸後の担体とを接触させ、両方の担体を同時に水素ガスと反応させてもよい。また、以下の実施例に示すように、両方の担体を同時に水素ガス中に保持し、パラジウムイオンが還元された後に、担体を接触させてもよい。

【0049】
次に、室内の水素ガスを不活性ガス(アルゴンガスなど)で置換する(図1d)。次いで、得られた遷移元素触媒を室外に取り出して、適宜洗浄を行う。洗浄は、たとえば触媒を水洗した後、メタノールなどの有機溶媒で洗浄することができる。さらに、適宜触媒を減圧乾燥させてもよい。このようにして本発明の触媒が製造される(図1e)。

【0050】
図1に示した方法では、担体に含浸させたパラジウムイオンおよび遷移元素イオンをそれぞれ水素で還元しているが、それぞれのイオンは、担体に含浸させることなく水素還元させてもよい。また、パラジウムイオンおよび遷移元素イオンのいずれか一方のみを担体に含浸させ、水素で還元してもよい。

【0051】
本発明の製造方法を使用することにより、従来の方法では水素還元することができないパラジウム以外の遷移元素を還元して、触媒活性を有するアモルファス状態の遷移元素を製造することができる。上記方法によって製造される触媒は、水素添加反応の触媒作用を有する。上記方法によって製造される遷移元素触媒は、担体の表面にアモルファス状で粒状に析出される。その粒径は、通常0.1~3μm、たとえば0.3~2μmである。また、遷移元素触媒の担体への担持量は、特に限定されないが、対象となる反応に応じて選択できる。通常、1×10-3~1×103mg/cm3、たとえば1×10-1~1×102mg/cm3または0.5~5mg/cm3である。

【0052】
また、本発明の製造方法において、多数の空隙を有している担体を使用して該担体上に遷移元素触媒を担持させたときは、担体が多数の空隙を有していることにより、液体を吸収しやすい。従って、担体の内部に遷移元素イオンを含む溶液を含浸させることができる。従って、担体の内部に触媒元素(遷移元素)が担持されるので、有効表面積の大きく反応性に優れた触媒を製造することができる。

【0053】
また、本発明の製造方法において遷移元素イオンを担体に含浸させた場合、担体に上記溶液を含浸させて水素ガス中に保持するだけで触媒を製造することができるので、製造が簡便となる。また、担持量の調整は、溶液の濃度や含浸量を調整するだけでよいので、担持量の調整を簡便かつ正確に行うことができる。

【0054】
一方、本発明の製造方法において、遷移元素イオンを担体に含浸させた場合、本発明によって製造される遷移元素触媒は、多数の空隙を有する担体の内部に遷移元素イオンを含む溶液を含浸させることにより、担体の内部に遷移元素触媒が担持されるので、有効票面積の大きく反応性に優れた触媒となる。その結果、従来の粉末触媒に比べて反応に必要な触媒物質の量を低減することもできる。また、触媒物質は、担体の空隙内に存在するので、担体の最表面に触媒物質を大量に担持させる必要がない。すなわち、担体の最表面のみに触媒物質を担持させると、外部との接触等によって触媒物質が脱落し易くなる。特に、触媒の表面積を増大させるためにデンドライト(針)状に触媒物質を析出させると、触媒物質が容易に脱落して触媒性能が低下し、触媒の耐久性に劣ることになる。本発明では、担体の内部にある空隙の周りに触媒物質が担持されており、この部分は外部と接触しにくいので、触媒物質の脱落等が生じにくく、耐久性が向上する。また、バルクの担体に触媒物質が固定(担持)されているので、反応後に触媒を反応系から分離しやすく、従来の粉状触媒に比べて取り扱いも容易になる。

【0055】
上述の通り、担体に担持させた遷移元素触媒は、触媒物質の脱落が生じにくいものであるが、触媒物質が脱落したとしても、それを生成物に混入させないようにすることもできる。たとえば、図2に示したように、遷移元素触媒10を捕集布20で包み込んでもよい。これにより、脱落した触媒物質を捕集布20内に留めておくことができる。捕集布20としては、たとえば網および不織布などを使用することができる。遷移元素触媒10の担体として不織布を用いた場合には、それより目の細かい(空隙の径が小さい)不織布等を使用することができる。

【0056】
次に、本発明は、パラジウムおよびパラジウム以外の遷移元素の合金からなる遷移元素合金触媒を提供する。本発明の遷移元素合金触媒は、パラジウムイオンおよび遷移元素イオンを含む溶液を水素ガスと反応させてパラジウムイオンおよび遷移元素イオンを還元することによって得られる。本発明の遷移元素触媒の製造方法の一例を、図3に示してある。まず、塩化パラジウム溶液などのパラジウムイオンと白金イオンなどのパラジウム以外の遷移元素イオンを含む溶液の混合溶液を調整する。次いで、これらの混合溶液を担体に含浸させる(図3a)。たとえば、上記の溶液の混合物を含む溶液を滴下することによって含浸することができる。また、担体を溶液に浸漬してもよい。

【0057】
担体は、上述のように、多数の空隙を有するものを使用することができる。一つの態様において、担体は、合成繊維からなる不織布であることができる。特に、担体は、グラフト重合された合成繊維を除く合成繊維からなる不織布であることができる。

【0058】
上記溶液における溶媒として、上述のような水、メタノール、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、酢酸、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミドもしくはヘキサメチルホスホアミドなどの水溶性有機溶媒、または無水酢酸、酢酸エチル、塩化メチレン、ベンゼン、プロピレンカーボネート、ニトロメタンもしくはヘキサメチルホスホアミドなどの非水溶性有機溶媒を使用することができる。これらの溶媒は、単独または二種類以上を組み合わせて使用することができる。また、溶媒は、上記パラジウムイオンの溶媒と同じであっても、異なっていてもよいが、同じ溶媒であることが好ましい。

【0059】
パラジウムイオンとしては、二価、三価および四価のイオンを使用することができる。たとえば、塩化パラジウム、硫酸パラジウムまたは硝酸パラジウムなどのパラジウム塩に起因する二価のイオンを使用することができる。また、溶媒に溶解しやすいパラジウム塩に起因するイオンが好ましい。パラジウムイオンを含む溶液は、通常水素イオン濃度が0.3~5mol/l、たとえば酸濃度が1~2mol/lの酸溶液にパラジウム塩を溶解させると、容易に調整することができる。

【0060】
溶液中のパラジウムイオンの濃度は、通常1×10-6mol/l~過飽和状態まで、たとえば1×10-4mol/l~1×10-1mol/lであることができる。

【0061】
遷移元素イオンとしては、二価、三価および四価のイオンを使用することができる。また、遷移元素としては、3A~7A族、8族および1B族の元素を使用することができる。たとえば、白金、ロジウム、イリジウム、ルテニウムおよびレニウム等を使用することができる。遷移元素イオンとしては、たとえば塩酸、硫酸または硝酸などの酸と形成された遷移元素の塩に起因する二価のイオンを使用することができる。また、溶媒に溶解しやすい遷移元素の塩に起因するイオンが好ましい。遷移元素イオンを含む溶液は、通常水素イオン濃度が0.3~5mol/l、たとえば酸濃度が1~2mol/lの酸溶液に遷移元素の塩を溶解させると、容易に調整することができる。

【0062】
溶液中の遷移元素イオンの濃度は、通常1×10-6mol/l~過飽和状態まで、たとえば1×10-4mol/l~1×10-1mol/lであることができる。

【0063】
また、パラジウムイオンと遷移元素イオンの比は、製造が望まれる合金に応じて、いずれの比であることもできる。たとえば、パラジウムイオン:遷移元素イオンは、0.1:1~1:1または1:1~0.1:1であることができる。

【0064】
次いで、混合溶液を含浸後の担体を密閉室内に吊り下げ、室内に水素ガスを導入した後で室を密閉し、水素ガス中に担体を保持する(図3b)。水素ガス中の保持時間は、担体の形状等に応じて変更することができる。たとえば、通常数分~数時間程度であることができる。これにより、含浸した溶液中のパラジウムイオンおよび遷移元素イオン(たとえば、白金イオン)の混合物がパラジウム(Pd0)および遷移元素(たとえば、白金との合金の場合は、Pt0)の合金に還元されて、担体表面に析出し、アモルファス状態の遷移元素を得ることができる(図3C)。

【0065】
次に、室内の水素ガスを不活性ガス(アルゴンガスなど)で置換する(図3d)。次いで、得られた遷移元素触媒を室外に取り出して、適宜洗浄を行う。洗浄は、たとえば触媒を水洗した後、メタノールなどの有機溶媒で洗浄することができる。さらに、適宜触媒を減圧乾燥させてもよい。このようにして本発明の触媒が製造される(図3e)。

【0066】
図3に示した方法では、パラジウムイオンおよび遷移元素イオンの混合物を担体に含浸させた後に水素で還元しているが、それぞれのイオンの混合物を担体に含浸させることなく水素で還元してもよい。また、パラジウムイオン以外の遷移元素イオンとして、1種類の遷移元素イオンを使用した場合を例示してあるが、何種類の遷移元素イオンを使用してもよい。たとえば、本発明の遷移元素合金触媒の製造方法において、複数種類の遷移元素イオンをパラジウムイオンと混合することにより、3種および4種以上が混合されたマルチメタル合金触媒を製造することができる。

【0067】
本発明の方法を使用することにより、従来の方法では水素で還元することができないパラジウム以外の遷移元素を含む合金を還元して、触媒活性を有するアモルファス状態の遷移元素合金を製造することができる。上記方法によって製造される触媒は、水素添加反応の触媒作用を有する。上記方法によって製造される遷移元素合金触媒は、担体の表面にアモルファス状で粒状に析出される。その粒径は、通常0.1~3μm、たとえば0.3~2μmである。また、遷移元素合金触媒の担体への担持量は、特に限定されないが、対象となる反応に応じて選択できる。通常、1×10-3~1×103mg/cm3、たとえば1×10-1~1×102mg/cm3または0.5~5mg/cm3である。

【0068】
また、上記方法において、多数の空隙を有している担体を使用して該担体上に遷移元素合金触媒を担持させるときは、担体が多数の空隙を有していることにより、液体を吸収しやすい。従って、担体の内部に遷移元素イオンを含む溶液を含浸させることができる。従って、担体の内部に触媒元素合金(遷移元素)が担持されるので、有効表面積の大きく反応性に優れた触媒を製造することができる。

【0069】
また、本発明の製造方法において、遷移元素イオンの混合液を担体に含浸させた場合、担体に上記溶液を含浸させて水素ガス中に保持するだけで触媒を製造することができるので、製造が簡便となる。また、担持量の調整は、溶液の濃度や含浸量を調整するだけでよいので、担持量の調整を簡便かつ正確に行うことができる。

【0070】
一方、本発明の製造方法において、遷移元素イオン混合液を担体に含浸させた場合、本発明によって製造される遷移元素合金触媒は、多数の空隙を有する担体の内部に遷移元素イオンを含む溶液を含浸させることにより、担体の内部に遷移元素合金触媒が担持されるので、有効表面積の大きく反応性に優れた触媒となる。その結果、従来の粉末触媒に比べて反応に必要な触媒物質の量を低減することもできる。また、触媒物質は、担体の空隙内に存在するので、担体の最表面に触媒物質を大量に担持させる必要がない。すなわち、担体の最表面のみに触媒物質を担持させると、外部との接触等によって触媒物質が脱落し易くなる。特に、触媒の表面積を増大させるためにデンドライト(針)状に触媒物質を析出させると、触媒物質が容易に脱落して触媒性能が低下し、触媒の耐久性に劣ることになる。本発明では、担体の内部にある空隙の周りに触媒物質が担持されており、この部分は外部と接触しにくいので、触媒物質の脱落等が生じにくく、耐久性が向上する。また、バルクの担体に触媒物質が固定(担持)されているので、反応後に触媒を反応系から分離しやすく、従来の粉状触媒に比べて取り扱いも容易になる。

【0071】
上述の通り、担体に担持させた遷移元素合金触媒は、触媒物質の脱落が生じにくいものであるが、触媒物質が脱落したとしてもそれを生成物に混入させないようにすることもできる。たとえば、図2に示したように、遷移元素合金触媒10を捕集布20で包み込んでもよい。これにより、脱落した触媒物質を捕集布20内に留めておくことができる。捕集布20としては、たとえば網および不織布などを使用することができる。遷移元素合金触媒10の担体として不織布を用いた場合には、それより目の細かい(空隙の径が小さい)不織布等を使用することができる。

【0072】
また、上記方法によって製造方法によれば、担体が多数の空隙を有していて液体を吸収しやすいため、担体の内部に遷移元素イオンを含む溶液を含浸させることができる。従って、担体の内部に触媒元素(遷移元素合金)が担持されるので、有効表面積の大きく反応性に優れた触媒を製造することができる。

【0073】
また、本発明の製造方法において遷移元素イオンを担体に含浸させた場合、担体に上記溶液を含浸させて水素ガス中に保持するだけで触媒を製造することができるので、製造が簡便となる。また、担持量の調整は、溶液の濃度や含浸量を調整するだけでよいので、担持量の調整を簡便かつ正確に行うことができる。

【0074】
次に、本発明の遷移元素触媒または遷移元素合金触媒を使用して選択的水素添加を行う方法について説明する。本発明の方法では、反応対象物を含む溶液中に、水素ガスの存在下で遷移元素触媒または遷移元素合金触媒を浸漬する。反応が終了したら、溶液から遷移元素触媒または遷移元素合金触媒を取り出し、適宜洗浄および乾燥を行う。本発明の方法によれば、溶液中に水素ガスを導入して遷移元素触媒または遷移元素合金触媒を浸漬するだけでよく、従来のような特別な電解装置を必要としない。

【0075】
本発明の遷移元素触媒は、不織布などのシート状のまま使用することができるため、使用によって触媒活性が低下しない。従って、触媒として繰り返し使用することができる。

【0076】
本明細書において、選択的水素添加とは、不飽和結合を有する反応対象物に水素添加をする際に、所定の水素添加以外の望まない反応を生じないか、または抑制しつつ水素添加することを意味する。また、選択的水素添加には、以下のような水素添加が例示されるが、水素添加される不飽和結合は、反応に使用される化合物および反応条件などの種々の条件によって変化するであろう。

【0077】
たとえば、水素添加の代わりに、反応対象物の所定の基の加水素分解、エポキシド開環およびベンジル位カルボニル還元などの副反応が生じることを防止しつつ、所定の水素添加のみを進行することができる。また、反応対象物が複数の不飽和結合を有する場合、所定の位置の水素添加を選択的に生じさせることができる。

【0078】
本発明の選択的水素添加の反応対象物としては、上記のように副反応を防止することが望まれるものとして、1.加水素分解によって切断/除去される基と炭素—炭素二重結合および/または炭素—炭素三重結合不飽和結合とを有する化合物、2.加水素分解によって切断/除去される基を有する化合物と、上記不飽和結合を有する化合物との混合物が想定される。また、上記のように所定の位置の水素添加が望まれるものとして、3.複数の上記不飽和結合を有する化合物、4.上記不飽和結合を有する化合物の2種類以上の混合物が想定される。

【0079】
副反応を防止することが望まれる場合、加水素分解によって切断/除去される基は、通常の接触還元操作によって切断される基である。たとえば、アリルアルコール由来の基およびベンジルアルコール由来の基などが想定される。具体的には、アリルオキシ基、ベンジルオキシカルボニル基(Z)、t-ブチルオキシカルボニル基(BoC)、p-ニトロベンジルオキシカルボニル基(Z(OMe))、p-ビフェニルイソプロピルオキシカルボニル基(Bpoc)、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基(Fmoc)、イソニコチニルオキシカルボニル基(iNoc)、ジフェニルメチルオキシカルボニル基(Dpmoc)、C6H5-N=N-C6H4CH2OCO-(PZ)、C6H4(4OCH3)-N=N-C6H4CH2OCO-(Mz)、C6H4(4Cl)-CH2OCO-(Z(Cl))、C6H3(2,4Cl2)-CH2OCO-(Z(2,4Cl2))、ベンジルオキシ基(OBzl)、C6H4(4NO2)-CH2OCO-(OBzl(NO2))、C6H4(4OCH3)-CH2O-(OBzl(OMe))、
【化1】
JP0005605619B2_000002t.gif
(OPic)、(C6H5)2CHO-(OBzh)およびC6H5CH2OCH2-(Bom)、並びにこれらの誘導体などが挙げられる。

【0080】
また、所定の位置の水素添加が望まれる反応対象物には、限定されないが、a)炭素-炭素1置換二重結合、炭素-炭素2置換二重結合および炭素-炭素三重結合から選択される少なくとも1つの結合と、炭素-炭素3置換二重結合および/または炭素-炭素四置換二重結合とを有する化合物、b)炭素-炭素1置換二重結合、炭素-炭素2置換二重結合、及び炭素-炭素三重結合から選択される少なくとも1つを有する化合物、並びにc)上記aおよびbの化合物を適宜組み合わせた混合物などが含まれる。

【0081】
本発明の方法において、反応対象物が液体の場合、反応には、該反応対象物をそのまま使用することができる。しかし、反応対象物は、溶媒に溶解して使用してもよい。溶媒は、反応温度にて液体である任意の溶媒を使用することができる。たとえば、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、アルコール類およびフェノール類などの種々の有機溶媒を使用することができる。これら溶媒は、反応基質の種類、反応温度または目的とする反応時間などに応じて適宜選択することができる。また、溶媒は、単独であっても、または二種類以上を組み合わせて使用してもよい。溶媒は、反応基質の水素添加反応が優先されるように、水素添加反応を起こす不飽和結合を有する化合物からなる溶媒でないことが好ましい。たとえば、芳香族炭化水素類、アルキル置換芳香族炭化水素類、ハロゲン置換芳香族炭化水素類およびアルコキシ置換芳香族炭化水素類などの非プロトン性の芳香族炭化水素類を使用することができ、これにより、加水素分解反応をほとんど生じさせることなく水素添加反応を進行させることができる。

【0082】
本発明の方法において、遷移元素触媒および遷移元素合金触媒の量は、任意の量であることができる。たとえば、担体を除く正味の触媒物質の量は、反応基質(すなわち、反応対象物)に対し、1×10-5~100重量%、たとえば1×10-2~100重量%または5×10-1~5重量%であることができる。

【0083】
本発明の方法において、反応系に存在させる水素ガスの圧力は、任意の圧力であることができる。たとえば、水素ガスの圧力は、1.013×104~1.013×109Pa、たとえば5.065×104~1.013×106Paまたは1.013×105~2.026×105Paであることができる。

【0084】
本発明の方法において、反応温度は、任意の温度であることができる。たとえば、反応温度は、-200~1000℃、たとえば0~100℃または10~30℃であることができる。

【0085】
本発明の方法において、反応時間は、任意の時間であることができる。たとえば、反応時間は、1分~1000時間、たとえば30分~240時間または30分~72時間であることができる。

【0086】
本発明の遷移元素触媒または遷移元素合金触媒を使用することにより、上記した反応の他、従来の黒色粉末状パラジウムブラックを使用したときと同様の接触還元操作を行うことができる。たとえば、本発明の遷移元素触媒または遷移元素合金触媒を使用して、ニトロ化合物を還元して対応するアミンを製造したり、ニトリルを還元して対応する第一級アミンを製造したりすることができる。

【0087】
次に、実施例および比較例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これらに限定されない。
【実施例】
【0088】
実施例1. パラジウムから白金への電子移動の確認
1. 溶液の作製
ポリプロピレン製の不織布(ダイワボウ社製、型版RPX-101、目付49.7g/m2、厚み1.2mm)を5×2cmに切り出した(重さ5.0mg)。さらに折り畳み、縦横2.5×1cm、厚み0.5cmとした。一方、150mgの塩化パラジウムPdCl2(MW:177)を1mol/Lの塩酸10mLに溶解し、濃度8.5×10-2mol/Lの0.11mLの塩化パラジウム塩酸溶液(9.4 mmol)を作成した。これを折り畳んだ不織布に滴下して含浸させた。
【実施例】
【0089】
2. 白金溶液の作製
ポリプロピレン製の不織布(ダイワボウ社製、型版RPX-101、目付49.7g/m2、厚み1.2mm)を5×2cmに切り出した(重さ5.0mg)。さらに折り畳み、縦横2.5×1cm、厚み0.5cmとした。一方、226mgの塩化白金PtCl2(MW: 266)を5mol/Lの塩酸2mLに溶解し、全体が10mlになるように希釈して濃度8.5×10-2mol/Lの0.05mlの塩化白金塩酸溶液(4.3mmol)を作成した。これを折り畳んだ不織布に滴下して含浸させた。
【実施例】
【0090】
3. 遷移元素溶液の還元
パラジウム溶液および白金溶液を含浸させたそれぞれの不織布を密閉室に吊るした。図5に示したように、2つの不織布は、不織布の一端を接触可能なように吊した。また、不織の両端から各溶液をそれぞれ含浸させ、境界に空白が生じるようにしてパラジウム溶液と白金溶液とが接触しないようにしておいた。この状態で0.1MPa(常圧)の水素ガスを約20分間導入した。このとき、不織布に浸漬させたパラジウム溶液のみが黒っぽくなり、一方、白金溶液の色は、変化しなかった。次いで、境界上に数滴の白金溶液を含浸させてパラジウム溶液と白金溶液とを接触させ、さらに0.1MPa(常圧)の水素ガスを約20分間導入した。
【実施例】
【0091】
4. 結果
上記のとおり、パラジウム溶液と白金溶液とが接触しないようにして水素ガスを導入した場合、パラジウム溶液の色は、オレンジ色から黒っぽい色に変化し、パラジウムイオンが水素によって還元されてパラジウムブラックを生じたと考えられる。一方、白金溶液の色は、黄色のまま変化することがなかった。従って、白金イオンは、単に0.1MPaの水素ガスに暴露するだけでは還元されないことが明らかとなった。しかし、パラジウム溶液の色が黒っぽい色に変化した後に、白金溶液をパラジウム溶液と接触させると共に、さらに水素ガスに暴露すると、白金溶液の色も、黒っぽい色へと変化した。すなわち、白金イオンが還元されて白金ブラックを生じたと考えられる。
【実施例】
【0092】
白金イオンは、パラジウムイオンとは異なり、従来の水素ガスによる反応条件では、還元されないが、パラジウムを介して還元されたものと考えられる。その結果、白金イオンは、アモルファス状態の固体として析出して、不織布に担持されると考えられる。
【実施例】
【0093】
ロジウム、イリジウム、ルテニウムおよびレニウムなどのその他の遷移元素についても、白金と同様に従来の水素ガスによる反応条件では、還元されなかった(データ示さず)。従って、これらの遷移元素についても本発明のパラジウムを介した還元方法が有効であると思われる。
【実施例】
【0094】
実施例2.遷移元素触媒の作製
1. パラジウム還元触媒の作製
ポリプロピレン製の不織布(ダイワボウ社製、型版RPX-101、目付49.7g/m2、厚み1.2mm)を5×2cmに切り出した(重さ5.0mg)。さらに折り畳み、縦横2.5×1cm、厚み0.5cmとした。一方、150mgの塩化パラジウムPdCl2(MW:177)を1mol/Lの塩酸10mLに溶解し、濃度8.5×10-2mol/Lの0.11mLの塩化パラジウム塩酸溶液(9.4mmol)を作成した。これを折り畳んだ不織布に滴下して含浸させた。次に、含浸後の不織布を密閉室に吊るし、0.1MPa(常圧)の水素ガスを導入し、室温で180分放置して不織布にパラジウムを担持させた。担持後の不織布を水およびアセトンで充分に洗浄し、乾燥させて、溶媒を完全に取り除き、パラジウム還元触媒を得た。触媒の理論担持量は、1.0mgである。担体を含む全体の重量は、約6.0mgであった。
【実施例】
【0095】
2. 白金還元触媒の作製
ポリプロピレン製の不織布(ダイワボウ社製、型版RPX-101、目付49.7g/m2、厚み1.2mm)を5×2cmに切り出した(重さ5.0mg)。さらに折り畳み、縦横2.5×1cm、厚み0.5cmとした。一方、226mgの塩化白金PtCl2(MW:266)を5mol/Lの塩酸2mLに溶解し、全体が10mlになるように希釈して1mol/Lの塩酸10mLとし、濃度8.5×10-2mol/Lの0.05 mlの塩化白金塩酸溶液(4.3mmol)を作成した。これを折り畳んだ不織布に滴下して含浸させた。次に、含浸後の不織布を密閉室に吊るし、0.1MPa(常圧)の水素ガスを導入し、室温で180分放置して不織布に白金を担持させた。しかし、上記の条件下では、白金溶液の色は、黄色のまま変化することがなかった。その後、さらに数時間放置したが、白金が得られることは無かった。従って、白金イオンでは、単に0.1MPaの水素ガスに暴露するだけでは還元されてアモルファス状態の固体を析出しなかった。
【実施例】
【0096】
3. パラジウム-白金合金触媒の作製
ポリプロピレン製の不織布(ダイワボウ社製、型版RPX-101、目付49.7g/m2、厚み1.2mm)を5×2cmに切り出した(重さ5.0mg)。さらに折り畳み、縦横2.5×1cm、厚み0.5cmとした。一方、一方、150mgの塩化パラジウムPdCl2(MW:177)を1mol/Lの塩酸10mLに溶解し、濃度8.5×10-2mol/Lの0.11mLの塩化パラジウム塩酸溶液(9.4mmol)を作成した。また、226mgの塩化白金PtCl2(MW:266)を5mol/Lの塩酸2mLに溶解し、全体が10mlになるように希釈して1mol/Lの塩酸10mLにした、濃度8.5×10-2mol/Lの0.05mlの塩化白金塩酸溶液(4.3mmol)を作成した。両方の溶液を混合し、折り畳んだ不織布に滴下して含浸させた。次に、含浸後の不織布を密閉室に吊るし、0.1MPa(常圧)の水素ガスを導入し、室温で180分放置して不織布にパラジウムを担持させた。担持後の不織布を水およびアセトンで充分に洗浄し、乾燥させて、溶媒を完全に取り除き、パラジウム-白金合金触媒を得た。触媒の理論担持量は、パラジウムおよび白金について、それぞれ1.0mgおよび1.1mg(モル比ca.2:1)である。
【実施例】
【0097】
比較のために、粉末のパラジウムブラック(和光純薬工業株式会社製)(以下、Pd black(WAKO))を用意した。また、粉末のPd-C(粉状活性炭にPd微粉末を添着させたもの、川研ファインケミカル株式会社製、Pd担持量5%、Pd活性0.2%)(以下、5%Pd-C)も用意した。さらに、塩化パラジウムをギ酸により還元することにより、公知の方法で得られた粉末のパラジウムブラック(以下、Pd black(handmade))も用意した。また、パラジウム箔も用意した。
【実施例】
【0098】
実施例3.選択的水素添加反応1
本実施例では、本発明の方法によって製造したパラジウム-白金合金触媒の選択的水素添加を確認した。
【実施例】
【0099】
水素添加し得る二重結合を2つ有する化合物1を用意した。化合物1に対して生じる還元反応を以下の反応式に示してある。
【実施例】
【0100】
【化2】
JP0005605619B2_000003t.gif
ここで、式Aは、反応基質である化合物1を示す。また、式Bは、末端の二重結合が水素添加された部分水素化生成物を示す。式Cは、さらにエステルに結合している3置換二重結合部も水素添加された生成物を示す。この化合物について、本発明の方法によって製造したパラジウム-白金合金触媒を使用して、還元反応を進行させた。
【実施例】
【0101】
反応は、以下の通りに行った。ます、この化合物1を溶媒に7.0×10-3mol/Lとなるよう溶解して得た溶液に、4%w/w(反応基質100gに対し触媒4g)となるように触媒を浸漬した。溶媒には、トルエンを使用した。次いで、水素雰囲気で所定時間攪拌して反応させた。反応後、溶液から触媒を取り出し、溶媒留去後の残渣(生成物)の重量を測定した。また、さらに残渣をNMR(核磁気共鳴法)測定することにより、生成物の構造を特定した。また、反応は室温にて行った。結果を表1に示してある。
【実施例】
【0102】
【表1】
JP0005605619B2_000004t.gif
表中、hは、時間を示す。各化合物の下の%は、各時間における反応液中の存在割合を示す。SMは、開始原料を示しており、未反応基質の割合を意味する。
【実施例】
【0103】
上記表1から明らかなように、本発明の方法によって製造したパラジウム-白金合金触媒は、反応が4時間経過した時点で1置換二重結合部の選択的水素添加を53%の収率で行うことができた。また、反応開始から8時間後には、1置換二重結合部の選択的水素添加を70%の収率で行うことができ、反応開始から24時間後には、1置換二重結合部の選択的水素添加を100%の収率で行うことができた。その後、72時間経過しても3置換二重結合部の水素添加が生じず、1置換二重結合への水素添加の選択性がより優れたものとなった。
【実施例】
【0104】
一方、比較として使用したPd black(WAKO)、PdO2(WAKO)、5%Pd-C、Pd
black(handmade)およびPd箔を触媒として使用した場合の結果を以下の表2に示した。
【実施例】
【0105】
【表2】
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表中、hは、時間を示す。各化合物の下の%は、各時間における反応液中の存在割合を示す。
【実施例】
【0106】
表2に示したように、反応が1時間経過した時点で、1置換二重結合部のみならず3置換二重結合部の水素添加も進行してしまい、3置換二重結合部を還元することなく1置換二重結合部のみ部分水素添加を行うことができなかった。また、パラジウム箔の場合は、触媒反応が全く生じなかった。以上のことから、本発明の遷移元素触媒を用いると所定位置への選択的水素添加を高収率で進行させることができ、望まれない位置における水素添加が進行しないことが明らかである。
【実施例】
【0107】
実施例4.選択的水素添加反応2
本実施例では、本発明の方法によって製造したパラジウム-白金合金触媒の選択的水素添加を確認した。
【実施例】
【0108】
水素添加し得る二重結合を2つ有する化合物2を用意した。化合物2に対して生じる還元反応を以下の反応式に示してある。
【実施例】
【0109】
【化3】
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【実施例】
【0110】
ここで、左式の化合物は、反応基質である。右式の左側化合物は、目的とする生成物(白抜矢印の位置、1置換二重結合部を水素添加する)を示す。また、右式の右側化合物は、望まない生成物(白抜矢印の2ヶ所の位置、1置換二重結合部および3置換二重結合部を水素添加する)である。
【実施例】
【0111】
反応は、上記実施例3.選択的水素添加反応1と同様に行った。結果を表3に示してある。
【実施例】
【0112】
【表3】
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表中、hは、反応時間を示す。各化合物の下の%は、各時間における反応液中の存在割合を示す。SMは、開始原料を示しており、未反応基質の割合を意味する。
【実施例】
【0113】
上記表3から明らかなように、本発明の方法によって製造したパラジウム-白金合金触媒は、反応が4時間経過した時点で1置換二重結合部の選択的水素添加を45%の収率で行うことができた。また、反応開始から8時間後には、1置換二重結合部の選択的水素添加を77%の収率で行うことができ、反応開始から24時間後には、1置換二重結合部の選択的水素添加を100%の収率で行うことができた。その後、72時間経過しても3置換二重結合部の水素添加が生じず、1置換二重結合への水素添加の選択性がより優れたものとなった。
【実施例】
【0114】
実施例5.選択的水素添加反応3
本実施例では、本発明の方法によって製造したパラジウム-白金合金触媒の選択的水素添加を確認した。
【実施例】
【0115】
水素添加し得る二重結合を2つ有する化合物3を用意した。化合物3に対して生じる還元反応を以下の反応式に示してある。
【実施例】
【0116】
【化4】
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【実施例】
【0117】
ここで、左式の化合物は、反応基質である。右式の左側化合物は、目的とする生成物(白抜矢印の位置、1置換二重結合部を水素添加する)を示す。
【実施例】
【0118】
反応は、上記実施例3.選択的水素添加反応1と同様に行った。結果を表4に示してある。
【実施例】
【0119】
【表4】
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表中、hは、反応時間を示す。各化合物の下の%は、各時間における反応液中の存在割合を示す。SMは、開始原料を示しており、未反応基質の割合を意味する。
【実施例】
【0120】
上記表4から明らかなように、本発明の方法によって製造したパラジウム-白金合金触媒は、反応が4時間経過した時点で1置換二重結合部の選択的水素添加を71%の収率で行うことができた。また、反応開始から8時間後には、1置換二重結合部の選択的水素添加を74%の収率で行うことができ、反応開始から24時間後には、1置換二重結合部の選択的水素添加を91%の収率で行うことができた。その後、72時間経過しても3置換二重結合部の水素添加が生じず、1置換二重結合への水素添加の選択性がより優れたものとなった。
【実施例】
【0121】
実施例6.選択的水素添加反応4
本実施例では、本発明の方法によって製造したパラジウム-白金合金触媒の選択的水素添加を確認した。
【実施例】
【0122】
水素添加し得る二重結合を2つ有する化合物4を用意した。化合物4に対して生じる還元反応を以下の反応式に示してある。
【実施例】
【0123】
【化5】
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【実施例】
【0124】
ここで、左式の化合物は、反応基質である。右式の左側化合物は、目的とする生成物(白抜矢印の位置、1置換二重結合部を水素添加する)を示す。
【実施例】
【0125】
反応は、上記実施例3.選択的水素添加反応1と同様に行った。結果を表5に示してある。
【実施例】
【0126】
【表5】
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表中、hは、反応時間を示す。各化合物の下の%は、各時間における反応液中の存在割合を示す。SMは、開始原料を示しており、未反応基質の割合を意味する。
【実施例】
【0127】
上記表5から明らかなように、本発明の方法によって製造したパラジウム-白金合金触媒は、反応が4時間経過した時点で1置換二重結合部の選択的水素添加を100%の収率で行うことができた。また、反応開始から24時間経過しても、ベンジル基の加水素分解が生じず、1置換二重結合への水素添加の選択性がより優れたものとなった。
【実施例】
【0128】
以上のことから、本発明の触媒を使用することにより、ベンジル基の加水素分解のない選択的水素添加を高収率で行えることが明らかである。また、本発明の合金触媒は、不織布などの担体に担持されたシート状の形状として製造することができるため、取り扱いが容易で、触媒量が少なくてもよいという利点を有する。
【実施例】
【0129】
実施例7.選択的水素添加反応5
本実施例では、実施例4の実験と同様の実験において、本発明の方法によって製造したパラジウム-白金合金触媒の量を2%w/w(反応基質100gに対し触媒2g)として、選択的水素添加を確認した。
【実施例】
【0130】
結果を表6に示してある。
【実施例】
【0131】
【表6】
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表中、hは、反応時間を示す。各化合物の下の%は、各時間における反応液中の存在割合を示す。SMは、開始原料を示しており、未反応基質の割合を意味する。
【実施例】
【0132】
上記表6の結果および実施例4の結果から明らかなように、本発明の方法によって製造したパラジウム-白金合金触媒は、触媒量を調整することにより、反応生成物の選択性を調整することができた。したがって、反応条件により、非常に高い選択性で所望の生成物を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0133】
パラジウム-白金合金触媒などの遷移元素合金触媒は、自動車の排気ガスの触媒であるため、合金触媒の活性に応じて、NOxやSOxなどの分解浄化も可能となる。また、本発明の遷移元素触媒および遷移元素合金触媒の一態様として、シート状などの担持型にすることができるため、環境に適応した調和型触媒への用途にも大きく道が開ける。また、本発明の遷移元素触媒および遷移元素合金触媒の製造時に、カーボンフェルトなどに担持させれば、水素電池や新しい電極材料として利用することもできる。
【符号の説明】
【0134】
2・・・担体
2a・・・樹脂繊維
4・・・触媒物質(遷移元素)
10・・・遷移元素触媒
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3