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明細書 :ナノサイズ炭酸カルシウムの製造法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5467276号 (P5467276)
公開番号 特開2009-155120 (P2009-155120A)
登録日 平成26年2月7日(2014.2.7)
発行日 平成26年4月9日(2014.4.9)
公開日 平成21年7月16日(2009.7.16)
発明の名称または考案の名称 ナノサイズ炭酸カルシウムの製造法
国際特許分類 C01F  11/18        (2006.01)
FI C01F 11/18 C
請求項の数または発明の数 1
全頁数 7
出願番号 特願2007-331657 (P2007-331657)
出願日 平成19年12月25日(2007.12.25)
審査請求日 平成22年12月10日(2010.12.10)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】899000057
【氏名又は名称】学校法人日本大学
発明者または考案者 【氏名】小嶋 芳行
個別代理人の代理人 【識別番号】110000084、【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
【識別番号】100068700、【弁理士】、【氏名又は名称】有賀 三幸
【識別番号】100077562、【弁理士】、【氏名又は名称】高野 登志雄
【識別番号】100096736、【弁理士】、【氏名又は名称】中嶋 俊夫
【識別番号】100117156、【弁理士】、【氏名又は名称】村田 正樹
【識別番号】100111028、【弁理士】、【氏名又は名称】山本 博人
審査官 【審査官】後藤 政博
参考文献・文献 国際公開第2006/045768(WO,A1)
特開2003-040617(JP,A)
MINGZHAO HE et al.,Ultrasonication-Assisted Synthesis of Calcium Carbonate Nanoparticles,Chem. Eng. Comm.,2005年10月,Vol.192,No.10/12,page.1468-1481
CHOI W S et al.,合成沈降性硬質炭酸カルシウムの粒度分布および粒子形状に及ぼす各種添加剤の影響,粉体に関する討論会講演論文集,1999年,Vol.37,page.18-22
山口耕平 他,ソノケミカル法による炭酸カルシウムのキャラクター制御,第23回日本セラミックス協会関東支部研究発表会,2007年 8月30日,page.48
遠山岳史 他,機能性材料の創成のための水酸化カルシウムの役割,J.Soc.Inorg.Mater.Japan,2007年 7月 1日,Vol.14,No.329,page.239-248
調査した分野 C01F 11/18
特許請求の範囲 【請求項1】
0.7~2.5質量%の水酸化カルシウム水懸濁液に、初期温度2~23℃で40~200kHzの超音波を照射しながら二酸化炭素を吹き込むことを特徴とする粒子径5~40nmのナノサイズ炭酸カルシウムの製造法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、紙、ゴム、プラスチック等の充填材として有用なナノサイズ炭酸カルシウムの簡便な製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭酸カルシウムは天然原料から機械的に粉砕分級した重質炭酸カルシウム、胡粉、チョーク等と、化学的に製造される沈降炭酸カルシウムに分けることができる。
このうち、沈降炭酸カルシウムは、紙、塗料、顔料、ゴム、プラスチック等の充填材として広く使用されており、そのさらなる微粒子化、粒径の均一性等が求められている。
【0003】
沈降炭酸カルシウムは一般に水酸化カルシウム懸濁液に炭酸ガスを反応させる方法、塩化カルシウムに炭酸ナトリウムを反応させる方法、水酸化カルシウムに炭酸ナトリウムを反応させる方法によって製造されている。これらの方法により得られる沈降炭酸カルシウムの比表面積は通常20m2/g程度(平均粒径が0.1μm程度)である(非特許文献1)ことから、さらに小さな粒子径を有する炭酸カルシウムの製造法が望まれている。
【0004】
粒子径の小さな炭酸カルシウムの製造法としては、合成時に乳化剤を用いる方法が知られている(特許文献1等)。

【特許文献1】特開平5-319817号公報
【非特許文献1】荒井康夫,安江 任,粉体と工業,21,No.4,62-71(1989).
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、乳化剤の存在下に得られた炭酸カルシウム粒子の表面には乳化剤が吸着しており、その用途は限定されてしまうという問題があった。
従って、本発明は、乳化剤を用いずに、簡便な手段でナノサイズの沈降炭酸カルシウムを効率良く製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで本発明者は、乳化剤を使用しないナノサイズの沈降炭酸カルシウムの合成条件について種々検討したところ、水酸化カルシウム水懸濁液に炭酸ガスを吹き込む際に、超音波を照射すれば微粒子炭酸カルシウムが効率良く得られることを見出し、さらに検討したところ、水酸化カルシウムの濃度、反応温度及び超音波の周波数を調整することによりナノサイズの炭酸カルシウムが安定して効率良く得られることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、0.5~4質量%の水酸化カルシウム水懸濁液に、初期温度0~25℃で20kHz以上の超音波を照射しながら二酸化炭素を吹き込むことを特徴とするナノサイズ炭酸カルシウムの製造法を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば乳化剤を使用しないため、表面に乳化剤の存在しない、広範囲な用途に使用可能なナノサイズの炭酸カルシウムが安定して効率良く得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明方法で用いる水酸化カルシウム水懸濁液は、水酸化カルシウムを水に懸濁させることにより得られ、その水酸化カルシウム濃度は、撹拌できる程度の流動性を有すればよいが、本発明方法で用いる水酸化カルシウム水懸濁液の濃度は0.5~4質量%であるのが、ナノサイズの炭酸カルシウムを安定に得る上で重要である。
水酸化カルシウム水懸濁液の濃度が低すぎる場合には、炭酸カルシウムの平均粒径が大きくなり、高すぎる場合は、塩基性炭酸カルシウムが副生したり、反応終了までの時間がかかり工業的には好ましくない。さらに好ましい水酸化カルシウム水懸濁液の濃度は、0.7~3質量%であり、特に好ましくは0.7~2.5質量%である。
【0010】
本発明方法における初期温度、すなわち反応開始時の水酸化カルシウム水懸濁液の温度は0~25℃であり、好ましくは5~25℃、特に好ましくは10~24℃である。25℃を超えると、反応の進行に伴って温度が上昇し、得られる炭酸カルシウムの粒子径が大きくなったり、高温に弱い超音波発振器が壊れる可能性が高くなる。
【0011】
本発明においては、二酸化炭素の吹き込みを20kHz以上の超音波を照射しながら行う。超音波照射を反応終了後に行った場合にはナノサイズの炭酸カルシウムは得られないことから、本発明方法は超音波により生成した炭酸カルシウム粒子を分散させているのではない。従って、炭酸カルシウム生成反応時に超音波照射することが必要である。用いる超音波の周波数は20kHz以上であることが、ナノサイズの炭酸カルシウムを得る上で重要である。好ましい周波数は20~500kHzであり、さらに好ましくは40~500kHzであり、特に好ましくは40~200kHzである。水酸化カルシウムと二酸化炭素が反応している間は、超音波照射を継続するのが好ましい。
【0012】
超音波の照射は、単独の超音波発生源を用いて行ってもよいが、複数の超音波発生源を用いて行ってもよい。超音波の発生方法は特に限定されず、例えばランジュバン型、ホーン型等が挙げられる。複数の超音波の発生源を用いる場合、ランジュバン型の発生源とホーン型の発生源とを併用するのが好ましい。
吹き込む二酸化炭素の純度は、通常30~100質量%、好ましくは50~100質量%、特に好ましくは90~100質量%である。吹き込む二酸化炭素の流速は、水酸カルシウム懸濁液1Lあたり通常0.3~10L/min、好ましくは0.3~2L/minである。二酸化炭素の吹き込み時間は、水酸化カルシウム水懸濁液と二酸化炭素の純度、流速により決まる。
また、二酸化炭素の吹き込みは、二酸化炭素の懸濁液との接触面積を高め、反応時間を短縮するために、反応容器の下部に吹き込むようにしたり、二酸化炭素の気泡が小さくなるようボールフィルター等を用いて行うのが好ましい。
反応の終了は、水酸化カルシウム水懸濁液のpHは12以上であり、炭酸カルシウム水懸濁液のpHは10以下であることから、懸濁液のpHが10以下であることを測定することによって確認できる。なお、二酸化炭素を吹き込んでいる時間は、超音波照射を継続するのが好ましい。
【0013】
このようにして生成した炭酸カルシウムは、ナノサイズであるが、凝集しているので懸濁液をろ過することにより回収することができる。回収された炭酸カルシウムは通常乾燥する。
【0014】
得られた炭酸カルシウム粒子の粒子径はナノサイズであり、その粒度分布も小さい。粒子径は透過電子顕微鏡(TEM)観察及びBET式比表面積法により求められた比表面積の値から求めた。このとき下記の式により平均粒径を求めることができる。
【0015】
平均粒径(m)=6/(比表面積(m2/g)×密度(g/m3))
【0016】
本発明により得られる炭酸カルシウムの粒子径は5~100nmであり、好ましくは10~40nmである。超音波を照射せずに水酸化カルシウム水懸濁液に二酸化炭素を反応させた場合に得られる炭酸カルシウムの平均粒径が200nm以上であるのに対して極めて小さくなっている。
本発明の方法においては、反応条件を制御することにより、得られる炭酸カルシウムの粒径を制御することができる。たとえば、懸濁液濃度を低くする及び/又は反応開始温度を低くすることにより、より粒径の小さい炭酸カルシウムを得ることができる。
【0017】
本発明の方法により得られる炭酸カルシウムのゼータ電位は+30eV程度と、通常の炭酸カルシウムに比較して大きいので、分散剤を用いずとも水に均一分散させることができる。
【0018】
本発明の方法により得られた炭酸カルシウムは、ナノサイズであり、かつ、表面に乳化剤が存在しないので、紙への充填材、塗料、インキ等の顔料、ゴム、プラスチックへの充填材として有用である。
【実施例】
【0019】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれにより何ら制限されるものではない。
【0020】
実施例1
水酸化カルシウム(関東化学株式会社製)3gを、22℃の水150gに加え、水酸化カルシウム水懸濁液を得た。この懸濁液(22℃)に、40kHzの超音波を照射しながら、二酸化炭素を0.5L/minの流速で吹き込んだ。
そのときの水懸濁液の温度変化を図1に示す。また、二酸化炭素の吹き込みとともに炭酸カルシウムが生成した。経時的にサンプルを採取し、生成した炭酸カルシウム粒子の比表面積をBET式比表面積法により測定した。その時間と比表面積との関係を図2に示す。
【0021】
図2から明らかなように、20kHz以上、特に40kHz以上の超音波を照射しながら、二酸化炭素を吹き込んだ場合、比表面積の大きな(粒子径の小さな)炭酸カルシウムが得られることが判明した。
また、炭酸カルシウムの生成率と得られる炭酸カルシウムの粒子径との関係を図3に示す。図3から、反応時間が3分以上8分以内の場合に粒子径の小さな炭酸カルシウムが効率良く得られることがわかる。
【0022】
実施例2
水酸化カルシウム水懸濁液の、初期温度を変化させる以外は実施例1と同様にして、初期温度と得られる炭酸カルシウムの粒子径との関係を検討した。
その結果、図4に示すように、初期温度が0~25℃の場合、特に2~23℃の場合に特に炭酸カルシウムの粒子径が小さくなることが判明した。
【0023】
実施例3
水酸化カルシウム水懸濁液の濃度を変化させる以外は、実施例1と同様にして、懸濁液濃度と得られる炭酸カルシウムの粒子径との関係を検討した。
その結果、図5に示すように、懸濁液濃度が0.5~4質量%、特に0.7~2.5質量%の場合に、特に炭酸カルシウムの粒子径が小さくなることが判明した。
【0024】
比較例1
超音波の周波数を20kHz未満とした以外は、実施例1と同様にして反応を行ったところ、得られた炭酸カルシウムの比表面積は30m2/g以下であり、微粒子状の炭酸カルシウムは得られなかった。
超音波の周波数を40kHzにした条件で得られた炭酸カルシウム粒子のTEM像を図6に示す。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】水酸化カルシウム水懸濁液の温度変化を示す図である。
【図2】反応時間と炭酸カルシウムの比表面積との関係を示す図である。
【図3】反応時間と炭酸カルシウムの比表面積(白丸)との関係、及び反応時間と炭酸カルシウムの生成率(黒丸)との関係を示す図である。
【図4】反応温度と炭酸カルシウムの比表面積との関係を示す図である。
【図5】懸濁液濃度と炭酸カルシウムの比表面積との関係を示す図である。
【図6】本発明方法により得られた炭酸カルシウム粒子のTEM像を示す図である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5