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明細書 :高親和性IgE受容体γ鎖転写調節

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5131688号 (P5131688)
登録日 平成24年11月16日(2012.11.16)
発行日 平成25年1月30日(2013.1.30)
発明の名称または考案の名称 高親和性IgE受容体γ鎖転写調節
国際特許分類 C12N  15/09        (2006.01)
C12Q   1/02        (2006.01)
FI C12N 15/00 ZNAA
C12Q 1/02
請求項の数または発明の数 5
全頁数 11
出願番号 特願2007-539841 (P2007-539841)
出願日 平成18年9月20日(2006.9.20)
国際出願番号 PCT/JP2006/318571
国際公開番号 WO2007/043287
国際公開日 平成19年4月19日(2007.4.19)
優先権出願番号 2005272973
優先日 平成17年9月20日(2005.9.20)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成21年9月17日(2009.9.17)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】899000057
【氏名又は名称】学校法人日本大学
発明者または考案者 【氏名】羅 智靖
【氏名】高橋 恭子
個別代理人の代理人 【識別番号】100079108、【弁理士】、【氏名又は名称】稲葉 良幸
【識別番号】100080953、【弁理士】、【氏名又は名称】田中 克郎
【識別番号】100093861、【弁理士】、【氏名又は名称】大賀 眞司
審査官 【審査官】白井 美香保
参考文献・文献 国際公開第2005/037843(WO,A1)
国際公開第2004/013158(WO,A1)
国際公開第2005/028475(WO,A1)
THE JOURNAL OF BIOLOGICAL CHEMISTRY,1993年,vol.268 no.2,pp.1355-1361
THE JOURNAL OF BIOLOGICAL CHEMISTRY,1990年,vol.265 no.11,pp.6448-6452
Circulation,2002年,vol.105,pp.912-916
イラスト医学&サイエンスシリーズ 転写のメカニズムと疾患,2000年,pp.12-19
調査した分野 IPC
C12N 15/00-15/90
DB名
CA/BIOSIS/MEDLINE(STN)
CA/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
PubMed
CiNii
WPI
特許請求の範囲 【請求項1】
ヒト高親和性IgE受容体(FcεRI)γ鎖遺伝子の転写を調節する、配列番号1記載の塩基配列からなるDNA。
【請求項2】
ヒト高親和性IgE受容体(FcεRI)γ鎖遺伝子の転写を調節する、配列番号1記載の塩基配列からなるDNAを導入したベクター。
【請求項3】
配列番号1記載の塩基配列からなるFcεRIγ鎖遺伝子の転写調節領域からなるDNAと、Sp1との結合を調節する、ヒトの体外におけるFcεRIγ鎖遺伝子の転写調節方法。
【請求項4】
配列番号1記載の塩基配列からなるFcεRIγ鎖遺伝子の転写調節領域からなるDNAと、Sp1との結合を調節する化合物又はその塩のスクリーニング方法。
【請求項5】
配列番号1記載の塩基配列からなるFcεRIγ鎖遺伝子の転写調節領域からなるDNAを含むスクリーニング用キット。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、高親和性IgE受容体γ鎖発現調節に関わり、より詳細には、高親和性IgE受容体γ鎖遺伝子の転写制御及びその利用に関する。
【背景技術】
【0002】
肥満細胞や好塩基球の細胞膜上に発現する高親和性IgE受容体(以下「FcεRI」という。)はI型アレルギー反応において、鍵を握る糖蛋白質であることが知られている。FcεRIに結合した抗原特異的IgEが、対応する多価抗原(たとえば、杉花粉症の患者では杉花粉抗原、ダニアレルギー患者ではダニ抗原)によって架橋されると、FcεRIは凝集し、シグナル伝達機構が作動し、肥満細胞が初めて活性化される。その結果、アレルギー性炎症を惹起する種々の化学伝達物質、すなわち予め細胞内顆粒に蓄えられているヒスタミンの放出をはじめとして、細胞内代謝産物であるロイコトリエン、プロスタグランジンなどの新たな合成と放出が爆発的に誘導され、I型アレルギー反応が惹起される。
【0003】
さらに、肥満細胞上のFcεRIの凝集により、肥満細胞からのサイトカインの分泌が促進され、近接する血管内皮細胞に種々の接着分子の発現を誘導する。血液中の好酸球並びにリンパ球がこれらの接着分子を介して炎症局所の血管内皮細胞に結合し、集積する。結果として、遅発性喘息反応が惹起される。さらにまた、皮膚のランゲルハンス細胞に発現するFcεRIは、抗原提示、サイトカイン産出などにより、アトピー性皮膚炎の病態形成に寄与していると推定されている。
【0004】
これらのことから、I型アレルギーを特異的に支配するFcεRIを標的にして、この受容体からのシグナル伝達をその根幹で遮断することは、アレルギー予防・治療剤の開発に有望な戦略である。
【0005】
また、FcεRIは血小板活性化や糸球体腎炎に関与していることが知られており、このことからFcεRIを標的にして、血栓症や糸球体腎炎等の開発を行うことも有望である。
【0006】
ヒトにおいては、ヒトFcεRIが、α鎖、β鎖、および2つのγ鎖からなる四量体、あるいはα鎖と2つのγ鎖からなる三量体として、細胞表面上に発現して機能している。α鎖は、その細胞外領域で直接IgEと結合し、一方、β鎖・γ鎖は細胞内へのシグナル伝達に関与する。γ鎖はリガンド結合部位を有する他の分子と会合して細胞表面上で受容体を形成し、受容体のリガンド結合部位にリガンドが結合すると、γ鎖は細胞内にシグナルを伝達する。
【0007】
例えば、γ鎖は、FcεRIを介したアレルギー反応の誘導において細胞内に活性化シグナルを伝達する役割を果たすことが報告されている(例えば、非特許文献1~3参照)。また、γ鎖は、血小板上でコラーゲンレセプターGP VIと会合し、血小板活性化反応を誘導することが報告されている(例えば、非特許文献4参照)。
【0008】
さらに、γ鎖はIgG受容体FcγRIII、FcγRIやIgA受容体FcαRの構成因子でもあり、糸球体腎炎の発症にこれらのFcRが関与していることも示唆されている(例えば、非特許文献5参照)。

【非特許文献1】Ra C et al., Nature 341:752-754 (1989)
【非特許文献2】Blank U et al., Nature 337:187-189 (1989)
【非特許文献3】Kinet JP, Annual Review of Immunology 17:931-972 (1999)
【非特許文献4】Konishi H et al., Circulation 105(8):912-916 (2002)
【非特許文献5】Suzuki Y et al., Kidney Int. 54(4):1166-1174 (1998)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、高親和性ヒトIgE受容体γ鎖の転写調節領域については1993年にBrini ATらによる解析が行われたのみで、これまで、転写調節エレメントや転写調節因子を正確に同定するような詳細な解析は行われていない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、鋭意研究の結果、ヒトFcεRIγ鎖遺伝子の転写調節に関与する領域を未解析の領域中から特定し、さらにその領域に結合する転写因子を特定することに成功し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、(1)ヒト高親和性IgE受容体(FcεRI)γ鎖遺伝子の転写を調節する、配列番号1記載の塩基配列の一部又は全部を含むDNA;(2)配列番号1記載の塩基配列の一部又は全部を含むFcεRIγ鎖遺伝子の転写調節領域と、Sp1との結合を調節する、FcεRIγ鎖遺伝子の転写調節方法;(3)配列番号1記載の塩基配列の一部又は全部を含むFcεRIγ鎖遺伝子の転写調節領域と、Sp1との結合を調節する化合物又はその塩のスクリーニング方法;(4)ヒト高親和性IgE受容体(FcεRI)γ鎖遺伝子の転写を調節する、配列番号2記載の塩基配列の一部又は全部を含むDNA;(5)配列番号2記載の塩基配列の一部又は全部を含むFcεRIγ鎖遺伝子の転写調節領域と、Elf-1又はGABPα/βのヘテロ二量体との結合を調節する、FcεRIγ鎖遺伝子の転写調節方法;(6)配列番号2記載の塩基配列の一部又は全部を含むFcεRIγ鎖遺伝子の転写調節領域と、Elf-1又はGABPα/βのヘテロ二量体との結合を調節する化合物又はその塩のスクリーニング方法;(7)ヒト高親和性IgE受容体(FcεRI)γ鎖遺伝子の転写を調節する、配列番号3記載の塩基配列の一部又は全部を含むDNA;(8)配列番号3記載の塩基配列の一部又は全部を含むFcεRIγ鎖遺伝子の転写調節領域と、C/EBPとの結合を調節する、FcεRIγ鎖遺伝子の転写調節方法;(9)配列番号3記載の塩基配列の一部又は全部を含むFcεRIγ鎖遺伝子の転写調節領域と、C/EBPとの結合を調節する化合物又はその塩のスクリーニング方法;(10)Sp1、Elf-1、GABPα/βのヘテロ二量体、及びC/EBPから選ばれる少なくとも1つの転写因子の機能調節又は転写因子間の相互作用の制御によるヒト高親和性IgE受容体(FcεRI)γ鎖遺伝子の転写調節方法;(11)配列番号1、配列番号2、又は配列番号3に記載の塩基配列の一部又は全部を導入したベクター;(12)前記(3)(6)又は(9)に記載のスクリーニング方法に用いられる、スクリーニング用キット;(13)前記(3)、(6)又は(9)に記載のスクリーニング方法、あるいは前記(10)記載の転写調節方法を用いて得られる、FcεRIγ鎖遺伝子の転写を調節する化合物又はその塩を含む医薬;(14)前記医薬がアレルギー性疾患又は自己免疫疾患の予防・治療剤である、前記(13)記載の医薬;(15)前記医薬が血栓症の予防・治療剤である、前記(13)記載の医薬;(16)前記医薬が糸球体腎炎又はループス腎炎の予防・治療剤である、前記(13)記載の医薬;を提供する。
【0012】
すなわち、本発明者らは、ヒトγ鎖遺伝子をクローニングし、翻訳開始点上流の領域についてヒト細胞株を用いたレポーターアッセイを行った。その結果、nt -103/-75領域(塩基番号は、翻訳開始点を+1とする。以下同様。)に2ヶ所のエンハンサーエレメント(nt-98~-96を含む配列番号1記載の領域、及びnt-84~-82を含む配列番号2記載の領域)が存在することが判明した。EMSAにより、これらのエレメントのうち、前者にはSp1が、後者にはElf-1又はGABPα/βのヘテロ二量体が結合することが分かった。
【0013】
さらに、C/EBPの結合配列と相同性を持つ、nt -65~-61を含む配列番号3の領域がγ鎖プロモーターの活性化に寄与することが分かった。これらの転写因子を様々な組み合わせで過剰発現させてレポーターアッセイを行ったところ、転写活性は相乗的に増加し、複数の転写因子がγ鎖プロモーターを協調的に活性化することが示された。
【0014】
また、上述のとおり、γ鎖はFcεRIを介したアレルギー反応の誘導において細胞内に活性化シグナルを伝達する役割を果たすこと、γ鎖は血小板上でコラーゲンレセプターGP VIと会合し血小板活性化反応を誘導すること、並びにγ鎖はIgG受容体FcγRIII、FcγRIやIgA受容体FcαRの構成因子であり、糸球体腎炎の発症にこれらのFcRが関与していることから、本発明者らにより同定されたγ鎖遺伝子の発現調節領域及び制御因子は、アレルギー性疾患、自己免疫疾患、血栓症、及び糸球体腎炎、ループス腎炎等の予防・治療薬の開発のためのターゲットとして有用である。さらに、本発明は、オーダーメイド医療の遺伝子解析にも有用である。
【0015】
ヒトFcεRIγ鎖遺伝子のゲノム構造及び塩基配列については、すでに明らかになっている(GenBankのaccession number M33196;配列番号4)。本発明において、「配列番号1記載の塩基配列の一部又は全部を含む」とは、FcεRIγ鎖遺伝子の転写調節に必須な主要部を含む、という意味であって、特にnt-98~-96(塩基番号は、翻訳開始点を+1とする。)を中心とする配列を含むものである。
【0016】
「配列番号2記載の塩基配列の一部又は全部を含む」とは、FcεRIγ鎖遺伝子の転写調節に必須な主要部を含む、という意味であって、特にnt-84~-82(塩基番号は、翻訳開始点を+1とする。)を中心とする配列を含むものである。
【0017】
「配列番号3記載の塩基配列の一部又は全部を含む」とは、FcεRIγ鎖遺伝子の転写調節に必須な主要部を含む、という意味であって、特にnt-65~-61(塩基番号は、翻訳開始点を+1とする。)を中心とする配列を含むものである。
【0018】
また、本発明における「高親和性IgE受容体γ鎖」は、高親和性IgE受容体γ鎖として発見されたが、その後、他の免疫グロブリンFc受容体等においても共通の構成因子となっていることが明らかとなり、現在では「免疫グロブリン受容体γ鎖」とも呼ばれている。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ヒトFcεRIγ鎖遺伝子の転写抑制に関与する塩基配列が提供され、γ鎖発現を阻害する化合物又はその塩のスクリーニング方法及びそのキットが確立される。これにより、新しいアレルギー性疾患、自己免疫疾患、血栓症、糸球体腎炎、ループス腎炎の予防・治療剤の開発を進めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】レポーターアッセイによるヒトFcεRIγ鎖遺伝子5'領域の転写調節活性を示す。
【図2】ゲルシフトアッセイによる結合因子の同定を示す。(A)非標識二本鎖オリゴDNAを用いた競合試験(添加した非標識二本鎖DNAは、レーン3, 4:プローブと同じ配列、レーン5, 6:プローブの配列中の3塩基置換)(B)抗体を用いた試験。
【図3】ゲルシフトアッセイによる結合因子の同定を示す。(A)非標識二本鎖オリゴDNAを用いた競合試験(添加した非標識二本鎖DNAは、レーン3, 4:プローブと同じ配列、レーン5, 6:プローブの配列中の3塩基置換)(B)抗体を用いた試験。
【図4】部位特異的変異の導入が、ヒトFcεRIγ鎖遺伝子プロモーター活性に及ぼす効果を示す。
【図5】Hela細胞における各転写因子の過剰発現がヒトFcεRIγ鎖遺伝子プロモーター活性に及ぼす効果を示す。

【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
次に、本発明の実施の形態について説明する。以下の実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をこの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨を逸脱しない限り、さまざまな形態で実施することができる。
【0022】
本発明においては、FcεRIγ鎖遺伝子の転写調節に関与するDNA領域並びにその領域に結合する転写調節因子が決定されたことにより、FcεRIγ鎖発現を阻害する化合物又はその塩のスクリーニング方法及びスクリーニング用キットを構築することが可能となり、ひいてはアレルギー疾患、自己免疫疾患、血栓症、糸球体腎炎、及びループス腎炎の治療・予防剤の開発に資するものとなる。たとえば、同定した転写調節因子Sp1と特定した遺伝子領域の結合を阻害する物質を探索するといった方策により、γ鎖発現を阻害する化合物又はその塩を開発することが可能となる。
【0023】
ここで、化合物の塩とは生理学的に許容される酸(たとえば、無機酸、有機酸など)や、生理学的に許容される塩基(たとえば、アルカリ金属など)などとの塩である。とりわけ好ましいのは、生理学的に許容される酸付加塩である。かかる塩の具体例としては、無機酸として、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸との塩が挙げられ、あるいは有機酸として、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸などとの塩が挙げられ
る。
【0024】
本発明に係るスクリーニング方法及びスクリーニング用キットを用いて得られる、FcεRIγ鎖遺伝子の転写を調節する化合物又はその塩は、アレルギー性疾患、自己免疫疾患、血栓症、糸球体腎炎、及びループス腎炎の予防・治療剤として有用である。
【0025】
本発明により得られる化合物又はその塩は、必要に応じて糖衣を施した錠剤、カプセル剤、マイクロカプセル剤などとして経口的に、あるいは水若しくはそれ以外の薬学的に許容し得る液との無菌性溶液、または懸濁液剤などの注射剤の形で非経口的に使用できる。たとえば、本発明により得られる化合物又はその塩を、生理学的に認められる担体、香味剤、賦形剤、ベヒクル、防腐剤、安定剤、結合剤などとともに一般に認められた製剤実施に要求される単位用量形態で混和することによって製造することができる。
【0026】
これらの製剤における有効成分量は、指示された範囲の適当な用量が得られるようにするものである。錠剤、カプセル剤などに混和することができる添加剤としては、たとえば、ゼラチン、コーンスターチ、トラガント、アラビアゴムのような結合剤、結晶性セルロースのような賦形剤、コーンスターチ、ゼラチン、アルギン酸などのような膨化剤、ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤、ショ糖、乳糖又はサッカリンのような甘味剤、ペパーミント、アカモノ油またはチェリーのような香味剤などが用いられる。調剤単位形態がカプセルである場合には、前記タイプの材料にさらに油脂のような液体担体を含有することができる。注射のための無菌組成物は注射用水のようなベヒクル中の活性物質、胡麻油などのような天然産出植物油などを溶解又は懸濁させるなどの通常の製剤実施に従って処方することできる。
【0027】
注射用水の水性液としては、たとえば、生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液(たとえば、D-ソルビトール、D-マンニトール、塩化ナトリウムなど)などが挙げられ、適当な溶解補助剤、たとえばアルコール(たとえば、エタノールなど)、ポリアルコール(たとえば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、非イオン性界面活性剤(たとえば、ポリソルベート80(登録商標)、HCO-50など)などと併用してもよい。溶解補助剤として、たとえば、ゴマ油、大豆油などが挙げられ、溶解補助剤として安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどと併用してもよい。また、緩衝剤(たとえば、リン酸塩緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液など)、無痛化剤(たとえば、塩酸ベンザルコニウム、塩酸プロカインなど)、安定化剤(たとえば、ヒト血清アルブミン、ポリエチレングリコールなど)、保存剤(たとえば、ベンジルアルコール、フェノールなど)、酸化防止剤などと配合してもよい。調製された注射液は、通常、適当なアンプルに充填される。
【0028】
このようにして得られえた製剤は、安全で低毒性であるので、たとえば、哺乳動物や温血動物(たとえばヒト、ラット、マウス、モルモット、ウサギ)に対して投与することができる。本発明により得られる化合物又はその塩の投与量は、対象疾患、投与対象、投与ルートなどにより差異はあるが、たとえば、花粉症治療の目的で本発明により得られる化合物又はその塩を経口投与する場合、一般的に成人(60Kg)において、1日につき、該化合物又はその塩を0.1mg~1.0g、好ましくは約1.0mg~50mg投与する。投与方法は、局所投与、又は全身投与となる。
【実施例】
【0029】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。当業者は、以下に示す実施例のみならず様々な変更を加えて実施することが可能であり、かかる変更も本特許請求の範囲に包含される。
実施例1 ヒトFcεRIγ鎖遺伝子5'領域の転写調節活性の測定
ヒトFcεRIγ鎖遺伝子の5'領域nt-103~-1およびnt-74~-1を、ホタルルシフェラーゼ遺伝子をレポーター遺伝子として有するプラスミドpGL3-Basic Vector(プロメガ社)のルシフェラーゼ遺伝子上流にそれぞれ挿入し、レポータープラスミドを作製した。これらのレポータープラスミド各5μgおよび対照としてCMVプロモーター支配下にシーパンジールシフェラーゼ遺伝子をコードするプラスミドpRL-CMV Vector(プロメガ社)0.1μgを、γ鎖を発現する4種類のヒト細胞株(Jurkat, KU812, THP1, U937)に、エレクトロポレーション(300V, 950μF)により導入した。
【0030】
37℃、5% CO2条件下で20-24時間培養した後、細胞を回収し、Dual luciferase assay kit (プロメガ社)を用いて、細胞溶解とルシフェラーゼ活性の測定を行った。測定に際しては、各サンプルについて、ホタルルシフェラーゼ活性/シーパンジールシフェラーゼ活性の値を算出し、プラスミドの導入効率および細胞溶解効率を補正した。
【0031】
図1は、ホタルルシフェラーゼ遺伝子のみを含むレポータープラスミドを導入した際のルシフェラーゼ活性を1とした相対活性を示す。図1に示すように、用いたすべてのγ鎖発現細胞株において、-103~-1領域はルシフェラーゼ活性を顕著に増強させたが、-74~-1領域はほとんどそのような増強効果を示さなかった。本実施例により、-103~-75領域に4つの細胞株で共通して機能する転写活性化エレメントが存在することが明らかになった。
実施例2 nt-102~-88に結合する因子の同定
KU812細胞より調製した核抽出物およびFITC標識した二本鎖合成オリゴDNAプローブ5’-ATGGGGGAAGGCGTG-3’(γ鎖遺伝子のnt-102/-88に相当)を用いてゲルシフトアッセイを行った。
【0032】
コンペティターとして、プローブと同一の塩基配列を持つもの(comp)、nt-98~-96の3塩基を置換したもの(mut-comp)の2種類の非標識二本鎖合成オリゴDNAを用いた。
【0033】
前記核抽出物30μgと、前記プローブ 5 pmolおよびコンペティター各25,250pmolを、poly (dI-dC) 400ng、1mM MgCl2、30mM KCl、1mM DTT、5%グリセロールを含む10mM HEPES緩衝液 (pH7.9)中で混合して、室温で20分間静置した。その後、0.5×TBE緩衝液(45mMトリス、45mMホウ酸、1mM EDTA)を用いた4%ポリアクリルアミドゲル電気泳動に供した。120Vにて2-3時間泳動後、FluorImager 595(Amersham Bioscience社)を使用して、FITCの蛍光を検出した。その結果を図2(A)に示す。
【0034】
図2(A)に示すように、プローブ単独のバンドより移動度の小さい位置にいくつかのシフトしたバンドが観察され(レーン2)、このうち矢印で示したバンドは、compを25, 250pmol添加した場合(レーン3, 4)にはコンペティターの濃度依存的に消失し、mut-compを25, 250pmol添加した場合(レーン5, 6)には消失しなかった。これにより、このバンドはnt-98~-96を中心とする配列を特異的に認識して核タンパク質が結合したものであることが示された。
【0035】
また、Jurkat, THP1, U937より調製した核抽出物を用いた場合にも同様の結果が得られた。
【0036】
次に、この核タンパク質の同定を行うために、転写因子USF-1, USF-2, Sp1, Ikarosに対する抗体(Santa Cruz社)各2μgを添加した。図2(B)に示すように、抗Sp1抗体を添加した場合にのみ矢印で示したバンドが消失した。また、Jurkat, THP1, U937より調製した核抽出物を用いた場合にも同様の結果が得られた。したがって、nt-98~-96を中心とする配列には、転写因子Sp1が結合することが明らかになった。
実施例3 nt-93~-76に結合する因子の同定
プローブとして、二本鎖合成オリゴDNAプローブ5'-GGCGTGGCAGGAAGAGGG-3'を用い、また、コンペティターとして、プローブと同一の塩基配列を持つもの(comp)、nt-84~-82の3塩基を置換したもの(mut-comp)の2種類の非標識二本鎖合成オリゴを用いた以外は
、実施例2と同様にしてゲルシフトアッセイを行い、ヒトFcεRIγ鎖遺伝子のnt -93~-76に結合する因子の同定を行った。その結果を図3(A)に示す。
【0037】
図3(A)に示すように、矢印で示した2つのバンドは、compを25, 250pmol添加した場合(レーン3, 4)にはコンペティターの濃度依存的に消失し、mut-compを25, 250pmol添加した場合(レーン5, 6)には消失しなかった。これにより、このバンドはnt-84~-82を中心とする配列を特異的に認識して核タンパク質が結合したものであることが示された。また、Jurkat, THP1, U937より調製した核抽出物を用いた場合にも同様の結果が得られた。
【0038】
次に、この核タンパク質の同定を行うために、転写因子PU.1, Fli1, Elf-1, GABPα, GABPβに対する抗体(Santa Cruz社)各2μgを添加した。図3(B)に示すように、矢印で示した2つのバンドのうち、抗GABPα抗体、抗GABPβ抗体を添加した場合に下のバンドが消失し、抗Elf-1抗体を添加した場合に上のバンドが消失した。また、Jurkat, THP1, U937より調製した核抽出物を用いた場合にも同様の結果が得られた。したがって、nt-84~-82を中心とする配列には、GABPα/βのヘテロ二量体およびElf-1が結合することが明らかになった。
実施例4 部位特異的変異の導入による塩基置換がγ鎖プロモーター活性に及ぼす効果
ヒトFcεRIγ鎖の遺伝子断片nt-177~-1を、pGL3-Basic Vector(プロメガ社)のホタルルシフェラーゼ遺伝子の上流に挿入して得られたプラスミド中のγ鎖遺伝子断片に、部位特異的変異を導入した4種類のレポータープラスミドを作製した。すなわち、Quick Change Site -Directed Mutagenesis Kit(Stratagene社)を用いて、それぞれ、nt-98~-96(mut1)、-84~-82(mut2)、-77/-75/-74(mut3)、-65/-64/-62/-61(mut4)の3ないしは4塩基を置換し、4種類のレポータープラスミドを得た。実施例1と同様にして、得られたレポータープラスミドをヒト細胞株(Jurkat, KU812, THP1, U937)に導入し、発現試験を行った。
【0039】
図4は、変異を導入していないレポータープラスミドを導入した際のルシフェラーゼ活性を1とした相対活性を示す。図4に示すように、nt-98~-96、-84~-82および-65/-64/-62/-61の塩基を置換した場合には、ルシフェラーゼ活性の低下が認められたが、-77/-75/-74の塩基を置換した場合にはルシフェラーゼ活性は変化しなかった。
【0040】
上記実施例2及び3によりSp-1、GABPα/β又はElf-1がそれぞれ結合することが明らかになったnt-98~-96、-84~-82を中心とする領域が、転写活性化エレメントとして機能することが本実施例により確認された。さらに、その下流のnt-65~-61を中心とする領域が転写活性化エレメントとして機能することが明らかとなった。nt-65~-61を中心とする領域は、転写因子C/EBPの結合モチーフと相同性を有していた。
また、実施例1の結果と合わせて考察すると、このエレメントは、単独ではほとんど転写活性化能を持たず、他の2つの転写活性化エレメントと協調的に機能すると考えられる。
実施例5 各転写因子の過剰発現がγ鎖プロモーター活性に及ぼす効果
ヒトFcεRIγ鎖遺伝子のnt-177~-1領域をpGL3-Basic Vector(プロメガ社)のホタルルシフェラーゼ遺伝子上流に挿入したレポータープラスミド5μgを、GABPα, GABPβ, Elf-1, Sp1, C/EBPαの各発現プラスミド3μgとともにHela細胞に導入し、実施例1の場合と同様にして発現試験を行った。
【0041】
図5は、レポータープラスミドのみを導入した際のルシフェラーゼ活性を1とした相対活性を示す。図5において、グラフ中の黒いバーは、各転写因子の発現プラスミドを導入したときの相対活性、白いバーはそれぞれ対応する空ベクターを同量導入したときの相対活性である。図5に示すように、GABPα/β, Elf-1, Sp1, C/EBPαはそれぞれ単独で発現させた場合、空ベクターを導入した場合に比べ、ルシフェラーゼ活性を数倍増大させ、これらの転写因子が実際にγ鎖プロモーターを活性化することが確認された。さらに、GABPα/βとSp1とC/EBPα、あるいはElf-1とSp1とC/EBPαは相乗的にγ鎖プロモーターを活性化することが明らかとなった。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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