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明細書 :バイオディーゼル燃料及びその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5327586号 (P5327586)
公開番号 特開2010-053270 (P2010-053270A)
登録日 平成25年8月2日(2013.8.2)
発行日 平成25年10月30日(2013.10.30)
公開日 平成22年3月11日(2010.3.11)
発明の名称または考案の名称 バイオディーゼル燃料及びその製造方法
国際特許分類 C10L   1/02        (2006.01)
C10L   1/08        (2006.01)
C11C   3/10        (2006.01)
C11C   1/02        (2006.01)
C11C   3/08        (2006.01)
FI C10L 1/02
C10L 1/08
C11C 3/10
C11C 1/02
C11C 3/08
請求項の数または発明の数 2
全頁数 12
出願番号 特願2008-220950 (P2008-220950)
出願日 平成20年8月29日(2008.8.29)
審査請求日 平成23年8月25日(2011.8.25)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】899000057
【氏名又は名称】学校法人日本大学
発明者または考案者 【氏名】平野 勝巳
【氏名】谷中 仁美
【氏名】伊藤 拓哉
【氏名】角田 雄亮
【氏名】菅野 元行
【氏名】真下 清
個別代理人の代理人 【識別番号】110000774、【氏名又は名称】特許業務法人 もえぎ特許事務所
審査官 【審査官】森 健一
参考文献・文献 特開2008-081559(JP,A)
特開2007-277288(JP,A)
特開2004-124008(JP,A)
国際公開第2005/033252(WO,A1)
調査した分野 C10L 1/00- 1/32
特許請求の範囲 【請求項1】
動物性油脂及び/又は植物性油脂を原料としてアルコール類とエステル交換反応してバイオディーゼル燃料を製造する方法において、原料油脂をオゾン処理する工程と、オゾン処理に引き続き行われるエステル化工程と、エステル交換工程を含むことを特徴とするバイオディーゼル燃料の製造方法。
【請求項2】
エステル化工程が、硫酸処理により行われる工程である、請求項1に記載のバイオディーゼル燃料の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は動物性油脂及び/又は植物性油脂を原料としアルコール類とエステル交換して得られるバイオディーゼル燃料に関し、特に、低温特性に優れ、かつ、貯蔵安定性に優れるバイオディーゼル燃料およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、石油の確認可採年数が約40年とその枯渇が危惧されている中で、石油代替燃料としてバイオディーゼル燃料(以下、単にBDFということがある)が注目されている。BDFは油脂の主成分であるトリアシルグリセリドをアルコールとエステル交換した脂肪酸エステルである。BDFは軽油とほぼ同等の発熱量と類似した物理性状を有するためにディーゼル燃料として有望であり、軽油に比べてSOや黒煙の排出量を大幅に低減できる特長を有する。現在、欧州を中心にバージンの植物性油脂を原料とした大規模なBDF製造が一部実用化されている。
一方、日本ではバージンの植物性油脂のみならず、廃食物油を原料としたBDFの製造方法が検討されているものの、植物性廃食物油が主であり、国内で排出される廃食物油の大部分である動物性油脂及びこれらの混合物からのBDFの製造方法に関しては、未だ満足できるような方法は見出されていない。
ここで、植物性油脂は貯蔵安定性が悪いことが知られており、例えば常温で4ヶ月貯蔵すると京都市のBDF規格である動粘度5mm/sを上回ってしまうという問題があった。
一方、動物性油脂は、貯蔵安定性には優れるものの低温特性が悪いという問題があった。
また、植物性油脂と動物性油脂を含有している廃食物油を原料とする場合は、原料が多様であることから製造したBDFの燃料性状が不均一となり、石油代替燃料として実用化するには問題があった。
このように、植物性油脂又は動物性油脂を含む廃食物油またはこれらの混合物を含む廃食物油に対して燃料性状が均一であって、低温特性及び貯蔵安定性に優れたBDF製造プロセスの構築が必要である。
なお、本発明は、後述するように、脂肪酸エステルの組成割合を変化させるために、従来のBDFの工程にオソ゛ン処理工程を組み合わせることを一例として挙げているが、廃食油にオソ゛ン処理を施す従来技術として特許文献1のような技術が知られている。本文献技術は、廃食油を原料としてオゾン処理することで内燃機関燃料を製造するという発明であり、廃食油にオゾン処理を施す点においては本件発明と共通する。しかし、本発明の目的である、BDFの貯蔵安定性と燃焼特性の改善を目的とするものではなく、またオゾン処理により不飽和脂肪酸、飽和脂肪酸の割合を変更するものでもない。

【特許文献1】特開2004-155875号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、廃食物油を原料とし、貯蔵安定性及び低温特性の優れたBDFを提供すること、その製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
BDFの低温特性と貯蔵安定性は、原料に含まれる脂肪酸組成に依存すること、つまり、定性的には長鎖飽和脂肪酸(炭素数C12以上)が多いと目詰まり点が高く、不飽和脂肪酸が多いと貯蔵安定性が悪くなることが知られているが、本発明者らは、短鎖飽和脂肪酸(炭素数12未満)に着目して上記課題を解決することに成功した。
すなわち、廃食物油中の不飽和脂肪酸を分解し、短鎖飽和脂肪酸を生成させ、その結果長鎖飽和脂肪酸の含有率も低下させることで、燃焼特性、低温特性および貯蔵安定性の全てに優れたBDFを得ることができた。
具体的には、本発明は以下の構成を有する。
(1)動物性油脂及び/又は植物性油脂を原料として、アルコール類とエステル交換して得られる脂肪酸エステルを含むバイオディーゼル燃料であって、バイオディーゼル燃料中における不飽和脂肪酸エステルの含有率が10mol%以下であることを特徴とするバイオディーゼル燃料。
(2)炭素数12以上の長鎖飽和脂肪酸エステルの含有率が30mol%以下である前記(1)に記載のバイオディーゼル燃料。
(3)動物性油脂及び/又は植物性油脂を原料として、アルコール類とエステル交換して得られる脂肪酸エステルを含むバイオディーゼル燃料であって、常温で4ヶ月以上貯蔵しても動粘度が5mm/s以下であり、かつ、凝固開始温度が5℃以下であるバイオディーゼル燃料。
(4)さらに軽油を含む前記(1)~(3)のいずれかに記載のバイオディーゼル燃料。
(5)動物性油脂及び/又は植物性油脂を原料としてアルコール類とエステル交換反応してバイオディーゼル燃料を製造する方法において、原料油脂中の不飽和脂肪酸エステルを分解してその含有率を減少させることを特徴とするバイオディーゼル燃料の製造方法。
(6)不飽和脂肪酸エステルの分解により炭素数12未満の短鎖飽和脂肪酸エステルが生成し、炭素数12以上の長鎖飽和脂肪酸エステルの含有率も相対的に減少することを特徴とする前記(5)に記載のバイオディーゼル燃料の製造方法。
(7)原料油脂中の不飽和脂肪酸エステルの分解が、不飽和脂肪酸エステルのオゾン処理により行われる前記(5)又は(6)に記載のバイオディーゼル燃料の製造方法。
(8)動物性油脂及び/又は植物性油脂を原料としてアルコール類とエステル交換反応してバイオディーゼル燃料を製造する方法において、原料油脂をオゾン処理する工程と、オゾン処理に引き続き行われるエステル化工程と、エステル交換工程を含むことを特徴とするバイオディーゼル燃料の製造方法。
(9)エステル化工程が、硫酸処理により行われる工程である、前記(8)に記載のバイオディーゼル燃料の製造方法。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、植物性油脂を原料として含む場合、BDF中の不飽和脂肪酸メチル含有率が減ることから、植物性油脂を原料とするBDFであれば本来的に有している優れた低温特性に加え、貯蔵安定性にも優れたBDFを製造することができる。
また、動物性油脂と植物性油脂の混合物を原料とする場合、両者に含まれる不飽和脂肪酸メチルの分解・減少に伴い短鎖飽和脂肪酸メチルが生成され、低温特性の悪化の原因である長鎖飽和脂肪酸メチルの含有率が相対的に減少する。これにより、植物性油脂についての前記改善に加え、動物性油脂が本来有する優れた燃料特性を生かした上で、低温特性が向上することから、総合的には、燃焼特性、低温特性及び貯蔵安定性のすべてに優れたBDFを製造することが可能となった。また、本発明により得られるBDFは排気も非常にクリーンなことから環境にも配慮したエネルギー源としても非常に有用である。
このように、原料が廃食物油のように多様なものであっても、一定水準の性質を有する燃料を製造することができ、わが国の廃食物油の再利用を飛躍的に促進することができる。

【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明に用いる油脂の原料は、植物性油脂、動物性油脂、それらの混合物を利用するこ
とができる。また、バージンの油だけでなく、廃食物油などいずれも用いることができる
。特に、そのままでは目詰まり点が不明な、混合物である廃食物油などに本発明を用いれ
ば、廃食物油の再利用につながり大きな効果が期待できる。
【0007】
本発明でいう動物性油脂とは、動物性の油脂、例えば豚、牛、鶏などの構成成分である油脂をいい、動物性油脂由来成分とはこれらをそのままあるいは、物理的、化学的処理を加えて成分の組成を変更したものも含む意である。動物性油脂由来成分は、アルカリ条件下、アルコール類、例えばメタノールとエステル交換する反応により脂肪酸メチルエステルが得られる。動物性油脂由来の脂肪酸メチルエステルは、密度、セタン価、発熱量ともに軽油と同等であり、石油代替燃料として用いることができる。
【0008】
本発明でいう植物性油脂とは、植物性の油脂、例えば大豆油、菜種油など植物由来の油脂をいい、植物性油脂由来成分とはこれらをそのままあるいは、物理的、化学的処理を加えて成分の組成を変更したものも含む意である。植物性油脂由来成分は、アルカリ条件下、アルコール類、例えばメタノールとエステル交換する反応により脂肪酸メチルエステルが得られる(以下、本明細書において、脂肪酸メチルエステルをBDFの代表例として記載することがある。)植物性油脂由来の脂肪酸メチルエステルは、密度、セタン価、発熱量ともに軽油と同等であり、石油代替燃料として用いることができる。
【0009】
本発明でいうバイオディーゼル燃料(BDF)とは、それ単独で、あるいは軽油など他の燃料と混合することで燃料として用いられるものであって、特にその由来を動物性油脂、植物性油脂、好ましくは、これらの混合物である廃食物油が原料として用いられる。他の燃料と混合する場合の割合は、燃料として要求される性能を満たす範囲であれば特に限定されない。
【0010】
本明細書では、不飽和脂肪酸とは分子内に1以上の不飽和結合を有する脂肪酸をいい、短鎖の飽和脂肪酸とは、C12未満の飽和脂肪酸をいい、長鎖飽和脂肪酸とは、C12以上の飽和脂肪酸をいう。
不飽和脂肪酸メチルエステルのBDFにおける含有率は、貯蔵安定性の上から少なければ少ない方が望ましく、30mol%以下が望ましく、10mol%以下がさらに望ましく、0mol%が最も望ましい。長鎖飽和脂肪酸メチルエステルのBDFにおける含有率は、低温特性の上から少なければ少ない方が望ましく、30mol%以下が望ましい。動物油脂が少なければ少ないほど望ましく動物油脂:植物油脂=1:2以下が望ましい。
本発明は、植物性油脂及び/又は動物性油脂を原料とし、不飽和の脂肪酸メチルを分解して、短鎖の飽和脂肪酸メチルを生成させ、さらに相対的に長鎖の飽和脂肪酸メチルの割合を減少させることにより特性に優れたBDFが得られるという発明である。
表1に動物性油脂及び植物性油脂の構成成分と燃料特性を示す。本表により動物性油脂は長鎖飽和脂肪酸メチル(炭素数12以上)割合が多いために低温特性に問題があり、植物性油脂は、不飽和脂肪酸メチル割合が多いために貯蔵安定性に問題があることが関連付けられる。動物性油脂に由来する低温特性改善のため、長鎖飽和脂肪酸割合を減らすために、例えば、長鎖飽和脂肪酸メチル割合が少ない植物油脂を添加することが考えられる。しかし、これでは不飽和脂肪酸メチル割合が上昇し、貯蔵安定性が悪化することが予想される。このように本表に示されるような特質のみから単純に両者の混合や分離などの物理的操作では貯蔵安定性、低温特性及び燃焼特性のすべてに優れたBDFを製造することはできないのである。
【0011】
【表1】
JP0005327586B2_000002t.gif

【0012】
本発明の、BDFにおける不飽和脂肪酸メチルエステルの割合を減少させ、短鎖の飽和脂肪酸メチルエステルを生成させる方法としては、原料中の不飽和脂肪酸メチルを不飽和結合の箇所で分解する方法が挙げられる。具体的には、オゾン分解により原料油脂中の1分子の不飽和脂肪酸メチルを2分子の短鎖飽和脂肪酸メチルに分解する方法が挙げられる。本発明のオゾン分解を採用するBDF製造プロセスを図1に示す。原料となる廃食物油をオゾン処理工程へと導入し、次にエステル化工程、エステル交換工程を経てBDFが生産される。ここで、オゾン処理工程はヒドロ過酸化物やカルボン酸が生成するため硫酸等による後処理工程が必要となるが、本発明における後処理工程は従来のエステル化工程、すなわち油脂の劣化等により発生するカルボン酸をエステル化する工程と同様に行なわれる。
【0013】
本発明でいう貯蔵安定性とは、長期間貯蔵してもその性質(燃焼特性、低温特性)に変化が生じない特性をいい、保存期間としては長ければ長いほうが良いが、最低でも4ヶ月以上の安定性が必要とされる。
【0014】
本発明でいう燃焼特性とは、投入された燃料のもつ熱発熱量がどれだけエンジンの動力に使用されたかをいい、正味熱効率を測定することによって評価できる。
【0015】
本発明でいう低温特性とは、低温条件下でも目詰まりが起こらず、燃料として使用できる特性をいい、具体的には目詰まり点が指標とされる。京都市では、BDFの目詰まり点として、-5℃以下が要求される。なお、後述する実施例より、BDFの目詰まり点は凝固を開始する温度と相関が高いことから、本願では凝固開始温度を目詰まり点として用いた。凝固開始温度は、長鎖飽和脂肪酸メチル割合が高いほど高くなることが知られているが、本発明では、直接、長鎖飽和脂肪酸メチルに作用して構造を変化させるものではなく、不飽和脂肪酸メチルの分解により生成する短鎖飽和脂肪酸メチル割合の増加により相対的に長鎖飽和脂肪酸メチル割合が減少し、凝固開始温度が下がる。
【0016】
本発明のBDFは、そのままでも燃料として用いることができるが、低温域でも固化せずに液体性状を有する燃料であることから、他の液体燃料と混合して用いることができる。他の液体燃料としては、市販の燃料である軽油や重油などを挙げることができる。そのうちでも、ディーゼルエンジン用の燃料としては軽油が好ましく用いられる。

【実施例】
【0017】
〔試験例1〕本発明のBDFの製造
本発明のBDFは以下の3つの工程を順に行うことによって得られた。
1.オゾン処理工程
250mlガス洗浄ビンに以下の試料を仕込み、オゾンジェネレーター(株式会社ロキテクノ製 ZR-06)およびオゾン濃度計(株式会社ロキテクノ製 OZT-100)を用いて、20℃で0分間及び100分間の各時間にてオゾン処理を行った。得られた処理液から固相を分離し、液相からメタノールを留去し、オゾン処理油脂を得た。本工程を図2に示す。なお、牛脂および大豆油はともに和光純薬工業株式会社製のものを用いた。
<試料>
動植物混合廃食油(大豆油:牛脂=2:1) 50g
メタノール 54g
オゾンガス(濃度:55g/Nm、流量:10NL/h)
炭酸カルシウム 5g
【0018】
2.硫酸処理工程(エステル化工程)
200mlセパラブルフラスコに以下の試料を入れ、64℃で60分間硫酸処理を行った。得られた処理液からメタノールを留去し、得られた上層に対して50wt%となるように純水を加え、ホットスターラーを用いて70℃で5分間攪拌した(水洗)。本水洗は2回行い、得られた上層をオゾン-硫酸処理油脂とした。本工程を図3に示す。
<試料>
上記1.で得られたオゾン処理油脂 40g
メタノール 80g
硫酸 2g
【0019】
3.エステル交換工程
200mlセパラブルフラスコに以下の試料を入れ、64℃で30分間エステル交換反応を行った。得られた処理液の上層からメタノールを留去し、得られた上層に対して50wt%となるように純水を加え、ホットスターラーを用いて70℃で5分間攪拌した(水洗)。本水洗は2回行い、得られた上層をオゾン-硫酸処理BDF(本発明BDF)として以下の試験に用いた。なお、前記オゾン処理工程0分のものについて、硫酸処理工程を行い、本エステル交換工程で得られた上層を、オゾン処理を行わないBDF(従来BDFということがある)として以下の比較試験に用いた。本工程を図4に示す。
また、以下の試験で比較のために用いられる牛脂BDF、大豆油BDFは、上記動植物混合廃食油の代わりに牛脂または大豆油(ともに和光純薬工業株式会社製)についてエステル化工程とエステル交換工程を行ってそれぞれ得られた。また、同様に比較のために用いられる従来BDFは、本発明BDFの製造方法において、オゾン処理工程を行わない以外は同様な処理により得られた。
<試料>
上記2.で得られたオゾン-硫酸処理油脂 30g
メタノール 9g
水酸化ナトリウム 0.135g
【0020】
〔試験例2〕本発明のBDFの組成分析
(1)試験内容
オゾン-硫酸処理BDF(本発明BDF)と、オゾン処理を行わないBDF(従来BDF)について、オソ゛ン処理による脂肪酸メチルエステルの組成の違いを調べるため、GC-MS分析を行った。結果を図5に示す。
(2)試験方法
GC-MS
株式会社島津製作所製GCMS-QP2010 Plus
カラム
VARIAN製 CP7419
条件
試料気化室温度:290℃
インターフェイス温度:290℃
イオン源温度:200℃
カラムオーブン昇温プログラム
初段 50℃ 10分保持
1段 昇温速度2℃/min 200℃ 0分保持
2段 昇温速度5℃/min 250℃ 5分保持
(3)試験結果
図5によれば、本発明BDFには、溶出時間29.5分付近に、短鎖飽和脂肪酸メチルであるノナン酸メチルのピークが見られた。また、溶出時間71分付近には、不飽和脂肪酸メチルであるオレイン酸のピークが、従来のBDFに見られたが、本発明BDFには見られなかった。オソ゛ン処理を行わない従来BDFには短鎖飽和脂肪酸メチル(ノナン酸メチル)のピークが見られず、オゾン処理を行って製造された本発明BDFには不飽和脂肪酸メチルのピーク(オレイン酸メチル)が見られないことから、オゾン処理を行うことにより、不飽和脂肪酸メチルが分解し短鎖飽和脂肪酸メチルが生じたと考えられる。なお、63分及び70.5分付近には飽和脂肪酸メチルであるパルミチン酸メチル及びステアリン酸メチルのピークが従来BDFにも本発明BDFにも見られた。
【0021】
〔試験例3〕燃焼試験
(1)試験内容
本発明BDF及び軽油(ジャパンエナジー株式会社製 2号)について、機関性能を調べるため、正味熱効率、HC、CO、黒煙の測定を行った。正味熱効率は、エンジンのクランクシャフトから得られる動力(正味仕事率)から算出した仕事を熱量に換算したものと、使用した燃料の総熱量との比であり、以下の式により算出した。
【0022】
【数1】
JP0005327586B2_000003t.gif
(2)試験方法
試料に対して空冷4サイクル単気筒ディーゼル機関(ヤンマー株式会社製 L48A)を用い、機関回転数3000rpm、燃料噴射量0.2ml/sで出力を測定した。
(3)試験結果
結果を表2に示す。これより、本発明BDFは、軽油と同等の正味熱効率を有し、排気は軽油よりもはるかにクリーンであることがわかった。
【0023】
【表2】
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【0024】
〔試験例4〕貯蔵安定性試験
(1)試験内容
本発明BDFの貯蔵安定性を調べるために、動粘度及び過酸化物価の測定を行った。
比較のため、牛脂BDF、大豆油BDFを用いて、同様に試験を行った。
(2)試験方法
過酸化物価(POV)、動粘度測定
各BDF 60gを100mlの三角フラスコに入れ、40℃のインキュベーター(三商株式会社製、SIB-35)内で0、4、8、16週間静置して貯蔵した。貯蔵された各BDFに対し、基準油脂分析試験法2.5.2.1に基づいた過酸化物価(POV)測定(酢酸-イソオクタン法)および動粘度測定を行った。
【0025】
(3)試験結果
図6に各BDFにおける動粘度の経時変化を示す。なお、図中に京都市BDF規格を破線で示した。これより、植物性油脂BDF(大豆油BDF)は4週間後から過酸化物が生成し、それに伴い動粘度も上昇し、16週間後には京都市のBDF規格外になっている。一方、動物性油脂BDF(牛脂BDF)及び本発明BDFは、時間経過に伴う過酸化物(POV)の生成がほとんど見られず、また動粘度も変化せずほぼ一定である。従って、本発明BDFは、貯蔵安定性において、動物性油脂BDFと同様に優れているといえる。なお、図中、本発明BDFの過酸化物価の数値は低すぎて、棒グラフとして表れていない。
【0026】
〔試験例5〕低温特性試験
(1)試験内容
本発明BDFについて、目詰まり点の分析を行った。比較のため、オゾン処理を行わないBDF(従来BDF)及び牛脂BDFについても分析を行った。なお、牛脂BDFは、原料油脂として牛脂(和光純薬工業株式会社製)を用い、これを前記試験例2の硫酸処理工程、エステル交換工程を行って得られたものを用いた。
(2)試験方法
目詰まり点の分析はJIS-K2288に準拠して行った。本発明者らは、先に出願した特願2007-174965の試験において目詰まり点と凝固開始温度の関係に相関関係があることから、凝固開始温度を測定し、これを目詰まり点(擬似)として用いた。
(3)試験結果
本試験の結果、本発明のBDFの目詰まり点は約-6℃であり、京都市の規格である-5℃よりも低かった。図7に長鎖飽和脂肪酸メチル割合(mol%)と低温特性(凝固開始温度)の関係をグラフで示す。横軸は、短鎖FAME割合の増加に伴う長鎖飽和FAMEの割合を、縦軸は、凝固開始温度を表す。グラフ中、実線は後述する計算値を示し、▲、△、■は実測値を示す。
【0027】
固体の濃度を長鎖飽和脂肪酸メチルの合計含有量、固相の活量係数を1とみなして共晶型における固液平衡の関係式である下記式(1)、(2)より求めた凝固開始温度の計算値を実線で示した(化学工学会監修,分離,(培風館),p16-18(1995))。
式中、固体の濃度は、試料中の長鎖飽和脂肪酸はC16MeとC18Meのみであるため、C16MeとC18Meの合計含有率に相当する。固相の活量係数は、理論式を実測値に合わせるためのいわゆる補正係数であり、本発明では0.75が適当であった。純成分sの融解熱は、C16Meの融解熱55350J/mol、C18Meの融解熱64430J/mol(日本油化学会編,第四版 油化学便覧,(丸善),p278(2001)に記載)を固相の構成成分比であるC16Me:C18Me=57.5:42.5で相加平均した値であり、58969.80J/molである(同上)。純成分sの凝固開始温度は、C16Me:C18Me=57.5:42.5の割合で調整した試料の凝固開始温度の測定値(24.8+273.15=297.95K)である。
【0028】
JP0005327586B2_000005t.gif
【0029】
また、上記式(2)を凝固開始温度Tの式に変形し、下記式(1)に示す。
【0030】
JP0005327586B2_000006t.gif
【0031】
図7より、凝固開始温度の実測値(▲、△、■)と計算値(実線)は同様の傾向を示し、短鎖飽和脂肪酸メチルの添加量が増加するに従って凝固開始温度が低下することがわかる。仮に、廃食油を想定した動植物油脂混合BDFは、不飽和脂肪酸メチルを2分子以上の短鎖飽和脂肪酸メチルへ変換することで相対的に長鎖飽和FAMEの割合が減少し、凝固点が京都市の規格以下に低下した。よって短鎖飽和脂肪酸メチルは凝固開始温度を低下させることが可能であることが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明によれば、動物性油脂及び植物性油脂の混合物からなる廃食物油を原料とする場合、オソ゛ン処理分解などの不飽和脂肪酸の分解工程を追加することにより不飽和脂肪酸減少に伴い短鎖飽和脂肪酸メチルが生成され、低温特性の悪化の原因である長鎖飽和脂肪酸メチルの含有率が減少することで、燃焼特性、低温特性及び貯蔵安定性のいずれにも優れたBDFを製造することが可能となった。また、本発明のBDFの排気も軽油等に比較し、非常にクリーンであることから、わが国の廃食物油の有効利用ができるとともに、環境にも配慮された新規なエネルギーを提供できる。

【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明のBDFの製造プロセスを示す図である。
【図2】本発明のBDFの製造プロセスのうち、オソ゛ン処理工程を示す図である。
【図3】本発明のBDFの製造プロセスのうち、硫酸処理工程を示す図である。
【図4】本発明のBDFの製造プロセスのうち、エステル交換工程を示す図である。
【図5-1】本発明のBDFと従来のBDFのGC-MSスペクトルを示す図である。
【図5-2】本発明のBDFと従来のBDFのGC-MSスペクトルを示す図である。
【図6】各BDFの貯蔵期間に伴う動粘度と過酸化物価の変化を示す図である。
【図7】長鎖飽和脂肪酸メチル割合と低温特性の関係を示す図である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5-1】
4
【図5-2】
5
【図6】
6
【図7】
7