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明細書 :新規ポリアミン誘導体化合物

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5327669号 (P5327669)
登録日 平成25年8月2日(2013.8.2)
発行日 平成25年10月30日(2013.10.30)
発明の名称または考案の名称 新規ポリアミン誘導体化合物
国際特許分類 C07C 311/18        (2006.01)
A61P  43/00        (2006.01)
A61P  25/28        (2006.01)
A61P  25/16        (2006.01)
A61K  31/18        (2006.01)
FI C07C 311/18 CSP
A61P 43/00 111
A61P 25/28
A61P 25/16
A61K 31/18
請求項の数または発明の数 4
全頁数 24
出願番号 特願2008-544131 (P2008-544131)
出願日 平成19年11月12日(2007.11.12)
国際出願番号 PCT/JP2007/071937
国際公開番号 WO2008/059800
国際公開日 平成20年5月22日(2008.5.22)
優先権出願番号 2006309325
2006327213
優先日 平成18年11月15日(2006.11.15)
平成18年12月4日(2006.12.4)
優先権主張国 日本国(JP)
日本国(JP)
審査請求日 平成22年11月5日(2010.11.5)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】899000057
【氏名又は名称】学校法人日本大学
発明者または考案者 【氏名】三宅 宗晴
【氏名】草間 貞
【氏名】益子 崇
個別代理人の代理人 【識別番号】100079108、【弁理士】、【氏名又は名称】稲葉 良幸
【識別番号】100080953、【弁理士】、【氏名又は名称】田中 克郎
審査官 【審査官】田村 聖子
参考文献・文献 特表2001-510181(JP,A)
Molecular Pharmacology,1997年,Vol.51, No.5,p.861-871
調査した分野 C07C,A61K
CAplus/REGISTRY(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
以下の構造を有する化合物又はその薬理学的に許容される塩。
【化1】
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【請求項2】
請求項に記載の化合物又はその薬理学的に許容される塩を含む医薬組成物。
【請求項3】
請求項1に記載の化合物又はその薬理学的に許容される塩を含むN-メチル-D-アスパラギン酸受容体活性阻害剤。
【請求項4】
請求項1に記載の化合物又はその薬理学的に許容される塩を含むアルツハイマー病又はパーキンソン病の予防又は治療薬。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、N-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)受容体活性阻害効果を有する、新規なポリアミン誘導体に関する。
【背景技術】
【0002】
グルタミン酸は脳内において興奮性神経伝達をつかさどる伝達物質であり、興奮性アミノ酸の一つとして知られている。興奮性アミノ酸が細胞外に大量に放出されると、中枢神経の異常な興奮が起こり、脳脊髄損傷、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、ハンチントン舞踏病等、種々の疾患、神経変性、精神障害、運動機能障害につながるとの報告がなされている。
【0003】
グルタミン酸受容体の一つであるNMDA受容体は、4ヶ所の膜領域をもつ膜タンパク質が四ないし五量体となり、中心にイオン流路となるチャネルを形成する。通常、このチャネルはマグネシウムイオンによって閉塞されているが、活性化されるとナトリウムイオン及びカルシウムイオンを細胞内に流入させることが知られている。
【0004】
NMDA受容体は、哺乳動物脳の記憶、学習の形成、神経の発達等に関与するが、一方で過剰に興奮させると細胞内に多量のカルシウムを流入させるために、不可逆的な脳の神経細胞死を生じさせ、運動障害、知覚障害、異常行動等の障害を引き起こしうる。
【0005】
NMDA受容体活性に拮抗作用を示し、その活性を特異的に抑制する物質としてメマンチン(一般名:塩酸メマンチン)が知られており、アルツハイマー病治療薬として欧米で広く臨床応用されている。メマンチンは、過剰なグルタミン酸放出に対してNMDA受容体のカルシウム透過性を減弱させることによって、神経細胞を保護する。
【0006】
また、ポリアミンの一種であるスペルミン(N,N'-ビス(3-アミノプロピル)-1,4-ジアミノブタン)も、NMDA受容体をブロックする作用を有することが知られている。しかしながら、細胞外におけるスペルミンのNMDA受容体に対する作用は膜電位に強く依存し、脱分極(興奮)時には受容体を活性化し、過分極(静止)時には受容体活性を阻害する(例えば、Benveniste, M.ら(非特許文献1)、Rock, D.M.ら(非特許文献2)、Araneda, R.C.ら(非特許文献3)、Williams, K.ら(非特許文献4)、Williams, K.(非特許文献5)を参照)という二面的な活性調節作用を有するため、医薬品としての使用には適さない。
【0007】
そこで、活性促進効果を消滅させ、阻害効果のみを維持又は亢進させたスペルミン誘導体が提案されている。このようなスペルミン誘導体の一例として、下記式(III)で示されるN1-Dansyl-Spermine(Dansyl-SPM)が挙げられる(例えば、Chao, J.ら(非特許文献6)を参照)。
【0008】
【化1】
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【0009】
Dansyl-SPMには、スペルミンの末端の窒素原子にダンシル基を結合させることによってスルホンアミドが生じ、このスルホンアミドがNMDA受容体への活性促進効果を抑制し、活性阻害効果のみを亢進させる。Dansyl-SPMは、NMDA受容体に対してメマンチンよりも高い親和性を示す。
【0010】
一方、ポリアミン誘導体を医薬として使用することについては、例えば、欧州特許出願公開1085011号明細書(特許文献1)にポリアミン輸送またはポリアミン結合タンパク質を阻害する作用を有するポリアミン誘導体が開示されており、ポリアミン誘導体が抗癌剤として使用されることが示唆されている。そして、スペルミン誘導体として、上記Dansyl-SPMや、下記式(IV)で示されるN1-Tosyl-Spermine(Tosyl-SPM)等が例として挙げられている。
【0011】
【化2】
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【特許文献1】欧州特許出願公開1085011号明細書
【非特許文献1】Benveniste, M. et al., J. Physiol. (Lond.) 464:131-163(1993)
【非特許文献2】Rock, D.M. et al., Mol. Pharmacol. 41:83-88(1992)
【非特許文献3】Araneda, R.C. et al., Neurosci. Lett. 152:107-112(1993)
【非特許文献4】Williams, K. et al., Mol. Pharmacol. 45:803-809(1994)
【非特許文献5】Williams, K., Mol. Pharmacol. 46:161-168(1994)
【非特許文献6】Chao, J. et al., Mol. Pharmacol. 51:861-871(1997)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、Dansyl-SPMは比較的細胞毒性が強く、医薬品への応用のためには、よりNMDA受容体への親和性が高く、細胞毒性の低い化合物が必要とされている。
【0013】
一方、特にアルツハイマー病治療薬等の脳機能保護薬を開発する際に注意が必要なことの一つとして、開発化合物の脳移行性がある。血液から脳組織内に物質が移行するためには血液脳関門を透過する必要があるが、一般に水、ガス、脂溶性物質以外の物質は血液脳関門によって血液から脳組織内への移行を制限されている。血液脳関門を透過するか否かは化合物の様々な特性によって決まるため予測が困難であるが、例えば分子量が著しく大きくなると透過性が落ちることが知られている。従って、脳機能保護薬として使用される化合物には、分子量が大きくなく、構造が複雑でないことが求められる。
【0014】
そこで、本発明は、NMDA受容体への親和性が充分に高く、効率よくカルシウムイオンの流入を阻害するとともに、細胞毒性が低く、且つ分子量が小さく良好な脳移行性が期待される化合物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、上記課題を解決するために研究を重ねた結果、ポリアミンにトシル基を結合させることにより、Dansyl-SPMと同等のNMDA受容体への親和性を有し、且つ細胞毒性が比較的弱い化合物が得られることを見出した。さらに、同じトシル基を結合させたポリアミンであっても、後述する一般式(I)においてYを-(CH24-NH-(CH24-NH-(CH24-とすること、あるいはR1をグアニジル基とすることにより、格段に細胞毒性を低下させることができることを見出した。最後に、トシル基を低級アルキル基に変更することによって、NMDA受容体への親和性が充分に高く、細胞毒性は著しく低く、さらに単純な構造で分子量も小さい化合物を得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0016】
即ち、本発明は、
〔1〕一般式(I)を有する化合物、又はその薬理学的に許容される塩、
【0017】
【化3】
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【0018】
[式中、Xは、R2-SO2-を示し、ここで、R2は、置換されていてもよい低級アルキル基又はフェニル基を示し、Yは、-R3-NH-R4-、-R5-NH-R6-NH-R7-、-R8-NH-R9-NH-R10-NH-R11-、及び、-R12-NH-R13-NH-R14-NH-R15-からなる群から選択される基を示し、ここで、R3~R15はそれぞれ独立にC3~C5アルキレン基を示し、R1は、水素、又は置換されていてもよい低級アルキル基を示す。但し、Xがトシル基であり、Yが-(CH23-NH-(CH24-NH-(CH23-であり、R1が水素であるものを除く。];
〔2〕NH-R1が、グアニジル基である、上記〔1〕に記載の化合物、又はその薬理学的に許容される塩;
〔3〕Xが、C4アルキル基、又はトシル基である、上記〔1〕又は〔2〕に記載の化合物、又はその薬理学的に許容される塩;
〔4〕上記〔1〕から〔3〕のいずれか1項に記載の化合物、又はその薬理学的に許容される塩を含む医薬組成物;
〔5〕一般式(II)を有する化合物、又はその薬理学的に許容される塩を含むN-メチル-D-アスパラギン酸受容体活性阻害剤、
【0019】
【化4】
JP0005327669B2_000005t.gif

【0020】
[式中、Xは、R2-SO2-を示し、ここで、R2は、置換されていてもよい低級アルキル基又はフェニル基を示し、Yは、-R3-NH-R4-、-R5-NH-R6-NH-R7-、-R8-NH-R9-NH-R10-NH-R11-、及び、-R12-NH-R13-NH-R14-NH-R15-からなる群から選択される基を示し、ここで、R3~R15はそれぞれ独立にC3~C5アルキレン基を示し、R1は、水素、又は置換されていてもよい低級アルキル基を示す。];
〔6〕一般式(II)を有する化合物、又はその薬理学的に許容される塩を含むアルツハイマー病又はパーキンソン病の予防又は治療薬、
【0021】
【化5】
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【0022】
[式中、Xは、R2-SO2-を示し、ここで、R2は、置換されていてもよい低級アルキル基又はフェニル基を示し、Yは、-R3-NH-R4-、-R5-NH-R6-NH-R7-、-R8-NH-R9-NH-R10-NH-R11-、及び、-R12-NH-R13-NH-R14-NH-R15-からなる群から選択される基を示し、ここで、R3~R15はそれぞれ独立にC3~C5アルキレン基を示し、R1は、水素、又は置換されていてもよい低級アルキル基を示す。]に、関するものである。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る化合物又はその薬理学的に許容される塩は、NMDA受容体への親和性が高く、毒性も低い。また分子量も小さく、良好な脳移行性が期待される。従って、脳細胞内への過剰なカルシウムの流入を防ぎ、アルツハイマー病やパーキンソン病の治療薬等、脳機能の保護に有用である。
さらに、本発明に係る化合物のうち、TsPDG、BsPDG及びTsSPMGは両端のアミノ基が保護された構造を有するため、ポリアミンオキシダーゼ非感受性である。スペルミンを生体内に投与するとポリアミンオキシダーゼにより酸化分解されてアクロレインが産生する可能性があるため、細胞毒性が強くなるが、TsPDG、BsPDG及びTsSPMGはアクロレイン産生のおそれがないという効果も得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、式(I)で示される化合物(以下、「化合物(I)」という)中の各記号の定義について説明する。
【0025】
1またはR2で示される「水素、又は置換されていてもよい低級アルキル基」としては、炭素数が1から6までの直鎖状または分岐状のアルキル基が挙げられ、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシルなどが挙げられる。置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシ基等が挙げられる。
【0026】
また、R1は、好ましくは水素又は炭素数1から3の低級アルキル基であり、NH-R1がグアニジル基であることがより好ましい。R2は、炭素数3から5の直鎖のアルキル基が好ましく、特にn-ブチル基が好ましい。
【0027】
2で示される「置換されていてもよいフェニル基」は、置換可能な位置に1から5個の置換基を有するフェニル基をいう。置換基としては、例えば、ハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、ニトロ基、シアノ基、置換されていてもよいC1-6アルキル基(例えば、メチル基、エチル基)、アミノ-C1-6アルキル基(例えば、アミノメチル基)、ヒドロキシ基、置換されていてもよいアルコキシキ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基)等が挙げられる。R2は、特に好ましくは、メチルフェニル基であり、このときX(R2-SO2-)はトシル基となる。
【0028】
Yで示される「-R3-NH-R4-、-R5-NH-R6-NH-R7-、-R8-NH-R9-NH-R10-NH-R11-、及び、-R12-NH-R13-NH-R14-NH-R15-からなる群から選択される基」において、R3~R15はそれぞれ独立にC3~C5アルキレン基を示す。好ましくは、R3~R15は炭素数3または4のアルキレン基である。
【0029】
但し、化合物(I)からは、Xがトシル基であり、Yが-(CH23-NH-(CH24-NH-(CH23-であり、R1が水素である化合物、即ち下記の一般式(IV)を有する化合物(Tosyl-SPM)は除かれる。
【0030】
【化6】
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【0031】
化合物(I)として好適な例としては、下記式(V)~(VIII)で表される、TsSPMG、TsPD、TsPDG、及びBsPDGが挙げられる。
【0032】
【化7】
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【0033】
【化8】
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【0034】
【化9】
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【0035】
【化10】
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【0036】
化合物(I)の塩は、薬理学的に許容される塩である限り特に種類は限定されず、塩酸、硫酸、炭酸、重炭酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸などの無機酸との塩、酢酸、マレイン酸、乳酸、酒石酸、トリフルオロ酢酸などの有機カルボン酸との塩、メタンスルホン酸、ヒドロキシメタンスルホン酸、ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、タウリン酸などの有機スルホン酸との塩、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、プロカイン、ピコリン、ジシクロヘキシルアミン、トリエタノールアミン、トリス(ヒドロキシメチルアミノ)メタン、フェネチルベンジルアミンなどのアミンとの塩、アルギニン、リジン、セリン、グリシン、アスパラギン酸、グルタミン酸などのアミノ酸との塩が挙げられる。
【0037】
本発明に係る化合物(I)は、水和物、非水和物、その他の溶媒和物であってもよい。
【0038】
次に、化合物(I)の製造法について詳述する。
【0039】
化合物(I)は、例えば、以下のスキームで示される方法、またはこれに準ずる方法にしたがって製造することができる。
【0040】
まず、化合物(I)において、Xがトシル基、Yが-R5-NH-R6-NH-R7-である場合、即ち、下記式(IX)で示される化合物を合成する場合は、下記式(X)で表される化合物を出発物質(i)として、スキーム1で示される方法により合成することができる。
【0041】
【化11】
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【0042】
【化12】
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【0043】
【化13】
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【0044】
式中、Tsはトシル基を、Cbzはベンジルオキシカルボニル基、Xは例えばtert-ブトキシカルボニル基(Boc)等のアミノ基の保護基を示す。
【0045】
まず、出発物質(i)に、メタンスルホニルクロリドと、トリエチルアミンを加えて反応させることにより、RをOMs基に置換する。反応はCH2Cl2中で行い、0℃で2時間撹拌した後、室温で一晩撹拌を続ける。混合物を飽和食塩水で洗浄し、溶媒を乾燥させた後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー等により精製する。
【0046】
続いてNaN3により処理し、OMs基をN3基に置換する。反応はDMF中で行い、室温で一晩撹拌して行う。混合物を酢酸エチル等で希釈してから水で洗浄し、溶媒を乾燥させた後、シリカゲルクカラムクロマトグラフィー等により精製する。
【0047】
次にこうして得られた化合物にトシル基を結合させ、化合物(ii)を得る。まず、RがN3である化合物(i)を、THF溶液中で、パラジウムカーボンエチレンジアミン複合体等を触媒として水素化し、触媒を除去して濃縮した後、トルエンスルホニルクロリド(TsCl)とトリエチルアミンを反応させる。室温で撹拌しながら反応させ、約18時間後にCH2Cl2で希釈し、飽和食塩水で洗浄してから乾燥させる。その後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、化合物(ii)を得ることができる。
【0048】
続いて、化合物(ii)のNHCbz基をアミノ基に置換する。まず、化合物(ii)をTHF溶液中で水素化する。触媒としては、例えばパラジウムカーボンを用い、H2雰囲気中、室温に24時間載置することにより水素化することができる。次に、触媒をろ過し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、化合物(iii)を得ることができる。
【0049】
最後に、脱保護し、化合物(iv)を得る。脱保護は、保護基の種類に応じて適宜選択することができるが、例えばBocの場合には、濃塩酸を加えて強酸性条件とすることにより脱保護できる。
【0050】
一方、化合物(I)において、R1がグアニジル基である場合は、脱保護をする前に、アミノ基にグアニジル基を結合させる。この場合、化合物(iii)と、1,3-bis(tert-butoxycarbonyl)-2-methyl-2-thiopseudoureaをCH2Cl2中で反応させる。反応は室温で48時間撹拌することによって行う。ろ過後、濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した後、脱保護することにより、目的物を得ることができる。
【0051】
また、化合物(I)においてR2を低級アルキル基とする場合は、上記スキーム1において、化合物(i)のRをN3に置換した後、水素化してN3をアミノ基に変え、このアミノ基に-R2-SO2-基を公知の方法で結合させることができる。例えば、R2がブチル基の場合には、化合物(i)のCH2Cl2溶液にブタンスルホニルクロリド(BsCl)とトリエチルアミンを加え、室温で18時間撹拌して反応させる。この混合物をCH2Cl2で希釈し、洗浄後濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製する。
【0052】
この後、上述した方法で、NHCbz基をアミノ基に変えたり、当該アミノ基にグアニジル基を結合させたりし、脱保護することにより、種々の化合物(I)を合成することができる。
【0053】
ここで、出発物質(i)は、例えばYが-(CH)4-NH-(CH)4-NH-(CH)4-の場合、Senguptaらの方法(D. Sengupta et al., Bioorganic and Medicinal Chemistry, 4(6)803-813 (1996))で合成することができ、他の化合物も公知の方法で製造することができる。
【0054】
上述した化合物(I)、及び一般式(I)においてXがトシル基であり、Yが-(CH23-NH-(CH24-NH-(CH23-であり、R1が水素であるTosyl-SPM(化合物(IV)。以下、化合物(I)と化合物(IV)を併せて「化合物(II)」という)は、優れたNMDA受容体機能抑制効果を有する。これは、化合物(II)が、イオンチャネルブロッカーとして機能することによるものである。
【0055】
例えば、脳虚血時に細胞外に大量のグルタミン酸が放出されることが知られている(Benveniste, H. et al., J. Neuroche., 43, 1369(1984))。化合物(II)によれば、高濃度グルタミン酸によってNMDA受容体が異常に活性化された場合にも、細胞内に多量のカルシウムイオンが流入するのを防ぎ、神経細胞の壊死を防ぐことが可能である。
【0056】
また、NMDA受容体に起因する各種疾患に対して効果があり、例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、ハンチントン舞踏病等の慢性神経変性疾患;てんかん;慢性疼痛、偏頭痛、癌性疼痛、糖尿病性神経障害等に由来する疼痛;痙性麻痺;多発性硬化症、脳脊髄炎等の治療、改善、予防剤としても有用である。
【0057】
化合物(II)は、各種併用用薬剤とともに用いてもよい。
【0058】
このような併用用薬剤としては、例えば他のNMDAアンタゴニスト;脳虚血により形成される毒生産物(例えば、酸化窒素、反応性酸素および窒素中間体、脂質過酸化物、インターロイキン、サイトカイン、ケモカイン、水素イオン等)の形成または作用を阻害し、あるいは除去を促進する物質;脳虚血によりおこる細胞の減極を阻害し、あるいは減極に対抗する信号経路を活性化する物質;アポトーシスの機構を阻害する物質;虚血に反応する免疫細胞の補充、免疫細胞の血管への接着を防ぐ物質などが挙げられる。
【0059】
「他のNMDAアンタゴニスト」としては、例えばグルタミン酸やNMDAなどのアゴニストの結合部位に拮抗的に結合するもの(例えばD-2-アミノ-5-ホスホノ吉草酸等)、NMDA受容体のアゴニストによる活性化に必要なグリシンの結合部位に拮抗的に結合するもの(例えば7-クロロキヌレン酸等)、活性増強剤であるポリアミンの結合部位に拮抗的に結合するもの(例えばアルカイン等)、他のオープンチャネルブロッカー(例えばMK-801、Mg2+)などが挙げられる。
【0060】
「脳虚血により形成される毒生産物の形成または作用を阻害し、あるいは除去を促進する物質」としては、例えば抗酸化化合物、好中球阻害因子(NIF)、ナトリウムチャネルアンタゴニスト、NOS阻害剤、カリウムチャネル開口剤、グリシン部位アンタゴニスト、AMPA/カイニン酸受容体アンタゴニスト、カルシウムチャネルアンタゴニスト、GABAA受容体モジュレーター、および抗炎症剤などが挙げられる。
【0061】
「脳虚血によりおこる細胞の減極を阻害し、あるいは減極に対抗する信号経路を活性化する物質」としては、例えばGABAA受容体の活性化、電圧またはリガンド制御カリウムチャネルの活性化、電圧またはリガンド制御塩素チャネルの活性化をする物質が挙げられ、具体的にはカリウムチャネル開口剤やGABAA受容体アゴニストなどを用いることができる。
【0062】
「アポトーシスの機構を阻害する物質」としては、FAS/TNFα/p75受容体の活性化、カスパーゼの活性化、NFκBの活性化、JNKおよび/またはp38キナーゼシグナルカスケードの活性化、ミトコンドリアの崩壊の阻害およびミトコンドリアの浸透性移動孔の活性化、カルパインなど細胞間プロテアーゼの活性化を行う物質が挙げられ、具体的にはカスパーゼ阻害剤、アポトーシス機構の媒介物質である酵素の阻害剤などを用いることができる。
【0063】
「虚血に反応する免疫細胞の補充を阻害する化合物」としては各種サイトカインやケモカイン受容体、「血管への免疫細胞の接着を阻害する化合物」としてはサイトカインおよびケモカイン受容体に対するアンタゴニスト、NIFおよび各種の細胞接着分子の抗体などが挙げられる。
【0064】
併用用薬剤の投与時期は限定されず、化合物(II)と同時に投与してもよいし、時間をおいて投与してもよい。
【0065】
化合物(II)は、例えば、製剤上許容しうる担体(賦形剤、結合剤、崩壊剤、矯味剤、矯臭剤、乳化剤、希釈剤、溶解補助剤等)と混合して得られる医薬組成物または錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、トローチ剤、シロップ剤、液剤、乳剤、懸濁剤、注射剤(液剤、懸濁剤等)、坐剤、吸入剤、経皮吸収剤、点眼剤、眼軟膏等の製剤として、ヒトを含む動物に、経口または非経口に適した形態で処方される。
【0066】
固体製剤とする場合は、添加剤、たとえば、ショ糖、乳糖、セルロース糖、D-マンニトール、マルチトール、デキストラン、デンプン類、寒天、アルギネート類、キチン類、キトサン類、ペクチン類、トランガム類、アラビアゴム類、ゼラチン類、コラーゲン類、カゼイン、アルブミン、リン酸カルシウム、ソルビトール、グリシン、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、グリセリン、ポリエチレングリコール、炭酸水素ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク等が用いられる。さらに、錠剤は必要に応じて通常の剤皮を施した錠剤、たとえば糖衣錠、腸溶性コーティング錠、フィルムコーティング錠あるいは二層錠、多層錠とすることができる。
【0067】
半固体製剤とする場合は、動植物性油脂(オリーブ油、トウモロコシ油、ヒマシ油等)、鉱物性油脂(ワセリン、白色ワセリン、固形パラフィン等)、ロウ類(ホホバ油、カルナバロウ、ミツロウ等)、部分合成もしくは全合成グリセリン脂肪酸エステル(ラウリル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸等)等が用いられる。これらの市販品の例としては、ウイテプゾール(ダイナミッドノーベル社製)、ファーマゾール(日本油脂社製)等が挙げられる。
【0068】
液体製剤とする場合は、添加剤、たとえば塩化ナトリウム、グルコース、ソルビトール、グリセリン、オリーブ油、プロピレングリコール、エチルアルコール等が挙げられる。特に注射剤とする場合は、無菌の水溶液、たとえば生理食塩水、等張液、油性液、たとえばゴマ油、大豆油が用いられる。また、必要により適当な懸濁化剤、たとえばカルボキシメチルセルロースナトリウム、非イオン性界面活性剤、溶解補助剤、たとえば安息香酸ベンジル、ベンジルアルコール等を併用してもよい。さらに、点眼剤とする場合は水性液剤または水溶液が用いられ、特に、無菌の注射用水溶液があげられる。この点眼用液剤には緩衝剤(刺激軽減のためホウ酸塩緩衝剤、酢酸塩緩衝剤、炭酸塩緩衝剤等が好ましい)、等張化剤、溶解補助剤、保存剤、粘稠剤、キレート剤、pH調整剤(pHは通常約6~8.5に調整することが好ましい)、芳香剤のような各種添加剤を適宜添加してもよい。これらの製剤の有効成分の量は製剤の0.1~100重量%であり、適当には1~50重量%である。投与量は患者の症状、体重、年令等により変わりうるが、通常経口投与の場合、成人一日当たり1~500mg程度であり、これを一回または数回に分けて投与するのが好ましい。
【実施例】
【0069】
<実施例1>
本発明に係る化合物(I)として、下記式(VI)で表されるTsPD、及び式(VII)で表されるTsPDGを合成した。
【0070】
【化14】
JP0005327669B2_000015t.gif

【0071】
【化15】
JP0005327669B2_000016t.gif

【0072】
合成の手順の概略は以下のとおりである。
【0073】
【化16】
JP0005327669B2_000017t.gif

【0074】
[化合物1]
化合物1は、公知の方法(D. Sengupta, et al., Bioorganic and Medicinal chemistry, 4(6)803-813(1996))により、合成することができる。
【0075】
[化合物2]
化合物1(423mg, 0.747mmol)、メタンスルホニルクロリド(MsCl)(102mg, 0.89mmol)、及びトリエチルアミン(0.42mL, 3mmol)の溶液(CH2Cl2 14mL中)を0℃で2時間撹拌した後、室温にして一晩撹拌を続けた。この混合溶液を飽和食塩水で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、減圧して溶媒を除去した。残渣はシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒EtOAc:ヘキサン(2:1))で精製し、無色のオイル(598mg, 93%)を得た。
HRMS(FAB)(m/z) Calcd for C31H54N4O9S:644.3580
Found: 644.3580
1H NMR(600MHz, CDCl3)δ: 1.43-1.54(m,26H), 1.61-1.65(m,2H), 1.70-1.75(m,2H), 3.00(s,3H), 3.14-3.22(m,10H), 4.23-4.25(m,2H), 5.09(s,2H), 7.31-7.36(m,5H)
[化合物3]
化合物2(350mg, 0.543mmol)及びNaN3(52mg, 0.8mmol)の混合溶液(DMF 3mL中)を、室温で一晩撹拌した。混合溶液をEtOAcで希釈し、水で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、減圧して溶媒を除去した。残渣はシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒EtOAc:ヘキサン(1:1))を精製し、無色のオイル(320mg, 97%)を得た。
HRMS(FAB)(m/z) Calcd for C30H51N6O6:591.3869
Found: 591.3574
1H NMR(600MHz, CDCl3)δ: 1.44-1.58(m,30H), 3.16-3.23(m,10H), 3.28-3.30(m,2H), 5.09(s,2H), 7.31-7.36(m,5H)
[化合物4]
化合物3(184mg, 031mmol)の溶液(THF 3mL中)を、室温で24時間、H2雰囲気下、3.5~6.5%のパラジウムカーボンエチレンジアミン複合体(44mg)を触媒として水素化した。触媒はセライトでろ過した。ろ液を濃縮しオイルを得た。当該オイルの溶液(CH2Cl2 3mL中)に、p-トルエンスルホニルクロリド(TsCl)(59mg, 0.31mmol)、及びトリエチルアミン(56μL, 0.4mmol)を加えた。混合溶液を室温で撹拌し、18時間後、CH2Cl2で希釈し、飽和食塩水で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、減圧して濃縮した。残渣は、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒EtOAc:ヘキサン(1:1))で精製し、無色のオイル(150mg, 67%)を得た。
HRMS(FAB)(m/z) Calcd for C37H59N4O8S:719.4053
Found: 719.4054
1H NMR(600MHz, CDCl3)δ: 1.43-1.53(m,30H), 2.42(s,3H), 2.92-2.95(m,2H), 3.10-3.23(m,10H), 5.09(s,2H), 7.28-7.35(m,7H), 7.74(d,2H,J=8.22Hz)
[化合物5]
化合物4(202mg, 0.28mmol)の溶液(THF 3mL中)を、室温で24時間、H2雰囲気下、10%パラジウムカーボン(40mg)を触媒として水素化した。触媒はセライトでろ過した。減圧してろ液を濃縮し、残渣はシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒CHCl3:MeOH:25%NH4OH(100:20:2))で精製し、無色のオイル(72mg, 44%)を得た。
HRMS(FAB)(m/z) Calcd for C29H53N4O6S:585.3685
Found: 585.3683
1H NMR(600MHz, CDCl3)δ: 1.43-1.54(m,30H), 2.42(s,3H), 2.62-2.67(m,2H), 2.93-2.96(m,2H), 3.11-3.23(br,8H), 7.30(d,2H,J=7.92Hz), 7.75(dd,2H,J=8.58,2.1Hz)
[化合物6(TsPD)]
化合物5(62mg, 0.106mmol)の溶液(THF 2mL中)に、濃HCl(0.2mL)を加えた。混合溶液を室温で24時間撹拌し、減圧して濃縮し、白色粉末(52mg, 100%)を得た。
HRMS(FAB)(m/z) Calcd for C19H37N4O2S:385.2637 [M-3HCl+1]
Found: 385.2642
1H NMR(600MHz, D2O)δ: 1.51-1.57(m,12H), 2.24(s,3H), 2.72(t,2H,J=6.9Hz), 2.85-2.89(m,8H), 3.42(t,2H,J=6.18Hz), 7.28(d,2H,J=8.22Hz), 7.56(d,2H,8.22Hz)
[化合物7]
化合物5(115mg, 0.196mmol)及び1,3-bis(tert-butoxycarbonyl)-2-methyl-2-thiopseudourea(57mg, 0.196mmol)の溶液(CH2Cl2 2mL中)を室温で48時間撹拌した。混合溶液はセライトでろ過紙し、ろ液は減圧して濃縮した。残渣を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒EtOAc:ヘキサン(1:1))で精製し、無色のオイル(135mg, 83%)を得た。
HRMS(FAB)(m/z) Calcd for C40H71N6O10S:827.4951
Found: 827.4967
1H NMR(600MHz, CDCl3)δ: 1.41-1.59(m,48H), 2.43(s,3H), 2.94-2.96(m,2H), 3.10-3.21(m,8H), 3.41-3.44(m,2H), 7.30(d,2H,J=8.22), 7.75(d,2H,J=8.22Hz), 8.35(br s,1H), 11.50(s,1H)
[化合物8(TsPDG)]
化合物7(116mg, 0.14mmol)の溶液(THF 2mL)に、濃HCl(0.5mL)を加えた。混合液を室温で24時間撹拌し、減圧して濃縮し、白色の粉末(75mg, 100%)を得た。
HRMS(FAB)(m/z) Calcd for C20H39N6O2S:427.2855 [M-3HCl+1]
Found: 427.2854
1H NMR(600MHz, D2O)δ: 1.31-1.36(m,2H), 1.44-1.57(m,10H), 2.24(s,3H), 2.73(t,2H,J=6.9Hz), 2.80-2.82(m,2H), 2.85-2.88(m,6H), 3.02(t,2H,J=6.9Hz), 7.28(d,2H,J=8.22Hz), 7.56(d,2H,J=8.22Hz)
<実施例2>
本発明に係る化合物(I)として、下記式(V)で表されるTsSPMGを合成した。
【0076】
【化17】
JP0005327669B2_000018t.gif

【0077】
合成の手順の概略は以下のとおりである。
【0078】
【化18】
JP0005327669B2_000019t.gif

【0079】
[化合物9]
ベンズアルデヒド(1.06g,10mmol)とN-(4-アミノブチル)カルバミン酸のtert-ブチルエステル(1.88g,10mmol)の混合溶液(MeOH 25mL中)を室温で撹拌した。続いて、MgSO4(1.8g)を添加し、室温で1時間撹拌を継続した。この混合溶液を0℃まで冷却し、NaBH4(2.65g,70mmol)を1時間かけて分割添加し、MeOHをさらに15mL加えて撹拌懸濁液を得た。さらに12時間撹拌を続け、反応溶液をろ過した後、濃縮した。EtOAc(100mL)を残渣に加え、懸濁液を0.5時間撹拌した後ろ過し、ろ液を水で洗浄し、MgSO4で乾燥させてから減圧してEtOAcを除去した。残渣を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒CHCl3:MeOH:25%NH4OF(100:10:1))によって精製し、無色のオイルを得た(2.45g,88%)。
HRMS(FAB)(m/z) Calcd for C16H27N2O2:279.2072
Found: 279.2071
1H NMR(600MHz, CDCl3)δ: 1.43(s,9H), 1.53-1.55(m,4H), 2.65(t,2H,J=6.5Hz), 3.12-3.13(m,2H), 3.78(s,2H), 4.83(br s,1H), 7.24-7.26(m,1H), 7.31-7.33(m,4H)
[化合物10]
化合物9(2.41g, 8.66mmol)とアクリロニトリル(732mg,13.8mmol)の混合溶液(MeOH 10mL中)を80℃で6時間撹拌した。その後、混合溶液を濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒EtOAc:ヘキサン(1:1))で精製し、無色のオイル(2.87g,100%)を得た。
HRMS(FAB)(m/z) Calcd for C19H30N3O2:332.2337
Found: 332.2340
1H NMR(600MHz, CDCl3)δ: 1.44(s,9H), 1.49-1.51(m,4H), 2.41(t,2H,J=6.5Hz), 2.51(t,2H,J=6.9Hz), 2.77(t,2H,J=6.9Hz), 3.09-3.10(br,2H), 3.60(s,2H), 4.60(br s,1H), 7.26-7.27(m,1H), 7.32-7.33(m,4H)
[化合物11]
化合物10(2.82g, 8.5mmol)のTHF(10mL)溶液に濃塩酸(3mL)を加えた。混合溶液を室温で24時間撹拌し、減圧下で濃縮し、残渣をEtOAcと水で割り、水相をEtOAcで洗浄した後分離して、25%NH4OHを加え塩基性にした(pH11)。当該混合溶液をEtOAcで抽出し、水で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、減圧してEtOAcを除去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒CHCl3:MeOH:25%NH4OH(100:40:4)で精製し、無色のオイル(1.86g, 95%)を得た。
HRMS(FAB)(m/z) Calcd for C14H22N3:232.1813
Found: 232.1818
1H NMR(600MHz, CDCl3)δ: 1.45-1.48(m,2H), 1.51-1.54(m,2H), 2.40(t,2H,J=6.9Hz), 2.51(t,2H,J=6.9Hz), 2.67(t,2H,J=7.2Hz), 2.79(t,2H,J=7.2Hz), 3.61(s,2H), 7.25-7.28(m,1H), 7.31-7.34(m,4H)
[化合物12]
化合物11(0.93g, 4mmol)とN-[(4-メチルフェニル)スルホニル]-β-アラニン(0.97g, 4mmol)、及び4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルフォリニウムクロリド(DMT-MM)(1.106g, 4mmol)の混合溶液(MeCN 60mL中)を室温で24時間撹拌した。当該混合溶液を濃縮し、残渣をEtOAcで希釈し、水で洗浄した後MgSO4で乾燥させ、減圧して濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒EtOAc:CHCl3(3:1))で精製し、無色のオイル(1.287g, 70%)を得た。
HRMS(FAB)(m/z) Calcd for C24H33N4O3S:457.2273
Found: 457.2271
1H NMR(600MHz, CDCl3)δ: 1.49-1.62(m,4H), 2.38(t,2H,J=5.5Hz), 2.40-2.43(m.5H), 2.50(t,2H,J=6.5Hz), 2.77(t,2H,J=6.5Hz), 3.14-3.17(m,2H), 3.18-3.21(m,2H), 3.60(s,2H), 5.50(br s,1H), 5.76(br s,1H), 7.25-7.28(m,1H), 7.30(d,2H,J=7.9Hz), 7.27-7.33(m,4H), 7.74(d,2H,J=7.9Hz)
[化合物13]
化合物12(1.21g, 2.65mmol)と10M BH3・DMS(4mL,40mmol)の混合溶液(THF 40mL中)を80℃で24時間撹拌した。その後、室温まで冷却し、0.7M HCl-MeOH溶液を加え、反応溶液を0.5時間還流し、減圧して蒸発させた。残渣を過剰な25%NH4OHで塩基性とした(pH11)。混合液はCH2Cl2によって抽出し、水で洗浄し、Na2SO4で乾燥させた。溶媒の除去後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒CHCl3:MeOH:25%NH4OH(10:30:3))で精製し、無色のオイル(1.153g, 97%)を得た。
HRMS(FAB)(m/z) Calcd for C24H39N4O2S:447.2793
Found: 447.2792
1H NMR(600MHz, CDCl3)δ: 1.47-1.55(m,4H), 1.60-1.66(m,4H), 2.41(s,3H), 2.43(t,2H,J=6.54Hz), 2.48(t,2H,J=6.9Hz), 2.53(t,2H,J=6.9Hz), 2.67(t,2H,J=5.8Hz), 2.74(t,2H,J=6.54Hz), 3.03(t,2H,J=5.82Hz), 3.54(s,2H), 7.23-7.25(m,1H), 7.28(d,2H,J=8.22), 7.30-7.32(m,4H), 7.74(d,2H,J=8.22Hz)
[化合物14]
化合物13(828mg, 1.85mmol)とトリフルオロ酢酸エチル(263mg, 1.85mmol)の混合溶液(THF 50mL中)を0℃で撹拌した。3時間後、(Boc)2O(404mg, 1.85mmol)を反応溶液に加えた。3時間撹拌した後、減圧下で溶媒を除去した。残渣をEtOAcに溶解し、水で洗浄し、Na2SO4で乾燥させた。減圧して溶媒を除去した後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒CHCl3:MeOH(20:1))で精製し、無色のオイルを得た(1.11g, 93%)。
HRMS(FAB)(m/z) Calcd for C31H46N4O5F3S:643.3140
Found: 643.3180
1H NMR(600MHz, CDCl3)δ: 1.38-1.46(m,13H), 1.64-1.72(br,4H), 2.40(s,3H), 2.45(br s,2H), 2.55(br s,2H), 2.84-2.94(br,2H), 3.00-3.15(br,2H), 3.16-3.24(br,2H), 3.31-3.33(m,2H), 3.53(s,2H), 6.04(br s,1H), 7.23-7.33(m,7H), 7.74(d,2H,J=8.28Hz), 8.52(br s,1H)
[化合物15]
化合物14(469mg, 0.73mmol)の溶液(MeOH15mL及び水2.5mL)に、炭酸カリウム(442mg, 3.2mmol)を添加した。反応溶液を12時間還流し冷却した後、減圧して溶媒を除去した。残渣をEtOAcに溶解し、水で洗浄し、Na2SO4で乾燥させた。減圧して溶媒を除去することにより、無色のオイルである粗アミンが得られた。氷冷した粗アミン溶液(CH2Cl2 5mL中)に1,3-bis(tert-butoxycarbonyl)-2-methyl-2-thiopseudourea (316mg, 1.09mmol)を加えた。12時間撹拌した後、混合溶液を減圧して濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒CHCl3:MeOH(20:1))により精製し、無色のオイルを得た(574mg, 100%)。
HRMS(FAB)(m/z) Calcd for C40H65N6O8S:789.4584
Found: 789.4584
1H NMR(600MHz, CDCl3)δ: 1.36-1.60(m,35H), 2.36-2.46(m,9H), 2.85(br s,2H), 2.96(br s,2H), 3.20(br s,2H), 3.51(s,2H), 3.00-3.15(br,2H), 7.26-7.29(m,7H), 7.73(dd,2H,J=8.28,3.0Hz), 8.37(br s,1H), 11.48(br s,1H)
[化合物16]
化合物15(252mg, 0.32mmol)の溶液(THF 5mL中)を、室温で24時間、H2雰囲気下、10%Pd-C(100mg)を触媒として水素化した。触媒はセライトでろ過した。ろ液を濃縮し、乾燥させた。残渣は、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒CHCl3:MeOH(20:1→10:1))で精製し、無色のオイル(70mg, 32%)を得た。
HRMS(FAB)(m/z) Calcd for C33H59N6O8S:699.4114
Found: 699.4114
1H NMR(600MHz, CDCl3)δ: 1.40(br s,9H), 1.48(s,9H), 1.51(s,9H), 1.52-1.80(m,8H), 2.40(s,3H), 2.87-3.11(m,8H), 3.24-3.28(m,2H), 3.55-3.57(m,2H), 7.26-7.28(m,2H), 7.76-7.80(m,2H), 8.71(t,1H,J=5.8Hz), 11.46(s,1H)
[化合物17(TsSPMG)]
化合物16(70mg, 0.1mmol)の溶液(THF 2mL中)に濃塩酸(0.2mL)を加えた。混合溶液を24時間室温で撹拌し、減圧して濃縮し、非結晶質の白色の粉末を得た(50mg, 100%)。
HRMS(FAB)(m/z) Calcd for C18H35N6O2S:399.2541 [M-3HCl+1]
Found: 399.2542
1H NMR(600MHz, D2O)δ: 1.55-1.58(m,4H), 1.64-1.69(m,2H), 1.76-1.81(m,2H), 2.24(s,3H), 2.80(t,2H,J=6.9Hz), 2.86-2.93(m,8H), 3.10(t,2H,J=6.9Hz), 7.28(d,2H,J=8.22Hz), 7.56(d,2H,J=8.22Hz)
<実施例3>
本発明に係る化合物(I)として、下記式(VIII)で表されるBsPDGを合成した。
【0080】
【化19】
JP0005327669B2_000020t.gif

【0081】
合成の手順の概略は以下のとおりである。
【0082】
【化20】
JP0005327669B2_000021t.gif

【0083】
[化合物3]
化合物3は、上述した実施例2における化合物と同一であるため、ここでは説明を省略する。
【0084】
[化合物18]
化合物3(1.71g, 2.89mmol)の溶液(THF 30mL中)を、室温で24時間、H2雰囲気下に載置し、3.5-6.5%のパラジウムカーボンエチレンジアミン複合体(171mg)を触媒として水素化した。触媒はセライトでろ過した。ろ液を濃縮して、オイルを得た。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒HCl3:MeOH:25%NH4OH(100:20:2)で精製し、無色のオイル(1.14g, 70%)を得た。
HRMS(FAB)(m/z) Calcd for C30H53N4O6:565.3964
Found: 565.3968
1H NMR(600MHz, CDCl3)δ: 1.44-1.55(m,30H), 3.17-3.21(m,12H), 5.09(s,2H), 7.30-7.33(m,1H), 7.35-7.36(m,4H)
[化合物19]
化合物19(465mg, 0.823mmol)の溶液(CH2Cl2 10mL中)に、1-ブタンスルホニルクロリド(BsCl)(129mg, 0.823mmol)及びトリエチルアミン(0.15mL, 1.07mmol)を加えた。混合溶液を室温で撹拌した。18時間後、混合溶液をCH2Cl2で希釈し、飽和食塩水で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、減圧して濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒EtOAc:ヘキサン(1:1))で精製し、無色のオイル(309mg, 55%)を得た。
HRMS(FAB)(m/z) Calcd for C34H61N4O8S:685.4209
Found: 685.4204
1H NMR(600MHz, CDCl3)δ: 0.95(t,3H,J=7.56Hz), 1.76-1.81(m,12H), 2.98-3.02(m,2H), 3.10-3.24(m,12H), 5.09(s,2H), 7.30-7.32(m,1H), 7.35-7.36(m,4H)
[化合物20]
化合物19(240mg, 0.35mmol)の溶液(THF 3mL中)を、室温で48時間、H2雰囲気に載置し、10%パラジウムカーボン(48mg)を触媒として水素化した。触媒はセライトでろ過し、減圧して濃縮した。残渣は、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒CHCl3:MeOH:25%NH4OH(100:20:2)で精製し、無色のオイル(135mg, 70%)を得た。
HRMS(FAB)(m/z) Calcd for C26H55N4O6S:551.3842
Found: 551.3837
1H NMR(600MHz, CDCl3)δ: 0.95(t,3H,J=7.56Hz), 1.44-1.55(m,32H), 1.76-1.81(m,2H), 2.99-3.02(m,2H), 3.10-3.25(m,12H)
[化合物21]
化合物19(123mg, 0.22mmol)及び1,3-bis(tert-butoxycarbonyl)-2-methyl-2-thiopseudourea(64mg, 0.196mmol)の溶液(CH2Cl2 4mL中)を、室温で48時間撹拌した。混合溶液を減圧濃縮した。残渣を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒CH2Cl2及びEtOAc)で精製し、無色のオイル(60mg, 34%)を得た。
HRMS(FAB)(m/z) Calcd for C37H73N6O10S:793.5108
Found: 793.5109
1H NMR(600MHz, CDCl3)δ: 0.95(t,3H,J=7.56Hz), 1.44-1.60(m,50H), 1.78-1.80(m,2H), 2.99-3.02(m,2H), 3.12-3.25(m,2H), 3.12-3.25(m,12H), 8.34(br s,1H), 11.50(s,1H)
[化合物22(BsPDG)]
化合物21(50mg, 0.063mmol)の溶液(THF 0.5mL中)に、濃塩酸(0.2mL)を加えた。混合溶液を室温で24時間撹拌し、減圧濃縮して白色粉末(31mg, 100%)を得た。
HRMS(FAB)(m/z) Calcd for C17H41N6O2S:393.3011 [M-3HCl+1]
Found: 393.3012
1H NMR(600MHz, D2O)δ: 0.72(t,3H,J=7.56Hz), 1.25(sex,2H,J=7.56Hz), 1.40-1.49(m,4H), 1.50-1.59(m,10H), 2.86-2.89(m,8H), 2.92(t,2H,J=6.84Hz), 3.00-3.04(m,4H)
<実施例4>
上述のように合成したTsPD、TsPDG、TsSPMG、BsPDG、及びTosyl-SPM(上記特許文献1に記載された方法により合成)の薬理作用を確認するため、これらの化合物がNMDA受容体に及ぼす影響を二電極膜電位固定法(Voltage Clamp法)により測定した。
(1)NMDA受容体を発現させたアフリカツメガエルの卵母細胞の準備
卵母細胞の発現試験例のスキームを図1に示す。この方法は、益子らの方法(Masuko T. et al., Mol. Pharmacol. 55:957-969(1999); Masuko T. et al., Nuerosci. Lett. 371:30-33(2004); Masuko T. et al., Chem. Pharm. Bull. 53(4)444-447(2005))に従って行うことができる。卵母細胞には、NMDA受容体のNR1サブユニット及びNR2サブユニットのcRNAを1:5の割合(NR1が0.1-4ng、NR2が0.5-20ng)で注入し、NMDA受容体を発現した卵母細胞を得た。
【0085】
この卵母細胞を培地(96mM NaCl、2mM KCl、1mM MgCl2、1.8mM CaCl2、5mM Na-HEPES、2.5mM ピルビン酸ナトリウム、50μg/ml ゲンタマイシン、pH=7.5)中で1~3日間19℃で培養した。
【0086】
測定日には、卵母細胞中にK+-BAPTAを注入した後、記録用バッファー(96mM NaCl、2mM KCl、1.8mM BaCl2、10mM Na-HEPES、pH=7.5)を用いて後述の二電極膜電位固定法により受容体の活性を測定した。
【0087】
尚、NR1には1種類、NR2にはNR2A~NR2Dの4種類の遺伝子が存在し、NMDA受容体にはNR1/NR2A、NR1/NR2B、NR1/NR2C、NR1/NR2Dのサブタイプがあるが、脳内においては、NR1/NR2A及びNR1/NR2Bサブタイプが広く発現していると考えられているため、以下の試験では、この2つのサブタイプに対する活性阻害効果を測定した。
(2)二電極膜電位固定法
二電極膜電位固定法は、Williamsらの方法(Williams, K. et al., Mol. Pharmacology 38:85-108)に従った。二電極電位固定用増幅器CEZ-1250(日本光電)を用いて、卵母細胞の膜全体を通過する電流を測定した。電極に3Mの塩化カリウムを満たし、抵抗は0.4-4MΩとした。また、測定の際は、NMDA受容体のアゴニストとしてグルタミン酸とグリシンを添加した。
(3)TsPD、TsPDG、TsSPMG、BsPDG、及びTosyl-SPMがNMDA受容体(NR1/NR2A及びNR1/NR2B)に与える影響の測定
上記方法により得られた卵母細胞に、種々の濃度のTsPD、TsPDG、TsSPMG、BsPDG、及びTosyl-SPMを添加し、固定電位をVh=-70mV(静止膜電位)として、NMDA受容体サブタイプに対する活性阻害効果を測定した。
【0088】
比較例としては、上記式(III)で示されるDansyl-SPMを使用して、同様に測定した。
【0089】
例数4~5の卵母細胞から得た値の平均値±S.E.M.を測定値とし、結果を図2に示す。また、これらの結果から求められたIC50の値を表1に示す。
【0090】
【表1】
JP0005327669B2_000022t.gif

【0091】
図2及び表1に示されるように、Tosyl-SPM、TsSPMG、TsPD、TsPDG、BsPDGはいずれも良好なNMDA受容体活性阻害効果を示し、特に、TsPD、TsPDG、BsPDG、中でもTsPDG及びBsPDGは非常に顕著な効果を示した。既にアルツハイマー病治療薬として知られるメマンチンのIC50は1μMであることに鑑みても、低濃度で高い受容体活性阻害効果が得られることがわかった。
<実施例5>
次に、TsPD、TsPDG、TsSPMG、BsPDG、及びTosyl-SPMについて細胞毒性試験を行った。この試験においてもDansyl-SPMを比較例として用いた。
(1)細胞培養
SH-SY5Y神経芽細胞腫細胞系をAmerican Type Culture Collectionより購入した。細胞は、ペニシリン(100U/ml)、ストレプトマイシン(100U/ml)、及び非働化ウシ胎児血清(Gibco)を加えたD-MEM培地で培養した。細胞は37℃のCO2インキュベータ内に維持され、空気95%とCO25%の条件に保たれた。
(2)アラマーブルーアッセイ
未分化SH-SY5Y細胞にさまざまな濃度のポリアミン誘導体を24時間暴露した。アラマーブルーのストック溶液は96穴のウェルプレートに移され、最終アッセイボリュームが100μl/wellとなるようにし、アラマーブルーの最終濃度を10%とした。6時間後、還元されたアラマーブルーを波長570nmで測定した(図3)。生存率(%)は、薬物無添加の細胞のミトコンドリアの呼吸活性を100%とし、ポリアミン誘導体を24時間暴露した細胞の呼吸活性を相対値で表した。呼吸活性が50%になったときのポリアミン誘導体の濃度をIC50とし、表2に示す。
【0092】
【表2】
JP0005327669B2_000023t.gif

【0093】
表2に示されるように、TsPD、TsPDG、TsSPMG、BsPDG、及びTosyl-SPMは、Dansyl-SPMに比較して、細胞毒性が非常に低いことが確認された。メマンチンのIC50が110~120μMであることに鑑みても、本発明に係るポリアミン誘導体の安全性が非常に高いことがわかった。
<実施例6>
次に、興奮毒性による神経細胞死に対するポリアミン誘導体の保護効果について検討した。ラット海馬の初代培養細胞を7日間培養して、グルタミン酸またはNMDAを1時間暴露して誘発される神経細胞死を、24時間後の乳酸デヒドロゲナーゼ放出を指標として評価したところ、顕著な細胞死が認められた。また、グルタミン酸、NMDA暴露による神経細胞死には濃度依存性が示された。
結果を図4に示す。
グルタミン酸で誘発される神経細胞死は、1μMのTsPDG、1μMのBsPDG、または10μMのTsPDにより、顕著に抑制された。これらの化合物による神経細胞死の抑制効果は、30μMのメマンチンと同程度かそれよりも高かった。
また、NMDAで誘発される神経細胞死も同様に、1μMのTsPDG、1μMのBsPDG、または10μMのTsPDにより完全に抑制された。これらの化合物による神経細胞死の抑制効果は、30μMのメマンチンよりも高かった。
<実施例7>
次に、本発明に係るポリアミン誘導体の血液脳関門に対する透過性を評価した。
マウス腹腔内に100mg/kgのNMDAを投与すると数分後に痙攣が誘発される。そこでNMDAによって誘発されるマウスの痙攣に対するポリアミン誘導体の抗痙攣効果について検討した。結果を図5に示す。
NMDAによって誘発されたマウスの痙攣は、NMDA投与の30分前に0.5mg/kgのTsPDG及びBsPDGを静脈内投与しておくと、痙攣時間がそれぞれ43%及び39%短縮された。これは、10mg/kgのメマンチンを静脈内投与した場合の痙攣時間の短縮(38%)と同程度であった。
この結果から、TsPDG及びBsPDGは脳機能保護効果を示すことが明らかとなった。また、血液脳関門に対する透過性を有することも示唆された。
以上より、本発明に係るポリアミン誘導体は、既存のアルツハイマー治療薬のメマンチンと比較して、NMDA受容体活性阻害、細胞毒性、神経細胞保護効果のすべての面で優れていることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】卵母細胞におけるNMDA受容体発現試験例の概略を示す説明図である。
【図2】本発明に係るポリアミン誘導体のNMDA受容体活性阻害効果の測定結果を示す。
【図3】SH-SY5Y培養細胞にポリアミン誘導体を様々な濃度で24時間暴露し、アラマーブルー存在下で570nmの吸光度を測定した結果である。
【図4】本発明に係るポリアミン誘導体の興奮毒性による神経細胞死による保護効果の測定結果を示す。
【図5】本発明に係るポリアミン誘導体の血液脳関門に対する透過性を測定した結果を示す。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4