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明細書 :非接触生体情報収集による年齢推定装置、年齢推定方法及び年齢推定プログラム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5637583号 (P5637583)
公開番号 特開2010-162069 (P2010-162069A)
登録日 平成26年10月31日(2014.10.31)
発行日 平成26年12月10日(2014.12.10)
公開日 平成22年7月29日(2010.7.29)
発明の名称または考案の名称 非接触生体情報収集による年齢推定装置、年齢推定方法及び年齢推定プログラム
国際特許分類 A61B   5/0245      (2006.01)
A61B   5/0452      (2006.01)
FI A61B 5/02 321D
A61B 5/04 312U
A61B 5/02 320C
請求項の数または発明の数 13
全頁数 13
出願番号 特願2009-004584 (P2009-004584)
出願日 平成21年1月13日(2009.1.13)
審査請求日 平成23年11月21日(2011.11.21)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】899000057
【氏名又は名称】学校法人日本大学
発明者または考案者 【氏名】西本 哲也
個別代理人の代理人 【識別番号】100075258、【弁理士】、【氏名又は名称】吉田 研二
【識別番号】100096976、【弁理士】、【氏名又は名称】石田 純
審査官 【審査官】伊藤 幸仙
参考文献・文献 特開2008-253538(JP,A)
特開2006-227014(JP,A)
特開2006-055406(JP,A)
特開2004-358022(JP,A)
武田優大,西本哲也,「非接触による心拍測定とそれによる年齢推定への応用」,社団法人自動車技術会2007年春季大会学術講演会前刷集No.59-07,日本,2007年 5月23日,p23-p26
調査した分野 A61B 5/02 - 5/03
JSTPlus(JDreamIII)
JMEDPlus(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
被験者の年齢を推定する年齢推定装置であって、
前記被験者から生体情報を取得する生体情報取得手段と、
前記生体情報から心拍の信号を抽出する心拍抽出手段と、
前記心拍の信号からRR間隔を求めるRR間隔算出手段と、
前記RR間隔算出手段において算出されたRR間隔の呼吸性変動を求める呼吸性変動抽出手段と、
前記呼吸性変動の振幅値を求める振幅値算出手段と、
前記呼吸性変動の振幅値に基づいて前記被験者の年齢を推定する年齢推定手段と、
を備え
前記年齢推定手段は、予め定められた呼吸性変動の振幅値と年齢との関係式に基づいて、前記呼吸性変動抽出手段において求められたRR間隔の呼吸性変動の振幅値から前記被験者の年齢を推定することを特徴とする年齢推定装置。
【請求項2】
被験者の年齢を推定する年齢推定装置であって、
前記被験者から生体情報を取得する生体情報取得手段と、
前記生体情報から心拍の信号を抽出する心拍抽出手段と、
前記心拍の信号からRR間隔を求めるRR間隔算出手段と、
前記RR間隔算出手段において算出されたRR間隔の呼吸性変動を求める呼吸性変動抽出手段と、
前記呼吸性変動の積分値を求める積分値算出手段と、
前記呼吸性変動の積分値に基づいて前記被験者の年齢を推定する年齢推定手段と、
を備えることを特徴とする年齢推定装置。
【請求項3】
請求項1に記載の年齢推定装置であって、
前記年齢推定手段は、前記呼吸性変動の振幅値が所定の閾値以下である場合に前記被験
者が高齢者であると判定することを特徴とする年齢推定装置。
【請求項4】
請求項2に記載の年齢推定装置であって、
前記年齢推定手段は、前記呼吸性変動の積分値が所定の閾値以下である場合に前記被験
者が高齢者であると判定することを特徴とする年齢推定装置。
【請求項5】
請求項1~のいずれか1つに記載の年齢推定装置であって、
前記生体情報取得手段は、非接触で被験者から前記生体情報を取得することを特徴とする年齢推定装置。
【請求項6】
請求項に記載の年齢推定装置であって、
前記生体情報取得手段は、マイクロ波ドップラモジュールであることを特徴とする年齢
推定装置。
【請求項7】
請求項に記載の年齢推定装置であって、
前記マイクロ波ドップラモジュールは、座席の背もたれ部分に配置されていることを特徴とする年齢推定装置。
【請求項8】
請求項に記載の年齢推定装置であって、
前記マイクロ波ドップラモジュールは、前記座席の座面正面からみて中央より右にずれ
た位置に配置されていることを特徴とする年齢推定装置。
【請求項9】
請求項1~のいずれか1つに記載の年齢推定装置であって、
前記心拍抽出手段は、前記生体情報から0.8Hz以上2.0Hz以下の周波数成分を
前記心拍の信号として抽出することを特徴とする年齢推定装置。
【請求項10】
被験者の年齢を推定する年齢推定方法であって、
前記被験者から生体情報を取得する生体情報取得工程と、
前記生体情報から心拍の信号を抽出する心拍抽出工程と、
前記心拍の信号からRR間隔を求めるRR間隔算出工程と、
前記RR間隔算出工程において算出されたRR間隔の呼吸性変動を求める呼吸性変動抽出工程と、
前記呼吸性変動の振幅値を求める振幅値算出工程と、
前記呼吸性変動の振幅値に基づいて前記被験者の年齢を推定する年齢推定工程
を備え
前記年齢推定工程では、予め定められた呼吸性変動の振幅値と年齢との関係式に基づいて、前記呼吸性変動抽出工程において求められたRR間隔の呼吸性変動の振幅値から前記被験者の年齢を推定することを特徴とする年齢推定方法。
【請求項11】
被験者の年齢を推定する年齢推定方法であって、
前記被験者から生体情報を取得する生体情報取得工程と、
前記生体情報から心拍の信号を抽出する心拍抽出工程と、
前記心拍の信号からRR間隔を求めるRR間隔算出工程と、
前記RR間隔算出工程において算出されたRR間隔の呼吸性変動を求める呼吸性変動抽出工程と、
前記呼吸性変動の積分値を求める積分値算出工程と、
前記呼吸性変動の積分値に基づいて前記被験者の年齢を推定する年齢推定工程と、
を備えることを特徴とする年齢推定方法。
【請求項12】
被験者の年齢を推定する年齢推定プログラムであって、
コンピュータに、
前記被験者から生体情報を取得する生体情報取得ステップと、
前記生体情報から心拍の信号を抽出する心拍抽出ステップと、
前記心拍の信号からRR間隔を求めるRR間隔算出ステップと、
前記RR間隔算出ステップにおいて算出されたRR間隔の呼吸性変動を求める呼吸性変動抽出ステップと、
前記呼吸性変動の振幅値を求める振幅値算出ステップと、
前記呼吸性変動の振幅値に基づいて前記被験者の年齢を推定する年齢推定ステップと、
を行わせ
前記年齢推定ステップでは、予め定められた呼吸性変動の振幅値と年齢との関係式に基づいて、前記呼吸性変動抽出ステップにおいて求められたRR間隔の呼吸性変動の振幅値から前記被験者の年齢を推定することを特徴とする年齢推定プログラム。
【請求項13】
被験者の年齢を推定する年齢推定プログラムであって、
コンピュータに、
前記被験者から生体情報を取得する生体情報取得ステップと、
前記生体情報から心拍の信号を抽出する心拍抽出ステップと、
前記心拍の信号からRR間隔を求めるRR間隔算出ステップと、
前記RR間隔算出ステップにおいて算出されたRR間隔の呼吸性変動を求める呼吸性変動抽出ステップと、
前記呼吸性変動の積分値を求める積分値算出ステップと、
前記呼吸性変動の積分値に基づいて前記被験者の年齢を推定する年齢推定ステップと、
を行わせることを特徴とする年齢推定プログラム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触の生体情報の収集に基づく年齢推定装置、年齢推定方法及び年齢推定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野において心拍、呼吸、体温、血圧等の生体情報はバイタルサインと呼ばれ、これらの生体情報には被験者の身体的特徴や状況が的確に反映されている。このような生体情報は、例えば、自動車を運転する際の運転手の精神的状態(緊張状態にあるか等)を知り、自動車の運転における安全性や快適性を高める指標として利用されている。
【0003】
なかでも、心拍や呼吸は、その収集方法の容易性から過去にも多くの研究者によってデータが収集されており、運転者の飲酒状態や睡眠状態やその予兆を検知するための指標として用いる研究が進められている。
【0004】
人体の心拍や呼吸数については、胸部に電極を貼付して、心拍や呼吸に伴って人体を流れる微弱電流を検出する接触式の測定方法が医療機関等で広く用いられている。また、エアマットレスやマイクロ波を用いて非接触で心拍や呼吸数を測定する方法も開発されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、シートベルトやエアバッグ等の衝突安全装置は、自動車の交通事故発生時の被害を最小限に抑えることに寄与しているが、現在、これらの安全装置は乗員の年齢や性別に関係なく作動させられている。
【0006】
しかしながら、乗員の衝撃耐性は年齢や性別によって異なることが分かっており、高齢者の場合は同等の外力を受けても、他の年齢層に比べて重症が発生し易くなることが報告されている。よって、乗員の年齢や性別を判別し、交通事故発生時に安全装置を年齢や性別に応じて作動させることができれば、乗員への傷害の発生やその大きさを低減できると考えられる。
【0007】
そこで、本発明は、生体情報収集手段によって得られた心拍や呼吸から被験者の年齢を推定する年齢推定装置、年齢推定方法及び年齢推定プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の1つの態様は、被験者の年齢を推定する年齢推定装置であって、被験者から心拍の信号を含む生体情報を取得し、前記心拍の信号に基づいて心拍の間隔を示すRR間隔を求め、RR間隔から前記被験者の年齢を推定することを特徴とする。
【0009】
また、本発明の別の態様は、被験者の年齢を推定する年齢推定方法であって、被験者から心拍の信号を含む生体情報を取得し、前記心拍の信号に基づいて心拍の間隔を示すRR間隔を求め、RR間隔から前記被験者の年齢を推定することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の別の態様は、被験者の年齢を推定する年齢推定プログラムであって、コンピュータに、被験者から心拍の信号を含む生体情報を取得し、前記心拍の信号に基づいて心拍の間隔を示すRR間隔を求め、RR間隔から前記被験者の年齢を推定する処理を実行させることを特徴とする。
【0011】
ここで、前記被験者から前記生体情報を取得する生体情報取得手段と、前記生体情報から前記心拍の信号を抽出する心拍抽出手段と、前記心拍の信号からRR間隔を求めるRR間隔算出手段と、前記RR間隔算出手段において算出されたRR間隔の呼吸性変動を求める呼吸性変動抽出手段と、前記呼吸性変動の振幅値を求める振幅値算出手段と、前記呼吸性変動の振幅値に基づいて前記被験者の年齢を推定する年齢推定手段と、を備えることが好適である。
【0012】
さらに、前記年齢推定手段は、前記呼吸性変動の振幅値が所定の閾値以下である場合に前記被験者が高齢者であると判定とすることが好適である。
【0013】
また、前記年齢推定手段は、予め定められた呼吸性変動の振幅値と年齢との関係式に基づいて、前記呼吸性変動抽出手段において求められたRR間隔の呼吸性変動の振幅値から前記被験者の年齢を推定することが好適である。
【0014】
また、前記被験者から前記生体情報を取得する生体情報取得手段と、前記生体情報から前記心拍の信号を抽出する心拍抽出手段と、前記心拍の信号からRR間隔を求めるRR間隔算出手段と、前記RR間隔算出手段において算出されたRR間隔の呼吸性変動を求める呼吸性変動抽出手段と、前記呼吸性変動の積分値を求める積分値算出手段と、前記呼吸性変動の積分値に基づいて前記被験者の年齢を推定する年齢推定手段と、を備えることが好適である。
【0015】
さらに、前記年齢推定手段は、前記呼吸性変動の積分値が所定の閾値以下である場合に前記被験者が高齢者であると判定とすることが好適である。
【0016】
また、前記生体情報取得手段は、非接触で被験者から前記生体情報を取得することが好適である。例えば、前記生体情報取得手段は、マイクロ波ドップラモジュールであることが好適である。
【0017】
ここで、前記マイクロ波ドップラモジュールは、座席の背もたれ部分に配置されていることが好適である。例えば、自動車等の車両のシートの背もたれ部分に配置することが好適である。さらに、前記マイクロ波ドップラモジュールは、前記座席の座面正面からみて中央より右にずれた位置に配置されていることが好適である。
【0018】
また、前記心拍抽出手段は、前記生体情報から0.8Hz以上2.0Hz以下の周波数成分を前記心拍の信号として抽出することが好適である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、生体情報収集手段によって得られた心拍や呼吸から被験者の年齢を推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態における年齢推定装置の基本構成を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態における測定部のシートへの配置を示す図である。
【図3】心拍波形の例を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態における年齢推定部の構成を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態における年齢推定処理のフローチャートである。
【図6】本発明の実施の形態における年齢推定装置の構成を示す機能ブロック図である。
【図7】本発明の実施の形態において得られる体表面変位信号の例を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態において得られる心電図の例を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態における体表面変位信号のスペクトルの例を示す図である。
【図10】本発明の実施の形態における心電図のスペクトルの例を示す図である。
【図11】呼吸性変動の振幅値と被験者の年齢との関係を示す図である。
【図12】呼吸性変動の振幅値と被験者の年齢との関係を示す図である。
【図13】本発明の別の実施の形態における年齢推定処理のフローチャートである。
【図14】本発明の別の実施の形態における年齢推定装置の構成を示す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施の形態における年齢推定装置は、図1に示すように、測定部10、年齢推定部12を含んで構成される。

【0022】
測定部10は、年齢推定の対象となる人(被験者)から生体情報を収集するための手段を含む。測定部10は、少なくとも人の心拍を示す信号を収集することができればよい。

【0023】
測定部10は、例えば、マイクロ波ドップラモジュールを含んで構成することができる。マイクロ波には、対象物(人や物体)に当たった際に反射波が発生する性質がある。この反射波が発生する際に対象物が動いている場合、反射波の周波数はその影響を受けて元のマイクロ波の周波数とはずれが生ずる。マイクロ波ドップラモジュールは、マイクロ波を発射する送信部、対象物で反射したマイクロ波を受信する受信部、送信波と受信波との周波数の差を検出し、対象物の動きを求める演算部を含んで構成される。

【0024】
このマイクロ波ドップラモジュールを用いて、マイクロ波を被験者の胸部や背中に照射することによって、被験者の心拍や呼吸による生体表面の微小な変位を測定することができる。マイクロ波の発振周波数は、例えば、10.525GHz(10.52GHz以上10.53GHz以下)とすることが好適である。また、マイクロ波は衣服程度なら透過するので、被験者が衣服を着用している状態のまま心拍や呼吸を測定することができる。この方法であれば、被験者を無拘束かつ非侵襲的に心拍及び呼吸を測定することができる。

【0025】
また、マイクロ波ドップラモジュールによる体表面変位計測は被験者の背部側から行ってもよいし、胸部側から行ってもよい。ただし、胸部側から計測を行うより背部側から計測を行うほうが呼吸の影響を受けにくい利点がある。

【0026】
例えば、図2に示すように、車両のシート14内に測定部10を配置してもよい。図2はシート14を座面正面からみた図である。シート14に座った被験者(ドライバ)の背中側から上半身にマイクロ波が当たるように、背もたれ部分14aに測定部10を配置することが好適である。また、シート14に座った被験者(ドライバ)の心臓にできるだけ近い位置にマイクロ波が当たるように、背もたれ部分14aの座席の座面正面からみて中央(ラインA)より右にずれた位置に測定部10を配置することが好適である。このとき、マイクロ波が背もたれ部分14aからシート14の座面方向に向けて放射されるように測定部10を設けることが好ましい。

【0027】
また、心拍による変位は呼吸や他の体動等の変位より小さく、心拍による変位だけを抽出するためにフィルタ処理を施してもよい。例えば、心拍と呼吸とは検出される周波数が異なるので、それぞれの周波数帯域のみを透過するバンドパスフィルタを用いることにより心拍成分と呼吸成分とを分離することができる。この処理については後述する。

【0028】
また、マイクロ波ドップラモジュールを生体情報の収集に利用する場合、発熱を含めた人体への副作用に関して安全となるように電力密度を1mW/cm2以下とすることが好ましい。

【0029】
なお、年齢推定装置に非接触性が必要とされない場合には、一般的な心電図を測定部10として用いてもよい。心電図は、人体表面の心臓を挟んだ電位差のある2部位に関電極(陽極、陰極)を装着し、さらに1部位に接地電極(不間電極)を装着して電極間の電位差を差動増幅して心拍を示す信号を収集する。

【0030】
心拍は、図3に示すように、P波(心房興奮波)、QRS波(心室興奮波)、T波(心室興奮回復波)と呼ばれる3種の波形から構成されている。また、スパイク状のQRS波の頂点の間隔をRR間隔とする。本実施の形態では、測定部10によって得られた信号からそれぞれの波形の頂点を検出し、頂点の間隔をRR間隔として評価する。

【0031】
年齢推定部12は、図4に示すように、処理部20、記憶部22、入力部24、出力部26を含む一般的なコンピュータにより構成することができる。また、年齢推定部12は、以下の年齢推定処理を行うように構成されたロジック回路により構成してもよい。

【0032】
処理部20は、CPU等のコンピュータにおける演算を行う部分である。処理部20は、記憶部22に予め格納された年齢推定プログラムを実行し、測定部10によって得られた信号を処理して被験者の年齢を推定する。記憶部22は、半導体メモリ、ハードディスク等の記憶手段を含んで構成される。記憶部22は、処理部20から適宜アクセス可能であり、年齢推定プログラム、測定部10で得られた信号、年齢推定処理に必要なパラメータ等を格納及び保持する。入力部24は、キーボード等の文字入力手段やマウス等のポインティングデバイスを含んで構成される。また、入力部24は、ネットワークや外部の装置に接続するためのインターフェースを含んでもよい。入力部24は、年齢推定処理を行う際に必要な各種データや各種パラメータを入力するために用いられる。出力部26は、ディスプレイ等の表示装置やプリンタ等の印刷装置を含んで構成される。また、出力部26は、外部装置へ信号を出力するためのインターフェースを含んでもよい。出力部26は、年齢推定装置において推定された被験者の年齢を示す信号を出力したり、年齢推定処理を行う際に必要な各種データや各種パラメータを入力するためのユーザインターフェースとして機能したりする。

【0033】
以下、年齢推定装置における年齢推定処理について図5のフローチャートを参照して説明する。また、以下の処理における各工程を実行することによって、年齢推定装置は図6に示す各機能ブロックとして機能する。

【0034】
ステップS10では、測定部10により被験者の心拍の情報を含む生体情報の信号を取得する。ステップS10の処理が生体情報取得手段30に相当する。

【0035】
本実施の形態ではマイクロ波ドップラモジュールにより生体情報を取得する場合を中心に説明する。マイクロ波ドップラモジュールは、測定部10から被験者に対してマイクロ波を照射し、被験者で反射したマイクロ波を受信し、送信波と受信波との周波数の差を検出することによって、対象物の動きを求める演算部を含んで構成される。

【0036】
このマイクロ波ドップラモジュールを用いて、マイクロ波を被験者の胸部や背中に照射することによって、被験者の心拍や呼吸による生体表面の微小な変位を測定することができる。本実施の形態では、サンプリング周波数を200Hz、収集時間を5分としたが、これに限定されるものではなく、より短い時間の計測であっても年齢推定は可能である。

【0037】
測定部10において得られた生体情報に関する信号は処理部20へ送られ、処理部20はその情報を記憶部22に格納する。

【0038】
ステップS12では、ステップS10において得られた生体情報から心拍に関する信号を抽出する。ステップS12の処理が心拍抽出手段32に相当する。

【0039】
図7は、マイクロ波ドップラモジュールによって得られた体表面変位信号の例である。体表面変位信号には、被験者の呼吸に合わせて上下する波形が重畳されている。一方、図8は、同じ被験者に対して心電図によって得られた信号の例である。ノイズが重畳されているが、スパイク状のQRS波が明確に観察される。

【0040】
図9にマイクロ波ドップラモジュールによって得られた体表面変位信号のスペクトル及び図10に心電図によって得られた信号のスペクトルをそれぞれ示す。図10のスペクトルから人体の心拍の信号は0.8Hz以上2.0Hz以下の周波数帯域、特に1.0Hz以上1.6Hz以下の周波数帯域に分布していることが分かった。図9においても0.8Hz以上2.0Hz以下の周波数帯域、特に1.0Hz以上1.6Hz以下の周波数帯域にスペクトルピークがみられる。

【0041】
そこで、処理部20は、マイクロ波ドップラモジュールによって被験者の体表面変位信号を得た場合にはフィルタ処理により0.8Hz以上2.0Hz以下の周波数帯域の周波数成分を抽出する。特に、1.0Hz以上1.6Hz以下の周波数帯域の周波数を抽出することが好適である。例えば、3次のバターワース・バンドフィルタ(Butterworth Band Filter)を用いて、ローパスフィルタ係数を低域遮断周波数1.0(Hz)、ハイパスフィルタ係数を高域遮断周波数1.6(Hz)とすることにより所望の周波数成分を抽出することができる。

【0042】
また、心電図によって被験者の心拍信号を得た場合には、処理部20はフィルタ処理によりQRS波を強調する処理を行うことが好ましい。例えば、3次のバターワース・バンドフィルタ(Butterworth Band Filter)を用いて、ローパスフィルタ係数を低域遮断周波数5.0(Hz)、ハイパスフィルタ係数を高域遮断周波数15.0(Hz)とすることによりQRS波の周波数成分を強調することができる。

【0043】
処理部20は、マイクロ波ドップラモジュールによって得られた体表面変位信号から抽出した心拍信号成分、又は、心電図のQRS波を強調した心拍信号を記憶部22に格納する。

【0044】
ステップS14では、ステップS12において得られた心拍を示す信号からRR間隔を算出する。ステップS14における処理がRR間隔算出手段34に相当する。

【0045】
RR間隔は、スパイク状のQRS波のピークの間隔である。処理部20は、ステップS12で得た心拍の信号からQRS波のピークを抽出する閾値を設定し、その閾値を超えた場合にQRS波のピークであるとして、隣り合うピークの間隔をRR間隔として算出する。処理部20は、得られたRR間隔を記憶部22に格納する。

【0046】
表1に、算出されたRR間隔の例を示す。表1には年齢が20代の10人の被験者についてマイクロ波ドップラモジュールによって得られた体表面変位信号から算出したRR間隔と、心電図によって得られた心拍信号から算出したRR間隔と、を示している。

【0047】
【表1】
JP0005637583B2_000002t.gif

【0048】
ステップS16では、ステップS14で算出したRR間隔から呼吸性変動を抽出する。ステップS16は、呼吸性変動抽出手段36に相当する。

【0049】
まず、ステップS14で算出したRR間隔を所定のサンプリング周期でサンプリングする。サンプリングの周波数は、例えば2Hzとすることが好適である。

【0050】
次に、サンプリングしたRR間隔の信号から呼吸性変動を抽出するために、2種類の無限インパルス応答フィルタ(IIR)を適用する。第1の無限インパルス応答フィルタでは、0.09Hz以下の周波数帯を遮断する。例えば、次数21のバターワース・ハイパスフィルタを用いて低域遮断周波数0.09Hzのフィルタリングを行う。続いて、第2の無限インパルス応答フィルタでは、0.12Hz以下の周波数帯を遮断し、さらに0.4Hz以上の周波数帯を遮断する。例えば、次数21のバターワース・バンドパスフィルタを用いて低域遮断周波数0.12Hz及び高域遮断周波数0.4Hzのフィルタリングを行う。

【0051】
ステップS18では、ステップS16で抽出した呼吸性変動からその振幅値を求める。ステップS18は、振幅値算出手段38に相当する。

【0052】
一人の被験者に対する計測から得られたRR間隔のばらつき(分散)は年齢によって特徴を有する。すなわち、年齢が高くなるにつれてRR間隔のばらつきは小さくなる傾向を示す。

【0053】
呼吸性変動の振幅値を抽出する方法は、一人の被験者に対してステップS16で抽出された呼吸性変動波形について、その波形のプラスのピーク(山)とマイナスのピーク(谷)を検出し、プラスのピークの平均値とマイナスのピークの平均値をそれぞれ求め、プラスのピークの平均値とマイナスのピークの平均値の差を呼吸性の変動の振幅値(ARSA)とするものである。

【0054】
処理部20は、上記処理を行い、求めた呼吸性の変動の振幅値ARSAを記憶部22に格納する。

【0055】
ステップS20では、ステップS18で抽出した呼吸性変動の振幅値ARSAから被験者の年齢を推定する。ステップS20が年齢推定手段40に相当する。

【0056】
図11は、複数の被験者について求められた呼吸性変動の振幅値ARSAを年齢に対してプロットした図である。20歳代の被験者(I群)の振幅値ARSAは20~130程度の範囲に分布しているのに対し、40歳代以上の被験者(II群)の振幅値ARSAは0~40の範囲に分布している。

【0057】
したがって、処理部20は、振幅値ARSAが40以上60以下を閾値として、より好ましくは振幅値ARSAが50を閾値として、その閾値以下の振幅値ARSAを有する被験者を高齢者として判定する。

【0058】
なお、このような処理では高齢者として判定された被験者には高齢者でない者を含む場合があるが、シートベルトの締付け強度を高齢者向けに調整する等の安全装置をより高齢者向けに制御するような場合には問題はない。

【0059】
また、図12は、複数の被験者について求められた呼吸性変動の振幅値ARSAを年齢層ごとに平均化してプロットした図である。なお、図12において実線はマイクロ波ドップラモジュールによって得られた体表面変位信号の呼吸性変動の振幅値ARSAの傾向を示す換算ラインであり、破線は心電図によって得られた心拍信号の呼吸性変動の振幅値ARSAの傾向を示す換算ラインである。いずれの計測方法においても、20歳代から60歳代にかけて振幅値ARSAは徐々に低下する傾向を示すことが分かる。

【0060】
したがって、処理部20は、ステップS18で求められた被験者の振幅値ARSAを図12の換算ラインに当てはめ、その被験者の年齢を推定する。

【0061】
このようにして推定された被験者の年齢に基づいて、交通事故発生時にシートベルトやエアバッグ等の衝突安全装置を年齢に応じて作動させることができる。これにより、高齢者に対しては安全装置の動作を調整して乗員への傷害の発生やその大きさを低減できる。

【0062】
なお、ステップS18における呼吸性変動の振幅値を求める方法の代りに、数式(1)を適用して呼吸性変動の積分値IRSAを算出してもよい。|RSA|は呼吸性変動波形の数値の絶対値である。図13及び図14にこの場合のフローチャート及び年齢推定装置の機能ブロック図を示す。
【数1】
JP0005637583B2_000003t.gif

【0063】
このように算出された積分値IRSAも図11と同様に被験者の年齢層に応じた分布をする。すなわち、20歳代の被験者の積分値IRSAは広範囲に分布するのに対し、40歳代以上の被験者の積分値IRSAは低い値の範囲に分布する。したがって、積分値IRSAが所定の閾値以下であれば高齢者と判定することができる。
【符号の説明】
【0064】
10 測定部、12 年齢推定部、14 シート、14a 背もたれ部分、20 処理部、22 記憶部、24 入力部、26 出力部、30 生体情報取得手段、32 心拍抽出手段、34 RR間隔算出手段、36 呼吸性変動抽出手段、38 振幅値算出手段、40 年齢推定手段。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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