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明細書 :レチノイン酸受容体αを含む融合タンパク質

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5626717号 (P5626717)
公開番号 特開2010-226992 (P2010-226992A)
登録日 平成26年10月10日(2014.10.10)
発行日 平成26年11月19日(2014.11.19)
公開日 平成22年10月14日(2010.10.14)
発明の名称または考案の名称 レチノイン酸受容体αを含む融合タンパク質
国際特許分類 C12N  15/09        (2006.01)
C07K  19/00        (2006.01)
C07K  14/705       (2006.01)
C07K  14/47        (2006.01)
C12N   1/15        (2006.01)
C12N   1/19        (2006.01)
C12N   1/21        (2006.01)
C12N   5/10        (2006.01)
A61K  38/00        (2006.01)
A61P  35/02        (2006.01)
FI C12N 15/00 ZNAA
C07K 19/00
C07K 14/705
C07K 14/47
C12N 1/15
C12N 1/19
C12N 1/21
C12N 5/00 101
A61K 37/02
A61P 35/02
請求項の数または発明の数 9
全頁数 34
出願番号 特願2009-077375 (P2009-077375)
出願日 平成21年3月26日(2009.3.26)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 平成21年3月5日 社団法人日本農芸化学会発行の「日本農芸化学会2009年度(平成21年度)大会講演要旨集」第301頁に発表
審査請求日 平成24年2月23日(2012.2.23)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】899000057
【氏名又は名称】学校法人日本大学
発明者または考案者 【氏名】花澤 重正
【氏名】舛廣 善和
個別代理人の代理人 【識別番号】100093861、【弁理士】、【氏名又は名称】大賀 眞司
【識別番号】100129218、【弁理士】、【氏名又は名称】百本 宏之
審査官 【審査官】渡邉 潤也
参考文献・文献 特表2003-514765(JP,A)
Mol.Cell.Biol.,1990 May,10(5),p.2154-63
Cell Growth Differ.,1996 Feb,7(2),p.179-86
Trends Pharmacol.Sci. 2000 Mar,21(3),p.99-103
Curr.Opin.Pharmacol.,2006 Oct,6(5),p.509-14
Nat.Med.,2005 Aug,11(8),p.892-8
Biochemistry,2006 Jan 31,45(4),p.1116-27
J.Mol.Biol.,2008 Jul 25,380(5),p.777-82
調査した分野 C12N 15/00-15/90
C07K 1/00-19/00
UniProt/GeneSeq
CAplus/BIOSIS(STN)
PubMed
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)

特許請求の範囲 【請求項1】
N末端から、精製用タグ、核内移行シグナル、レチノイン酸受容体、細胞膜透過性モチーフの順で連結されている融合タンパク質を、白血病細胞を分化させるための有効成分として含有する骨髄球性白血病の治療薬。
【請求項2】
前記核内移行シグナルが、配列番号:9~12に記載のアミノ酸配列からなるペプチドより選択される、請求項1に記載の治療薬
【請求項3】
前記細胞膜透過性モチーフが、配列番号:13~17に記載のアミノ酸配列からなるペプチドより選択される、請求項1又は2に記載の治療薬
【請求項4】
前記精製用タグが、ポリヒスチジンタグ又はFLAGペプチドである、請求項1から3のいずれか1項に記載の治療薬
【請求項5】
前記融合タンパク質が配列番号2に記載のアミノ酸配列からなる、請求項1記載の治療薬
【請求項6】
前記融合タンパク質の各ペプチドの間には、ベクターに由来するペプチドが介在し得る、請求項1記載の治療薬。
【請求項7】
請求項に記載の融合タンパク質をコードする核酸。
【請求項8】
請求項に記載の核酸を含む発現ベクター。
【請求項9】
請求項に記載の発現ベクターを含む形質転換体。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、白血病の予防又は治療に有用なレチノイン酸受容体αを含む融合タンパク質等に関する。
【背景技術】
【0002】
白血病は、白血球が腫瘍化して正常に分化・成熟できなくなり、未分化な白血球細胞が血液中に無制限に増加する疾患である。白血病細胞が分化能を失う原因は明らかでないものも多いが、多くの白血病細胞では染色体の欠損や転座が認められる。例えば、全白血病患者の約10%を占める急性前骨髄球性白血病(APL)では、15番染色体と17番染色体の相互転座と呼ばれる現象が認められることがある。この転座により、レチノイン酸受容体α(以下、「RARα」と表記する場合もある。)とPMLタンパク質が融合タンパク質として発現するため両タンパク質の機能が失われ、その結果、細胞が分化能を失う。
【0003】
ここで、模式図を参照してRARαの機能を説明する。
【0004】
まず、図10(A)に示すとおり、正常な細胞においては、RARαはレチノイドX受容体(RXR)とヘテロ二量体を形成し(図10(1))、標的遺伝子におけるDNA配列AGGTCAnnnnnAGGTCA(配列番号:6)を認識してDNAに結合する。レチノイン酸非存在下では、このヘテロ二量体が、転写抑制因子N-CoR/SMRTを介してヒストン脱アセチル化酵素(HADC)と複合体を形成し(同(2))、標的遺伝子の転写を抑制している。
【0005】
図10(B)に示すとおり、レチノイン酸存在下では、レチノイン酸がRARαとRXRに結合すると(同(3))、N-CoR/SMRT/HDAC複合体がRARαから離れ(同(4))、代わりにヒストンアセチル化酵素活性を有するp300/CBPがリクルートされる。ヒストンがアセチル化されると、ヒストンとDNAの親和力が弱まり、ヌクレオソーム構造が緩和される。その結果、標的遺伝子の下流の転写が活性化される(同(5))る。標的遺伝子としては、例えば、PKA-R1α、PKC-δ、MAP4K2、TRIAD1、CD11b遺伝子等が挙げられ、これらの遺伝子が発現すると白血球の分化が促進される。
【0006】
一方、図10Cに示すとおり、急性前骨髄球性白血病においてPML/RARα融合タンパク質が発現する場合、レチノイン酸存在下でもヒストン脱アセチル化酵素が解離しないので、ヒストンアセチル化酵素活性を有するp300/CBPをリクルートできず、下流の転写は抑制されたままとなる。その結果、必要なタンパク質が産生されず、白血球が分化能を失う。
【0007】
急性前骨髄球性白血病に対しては、全トランス型レチノイン酸(ATRA)投与による治療が行われている。レチノイン酸投与による治療では、高濃度のレチノイン酸を投与して、レチノイン酸受容体の機能を向上させる。しかしながら、レチノイン酸受容体の機能障害が顕著な患者には効果がなく、また、長期間投与すると耐性や副作用が生じることもある(例えば、非特許文献1~4を参照。)。
【0008】
また、白血病の治療法としてはヒ素を投与することもあるが、ヒ素も耐性や副作用を生じることがある。
【先行技術文献】
【0009】

【非特許文献1】Duprez E. et al., Leukemia. 1992; 6(12): 1281-1287
【非特許文献2】Cornic M. et al., Leuk Lymphoma. 1995; 18(3-4): 249-257
【非特許文献3】Early E. et al., J Investig Med. 1995; 43(4): 337-344
【非特許文献4】Gallagher RE., Leukemia. 2002; 16(10): 1940-1958
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明は、白血球の分化を促進し、長期間の投与が可能で、レチノイン酸受容体の機能障害が顕著な患者にも効果が得られる白血病の予防又は治療薬を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するために研究を重ねた結果、レチノイン酸受容体に細胞膜透過性モチーフ及び/又は核内移行シグナルを融合した融合タンパク質は、細胞膜を透過し、核内に移行すること;核内でRXRとヘテロ二量体を形成し、標的遺伝子に結合し、レチノイン酸存在下で当該標的遺伝子の転写を活性化すること;及び、当該融合タンパク質を白血病モデル細胞に投与したところ、当該細胞が顆粒球に分化して増殖が抑制され、好中球としての機能を発揮すること等を見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
即ち、本発明は、
〔1〕レチノイン酸受容体αと、核内移行シグナル及び/又は細胞膜透過性モチーフとを含む融合タンパク質;
〔2〕前記細胞膜透過性モチーフが、前記レチノイン酸受容体αのN末端側又はC末端側に連結している、上記〔1〕に記載の融合タンパク質;
〔3〕レチノイン酸受容体αと、核内移行シグナルと、細胞膜透過性モチーフとを含む、上記〔1〕に記載の融合タンパク質;
〔4〕前記核内移行シグナルが、前記レチノイン酸受容体αのN末端側に連結し、前記細胞膜透過性モチーフが、前記レチノイン酸受容体αのC末端側又は前記核内移行シグナルのN末端側に連結している、上記〔3〕に記載の融合タンパク質;
〔5〕N末端に精製用タグがさらに連結している、上記〔1〕から〔4〕のいずれか1項に記載の融合タンパク質;
〔6〕N末端から、精製用タグ、核内移行シグナル、レチノイン酸受容体α、細胞膜透過性モチーフの順で連結している、上記〔5〕に記載の融合タンパク質;
〔7〕N末端から、精製用タグ、細胞膜透過性モチーフ、核内移行シグナル、レチノイン酸受容体αの順で連結している、上記〔5〕に記載の融合タンパク質;
〔8〕前記核内移行シグナルが、配列番号:9~12に記載のアミノ酸配列からなるペプチドより選択される、上記〔1〕から〔7〕のいずれか1項に記載の融合タンパク質;
〔9〕前記細胞膜透過性モチーフが、配列番号:13~17に記載のアミノ酸配列からなるペプチドより選択される、上記〔1〕から〔7〕のいずれか1項に記載の融合タンパク質;
〔10〕前記精製用タグが、ポリヒスチジンタグ又はFLAGペプチドである、上記〔5〕から〔7〕のいずれか1項に記載の融合タンパク質;
〔11〕配列番号1~5のいずれか1項に記載のアミノ酸配列からなる、融合タンパク質;
〔12〕上記〔1〕から〔11〕のいずれか1項に記載の融合タンパク質をコードする核酸;
〔13〕上記〔12〕に記載の核酸を含む発現ベクター;
〔14〕上記〔13〕に記載の発現ベクターを含む形質転換体;
〔15〕上記〔1〕から〔11〕のいずれか1項に記載の融合タンパク質を含む医薬組成物:
〔16〕レチノイン酸受容体αを含む、急性前骨髄球性白血病の治療または予防薬;及び、
〔17〕白血病細胞を分化させる方法であって、該白血病細胞にレチノイン酸受容体αを投与することを含む、方法、に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る融合タンパク質は、細胞膜透過性を有し、核内に移行することができるので、急性前骨髄球性白血病の患者に投与すると、分化能を失った白血病細胞内で正常に機能を発揮する。その結果、白血病細胞内で細胞の分化に必要なタンパク質の転写を活性化することを通じて、白血病細胞を顆粒球に分化させ、異常な増殖を抑制することができる。従って、本発明に係る融合タンパク質は、急性前骨髄球性白血病の予防又は治療薬として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の融合タンパク質5種(HMNR、HNRM、HNR、HRM、HMR)及び、比較例(HR)の構成を示す模式図である。
【図2】本発明の融合タンパク質及び比較例の融合タンパク質の発現レベル及び封入体の形成度、精製度を測定する電気泳動の結果を示す写真である。
【図3】ゲルシフトアッセイの結果を示す写真である。
【図4】FITC標識した融合タンパク質の核内への移行を示す写真である。
【図5】本発明の融合タンパク質及びレチノイン酸を投与したHEK293細胞を用いたルシフェラーゼレポーターアッセイの結果を示すグラフである。
【図6】白血病細胞NB4及びNB4-R2に、本発明の融合タンパク質及びレチノイン酸を投与したときの増殖抑制効果を示すグラフである。
【図7】白血病細胞NB4及びNB4-R2に、本発明の融合タンパク質及びレチノイン酸を投与した結果顆粒球に分化したことを示すギムザ染色の結果である。
【図8】白血病細胞NB4及びNB4-R2に、本発明の融合タンパク質及びレチノイン酸を投与した結果顆粒球に分化したことを示すNBTアッセイの結果である。
【図9】白血病細胞NB4及びNB4-R2に、本発明の融合タンパク質及びレチノイン酸を投与した結果、好中球に分化したことを示すマーカーであるCD11bの発現が上昇していることを示すフローサイトメトリーの結果である。
【図10】レチノイン酸受容体αの機能を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る融合タンパク質は、レチノイン酸受容体α(RARα)と、核内移行シグナル及び/又は細胞膜透過性モチーフとを含む。

【0016】
本発明に用いられるRARαは、ヒト、サル、マウス、イヌ、ウシ、ウマなどの任意の哺乳動物に由来するものを含むが、ヒト又はマウス由来のものが好ましく、特に、本発明の融合タンパク質をヒトに投与する場合には、ヒトに由来するものが好ましい。ヒトのRARαのアミノ酸配列は配列番号:7に、マウスのRARαのアミノ酸配列は配列番号:8に記載されたとおりである。

【0017】
また、本発明に用いられるRARαは、以下に述べる本発明の効果を奏する限り、上記RARαのアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたペプチド;これらのアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が保存的に置換されたペプチド;及び、RARα改変体も含む。

【0018】
本明細書において、「アミノ酸」とは、その最も広い意味で用いられ、天然のアミノ酸のみならずアミノ酸変異体及び誘導体といったような非天然アミノ酸を含む。本明細書におけるアミノ酸には、例えば、天然タンパク原性L-アミノ酸;D-アミノ酸;アミノ酸変異体及び誘導体などの化学修飾されたアミノ酸;ノルロイシン、β-アラニン、オルニチンなどの天然非タンパク原性アミノ酸;及びアミノ酸の特徴である当業界で公知の特性を有する化学的に合成された化合物等が含まれる。非天然アミノ酸の例としては、α-メチルアミノ酸(α-メチルアラニンなど)、D-アミノ酸、ヒスチジン様アミノ酸(2-アミノ-ヒスチジン、β-ヒドロキシ-ヒスチジン、ホモヒスチジン、α-フルオロメチル-ヒスチジン及びα-メチル-ヒスチジンなど)、側鎖に余分のメチレンを有するアミノ酸(「ホモ」アミノ酸)及び側鎖中のカルボン酸官能基アミノ酸がスルホン酸基で置換されるアミノ酸(システイン酸など)が挙げられる。好ましい態様において、本発明の化合物に含まれるアミノ酸は、天然アミノ酸のみからなる。

【0019】
本明細書において、「1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加された」という場合、置換等されるアミノ酸の個数は、結果として得られるタンパク質がRARα活性を保持する限り特に限定されないが、1~9個、好ましくは1~5個、より好ましくは1~3個程度であるか、あるいは全体の長さの20%以内、好ましくは10%以内である。置換又は付加されるアミノ酸は、天然のアミノ酸、非天然のアミノ酸又はアミノ酸アナログであり得、好ましくは天然のアミノ酸である。

【0020】
本明細書において、「アミノ酸の1若しくは数個のアミノ酸が保存的に置換された」とは、アミノ酸置換において、元のアミノ酸と置換されるアミノ酸との親水性指数及び/又は疎水性指数が類似している置換であって、そのような置換の前後で、RARα活性の明らかな低下又は消失を生じない置換をいう。

【0021】
本明細書において、「RARα改変体」とは、RARαタンパク質を天然又は人工的に改変した化合物であり、そのような改変としては、例えば、RARαの1又は複数のアミノ酸残基の、アルキル化、アシル化(例えばアセチル化)、アミド化、カルボキシル化、エステル形成、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、リン酸化、水酸化、標識成分の結合等が挙げられる。

【0022】
本発明の核内移行シグナル(nuclear localization signal;以下「NLS」と表記することもある。)は、本発明の融合タンパク質を細胞の核内に移送できるものである限り特に限定されず、種々の核内移行シグナルを用いることができる。特にリシンやアルギニン残基が集まったペプチドであることが好ましく、例えば、配列番号:9に記載のSV40T抗原(PKKKRKV)、配列番号:10に記載のc-myc(PAAKRVKLD)、配列番号:11に記載のp53(PQPKKKP)、配列番号:12に記載のNF-κBp50(QRKRQK)などが挙げられるがこれらに限定されない。

【0023】
本発明の核内移行シグナルは、本発明の融合タンパク質内のどこに位置してもよく、レチノイン酸受容体αのN末端側に連結していても、C末端側に連結していてもよい。また、核内移行シグナルは、融合タンパク質に2以上含まれていてもよい。

【0024】
本発明に用いられる細胞膜透過性モチーフ(Membrane translocating motif;以下「MTM」と表記することもある。)は、本発明の融合タンパク質に細胞膜透過性を与える限り特に限定されず、種々の細胞膜透過性モチーフを用いることができる。例えば、配列番号:13に記載のMTM(Hawiger et al., 2005 Nature Medicine vol.11 No.(8):892-8)、配列番号:14に記載の11R、配列番号:15に記載の9R、配列番号:16に記載のTat、配列番号:17に記載のTat2が挙げられるがこれに限定されない。

【0025】
本発明のMTMは、RARαのN末端側に連結してもC末端側に連結してもよい。また、RARαに直接連結していてもよく、NLSを介してRARαに連結していてもよい。本発明の融合タンパク質には、MTMが2以上含まれていてもよい。

【0026】
融合タンパク質におけるRARα、NLS及びMTMの並び方は、細胞内でそれぞれが機能を発揮する限り特に限定されないが、たとえば、NLS-RARα-MTM、MTM-NLS-RARα、NLS-RARα、MTM-RARα、RARα-MTM等の順序で連結することができる。各ペプチドは、直接連結していてもよく、間に1~30、好ましくは5~25アミノ酸のペプチドを介して連結していてもよい。

【0027】
また、本発明の融合タンパク質は、N末端に精製用タグがさらに連結していることも好ましい。精製用タグは、本発明の融合タンパク質を発現系で発現させた後、その精製用タグへのアフィニティーを利用して精製できる限り特に限定されないが、例えば、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)、6個のヒスチジンを連結したポリヒスチジン(His6)、チオレドキシン、FLAGペプチド等を挙げることができ、生体内に投与する観点からは、ポリヒスチジンタグやFLAGペプチドが好ましい。

【0028】
RARα、MTM、NLS及び精製用タグを含む本発明に係る融合タンパク質として好ましい例としては、以下の(1)~(5)が挙げられる。なおmRARαはマウスRARαを示す。
(1)HMNR(配列番号:1)
N末端からHis6-MTM-NLS-mRARαの順に連結されている。
(2)HNRM(配列番号:2)
N末端からHis6-NLS-mRARα-MTMの順に連結されている。
(3)HNR(配列番号:3)
N末端からHis6-NLS-mRARαの順に連結されている。
(4)HMR(配列番号:4)
N末端からHis6-MTM-mRARαの順に連結されている。
(5)HRM(配列番号:5)
N末端からHis6-mRARα-MTMの順に連結されている。

【0029】
いずれも各ペプチドの間には、ベクターに由来するペプチドが介在している。なお、ヒトに投与する場合、上記(1)~(5)においてmRARαをヒトRARαに代えたものがより好ましい。

【0030】
本発明に係る「本発明に係る融合タンパク質をコードする核酸」は、本発明に係る融合タンパク質をコードする塩基配列を含むものであればいかなるものであってもよく、好ましくはDNAである。かかるDNAは、例えば、ゲノムDNA、ゲノムDNAライブラリー、所定の細胞・組織に由来するcDNA及びcDNAライブラリーから得ることができ、合成したDNAであってもよい。所定の細胞・組織から全RNAまたはmRNA画分を調製し、RT-PCR法によって増幅して得ることもできる。

【0031】
例えば、MTM、NLS、などの短いペプチドをコードする核酸は、アミノ酸配列に基づいて塩基配列を決定し、当該塩基配列に基づいて合成したDNAを用いることができる。また、RARαをコードする核酸は、例えば、細胞から抽出したRNAを用い、RT-PCR法によって得たcDNAを用いることができる。それぞれの核酸は連結してから発現ベクターに挿入することもできるし、それぞれの核酸を発現ベクターのクローニングサイトに挿入することによって融合タンパク質が発現されるように連結してもよく、いずれの場合も本発明の「融合タンパク質をコードする核酸」に含まれる。「融合タンパク質が発現されるように」連結するとは、RARα、MTM、NLS、精製用タグをコードする核酸フレームを合わせて(in frameで)連結することを意味する。

【0032】
本発明に係る「発現ベクター」は、上述の本発明に係る融合タンパク質をコードする核酸が挿入されているベクターである。発現ベクターは、宿主中で自己複製能を有し、宿主細胞と容易に区別しうる表現系の遺伝子を有し、制限酵素切断部位を少なくとも一つ有し、宿主細胞外では生存できないという条件を満たす限り、どのようなものを用いてもよく、宿主との組み合わせで選択することができる。例えば、宿主を大腸菌とする場合には、pBR系ベクター、pUT系ベクター、pET系ベクター、pQE系ベクター等のプラスミドが好ましく用いられ、その他、酵母由来プラスミド、ファージベクター、ウイルスベクター、コスミドベクター、酵母人工染色体(YAC)などを用いることもできる。

【0033】
発現ベクターには、宿主で機能するプロモーターが組み込まれ、プロモーターの制御下に本発明の核酸が挿入される。発現ベクターには、例えば、複製起点、ターミネーター領域、形質転換体を選択するための選択マーカー遺伝子等も挿入される。選択マーカー遺伝子としては、例えば、テトラサイクリン、アンピシリン、カナマイシン等の抗生物質耐性遺伝子が用いられる。

【0034】
本発明に係る「形質転換体」は、上述した本発明の発現ベクターを用いて形質転換した宿主をいう。宿主としては、例えば、大腸菌、バチルス属菌、その他細菌類等を用いることができるが、本発明の融合タンパク質の大量生産にも適する大腸菌が好ましい。

【0035】
次に、本発明に係る融合タンパク質の製造方法について説明する。

【0036】
本発明の融合タンパク質は、上述した本発明の核酸を含む発現ベクターを用いて、宿主を形質転換し、当該宿主を培養して融合タンパク質を発現させ、当該融合タンパク質を精製して得ることができる。

【0037】
本発明の発現ベクターで宿主を形質転換する方法には、公知の方法を用いることができ、例えば、宿主が大腸菌の場合、塩化マンガンや塩化カルシウムで処理してコンピテント細胞を作製し、懸濁液に発現ベクターを混ぜてヒートショックにより取り込ませる方法、エレクトロポレーション法、ファージベクターを用いる場合には宿主にファージを感染させる方法等を挙げることができる。

【0038】
こうして得られた形質転換体を適当な培地で培養することにより、目的とする融合タンパク質を発現させることができる。培地の組成、培養の温度、時間、誘導物質の添加等の条件は、形質転換体が生育し、融合タンパク質が効率よく産生されるよう、公知の方法に従って当業者が決定することができる。また、例えば、選択マーカーとして抗生物質抵抗性遺伝子を発現ベクターに組み込んだ場合、培地に抗生物質を加えることにより、形質転換体を選択することができる。

【0039】
産生された融合タンパク質は、公知の方法に従って精製することができる。例えば、宿主を緩衝液に懸濁して超音波破砕等の方法で破壊する。続いて、融合タンパク質に精製用タグが融合されている場合は、まず当該精製用タグに特異的な親和性を有するアフィニティーカラム等を通し、カラムに吸着された融合タンパク質を緩衝液で溶出することによって精製することができる。得られた融合タンパク質溶液を遠心処理等によって濃縮し、再度アフィニティーカラムを通す工程を複数回繰り返すことによって、さらに純度を高めることが可能である。

【0040】
特に本発明の融合タンパク質を医薬として用いる場合には、少なくとも90%、好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上に精製されたものを使用するのが好ましいところ、本発明の融合タンパク質が精製用タグを含む場合、このような純度を容易に達成することができる。

【0041】
精製用タグにポリヒスチジン(His6)を用いる場合、発現タンパク質を封入体として発現させ、アフィニティーカラムに通す前に、尿素や塩酸グアニジンなどのタンパク質変性剤や、界面活性剤で処理することも好ましい。変性して精製した融合タンパク質は、リフォールディングすることによって、適切に機能を発揮させることができる。リフォールディングは、例えば、過剰量のアルギニンを含む緩衝液で希釈することや同緩衝液での透析によって行うことができる。

【0042】
本発明の医薬組成物は、本発明の融合タンパク質を含む。

【0043】
本発明の融合タンパク質は、細胞膜透過性及び核内移行性を有するので、本発明の医薬組成物を、分化能を失った白血病細胞に投与すると、分化能が回復され、増殖が抑制される。従って、急性前骨髄性白血病の予防又は治療薬として、特に、レチノイン酸レセプターの機能障害が顕著な患者において有用である。本発明の融合タンパク質は、もともと生体内に存在するタンパク質なので、生体内に投与しても副作用や抗原性を示す可能性も低いことが予想される。

【0044】
本発明の医薬組成物は、通常使用される充填剤、増量剤、結合剤、付湿剤、崩壊剤、表面活性剤、滑沢剤等の希釈剤あるいは賦形剤を用いて、通常の医薬組成物の形態に製剤化される。このような医薬組成物としては、例えば、錠剤、丸剤、散剤、液剤、懸濁剤、乳剤、顆粒剤、カプセル剤、坐剤、注射剤等が挙げられる。

【0045】
医薬組成物中に含有される本発明の融合タンパク質の量は、特に限定されず広い範囲内から適宜選択することができるが、通常、医薬組成物中に本発明の融合タンパク質を1~70重量%含有させるのが好ましい。本発明の融合タンパク質を有効成分として含有する医薬組成物は、さらに他の有効成分を含有することもできるし、他の有効成分を含有する医薬組成物と組み合わせて用いることもできる。

【0046】
本発明に係る医薬組成物の投与方法としては特に制限はなく、各種製剤形態、患者の年齢、性別、疾患の状態、その他の条件に応じた方法で投与される。錠剤、丸剤、液剤、懸濁剤、乳剤、顆粒剤及びカプセル剤の場合の投与方法としては、例えば、経口投与が挙げられる。また、注射剤の場合には、単独で、又はブドウ糖、アミノ酸等の通常の補液と混合して、静脈内、筋肉内、皮内、皮下又は腹腔内に投与することができる。坐剤の場合には、直腸内に投与される。

【0047】
上記医薬組成物の投与量は、用法、患者の年齢、性別、疾患の程度、その他の条件に応じて適宜選択すればよく、経口投与する場合、通常、成人(60kg)に対し、1回あたり、本発明の融合タンパク質を約0.1mg~100mg、好ましくは約1.0~50mg、より好ましくは約1.0~20mg投与する。また、注射剤として投与する場合、成人(60kg)に対し、1回当たり、本発明の融合タンパク質を約0.1mg~30mg、好ましくは約0.1~20mg、より好ましくは約0.1~10mg投与する。

【0048】
上記医薬組成物の投与回数は、用法、患者の年齢、性別、疾患の程度、その他の条件に応じて適宜選択すればよく、例えば、2週間に1回、1ヶ月に1回、2ヶ月に1回等の頻度で投与することができる。

【0049】
本発明は、従来行われてきたレチノイン酸の投与ではなく、レチノイン酸受容体αを投与することによって白血病細胞に分化能を与えるという新たな知見に基づくものであり、レチノイン酸受容体αの新規な用途を提供するものである。従って、本発明は、レチノイン酸受容体αを含む、急性前骨髄球性白血病の治療または予防薬も包含する。レチノイン酸受容体αは、白血病細胞内で機能してその分化を促進する限り、どのような形態で投与してもよい。

【0050】
また、本発明は、白血病細胞を分化させる方法であって、白血病細胞にレチノイン酸受容体αを投与することを含む方法も提供する。本方法においても、レチノイン酸受容体αは、白血病細胞内で機能してその分化を促進する限り、どのような形態で投与してもよい。また、本方法は、in vitroで白血病細胞を分化させる方法も、in vivoで白血病細胞を分化させる方法も含む。
【実施例】
【0051】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明は何らこれらに限定されるものではない。
1. mouseRARα発現ベクターの構築
(概要)
本発明の発現ベクターとしてpET28a-HMNR、pET28a-HNRM、pET28a-HNR、pET28a-HMR及びpET28a-HRMを、比較例の融合タンパク質を発現させる発現ベクターとしてpET28a-HRを作製した。各発現ベクターの構成を表1に示す。
【実施例】
【0052】
【表1】
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【実施例】
【0053】
1.1 MTMタグのクローニング
pET28aプラスミド(Novagen社)に、MTM(Membran Translocating Motif)配列(Hawigerら、2005 Nature Medicine vol.11 No.(8):892-8.報告の配列;配列番号:13)をコードするオリゴDNAを組み込んだ。
【実施例】
【0054】
RARαのN末端側にMTMタグを融合するための発現ベクター(pET28a-HMR及びpET28a-HMNR)の作製用に、NdeI-BamHIサイトに組み込めるようにMTMをコードする以下のオリゴDNAを合成し(SIGMA社)、アニーリング後ライゲーションした。得られたプラスミドを以下「pET28a(H/MTM/MCS)」と呼ぶ。
5’-TATG GCA GCC GTT CTT CTC CCT GTT CTT CTT GCC GCA CCC G-3’(配列番号:18)
5’-GATCC GGG TGC GGC AAG AAG AAC AGG GAG AAG AAC GGC TGC CA-3’(配列番号:19)
【実施例】
【0055】
【表2】
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【実施例】
【0056】
また、RARαのC末端側にMTMタグを融合するための発現ベクター(pET28a-HRM及びpET28a-HNRM)の作製用に、NotI-XhoIサイトに組み込めるようにMTMをコードする以下のオリゴDNAを合成し(SIGMA社)、アニーリング後ライゲーションした。得られたプラスミドを以下「pET28a(H/MCS/MTM)」と呼ぶ。
5’-GGC CGC GCA GCC GTT CTT CTC CCT GTT CTT CTT GCC GCA CCC TAA C-3’(配列番号:20)
5’- TC GAG TTA GGG TGC GGC AAG AAG AAC AGG GAG AAG AAC GGC TGC GC-3’(配列番号:21)
【実施例】
【0057】
【表3】
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【実施例】
【0058】
なお、MCSはマルチクローニングサイトを意味し、この領域にはpET28aプラスミドの配列がそのまま残っている。
1.2 mRARαのクローニング
(概要)
RAW細胞(マウス)から抽出したRNAより、RT-PCRでmRARαのcDNAを得た。このcDNAを、pET28a(H/MTM/MCS)、pET28a(H/MCS/MTM)、及びMTMを組み込んでいないpET28aプラスミド(以下、「pET28a(H/MCS)」と呼ぶ)に組み込んだ。以下に各工程を詳細に説明する。
1.2.1 mRARαクローニング用primerの設計
mRARαのクローニングに用いたprimerは、NCBIのデータベース(BC010216)より得た全長塩基配列をもとに設計した。5’primerは、Tm値が74℃になるように、mRARαの5’末端側の24塩基の配列を用いた。5’末端には制限酵素BamHIの配列(GGATCC)を付け、その前に余剰な3塩基(ATA)を付加した。3’primerは、Tm値76℃になるように、mRARαの3’末端側の23塩基の配列を用いた。3’末端には制限酵素HindIIIの配列(AAGCTT)を付け、その前に余剰な3塩基(ATA)を付加した。
【実施例】
【0059】
pET28a(H/MCS/MTM)に組み込むfragmentは、3’末端側のMTMにつなげるためにストップコドンをはずし、フレームを合わせる必要がある。そのため3’nonstop-primerとして、ストップコドンを除いて3’末端から23塩基を用い、一塩基(C)を付加したプライマーを作製した。primerの合成はSIGMA社に依頼した。
5’primer : ATAGGATCCATGGCCAGCAATAGCAGTTCCTGC (配列番号:22)
3’primer : ATAAAGCTTTCATGGGGATTGGGTGGCTGGGC (配列番号:23)
3’nonstop-primer : ATAAAGCTTCTGGGGATTGGGTGGCTGGGCTG (配列番号:24)
1.2.2 mRARαのクローニング
mouse total RNAを鋳型にして、RT-PCRでmRARαのcDNAを得た。primerは3’primerを用い、以下の反応系とPCRプログラムで反応を行った。RT-PCRはAccess RT-PCRsystem (Promega)を用いて行った。条件を下表に示す。
【実施例】
【0060】
【表4】
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【実施例】
【0061】
【表5】
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【実施例】
【0062】
1.2.3 mRARαfragmentのPCR増幅
RT産物を鋳型にして、mRARαfragmentのPCR増幅を行った。反応はPyrobest DNA polymerase (TaKaRa)を用いた。2回目のPCR反応では、pET28a(H/MTM/MCS)、pET28a(H/MCS)、pET28a(H/MCS/MTM)のそれぞれに挿入するために、3’stop-primerと3’nonstop-primerを用いた。2回目のPCR増幅後にアガロースゲル電気泳動を行い、fragmentの増幅を確認した所、非特異的なスメアバンドが多く見られたため、1400bp付近のバンドを切り出して精製し、再びPCR反応を行った。条件を下表に示す。
【実施例】
【0063】
【表6】
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【実施例】
【0064】
【表7】
JP0005626717B2_000008t.gif
【実施例】
【0065】
【表8】
JP0005626717B2_000009t.gif
【実施例】
【0066】
【表9】
JP0005626717B2_000010t.gif
【実施例】
【0067】
【表10】
JP0005626717B2_000011t.gif
【実施例】
【0068】
1.2.4 mRARα、各種pET28aのDigestと断片の精製
増幅させたPCR産物は、制限酵素BamHIとHindIIIでdouble digestを行った。同時にpET28a(H/MTM/MCS、pET28a(H/MCS/MTM)、及びpET28a(H/MCS))も同じ制限酵素で消化した。制限酵素処理は以下の反応系で行い、37℃オーバーナイトで反応させた。制限酵素はFermentas社の製品を使用した。
【実施例】
【0069】
【表11】
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【実施例】
【0070】
【表12】
JP0005626717B2_000013t.gif
【実施例】
【0071】
1.2.5 アガロースゲルからのDNA抽出及び精製
制限酵素処理したサンプルを1.0%アガロース/1×TAEで電気泳動し、EtBrで染色し、トランスイルミネーター上でバンドの位置をカッターで切り出した。これをサンプルチューブに移し、QIAEX II gel extraction kit (Qiagen)を用いてcDNAの精製を行った。
【実施例】
【0072】
700μlのQX1 BufferとQIAEXII(レジン)10μlを添加し、50℃ヒートブロックで10分間インキュベートし、ゲルを溶かしだした。2000rpm、R.T.1分で遠心分離を行って上清を捨て、QX1 300μlを添加した。50℃で10分間インキュベートし、2000rpm、R.T.1分で遠心分離を行って上清を捨てた。ここにPE Buffer 500μlを添加し、2000rpm、R.T.1分で遠心分離を行って上清を捨てた。再びPE Buffer 300μlを添加し、2000rpm、R.T.1分で遠心分離を行って上清を捨て、5分間風乾させた。次にH2Oを50μl添加し、50℃で5分間インキュベートし、溶出させた。2000rpm、R.T.1分で遠心分離し、上清を回収した。再びH2O 50μlを添加して溶出し、全量100μlとした。このサンプルのエタノール沈殿を行った。サンプルに10μlの3M酢酸ナトリウムと100%エタノール250μlを添加し、13000rpm、4℃、15分で遠心分離した。上清を除去し、70%エタノール 80μlを添加し、13000rpm、4℃、15分で遠心分離した。上清を除去し、風乾させ、38.75μlのH2Oに溶かした。PCR増幅3回目は、2回目と同じ反応系とPCRプログラムで行った。3回目PCR産物5μlを1.0%アガロース/1×TAEで電気泳動し、cDNAの増幅を確認した後に、上述のようにエタノール沈殿を行った。沈殿を風乾させた後、15μlのH2Oに溶かした。
1.2.6 mRARαと各種pET28aとのligation
制限酵素処理したmRARαとpET28a(pET28a(H/MTM/MCS)、pET28a(H/MCS/MTM)、及びpET28a(H/MCS))の断片をligation反応で結合させた。反応にはLigation high (TOYOBO)を使用した。
stop-mRARαとpET28a(H/MTM/MCS)を結合させてpET28a-HMRを、
nonstop-mRARαとpET28a(H/MCS/MTM)を結合させてpET28a-HRMを、
stop-mRARαとpET28a(H/MCS)を結合させてpET28a-HRを、それぞれ作製した。
【実施例】
【0073】
それぞれの条件を下表に示す。
【実施例】
【0074】
【表13】
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【実施例】
【0075】
【表14】
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【実施例】
【0076】
【表15】
JP0005626717B2_000016t.gif
【実施例】
【0077】
1.2.7 Ligation反応液のトランスフォーメーション
ligationしたサンプルをコンピテントセルDH5α(TOYOBO)にトランスフォームした。DH5αを-80℃からゆっくりと解凍し、DH5α 70μlとligation反応液1μlを混合した。氷上に20分放置し、42℃30秒のヒートショックを与え、氷上で2分放置した。SOC培地500μlを添加し、37℃ 1時間 振盪培養器でインキュベートした。LB[Kanamycin(Kan)(30mg/l)]寒天培地に150μlを塗布し、37℃オーバーナイトで培養した。
1.2.8 大腸菌コロニーのスクリーニング
pET28aにmRARαのcDNAが挿入されているかを確かめるため、コロニーPCRと制限酵素による確認を行った。
i) コロニーPCR
TaKaRa Ex Taq (TaKaRa)を用いてコロニーPCRを行った。5’primerはpET28a T7promoter領域のprimerを使用し、3’primerには、pET28a-HMR及びpET28a-HRではmRARα reverse-stop、pET28a-HRMではmRARα reverse-nonstopを使用した。以下のように反応系を調整し、プレート上のコロニーの一部を植菌した。下表に示すPCRプログラムでPCR増幅させ、1.0%アガロース/1xTAEで電気泳動し、増幅を確認した。
5’primer T7 promoter : CGCGAAATTAATACGACTCACTATA(配列番号:25)
3’primer mRARα reverse-stop : ATAAAGCTTTCATGGGGATTGGGTGGCTGGGC(配列番号:26)
3’primer mRARα reverse-nonstop : ATAAAGCTTCTGGGGATTGGGTGGCTGGGCTG(配列番号:27)
【実施例】
【0078】
【表16】
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【実施例】
【0079】
【表17】
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【実施例】
【0080】
ii)制限酵素によるmRARα配列挿入の確認
プラスミドの増幅をおこなうために、ミニプレップ(アルカリSDS法)を行った。QIAGEN社のMaxi kitで以下のように行った。コロニーの菌をTB[Kanamycin(Kan)(30mg/l)]6mlに植菌し、37℃オーバーナイトで培養した。6000rpm 4℃ 2分で遠心分離し、菌体を回収した。P1 Solution 150μlを添加してvortexし、菌体を再懸濁した。次にP2 Solution 150μlを加えてゆっくり撹拌し、P3 Solutionを加えて中和させた。これに450μlのフェノール・クロロホルムを添加し、13000rpm、20℃で5分遠心分離した。上清を別の新しいチューブに移し、100%エタノール 1mlを添加して-30℃に30分置いた。13000rpm、4℃で15分遠心分離し、上清を除去した後、70%エタノール 300μlを添加した。13000rpm、4℃で1分遠心分離し、上清を除去して風乾させ、RNase(10μg/ml RNase/TE)を加え、37℃で30分インキュベートした。このサンプルをエタノール沈殿し、digestionに用いた。サンプルにTE buffer 350μl、3M酢酸ナトリウム40μl、100%エタノール 1mlを添加し、13000rpm、4℃で15分遠心分離した。上清を除去した後、70%エタノール 300μlを添加した。13000rpm、4℃で5分遠心分離し、上清を除去して風乾させ、20μlのH2Oに溶かした。このサンプルを制限酵素BamHI、HindIIIでdouble digestし、1.0%アガロース/1×TAEで電気泳動して、cDNAの増幅を確認した。制限酵素はFermentas社の製品を使用した。
【実施例】
【0081】
【表18】
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【実施例】
【0082】
電気泳動で、cDNAの増幅を確認できたサンプルをシークエンスに用いるために、Polyethylene Glycol沈殿を行ってRNA分子を取り除いた。50μlのPEG溶液(13% PEG 8000/1.6M NaCl)を添加し、13000rpm、4℃で15分遠心分離した。上清を除去した後、70%エタノール 600μlを添加した。13000rpm、4℃で5分遠心分離し、上清を除去して風乾させ、10μlのH2Oに溶かした。
1.2.9 発現プラスミドのDNA塩基配列解析
Big Dye Terminator v1.1 Cycle sequencing kitを用いてシークエンス用PCRを行った。Primer はSIGMA社の合成オリゴ(50μM)を希釈し、以下の反応系とPCRプログラムで反応させた。primer T7 promoterとT7 terminatorはPCRのアニーリング温度を60℃で行い、primer mRARαは63℃で行った。
5’primer T7 promoter : CGCGAAATTAATACGACTCACTATA(配列番号:28)
3’primer T7 terminator : GTTATGCTAGTTATTGCTCAGCGG(配列番号:29)
5’primer mRARαforward : ATAGGATCCATGGCCAGCAATAGCAGTTCCTGC(配列番号:30)
3’primer mRARα reverse-stop : ATAAAGCTTTCATGGGGATTGGGTGGCTGGGC(配列番号:31)
3’primer mRARα reverse-nonstop : ATAAAGCTTCTGGGGATTGGGTGGCTGGGCTG(配列番号:32)
【実施例】
【0083】
【表19】
JP0005626717B2_000020t.gif
【実施例】
【0084】
【表20】
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【実施例】
【0085】
【表21】
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【実施例】
【0086】
PCR反応後のサンプルは1.5mlチューブに移し、エタノール沈殿を行った。サンプルに3M酢酸ナトリウム 2μl、100%エタノール 50μlを添加し、暗所室温で15分置いた。13000rpm、4℃で15分遠心分離し、上清を除去した後、70%エタノール 50μlを添加した。13000rpm、4℃で5分遠心分離し、上清を除去して暗所で風乾させた。Hi-Dyホルムアミド20μlを加えてボルテックスをかけ、95℃で2分煮沸し、ただちに氷水につけた。これをABI PRISM 310 Genetic analyzer専用のサンプルチューブに移した。シークエンサーはABI PRISM 310 Genetic analyzer (Applied biosystems)を用いて、ロングキャピラリーで140分解析した。解析したシークエンスデータはDNASISを用いてNCBIデータベースの配列とマッチングさせ、mRARαの配列が正しいことを確認した。また、制限酵素の配列も正しくライゲーションされたことも確認した。
1.3 NLS(核移行シグナル)の融合
核移行シグナルのアミノ酸配列(PKKKRKV;配列番号:9)は下記合成オリゴDNAにより(SIGMA社)、pET28a-HMR、pET28a-HRM、pET28a-HRのいずれにも BamHI-EcoRIサイトで挿入した。
5’-GATCC CCA AAG AAG AAG CGT AAG GGT G-3’(配列番号:33)
5’-AATTC AAC CTT ACG CTT CTT CTT TGG G-3’(配列番号:34)
pET28a-HNR、pET28a-HMNR作製のために、一度、pET28a-HMRのBamHI、HindIIIサイトでmRARα cDNAを切り出し、pUC19(TAKARA)にligationした。さらに、pUC19-mRARαのEcoRI、HindIIIサイトでmRARα cDNAを切り出し、pET28a-NLS-MCS、pET28a-MTM-NLS-MCSの同じサイトに挿入した。
【実施例】
【0087】
pET28a-HNRM作製のために、pET28a-HRMのBamHI、HindIIIサイトでmRARαcDNAを切り出し、pUC19(TAKARA)にligationした。さらに、pUC19-mRARαのEcoRI、HindIIIサイトでmRARαを切り出し、pET28a-NLS-MCS-MTMの同じサイトに挿入した。
2.発現
作製した6種類の発現ベクター(pET28a-HMR、pET28a-HRM、pET28a-HR、pET28a-HMNR、pET28a-HNRM、及びpET28a-HNR)をE.coli(BL21) DE3(Novagen)にトランスフォームした。LB[Kanamycin(Kan)(30mg/ml)]液体培地で37℃にてO.D.600値0.4まで培養して、0.1mM IPTGでmRARαタンパク質の発現誘導を行った。3時間37℃で振盪培養した後に菌体を回収した。
【実施例】
【0088】
発現させた6種類の融合タンパク質の模式図を図1に示す。MTMもNLSも含まないHRは比較例とする。
3.精製
菌体をTris-HCl Buffer (20mM Tris HCl[pH7.5], 150mM NaCl, 0.1mM PMSF, 0.1% triton-X 100)に溶解し、超音波破砕した。不溶性画分から得た封入体タンパク質をグアニジン塩酸含有リン酸Buffer(6M guanidine、20mMSodium Phosphate、500mM NaCl [pH7.8])で変性させ、室温でオーバーナイトインキュベーションして可溶化させた。10000G、4℃で10分遠心分離し、上清をHisタグ特異的なNi NTA Agarose(Invitrogen)に結合させた。8M Urea / リン酸Buffer(8M Urea、20mMSodium Phosphate、500mM NaCl、pH7.8)で4回Washし、このBufferのpHを6.0に下げたものでさらに4回Washし、非特異的に結合するタンパクを取り除いた。700G、4℃で1分遠心分離し、沈殿にイミダゾール含有8M Urea / リン酸Buffer(500mM Imidazole、8M Urea、20mMSodium Phosphate、1M NaCl[pH7.8])1~5ml/1L Cultureを添加し、室温で1時間反応させ、レジンからタンパク質を溶出した。700G、4℃で1分遠心分離し、上清を回収した。この操作を3回行った。溶出サンプルはSDS-PAGEで電気泳動し、CBB染色してバンドの濃さからタンパク質濃度を算出した。電気泳動の結果を図2に示す。これをもとにAmicon ultra centrifugal filter device MWCO 10,000(Millipore)を用いて2mg/mlまで濃縮した。
4.リフォールディング
2mg/mlまで濃縮した溶出サンプルに、アルギニンBuffer(1M L-Arginine、50mM Sodium diphosphate、2mMDTT、0.2mM ZnCl2)を100μg/mlになるように添加し、透析膜(Viskase Companies)の中に入れた。タッパーに、透析膜内の10倍の容量のアルギニンBufferを満たして、ここに透析膜サンプルを浮かべ、15℃でオーバーナイト置いた。その後、Tris-HCl Buffer(20mM Tris-HCl[pH7.5])、150mM NaCl、0.1mM PMSF、2mM DTT、20% Glycerol、 0.2mM ZnCl2)で2時間おきに6回交換した(6回目オーバーナイト)。10000G、4℃で10分遠心分離し、上清を-80℃で凍結保存した。1L Cultureあたりの産生量を表22に示す。
【実施例】
【0089】
タンパク質は、使用時にAmicon ultra centrifugal filter device MWCO 10,000(Millipore)を用いて、10倍量のPBS (137mM NaCl, 2.7mM KCl, 8.1mM Na2HPO4, 1.5mM KH2PO4, 1mM EDTA[pH8.0])で3回置き換え、SDS-PAGEで濃度を測定して細胞に添加した。
【実施例】
【0090】
【表22】
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【実施例】
【0091】
5.ゲルシフトアッセイ
(RXRαタンパク質精製)
mRARαはmRXRαとヘテロ二量体を形成して特異的DNA配列に結合するため、GST-mRXRαΔAB/pGEXベクターからmRXRαのタンパク質発現、精製を行った。E.coli(BL21)にGST-mRXRαΔAB/pGEXベクターをトランスフォームし、LB[Ampicillin (Amp)(50mg /l)]液体培地で培養して、0.1mM IPTGでGST-mRXRαタンパク質の発現誘導を行った。
【実施例】
【0092】
30℃で3時間培養後、菌体を1×PBS(10mM Na2HPO4, 1.8mM KH2PO4 [pH7.3], 140mM NaCl, 2.7mM KCl, 10%グリセロール, 1mM DTT, 0.5mM PMSF)で溶解して超音波破砕し、可溶性画分から得たタンパク質をGlutathione-Sepharose 4B(GEヘルスケア)レジンに結合させ、1xPBSでwashを行った。その後、Thrombin(GEヘルスケア)でGSTとの連結部位の消化を行い、GSTを除去した。
(Cy5標識プローブの調整)
Cy5標識したDR5配列5’-Cy5-GTACAGGGTAGGGTTCACCGAAAGTTCACTC-3’(配列番号:35)とこれの対称の配列5’-TCGAGAGTGAACTTTCGGTGAACCCTACCCT-3’(Cy5標識なし;(配列番号:36))と、Mutation-DR5配列5’-Cy5-GTACAGGGTAGGGAACACCGAAAGAACACTC-3’ (配列番号:37)と対称の配列5’-TCGAGAGTGTTCTTTCGGTGTTCCCTACCCT-3’(配列番号:38)の合成を、SIGMA社に依頼した。
【実施例】
【0093】
50pmolのオリゴ各10μlとTNE buffer(10mM Tris-HCl, 1mM EDTA, 0.1mM NaCl[pH8.0])80μlを混合し、沸騰させた鍋に入れ、火を消して2時間置いてアニーリングさせた。TNE bufferで50fMに希釈して実験に用いた。
(オリゴヌクレオチド-タンパク質複合体の形成)
Binding Buffer(10mM HEPES pH8.0, 18% glycerol, 50mM DTT, 0.05% NP-40, 50mM NaCl, 0.1mM EDTA, 10μg / ml poly dI-dC, 0.1 mg / ml BSA)に、精製したmRARα融合タンパク質、mRXRα各30ngを添加し、室温で15分間反応させた。ここに50fmolのDR5を添加し、室温で15分間反応させた。反応は全量10μlの系で行った。ここに6xLoading dye を2μl添加し、サンプル化した。反応後、4%非変性ポリアクリルアミドゲル(4%アクリルアミド, 0.5×TBE)を用い、100Vで35分間泳動し、Cy5の発光強度をTyphoonで検出した。
【実施例】
【0094】
結果を図3に示す。図示されるとおり、レーン4では分子量が増加し、実施例及び比較例の融合タンパク質(RARα‐MTM)とRXRαとが二量体をなし、かつ、DR5を特異的に認識して結合することが示された。
6.細胞導入
(融合タンパク質のFITC標識)
EZ-label FITC protein labeling kit(PIERCE)を用いて、融合タンパク質のFITC標識を行った。リフォールディングした融合タンパク質を、Amicon ultra centrifugal filter device MWCO 10,000(Millipore)を用いてPBS(137mM NaCl, 2.7mM KCl, 8.1mM Na2HPO4, 1.5mM KH2PO4 [pH8.0])にbufferを置き換えた。FITC 1mgに対して100μlのDMFを添加し、これをmRARαサンプルに添加し、暗所室温で1時間反応させた。その後、Amicon ultraを用いてPBSへの置き換え、13000rpm、4℃で5分遠心分離し、上清をFITCラベリングサンプルとした。
(FITC標識タンパク質の細胞投与)
NB4細胞は、1×105細胞をPBSでwashし、終濃度0.25μMになるようにFITCで標識した融合タンパク質を添加した。HeLa細胞は、カバーガラス上で80%コンフルエントに達するまで培養し、PBSでwashして、終濃度0.1μMになるようにFITCで標識した融合タンパク質を添加した。タンパク質添加後、レチノイン酸10-6Mを添加し、37℃、5%CO2で1時間反応させた。反応後、PBS 200μlでwashし、proteinaseK(Wako)を反応させ、細胞膜表面に付着したタンパク質を取り除いた。PBS 200μlでwashし、4%パラホルムアルデヒド200μlを添加して室温で5分反応させ、細胞の固定を行った。再びPBS200μlでwashし、8μlのVECTASHIELD(VECTOR)を添加し、スライドガラス上で封入を行った。NB4細胞は浮遊系細胞であるため、これらの動作をサンプルチューブ内で、2000rpm R.T. 30秒で遠心分離しながら行い、VECTASHIELDを加えスライドガラス上で封入を行った。共焦点レーザー顕微鏡FV300(OLYMPUS)を用いてFITCの発光をレーザーで検出し、x60での画像を撮影した。
【実施例】
【0095】
結果を図4に示す。図示されるとおり、ほとんどの融合タンパク質が核内に移行していることが確認された。NLSを含まない融合タンパク質(HR、HMR、HRM)は、NLSを含む融合タンパク質(HNR、HMNR、HNRM)よりも全体的に核内への移行が弱く、特に、MTMも含まないHR(比較例)は移行が不十分であった。MTM及びNLSの両方を含む融合タンパク質(HMNR及びHNRM)は、核内への移行が特に良好であった。MTMを含まないHNRも十分に細胞導入可能であり、核移行も確認された。
7. Luciferase assay
(DR5-pGL3レポータープラスミドの作製)
5’-GATCTAGGGTAGGGTTCACCGAAAGTTCACTCCCCGGGTATAA-3’(配列番号:39)とこれに対称の配列5’-AGCTTTATACCCGGGGAGTGAACTTTCGGTGAACCCTACCCTA-3’(配列番号:40)を混合し、T4 Polynucleotide Kinaseを用いて37℃で30分間反応させて5’末端にリン酸基を添加した。その後、1分間煮沸し、温度を下げてアニーリングを行った。これを、XhoIとBglIIの制限酵素サイトで切断したpGL3-enhancer(Promega)とライゲーションし、レポータープラスミドを作製した。
【実施例】
【0096】
HEK293を24wellplateで二晩培養後、RARαの応答配列であるDR-5をホタルルシフェラーゼアッセイ用ベクターpGL3-enhancerにサブクローニングしたプラスミド、およびウミシイタケルシフェラーゼレポーターベクターpGL4.74(Promega)をlipofectamin2000(invitrogen)によりco-transfectionを行った。12時間培養後、Amicon Ultra-15(Millipore)を用いてPBSに置換し、融合タンパク質を終濃度0.5μMになるよう添加した。12時間培養後、レチノイン酸を添加した。24時間培養後、Dual-luciferase reporter Assay System(Promega)およびveritasTM Microplate Luminometer(Promega)を用いてassayを行った。結果を図5に示す。いずれの融合タンパク質も、全トランス型レチノイン酸(ATRA)の添加により、細胞内で標的遺伝子の転写を活性化する機能を発揮できることが確認された。特にHNRとHNRMの転写活性化機能が高かった。以降の実験にはゲルシフトアッセイ活性も高いHNRMを使用した。
8. 細胞増殖
24well プレートに3.0x103個/400μlで白血病細胞であるNB4細胞及びNB4-R2細胞を播種し、レチノイン酸及び融合タンパク質HNRMを添加した。5% CO2、37℃の下、経日的にサンプルを回収した。測定は、CellTiter-Glo(Promega)を培養液と同量添加し、暗所で10分間インキュベート後、Veritas Microplate Luminometer(Promega)で測定した。
【実施例】
【0097】
結果を図6に示す。いずれもレチノイン酸単独では高濃度(10-6M)添加しなければ細胞の増殖を抑制できなかったが、融合タンパク質HNRMを添加した場合、レチノイン酸10-9Mでも十分に増殖を抑制した。特にレチノイン酸受容体に機能障害を有する細胞であるNB4-R2細胞においても、レチノイン酸10-6M条件下で融合タンパク質が機能して細胞増殖を抑制することが確認された。
9. ギムザ染色
形態学的変化の確認のため、ギムザ染色を行った。24well プレートに3.0x103個/400μlでNB4細胞及びNB4-R2細胞を播種し、レチノイン酸及び融合タンパク質HNRM又は比較例としてPBSを添加した。5% CO2、37℃の下5日間培養後、細胞を回収し、スライドグラスに塗抹した。5分間メタノールに浸し、細胞を固定した。風乾後1時間4% ギムザ液に浸し染色した。これを倒立型リサーチ顕微鏡(OLYMPUS)により観察した。
【実施例】
【0098】
結果を図7に示す。全トランス型レチノイン酸(ATRA)及び融合タンパク質HNRMを添加すると、NB4細胞及びNB4-R2細胞のいずれも顆粒球に分化することが確認された(図7A(iv)及びB(iii))。
10. NBT Assay
24well プレートに3.0x103個/400μlでNB4細胞及びNB4-R2細胞を播種し、レチノイン酸及び融合タンパク質HNRM又は比較例としてPBSを添加した。5% CO2 37℃の下3日間培養後、培地と同量のNBT solution (1mg/ml NBTをPBSに溶き、0.1μg/mlのPMA(phorbol myristate acetate)を添加したもの)を添加し、5% CO2、37℃の下1時間培養した。これを倒立型リサーチ顕微鏡(OLYMPUS)により観察し、300個の細胞をカウントし、ホルマザン沈澱を生じて青く染色されている細胞の割合を算出した。
【実施例】
【0099】
結果を図8に示す。融合タンパク質を添加すると、低濃度(10-9M)のレチノイン酸を添加しても、NB4細胞が、NBT還元能を有する顆粒球に分化することが確認された。また、レチノイン酸受容体機能障害を有するNB4-R2細胞も、高濃度(10-6M)のレチノイン酸とHNRMの添加により、好中球に分化することが確認された。
11. フローサイトメトリー
12well プレートに6.0x103個/800μlでNB4細胞及びNB4-R2細胞を播種し、レチノイン酸及び融合タンパク質HNRMを添加した。5% CO2、37℃の下5日間培養後、細胞をサンプルチューブに回収し、1000rpm、4℃で5分間の遠心分離して上清を除いた。これにPBS (137mM NaCl, 2.7mM KCl, 8.1mM Na2HPO4, 1.5mM KH2PO4, 1mM EDTA, pH8.0)50μlに沈殿した細胞を溶解させた。細胞懸濁液を25μlずつに二分し、蛍光標識された抗体をそれぞれ添加した。一方はネガティブコントロールマウスIgG2a抗体、他方はヒトCD11b抗体各5μlと混合し、氷中暗所で30分間反応させた。1000rpm 4℃ 5分間の遠心分離で上清を除いた後、PBS 500μlで2回washを行った。上清を50μl残して除き、PBSで0.5%まで希釈した4%パラホルムアルデヒドリン酸緩衝液500μlを添加し、細胞を固定した。セルストレーナー・キャップ付きチューブを用いて細胞を濾過し、フローサイトメーター BD FACSCalibur で細胞を取り込み、測定を行った。その後FlowJo (Flow Cytometry Analysis Software)で解析を行った。
【実施例】
【0100】
結果を図9に示す。NB4細胞、NB4-R2細胞のいずれにおいても、融合タンパク質HNRMを添加すると、好中球分化マーカーであるCD11bの発現が上昇することが確認された。
【配列表フリ-テキスト】
【0101】
配列番号:1は、本発明の融合タンパク質HMNRのアミノ酸配列である。
【0102】
配列番号:2は、本発明の融合タンパク質HNRMのアミノ酸配列である。
【0103】
配列番号:3は、本発明の融合タンパク質HNRのアミノ酸配列である。
【0104】
配列番号:4は、本発明の融合タンパク質HMRのアミノ酸配列である。
【0105】
配列番号:5は、本発明の融合タンパク質HRMのアミノ酸配列である。
【0106】
配列番号:6は、RARαとレチノイドX受容体とのヘテロ二量体が、標的遺伝子において認識する塩基配列である。
【0107】
配列番号:7は、ヒトRARαのアミノ酸配列である。
【0108】
配列番号:8は、マウスRARαのアミノ酸配列である。
【0109】
配列番号:9は、NLSの一例であるSV40T抗原のアミノ酸配列である。
【0110】
配列番号:10は、NLSの一例であるc-mycのアミノ酸配列である。
【0111】
配列番号:11は、NLSの一例であるp53のアミノ酸配列である。
【0112】
配列番号:12は、NLSの一例であるNF-κB p50のアミノ酸配列である。
【0113】
配列番号:13は、Hawigerらの文献によるMTMのアミノ酸配列である。
【0114】
配列番号:14は、MTMの一例である11Rのアミノ酸配列である。
【0115】
配列番号:15は、MTMの一例である9Rのアミノ酸配列である。
【0116】
配列番号:16は、MTMの一例であるTatのアミノ酸配列である。
【0117】
配列番号:17は、MTMの一例であるTat2のアミノ酸配列である。
【0118】
配列番号:18は、pET28aプラスミドのNdeI-BamHIサイトにMTMをコードするDNAを挿入するためのDNAフラグメントの塩基配列である。
【0119】
配列番号:19は、pET28aプラスミドのNdeI-BamHIサイトにMTMをコードするDNAを挿入するためのDNAフラグメントの塩基配列である。
【0120】
配列番号:20は、pET28aプラスミドのNotI-XhoIサイトにMTMをコードするDNAを挿入するためのDNAフラグメントの塩基配列である。
【0121】
配列番号:21は、pET28aプラスミドのNotI-XhoIサイトにMTMをコードするDNAを挿入するためのDNAフラグメントの塩基配列である。
【0122】
配列番号:22は、mRARαのクローニング用の5’-プライマーの塩基配列である。
【0123】
配列番号:23は、mRARαのクローニング用の3’-プライマーの塩基配列である。
【0124】
配列番号:24は、mRARαのクローニング用の3’-ノンストッププライマーの塩基配列である。
【0125】
配列番号:25は、pET28aにmRARαのcDNAが挿入されたことを確かめるためのコロニーPCR用5'-プライマーT7プロモーターの塩基配列である。
【0126】
配列番号:26は、pET28aにmRARαのcDNAが挿入されたことを確かめるためのコロニーPCR用3'-プライマーmRARα reverse-stopの塩基配列である。
【0127】
配列番号:27は、pET28aにmRARαのcDNAが挿入されたことを確かめるためのコロニーPCR用3'-プライマーmRARα reverse-nonstopの塩基配列である。
【0128】
配列番号:28は、発現ベクターのシークエンスPCR用5'-プライマー T7プロモーターの塩基配列である。
【0129】
配列番号:29は、発現ベクターのシークエンスPCR用3'-プライマー T7ターミネーターの塩基配列である。
【0130】
配列番号:30は、発現ベクターのシークエンスPCR用5'-プライマー mRARα forwardの塩基配列である。
【0131】
配列番号:31は、発現ベクターのシークエンスPCR用3'-プライマー mRARα reverse-stopの塩基配列である。
【0132】
配列番号:32は、発現ベクターのシークエンスPCR用3'-プライマー mRARα reverse-nonstopの塩基配列である。
【0133】
配列番号:33は、pET28aプラスミドのBamHI-EcoRIサイトにNLSをコードするDNAを挿入するためのDNAフラグメントの塩基配列である。
【0134】
配列番号:34は、pET28aプラスミドのBamHI-EcoRIサイトにNLSをコードするDNAを挿入するためのDNAフラグメントの塩基配列である。
【0135】
配列番号:35は、Cy5標識したDR5の塩基配列である。
【0136】
配列番号:36は、Cy5標識したDR5配列と相補的な配列である。
【0137】
配列番号:37は、Cy5標識した変異DR5の塩基配列である。
【0138】
配列番号:38は、Cy5標識した変異DR5の塩基配列と相補的な配列である。
【0139】
配列番号:39は、DR5-pGL3レポータープラスミド作製用フラグメントである。
【0140】
配列番号:40は、DR5-pGL3レポータープラスミド作製用フラグメントである。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9