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明細書 :作用選択的ビタミンD受容体作用剤

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5283043号 (P5283043)
登録日 平成25年6月7日(2013.6.7)
発行日 平成25年9月4日(2013.9.4)
発明の名称または考案の名称 作用選択的ビタミンD受容体作用剤
国際特許分類 A61K  31/575       (2006.01)
C07J   9/00        (2006.01)
A61P  43/00        (2006.01)
A61P  19/10        (2006.01)
A61P  17/06        (2006.01)
A61P  35/00        (2006.01)
A61P  37/02        (2006.01)
A61P  31/00        (2006.01)
A61P  25/00        (2006.01)
FI A61K 31/575
C07J 9/00
A61P 43/00 123
A61P 43/00 111
A61P 19/10
A61P 17/06
A61P 35/00
A61P 37/02
A61P 31/00
A61P 25/00
請求項の数または発明の数 3
全頁数 11
出願番号 特願2009-517731 (P2009-517731)
出願日 平成20年1月7日(2008.1.7)
国際出願番号 PCT/JP2008/050027
国際公開番号 WO2008/149563
国際公開日 平成20年12月11日(2008.12.11)
優先権出願番号 2007147866
優先日 平成19年6月4日(2007.6.4)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成22年11月9日(2010.11.9)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】899000057
【氏名又は名称】学校法人日本大学
発明者または考案者 【氏名】槇島 誠
【氏名】石澤 通康
【氏名】松縄 学
【氏名】山田 幸子
個別代理人の代理人 【識別番号】100098121、【弁理士】、【氏名又は名称】間山 世津子
【識別番号】100107870、【弁理士】、【氏名又は名称】野村 健一
審査官 【審査官】澤田 浩平
参考文献・文献 Bulletin of Material Science,2003年,Vol.26, No.5,p.559-563
Journal of Lipid Research,2005年,Vol. 46,p.46-57
Endocrine Reviews,2005年,Vol.26, No.5,p.662-687
調査した分野 A61K31/00-31/80,A61P1/00-43/00,
C07J9/00
特許請求の範囲 【請求項1】
ビタミンD受容体を活性化させるための試薬組成物であって、リトコール酸プロピオネート、その塩又はその溶媒和物を含む前記組成物。
【請求項2】
骨粗鬆症、悪性新生物、尋常性乾癬、自己免疫疾患、感染症及び神経変性疾患から成る群より選択される疾患を予防及び/又は治療するための医薬組成物であって、リトコール酸プロピオネート、その塩又はその溶媒和物を含む前記組成物。
【請求項3】
骨粗鬆症、悪性新生物、尋常性乾癬、自己免疫疾患、感染症及び神経変性疾患から成る群より選択される疾患を予防及び/又は治療するための医薬を製造するためのリトコール酸プロピオネート、その塩又はその溶媒和物の使用。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、作用選択的ビタミンD受容体作用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
活性型ビタミンD3は、ビタミンD受容体(VDR)を介して、生体のカルシウム・リン酸代謝及び骨代謝を調節する。ビタミンDの欠乏症は、くる病や骨軟化症を引き起こし、活性型ビタミンD3やその誘導体はそれらの治療薬として使用されている。ビタミンD誘導体の内服剤は骨粗鬆症の治療薬として、また塗布剤は尋常性乾癬の治療薬として使用されている。
ビタミンD誘導体には、悪性腫瘍(骨髄性白血病、乳癌、前立腺癌、大腸癌など)の増殖を抑制し、分化を誘導する作用のあること、免疫調節作用(自己免疫疾患モデルにおける治療効果)及び自然免疫増強作用(抗結核作用)があることなどが報告されている(非特許文献1)。
【0003】
しかし、ビタミンD誘導体を動物へ投与した場合、血中カルシウム濃度を上昇させる作用(副作用)とVDRを介する他の作用との分離が困難であった。
胆汁酸であるリトコール酸もVDRリガンドとして機能することが明らかになった(非特許文献2)。リトコール酸よりもVDRに対する活性の強いリトコール酸誘導体リトコール酸アセテートが報告された(非特許文献3)。リトコール酸アセテートは、白血病細胞の分化を誘導した。
リトコール酸は、VDR以外にも、核内受容体farnesoid X receptor (FXR)や膜型受容体(GPBAR1)を活性化させる作用がある(非特許文献4及び5)。リトコール酸アセテートは、リトコール酸よりも効果的にVDRを活性化したが、FXRに対する活性はケノデオキシコール酸よりは弱いがリトコール酸と同程度に残存した(非特許文献3)。
【0004】

【非特許文献1】Expert Opin Ther Targets Vol. 10, 2006, pp.735-748
【非特許文献2】Science Vol. 296, 2002, pp.1313-1316
【非特許文献3】J Lipid Res Vol. 46, 2005, pp.46-57
【非特許文献4】Science Vol. 284, 1999, pp1362-1365
【非特許文献5】Biochem Biophys Res Commun Vol. 298, 2002, pp714-719
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ビタミンD誘導体の副作用である血中カルシウム上昇作用(高カルシウム血症)を誘導しないVDRリガンドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らの研究により、以下の知見が得られた。
1.リトコール酸プロピオネートは、リトコール酸アセテートと同程度にVDRを活性化したが、FXRに対する作用は極めて弱かった。リトコール酸プロピオネートの膜型胆汁酸受容体GPBAR1に対する効果は、極めて弱かった。従って、リトコール酸プロピオネートは、リトコール酸やリトコール酸アセテートよりも、選択的なVDRリガンド(活性化剤)である。
2.マウスを用いた実験において、リトコール酸プロピオネートと、ビタミンD3誘導体(1α-ヒドロキシビタミンD3)との作用を、腎臓でのVDR標的遺伝子CYP24の発現を同程度に誘導する投与量において比較した。1α-ヒドロキシビタミンD3は、マウスの体重を減少させ、高カルシウム血症を誘導したが、リトコール酸プロピオネートは体重や血中カルシウム濃度に影響を与えなかった。
3.リトコール酸プロピオネートは、骨髄性白血病HL-60及びU937細胞の分化マーカーを誘導した。
本発明は、これらの知見に基づいて完成されたものである。
【0007】
本発明の要旨は以下の通りである。
(1)リトコール酸プロピオネート、その塩、その溶媒和物又はそのプロドラッグを含む組成物。
(2)ビタミンD受容体を活性化させるための(1)記載の組成物。
(3)医薬として使用される(1)又は(2)記載の組成物。
(4)ビタミンD受容体が関与する疾患を予防及び/又は治療するための(3)記載の組成物。
(5)骨粗鬆症、悪性新生物、尋常性乾癬、自己免疫疾患、感染症及び神経変性疾患から成る群より選択される疾患を予防及び/又は治療するための(3)又は(4)記載の組成物。
(6)ビタミンD受容体を有する細胞、組織、器官又は動物個体をリトコール酸プロピオネート、その塩、その溶媒和物又はそのプロドラッグで処理することを含む、ビタミンD受容体を活性化させる方法。
(7) リトコール酸プロピオネート、その塩、その溶媒和物又はそのプロドラッグの医薬的に有効な量を被験者に投与することを含む、ビタミンD受容体が関与する疾患を予防及び/又は治療する方法。
(8)ビタミンD受容体を活性化させるためのリトコール酸プロピオネート、その塩、その溶媒和物又はそのプロドラッグの使用。
(9)ビタミンD受容体が関与する疾患を予防及び/又は治療するための医薬を製造するためのリトコール酸プロピオネート、その塩、その溶媒和物又はそのプロドラッグの使用。
【発明の効果】
【0008】
リトコール酸プロピオネートは、VDRリガンド(作用剤)として有効である。
本明細書は、本願の優先権の基礎である日本国特許出願、特願2007‐147866の明細書および/または図面に記載される内容を包含する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、VDR、FXR及びGPBAR1に対するリトコール酸プロピオネートの活性化作用を示す。LCA、リトコール酸;LCAa、リトコール酸アセテート;LCAp、リトコール酸プロピオネート;EtOH、エタノール;CDCA、ケノデオキシコール酸;CA、コール酸。化合物の濃度は、VDRに対して図の通り、FXRに対して18μM、GPBAR1に対して10μMで検討した。
【図2】図2は、マウスに対するリトコール酸プロピオネートの効果を示す。Aは、マウスの体重変化を示す。Bは、腎臓におけるCYP24のmRNAの発現を示す。Cは、血漿カルシウム濃度を示す。1α-ヒドロキシビタミンD3は、12.5 nmol/kg体重(Aの●、B、CのVD3)、リトコール酸アセテートは、30mg/kg体重(Aの△、B、CのL)または300mg/kg体重(Aの▲、B、CのH)、リトコール酸プロピオネートは、30mg/kg体重(Aの□、B、CのL)または300mg/kg体重(Aの■、B、CのH)。
【図3】図3は、リトコール酸プロピオネートによる骨髄性白血病HL60細胞の分化誘導効果を示す。リトコール酸プロピオネート10μM及び30μMの効果を1,25-ジヒドロキシビタミンD3 100nM、リトコール酸アセテート10μM及び30μMの効果と比較した。EtOH、エタノール;VD3、1,25-ジヒドロキシビタミンD3;LCAa、リトコール酸アセテート;LCAp、リトコール酸プロピオネート。
【図4】図4は、マウスにおけるリトコール酸誘導体の腹腔内投与の効果を示す。Aは、マウスの体重変化を示す。Bは、血漿カルシウム濃度を示す。Cは、腎臓におけるCyp24a1、カルビンジンD9k、Trpv6及びTrpv5のmRNAの発現を示す。*は、溶媒対照と比較して、p<0.05、**は、p<0.01、***は、p<0.001を示す。Dは、小腸粘膜におけるCyp24a1のmRNAの発現を示す。p=0.190(溶媒対照vs.1α(OH)D3)。マウスには、溶媒対照(Cont)(n=3)、12.5 nmol/kg 1α(OH)D3 (VD3) (n=3)、0.7 mmol/kg リトコール酸アセテート(LCAa) (n=3)又は0.7 mmol /kg リトコール酸プロピオネート(LCAp) (n=3)を0、2、4及び6日目に腹腔内投与した。8日目に血液を心臓穿刺により採取し、8日目に組織mRNAを調べた。
【図5】図5は、マウスにおけるリトコール酸誘導体の経口投与の効果を示す。Aは、マウスの体重変化を示す。Bは、血漿カルシウム濃度を示す。Cは、腎臓におけるCyp24a1、カルビンジンD9k、Trpv6及びTrpv5のmRNAの発現を示す。Dは、小腸粘膜におけるCyp24a1、カルビンジンD9k、及びTrpv6のmRNAの発現を示す。マウスには、溶媒対照(Cont)(n=3)、12.5 nmol/kg 1α(OH)D3 (VD3) (n=3)、0.7 mmol/kg (n=3)若しくは1 mmol/kg (n=6)リトコール酸アセテート(LCAa)又は0.7 mmol /kg (n=3)若しくは1 mmol/kg (n=3) リトコール酸プロピオネート(LCAp)を0、2、4、6、8及び10日目に経管栄養で投与した。0、2、4、6、8日目に血液を尾から採取し、12日目に心臓穿刺により採取した。12日目に組織mRNAを調べた。*は、溶媒対照と比較して、p<0.05、**は、p<0.01、***は、p<0.001を示す。

【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、リトコール酸プロピオネート、その塩、その溶媒和物又はそのプロドラッグを含む組成物を提供する。
リトコール酸プロピオネートは、以下の構造式で表される。
【化1】
JP0005283043B2_000002t.gif
リトコール酸プロピオネートは、以下の(1)または(2)の方法で製造することができる。
【0011】
(1)リトコール酸と無水プロピオン酸を酸触媒(例えばBF3/Et2O)存在下に有機溶媒(例えばテトラヒドロフラン)中で加熱する方法;(2)リトコール酸のカルボキシル基をベンジル基などで保護した後、アルコール部分をプロピオン酸塩化物とピリジン中で反応させ、カルボン酸の保護基を除去する方法。
リコトール酸プロピオネートは、VDRに対する活性化作用を有する。VDRに対する活性化作用は、例えば、Science Vol. 284, 1999, pp1362-1365; Science Vol. 296, 2002, pp.1313-1316に記載の方法に従い、以下のようにして調べることができる。VDR発現ベクターとVDR反応性のレポーター遺伝子を細胞に導入し、この細胞を被験化合物(例えば、リコトール酸プロピオネート)で処理した後、レポーター活性を測定する。無処理の細胞と比較して、レポーター活性が上昇していれば、VDRが活性化されたと判定する。
リトコール酸プロピオネートは、VDR標的遺伝子の誘導を引き起こすが、高カルシウム血症は引き起こさないことが確認された(後述の実施例参照)。従って、リトコール酸プロピオネートは、ビタミンD誘導体の副作用である血中カルシウム上昇作用(高カルシウム血症)を誘導しないVDRリガンドとして有用である。
【0012】
リトコール酸プロピオネートを医薬として用いる場合には、通常の方法により、医薬的に許容される塩にしてもよい。リトコール酸プロピオネートの塩としてはナトリウム、カリウム、カルシウムなどの無機塩やアンモニアや有機アミン類の塩が挙げられる。有機アミンとしては例えはトリエチルアミンのような第三級アミン、ヂエチルアミンのような第二級アミン、エチルアミンのような第一級アミン、キヌクリヂンやピリジンなどの複素環アミンなどが挙げられる。
リトコール酸プロピオネート及びその塩は、水、メタノール、エタノール、アセトニトリルなどの溶媒と溶媒和物を生成したものであってもよい。また、溶媒和物は、単独のものであっても、複数種の混合物であってもよい。
【0013】
リトコール酸プロピオネートは、プロドラッグにしてもよい。プロドラッグは、生体に投与された後、酵素の作用や代謝的加水分解などにより、医薬的に活性な化合物になる。プロドラッグは、当業者に知られている酸誘導体であればよく、例えば、リトコール酸プロピオネートと適当なアルコールとの反応によって製造されるエステル、リトコール酸プロピオネートと適当なアミンとの反応によって製造されるアミド、カルボシル基の還元型として、24-アルコール体などが挙げられる。
【0014】
リトコール酸プロピオネート、その塩、その溶媒和物及びそのプロドラッグは、ビタミンD受容体を活性化させる薬剤として利用できる。この薬剤は、医薬としても、また、実験用試薬としても用いることができる。
医薬として利用する場合には、ビタミンD受容体が関与する疾患の予防及び/又は治療に用いることができる。具体的には、骨粗鬆症、悪性新生物(例えば、骨髄性白血病、乳癌、前立腺癌、大腸癌など)、尋常性乾癬、自己免疫疾患(例えば、慢性関節リウマチ、全身性ループスエリテマトーシスなど)、感染症(例えば、結核など)、神経変性疾患(例えば、多発性硬化症など)などの疾患の予防及び/又は治療に用いることができる。
【0015】
医薬として用いる場合には、リトコール酸プロピオネート、その塩、その溶媒和物又はそのプロドラッグを単独で、あるいは賦形剤または担体と混合し、錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、液剤、シロップ、エアロゾル、坐剤、注射剤等に製剤化するとよい。賦形剤または担体は、当分野で常套的に使用され、医薬的に許容されるものであればよく、その種類及び組成は適宜変更される。例えば、液状担体としては水、植物油などが用いられる。固体担体としては、乳糖、白糖、ブドウ糖などの糖類、バレイショデンプン、トウモロコシデンプンなどのデンプン、結晶セルロースなどのセルロース誘導体などが使用される。ステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロースなどの結合剤、カルボキシメチルセルロースなどの崩壊剤等を添加してもよい。その他、抗酸化剤、着色剤、矯味剤、保存剤等を添加してもよい。また、凍結乾燥製剤として用いたりすることもできる。
【0016】
リトコール酸プロピオネート、その塩、その溶媒和物又はそのプロドラッグは、経口、経鼻、直腸、経皮、皮下、静脈内、筋肉内などの種々の経路によって投与できる。
リトコール酸プロピオネート、その塩、その溶媒和物又はそのプロドラッグの製剤中における含量は、製剤の種類により異なるが、通常1~100 重量%、好ましくは50~100 重量%である。例えば、液剤の場合には、リトコール酸プロピオネート、その塩、その溶媒和物又はそのプロドラッグの製剤中における含量は、1~100重量%が好ましい。カプセル剤、錠剤、顆粒剤、散剤の場合は、リトコール酸プロピオネート、その塩、その溶媒和物又はそのプロドラッグの製剤中における含量は、通常約10~100 重量%、好ましくは50~100 重量%であり、残部は担体である。製剤は、単位投与製剤に製剤化するとよい。
【0017】
リトコール酸プロピオネート、その塩、その溶媒和物又はそのプロドラッグの投与量は、
期待する予防及び/又は治療効果が確認できる量であればよく、剤型、投与経路、患者の年齢、体重、疾患の種類や重篤度などにより異なるが、例えば1回当たりの投与量は成人の場合、有効成分の量に換算して、300 mg/kg体重程度とし、1日に1回から数回投与することができる。
実験用試薬として用いる場合には、ビタミンD受容体を有する細胞、組織、器官又は動物個体をリトコール酸プロピオネート、その塩、その溶媒和物又はそのプロドラッグで処理することにより、ビタミンD受容体を活性化させることができる。リトコール酸プロピオネート、その塩、その溶媒和物又はそのプロドラッグは、ビタミンD受容体の活性化に有効な量で用いればよい。ビタミンD受容体を有する細胞としては、腎臓、腸管粘膜、骨髄、骨、乳腺、皮膚、神経由来の細胞などを例示することができる。また、これらの天然由来の細胞の他、ヒト胎児腎由来HEK293細胞、腸管粘膜由来HCT116細胞、SW480細胞、Caco-2細胞、骨髄由来THP-1細胞、U937細胞、HL60細胞、骨芽細胞由来MG63細胞、乳腺由来MCF-7細胞、皮膚角化細胞由来HaCaT細胞、神経由来SK-N-SH細胞、肝臓由来HepG2細胞などにビタミンD受容体遺伝子を導入した組換え細胞などを用いてもよい。ビタミンD受容体を有する組織及び器官としては、腎臓、腸管粘膜、骨髄、リンパ組織、骨、乳腺、皮膚、神経などを例示することができる。動物個体としては、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、ニワトリなどを例示することができる。ビタミンD受容体の活性化は、VDR標的遺伝子(例えば、CYP24など)の発現誘導を測定することにより、確認することができる。
以下に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらに何ら影響されることはない。
【実施例】
【0018】
〔実施例1〕
【化2】
JP0005283043B2_000003t.gif
リトコール酸 (376 mg, 1 mmol)と無水プロピオン酸(1.3 mL)のTHF(4 mL)溶液を0℃に冷却し、BF3・Et2O(32 μL, 0.25 mmol)を加え、15時間加熱還流した。反応液に飽和NaHCO3水溶液を加え、室温で1時間攪拌した。反応液を酢酸エチルで抽出し、抽出液を食塩水で洗浄し、無水MgSO4で乾燥後、溶媒を溜去し、残渣をカラムクロマトグラフィー(SiO, 15 g, 15% 酢酸エチル/ヘキサン)にて精製し、プロピオン酸エステル体(346 mg, 80%)を得た。エステル体をベンゼン/ヘキサンで再結晶し、無色の結晶を得た。
mp 152-153 ℃
H NMR (δ) 0.64 (3H, s, H-18), 0.926 (3H, s, H-19), 0.92 (3H, d, J = 5.5 Hz, H-21), 1.13 (3H, t, J = 7.5 Hz, CH3CH2CO-), 2.27-2.36 (3 H, m, H-23 & CH3CH2CO-), 2.36-2.44 (1 H, m, H-23), 4.73 (1H, m, H-3).
13C NMR (d) 9.2, 12.0, 18.2, 20.8, 23.3, 24.1, 26.2, 26.6, 27.0, 28.0, 28.1, 30.7, 31.0, 32.2, 34.5, 35.0, 35.2, 35.7, 40.1, 40.3, 41.8, 42.7, 55.9, 56.4, 74.1, 174.1, 180.4.
MS m/z 432 (M+, 6.4), 358 (100), 343 (21), 304 (14), 257 (17), 230 (43), 215 (73).
【0019】
〔実施例2〕
文献記載の方法により(Science Vol. 284, 1999, pp1362-1365; Science Vol. 296, 2002, pp.1313-1316)、リトコール酸プロピオネートのVDRに対する活性化作用を検討した。ヒト胎児腎由来HEK293細胞(独立行政法人理化学研究所バイオリソースセンターから入手)にCMX-GAL4-VDR発現ベクター(京都大学ウイルス研究所の梅園和彦教授(故人)から供与されたCMX-GAL4-mRXRγベクターとCMX-hVDRベクターを利用して、mRXRγの部分を対応するhVDRのリガンド結合領域に置き換えたもの)、MH100(UAS)x4-tk-LUCレポーターベクター(京都大学ウイルス研究所の梅園和彦教授(故人)から供与)をリン酸カルシウム法用いてトランスフェクションし、8時間後に培養液中にリトコール酸プロピオネート(実施例1で調製)を加えた。16~18時間後に細胞を可溶化し、ルシフェラーゼ活性を評価した。結果を図1Aに示す。リトコール酸プロピオネートはリトコール酸アセテートよりも効果的にVDRを活性化した。
【0020】
〔実施例3〕
リトコール酸プロピオネートの動物への投与を行い、血漿カルシウム濃度及び臓器のVDR標的遺伝子の発現誘導効果を検討した。8~9週齢の雄マウス(C57BL/6J、日本チャールス・リバー社)へリン酸緩衝生理食塩水に溶解した化合物を隔日で腹腔内投与し、8日目に血漿及び臓器を回収し、血漿カルシウムをオルトクレゾールフタレインコンプレクソン法にて、腎臓におけるVDR標的遺伝子CYP24の発現を文献記載の方法(J Lipid Res Vol. 46, 2005, pp.46-57)にて測定した。リトコール酸プロピオネート及びリトコール酸アセテートは臓器のVDR標的遺伝子の発現を誘導した。腎臓CYP24遺伝子発現を同程度に誘導する濃度における1α-ヒドロキシビタミンD3、リトコール酸プロピオネート、リトコール酸アセテートの血漿カルシウム濃度に対する影響を比較した。1α-ヒドロキシビタミンD3は高カルシウム血症を誘導したが、リトコール酸プロピオネートとリトコール酸アセテートはカルシウム濃度を変化させなかった(図2)。
【0021】
〔実施例4〕
文献記載の方法により(Biochem Pharmacol Vol. 57, 1999, pp521-529)、リトコール酸プロピオネートの骨髄性白血病細胞の分化誘導効果を検討した。ヒト骨髄性白血病HL60細胞(独立行政法人理化学研究所バイオリソースセンターから入手)に化合物を処理をして、3日後に細胞のNitro blue tetrazolium還元能を評価した。リトコール酸プロピオネートはリトコール酸アセテートと同様に10μMで弱く、また30μMで効果的にHL60細胞の分化マーカーを誘導した(図3)
【0022】
〔実施例5〕
リトコール酸アセテートとリトコール酸プロピオネートのin vivo効果を検討するために、1α-ヒドロキシビタミンD3(1α(OH)D3)、リトコール酸アセテート又はリトコール酸プロピオネート(リン酸緩衝生理食塩水に溶解)をマウス(8~9週齢の雄マウス(C57BL/6J、日本チャールス・リバー社))に腹腔内投与した。1α(OH)D3は、投与後速やかに1,25-ジヒドロキシビタミンD3(1,25(OH)2D3)に変換したが、白血病細胞を接種したマウスの生存時間を増加する効果は1,25(OH)2D3より高かった(Honma, Y., Hozumi, M., Abe, E., Konno, K., Fukushima, M., Hata, S., Nishii, Y., DeLuca, H. F., and Suda, T. 1983. 1・,25-Dihydroxyvitamin D3 and 1・-hydroxyvitamin D3 prolong survival time of mice inoculated with myeloid leukemia cells. Proc Natl Acad Sci USA. 80: 201-204.)。マウスに1α(OH)D3を腹腔内投与(12.5 nmol/kg)すると、体重が減少し(図4A)、血漿カルシウム濃度が増加した(図4B)。1α(OH)D3は、腎Cyp24a1、カルビンジンD9k、Trpv6及びTrpv5遺伝子の発現を効果的に誘導した(図4C)。また、1α(OH)D3は、小腸粘膜Cyp24a1発現も誘導した(図4D)。マウスをリトコール酸アセテート(0.7 mmol/kg)又はリトコール酸プロピオネート(0.7 mmol/kg)で処理しても体重は減少しなかった(図4A)。重要なことは、リトコール酸アセテート(0.7 mmol/kg)及びリトコール酸プロピオネート(0.7 mmol/kg)は、1α(OH)D3 (12.5 nmol/kg)と同程度の腎Cyp24a1発現誘導効果があった(図4C)が、これらのリトコール酸誘導体は血漿カルシウム濃度を変化させなかったことである(図4B)。細胞内カルシウム結合タンパク質であるカルビンジンD9k及びカルシウムトランスポーターであるTrpv6及びTrpv5の発現はリトコール酸誘導体によって効果的に誘導されなかった。リトコール酸アセテートとリトコール酸プロピオネートは、小腸粘膜標的遺伝子発現を誘導する効果がなかった(図4D)。
【0023】
次に、リトコール酸誘導体(コーン油に溶解)の経口投与のin vivo効果を検討した。1α(OH)D3を経口投与すると、体重が減少し(図5A)、血漿カルシウム濃度が増加した。しかし、リトコール酸アセテート(1 mmol/kg)又はリトコール酸プロピオネート(1 mmol/kg)は体重にも血漿カルシウムにも影響を与えなかった(図5B)。リトコール酸アセテート(0.7 mmol/kg及び1 mmol/kg)及びリトコール酸プロピオネート(0.7 mmol/kg及び1 mmol/kg)は、1α(OH)D3 (12.5 nmol/kg)と同程度の腎Cyp24a1発現誘導効果があった(図5C)。腎カルビンジンD9kの発現はリトコール酸アセテート及びリトコール酸プロピオネート処理によって誘導されなかった。1α(OH)D3と異なり、リトコール酸誘導体はTrpv6及びTrpv5の発現を増加させなかった。1α(OH)D3を10日間経口投与した後、小腸粘膜Cyp24a1の発現は増加しなかった(図5D)。1日の単回経口投与後に発現が観察されなかった(データを示さず)ので、10日間投与の間に誘導が見られなかったことは、以前に報告された順応機構によるのかもしれない(Lemay, J., Demers, C., Hendy, G. N., Delvin, E. E., and Gascon-Barre, M. 1995. Expression of the 1,25-dihydroxyvitamin D3-24-hydroxylase gene in rat intestine: response to calcium, vitamin D3 and calcitriol administration in vivo. J Bone Miner Res. 10: 1148-1157.)。小腸粘膜Cyp24a1発現に対するリトコール酸誘導体の効果は観察されたが、穏やかなものであった。従って、リトコール酸アセテートとリトコール酸プロピオネートは、体重減少及び高カルシウム血症といった毒性の効果なしに、in vivoでビタミンD受容体(VDR)を活性化することができる。
【0024】
〔製剤例1〕
リトコール酸プロピオネート 30g、結晶セルロース 140g、乳糖 100g、繊維素グリコール酸カルシウム 15g、ヒドロキシプロピルセルロース 10gおよび精製水30mlを練合機に添加し、通常の方法により5分間練合する。練合終了後、10メッシュで篩過し、乾燥機中にて50℃で乾燥する。乾燥後、整粒し、ステアリン酸マグネシウムを5g添加する。1分混合した後、打錠して、1錠当たり約100mg、直径6.5mmの錠剤を得る。この錠剤は1錠中、リトコール酸プロピオネートを10mg含有する。
本明細書で引用した全ての刊行物、特許および特許出願をそのまま参考として本明細書にとり入れるものとする。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明は、ビタミンD受容体が関与する疾患、具体的には、骨粗鬆症、悪性新生物(例えば、骨髄性白血病、乳癌、前立腺癌、大腸癌など)、尋常性乾癬、自己免疫疾患(例えば、慢性関節リウマチ、全身性ループスエリテマトーシスなど)、感染症(例えば、結核など)、神経変性疾患(例えば、多発性硬化症など)などの疾患の予防及び/又は治療に利用することができる。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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