TOP > 国内特許検索 > 有機光応答素子用反応セル > 明細書

明細書 :有機光応答素子用反応セル

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5424594号 (P5424594)
公開番号 特開2010-050115 (P2010-050115A)
登録日 平成25年12月6日(2013.12.6)
発行日 平成26年2月26日(2014.2.26)
公開日 平成22年3月4日(2010.3.4)
発明の名称または考案の名称 有機光応答素子用反応セル
国際特許分類 B01J  35/02        (2006.01)
C25B   1/04        (2006.01)
C25B  11/06        (2006.01)
H01L  31/04        (2014.01)
FI B01J 35/02 J
C25B 1/04
C25B 11/06 B
H01L 31/04 Z
請求項の数または発明の数 14
全頁数 22
出願番号 特願2008-210301 (P2008-210301)
出願日 平成20年8月19日(2008.8.19)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 ▲1▼ 研究集会名 平成19年度 国立大学法人弘前大学理工学部物質理工学科機能素材工学講座卒業研究発表会 開催者名 (主催)国立大学法人弘前大学理工学部物質理工学科機能素材工学講座(共催)国立大学法人弘前大学 開催日 平成20年2月22日 ▲2▼ 研究集会名 平成19年度 国立大学法人弘前大学理工学部物質理工学科機能素材工学講座卒業研究発表会 開催者名 (主催)国立大学法人弘前大学理工学部物質理工学科機能素材工学講座(共催)国立大学法人弘前大学 開催日 平成20年2月29日
審査請求日 平成23年8月3日(2011.8.3)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504229284
【氏名又は名称】国立大学法人弘前大学
発明者または考案者 【氏名】阿部 敏之
【氏名】長井 圭治
個別代理人の代理人 【識別番号】110000796、【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
審査官 【審査官】山本 元彦
参考文献・文献 国際公開第2005/063393(WO,A1)
特開2007-239048(JP,A)
特開2007-253148(JP,A)
国際公開第2006/115271(WO,A1)
特開平07-073909(JP,A)
特開2008-010593(JP,A)
特開2003-024764(JP,A)
調査した分野 H01L 31/00-31/119、51/42-51/48
C25B 1/04
B01J 35/02

JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)

特許請求の範囲 【請求項1】
第1室と第2室とからなる二室の反応セルを有する有機光応答素子用反応セルであって、
第1室は、第1の有機光応答素子が、電子供与剤を含む電解質溶液に浸漬されてなるものであって、該第1の有機光応答素子は、電極基材の表面に、n型有機半導体からなる第1層及びp型有機半導体からなる第2層が被覆されてなり、
第2室は、第2の有機光応答素子又は金属電極が、電子受容剤を含む電解質溶液に浸漬されてなるものであって、該第2の有機光応答素子は、電極基材の表面に、p型有機半導体からなる第1層及びn型有機半導体からなる第2層が被覆されてなり、該第2層の上にさらに遷移金属触媒が担持されていてもよく、
第1室と第2室とは、第1の有機光応答素子の電極基材と第2の有機光応答素子の電極基材又は金属電極とが導線により反応セルの外部で連結されるとともに反応セル同士が塩橋によって連結されている反応セル。
【請求項2】
前記第1室の電子供与剤が、水、水酸化物イオン、有機物、フェロシアン化物イオン及び鉄(II)イオンからなる群から選択される少なくとも1種である請求項1に記載の反応セル。
【請求項3】
前記第1室の電子供与剤が、有機物である請求項2に記載の反応セル。
【請求項4】
前記有機物が、有機チオール、カルボン酸、アルデヒド及び有機アミンからなる群から選択される少なくとも1種である請求項3に記載の反応セル。
【請求項5】
前記第2室の電子受容剤が、水、水素イオン、フェリシアン化物イオン、鉄(III)イオン、ペルオキソ二硫酸イオン及び酸素からなる群から選択される少なくとも1種である請求項1~4のいずれかに記載の反応セル。
【請求項6】
前記第1室の電子供与剤が、水、水酸化物イオン、有機チオール、カルボン酸、アルデヒド、有機アミン、フェロシアン化物イオン及び鉄(II)イオンからなる群から選択される少なくとも1種であり、
前記第2室が第2の有機光応答素子を備え、該第2の有機光応答素子が、電極基材の表面に、p型有機半導体からなる第1層及びn型有機半導体からなる第2層が被覆され、該第2層の上にさらに遷移金属触媒が担持されてなるものであり、電子受容剤が、水及び水素イオンからなる群から選択される少なくとも1種であり、
第1室と第2室とは、第1の有機光応答素子の電極基材と第2の有機光応答素子の電極基材とが導線により反応セルの外部で連結されるとともに塩橋によって反応セル同士が連結されている請求項1~5のいずれかに記載の反応セル。
【請求項7】
前記第1室の電子供与剤が、水及び水酸化物イオンからなる群から選択される少なくとも1種であり、
前記第2室が、金属電極を備えており、電子受容剤が、フェリシアン化物イオン、鉄(III)イオン、ペルオキソ二硫酸イオン及び酸素からなる群から選択される少なくとも1種であり、
第1室と第2室とは、第1の有機光応答素子の電極基材と金属電極とが導線により反応セルの外部で連結されるとともに塩橋によって反応セル同士が連結されている請求項1~5のいずれかに記載の反応セル。
【請求項8】
前記p型有機半導体が、フタロシアニン誘導体、ナフタロシアニン誘導体、及びポルフィリン誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1~7のいずれかに記載の反応セル。
【請求項9】
前記p型有機半導体が、フタロシアニン誘導体である請求項8に記載の反応セル。
【請求項10】
前記n型有機半導体が、フラーレン類、カーボンナノチューブ類、電子供与体をドープした導電性高分子、ペリレン誘導体、及びナフタレン誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1~9のいずれかに記載の反応セル。
【請求項11】
前記n型有機半導体が、フラーレン類及びペリレン誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項10に記載の反応セル。
【請求項12】
請求項3又は4に記載の反応セルにおいて、第1室及び第2室に電圧を印加することなく第1室に光を照射することを特徴とする光誘起により有機物を酸化分解する方法。
【請求項13】
請求項6に記載の反応セルにおいて、第1室及び第2室に電圧を印加することなく両室に光を照射することを特徴とする光誘起により水を分解して水素を発生させる方法。
【請求項14】
請求項7に記載の反応セルにおいて、第1室及び第2室に電圧を印加することなく第1室に光を照射することを特徴とする光誘起により水を分解して酸素を発生させる方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、p型有機半導体とn型有機半導体とを含む有機光応答素子を用いた、二室型の有機光応答素子用反応セルに関する。
【背景技術】
【0002】
光を用いて水分子を水素と酸素に分解することは、潜在的な太陽エネルギーの変換や貯蔵システムとして大いに注目されてきており、中でも、可視光照射下で水を分解することができる光触媒の開発は、近年大きな話題となっている。
【0003】
そして、二酸化炭素の発生を伴わずに水素発生を行うことは、炭素循環に代わる水素循環型エネルギー社会を構築するうえでも必需な技術である。
【0004】
通常の水の電気分解では、その駆動力である電気は大量の二酸化炭素を排出しながら発電されるものであり、エネルギー効率、環境破壊、地球温暖化等の観点からも問題を有している。
【0005】
これらの問題点を解消するため、自然エネルギー(例えば、光エネルギー)を積極的に利用する試みがなされてきている。例えば、非特許文献1には、光エネルギーを用いた無機半導体光触媒による水の分解反応が報告されている。しかし、該光触媒は、紫外光或いは近紫外域の可視光を利用できる酸化チタン、その複合物、酸化タングステンなどの数種類にすぎなかった(非特許文献2等)。
【0006】
このような状況下、本発明者らは、可視光領域の全域に渡る光を利用できる光触媒として、p型有機半導体とn型有機半導体とを含む有機光触媒を開発し、この有機光触媒を用い、光を照射しながら電圧を印加する水の電気分解方法を提案した(特許文献1参照)。

【特許文献1】特許第3995051号公報
【非特許文献1】Nature,414,pp.625-627(2001)
【非特許文献2】Chem.Commun.,150(1992)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記有機光触媒の新しい利用法を提供することを目的とする。さらに、この新しい利用法を用いて、外部から電圧を印加することなく光照射だけで有機物を分解する方法、及び水を分解して水素又は酸素を発生させる方法を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の目的を達成するために鋭意研究を行った結果、電極基板上に特定のp型有機半導体と特定のn型有機半導体からなる有機光触媒を被覆させた有機光応答素子を2つの反応セルに入れて、両方の有機光応答素子を導線で連結し、光を照射すると、一方の反応セルで光触媒的な酸化反応が、他方の反応セルで光触媒的な還元反応が起こることを見出した。また、この反応セルを用いれば、外部から電圧を印加しなくても有機物又は水を分解することができることも見出した。本発明者は、これらの知見に基づき、さらに発展させて本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の有機光応答素子用反応セル等を提供する。
【0010】
項1.第1室と第2室とからなる二室の反応セルを有する有機光応答素子用反応セルであって、第1室は、第1の有機光応答素子が、電子供与剤を含む電解質溶液に浸漬されてなるものであって、該第1の有機光応答素子は、電極基材の表面に、n型有機半導体からなる第1層及びp型有機半導体からなる第2層が被覆されてなり、第2室は、第2の有機光応答素子又は金属電極が、電子受容剤を含む電解質溶液に浸漬されてなるものであって、該第2の有機光応答素子は、電極基材の表面に、p型有機半導体からなる第1層及びn型有機半導体からなる第2層が被覆されてなり、該第2層の上にさらに遷移金属触媒が担持されていてもよく、第1室と第2室とは、第1の有機光応答素子の電極基材と第2の有機光応答素子の電極基材又は金属電極とが導線により反応セルの外部で連結されるとともに反応セル同士が塩橋によって連結されている反応セル。
【0011】
項2.前記第1室の電子供与剤が、水、水酸化物イオン、有機物、フェロシアン化物イオン及び鉄(II)イオンからなる群から選択される少なくとも1種である項1に記載の反応セル。
【0012】
項3.前記第1室の電子供与剤が、有機物である項2に記載の反応セル。
【0013】
項4.前記有機物が、有機チオール、カルボン酸、アルデヒド及び有機アミンからなる群から選択される少なくとも1種である項3に記載の反応セル。
【0014】
項5.前記第2室の電子受容剤が、水、水素イオン、フェリシアン化物イオン、鉄(III)イオン、ペルオキソ二硫酸イオン及び酸素からなる群から選択される少なくとも1種である項1~4のいずれかに記載の反応セル。
【0015】
項6.前記第1室の電子供与剤が、水、水酸化物イオン、有機チオール、カルボン酸、アルデヒド、有機アミン、フェロシアン化物イオン及び鉄(II)イオンからなる群から選択される少なくとも1種であり、前記第2室が第2の有機光応答素子を備え、該第2の有機光応答素子が、電極基材の表面に、p型有機半導体からなる第1層及びn型有機半導体からなる第2層が被覆され、該第2層の上にさらに遷移金属触媒が担持されてなるものであり、電子受容剤が、水及び水素イオンからなる群から選択される少なくとも1種であり、第1室と第2室とは、第1の有機光応答素子の電極基材と第2の有機光応答素子の電極基材とが導線により反応セルの外部で連結されるとともに塩橋によって反応セル同士が連結されている項1~5のいずれかに記載の反応セル。
【0016】
項7.前記第1室の電子供与剤が、水及び水酸化物イオンからなる群から選択される少なくとも1種であり、前記第2室が、金属電極を備えており、電子受容剤が、フェリシアン化物イオン、鉄(III)イオン、ペルオキソ二硫酸イオン及び酸素からなる群から選択される少なくとも1種であり、第1室と第2室とは、第1の有機光応答素子の電極基材と金属電極とが導線により反応セルの外部で連結されるとともに塩橋によって反応セル同士が連結されている項1~5のいずれかに記載の反応セル。
【0017】
項8.前記p型有機半導体が、フタロシアニン誘導体、ナフタロシアニン誘導体、及びポルフィリン誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種である項1~7のいずれかに記載の反応セル。
【0018】
項9.前記p型有機半導体が、フタロシアニン誘導体である項8に記載の反応セル。
【0019】
項10.前記n型有機半導体が、フラーレン類、カーボンナノチューブ類、電子供与体をドープした導電性高分子、ペリレン誘導体、及びナフタレン誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種である項1~9のいずれかに記載の反応セル。
【0020】
項11.前記n型有機半導体が、フラーレン類及びペリレン誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種である項10に記載の反応セル。
【0021】
項12.項3又は4に記載の反応セルにおいて、第1室及び第2室に電圧を印加することなく第1室に光を照射することを特徴とする光誘起により有機物を酸化分解する方法。
【0022】
項13.項6に記載の反応セルにおいて、第1室及び第2室に電圧を印加することなく両室に光を照射することを特徴とする光誘起により水を分解して水素を発生させる方法。
【0023】
項14.項7に記載の反応セルにおいて、第1室及び第2室に電圧を印加することなく第1室に光を照射することを特徴とする光誘起により水を分解して酸素を発生させる方法。
【発明の効果】
【0024】
本発明の有機光応答素子用反応セルを用いれば、二室型の反応セルのそれぞれの反応室で酸化反応と還元反応とを起こすことができるので、別々の場所で光触媒反応を完結させることができる。
【0025】
本発明の有機光応答素子用反応セルに光を照射すれば、外部から電圧を印加しなくても有機物を酸化分解することができるので、光誘起による有機物の酸化分解方法を提供することができる。また、本発明の有機光応答素子用反応セルに光を照射すれば、外部から電圧を印加しなくても水を分解することができるので、光誘起の水素又は酸素発生反応を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0027】
本発明の有機光応答素子用反応セル(以下、単に「反応セル」という場合もある)は、第1室と第2室とからなる二室の反応セルを有しており、第1室及び第2室は以下のような構成である。
【0028】
(1)第1室は、第1の有機光応答素子が、電子供与剤を含む電解質溶液に浸漬されてなるものであって、該第1の有機光応答素子は、電極基材の表面に、n型有機半導体からなる第1層及びp型有機半導体からなる第2層が被覆されてなる。
(2)第2の有機光応答素子又は金属電極が、電子受容剤を含む電解質溶液に浸漬されてなるものであって、該第2の有機光応答素子は、電極基材の表面に、p型有機半導体からなる第1層及びn型有機半導体からなる第2層が被覆されてなり、該第2層の上にさらに遷移金属触媒が担持されていてもよい。
(3)第1室と第2室とは、第1の有機光応答素子の電極基材と第2の有機光応答素子の電極基材又は金属電極とが導線により反応セルの外部で連結されるとともに反応セル同士が塩橋によって連結されている。
【0029】
このような二室型の反応セルを構成することで、第1室の第1の有機光応答素子により酸化反応が起こり、第2室で還元反応が起こる。これより、別々の場所で光触媒反応を完結させることができる新しいタイプの反応セルが提供される。
【0030】
第1室に備えられる第1の有機光応答素子及び第2室に備えられる第2の有機光応答素子はともに、電極基材の表面にn型有機半導体及びp型有機半導体が被覆されている。
【0031】
第1の有機光応答素子及び第2の有機光応答素子に用いられる電極基材として、導電性透明ガラス基材、金属基材、炭素系基材等を挙げることができる。具体的には、例えば、インジウム-スズオキシド(ITO)等で被覆された導電性透明ガラス基材;白金等の金属基材;グラファイト、ダイヤモンド、グラッシーカーボン等の炭素系基材等が挙げられる。電極基材の抵抗値は、例えば、5~100Ω/cm、好ましくは8~20Ω/cmのものが用いられる。また、電極基材の形状は種々の形状を採用することができるが、光照射の効率を上げる電極表面の大きい平板状、基板状のものが好ましい。
【0032】
第1の有機光応答素子及び第2の有機光応答素子に用いられるp型有機半導体としては、大環状の配位子化合物又はその金属錯体が挙げられる。大環状の配位子化合物とは、不対電子を有する原子を環上に含む金属の配位子となり得る環状化合物の意であり、また、その金属錯体とは、該大環状配位子と金属原子からなる金属錯体の意味である。不対電子を有する原子としては、例えば、窒素原子、酸素原子が挙げられ、窒素原子が好ましい。金属原子としては、周期律表1~15族の各金属元素が挙げられ、好ましくは4~14族の金属元素である。また、金属錯体は、通常、該金属原子と大環状の配位子化合物とが1:1(モル比)からなり、平面4配位の錯体を形成するものであればよい。
【0033】
大環状の配位子化合物又はその金属錯体の具体例としては、フタロシアニン誘導体、ナフタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体等が挙げられる。
【0034】
フタロシアニン誘導体とは、フタロシアニンの基本骨格を有する化合物を意味する。具体的には、例えば、下記式(1A)又は(1B):
【0035】
【化1】
JP0005424594B2_000002t.gif

【0036】
(式中、Mは、周期律表4~14族からなる群から選ばれる金属原子又はその金属原子を含む原子団を示し、点線は配位結合を示す)
で表されるフタロシアニン誘導体が挙げられる。
【0037】
で示される周期律表4~14族の金属原子のうち好ましくは、7族(特に、Mn)、8族(Fe,Ru,Os)、9族(Co,Rh,Ir)、10族(Ni,Pd,Pt)、11族(特に、Cu)、12族(特に、Zn)が挙げられる。
【0038】
上記のうち、式(1A)で表されるフタロシアニン、又は式(1B)においてMがCo,Pt,Os,Mn,Ir,Fe,Rh,Cu,Zn,Ni,Pd又はRuであるフタロシアニン誘導体が好ましく、特に有機物酸化分解における活性の点から無金属フタロシアニン、亜鉛フタロシアニン又は銅フタロシアニンが好ましく、水の分解における酸素の発生量の点からコバルトフタロシアニンが好ましい。これらの化合物は、いずれも市販されているか又は当業者が容易に製造することができる。
【0039】
ナフタロシアニン誘導体とは、ナフタロシアニンの基本骨格を有する化合物を意味する。具体的には、例えば、下記式(2A)又は(2B):
【0040】
【化2】
JP0005424594B2_000003t.gif

【0041】
(式中、Mは、周期律表4~14族からなる群から選ばれる金属原子又はその金属原子を含む原子団を示し、点線は配位結合を示す)
で表されるナフタロシアニン誘導体が挙げられる。
【0042】
で示される周期律表4~14族の金属原子のうち好ましくは、7族(特に、Mn)、8族(Fe,Ru,Os)、9族(Co,Rh,Ir)、10族(Ni,Pd,Pt)、11族(特に、Cu)、12族(特に、Zn)が挙げられる。
【0043】
上記のうち、式(2A)表されるナフタロシアニン、又は式(2B)においてMがCo,Pt,Os,Mn,Ir,Fe,Rh,Cu,Zn,Ni,Pd又はRuであるナフタロシアニン誘導体が好ましく、特に有機物酸化分解における活性の点から無金属ナフタロシアニン、亜鉛ナフタロシアニン又は銅ナフタロシアニンが好ましく、水の分解における酸素の発生量の点からコバルトナフタロシアニンが好ましい。これらの化合物は、いずれも市販されているか又は当業者が容易に製造することができる。
【0044】
ポルフィリン誘導体とは、ポルフィリンの基本骨格を有する化合物を意味する。具体的には、例えば、下記式(3A)又は(3B):
【0045】
【化3】
JP0005424594B2_000004t.gif

【0046】
(式中、Rは、水素原子、アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基、Mは、周期律表4~14族からなる群から選ばれる金属原子又はその金属原子を含む原子団を示し、点線は配位結合を示す)
で表されるポルフィリン誘導体が挙げられる。
【0047】
ここで、上記のRで示されるアルキル基としては、C1-20の直鎖又は分岐鎖のアルキル基が挙げられ、好ましくはC1-10のアルキル基である。具体的には、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチルなどが挙げられる。
【0048】
また、上記のRで示されるアリール基としては、単環又は2環のアリール基が挙げられ、具体的にはフェニル、ナフチル等が挙げられる。
【0049】
また、上記のRで示されるヘテロアリール基としては、ピリジル、ピラジニル等が挙げられる。
【0050】
で示される周期律表4~14族の金属原子のうち好ましくは、7族(特に、Mn)、8族(Fe,Ru,Os)、9族(Co,Rh,Ir)、10族(Ni,Pd,Pt)、11族(特に、Cu)、12族(特に、Zn)が挙げられる。
【0051】
上記のうち、式(3A)で表されるポルフィリン、又は式(3B)においてMがCo,Pt,Os,Mn,Ir,Fe,Rh,Cu,Zn,Ni,Pd又はRu、Rがフェニル又は水素原子であるポルフィリン誘導体が好ましく、特に有機物酸化分解における活性の点から無金属ポルフィリン、亜鉛ポルフィリン又は銅ポルフィリンが好ましく、水の分解における酸素の発生量の点からコバルトポルフィリンが好ましい。これらの化合物は、いずれも市販されているか又は当業者が容易に製造することができる。
【0052】
第1及び第2の有機光応答素子に用いられるp型有機半導体としては、上述した大環状の配位子化合物又はその金属錯体が挙げられ、好ましくは、フタロシアニン誘導体、ナフタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体が挙げられる。より好ましくは、式(1A)、(1B)、(2A)、(2B)、(3A)、(3B)で表される化合物が挙げられる。特に、第1の有機光応答素子に用いられるp型有機半導体としては、有機物の酸化分解活性の点から、式(1A)で示される無金属フタロシアニン、及び式(1B)においてMがZn、Cuでそれぞれ示されるフタロシアニンの金属錯体(亜鉛フタロシアニン及び銅フタロシアニン)が好ましく、また、酸素発生に対する活性の点から、式(1B)においてMがCoで示されるフタロシアニンの金属錯体(コバルトフタロシアニン)が好ましい。上記のp型有機半導体は、市販品として入手可能か、或いは当業者が容易に製造できるものである。
【0053】
第1の有機光応答素子及び第2の有機光応答素子に用いられるn型有機半導体としては、多環式芳香族化合物(一部が飽和していても良い)が挙げられる。多環式芳香族化合物とは、少なくとも2個以上の芳香環が縮環した構造を有する化合物、或いは複数の芳香環が不飽和結合(二重結合、三重結合等)を介して結合した構造を有する化合物等を意味する。芳香環としては、ベンゼン環等のほかに、ピロール環、イミダゾール環、ピリジン環、キノキサリン環等の複素芳香環も含まれる(いずれの環も一部が飽和していても良い)。
【0054】
多環式芳香族化合物には、本発明に悪影響を与えない範囲で、種々の置換基を有していても良い。置換基としては、電子吸引基が挙げられ、具体的にはカルボニル基、スルホン基、スルホキシド基等が挙げられる。
【0055】
多環式芳香族化合物の具体例としては、C60、C70、C76、C82、C84などのフラーレン類;カーボンナノチューブ類;電子供与体(フェニレンジアミン、テトラアミノエチレン、トリス(2,2-ビピリジン)ルテニウムなど)をドープした導電性高分子(ポリイミド、ポリフェニレンビニレン、ポリパラフェニレン、ポリピロール等);ペリレン誘導体;ナフタレン誘導体等が挙げられる。中でも、ペリレン誘導体、ナフタレン誘導体、フラーレン類(C60等)等が好ましく採用され、特にペリレン誘導体やフラーレン類(C60等)が好ましい。
【0056】
ペリレン誘導体とは、ペリレンの基本骨格を有する化合物を意味する。具体的には、例えば、下記式(4A)~(4C):
【0057】
【化4】
JP0005424594B2_000005t.gif

【0058】
(式中、Rは、アルキル基又はアリール基を示す)
で表されるペリレン誘導体が挙げられる。
【0059】
ナフタレン誘導体とは、ナフタレンの基本骨格を有する化合物を意味する。具体的には、例えば、下記式(5A):
【0060】
【化5】
JP0005424594B2_000006t.gif

【0061】
(式中、Rは、アルキル基又はアリール基を示す)
で表されるナフタレン誘導体が挙げられる。
【0062】
ここで、上記のR又はRで示されるアルキル基としては、C1-20の直鎖又は分岐鎖のアルキル基が挙げられ、好ましくはC1-10のアルキル基である。具体的には、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、sec-ブチル、イソブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチルなどが挙げられる。
【0063】
また、上記のR又はRで示されるアリール基としては、単環又は2環のアリール基が挙げられ、具体的にはフェニル、ナフチル等が挙げられる。
【0064】
この有機光応答素子に用いられるn型有機半導体としては、上記のp型有機半導体との間において良好なp-n接合の関係を有しているものが用いられる。このn型有機半導体としては、上述した多環式芳香族化合物(一部が飽和していても良い)が挙げられ、好ましくは、ペリレン誘導体、ナフタレン誘導体又はフラーレン類が挙げられる。より好ましくは、式(4A)、(4B)、(4C)、(5A)で表される化合物が挙げられる。特に、効率的なキャリア生成の点から、式(4A)で示されるペリレン誘導体(3,4,9,10-ペリレンテトラカルボキシル-ビスベンズイミダゾール)又はフラーレン類(C60等)が好適に用いられる。上記のn型有機半導体は、市販品として入手可能か、或いは当業者が容易に製造できるものである。
【0065】
第1室の第1の有機光応答素子は、電極基材の表面に、n型有機半導体からなる第1層及びp型有機半導体からなる第2層が被覆されてなる。
【0066】
ここで、電極基材をn型有機半導体及びp型有機半導体で被覆する方法は、公知の方法を採用することができ、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、電気化学的被覆(電析)、溶液より被覆等の方法が挙げられる。中でも、ペリレン誘導体/フタロシアニン誘導体系に関しては、均一な被覆膜が得られる点から、真空蒸着法が好ましい。
【0067】
第1の有機光応答素子の第1層は、電極基材を被覆する通常10~400nm程度(好ましくは20~300nm程度)の厚さを有する連続被膜からなり、第2層は、第1層を被覆する通常10~200nm程度(好ましくは50~100nm程度)の厚さを有する連続被膜からなる。有機半導体層の厚さに関して、層が厚すぎると自身のフィルター効果により可視光の吸収効率が低下するため、第1層は20~300nm程度、第2層は50~100nm程度がより好ましい。
【0068】
第1の有機光応答素子は、電子供与剤を含む電解質溶液に浸漬されている。
【0069】
第1室の電解質溶液としては、酸性水溶液やアルカリ性水溶液が好適に用いられる。
【0070】
該酸性水溶液としては、リン酸や硫酸などの酸を含む水溶液が好ましい。特に好ましくは、リン酸水溶液である。該水溶液中の水素イオン濃度は、通常0.1mM~0.1M程度であればよい。例えば、上記のフラーレン類/フタロシアニン誘導体で被覆された電極を用いた場合では、酸水溶液が好ましく、そのpHは1~4程度が好ましい。
【0071】
該アルカリ性水溶液としては、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物の水溶液中に、リン酸塩、硫酸塩、硝酸塩、炭酸塩、酢酸塩等の電解質を含むものが好ましい。特に好ましくは、アルカリ金属水酸化物水溶液である。該水溶液中の水酸化物イオン濃度は、通常0.1mM~1M程度であればよい。例えば、ペリレン誘導体/フタロシアニン誘導体で被覆された電極を用いた場合では、アルカリ金属水酸化物水溶液が好ましく、そのpHは10~14程度が好ましい。
【0072】
この電解質溶液には、電子供与剤が含まれている。電子供与剤は、光照射下でp型有機半導体上に生じる酸化力により酸化されるものであり、このようなものとして、例えば、水、水酸化物イオン、有機物、フェロシアン化物イオン([Fe(CN)4+)、鉄(II)イオン(Fe2+)等を挙げることができる。これらは、1種単独で又は2種以上混合して使用される。
【0073】
ここで、有機物として、例えば、有機チオール、カルボン酸、アルデヒド、有機アミン等を挙げることができる。有機チオールには、2-メルカプトエタノール、チオフェノール等が含まれる。カルボン酸には、ギ酸、酢酸等が含まれる。アルデヒドには、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド等が含まれる。有機アミンには、トリメチルアミン、トリエチルアミン等が含まれる。これらは、1種単独で又は2種以上混合して使用される。
【0074】
第2室の第2の有機光応答素子は、電極基材の表面に、p型有機半導体からなる第1層及びn型有機半導体からなる第2層が被覆されている。電極基材をp型有機半導体及びn型有機半導体で被覆する方法としては、上記と同様の方法を用いることができる。第2の有機光応答素子は、電極基材の表面にp型有機半導体からなる第1層及びn型有機半導体からなる第2層に加えて、さらに第2層の上に遷移金属触媒(例えば、Ru、Pd、Pt、Ir触媒等、好ましくはPt又はRu触媒)が担持されていてもよい。第2層上に遷移金属触媒を担持する場合には、電解析出法(電気化学的還元)等の公知の方法を用いればよい。
【0075】
第2の有機光応答素子の第1層は、電極基材を被覆する通常10~200nm程度(好ましくは50~100nm程度)の厚さを有する連続被膜からなり、第2層は、第1層を被覆する通常10~300nm程度(好ましくは20~200nm程度)の厚さを有する連続被膜からなる。有機半導体層の厚さに関して、層が厚すぎると自身のフィルター効果により可視光の吸収効率が低下するため、第1層は50~100nm程度、第2層は20~200nm程度がより好ましい。
【0076】
第2室には、上述した第2の有機光応答素子でなく、金属電極が備えられていてもよい。
【0077】
金属電極としては、公知の金属電極、例えば、白金電極、金電極等の貴金属電極等を挙げることができる。
【0078】
第2の有機光応答素子又は金属電極は、電子受容剤を含む電解質溶液に浸漬されている。
【0079】
第2室の電解質溶液としては、第1室の電解質溶液と同様のものを用いることができ、酸性水溶液やアルカリ性水溶液が好適に用いられる。
【0080】
この電解質溶液には、電子受容剤が含まれている。電子受容剤は、光照射下でn型有機半導体上に生じる還元力により還元されるものであり、このようなものとして、例えば、水、水素イオン、フェリシアン化物イオン([Fe(CN)3+)、鉄(III)イオン(Fe3+)、ペルオキソ二硫酸イオン(S2-)、酸素等を挙げることができる。これらは、1種単独で又は2種以上混合して使用される。
【0081】
上記のように構成された第1室と第2室とは、第1の有機光応答素子の電極基材と第2の有機光応答素子の電極基材又は金属電極とが導線により反応セルの外部で連結されるとともに反応セル同士が塩橋によって連結されている。
【0082】
導線によって、第1室と第2室との間を電子が移動し、塩橋によって、第1室と第2室との間をイオンが移動する。
【0083】
上記のように構成された反応セルの第1室に光を照射すると、電極基材の表面に、n型有機半導体からなる第1層及びp型有機半導体からなる第2層が被覆されてなる第1の有機光応答素子では、光(特に可視光)照射下で生成した電子キャリアはn型有機半導体内を電極基材方向に流れ、また光照射下で生じた正孔キャリアはp型有機半導体内をn型有機半導体と逆の方向に流れるため、結果としてp型有機半導体と電解質溶液との界面で正孔による酸化反応を起こすことができる。
【0084】
よって、第1室の電解質溶液に電子供与剤として水又は水酸化物イオンが含まれる場合には、光照射によって水又は水酸化物イオンが酸化されることになる。電子供与剤として、水及び水酸化物イオン以外の電子供与剤(有機物、フェロシアン化物イオン又は鉄(II)イオン)が含まれる場合には、該電子供与剤が酸化され、特に有機物が含まれる場合には、有機物が酸化され、有機物の酸化分解が起こる。
【0085】
これより、第1室の電子供与剤が有機物である反応セルにおいて、第1室及び第2室に電圧を印加することなく第1室に光を照射することを特徴とする光誘起により有機物を酸化分解する方法が提供される。
【0086】
また、反応セルの第2室に光を照射すると、電極基材の表面に、p型有機半導体からなる第1層及びn型有機半導体からなる第2層が被覆されてなる第2の有機光応答素子では、光(特に可視光)照射下で生成した電子キャリアはn型有機半導体内をp型有機半導体とは逆の方向に流れ、また光照射下で生じた正孔キャリアはp型有機半導体内を電極基材方向に流れる。結果として、n型有機半導体と電解質溶液との界面で電子による還元反応を起こすことができる。
【0087】
よって、第2室の電解質溶液に電子受容剤として水又は水素イオンが含まれ、第2の有機光応答素子の第2層に遷移金属触媒が担持されている場合には、光照射によって水又は水素イオンが還元されて水素が発生することになる。電子受容剤として、水及び水素イオン以外の電子受容剤(フェリシアン化物イオン、鉄(III)イオン、ペルオキソ二硫酸イオン又は酸素)が含まれる場合には、該電子受容剤が還元されることになる。
【0088】
このように、本発明の有機光応答素子用反応セルを用いれば、二室型の反応セルで別々に酸化反応と還元反応とを起こすことができるので、別々の場所で光触媒反応を完結させることができる。
【0089】
本発明の反応セルの好ましい実施形態の模式図を図1に示す。
【0090】
図1の反応セル1は、第1室2と第2室3とからなる二室の反応セルを有している。
【0091】
第1室2は、第1の有機光応答素子4を備えている。この第1の有機光応答素子4は、電極基材5の表面に、n型有機半導体からなる第1層6及びp型有機半導体からなる第2層7が被覆されてなる。
【0092】
電極基材5としては、上述した電極基材と同様のものを用いることができる。その中でも、導電性透明ガラス基材が好ましく用いられ、特に、インジウム-スズオキシド(ITO)等で被覆された導電性透明ガラス基材が好ましく用いられる。
【0093】
電極基材5の表面にはn型有機半導体からなる第1層6が被覆されている。n型有機半導体としては、上述したn型有機半導体と同様のものを用いることができる。n型有機半導体としては、上述した多環式芳香族化合物(一部が飽和していても良い)が挙げられ、好ましくは、ペリレン誘導体、ナフタレン誘導体又はフラーレン類が挙げられる。より好ましくは、式(4A)、(4B)、(4C)、(5A)で表される化合物が挙げられる。特に、効率的なキャリア生成の点から、式(4A)で示されるペリレン誘導体(3,4,9,10-ペリレンテトラカルボキシル-ビスベンズイミダゾール)が好適に用いられる。
【0094】
第1層6の上にはp型有機半導体からなる第2層7が被覆されている。p型有機半導体としては、上述したp型有機半導体と同様のものを用いることができる。その中でも、酸化活性の高いものが用いられる。このp型有機半導体としては、上述した大環状の配位子化合物又はその金属錯体が挙げられ、好ましくは、フタロシアニン誘導体、ナフタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体が挙げられる。より好ましくは、式(1A)、(1B)、(2A)、(2B)、(3A)、(3B)で表される化合物が挙げられる。特に、式(1A)で示される無金属フタロシアニンが好ましい。
【0095】
第1の有機光応答素子4は、例えば、電極基材5にn型有機半導体を真空蒸着してn型有機半導体層(第1層)6を形成し、その上にp型有機半導体を真空蒸着してp型有機半導体層(第2層)7を形成することによって得ることができる。
【0096】
第1の有機光応答素子4の第1層6は、電極基材5を被覆する通常10~400nm程度(好ましくは20~300nm程度)の厚さを有する連続被膜からなり、第2層7は、第1層6を被覆する通常10~200nm程度(好ましくは50~100nm程度)の厚さを有する連続被膜からなる。有機半導体層の厚さに関して、層が厚すぎると自身のフィルター効果により可視光の吸収効率が低下するため、第1層6は20~300nm程度、第2層7は50~100nm程度がより好ましい。
【0097】
このように構成された第1の有機光応答素子4は、電子供与剤を含む電解質溶液8に浸漬されている。
【0098】
電解質溶液8としては、酸性水溶液やアルカリ性水溶液が好適に用いられる。
【0099】
該酸性水溶液としては、リン酸や硫酸などの酸を含む水溶液が好ましい。特に好ましくは、リン酸水溶液である。該水溶液中の水素イオン濃度は、通常0.1mM~0.1M程度であればよい。そのpHは1~4程度が好ましい。
【0100】
該アルカリ性水溶液としては、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物の水溶液中に、リン酸塩、硫酸塩、硝酸塩、炭酸塩、酢酸塩等の電解質を含むものが好ましい。特に好ましくは、アルカリ金属水酸化物水溶液である。該水溶液中の水酸化物イオン濃度は、通常0.1mM~1M程度であればよい。例えば、ペリレン誘導体/フタロシアニン誘導体で被覆された電極を用いた場合では、アルカリ金属水酸化物水溶液が好ましく、そのpHは10~14程度が好ましい。
【0101】
この電解質溶液8には、電子供与剤が含まれている。電子供与剤として、水、水酸化物イオン、有機チオール、カルボン酸、アルデヒド、有機アミン、フェロシアン化物イオン([Fe(CN)4+)及び鉄(II)イオン(Fe2+)等を挙げることができる。これらは、1種単独で又は2種以上混合して使用される。好ましくは、有機チオール又はフェロシアン化物イオン([Fe(CN)4+)であり、特に2-メルカプトエタノールが好ましい。
【0102】
一方、第2室3は、第2の有機光応答素子9を備えている。この第2の有機光応答素子9は、電極基材10の表面に、p型有機半導体からなる第1層11及びn型有機半導体からなる第2層12が被覆され、該第2層12の上にさらに遷移金属触媒が担持されてなる。
【0103】
電極基材10としては、上述した電極素材と同様のものを用いることができる。電極基材10は第1の有機光応答素子4の電極基材5と同一であっても異なっていてもよい。好ましい電極基材10として、導電性透明ガラス基材が挙げられ、特に、インジウム-スズオキシド(ITO)等で被覆された導電性透明ガラス基材が好ましい。
【0104】
電極基材10の表面にはp型有機半導体からなる第1層11が被覆されている。p型有機半導体としては、上述したp型有機半導体と同様のものを用いることができる。p型有機半導体としては、上述した大環状の配位子化合物又はその金属錯体が挙げられ、好ましくは、フタロシアニン誘導体、ナフタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体が挙げられる。より好ましくは、式(1A)、(1B)、(2A)、(2B)、(3A)、(3B)で表される化合物が挙げられる。特に、式(1A)で示される無金属フタロシアニンが好ましい。
【0105】
第1層11の上にはn型有機半導体からなる第2層12が被覆されている。n型有機半導体としては、上述したn型有機半導体と同様のものを用いることができる。その中でも、光照射時における水の分解において効率的な水素の発生が可能なものが用いられる。このようなn型有機半導体としては、上述した多環式芳香族化合物(一部が飽和していても良い)が挙げられ、好ましくは、ペリレン誘導体、ナフタレン誘導体又はフラーレン類が挙げられる。より好ましくは、フラーレン類(C60)が用いられる。
【0106】
第2の有機光応答素子9は、第2層12の上にさらに遷移金属触媒(例えば、Ru,Pd,Pt,Ir触媒等、好ましくはPt又はRu触媒)を担持している。第2層12上に担持される遷移金属触媒は、第2層12を完全に被覆する必要はなく分散担持されていればよい。例えば、遷移金属触媒は、その平均粒径が5~800nm程度(好ましくは10~100nm程度)の微粒子状態で第2層12上に担持される。
【0107】
第2の有機光応答素子9は、例えば、電極基材10にp型有機半導体を真空蒸着してp型有機半導体層(第1層)11を形成し、その上にn型有機半導体を真空蒸着してn型有機半導体層(第2層)12を形成することによって得ることができる。さらに、第2層12上に遷移金属触媒を担持する方法として、電解析出法(電気化学的還元)等の公知の方法を採用することができる。例えば、白金担持に関しては、硫酸やリン酸等を含む水溶液に、KPtCl、KPtCl、HPtClなどの白金塩を加えて、光カソード条件で白金を担持する方法が挙げられる。適用するカソード条件としては、印加電圧が+0.4~-0.2V(vs.Ag/AgCl)程度であることが好ましい。水素イオン濃度は、通常1mM~10mM程度であり、白金塩の濃度は、通常0.1mM~1mM程度であることが好ましい。
【0108】
第2の有機光応答素子9の第1層11は、電極基材10を被覆する通常10~200nm程度(好ましくは50~100nm程度)の厚さを有する連続被膜からなり、第2層12は、第1層11を被覆する通常10~300nm程度(好ましくは20~200nm程度)の厚さを有する連続被膜からなる。有機半導体層の厚さに関して、層が厚すぎると自身のフィルター効果により可視光の吸収効率が低下するため、第1層11は50~100nm程度、第2層12は20~200nm程度がより好ましい。
【0109】
このように構成された第2の有機光応答素子9は、電解質溶液13に浸漬されている。
【0110】
電解質溶液13としては、第1室2の電解質溶液8と同様のものを用いることができ、酸性水溶液やアルカリ性水溶液が好適に用いられる。例えば、フタロシアニン誘導体/フラーレンで被覆された電極を用いた場合では、酸性水溶液、特にリン酸水溶液が好ましく、そのpHは1~3程度が好ましい。
【0111】
この電解質溶液13には、電子受容剤として、水及び水素イオンからなる群から選択される少なくとも1種が含まれている。
【0112】
そして、第1室2と第2室3とが、第1の有機光応答素子4の電極基材5と第2の有機光応答素子9の電極基材10とが導線14により反応セルの外部で連結されるとともに塩橋15によって反応セル同士が連結されている。
【0113】
この反応セル1の第1室2及び第2室3に光を照射すると、第1室2では酸化反応(電子供与剤の光酸化)が起こる。第2室3では、電子受容剤である水又は水素イオンの還元反応が起こり、光触媒的に水素が発生する。
【0114】
この反応セル1によれば、電気化学的なバイアスを印加しなくても、光を照射するだけで、光誘起の水素発生を起こすことができる。
【0115】
よって、本発明において、反応セル1において、第1室2及び第2室3に電圧を印加することなく両室に光を照射することを特徴とする光誘起により水を分解して水素を発生させる方法が提供される。
【0116】
本発明の反応セルのもう1つの好ましい実施形態の模式図を図2に示す。
【0117】
図2の反応セル21は、第1室22と第2室23とからなる二室の反応セルを有している。
【0118】
第1室22は、第1の有機光応答素子24を備えている。この第1の有機光応答素子24は、電極基材25の表面に、n型有機半導体からなる第1層26及びp型有機半導体からなる第2層27が被覆されてなる。
【0119】
電極基材25としては、上述した電極基材と同様のものを用いることができる。その中で、導電性透明ガラス基材が好ましく用いられ、特に、インジウム-スズオキシド(ITO)等で被覆された導電性透明ガラス基材が好ましく用いられる。
【0120】
電極基材25の表面にはn型有機半導体からなる第1層26が被覆されている。n型有機半導体としては、上述したn型有機半導体と同様のものを用いることができる。n型有機半導体としては、上述した多環式芳香族化合物(一部が飽和していても良い)が挙げられ、好ましくは、ペリレン誘導体、ナフタレン誘導体又はフラーレン類が挙げられる。より好ましくは、式(4A)、(4B)、(4C)、(5A)で表される化合物が挙げられる。特に、効率的なキャリア生成の点から、式(4A)で示されるペリレン誘導体(3,4,9,10-ペリレンテトラカルボキシル-ビスベンズイミダゾール)が好適に用いられる。
【0121】
第1層26の上にはp型有機半導体からなる第2層27が被覆されている。p型有機半導体としては、上述したp型有機半導体と同様のものを用いることができる。その中でも、光照射時における水の分解において酸素を効率よく発生しうる酸素発生触媒として活性の高いものが用いられる。このp型有機半導体としては、上述した大環状の配位子化合物又はその金属錯体が挙げられ、好ましくは、フタロシアニン誘導体、ナフタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体が挙げられる。より好ましくは、式(1A)、(1B)、(2A)、(2B)、(3A)、(3B)で表される化合物が挙げられる。特に、式(1B)においてMがCoで示されるフタロシアニンの金属錯体(コバルトフタロシアニン)が好ましい。
【0122】
このように構成された第1の有機光応答素子24は、電解質溶液28に浸漬されている。
【0123】
電解質溶液28としては、第1室2の電解質溶液8と同様のものを用いることができ、酸性水溶液やアルカリ性水溶液が好適に用いられる。例えば、ペリレン誘導体/フタロシアニン誘導体で被覆された電極を用いた場合では、アルカリ性水溶液、特にアルカリ金属水酸化物水溶液が好ましく、そのpHは10~12程度が好ましい。
【0124】
この電解質溶液28には、電子供与剤として、水及び水酸化物イオンからなる群から選択される少なくとも1種が含まれている。
【0125】
第1の有機光応答素子24は、例えば、電極基材25にn型有機半導体を真空蒸着してn型有機半導体層(第1層)26を形成し、その上にp型有機半導体を真空蒸着してp型有機半導体層(第2層)27を形成することによって得ることができる。
【0126】
第1の有機光応答素子24の第1層26は、電極基材25を被覆する通常10~400nm程度(好ましくは20~300nm程度)の厚さを有する連続被膜からなり、第2層27は、第1層26を被覆する通常10~200nm程度(好ましくは50~100nm程度)の厚さを有する連続被膜からなる。有機半導体層の厚さに関して、層が厚すぎると自身のフィルター効果により可視光の吸収効率が低下するため、第1層26は20~300nm程度、第2層27は50~100nm程度がより好ましい。
【0127】
第2室23は、金属電極29を備えている。
【0128】
金属電極29としては、上述した金属電極を用いることができる。好ましくは、白金電極を用いることができる。
【0129】
この金属電極29が、電子受容剤を含む電解質溶液30に浸漬されている。
【0130】
電解質溶液30としては、第1室2の電解質溶液8で記載した酸性水溶液やアルカリ性水溶液が好適に用いられる。その中で、アルカリ性水溶液であるアルカリ金属水酸化物水溶液が好ましく、そのpHは10~12程度が好ましい。
【0131】
この電解質溶液30には、電子受容剤が含まれている。電子受容剤として、水及び水素イオン以外のもの、例えば、フェリシアン化物イオン([Fe(CN)3+)、鉄(III)イオン(Fe3+)、ペルオキソ二硫酸イオン(S2-)、酸素等を挙げることができる。これらは、1種単独で又は2種以上混合して使用される。好ましくは、フェリシアン化物イオン([Fe(CN)3+)が用いられる。
【0132】
そして、第1室22と第2室23とが、第1の有機光応答素子24の電極基材25と金属電極29とが導線14により反応セルの外部で連結されるとともに塩橋15によって反応セル同士が連結されている。
【0133】
この反応セル21の第1室22に光を照射すると、第1室22では電子供与剤である水又は水酸化物イオンの酸化反応が起こり、光触媒的に酸素が発生する。第2室23では還元反応(水及び水素イオン以外の電子受容剤の還元)が起こる。
【0134】
この反応セル21によれば、電気化学的なバイアスを印加しなくても、光を照射するだけで、光誘起の酸素発生を起こすことができる。
【0135】
よって、本発明において、反応セル21において、第1室22及び第2室23に電圧を印加することなく第1室22に光を照射することを特徴とする光誘起により水を分解して酸素を発生させる方法が提供される。
【実施例】
【0136】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によって限定されるものではない。
【0137】
実施例1(二室とも有機光応答素子を備えた反応セルを用いた水素発生)
(1)第1の有機光応答素子の材料として、n型半導体である3,4,9,10-ペリレンテトラカルボキシル-ビスベンズイミダゾール(以下「PTCBI」と表記する)及びp型半導体である無金属フタロシアニン(HPc)を用いた。本発明においては、それぞれ昇華精製したものを用いた。
【0138】
第1の有機光応答素子の作製は、真空蒸着法により行った。まず、ITO被覆ガラス基板(旭硝子社製、抵抗8Ωcm-2;ITO被覆ガラスの透過率85%以上;インジウムスズオキシドの積層厚174nm)上に、PTCBIを約300nmの厚さで、次いで、PTCBI上にHPcを約60nmの厚さで積層した。
【0139】
この第1の有機光応答素子を1cm×1.5cmに切り出した。そのうちの1cm×0.5cmに相当する部分をアセトンで拭き取り、銀含有エポキシ系接着剤(東洋インキ製造社製、T-700)を用いて導線を取り付けた。銀部位と水の接触を防ぐために、エポキシ系接着剤を用いて絶縁して、第1の有機光応答素子とした。
【0140】
(2)第2の有機光応答素子の材料として、n型有機半導体であるフラーレン(以下「C60」と表記する)及びp型有機半導体である無金属フタロシアニン(以下「HPc」と表記する)を用いた。本発明においては、それぞれ昇華精製したものを用いた。
【0141】
第2の有機光応答素子の作製は真空蒸着法により行った。まず、インジウム-スズオキシド(ITO)で被覆された導電性透明ガラス基板(以下「ITO被覆ガラス基板」又は「ITO」と表記する)(旭硝子社製、抵抗8Ωcm-2;ガラスの透過率85%以上;インジウムスズオキシドの積層厚174nm)上に、HPcを約60nmの厚さで、次いでC60を約120nmの厚さで、HPc上に積層した。さらに、C60上に白金微粒子(以下「Pt」と表記する)を担持した。
【0142】
この第2の有機光応答素子を1cm×1.5cmに切り出した。そのうちの1cm×0.5cmに相当する部分をアセトンで拭き取り、銀含有エポキシ系接着剤(東洋インキ製造社製、T-700)を用いて導線を取り付けた。銀部位と水の接触を防ぐために、エポキシ系接着剤を用いて絶縁して、第2の有機光応答素子とした。
【0143】
(3)二室型の反応セルは、以下の方法で作製した。第1室に上記(1)で作製した第1の有機光応答素子を入れ、第2室に上記(2)で作製した第2の有機光応答素子を入れ、第1室の第1の有機光応答素子の電極基材と第2室の第2の有機光応答素子の電極基材とを導線で結び、両反応セルを塩橋で結んで、図3に示す二室型の反応セルを構成した。
【0144】
上記二室型の反応セルを用い、まず第2室(還元反応室)の条件を固定し、第1室(酸化反応室)の条件を変えて、第2室で発生する水素発生量を比較し、最も有効な第1室の条件を検討した。
【0145】
第2室(還元反応室)は、電解質溶液としてリン酸水溶液(pH=2)を用い、ハロゲンランプによりPt側から、照射光量380mWcm-2で3時間照射した。ここでの電子受容剤は水又は水素イオンである。
【0146】
第1室(酸化反応室)は、電子供与剤として2-メルカプトエタノール(以下、単にチオールという場合もある)を用いるか否か(チオールの有無)と、光照射を行うか否かを組み合わせて行った。なお、2-メルカプトエタノールを用いた場合の溶液は、5mM 2-メルカプトエタノールを含む水酸化カリウム水溶液(pH=11)である。光照射を行う場合は、ハロゲンランプによりITO被覆ガラス基板側から、照射光量380mWcm-2で3時間照射した。その結果を表1に示す。
【0147】
【表1】
JP0005424594B2_000007t.gif

【0148】
表1の結果から、ITO/HPc/C60/Pt上での光誘起の水素発生反応は、チオールを含む水溶液中で、ITO/PTCBI/HPcにITO側から光照射を行う条件が最も有効であることがわかる。
【0149】
また、第1室において、電子供与剤である2-メルカプトエタノール(有機物)が、光照射により酸化されて分解していることがわかる。
【0150】
次に、上記二室型の反応セルを用い、第1室(酸化反応室)の条件を固定し、第2室(還元反応室)の条件を変えて、第2室で発生する水素発生量を比較し、最も有効な第1室の条件を検討した。
【0151】
第1室(酸化反応室)は、電解質溶液として5mM 2-メルカプトエタノールを含む水酸化カリウム水溶液(pH=11)を用い、ハロゲンランプによりITO側から、照射光量380mWcm-2で3時間照射した。
【0152】
第2室(還元反応室)は、有機光応答素子としてC60表面にPtを担持するか否かと、光照射を行うか否かを組み合わせて行った。ここでの電子受容剤も水又は水素イオンである。なお、光照射を行う場合は、ハロゲンランプによりPt側から、照射光量380mWcm-2で3時間照射した。その結果を表2に示す。
【0153】
【表2】
JP0005424594B2_000008t.gif

【0154】
表2の結果から、ITO/HPc/C60のC60表面にPtを担持した条件で、光照射を施すと、効率的に水素が発生することがわかる。
【0155】
さらに、第2室(還元反応室)の有機光応答素子としてC60を使用しない場合について、第2室で発生する水素発生量を比較した。
【0156】
第1室(酸化反応室)は、電解質溶液として5mM 2-メルカプトエタノールを含む水酸化カリウム水溶液(pH=11)を用い、ハロゲンランプによりITO側から、照射光量380mWcm-2で3時間照射した。
【0157】
第2室(還元反応室)は、有機光応答素子としてC60を使用しないITO/HPcにPtを担持するか否かと、光照射を行うか否かを組み合わせて行った。ここでの電子受容剤も水又は水素イオンである。なお、光照射を行う場合は、ハロゲンランプによりPt側から、照射光量380mWcm-2で3時間照射した。その結果を表3に示す。
【0158】
【表3】
JP0005424594B2_000009t.gif

【0159】
表3の結果から、HPc上にC60を積層していない素子を用いた場合は、いずれの条件でも効率的な水素発生は起こらなかった。これより、ITO/HPc/C60/Ptが、光誘起の水素発生に対して有効な素子であることが支持される。
【0160】
実施例2(有機光応答素子と金属電極とを備えた反応セルを用いた酸素発生)
(1)第1の有機光応答素子の材料として、n型半導体である3,4,9,10-ペリレンテトラカルボキシル-ビスベンズイミダゾール(以下「PTCBI」と表記する)及びp型半導体であるコバルトフタロシアニン(CoPc)を用いた。本発明においては、それぞれ昇華精製したものを用いた。
【0161】
第1の有機光応答素子の作製は、真空蒸着法により行った。まず、ITO被覆ガラス基板(旭硝子社製、抵抗8Ωcm-2;ITO被覆ガラスの透過率85%以上;インジウムスズオキシドの積層厚174nm)上に、PTCBIを約160nmの厚さで、次いで、PTCBI上にCoPcを約90nmの厚さで積層した。
【0162】
この第1の有機光応答素子を1cm×1.5cmに切り出した。そのうちの1cm×0.5cmに相当する部分をアセトンで拭き取り、銀含有エポキシ系接着剤(東洋インキ製造社製、T-700)を用いて導線を取り付けた。銀部位と水の接触を防ぐために、エポキシ系接着剤を用いて絶縁して、第1の有機光応答素子とした。
【0163】
(2)二室型の反応セルは、以下の方法で作製した。第1室に上記(1)で作製した第1の有機光応答素子被覆電極を入れ、第2室に白金線を入れ、第1室の第1の有機光応答素子の電極基材と第2室の金属電極とを導線で結び、両反応セルを塩橋で結んで図4に示す二室型の反応セルを構成した。
【0164】
上記二室型の反応セルを用い、第1室(酸化反応室)及び第2室(還元反応室)の条件を変えて、第1室で発生する酸素発生量を比較し、最も有効な酸素発生条件を検討した。
【0165】
第2室(還元反応室)の電子受容剤としてヘキサシアノ鉄(III)カリウム〔K[Fe(CN)]〕を用いるか否か(K[Fe(CN)]の有無)と、第1室(酸化反応室)における第1の有機光応答素子と、光照射を行うか否かを組み合わせて行った。
【0166】
なお、第2室(還元反応室)において〔K[Fe(CN)]〕を用いた場合の溶液は、50mM K[Fe(CN)]を含む水酸化カリウム溶液(pH=11)である。第1室(酸化反応室)は、電解質溶液として水酸化カリウム水溶液(pH=11)を用いた。ここでの電子供与剤は、水又は水酸化物イオンである。光照射を行う場合は、ハロゲンランプによりITO被覆ガラス基板側から、照射光量600mWcm-2で3時間照射した。その結果を表4に示す。
【0167】
【表4】
JP0005424594B2_000010t.gif

【0168】
表4の結果から、第1室において、光照射下で、有機光応答素子としてITO/PTCBI/CoPcを用い、第2室において、電子受容剤としてK[Fe(CN)]を用いた水溶液を用いた条件で、光誘起の酸素発生が効率的に起こることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0169】
【図1】本発明の反応セルの好ましい実施形態の模式図である。
【図2】本発明のもう1つの反応セルの好ましい実施形態の模式図である。
【図3】実施例1に関する反応セルの概略図である。
【図4】実施例2に関する反応セルの概略図である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3