TOP > 国内特許検索 > 植物育成用施設 > 明細書

明細書 :植物育成用施設

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5515118号 (P5515118)
公開番号 特開2012-044873 (P2012-044873A)
登録日 平成26年4月11日(2014.4.11)
発行日 平成26年6月11日(2014.6.11)
公開日 平成24年3月8日(2012.3.8)
発明の名称または考案の名称 植物育成用施設
国際特許分類 A01G   9/24        (2006.01)
A01G   9/18        (2006.01)
FI A01G 9/24 B
A01G 9/18
請求項の数または発明の数 4
全頁数 19
出願番号 特願2010-187063 (P2010-187063)
出願日 平成22年8月24日(2010.8.24)
審査請求日 平成25年8月9日(2013.8.9)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504147254
【氏名又は名称】国立大学法人愛媛大学
発明者または考案者 【氏名】高山 弘太郎
【氏名】仁科 弘重
【氏名】松岡 明日香
【氏名】有馬 誠一
【氏名】羽藤 堅治
【氏名】三好 譲
【氏名】上加 裕子
個別代理人の代理人 【識別番号】100089222、【弁理士】、【氏名又は名称】山内 康伸
【識別番号】100134979、【弁理士】、【氏名又は名称】中井 博
審査官 【審査官】木村 隆一
参考文献・文献 特開平04-200325(JP,A)
実開平01-024947(JP,U)
特開平11-196678(JP,A)
特開2001-211757(JP,A)
特開2005-013100(JP,A)
特開昭63-137620(JP,A)
実開平06-007447(JP,U)
実開昭57-001546(JP,U)
調査した分野 A01G 9/14-9/26
特許請求の範囲 【請求項1】
太陽光を利用する温室と、
該温室内に設けられた、植物を収容した状態で該植物を育成する育成室と、を備えており、
該育成室は、
前記植物を囲むように設けられた、光透過性部材からなる被覆部と、
該被覆部内に配置された、該被覆部内に二酸化炭素を供給する二酸化炭素供給手段と、を備えており、
該被覆部には、
該被覆部内の空気と温室の空気とを換気するための換気部が設けられており、
該被覆部は、
該被覆部内の空気の湿度が、前記温室の空気の湿度よりも高く維持されている
ことを特徴とする植物育成用施設。
【請求項2】
前記換気部は、
該育成室の換気回数が、前記温室の換気回数よりも少なくなるように形成されている
ことを特徴とする請求項1記載の植物育成用施設。
【請求項3】
前記被覆部を形成する光透過性部材は、該被覆部に照射された光を散乱し得る構造を有している
ことを特徴とする請求項1または2記載の植物育成用施設。
【請求項4】
前記温室内には、前記被覆部の外面に対して水滴を噴霧する水噴霧手段が設けられている
ことを特徴とする請求項1、2または3記載の植物育成用施設。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、植物育成用施設に関する。さらに詳しくは、トマトやキュウリ、ナス、パプリカなどの植物に二酸化炭素を与えることで光合成量を増大させて、収量増大および品質向上を達成する二酸化炭素施用を行う植物育成用施設に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、世界的に異常気象が発生しており、植物の生産に影響を与えることが危惧されている。このため、天候に左右されず野菜などを栽培できる植物工場の普及が望まれている。
【0003】
植物工場として、太陽光の利用を基本として、ガラス温室等の半閉鎖環境で植物を生産する「太陽光利用型」の施設が開発されている。太陽光利用型植物工場は、従来の温室を用いた施設園芸の発展型としても位置づけられており、環境情報と栽培している植物の生体情報の両方を計測し、それに基づいて環境制御を行う高度な環境制御システムを有する。例えば、北欧では、日照時間が非常に短い季節があるため、「太陽光利用型」の施設に日照不足を補うための人工光源を設置し、この人工光源によって太陽光を補光しながら植物を生産することが以前から行われており、それを基礎として、オランダ等の欧州各地で植物工場を使用した高度な園芸が発展している。
【0004】
上記のごとき植物工場では、植物が温室等の外殻(被覆資材)によって外気から遮断されているため、光合成が盛んに行われる日中において二酸化炭素の量が不足状態となる可能性がある。二酸化炭素の量が不足すると十分な光合成が行われず植物が十分に発育しない可能性があるため、二酸化炭素の量が不足することを防ぐために、植物に人為的に二酸化炭素を与える「二酸化炭素施用」が行われる。しかも、この二酸化炭素施用により、温室内の二酸化炭素濃度を大気の二酸化炭素濃度よりも高くすれば、植物の光合成をより活発にさせることができるから、収穫量を増大させることも可能である。
例えば、温室等の内部に張り巡らせたエアダクトから二酸化炭素を供給し、温室等の内部全体の空気中の二酸化炭素濃度を高める方法や、温室等の内部にカーテン等によって仕切られた複数の空間を形成し、各空間を最適な二酸化炭素濃度に調整する方法(特許文献1)、炭酸水を植物体に散布して二酸化炭素施用する方法(特許文献2)などが開発されている。
【0005】
ところで、北欧等の国と比べ、日本などでは、春から秋までの長期間にわたり,晴天日の昼間は植物工場内が高温になる。植物工場内の気温が高くなりすぎると、植物の栽培において、徒長、着花不良、不稔などの様々な生育不良が起こる。さらに、これらに加えて、植物の呼吸量の増大や生理障害果実の多発などにより、収穫量が減少するといった悪影響がでる。
このため、植物工場内の気温をある程度の範囲に維持するために、天窓や側窓を開けて、外気との空気の交換、すなわち換気が行われる。かかる換気を行えば、植物工場内の高温の空気と低温の外気を入れ替えることによって、植物工場内の熱を外部に排出することができる(以下、これを熱交換とよぶ)。
【0006】
しかし、かかる熱交換により、植物工場内の気温をある程度制御することはできるものの、植物工場内の空気が排出されるため、熱交換と同時にガス交換も行われてしまう。すると、植物工場内に施用した二酸化炭素も換気により植物工場外へ排出されてしまうため,植物工場内を高二酸化炭素濃度環境に維持することは困難になる。
特許文献1の技術でも、カーテン等によって複数の空間に仕切られてはいるものの、各空間における熱交換は、温室の換気窓を通じて行われるため、換気を行っている場合、各空間に施用した二酸化炭素は換気窓を通じて温室外へ排出されてしまう。このため、換気を行う場合には、従来の温室と同様に、各空間内、つまり、植物の周囲の環境を高二酸化炭素濃度の状態に維持することは困難である。
【0007】
以上のごとく、植物工場内が高温となるような環境では、植物工場内の気温を適切な温度に維持しつつ、植物の周囲の環境を常に高二酸化炭素濃度の状態に維持しておくことは困難であり、両状況を維持し得る環境を実現できる施設の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【0008】

【特許文献1】特開2009-153405号公報
【特許文献2】特開2008-199920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記事情に鑑み、太陽光を利用する施設において、植物を育成する環境を適切な気温かつ高二酸化炭素濃度の状態に維持することができる植物育成用施設を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1発明の植物育成用施設は、太陽光を利用する温室と、該温室内に設けられた、植物を収容した状態で該植物を育成する育成室と、を備えており、該育成室は、前記植物を囲むように設けられた、光透過性部材からなる被覆部と、該被覆部内に配置された、該被覆部内に二酸化炭素を供給する二酸化炭素供給手段と、を備えており、該被覆部には、該被覆部内の空気と温室の空気とを換気するための換気部が設けられており、該被覆部は、該被覆部内の空気の湿度が、前記温室の空気の湿度よりも高く維持されていることを特徴とする。
第2発明の植物育成用施設は、第1発明において、前記換気部は、該育成室の換気回数が、前記温室の換気回数よりも少なくなるように形成されていることを特徴とする。
第3発明の植物育成用施設は、第1または第2発明において、前記被覆部を形成する光透過性部材は、該被覆部に照射された光を散乱し得る構造を有していることを特徴とする。
第4発明の植物育成用施設は、第1、第2または第3発明において、前記温室内には、前記被覆部の外面に対して水滴を噴霧する水噴霧手段が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
第1発明によれば、育成室の被覆部内に二酸化炭素供給手段から二酸化炭素を供給すれば、被覆部内の空気の二酸化炭素濃度、つまり、植物近傍の二酸化炭素濃度を高濃度の状態とすることができる。しかも、被覆部が光透過性部材によって形成されているので、育成室の被覆部内に収容されている植物を高二酸化炭素濃度の状態で光合成させることができるから、植物の成長を促進させるとともに収穫量を増大させることができる。そして、被覆部内の空気の湿度が温室の空気の湿度よりも高いので、被覆部を換気すると、被覆部内に供給される熱以上の熱を外部に排出させることができる。よって、日射量の多い夏場などあっても、被覆部内を植物が生育可能な気温に維持することができる。
第2発明によれば、被覆部の換気回数が温室の換気回数よりも少ないので、被覆部内の空気の二酸化炭素濃度の低下を抑えることができ、温室の空気に対して、直接、二酸化炭素ガスを供給する場合と比較して、少量の二酸化炭素施用で、高二酸化炭素濃度条件を維持することができる。
第3発明によれば、育成室の被覆部に照射された光は被覆部において散乱するので、被覆部内の植物体全体に対してまんべんなく光を当てることができる。しかも、被覆部の側面の位置に照射される光等、被覆部が無ければ植物に入射しない光も、被覆部に当たって散乱光化させることによって植物に供給できるから、植物に効率よく光合成をさせることができる。
第4発明によれば、被覆部の外面に噴霧された水滴が蒸発することによって被覆部の気温を低下させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態の植物育成用施設1の温室2内の概略説明図である。
【図2】育成室10の単体概略説明図であって、(A)は縦断面図であり、(B)は部分側面図である。
【図3】本実施形態の植物育成用施設1の温室2の概略外観図である。
【図4】育成室の換気特性を調べた実験結果を示した図である。
【図5】冬季において、育成室の空気の状態および温室の空気の状態を調べた実験結果を示した図である。
【図6】夏季において、育成室の空気の状態および温室の空気の状態を調べた実験結果を示した図である。
【図7】高二酸化炭素濃度条件での植物の光合成性質を調べた実験結果を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
本発明の植物育成用施設は、太陽光を利用しかつ二酸化炭素の施用を行いながら植物を育成する施設であり、施設内に太陽光によって供給される熱量が多い時期であっても、施設内の温度を植物の育成が可能な気温に維持しつつ、施設内を高二酸化炭素濃度の条件に維持できるようにしたことに特徴を有している。

【0014】
(植物育成用施設の説明)
図1に示すように、本実施形態の植物育成用施設1は、屋外に設けられた温室2と、この温室2内に設けられた育成室10とを備えている。

【0015】
(温室2の説明)
まず、図3に示すように、温室2は、植物の栽培に使用される一般的な温室であり、例えば、ガラスやビニールなどによって壁や屋根が形成された建物である。この温室2には、天窓2aや窓等が設けられており、これらを開閉することによって、温室2内部の空気と外気の換気をすることができるようになっている。
なお、温室2の換気回数は、温室2自体の大きさや天窓2aの大きさ、天窓2aの開度、温室内外の気温、風速や風向等にもよるが、最大で1時間あたり約50~100回程度である。

【0016】
(育成室10の説明)
図1に示すように、温室2内には、複数の育成室10が設けられている。この育成室10は、植物Pを栽培するための空間10hを内部に有する被覆部11と、この被覆部11内に二酸化炭素を供給する二酸化炭素供給手段とを備えている。

【0017】
まず、被覆部11は、中空な空間10hを有する奥行き方向(図1では、紙面と直交する方向、以下、育成室10の軸方向という)に伸びた構造物である。
この被覆部11は、空気は通さないが光は透過する部材(例えば、農業用ポリ塩化ビニルフィルムや農業用ポリオレフィン系フィルムなど、以下、単に光透過性部材という)を素材とするシート状の部材によって形成されている。
この被覆部11には、被覆部11に囲まれた空間10hの空気を温室2の空気と置換する、いわゆる換気を行うための換気部が設けられている。
つまり、被覆部11は、内部の空間10hを外部(つまり、温室2内の空間)からある程度気密に隔離された状態に保ちつつ、換気部を介して空間10hと温室2内の空間との間でガス交換ができるように構成されているのである。
なお、換気部は、空間10hの空気を温室2の空気と置換することができる構成であれば、とくに限定されず、例えば、被覆部11を構成するシートの継ぎ目に形成された隙間や、シートに設けられた貫通孔などによって構成することができる。

【0018】
この育成室10の被覆部11内の空間10h内には、その軸方向に沿って伸びた栽培ベッド14が設けられている。この栽培ベッド14は、図示しないワイヤーなどによって育成室10内の空間10hに吊り下げられた状態(つまり、温室2の床面から離れた(浮いた)状態)で設置されており、この栽培ベッド14に植物Pが栽培されている。つまり、栽培ベッド14内に根をはった状態で、植物Pは栽培ベッド14から上方に伸びるように育成室10内の空間10h内で成長するのである。
なお、育成室10内の空間10h内には、栽培ベッド14に対して、肥料(例えば、液体肥料)や水などを植物Pに供給するための配管が設けられており、肥料や水を適宜植物Pに供給できるようになっている。

【0019】
図1および図2に示すように、育成室10内の空間10hには、育成室10内に二酸化炭素を供給するための二酸化炭素供給手段の二酸化炭素供給配管15が設けられている。この二酸化炭素供給配管15は、育成室10の軸方向に沿って配設されており、その軸方向の適所に二酸化炭素供給配管15内から二酸化炭素を排出する二酸化炭素排出部15aが設けられている(図2(B)参照)。

【0020】
以上のごとく、本実施形態の植物育成用施設1では、被覆部11がいずれも光透過性部材によって形成されたシートで構成されているので、空間10h内の植物Pに被覆部11を透過した太陽光を照射させることができる。つまり、育成室10の被覆部11に囲まれた空間10h内に収容された状態で植物Pを栽培しても、植物Pに光合成をさせることができるのである。
しかも、育成室10の被覆部11に囲まれた空間10h内に二酸化炭素供給配管15が配設されており、この二酸化炭素供給配管15に設けられている二酸化炭素排出部15aから空間10h内に二酸化炭素を供給することができる。このため、空間10h内の二酸化炭素濃度、つまり、植物P近傍における空気の二酸化炭素濃度を高濃度の状態とすることができる。具体的には、植物P近傍の二酸化炭素濃度を、大気や育成室10外の温室2内の空間における二酸化炭素濃度よりも高濃度の状態とすることができる。
すると、本実施形態の植物育成用施設1では、育成室10の被覆部11に囲まれた空間10h内において、二酸化炭素濃度の高い状態で植物Pに光合成をさせることができるので、植物Pの光合成を活発な状態に維持することができる。

【0021】
したがって、本実施形態の植物育成用施設1において植物Pを栽培した場合には、通常の露地栽培や温室内で植物Pを栽培する場合や、一般的な温室内で二酸化炭素を施用しながら植物Pを栽培する場合に比べて、植物Pの成長を促進させることができる。

【0022】
(植物Pの高二酸化炭素濃度における継続的育成)
また、二酸化炭素の濃度が高い状況において、植物Pを継続的に育成すれば、一般的な環境において栽培した植物にスポット的に二酸化炭素を施用する場合に比べて、二酸化炭素を施用とした際の光合成能力を高くすることができる。
よって、本実施形態の植物育成用施設1において植物Pを継続的に栽培すれば、二酸化炭素を施用した場合における植物Pの光合成能力を高くすることができるから、二酸化炭素を施用しながら栽培することによって、植物Pの成長をより一層促進させることができる。

【0023】
(SPAコンセプトに基づく育成)
とくに、空間10h内に、二酸化炭素濃度計や、光強度を測定する光強度計、湿度計、温度計等を設けておき、これらの測定値に基づいて空間10h内に二酸化炭素を供給する量を調整すれば、効率よく二酸化炭素を施用することができ、効率よく植物Pを育成させることができる。
例えば、上記の計測器を設け、かつ、二酸化炭素供給手段や栽培ベッド14に肥料や水を自動的に供給する手段を設けておき、計測器の測定値に基づいて二酸化炭素供給手段等の作動をコントロールする制御装置を設けておく。そして、制御装置に、事前に計測された生体情報に基づいて推定される栽培される植物Pの光合成能力と、その能力を発揮させる適切な環境情報との関係を示すデータ等を記録させておく。すると、制御装置が二酸化炭素供給手段等を作動させることによって、リアルタイムに計測される環境情報(光強度,気温,湿度等)に対応して適正な量の二酸化炭素を空間10h内に供給することができる。つまり、空間10h内に、Speaking Plant Approach(SPA)コンセプトに基づいた二酸化炭素施用を行うことができるので、より一層効率よく植物Pを育成させることができる。とくに、空間10hの容積が小さい場合(例えば、従来の温室全体の約40%程度)、二酸化炭素の濃度を供給してから設定した二酸化炭素濃度に達するまでの時定数が小さくなる。すると、時々刻々と変化する太陽光強度に追従した二酸化炭素濃度制御も可能となる。具体的には、雲などで一時的に光が弱くなった場合などに、二酸化炭素投入量を一時的に少なくすることもできる。

【0024】
(各部の説明)
なお、上述した二酸化炭素排出部15aには、例えば、ノズルや二酸化炭素供給配管15に設けられた孔などを利用することができるが、二酸化炭素供給配管15内から育成室10内の空間10hに二酸化炭素を排出できる機構を有するものであれば、とくに限定されない。
また、二酸化炭素供給配管15に二酸化炭素を供給する方法もとくに限定されない。例えば、二酸化炭素が充填されたボンベと二酸化炭素供給配管15とを制御弁や流量計等によって連結した構造とすれば、制御弁や流量計等を操作することによって、二酸化炭素の供給停止や二酸化炭素の供給量を手動または自動で調整することができる。
さらに、栽培ベッド14に肥料や水を自動的に供給する手段も、とくに限定されない。例えば、栽培ベッド14に設けられた配管と水道管とを制御弁や流量計等によって連結した構造とすれば、制御弁や流量計等を操作することによって、肥料や水の供給停止や供給量を手動または自動で調整することができる。もちろん手動で制御弁等を操作して、栽培ベッド14に供給する肥料や水の量や、肥料や水を供給するタイミング等を調整してもよいのは、いうまでもない。

【0025】
(被覆部11のシートの材料について)
また、被覆部11のシートの材料は、光透過性部材であればとくに限定されないが、シートの材料として、その表面に照射された光を透過するとともに散乱し得る構造を有しているものが好ましい。
かかるシートによって被覆部11を形成すると、被覆部11に照射された光がシートを透過するとともに散乱するので、被覆部11内の植物のどの部分にもほぼ均一な強度の光を当てることができる。例えば、一枚の葉において、照射される光の強度の場所による差を少なくすることができる。
しかも、被覆部11の側面の位置に照射される光等は、被覆部11が無かった場合には植物Pに照射されることがなく温室2の床面に到達してしまう光であるが、被覆部11があることによって、かかる光も被覆部11で散乱光化させることによって植物Pに入射させることができる。

【0026】
なお、上記のごとき被覆部11とした場合、葉の場所によっては、その部分照射される光強度が被覆部11を設けない場合に比べて弱くなる部分ができ、その部分の光合成量は被覆部11を設けない場合に比べて少なくなる。しかし、上記のごとき被覆部11がなかった場合において照射される光強度が弱かった部分では、その部分に照射される光強度が強くなるし、また、被覆部11がなかった場合にはほとんど光が当たっていなかった部分にも光を当てることができる。このため、光合成量が少なかった部分の光合成量を増加させることができ、ほとんど光合成を行っていなかった部分も光合成させることができるので、植物P全体の光合成量を増加させることができる。

【0027】
かかる効果を奏するシートの材料としては、例えば、梨地肌の光透過性部材を挙げることができるが、上記効果を奏する材料であればよく、シートの材料はとくに限定されない。
また、シート材料に入射した光を散乱させることによって、本来植物Pに照射されなかった光を利用する上では、被覆部11の側面、つまり、被覆部11において植物Pの側方に位置する部分の面積が大きい方が好ましい。なぜなら、植物Pの側方を通過する光は植物に照射される可能性が低いからである。
そして、植物Pが一般的に上方に伸びることが多いことを考慮すれば、被覆部11は上下方向に長い形状を有していれば、被覆部11で散乱する光の利用効率を高くすることができると考える。

【0028】
(温度維持)
ところで、温室2では、その内部と外部との間の空気の流れが制限されており、温室2内の空気はある程度の期間は温室2内に保持される。このため、温室2に照射される太陽光の熱エネルギーによって、温室2の気温は外気の気温よりも高くなるから、温室2内の気温が、植物Pの栽培に適さない温度まで上昇する可能性がある。このため、一般的な温室2では、温室2の気温が上がりすぎないように、天窓2aを開閉して換気を行って気温を調節している。例えば、温室2は、換気を行うことで、その内部の気温が外気の気温と同程度(例えば、外気の気温の±5度程度)となるように調節している。

【0029】
本実施形態の植物育成用施設1では、温室2内に、複数の育成室10を設けており、この育成室10の被覆部11に囲まれた空間10h内において植物Pを栽培している。この育成室10の被覆部11にも、被覆部11に囲まれた空間10h内の空気を換気する換気部が設けられているものの、空間10hの気温を下げることができない可能性がある。例えば、太陽光によって供給される熱量が大きい場合、例えば、夏場等では、たとえ温室2の気温を外気の気温と同程度に調節できても、空間10hの気温は下げることができない可能性がある。つまり、空間10hの気温が植物Pの栽培に適さない温度まで上昇する可能性がある。
この場合、被覆部11を大きく開放して、空間10hの換気回数を大きくすれば、温室2の気温と同等程度に空間10hの気温を低下させることができると考えられるが、空間10hに供給された二酸化炭素も温室2内に逃げてしまい、空間10hの二酸化炭素の濃度を高く維持することが困難になる。

【0030】
しかし、本実施形態の植物育成用施設1では、空間10hの空気の湿度が、温室2の空気の湿度よりも高く維持されている。このため、空間10hの換気回数を大きくしなくても、空間10hの気温が植物Pが生育不可能となる温度まで上昇することを防ぐことができる。つまり、空間10hの気温を植物Pが生育可能な気温に維持しつつ、空間10hの空気を高二酸化炭素濃度の状態に維持できるのである。
その理由は、以下の通りである。

【0031】
まず、空間10hの空気と温室2の空気が換気される場合、空間10hから温室2に排出される空気(以下、排出空気という)の流量と、温室2から空間10hに流入する空気(以下、流入空気という)の流量はほぼ同じになる(流入空気と排出空気において両者の気温と絶対湿度が同一ではない場合には、厳密に言えば、流入空気と排出空気の体積は異なるが、それ程大きな差は生じない)。
すると、空間10hの空気の湿度が温室2の空気の湿度よりも高くなっていれば、両者の気温が同じである場合、流入空気によって空間10hに持ち込まれる流入熱量よりも、排出空気によって空間10hから持ち去られる排出熱量の方が大きくなる。
また、植物Pからの蒸散やその他の水の蒸発も生じているため、水が気化する際にも空間10hの熱エネルギーが消費される。なお、植物Pからの蒸散やその他の水の蒸発は、空間10hの空気の湿度の上昇にも寄与する。

【0032】
すると、流入熱量と排出熱量との差と、気化熱の合計が、太陽光によって空間10hに供給される熱量よりも大きいまたは同等であれば、空間10hの空気の気温を、温室2内の空気の気温とほぼ同等に維持することができる。
しかも、空間10hの空気の換気回数が少なく維持されているので、空間10hの気温を植物Pの育成に適した温度に維持しつつ、空間10hの空気の二酸化炭素濃度を高く維持することができるのである。

【0033】
なお、上記原理で空間10hの気温を維持するために、空間10hの空気の湿度を温室2内の空気の湿度よりも高く維持する必要がある。
上述したように、通常は、空間10hで栽培されている植物Pからの蒸散やその他の水の蒸発だけでも、空間10hの空気の湿度は温室2内の空気の湿度よりも高く維持することができる。
しかし、植物Pが栽培開始直後などの小個体であり、そこからの蒸散量が、空間10hの空気の湿度を高くするには不十分な場合などには、植物Pからの蒸散などだけでは、空間10hの空気の湿度を温室2の空気の湿度よりも高く維持できない場合がある。
よって、かかる場合でも、空間10hの空気の湿度を温室2の空気の湿度よりも高く維持するのであれば、空間10h内に、空間10hの空気の湿度を調整する湿度調整手段を設けておくことが好ましい。

【0034】
例えば、湿度調整手段として、空間10h内に水を噴霧する機能を有する装置を設けておけば、空間10hの空気の湿度を温室2の空気の湿度よりも高い状態に維持することができる。
とくに、空間10hの換気回数等が把握できていれば、温室2の気温と空間10hの気温、および、空間10hに入射する日射量を測定することによって、最適な熱交換が達成されるように、湿度調整手段によって空間10hの湿度を調整することも可能となる。

【0035】
上述したように、空間10hは、被覆部11によって温室2内とある程度隔離されているので、通常、空間10hで栽培されている植物Pからの蒸散によって、空間10hの空気の湿度は温室2内の空気の湿度よりも高く維持されている。よって、通常の植物Pの栽培状態で、上記原理に基づく温度維持が可能な程度に空間10hの空気の湿度が維持できるのであれば、湿度調整手段による湿度調整は行わなくてもよいし、特別な湿度調整手段を設けなくてもよい。しかし、湿度調整手段を設けておけば、空間10hの空気の湿度の調整、言い換えれば、空間10hの気温調整の自由度が高くなるという利点が得られる。

【0036】
(水噴霧手段の説明)
なお、上記原理に基づく温度維持だけでは、空間10hの気温を植物Pが生育可能な温度まで低下させることが難しい条件が想定される場合には、温室2内に、被覆部11の外面に対して水滴を噴霧する水噴霧手段を設けることが好ましい。具体的には、温室2内の天井や壁面等に、水滴を被覆部11の外面に対して吹きつけることができる、例えば、ノズル等を設けておくことが好ましい。
かかる水噴霧手段を設ければ、被覆部11表面に付着した水の気化熱などによって、被覆部11自体を冷却するとともに、被覆部11を介して、被覆部11内の内側に接する空間10hの空気の熱を直接奪って空間10hの気温を下げることができる。

【0037】
なお、上記のごとき水噴霧による冷却効果を得る上では、被覆部11の表面積が十分に大きい方が好ましい。植物Pは一般的に上方に伸びることが多いことを考慮すれば、被覆部11は上下方向に長い形状を有していれば、水噴霧による冷却効果を高くすることができると考える。
ただし、この水噴霧により温室2内の空気の湿度が上昇してしまっては、空間10hの換気による排熱の効率が低下するため、温室2自体の換気回数も考慮して、噴霧する水量は調節される。

【0038】
(被覆部11の説明)
とくに、被覆部11は、空間10hの換気回数が、温室2の換気回数の約1/10~1/5程度の換気回数、つまり、1時間あたり5回~20回程度となるような構造を有するものが好ましい。
空間10hの換気回数が、1時間あたり5回よりも少ない場合には、太陽光によって供給される熱量が大きい条件において、空間10hの気温を十分に低下させることができなくなる。このような場合、空間10hの空気を、電気エネルギー等を用いて冷却する設備が必要となる。
一方、換気回数が1時間あたり20回よりも多い場合には、空間10hへの二酸化炭素の供給量を多くしても、空間10hの空気の二酸化炭素濃度を高く維持することが困難になる。
よって、空間10hの空気の二酸化炭素濃度を高く維持しつつ、換気による空間10hの気温を調節する機能も発揮させる上では、空間10hの換気回数が1時間あたり5~20回であることが好ましい。

【0039】
なお、換気回数は、公知の方法で測定可能である。例えば、CO2ガス濃度の変化に基づいて換気回数を推定するCO2トレーサ法や、流入熱量(日射,換気による流入熱,地面からの流入熱)を測定し、かつ、室内の気温,湿度を測定することで、換気回数を推定する熱収支法などで換気回数は推定することができる。

【0040】
上記のごとき条件を満たす被覆部11として、以下のごとき上部被覆部13と下部被覆部12とを有する構造のものを挙げることができる。
以下、上部被覆部13と下部被覆部12とを有する被覆部11について説明する。

【0041】
図2に示すように、被覆部11は、断面視U字状に形成された下部被覆部12と、この下部被覆部12の上方に設けられた上部被覆部13とから構成されている。

【0042】
(上部被覆部13の説明)
上部被覆部13は、上部シート13aと一対の端部シート13b,13bとから構成されている。

【0043】
上部シート13aは、光透過性を有する素材によって形成されたシート材料であり、温室2の天井に水平に張られた3本のワイヤー(または、パイプ)W1~W3に掛けられている。上部シート13aが掛けられる3本のワイヤーW1~W3は、育成室10の軸方向に沿って張られており、中央のワイヤーW2が他のワイヤーW1、W3よりも高い位置に位置するように配置されている。このため、上部シート13aは、幅方向(図1および図2(A)では左右方向)の中央がワイヤーW2によってその両端部よりも高く、その両端部がワイヤーW1、W3から下方に垂れ下がった屋根型の形状となるのである。

【0044】
また、一対の端部シート13b,13bは、上部シート13aと同じ素材によって形成されたシート材料である。この一対の端部シート13b,13bは、前記上部シート13aにおける育成室10の軸方向の両端部に設けられており、上部シート13aの端部を塞ぐように設けられている。

【0045】
よって、上部被覆部13には、上部シート13aと一対の端部シート13b,13bによって囲まれた、下部に開口を有する空間13hが形成されるのである。
なお、一対の端部シート13b,13bを設けずに、上部シート13aにおける育成室10の軸方向の両端部を垂らしたり、端縁を連結したりするなどの方法によって、上部シート13aの端部を塞いでも、空間13hを形成することができる。

【0046】
(下部被覆部12の説明)
下部被覆部12は、一対の側方シート12a,12aの下端部を連結して、断面視略U字状に形成されたものである。

【0047】
一対の側方シート12a,12aは、光透過性を有する素材によって形成されたシート材料である。この一対の側方シート12a,12aは、その上端部が温室2の天井に水平に張られた2本のワイヤー(または、パイプ)W4,W5に取り付けられており、その上端部から下方に垂らした状態となるように設けられている。

【0048】
一対の側方シート12a,12aが取り付けられる2本のワイヤーW4,W5は、育成室10の軸方向に沿って張られており、水平方向において、ワイヤーW4はワイヤーW1とワイヤーW2の間に、また、ワイヤーW5はワイヤーW2とワイヤーW3の間に、それぞれ位置するように配設されている。そして、2本のワイヤーW4,W5は、いずれも上部シート13aにおいて、ワイヤーW1、W3から下方に垂れ下がった両端部の下端よりも上方に位置するように設置されている。このため、一対の側方シート12a,12aは、その上端が上部被覆部13によって形成される空間13h内に位置するように設置されるのである。

【0049】
また、一対の側方シート12a,12aは、その垂直方向の長さが2本のワイヤーW4,W5から栽培ベッド14の下端までの距離よりも長くなっており、両者の下端同士が栽培ベッド14の下方で連結されている。なお、一対の側方シート12a,12aの下端部同士は、気密とならないように連結されているが、その理由は後述する。

【0050】
そして、一対の側方シート12a,12aは、育成室10の軸方向の両端部において、両者の両端部間の開口を塞ぐように互いに連結されている。

【0051】
上記のごとき形状であるから、下部被覆部12には、一対の側方シート12a,12aによって囲まれ、上端に開口を有しかつその開口が上部被覆部13によって覆われた、栽培する植物Pが配置される空間12hが形成されるのである。
なお、下部被覆部12は、一対の側方シート12a,12aの両端部を互いに連結しているが、一対の側方シート12a,12aの端部同士を連結する端部シートを設けてもよく、一対の側方シート12a,12aの両端部に大きな開口部が形成されないようになっていればよい。

【0052】
(被覆部11全体の効果)
以上のごとく、被覆部11は、その下部被覆部12および上部被覆部13が上記のごとき形状かつ、上記のごとき配置となるように形成されているので、空間10hを、温室2内の空間から隔離された空間とすることができる一方、空間10hの空気の換気も行うことができる。

【0053】
具体的には、一対の側方シート12a,12aの上端と上部シート13aの両端部との間には隙間(以下、上部隙間という)が形成されており、また、下部被覆部12には、一対の側方シート12a,12aの下端部同士が気密とならないように連結されて空間10hと外部(温室2内)とが通じる隙間(以下、下部隙間という)が形成されている。このため、下部隙間と上部隙間を介して、空間10h内の空気を温室2内に排出させることができるとともに温室2内の空気を空間10h内に流入させることができる。

【0054】
しかも、上部隙間や下部隙間は、両者の開口面積を合わせた総面積が被覆部11の表面積に比べて非常に小さいので(例えば、1/100以下)、下部隙間と上部隙間を介して空間10hと温室2との間を通過する空気の流量は空間10hの容積に比べて小さくなる。
よって、空間10hの換気回数を温室2の換気回数よりも少なく、好ましくは、空間10hの換気回数を1時間あたり5~20回程度とすることができるのである。

【0055】
なお、被覆部11の表面積に対する上記総面積の割合は、上記範囲に限られず、空間10hの換気回数を1時間あたり5~20回程度に維持することができる程度であればよい。
また、下部被覆部12や上部被覆部13には、上部隙間や下部隙間以外にも隙間があり、その隙間を通した換気も行われている。かかる上部隙間や下部隙間以外の隙間は、空間10hの換気回数を上記のごとき範囲に維持することができるのであれば、その隙間が形成される位置やその大きさはとくに限定されないし、被覆部11が、上部隙間や下部隙間以外の隙間が全く有し無いように形成されていてもよい。

【0056】
そして、空間10hの換気が上記のごとき条件で行われるので、空間10hの空気が換気されていても、空間10hの空気の二酸化炭素濃度を高く維持することができ、空間10hに供給する二酸化炭素量を少なくしても、空間10hの空気の二酸化炭素濃度を高くすることができる。例えば、温室2が天窓2aを全開にして盛んに換気を行っている場合でも、空間10hの空気の二酸化炭素濃度を1000ppm以上に維持することができる。

【0057】
なお、下部被覆部12の各側方シート12aは、それぞれ一枚のシートで形成してもよいが、2枚以上のシートで形成し、カーテンのように開閉できるような構造としてもよい(図2(B)参照)。かかる構造とすれば、2枚のシートを連結する部分(連結分離できる箇所)の気密性は低くなるものの、栽培する作物の手入れなどが行い易くなるという利点が得られる。

【0058】
また、下部被覆部12の形状はU字状に限定されず、被覆部11によって、空間10hの空気を温室2内の空気からある程度隔離されていればよい。例えば、一対の側方シート12a,12aが直線的に伸ばされてその下端が温室2の床面に接するような形状となっていてよい。
そして、このように一対の側方シート12a,12aを設けた場合には、各側方シート12aをその下端から巻き上げることができるような構造とすることが好ましい。つまり、各側方シート12aがロールカーテンのような構造としてもよい。すると、一対の側方シート12a,12aを巻き上げれば、各側方シート12aを巻き上げた開口から被覆部11内の植物Pに接近することができるから、栽培する作物の手入れなどが行い易くなるという、利点が得られる。
同様に、上部被覆部13の幅方向の両端部も巻き上げることができるようになっていてもよい。この場合には、両端部も巻き上げ量を調整すれば、上述した上部隙間を通した空気の流入排出を調整することができるという利点が得られる。つまり、巻き上げ量を少なくすれば(言い換えれば、側方シート12aと重なる長さを長くすれば)、上部隙間を通した空気の流入排出が行いにくくなり、換気回数を少なくできる。逆に、巻き上げ量を大きくすれば(言い換えれば、側方シート12aと重なる長さを短くすれば)、上部隙間を通した空気の流入排出が行いやすくなり、換気回数を多くできる。

【0059】
さらに、上記例では、下部被覆部12および上部被覆部13の軸方向の端部をそれぞれ別々なシート等によって塞ぐ構造を説明したが、下部被覆部12および上部被覆部13の軸方向の端部は一枚のシートによって塞いでもよい。具体的には、上部被覆部13の軸方向の端部を上部被覆部13の上方から覆い、かつ、その下端が下部被覆部12の下端まで伸びたシートを設ければ、このシートによって、下部被覆部12および上部被覆部13の軸方向の端部を塞ぐことができる。
【実施例1】
【0060】
本発明の植物育成用施設の有効性を確認するために、(1)育成室の換気特性、(2)育成室内の二酸化炭素濃度維持能力、(3)気温維持機能、(4)高二酸化炭素濃度条件における植物の光合成能力、を確認した。
【実施例1】
【0061】
実験に使用した設備は、以下のとおりである。
【実施例1】
【0062】
まず、温室は、幅約20m、高さ約5m、奥行き約20m(容積20,000m)の天井がガラス張りで、側面が農業用ポリオレフィン系フィルム張りのものである。なお、天井には換気用の換気窓を備えたものであり、この換気用の窓を利用した場合の換気回数は、最大で1時間あたり約50~100回程度と推定される。
育成室は、上述した上部被覆部および下部被覆部を有する被覆部によって植物を栽培するための空間が形成されたものであり、幅1.2m(下部被覆部の幅)、高さ3m、奥行き5.3m(容積約19m)である。被覆部は、梨地の農業用ポリオレフィン系フィルム(シーアイ化成株式会社)によって形成した。
なお、温室内には、上記育成室を1列並べて配置している。
【実施例1】
【0063】
温室内の二酸化炭素濃度および光強度は、ぞれぞれ、COセンサ(Visala社製、型番:GMW22、および、LI-COR社製、型番:LI-640)、光強度計(英弘精機株式会社製、型番:ML-020VM)によって測定した。
また、気温および相対湿度は、自作した2本の銅-コンスタンタン熱電対(T型熱電対)を用いて乾球温度および湿球温度を測定し、これらの値から算出した。
同様に、育成室内の二酸化炭素濃度、光強度、気温、相対湿度も、それぞれ上述の温室内の測定と同様の装置と方法を用いて測定した。
【実施例1】
【0064】
また、育成室内への二酸化炭素施用は、育成室内にノズルを1.5m間隔で設置した配管を設け、このノズルから二酸化炭素を噴出させて供給した。
なお、配管への二酸化炭素ガスの供給は、二酸化炭素ボンベを用いた。この二酸化炭素ボンベによる二酸化炭素ガス供給能力は最大で200kg CO2/ha/h であり、上述した育成室に対しては、最大で約1.5L/min.で供給した。
【実施例1】
【0065】
(1)育成室の換気特性
まず、育成室内の換気特性は、COトレーサガス法によって確認した。つまり、育成室内に二酸化炭素ガスを多量に供給し、育成室内の二酸化炭素ガス濃度が3000ppmから1500ppmとなるまでの時間を確認した。なお、換気回数測定のための二酸化炭素濃度を3000ppmから1500ppmとしたのは、育成室内の植物の呼吸や光合成の影響を小さくするためである。
図4に示すように、2回の測定を行ったところ、1回目で約230秒、2回目では約220秒の時間がかかっており、この結果から、育成室の1時間当たりの換気回数を算出すると、1時間当たり約11回程度となった。
以上の結果から、本発明の植物育成用施設では、育成室の換気回数を、温室の換気回数よりも少なくできていることが確認できた。
【実施例1】
【0066】
(2)育成室内の二酸化炭素濃度維持機能
つぎに、育成室の二酸化炭素濃度維持機能を確認した。
実験では、温室の換気窓を全開にした状態で、育成室内に二酸化炭素を1.5L/min.の流量で供給し、温室内と育成室内の空気の二酸化炭素濃度の経時変化を計測した。
図5(d)、図6(h)に示すように、育成室内は、二酸化炭素の供給を開始した直後から二酸化炭素濃度が上昇し、二酸化炭素の供給を停止するまで、二酸化炭素濃度は約1000ppm以上に維持されている。
一方、温室の空気では、育成室内に二酸化炭素の供給を開始している間でも、二酸化炭素濃度は変化せず、測定期間中ほぼ一定である。
以上の結果より、本発明の植物育成用施設では、温室の状況(換気など)に関わらず、二酸化炭素の供給量が少なくても、育成室内の二酸化炭素濃度を高く維持できることが確認できた。
【実施例1】
【0067】
(3)気温維持機能
つぎに、育成室の気温維持機能を確認した。
実験では、夏場の晴天の日における育成室の気温と、温室の気温とを比較した。
日射によって温室に供給される熱量は3MJ/m2/hであり、育成室に入射する日射量は1.5 MJ/m2/hであった。なお、この日の屋外の気温は30℃、湿度は45%であった。
【実施例1】
【0068】
育成室および温室の気温および湿度は、温室内の気温は32℃、湿度は50%であり、育成室内の気温は32℃、湿度は90%であった。つまり、育成室の気温が温室の気温と同等に維持されていると同時に、育成室の空気の湿度が温室の空気の湿度よりも高くなっていたことが確認できた。
【実施例1】
【0069】
そこで、1時間当たり11回の換気が行われたと仮定して、育成室の熱収支を計算すると、育成室に供給される熱量は約4.1MJ/m2/hであり、育成室から換気によって排出される熱量は3.8MJ/m2/hとなる。
また、育成室の空気の湿度が90%であることを考えると、植物からの水の蒸散量が0.45kg/hであり、その気化熱が1.1MJ/m2/hである。
すると、育成室から換気によって排出される熱量と気化熱の合計(約4.9MJ/m2/h)は、育成室に供給される熱量とほぼ一致する。
【実施例1】
【0070】
以上の結果より、本発明の植物育成用施設では、育成室の空気の湿度が温室の空気の湿度よりも高くなっていれば、夏場の晴天の日においても、育成室に供給される熱量と育成室から排出される熱量とをほぼ同じにでき、育成室の気温を温室の気温や屋外の気温とほぼ同じ状態に維持できることが確認できた。
【実施例1】
【0071】
なお、図5および図6における、育成室および温室の空気の相対湿度と、育成室および温室の温度の経時変化を確認すると、冬季および夏季のいずれも、日中において、育成室の空気の相対湿度は温室の空気の相対湿度よりも高くなっており、育成室の気温と温室の気温の差は5度以下に抑えられている。この結果からも、育成室の空気の湿度が温室の空気の湿度よりも高くなっていれば、育成室の気温維持機能は有効に機能することが確認できる。
【実施例1】
【0072】
(4)高二酸化炭素濃度条件での植物の光合成性質
つぎに、高二酸化炭素濃度条件で植物を育成した場合の葉の光合成性質の変化を確認した。
実験では、2週間、二酸化炭素施用を行ったトマト(CO区)と、二酸化炭素施用をしなかったトマト(対照区)の個葉を対象として、携帯型光合成蒸散測定装置(LI-COR製、装置型番:LI-6400)を用いて光合成能力(光-光合成曲線)を測定した。
なお、CO区のトマトは、本発明の植物育成用施設において栽培、および、二酸化炭素施用を行った。使用したトマトの品種は、富丸ムーチョである。
また、光-光合成曲線測定時の二酸化炭素濃度は400ppmと1500ppmとした。
【実施例1】
【0073】
図7に示すように、高二酸化炭素濃度条件下(二酸化炭素施用を行っている場合を想定:1500ppm)では、CO区の光合成能力が対照区よりも顕著に大となっていることがわかる。
以上の結果より、二酸化炭素施用を行い、高二酸化炭素濃度条件で植物を継続して育成することによって、高い二酸化炭素濃度条件下においてより高い光合成能力を発揮することのできる葉が形成されることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明の植物育成用施設は、トマトやキュウリ、ナス、パプリカなどの植物を栽培する植物工場に適している。
【符号の説明】
【0075】
1 植物育成用施設
2 温室
10 育成室
10h 空間
11 被覆部
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図6】
3
【図4】
4
【図5】
5
【図7】
6