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明細書 :経口摂取が可能な天然成分由来の抗がん剤

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5288397号 (P5288397)
公開番号 特開2009-184999 (P2009-184999A)
登録日 平成25年6月14日(2013.6.14)
発行日 平成25年9月11日(2013.9.11)
公開日 平成21年8月20日(2009.8.20)
発明の名称または考案の名称 経口摂取が可能な天然成分由来の抗がん剤
国際特許分類 A61K  31/23        (2006.01)
A61K  31/231       (2006.01)
A61P  35/00        (2006.01)
FI A61K 31/23
A61K 31/231
A61P 35/00
請求項の数または発明の数 2
全頁数 9
出願番号 特願2008-028963 (P2008-028963)
出願日 平成20年2月8日(2008.2.8)
審査請求日 平成23年2月7日(2011.2.7)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504132881
【氏名又は名称】国立大学法人東京農工大学
発明者または考案者 【氏名】稲田 全規
【氏名】宮浦 千里
個別代理人の代理人 【識別番号】100107984、【弁理士】、【氏名又は名称】廣田 雅紀
【識別番号】100102255、【弁理士】、【氏名又は名称】小澤 誠次
【識別番号】100096482、【弁理士】、【氏名又は名称】東海 裕作
【識別番号】100123168、【弁理士】、【氏名又は名称】大▲高▼ とし子
【識別番号】100120086、【弁理士】、【氏名又は名称】▲高▼津 一也
【識別番号】100131093、【弁理士】、【氏名又は名称】堀内 真
審査官 【審査官】小堀 麻子
参考文献・文献 特開2007-291014(JP,A)
特開2003-018974(JP,A)
特開2001-158738(JP,A)
特開2002-114676(JP,A)
特開2003-321361(JP,A)
特開2009-120544(JP,A)
MACHO,A. et al,Non-pungent capsaicinoids from sweet pepper synthesis and evaluation of the chemopreventive and anticancer potential,Eur J Nutr,2003年,Vol.42, No.1,p.2-9
PYUN,B.J. et al,Capsiate, a nonpungent capsaicin-like compound, inhibits angiogenesis and vascular permeability via a direct inhibition of Src kinase activity,Cancer Res,2008年,Vol.68, No.1,p.227-35
調査した分野 A61K 31/00-33/44
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
式(I)で表される化合物、又は該化合物含有組成物を単独の有効成分とすることを特徴とする抗がん剤であって、前記がんが転移性悪性黒色腫である抗がん剤
【化1】
JP0005288397B2_000007t.gif


(式中、nは1~10の整数を表し、mは0又は1を表す)。
【請求項2】
式(I)で表される化合物がカプシエイト、ジヒドロカプシエイト、又はノルジヒドロカプシエイトであることを特徴とする請求項1に記載の抗がん剤。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、経口摂取が可能な天然成分由来の抗がん剤に関する。
【背景技術】
【0002】
がんは我が国の死因第一位の疾患であり、高齢化社会を迎え平均寿命の延伸が示される現代において、高齢者におけるがんの死亡人口は有効な抗がん剤の欠如により増加の一途を辿っている。がんは全ての臓器を原発巣として発症し、さらに転移したがん細胞が転移巣において増殖することにより、がんが全身に拡大する。がんに対する治療法としては、外科的療法や、放射線療法や、抗がん剤投与等の化学療法などが行われており、抗がん剤の作用としては、がん細胞の増殖抑制並びに原発巣及び転移巣でのがん細胞の拡大を防ぐことが必須であり、アルキル化剤、代謝拮抗剤、抗がん性抗生物質、植物アルカロイド等の薬剤が臨床に用いられている。しかしながら、これらの薬剤は、腫瘍細胞を死滅させるとともに正常細胞にも作用するため、その作用の特異性の低さにより、正常細胞の傷害と関連する臓器の機能阻害や、骨髄における造血抑制による身体衰弱などの副作用を伴うことがしばしば報告されている。がん治療薬の多くが治療効果以上に重篤な副作用を示し、絶対的な治療薬が開発されていないのが現状であり、副作用の少ない新薬開発が望まれている。
【0003】
一方、トウガラシはナス科の植物であり、食品、香辛料、及び医薬品原料として世界中で利用されている。その主要な辛味成分のカプサイシンは、バニリルアルコールと分岐不飽和脂肪酸がアミド結合しているバニリル脂肪酸アミドの一種であり、食欲増進作用、エネルギー代謝促進作用、殺菌作用、防腐作用、免疫力増加、脂肪燃焼などの様々な効果が知られている。また、これらの効果に加え抗がん作用についても報告されている(非特許文献1及び非特許文献2参照)。しかしながら、カプサイシンの強い辛味、刺激、又は炎症誘発作用により、用途は限られたものとなっている。
【0004】
他方、タイ国で入手したトウガラシの辛味品種「CH-19」から、辛味のないトウガラシ新品種「CH-19甘」が選抜固定され、カプサイシノイド様物質を多量に含有することが報告されており(非特許文献3参照)、かかるカプサイシノイド様物質について分離精製及び構造解析が試みられ、カプシエイト(4-ヒドロキシ-3-メトキシ-ベンジル-8-メチル-6-(E)-ノナノエート)及びジヒドロカプシエイト(4-ヒドロキシ-3-メトキシ-ベンジル-8-メチル-6-ノナノエート)が同定された(特許文献1及び2参照)。その後、カプシエイトなどを含有する鎮痛剤(特許文献3参照)、持久力向上用組成物(特許文献4参照)、抗掻痒組成物(特許文献5参照)、糖尿病血糖値低下組成物(特許文献6参照)等が提案されている。
【0005】
また、トウガラシに含まれるカロテノイドの一種であるカプソルビン又はその脂肪酸エステルが、肺がん細胞の増殖を抑制する活性を有する知見に基づいた、カプソルビン又はその脂肪酸エステルを有効成分とするがん細胞増殖抑制剤が提案されている(特許文献7参照)。
【0006】
さらに、トウガラシの辛味成分のカプサイシンのバニリルアミン構造がカプサイシンの生理作用発現に必要な生体内レセプターであるバニロイドレセプターに結合するという知見に基づき、またカプサイシンの持つ辛味、刺激性など副作用を排除するため、カプサイシンの8-メチル-6-ノネン残基を炭素原子数が14個以上のアシル基に置換して合成したバニリル脂肪酸アミドを主成分とする抗腫瘍医薬組成物が提案されている(特許文献8参照)。
【0007】

【特許文献1】特開平11-246478号公報
【特許文献2】特開2003-18974号公報
【特許文献3】特開2001-158738号公報
【特許文献4】特開2002-114676号公報
【特許文献5】特開2003-321361号公報
【特許文献6】特開2003-342172号公報
【特許文献7】特開2004-43418号公報
【特許文献8】特開2004-182674号公報
【非特許文献1】D.J. Morre et. al., Proc. Natl. Acad. Sci., 92, 1831-1835 (1995)
【非特許文献2】K.Takahata et. al, Life Science, 64, PL 165-171 (1999)
【非特許文献3】Yazawa et al.,J.Japan Soc. Hort. Sci., 58:601-607(1989)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
カプサイシンは上記のように、その投与に際し激しい焼熱感を惹き起こすといった刺激を伴い、またその辛味が強いためにその使用量等が制限され、医薬品としての用途はかなり限られたものであった。また、カロテノイドの一種であるカプソルビン又はその脂肪酸エステルのがん抑制効果は、肺がん細胞において確認されたのみであり、その全身的効果及び副作用は不明である。
【0009】
本発明の課題は、食品由来であって、胃腸障害などの副作用を起こすことなく、使用量等が制限されずに継続的な経口摂食が可能であり、かつ身体衰弱などの副作用を伴わずに全身的な強力な抗がん剤としての顕著な効果を有する、がんを予防・治療することができる抗がん剤等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、トウガラシに存在するカプシエイトに抗がん予防作用・治療作用があることを見い出した。すなわち、本発明は、辛くないトウガラシより精製分離された天然成分カプシエイトの経口摂取により、がん疾患モデルマウスにおいてがん細胞の増殖を抑制し、各臓器への転移と組織破壊を効果的に阻止するという、全身にわたる強力な抗がん剤の効能を示すことを確認した。また、その効果は医薬品として開発されている化合物と同等以上を示し、がんによる体重減少を有意に抑制し、継続的な経口投与が可能なものであった。本発明はこれらの知見に基づいて完成するに至ったものである。
【0011】
すなわち本発明は、[1]式(I)で表される化合物、又は該化合物含有組成物を単独の有効成分とすることを特徴とする抗がん剤であって、前記がんが転移性悪性黒色腫である抗がん剤
【0012】
【化1】
JP0005288397B2_000002t.gif

【0013】
(式中、nは1~10の整数を表し、mは0又は1を表す)や、[2]上記式(I)で表される化合物がカプシエイト、ジヒドロカプシエイト、又はノルジヒドロカプシエイトであることを特徴とする上記[1]に記載の抗がん剤に関する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によると、カプシエイトをはじめとするバニリル脂肪酸を有効成分とすることで、副作用が少なく、かつ、がんの治療効果が高いカプシエイトの新規な効果を有し、かつ日常的な経口摂取が可能ながんを予防・治療することができる顕著な効果を有する抗がん剤や、がんの予防・治療のために用いられるものである旨の表示が付された食品又は食品素材を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の抗がん剤としては、式(I)
【0019】
【化3】
JP0005288397B2_000003t.gif

【0020】
(式中、nは1~10の整数を表し、mは0又は1を表す)で表される化合物、又は該化合物含有組成物を有効成分とするものであれば特に制限されるものではなく、本発明のがんの予防・治療用の食品又は食品素材としては、上記式(I)で表される化合物、又は該化合物含有組成物を有効成分として含有するものであれば特に制限されるものではなく、ここでがんの予防・治療とは、がんの予防又は症状改善効果を発揮しうることをいう。
【0021】
上記式(I)で表される化合物において、m=1の場合、n=1~8が好ましく、n=2~6がより好ましく、n=3~5が特に好ましく、中でもn=4が最も好ましく、具体的には以下の式(II)で表されるカプシエイト(capsiate)を好適に例示でき、分岐不飽和脂肪酸部分の二重結合が、トランス型である4-ヒドロキシ-3-メトキシ-ベンジル-8-メチル-6-(E)-ノネノエートを特に好適に例示できる。
【0022】
【化4】
JP0005288397B2_000004t.gif

【0023】
また、上記式(I)で表される化合物において、m=0の場合、n=2~9が好ましく、n=3~8がより好ましく、n=4~7が特に好ましく、中でもn=5~6が最も好ましく、具体的には、以下の式(III)で表されるジヒドロカプシエイト(dihydrocapsiate)、又は以下の式(IV)で表されるノルジヒドロカプシエイト(nordihydrocapsiate)を好適に例示することができる。
【0024】
【化5】
JP0005288397B2_000005t.gif

【0025】
【化6】
JP0005288397B2_000006t.gif

【0026】
上記式(I)で表される化合物、又は該化合物含有組成物の製法としては、植物からバニリル脂肪酸エステルを分離・抽出する方法、上記式(I)に基づきバニリルアルコールと適宜選択された分岐不飽和脂肪酸より公知のエステル化反応で化学的に合成する方法などの公知の方法を含め特に限定されず、例えばトウガラシから上記化合物を得る方法としては、例えば前述の特許文献1や特許文献2記載の抽出方法を挙げることができ、また式(II)で表される本発明の化合物は、8-メチル-6-ノネン酸、好ましくは8-メチル-トランス-6-ノネン酸とバニリルアルコールを出発原料として合成できる。抽出を行う植物としては、かかる化合物を含む植物体であれば特に限定されないが、トウガラシ属の植物体が好ましく、甘みの強いトウガラシ属の品種を用いることがより好ましく、具体的にはトウガラシ種のCH-19甘、伏見甘長、パプリカ、ピーマン等を例示することができる。中でも、カプシエイトを多量に含有する品種であることが確認されているCH-19甘を用いることが好ましいが、カプシエイトを含有する二以上の品種との交配により作出されたカプシエイトを多量に含有する品種を用いてもよい。なお、上記式(I)で表される化合物含有組成物とは、式(I)で表される化合物が配合された各種の組成物など、人為的に式(I)で表される化合物含量が高められた式(I)で表される化合物の混在物をいう。
【0027】
本発明の抗がん剤が有効ながんとしては、悪性黒色腫(メラノーマ)、皮膚がん、肺がん、気管及び気管支がん、口腔上皮がん、食道がん、胃がん、結腸がん、直腸がん、大腸がん、肝臓及び肝内胆管がん、腎臓がん、膵臓がん、前立腺がん、乳がん、子宮がん、卵巣がん、脳腫瘍等の上皮細胞などが悪性化したがんや腫瘍、筋肉腫、骨肉腫、ユーイング肉腫等の支持組織を構成する細胞である筋肉や骨が悪性化したがんや腫瘍、白血病、悪性リンパ腫、骨髄腫、バーキットリンパ腫等の造血細胞由来のがんや腫瘍などを挙げることができ、原発巣以外の臓器への血行及びリンパ行性の浸潤と転移を阻止できるという点で、中でも悪性黒色腫(メラノーマ)を最も確実な例として挙げることができる。
【0028】
上記式(I)で表される化合物、又は該化合物含有組成物をがんの予防、治療薬等の医薬品として用いる場合は、薬学的に許容される通常の担体、結合剤、安定化剤、賦形剤、可溶化剤、溶解補助剤、等張剤などの各種調剤用配合成分を添加することができる。また、投与形態としては、例えば、懸濁液、粉末、顆粒、カプセル剤等を挙げることができ、その形態に応じて、例えば、静脈内、皮下、筋肉内、腹腔内等に注射することもできる他、経口投与及び鼻咽頭経由で投与してもよいが、上記式(I)で表される化合物はカプサイシンとは異なり、前述した通り人体の皮膚や内臓に殆ど刺激を与えないので、簡便に経口摂取が可能であり、また、その際、量的制限もほぼ無い点で、本発明では経口投与が最も好適である。投与量は、予防又は治療であるかの投与目的、投与方法、重篤度、患者の年齢等の諸条件に応じて適宜選定することができるが、経口投与の場合、上述した通り量的制限がほぼ無いので広範囲から場合に応じて選択することができるが、成人の場合で好ましくは1日あたり100mg~2gを例示することができる。
【0029】
また、上記式(I)で表される化合物は天然のトウガラシなどの食品に含有され、しかも人体に刺激を与えないことから、投与後の副作用の懸念は必要ないと判断され、実際に以下の実施例で同化合物を投与されたマウスには特段顕著な副作用は外見的にも解剖学的にも観察されなかった。
【0030】
また、上記式(I)で表される化合物、又は該化合物含有組成物を飲食品に添加することによりがんの予防、治療用の食品又は食品素材とすることができる。その実施態様として、式(I)で表される化合物を添加したことを特徴とし、がんの予防・治療のために用いられるものである旨の表示が付された食品又は食品素材;式(I)で表される化合物含有組成物を添加したことを特徴とし、がんの予防・治療のために用いられるものである旨の表示が付された食品又は食品素材;式(I)で表される化合物を添加した食品又は食品素材を、がん予防・治療用の食品又は食品素材として使用する方法;式(I)で表される化合物含有組成物を添加した食品又は食品素材を、がん予防・治療用の食品又は食品素材として使用する方法;式(I)で表される化合物を、がん予防・治療用の食品又は食品素材の配合剤として使用する方法;式(I)で表される化合物含有組成物を、がん予防・治療用の食品又は食品素材の配合剤として使用する方法;式(I)で表される化合物を食品又は食品素材に添加することを特徴とするがん予防・治療用の食品又は食品素材の製造方法;式(I)で表される化合物含有組成物を食品又は食品素材に添加することを特徴とするがん予防・治療用の食品又は食品素材の製造方法、等を挙げることができる。
【0031】
本発明のがんの予防・治療用の食品又は食品素材としては、例えば、ヨーグルト、ドリンクヨーグルト、ジュース、牛乳、豆乳、酒類、コーヒー、紅茶、煎茶、ウーロン茶、スポーツ飲料等の各種飲料や、プリン、クッキー、パン、ケーキ、ゼリー、煎餅などの焼き菓子、羊羹などの和菓子、冷菓、チューインガム等のパン・菓子類や、うどん、そば等の麺類や、かまぼこ、ハム、魚肉ソーセージ等の魚肉練り製品や、みそ、しょう油、ドレッシング、マヨネーズ、甘味料等の調味類や、チーズ、バター等の乳製品や、豆腐、こんにゃく、その他佃煮、餃子、コロッケ、サラダ等の各種総菜、栄養食品などを挙げることができる。なお、がんの予防・治療用とは、食品又は食品素材の包装容器や説明書等に、がんの予防や治療に有効である旨表示されている場合などを意味する。
【0032】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【実施例】
【0033】
[悪性黒色腫細胞B16細胞の転移実験]
マウス黒色腫B16細胞から選択された転移実験モデルとして確立し、リンパ行性、血行性に転移しやすく、結節状病変が全身のあらゆる部位に発生しうる悪性黒色腫B16細胞を用いて転移実験を行った。対数増殖期にある悪性黒色腫細胞B16細胞(RCB1283, RIKEN CELL BANK)を培養後に、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)に懸濁した。6週齢の雄性C57BL/6マウス(日本SLC株式会社より購入)に前記悪性黒色腫細胞B16細胞(2×10個)を尾静脈移入し、がん疾患モデルマウスとした。移入した日より1日1回、マウス体重1kgあたりカプシエイト(味の素株式会社製)5mgを前記がん疾患モデルマウスに経口ゾンデを用いて強制経口投与した。前記悪性黒色腫細胞を尾静脈移入後18日目に肺、肝臓、腎臓、リンパ節及び大腿骨の各組織を摘出した。肺、肝臓、腎臓、及びリンパ節については、それぞれ10%ホルマリン溶液に固定し、組織ごとにがん結節数を顕微鏡下で計数した。カプシエイトの代わりに生理食塩水を投与したものを対照がん疾患モデルマウスとした。
【0034】
また、上記カプシエイト投与がん疾患モデルマウス(B16+)と上記カプシエイト未投与対照がん疾患モデルマウス(B16-)とに加えて、悪性黒色腫細胞B16細胞を尾静脈移入していない通常マウスにカプシエイトの投与を行ったもの(通常+)とカプシエイトの投与を行っていないもの(通常-)との4種類のマウスにつき、摘出した大腿骨を70%エタノールにより固定後、高、低2種類のX線を照射し、その透過度の差から骨密度を計算するDEXA法(Dual Energy X-ray Absorptiometry:二重エネルギーX線吸収測定法)により骨密度を測定した。また、前記4種類のマウス群につき全身状態の評価として尾静脈移入後18日目で、各組織の摘出前に体重を比較した。なお、かかる4種類のマウス群については、実験前に平均大腿骨密度(31.0mg/cm)及び平均体重(23.1g)がほぼ同じであることを確認した。
【0035】
[結果]
上記カプシエイト投与がん疾患モデルマウス及び上記カプシエイト未投与対照がん疾患モデルマウスから摘出した肺のがん結節及び大腿骨の写真及びがん結節数を図1に示す。上記カプシエイト未投与対照がん疾患モデルマウスでは肺、肝臓、腎臓、リンパ節にがん細胞の著しいがん結節の形成が確認されたが、上記カプシエイト投与がん疾患モデルマウスから摘出した肺のがん結節の形成は抑制された。また、骨に形成されたがんについては、上記カプシエイト未投与対照がん疾患モデルマウスから摘出した大腿骨ではがん結節の形成と骨破壊が観察されたが、上記カプシエイト投与がん疾患モデルマウスではがん結節の形成と骨破壊を抑制した。
【0036】
前記カプシエイト投与がん疾患モデルマウス及びカプシエイト未投与対照がん疾患モデルマウスの2種類のマウスから摘出した肺、肝臓、腎臓及びリンパ節のがん結節数について図2のグラフに示す。有意差は、t検定を用いて求め、P値が0.05以下(*)又は0.001以下(**)であれば統計学的に有意差ありとした。カプシエイトは、肺、肝臓、腎臓、及びリンパ節におけるがん結節の形成を有意に抑制した。
【0037】
カプシエイト投与がん疾患モデルマウス(B16+)、カプシエイト未投与対照がん疾患モデルマウス(B16-)、カプシエイト投与通常マウス(通常+)、及びカプシエイト未投与通常マウス(通常-)の大腿骨密度を図2に示す。カプシエイト投与がん疾患モデルマウスの大腿骨密度は、通常マウス(通常+)及び通常マウス(通常-)と比較すると有意に低かった(p<0.001)が、カプシエイト未投与対照がん疾患モデルマウスと比較すると有意に高かった(p<0.05)。
【0038】
カプシエイト投与がん疾患モデルマウス(B16+)、カプシエイト未投与対照がん疾患モデルマウス(B16-)、カプシエイト投与通常マウス(通常+)、及びカプシエイト未投与通常マウス(通常-)の体重を図2に示す。カプシエイト投与がん疾患モデルマウスの体重は、通常マウス(通常+)及び通常マウス(通常-)と比較すると有意に低かった(p<0.001)が、カプシエイト未投与対照がん疾患モデルマウスとを比較すると有意に高かった(p<0.05)。
【0039】
がん疾患モデルマウスでは、がん原発巣から肺、肝臓、腎臓、リンパ節及び大腿骨への転移とがんの増殖が確認できたが、カプシエイトががんの転移と増殖の両方を抑制することを確認した。また、上記がん疾患モデルマウスでは各臓器へのがん侵襲による体重減少が観察されたが、カプシエイト投与により、体重減少が抑制されたと考えられる。
【0040】
以上の結果により、カプシエイトは、経口投与することにより、全身的に抗がん効果を有し、従来の抗がん剤使用による副作用としての体重減少は回避され、がん治療薬として有用であることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】B16細胞の尾静脈移入によるがんの結節数によるカプシエイトの影響を示す図である。カプシエイト未投与対照がん疾患モデルマウスから摘出した肺のがん結節及び大腿骨のがん結節、カプシエイト投与がん疾患モデルマウスから摘出した肺のがん結節及び大腿骨のがん結節の写真をそれぞれ示す。
【図2】B16細胞の尾静脈移入によるがんの結節数によるカプシエイトの影響を数値で示す図である。カプシエイト未投与対照がん疾患モデルマウス及びカプシエイト投与がん疾患モデルマウスから摘出した肺のがん結節数、肝臓のがん結節数、腎臓のがん結節数、及びリンパ節のがん結節数を示す。また、カプシエイト投与がん疾患モデルマウス(B16+)、カプシエイト未投与対照がん疾患モデルマウス(B16-)、カプシエイト投与通常マウス(通常+)、カプシエイト未投与通常マウス(通常-)の大腿骨密度及び体重を示す。
図面
【図1】
0
【図2】
1