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明細書 :高周波信号伝送装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4915747号 (P4915747)
公開番号 特開2009-246810 (P2009-246810A)
登録日 平成24年2月3日(2012.2.3)
発行日 平成24年4月11日(2012.4.11)
公開日 平成21年10月22日(2009.10.22)
発明の名称または考案の名称 高周波信号伝送装置
国際特許分類 H01P   5/02        (2006.01)
H01P   1/00        (2006.01)
FI H01P 5/02 603
H01P 1/00 Z
請求項の数または発明の数 3
全頁数 16
出願番号 特願2008-092956 (P2008-092956)
出願日 平成20年3月31日(2008.3.31)
審査請求日 平成23年2月23日(2011.2.23)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304020292
【氏名又は名称】国立大学法人徳島大学
発明者または考案者 【氏名】大野 泰夫
【氏名】奥山 祐加
個別代理人の代理人 【識別番号】110000338、【氏名又は名称】特許業務法人原謙三国際特許事務所
審査官 【審査官】岸田 伸太郎
参考文献・文献 特開2008-67012(JP,A)
特開平7-111407(JP,A)
特開平9-232822(JP,A)
国際公開第2004/095624(WO,A1)
調査した分野 H01P 5/02
H01P 1/00
H01P 1/20-205
特許請求の範囲 【請求項1】
異なる平面上に、閉曲線線路の一部が開放された構造もしくはスパイラル構造を有する共振器と、当該共振器に接続され、当該共振器に対して高周波信号の入出力を行う入出力線路とが形成されており、上記両平面上に形成された共振器同士を電磁結合させて、高周波信号を伝送させる高周波信号伝送装置であって、
上記高周波信号は上記共振器において定在波となる波長を有しており、
少なくとも1つの上記共振器において、上記定在波の節の部分に、低周波信号または直流電力を入力するための入力線路が接続されていることを特徴とする高周波信号伝送装置。
【請求項2】
異なる平面上に、閉曲線線路の一部が開放された構造もしくはスパイラル構造を有する共振器と、当該共振器に接続され、当該共振器に対して高周波信号の入出力を行う入出力線路とが形成されており、上記両平面上に形成された共振器同士を電磁結合させて、高周波信号を伝送させる高周波信号伝送装置であって、
上記共振器の線路長が、上記高周波信号の波長の(2n+1)/2倍(nは0以上の整数)であり、
低周波信号または直流電力を入力するための入力線路が、少なくとも1つの上記共振器に接続されており、
上記入力線路と上記共振器との接続点と当該共振器の中心とを結ぶ線と、当該共振器を(2n+1)分の1に等分割した線路の中点のうちのいずれかの点と当該共振器の中心とを結ぶ線とのなす鋭角が30/(2n+1)度以内であることを特徴とする高周波信号伝送装置。
【請求項3】
上記入力線路と上記共振器との接続点と当該共振器の中心とを結ぶ線と、当該共振器を奇数分の1に等分割した線路の中点のうちのいずれかの点と当該共振器の中心とを結ぶ線とのなす鋭角が20/(2n+1)度以内であることを特徴とする請求項2に記載の高周波信号伝送装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波信号を伝送する伝送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタルLSIのような半導体チップにおいて内部動作の高速化が進んでおり、内部クロック信号は、2GHzを超えるようになっている。しかしながら、このような高周波信号を半導体チップの外に取り出す際の速度は800MHz程度に留まっている。その理由は、半導体チップから樹脂やセラミックで作製された基板への信号取り出しを、ボンディングワイアなどの金属配線を用いて行うためである。これらの配線ではボンディングパッド、ボンディング配線が不安定な寄生容量や寄生インダクタンスを生じさせるため、この部分で高周波信号の劣化をもたらす。また、高周波信号を効率的に半導体チップの外に伝送するためには、インピーダンス整合の調整を精度よく行わなければ、反射や不要輻射のため伝送ロスが発生してしまう。特に、電気的接続を用いる装置では、接続の機械加工の精度や、接続の信頼性などの問題も発生する。また、機械的接続では低インピーダンスの線路が形成しにくく、出来たとしても微細な形状の変化で線路のインピーダンスが変化し、接続部での反射や不要放射のため良好な接続ができない。
【0003】
そこで、この問題を解決するため、高周波信号を非接触で送受信する技術が開発されている。特許文献1には、異なる平面上に形成された、閉曲線線路の一部が開放された構造を有する共振器同士を電磁結合させることで、共振器間で高周波信号を伝送させる技術が記載されている。

【特許文献1】特開2008-67012(2008年3月21日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような高周波信号を伝送する装置は、様々な回路において使用される。図20は、代表的なマイクロ波アンプの回路図である。回路図上では、キャパシタが高周波信号のみを通し、インダクタが直流電流のみを通す。低周波ではキャパシタやインダクタは個別部品で構成可能であるが、1GHz以上の高周波では純粋なキャパシタやインダクタは形成できない。特に図20に示すようにトランジスタを有する回路では、トランジスタへ直流電圧を印加する必要がある。このため、図20のキャパシタAまたはBの代わりに、特許文献1の高周波信号伝送装置を適用する場合、閉曲線線路の一部が開放された構造を有する共振器に、直流電力を送るための線路またはインダクタを介してグランドに接続するための線路を接続する必要がある。しかしながら、特許文献1の構造に単に直流電圧用の結線を行うだけでは、意図せぬ寄生効果で高周波信号の伝送が妨害されてしまう。
【0005】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、異なる平面上に形成された、閉曲線線路の一部が開放された構造を有する共振器同士を電磁結合させることで、共振器間で高周波信号を伝送させる装置であって、直流電力または低周波信号を送電可能であるとともに、共振器間で高周波信号を効率的に伝送可能である装置を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る高周波信号伝送装置は、上記課題を解決するために、異なる平面上に、閉曲線線路の一部が開放された構造もしくはスパイラル構造を有する共振器と、当該共振器に接続され、当該共振器に対して高周波信号の入出力を行う入出力線路とが形成されており、上記両平面上に形成された共振器同士を電磁結合させて、高周波信号を伝送させる高周波信号伝送装置であって、上記高周波信号は上記共振器において定在波となる波長を有しており、少なくとも1つの上記共振器において、上記定在波の節の部分に、低周波信号または直流電力を入力するための入力線路が接続されていることを特徴とする。
【0007】
上記の構成によれば、伝送すべき高周波信号が共振器に入力されると、定在波をなす。定在波の節の部分では、電圧振幅がほぼゼロである。この部分にいかなるインピーダンスの線路を接続しても電流が流れることがない。そのため、この部分に低周波信号または直流電力を入力するための入力線路を接続することで、当該入力線路ならびに当該入力線路に接続されるワイヤ、インダクタ、直流電源などがどのようなインピーダンスを有していたとしても、そのインピーダンスが共振器に与える影響は小さい。その結果、直流電力または低周波信号を送電可能であるとともに、共振器間で高周波信号を効率的に伝送可能である装置を実現することができる。
【0008】
なお、低周波信号とは、例えば60Hzの電力をこのDC入力回路を通して送り、高周波回路上の整流ダイオードでDC電力に変えるような場合である。
【0009】
また、本発明の高周波信号伝送装置は、上記の課題を解決するために、異なる平面上に、閉曲線線路の一部が開放された構造もしくはスパイラル構造を有する共振器と、当該共振器に接続され、当該共振器に対して高周波信号の入出力を行う入出力線路とが形成されており、上記両平面上に形成された共振器同士を電磁結合させて、高周波信号を伝送させる高周波信号伝送装置であって、上記共振器の線路長が、上記高周波信号の波長の(2n+1)/2倍(nは0以上の整数)であり、低周波信号または直流電力を入力するための入力線路が、少なくとも1つの上記共振器に接続されており、上記入力線路と上記共振器との接続点と当該共振器の中心とを結ぶ線と、当該共振器を(2n+1)分の1に等分割した線路の中点のうちのいずれかの点と当該共振器の中心とを結ぶ線とのなす鋭角が30/(2n+1)度以内であることを特徴とする。
【0010】
上記の構成によれば、共振器の線路長に2/(2n+1)を乗じた波長を有する高周波信号が共振器に入力したとき、当該高周波信号は共振器で定在波を形成するとともに、共振器を(2n+1)分の1に等分割した線路の中点は当該定在波の節となる。そして、入力線路と共振器との接続点と当該共振器の中心とを結ぶ線と、定在波の節と当該共振器の中心とを結ぶ線とのなす鋭角が30/(2n+1)度以内となる。30/(2n+1)度は、定在波の腹と節との間の角度の1/6に相当するものであり、これ以下の範囲の角度であれば、節の部分に入力線路を取り付けたときの伝送効率に比べて10%以内の劣化の範囲で抑えることができる。その結果、直流電力または低周波信号を送電可能であるとともに、共振器間で高周波信号を効率的に伝送可能である装置を実現することができる。
【0011】
さらに、上記入力線路と上記共振器との接続点と当該共振器の中心とを結ぶ線と、当該共振器を奇数分の1に等分割した線路の中点のうちのいずれかの点と当該共振器の中心とを結ぶ線とのなす鋭角が20/(2n+1)度以内であることが好ましい。
【0012】
これにより、入力線路が共振器に与える影響をさらに小さくすることができ、高周波信号の伝送効率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る高周波信号伝送装置は、異なる平面上に、閉曲線線路の一部が開放された構造もしくはスパイラル構造を有する共振器と、当該共振器に接続され、当該共振器に対して高周波信号の入出力を行う入出力線路とが形成されており、上記両平面上に形成された共振器同士を電磁結合させて、高周波信号を伝送させる高周波信号伝送装置であって、上記高周波信号は上記共振器において定在波となる波長を有しており、少なくとも1つの上記共振器において、上記定在波の節の部分に、低周波信号または直流電力を入力するための入力線路が接続されている。
【0014】
また、本発明の高周波信号伝送装置は、共振器の線路長が、上記高周波信号の波長の(2n+1)/2倍(nは0以上の整数)であり、低周波信号または直流電力を入力するための入力線路が、少なくとも1つの上記共振器に接続されており、上記入力線路と上記共振器との接続点と当該共振器の中心とを結ぶ線と、当該共振器を(2n+1)分の1(nは0以上の整数)に等分割した線路の中点のうちのいずれかの点と当該共振器の中心とを結ぶ線とのなす鋭角が30/(2n+1)度以内である。
【0015】
これにより、直流電力または低周波信号を送電可能であるとともに、共振器間で高周波信号を効率的に伝送可能である装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の高周波信号伝送装置に関する実施の一形態について図1~図19に基づいて説明すれば以下のとおりである。
【0017】
本実施形態に係る高周波信号伝送装置は、特定の周波数の高周波信号を、異なる平面上に形成された回路間で無線伝送する装置である。本実施形態の高周波信号伝送装置が伝送する高周波信号(以下、伝送信号という)は、例えば、マイクロ波およびミリ波帯の信号である。
【0018】
(高周波信号伝送装置の構造について)
図1は、本実施形態の高周波信号伝送装置1の主たる構成を示す斜視図である。図1に示されるように、高周波信号伝送装置1は、所定の面間距離だけ離れた異なる2つの平面P-a・P-bの各々の上に形成された、共振器2(2a・2b)と、当該共振器2に対して伝送信号の入出力を行うための入出力線路3(3a・3b)とを備えている。なお、平面P-a上に形成された共振器および入出力線路の符号を2aおよび3aとし、平面P-b上に形成された共振器および入出力線路の符号を2bおよび3bとしている。
【0019】
さらに、高周波信号伝送装置1において、共振器2に対して直流電力または低周波信号を入力するための直流用線路(入力線路)5が、共振器2に接続されている。図1では、一方の共振器2にのみ直流用線路5が接続されているが、両方の共振器2に直流用線路5が接続されていてもよい。
【0020】
図2は、直流用線路5が形成されている平面上の共振器2および入出力線路3を示す上面図である。なお、直流用線路5が形成されていない平面上の共振器2および入出力線路3の上面は、図2の共振器2および入出力線路3と同様である。
【0021】
図1および図2に示されるように、共振器2は、閉曲線線路の一箇所(開放部21(図では、共振器2aの開放部を21a、共振器2bの開放部を21bとする))がオープンとなっている(切断されている)構造である。すなわち、共振器2は、周回状となっていない。本実施形態では、具体的には、共振器2は、リング共振器の一部の配線が除かれたオープンリング共振器である。また、共振器2の線路長Lは、伝送信号の波長λの1/2の奇数倍になるように設定されている。すなわち、L=(2n+1)λ/2 (nは0以上の整数) を満たす。ここで、共振器2の線路長Lとは、図2に示されるように、開放部21を形成している一方の端部から他方の端部までの線路の長さである。これにより、共振器2に伝送信号が入力されると、共振器2において、腹と節の位置が固定された定在波が形成されることとなる。
【0022】
図2に示されるように、入出力線路3は、2つの接地電極4に挟まれたコプレーナ線路である。入出力線路3と共振器2との接続位置(取り付け位置)22を調整することによって、共振器2と入出力線路3とのインピーダンス整合が可能となる。ここでは、共振器2の中心点と開放部21とを結ぶ線と、当該中心点と取り付け位置22とを結ぶ線とのなす角度(以下、取り付け角度という)θ1を適宜設定することにより、インピーダンス整合が可能となる。そのため、入出力線路3は、共振器2に対して反射無しに伝送信号を入出力するために、インピーダンス整合が可能となる取り付け位置22で共振器2と接続するように設計される。
【0023】
そして、図1に示されるように、異なる平面P-a・P-b上の2つの共振器2a・2bは、中心軸が同一であり、かつ、開放部21a・21bが当該中心軸に対して対称の位置(180度ずれた位置)になるように配置されている。これにより、共振器2a・2b間の結合が一層強くなる。
【0024】
ただし、2つの共振器2の相対位置関係はこのような構成には限定されない。例えば、各共振器2の中心軸は、一致する位置から当該両共振器2の開放部21同士が近づく方向にずれていてもよい。また、一方の共振器2における開放部21と中心点とを結ぶ線と、他方の共振器2における開放部21と中心点とを結ぶ線とのなす角度が90度以上であればよい。
【0025】
直流用線路5は、少なくとも一方の共振器2に接続されている。直流用線路5と共振器2との接続位置(取り付け位置)23は、伝送信号が共振器2に入力されたときに共振器2に形成される定在波の節の位置になるように設計されている。すなわち、共振器2の線路長Lが伝送信号の波長λの1/2の奇数倍である場合(すなわち、L=(2n+1)λ/2 (nは0以上の整数)の場合)、取り付け位置23は、共振器2の線路長を(2n+1)分の1に等分割し、分割された線路の中点または当該中点付近に設定されている。
【0026】
そして、直流用線路5のうちの、共振器2と接続されていない側の端部は、ボンディングパッド6と接続されている。このボンディングパッド6にはボンディングワイヤを介して直流電源が接続できる。また、ボンディングパッド5から低周波信号を入力してもよい。ボンディングパッド5をグランドに接続してもよい。ボンディングパッド5を直流電源に接続する場合、直流電源の他方の端子は、接地平面にボンディングワイヤで接続される。また、ボンディングパッド5に入力する信号としては、例えば、VCOなどでの制御信号が含まれる。これは、直流の電圧がゆっくり変化する信号である。また、低周波信号として、1MHz以下の信号を入力してもよい。低周波信号としては、例えば60Hzの電力をこのDC入力回路を通して送り、高周波回路上の整流ダイオードでDC電力に変えるような場合が含まれる。
【0027】
ここで、定在波の節となる位置では電圧振幅がほぼゼロである。この部分にいかなるインピーダンスの線路を接続しても高周波電流が流れることがない。すなわち、上記のようにボンディングパッド5にボンディングワイヤを介して直流電源を接続し、当該ボンディングパッド5、ボンディングワイヤおよび直流電源がどのようなインピーダンスを有していたとしても、そのインピーダンスが共振器2に影響を与えることがない。その結果、共振器2での伝送信号の共振状態が乱されることがない。
【0028】
図3は、高周波信号伝送装置1の縦断面図である。各共振器2、当該共振器2に接続された入出力線路3および接地電極4は、図3に示されるように、それぞれ異なる基板の一方の面上に形成されている。すなわち、基板10aの一方の面P-a上に共振器2a,入出力線路3aおよび接地電極4aが形成されており、基板10bの一方の面P-b上に共振器2b,入出力線路3bおよび接地電極4bが形成されている。そして、基板10aおよび基板10bは、共振器2aおよび2bが形成された面が対向するように、スペーサ板7を間に挟んで配置される。ここで、図3では、スペーサ板7と共振器2との間に隙間があるように示されているが、実際には、スペーサ板7と共振器2とが接触するように組み立てられる。
【0029】
なお、図3では、直流用線路5を図示していないが、当該直流用線路5についても、入出力線路3と同様に形成される。すなわち、接続対象の共振器2が形成される基板10の一方の面状に直流用線路5を形成すればよい。また、直流用線路5を電気的に接続するボンディングパッド6も同様に形成すればよい。
【0030】
基板10a・10bは、回路が形成された基板であり、例えば、窒化ガリウム系AlGaN/GaN HFFTによるMMICが搭載されたサファイア基板である。また、スペーサ板5は、絶縁体で構成されており、例えば、サファイア基板や樹脂膜である。
【0031】
(製造方法)
本実施形態の高周波信号伝送装置は、従来の集積回路作成技術で製造可能である。窒化ガリウム系FETは、サファイアの基板10に作成される。サファイアの基板10の厚さは、一般的には0.3mm~0.5mmであるが、研磨や研削技術により0.1mmまでは容易に薄層化できる。そして、基板10上に窒化ガリウムをMOCVD法などで成長させる。活性層とならないアイソレーション部は、表面エッチング、イオン注入などにより高抵抗化する。この部分にコプレーナ構造の入出力線路3や共振器2、直流用線路を作成する。共振器2の大きさは、伝送信号の周波数に依存するが、60GHz帯であれば0.3mm程度であり、1μm程度の精度が有れば十分である。現在の集積回路技術では容易に作成できる精度である。例えば、金メッキなどにより金属パターンを形成する。
【0032】
2枚の基板の間に挟むスペーサ板7は、コストを下げたい場合、ガラスやプラスチックなど、電気的に高抵抗かつ高周波での損失が少ない物質でかまわない。共振器2の寸法を小さくする場合には、誘電率の高いセラミック板やサファイア板を用いると良い。
【0033】
そして、2枚の基板間では、共振器2の中心軸が一致し、かつ、開放部21が中心軸に対して対称の位置になるように配置する。例えば、セラミックやプラスチック基板では、あらかじめ、他方の基板の位置を規定するようなノッチを付けておけば容易に位置合わせも可能である。
【0034】
(変形例1)
上記説明では、共振器2をオープンリング状として説明した。しかしながら、共振器2の形状は、これに限定されるものではなく、様々な形状のものが考えられる。ただし、異なる平面上の共振器2間の信号を効率的に伝送させるため、共振器2間の結合が強い、閉曲線線路の一部(開放部21)がオープンとなっている形状、もしくは、スパイラル状(螺旋状)であることが好ましい。例えば、図15に示されるようなU字状や、図16に示されるようなスパイラル状でもよい。
【0035】
(変形例2)
上記説明では、2つの共振器2a・2bが異なる基板10a・10b上に形成され、共振器2a・2bが形成された面が対向するように基板10a・10bを配置し、当該基板10a・10b間にスペーサ板7を挟む構造とした。しかしながら、本実施形態の高周波信号伝送装置の構成はこれに限られるわけではなく、結合する2つの共振器2a・2bが異なる平面上に配置されていればよい。
【0036】
例えば、図4に示されるように、2つの共振器2a・2bが1つの基板の表面および裏面上に形成されており、一方の共振器2aから他方の共振器2bに伝送信号を無線伝送することもできる。もしくは、2つの共振器2a・2bがそれぞれ異なる基板上に形成されており、一方の基板10bの共振器2bが形成されている面と、他方の基板10aの共振器2aが形成されていない面とが対向するように、両基板を配置してもよい。
【0037】
なお、共振器2間には必ずしもスペーサ板が必要ではなく、空気のみが存在する構成であってもよい。
【0038】
(変形例3)
共振器2、入出力線路3、直流用線路5、接地電極4の形状は、図1及び図2で示される形状に限定されるものではなく、高周波信号伝送装置1が適用される回路に適した形状に適宜設計される。図19は、別の変形例の高周波信号伝送装置1の平面図である。図19に示されるように、共振器2およびボンディングパッド6を囲むように接地電極4が形成されている。そして、ボンディングパッド6から直流電力または低周波信号が入力される。
【0039】
(シミュレーション結果)
(参考例)
まず、本実施形態に対する参考例である、図1に示す高周波信号伝送装置1から直流用線路を取り除いた例について、3次元電磁界シミュレーション(使用ソフト:アンソフト社製「HFSS」)を行った。図5は、この参考例に係る高周波信号伝送装置の平面図を示す。(a)は上側の共振器2を含む平面図であり、(b)は下側の共振器2を含む平面図であり、(c)は両方の共振器2を重ね合わせたときの上方からみたときの図である。図6は、この参考例に係る高周波信号伝送装置の断面図を示す。また、図7は、共振器2の拡大図であり、図において、pは共振器2の両端部のギャップを、aは共振器2の線路幅を、Dは共振器2の外径を示す。
【0040】
図6に示されるように、金属膜、サファイアの基板、共振器、サファイアのスペーサ板、共振器、サファイアの基板、金属膜がこの順に積層された高周波信号伝送装置である。そして、共振器2間の基板厚みを400μmとした。また、共振器2は、伝送信号の半波長の線路長を有しているものとして設計した。そして、図7に示されるように、共振器2は、オープンリング状であり、外径D=960μm、線路幅a=100μm、両端部のギャップp=60μmとした。基板およびスペーサ板の材料を全てサファイアと想定し、比誘電率を10とした。また、高周波信号伝送装置の上面は、4mm×6.3mmの矩形状とした。
【0041】
また、共振器2の開放部21と共振器2の中心点とを結ぶ線と、入出力線路3の取り付け位置22と当該中心点とを結ぶ線とのなす角度θ1を51°とした。また、一方の共振器2の開放部21と当該共振器2の中心点とを結ぶ線と、他方の共振器2の開口部21と当該共振器2の中心点とを結ぶ線とをなす角度を180度とした。
【0042】
また、入出力線路3にはコプレーナ線路(特性インピーダンス50Ω)を用いるものとした。入出力線路3の幅を100μm、入出力線路3と接地電極4とのギャップを140μmとした。
【0043】
そして、一方の入出力線路3から伝送信号を入力した場合をシミュレーションした。なお、本シミュレーションでは、12~20GHzの帯域の伝送信号の入力するものとした。また、15.6GHzの伝送信号は、その波長が共振器2の線路長の2倍になる。図8は、上記のような参考例に係る高周波信号伝送装置における、伝送効率のシミュレーション結果を示すグラフである。
【0044】
なお、指標S21は、第2信号端子(ここでは、結合する2つの共振器の一方)で受け取る第1信号端子(ここでは、他方の共振器)から出た信号の割合で、デシベル(dB)単位で表される。100%とは0dBであり、損失があると負の値となる。また、S11は、第1信号端子の信号が再び第1信号端子へ戻る率であり、その分S21は減少する。高周波信号伝送装置としては、所望の帯域に置いて指標S21が限りなく1に近く、S11はできるだけ小さい方が好ましい。
【0045】
図8に示されるように、14~17GHzにおいて、ほぼ0.6dBの損失で高周波信号を伝送できることがわかる。ただし、この参考例は直流用線路5がない場合であり、直流電力や低周波信号を入力できない場合である。
【0046】
(直流用線路を有する実施例)
次に、本実施形態の一例の高周波信号伝送装置1についてシミュレーションを行った。本実施例は、上記の参考例に係る高周波信号伝送装置の構成に加えて、一方の共振器2に直流用線路5を接続した例である。すなわち、直流用線路5を備える点以外は、全て上記参考例と同一条件としてシミュレーションを行った。
【0047】
図9は、この実施例に係る高周波信号伝送装置1における、共振器2が形成された平面を示す図である。(a)は上側の共振器2が形成された平面を示す図であり、(b)は下側の共振器2が形成された平面を示す図であり、(c)は、高周波信号伝送装置における、共振器2および各種の線路が形成された面を、当該面に垂直な方向からみたときの図である。
【0048】
本実施例では、直流用線路5は、共振器2の線路の中点に接続されているものとした。また、直流用線路5は、接地電極4に接続され、グランドに短絡されているものとした。
【0049】
本実施例に係る高周波信号伝送装置1における、伝送効率のシミュレーション結果を図10に示す。
【0050】
図10に示されるように、14~17GHzにおいて、ほぼ1dBの損失で高周波信号を伝送できることがわかる。すなわち、直流用線路5のない参考例に比べ、高周波信号の伝送効率の劣化は8%程度であり、それほど大きな劣化は見られなかった。金属の直流用線路をグランドに接続しており、寄生の小さいインダクタンスを介して接地することになる。直流用線路5のインピーダンスが高くなればなるほど接続していない状態に近づくため、グランドへの接続は、共振器2への影響の度合いが大きくなることが予想される厳しい条件である。しかしながら、図10に示されるように、共振器2をグランドに接続した状態であっても、高い伝送効率で高周波信号を伝送することができることが確認された。
【0051】
理想的に全く影響のないようにできないのは、帯域を広く取っているためである。帯域が広い場合、すべての信号にとって中点が定在波の節になるわけではない。そのため、わずかに信号の漏れが発生する。
【0052】
なお、上記シミュレーションではグランドに接続したが、実際の回路では、ボンディングワイヤなどインダクタンスの高い部品が接続されるため、上記シミュレーションで確認した影響よりも小さくなる。すなわち、上記シミュレーションで確認した伝送効率よりもさらに高くなる。
【0053】
(θ3による影響確認)
次に、上記実施例において、直流用線路5の取り付け位置23と共振器の中心とを結ぶ線と、共振器2の中点(つまり、伝送信号が共振器において定在波をなすときの節の位置)と共振器の中心とを結ぶ線とのなす角度θ3を、-40°から50°まで変化させたときの伝送効率の変化をシミュレーションにより調べた。図11は、このシミュレーションで用いた高周波信号伝送装置1における、共振器2が形成された平面を示す図である。(a)は上側の共振器2が形成された平面を示す図であり、(b)は下側の共振器2が形成された平面を示す図であり、(c)は、両方の共振器を重ね合わせたときの上方からみたときの図である。なお、図11において、直流用線路5の取り付け位置23を共振器2の中点から時計回りの方向にずらしたときのθ3をマイナスの値で示し、逆方向にずらしたときのプラスの値で示している。図11(a)(c)では、θ3=-40°のときを示している。
【0054】
図12は、θ3を-40°から0°まで10°ずつ変化させたときの伝送効率を示す図である。図13は、θ3を0°から50°まで10°ずつ変化させたときの伝送効率を示す図である。また、図14は、中心周波数15.6GHzでの伝送効率のθ3依存性を示すグラフである。
【0055】
図14に示されるように、直流用線路5の取り付け位置23が共振器2のほぼ中点のときに、伝送効率が最大となる。これは、上述したように定在波の節と取り付け位置がほぼ一致するため、直流用線路5の影響が共振器に及ぼさないためである。
【0056】
ただし、図14では、完全な中点より少しずれた位置での伝送効率が高いことがわかる。これは、共振器2の膜厚が薄い場合、伝送帯域が広くなるために伝送信号の波長の範囲も広くなる。これにより、伝送波長が共振器2の線路長の1/2と完全に一致しなくても伝送され、定在波の節が中点からずれる場合が考えられるからと推定される。
【0057】
また、図14に示したように、θ3が±30°の範囲内であれば、直流用線路5の取り付け位置23が共振器2の中点のときに比べて、伝送効率の劣化の度合いを10%以内にすることができる。この程度の劣化であれば、実用上問題がない。また、θ3が±20°の範囲内であれば、直流用線路5の取り付け位置23が共振器2の中点のときに比べて、伝送効率の劣化の度合いを5%以内にすることができる。
【0058】
なお、このシミュレーションでは、波長が共振器2の線路長の2倍になる高周波信号を伝送させている。そのため、30°は、共振器2に形成される定在波の腹と共振器の中心とを結ぶ線と、当該定在波の節と共振器の中心とを結ぶ線とのなす角度(180°)の1/6である。すなわち、定在波の節を中心として、当該節と腹との間の1/6の範囲内に直流用線路5の取り付け位置23も設けることで、取り付け位置23が共振器2の中点のときに比べて、伝送効率の劣化の度合いを10%以内にすることができる。
【0059】
同様に、20°は、共振器2に形成される定在波の腹と共振器の中心とを結ぶ線と、当該定在波の節と共振器の中心とを結ぶ線とのなす角度(180°)の1/9である。すなわち、定在波の節を中心として、当該節と腹との間の1/9の範囲内に直流用線路5の取り付け位置23も設けることで、取り付け位置23が共振器2の中点のときに比べて、伝送効率の劣化の度合いを5%以内にすることができる。
【0060】
よって、高周波信号の波長λを、共振器の線路長Lの2/(2n+1)倍(nは0以上の整数)とするとき、取り付け位置23と共振器2の中心とを結ぶ線と、共振器2に形成される定在波の節の部分(すなわち、共振器2を(2n+1)分の1に等分割した線路の中点のうちのいずれかの部分)と当該共振器の中心とを結ぶ線とのなす鋭角を、30/(2n+1)度以内にすることが好ましい。これにより、高い伝送効率を実現できる。
【0061】
さらに、取り付け位置23と共振器2の中心とを結ぶ線と、共振器2に形成される定在波の節の部分と当該共振器の中心とを結ぶ線とのなす鋭角を、20/(2n+1)度以内にすることが好ましい。
【0062】
(信号線間の伝送状態の確認)
次に、図17(a)(b)(c)に示すように、図9で示した実施例において直流用線路5を50Ω終端の端子に接続した高周波信号伝送装置1を例にとりシミュレーションを行った。図18はシミュレーション結果を示す図である。図18において、S32は、第2信号端子(ここでは、直流用線路5が接続されていない共振器2側の入出力線路3)の信号のうち、第3信号端子(ここでは、直流用線路5)へ伝わる信号の率であり、S33は、第3信号端子の信号が再び第3信号端子へ戻る率であり、S31は、第1信号端子(直流用線路5が接続されている共振器2の入出力線路3)の信号のうち、第3信号端子へ伝わる信号の率である。
【0063】
図18に示されるように、直流用線路5と、入出力線路3との結合度合いは、-9dBとかなり低い値に成っており、直流用線路5が共振器2に与える影響が少ないことを示している。
【0064】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
異なる平面上の回路間で高周波信号を伝送するシステムに適用することができ、集積回路や電力伝送の用途にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本実施形態に係る高周波信号伝送装置の構成を示す斜視図である。
【図2】共振器、直流用線路および入出力線路を示す上面図である。
【図3】図1に示す高周波信号伝送装置の縦断面図である。
【図4】高周波信号伝送装置の変形例を示す縦断面図である。
【図5】参考例に係る高周波信号伝送装置を示す図であり、(a)は上側の共振器を含む平面図、(b)は下側の共振器を含む平面図、(c)は両方の共振器を重ね合わせたときの上方からみたときの図である。
【図6】参考例に係る高周波信号伝送装置の断面図である。
【図7】参考例に係る高周波信号伝送装置の共振器の形状を示す図である。
【図8】参考例に係る高周波信号伝送装置における、伝送効率のシミュレーション結果を示すグラフである。
【図9】実施例に係る高周波信号伝送装置を示す図であり、(a)は上側の共振器を含む平面図、(b)は下側の共振器を含む平面図、(c)は両方の共振器を重ね合わせたときの上方からみたときの図である。
【図10】実施例に係る高周波信号伝送装置における、伝送効率のシミュレーション結果を示すグラフである。
【図11】図9に示す実施例において、直流用線路の取り付け位置をずらしたときの高周波信号伝送装置を示す図であり、(a)は上側の共振器を含む平面図、(b)は下側の共振器を含む平面図、(c)は両方の共振器を重ね合わせたときの上方からみたときの図である。
【図12】θ3を-40°から0°まで10°ずつ変化させたときの伝送効率のシミュレーション結果を示す図である。
【図13】θ3を0°から50°まで10°ずつ変化させたときの伝送効率のシミュレーション結果を示す図である。
【図14】中心周波数15.6GHzでの伝送効率のθ3依存性を示すグラフである。
【図15】共振器の形状の変形例を示す図である。
【図16】共振器の形状の別の変形例を示す図である。
【図17】直流用線路を50Ω終端の端子に接続した高周波信号伝送装置を示す図であり、(a)は上側の共振器を含む平面図、(b)は下側の共振器を含む平面図、(c)は両方の共振器を重ね合わせたときの上方からみたときの図である。
【図18】図17に示す高周波信号伝送装置における、伝送効率のシミュレーション結果を示すグラフである。
【図19】共振器、入出力線路、直流用線路、接地電極の形状の変形例を示す図である。
【図20】一般的なマイクロ波アンプを示す回路図である。
【符号の説明】
【0067】
1 高周波信号伝送装置
2 共振器
3 入出力線路
4 接地電極
5 直流用線路(入力線路)
6 ボンディングパッド
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14
【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
18
【図20】
19