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明細書 :低温容器

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5470599号 (P5470599)
公開番号 特開2010-034334 (P2010-034334A)
登録日 平成26年2月14日(2014.2.14)
発行日 平成26年4月16日(2014.4.16)
公開日 平成22年2月12日(2010.2.12)
発明の名称または考案の名称 低温容器
国際特許分類 H01L  39/04        (2006.01)
FI H01L 39/04 ZAA
請求項の数または発明の数 7
全頁数 11
出願番号 特願2008-195576 (P2008-195576)
出願日 平成20年7月30日(2008.7.30)
審査請求日 平成23年6月6日(2011.6.6)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504151365
【氏名又は名称】大学共同利用機関法人 高エネルギー加速器研究機構
発明者または考案者 【氏名】都丸 隆行
【氏名】鈴木 敏一
個別代理人の代理人 【識別番号】100098589、【弁理士】、【氏名又は名称】西山 善章
【識別番号】100097559、【弁理士】、【氏名又は名称】水野 浩司
【識別番号】100123674、【弁理士】、【氏名又は名称】松下 亮
審査官 【審査官】杢 哲次
参考文献・文献 実開平01-095701(JP,U)
特開平04-068581(JP,A)
特開2006-294664(JP,A)
調査した分野 H01L 39/04
特許請求の範囲 【請求項1】
高温部と前記高温部より低温の低温部とを繋ぐ配管を有する低温容器において、
前記配管中の輻射伝搬現象の下記の式1の解析式に基づいて得られる、前記配管の内面の輻射伝搬のパワー分布最大値を与える位置に基づいて、輻射波の伝搬を阻害する輻射波阻害部を設けたことを特徴とする低温容器。
【数1】
JP0005470599B2_000003t.gif
ここで、P0は前記高温部から放射される全パワーであり、aは前記配管の半径であり、Lは前記配管の長さであり、N(x)は前記配管での赤外線の反射回数を表すxの関数であり、Rは前記配管の内面の反射率である
【請求項2】
前記輻射波阻害部は、前記高温部から前記配管内に入射する輻射波を吸収する吸収体または前記輻射波を反射する反射体の少なくとも一方を含むことを特徴とする請求項1に記載の低温容器。
【請求項3】
前記輻射波は赤外線であり、前記吸収体は赤外線吸収体であり、かつ、前記反射体は赤外線反射体であることを特徴とする請求項2に記載の低温容器。
【請求項4】
前記輻射波阻害部は、前記配管の内周面から突出した1或いは複数のリング状突起部からなるバッフル構造を有することを特徴とする請求項1乃至3の何れかの項に記載の低温容器。
【請求項5】
前記複数のリング状突起部の高温部側表面に赤外線反射体を、前記リング状突起部の低温側表面に赤外線吸収体をそれぞれ設けたことを特徴とする請求項4に記載の低温容器。
【請求項6】
前記輻射波阻害部は、前記配管内壁面の輻射伝搬のパワー分布最大値を与える位置に基づいて、赤外線吸収率の大きい材料で形成された赤外線吸収膜であることを特徴とする請求項1に記載の低温容器。
【請求項7】
前記輻射波阻害部は、前記配管の内壁面の輻射伝搬のパワー分布最大値を与える位置に基づいて形成されたベローズからなることを特徴とする請求項1に記載の低温容器。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、高温部と低温部を繋ぐ配管を有する低温容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種の低温容器、例えば、液体ヘリウム等によって超電導磁石を極低温にして磁石の超電導状態を保つようにした低温容器が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図9乃至図11は、高温部と低温部を繋ぐ配管(円形状配管)を有する従来の低温容器を示している。このような低温容器では、熱輻射による熱侵入量はStefan-Boltzmann則を用いて推定されることが一般的であり、配管を屈曲させたり、長くしたりして熱負荷を低減する方法が広く用いられている。
【0004】
図9に示す低温容器100は、液体ヘリウムを貯留するヘリウムデュワーであり、内部の液体ヘリウムを取り出すための配管101を有している。図10に示す低温容器110は、デュワー型クライオスタットであり、高温部と低温部を繋ぐ配管として、液体ヘリウム槽111内と外部の真空排気装置(図示省略)とを連通するパイプ112を有する。この低温容器110では、熱輻射による熱負荷を低減するためにそのパイプ112を屈曲させている。図11に示す低温容器120は、真空容器121内に収容され、加速器に用いる超電導磁石122を液体ヘリウム等によって極低温にするためのもので、高温部と低温部を繋ぐ配管123を有している。この低温容器120では、熱輻射による熱負荷を低減するために配管123を長くしている。

【特許文献1】特開2008-109035号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、本発明者らの研究により、図10および図11に示す上記従来技術のように、配管を屈曲させたり、長くしたりしても、熱輻射による熱侵入量の低減効果は小さいことが分かっている。
【0006】
本発明は、このような従来の問題点に鑑みて為されたもので、その目的は、熱輻射より引き起こされる熱負荷を低減した低温容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らの研究により、高温部と低温部を繋ぐ配管を有する低温容器の場合の輻射熱侵入量は輻射伝搬を考慮した下記の式1で記述され、この式1(輻射伝搬現象の解析式)に基づいて図8に示す輻射熱侵入のパワー分布が得られた。本発明者らは、図8に示す輻射熱侵入のパワー分布に着目して、輻射熱の侵入を効率的に低減できる低温容器を着想するに至った。
【0008】
図7は、円筒形のパイプ(配管)の内面の熱輻射伝搬に対するRay-Trace Modelの概略図であり、このRay-Trace Modelによる、配管を介しての熱輻射(輻射波)の伝搬現象の考え方を示している。図8に示すように、赤外光線が等方的に300K領域(高温部側)から輻射されるとき、配管の端(300K側端部)から距離xにある領域dxに入射する赤外線を考える。この赤外線は配管内面で反射率Rを持って反射し、伝搬する。この場合、低温側(4K側)へ到達する全熱負荷は、下記の式1で与えられる。
【数1】
JP0005470599B2_000002t.gif
ここで、P0前記高温部から放射される全パワーであり、aは前記配管の半径であり、Lは前記配管の長さであり、N(x)は前記配管のでの赤外線の反射回数を表すxの関数であり、Rは前記配管の内面の反射率である
【0009】
図8は、低温容器のパイプを、例えば直径7cm,長さ1.35mのAl製パイプとした場合で計算した輻射熱侵入のパワー分布を示すグラフである。図8で、横軸は高温部側(300K側)からの距離を示し、縦軸は輻射伝搬のパワー分布を任意単位(Arbitrary Unit)で示している。図8のグラフから、パイプの端から20cm以下に入射する赤外線の影響が一番大きいことが分かる。つまり、図8で示す場合、パイプの端から10cmが、輻射伝搬現象の解析式に基づいて得られる輻射伝搬のパワー分布最大値である。
【0010】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、高温部と前記高温部より低温の低温部とを繋ぐ配管を有する低温容器において、前記配管の内面の輻射伝搬現象の上記の式1の解析式に基づいて得られる、前記配管の内面の輻射伝搬のパワー分布最大値を与える位置に基づいて、輻射波の伝搬を阻害する輻射波阻害部を設けたことを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、高温部から配管内に入射する輻射波の伝搬が、配管の内面の輻射伝搬のパワー分布最大値付近に設けた輻射波阻害部により阻害されるので、低温部側に侵入する輻射波が効率的に低減される。これにより、熱輻射により発生した熱が、配管を介して移送されて低温部側に侵入する輻射熱侵入量を効率的に低減でき、高温部での熱輻射により引き起こされる熱負荷を低減することができる。ここで、「輻射波」は熱輻射により放出される赤外線等の電磁波を意味する。
【0012】
請求項2に記載の発明は、前記輻射波阻害部は、前記高温部から前記配管内に入射する輻射波を吸収する吸収体または前記輻射波を反射する反射体の少なくとも一方を含むことを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、高温部から配管内に入射する輻射波の一部は、吸収体で吸収され、または反射体で反射され、または吸収体で吸収されると共に反射体で反射される。これにより、輻射波の伝搬が配管の内面の輻射伝搬のパワー分布最大値付近で阻害されるので、低温部側に侵入する輻射波が効率的に低減される。これにより、低温部側に侵入する輻射熱侵入量を効率的に低減でき、高温部での熱輻射により引き起こされる熱負荷を低減することができる。
【0014】
請求項3に記載の発明は、前記輻射波は赤外線であり、前記吸収体は赤外線吸収体であり、かつ、前記反射体は赤外線反射体であることを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、高温部側から配管内に入射する赤外線の一部は、赤外線吸収体で吸収され、または赤外線反射体で反射され、または赤外線吸収体で吸収されると共に赤外線反射体で反射される。これにより、赤外線の伝搬が配管の内面の輻射伝搬のパワー分布最大値付近で阻害されるので、低温部側に侵入する赤外線が効率的に低減される。これにより、低温部側に侵入する輻射熱侵入量を効率的に低減でき、高温部での熱輻射により引き起こされる熱負荷を低減することができる。
【0016】
請求項4に記載の発明は、前記輻射波阻害部は、前記配管の内周面から突出した1或いは複数のリング状突起部からなるバッフル構造を有することを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、高温部側から配管内に入射する輻射波(赤外線等の電磁波)の伝搬が、配管の内面の輻射伝搬のパワー分布最大値付近に設けたバッフル構造のリング状突起部により阻害されるので、低温部側に侵入する輻射波が効率的に低減される。これにより低温部側に侵入する輻射熱侵入量を効率的に低減でき、熱輻射により引き起こされる熱負荷を低減することができる。
【0018】
請求項5に記載の発明は、前記複数のリング状突起部の高温部側表面に赤外線反射体を、前記リング状突起部の低温側表面に赤外線吸収体をそれぞれ設けたことを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、高温部から配管内に入射する赤外線の一部は、リング状突起部の赤外線反射体で反射して高温部側へ打ち返されるので、その分だけ低温部側に侵入する赤外線が低減される。これと共に、配管内に入射する赤外線の一部は、リング状突起部の赤外線反射体で反射された後、別のリング状突起部の赤外線吸収体に当たり、この赤外線吸収体で吸収されるので、リング状突起部の赤外線反射体で反射された赤外線が他のリング状突起部で再反射されて、低温部側へ戻るのを防止できる。つまり、赤外線の多重反射を防止することができる。これにより、低温部側に侵入する赤外線が更に低減され、低温部側に侵入する輻射熱侵入量を更に効率的に低減でき、高温部での熱輻射により引き起こされる熱負荷を更に低減することができる。
【0020】
請求項6に記載の発明は、前記輻射波阻害部は、前記配管内壁面の輻射伝搬のパワー分布最大値を与える位置に基づいて、赤外線吸収率の大きい材料で形成された赤外線吸収膜であることを特徴とする。
【0021】
請求項7に記載の発明は、前記輻射波阻害部は、前記配管の内壁面の輻射伝搬のパワー分布最大値付近に形成されたベローズからなることを特徴とする。
【0022】
この構成によれば、配管内に入射する赤外線の一部が、配管の内面の輻射伝搬のパワー分布最大値付近に設けたベローズ(蛇腹)の凹凸部に当たることで、その伝搬が阻害される。これにより、低温部側に侵入する輻射熱侵入量を効率的に低減でき、高温部での熱輻射により引き起こされる熱負荷を低減することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、高温部から配管内に入射する輻射波(熱輻射により放出される赤外線等の電磁波)の伝搬が、配管の内面の輻射伝搬のパワー分布最大値付近に設けた輻射波阻害部により阻害されるので、低温部側に侵入する輻射波が効率的に低減される。これにより、高温部での熱輻射により発生した熱が、配管を介して移送されて低温部側に侵入する輻射熱侵入量を効率的に低減でき、熱輻射により引き起こされる熱負荷を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
次に、本発明を具体化した各実施形態を図面に基づいて説明する。尚、各実施形態の説明において同様の部位には同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0025】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る低温容器10の内部構造を概略的に示している。
低温容器10は、デュワー型クライオスタットであり、高温部(例えば300K側)と低温部(例えば4K側)を繋ぐ配管として、液体ヘリウム槽11内と外部の真空排気装置(図示省略)とを連通するパイプ(排気管)12を有する。
【0026】
この低温容器10では、図1および図2に示すように、パイプ12の内面の輻射伝搬現象の解析式である上記式1に基づいて得られる、パイプ12の内面の輻射伝搬のパワー分布最大値を与える位置30に、輻射波の伝搬を阻害する輻射波阻害部が設けられている。ここで、「輻射伝搬のパワー分布最大値」は、高温部からパイプ12内に入射し、パイプ12を伝搬する輻射波のパイプ12でのパワー分布の最大値を意味する。例えば、輻射伝搬のパワー分布最大値を与える位置30は、図8のグラフで示す、パイプの端(300K側端部)から10cmの位置である。ここでは、その輻射波は、例えば、20μmのピーク波長を持つ赤外線(IR)である。また、パイプ12は、赤外線反射率の大きい金属材料、例えばアルミニウムで作られた金属製パイプである。
【0027】
低温容器10の輻射波阻害部は、高温部(300K側)からパイプ12内に入射する輻射波がパイプ12を伝搬するのを阻害するバッフル構造20を有する。このバッフル構造20は、複数のリング状突起部21を有している。
【0028】
複数のリング状突起部21は、輻射波を吸収する吸収体としての、赤外線を吸収する赤外線吸収体でそれぞれ形成されている。ここで、赤外線吸収体としては、赤外線吸収率の高いガラス等の誘電体材料である。
【0029】
このような構成を有する低温容器10では、高温部(300K側)からパイプ12内に入射する赤外線(輻射波)の一部が、バッフル構造20の複数のリング状突起部21のいずれかに当たる。各リング状突起部21は、赤外線吸収体でそれぞれ形成されており、かつ、パイプ12の内面の輻射伝搬のパワー分布最大値付近30に設けられているので、パイプ12内に入射する赤外線の一部が複数のリング状突起部21のいずれかで効率的に吸収される。これにより、パイプ12内に入射し、パイプ12を伝搬して低温部側へ到達する赤外線(熱輻射)が効率的に低減される。
【0030】
このように、本実施形態に係る低温容器10は、パイプ12の内面の輻射伝搬のパワー分布最大値付近30に、赤外線の伝搬(輻射伝搬)を阻害するように輻射波阻害部としてのバッフル構造20を設けることにより、低温部側への輻射熱侵入量を効率的に低減するようになっている。
【0031】
以上のように構成された第1実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
(1)高温部側からパイプ12内に入射する赤外線の伝搬が、パイプ12の内面の輻射伝搬のパワー分布最大値付近30に設けたバッフル構造20のリング状突起部21により阻害されるので、低温部側に侵入する赤外線が効率的に低減される。これにより、高温部での熱輻射により発生した熱が、パイプ12を介して移送されて低温部側に侵入する輻射熱侵入量を効率的に低減でき、熱輻射により引き起こされる熱負荷を低減することができる。
(2)パイプ12内に入射する赤外線の一部が、パイプ12の内面の輻射伝搬のパワー分布最大値付近30に設けたバッフル構造20のリング状突起部21で効率的に吸収される。これにより、低温部側に侵入する輻射熱侵入量を効率的に低減でき、高温部での熱輻射により引き起こされる熱負荷を低減することができる。なお、本発明者らは、低温干渉計プロトタイプCLIKを用いた検証実験で、低温部側に侵入する輻射熱侵入量が1/100程度低減することを実験的に確認している。
・熱輻射により引き起こされる熱負荷を低減した低温容器を実現することができる。
【0032】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る低温容器を図3および図4に基づいて説明する。
第2実施形態に係る低温容器では、図3(A)および図3(B)に示すように、図1に示す上記第1実施形態に係る低温容器10のパイプ12に代えてパイプ12Aを用いている。このパイプ12Aの特徴は、輻射波阻害部として、高温部(300K側)からパイプ12A内に入射する輻射波がパイプ12A内を伝搬するのを阻害するバッフル構造20Aを備えている点にある。
【0033】
このバッフル構造20Aは、第1実施形態に係る低温容器10のバッフル構造20の各リング状突起部21の高温部側表面に赤外線反射体21aを、各リング状突起部21の低温側表面に赤外線吸収体21bをそれぞれ設けてある。第2実施形態に係る低温容器のその他の構成は、第1実施形態に係る低温容器10と同様である。
【0034】
赤外線反射体21aとして、赤外線反射率の高いアルミニウム等の金属材料が使用される。また、赤外線吸収体21bとして、赤外線吸収率の高いガラス等の誘電体材料が使用される。
【0035】
このような構成を有する低温容器では、高温部(300K側)からパイプ12A内に入射する赤外線の一部が、図4で示す赤外線22のようにリング状突起部21の高温部側表面に設けた赤外線反射体21aに当たると、その赤外線22は赤外線反射体21aで反射されて高温部側へ戻る。これにより、低温部側に侵入する赤外線が低減される。
【0036】
また、パイプ12A内に入射する赤外線の一部は、図4で示す赤外線23のようにリング状突起部21の赤外線反射体21aで反射された後、別のリング状突起部21の赤外線吸収体21bに当たり、この赤外線吸収体21bで吸収される。これにより、リング状突起部21の赤外線反射体21aで反射された(打ち返された)赤外線が他のリング状突起部21で再反射されて低温部側へ伝搬しないようになっている。
【0037】
このように、本実施形態に係る低温容器は、パイプ12Aの内面の輻射伝搬のパワー分布最大値付近30に設けたバッフル構造20を、リング状突起部21で反射された(打ち返された)赤外線が他のリング状突起部21で再反射(多重反射)されて、低温部側へ戻るのを防止して、低温部側への輻射熱侵入量を更に効率的に低減するようになっている。
【0038】
以上のように構成された第2実施形態によれば、上記第1実施形態の奏する作用効果に加えて以下の作用効果を奏する。
(1)高温部(300K側)からパイプ12A内に入射する赤外線の一部は、リング状突起部21の赤外線反射体21aで反射して高温部側へ打ち返される(戻される)ので、その分だけ低温部側に侵入する赤外線が低減される。
(2)パイプ12A内に入射する赤外線の一部は、リング状突起部21の赤外線反射体21aで反射された後、別のリング状突起部21の赤外線吸収体21bに当たり、この赤外線吸収体21bで吸収されるので、リング状突起部21の赤外線反射体21aで反射された(打ち返された)赤外線が他のリング状突起部21で再反射されて、低温部側へ戻るのを防止できる。つまり、赤外線の多重反射を防止することができる。これにより、低温部側に侵入する赤外線が更に低減され、熱輻射により発生した熱が、配管を介して移送されて低温部側に侵入する輻射熱侵入量を更に効率的に低減でき、高温部での熱輻射により引き起こされる熱負荷を更に低減することができる。
【0039】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態に係る低温容器を図5に基づいて説明する。
第3実施形態に係る低温容器では、図5に示すように、図1に示す上記第1実施形態に係る低温容器10のパイプ12に代えてパイプ12Bを用いている。
【0040】
このパイプ12Bの特徴は、パイプ12Bの内壁面13の輻射伝搬のパワー分布最大値を与える位置30を含む領域に、赤外線吸収率の大きい材料(ガラス)で形成された赤外線吸収膜40を設けてある点にある。この赤外線吸収膜40は、パイプ12Bの長さの半分程度の長さに渡ってその内壁面13に形成されている。また、赤外線吸収膜40は、パイプ12Bの内壁面13に、赤外線吸収率の高いガラス等の誘電体材料でコーティングすることで形成されている。第2実施形態に係る低温容器のその他の構成は、第1実施形態に係る低温容器10と同様である。
【0041】
このような構成を有する低温容器では、高温部(300K側)からパイプ12B内に入射する赤外線(輻射波)の一部が、パイプ12Bの内面の輻射伝搬のパワー分布最大値付近30に設けた赤外線吸収膜40で効率的に吸収される。これにより、パイプ12B内に入射し、パイプ12Bを伝搬して低温部側へ到達する赤外線(熱輻射)が効率的に低減される。
【0042】
以上のように構成された第3実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
(1)パイプ12B内に入射する赤外線の一部が、パイプ12Bの内面の輻射伝搬のパワー分布最大値付近30に設けた赤外線吸収膜40で効率的に吸収される。これにより、低温部側に侵入する輻射熱侵入量を効率的に低減でき、高温部での熱輻射により引き起こされる熱負荷を低減することができる。
(2)赤外線吸収膜40は、パイプ12Bの内壁面13に、赤外線吸収率の高いガラス等の誘電体材料でコーティングすることで形成できるので、作製が容易である。
【0043】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態に係る低温容器を図6に基づいて説明する。
第4実施形態に係る低温容器では、図6に示すように、図1に示す上記第1実施形態に係る低温容器10のパイプ12に代えてパイプ12Cを用いている。
【0044】
このパイプ12Cの特徴は、輻射波阻害部として、パイプ12Cの内面の輻射伝搬のパワー分布最大値付近30にベローズ50を形成した点にある。第4実施形態に係る低温容器のその他の構成は、第1実施形態に係る低温容器10と同様である。
【0045】
このように、本実施形態に係る低温容器は、パイプ12Cの内面の輻射伝搬のパワー分布最大値付近30に、赤外線の伝搬(輻射伝搬)を阻害するように輻射波阻害部としてのベローズ50を設けることにより、低温部側への輻射熱侵入量を効率的に低減するようになっている。
【0046】
以上のように構成された第4実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
(1)パイプ12C内に入射する赤外線の一部が、パイプ12Cの内面の輻射伝搬のパワー分布最大値付近30に設けたベローズ(蛇腹)50の凹凸部に当たることで、その伝搬が阻害される。これにより、低温部側に侵入する輻射熱侵入量を効率的に低減でき、高温部での熱輻射により引き起こされる熱負荷を低減することができる。
【0047】
なお、この発明は以下のように変更して具体化することもできる。
(2)上記各実施形態では、低温容器の一例として、高温部(例えば300K側)と低温部(例えば4K側)を繋ぐパイプ(配管)12を有するデュワー型クライオスタットについて説明したが、本発明は高温部と低温部を繋ぐパイプを有する低温容器に広く適用可能である。例えば、図9に示すようなヘリウムデュワー、MRIやNMR等の超電導磁石応用機器に用いる低温容器(極低温容器)、加速器に用いる超電導磁石を液体ヘリウム等によって極低温にするための図11に示すような低温容器120等に本発明は適用可能である。
(3)上記各実施形態では、高温部での熱輻射により放出される輻射波が20μmのピーク波長を持つ赤外線(IR)の場合について一例として説明したが、輻射波がその赤外線以外のピーク波長を持つ電磁波の場合にも本発明は適用可能である。
(4)上記各実施形態では、300Kの高温部と4Kの低温部を繋ぐパイプを有する低温容器について説明したが、本発明は、温度T1の領域(高温部)と温度T2(T1>T2)の領域(低温部)とを繋ぐパイプを有する低温容器に広く適用可能である。
(5)上記各実施形態では、パイプの内面の輻射伝搬のパワー分布最大値を与える位置に設けられ、輻射波の伝搬を阻害する輻射波阻害部の一例についてそれぞれ説明したが、輻射波阻害部の構造や形状は各実施形態で説明したものに限られない。例えば、図5に示す上記第3実施形態に係る低温容器において、パイプ12Bの内壁面13に、赤外線吸収膜40をコーティングする代わりに、内壁面に赤外線吸収膜40をコーティングしたFRP製パイプを、パイプ12B内の赤外線吸収膜40と同じ位置に挿入した低温容器にも本発明は適用可能である。
(6)また、本発明は輻射波阻害部が、高温部からパイプ内に入射する輻射波を吸収する吸収体または輻射波を反射する反射体の少なくとも一方を含む構成の低温容器に適用可能である。
(7)上記第1実施形態において、複数のリング状突起部21を、赤外線反射体でそれぞれ形成しても良い。
(8)上記第1実施形態において、複数のリング状突起部21の一部を、赤外線吸収体で、その他を赤外線反射体でそれぞれ形成しても良い。
(9)上記第1実施形態において、複数のリング状突起部21を有するバッフル構造20に代えて、バッフル構造が1つのリング状突起部を有する低温容器にも本発明は適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】第1実施形態に係る低温容器の内部構造を概略的に示す縦断面図。
【図2】図1に示す低温容器のパイプを概略的に示す断面図。
【図3】(A)は第2実施形態に係る低温容器におけるバッフル構造の突起部を高温部側から見た正面図、(B)はその突起部を低温側から見た正面図。
【図4】第2実施形態に係る低温容器のパイプの一部を拡大して示す断面図。
【図5】第3実施形態に係る低温容器のパイプを概略的に示す断面図。
【図6】第4実施形態に係る低温容器のパイプを概略的に示す断面図。
【図7】Ray-Trace Modelによるパイプを介しての熱輻射(輻射波)の伝搬現象の考え方を示す説明図。
【図8】輻射熱侵入のパワー分布を示すグラフ。
【図9】従来の低温容器を示す断面図。
【図10】別の従来例を示す断面図。
【図11】さらに別の従来例を示す断面図。
【符号の説明】
【0049】
10:低温容器
11:液体ヘリウム槽
12,12A,12B,12C:パイプ(排気管)
13:パイプの内壁面
20,20A:バッフル構造
21:リング状突起部
21a:赤外線反射体
21b:赤外線吸収体
22,23:赤外線
30:輻射伝搬のパワー分布最大値を与える位置
40:赤外線吸収膜
50:ベローズ
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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