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明細書 :新規発酵食品

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5686336号 (P5686336)
公開番号 特開2011-239709 (P2011-239709A)
登録日 平成27年1月30日(2015.1.30)
発行日 平成27年3月18日(2015.3.18)
公開日 平成23年12月1日(2011.12.1)
発明の名称または考案の名称 新規発酵食品
国際特許分類 A23L   1/00        (2006.01)
A23C   9/13        (2006.01)
FI A23L 1/00 J
A23C 9/13
請求項の数または発明の数 5
微生物の受託番号 NITE NITE BP-376
全頁数 14
出願番号 特願2010-113418 (P2010-113418)
出願日 平成22年5月17日(2010.5.17)
審査請求日 平成25年4月26日(2013.4.26)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】899000057
【氏名又は名称】学校法人日本大学
発明者または考案者 【氏名】森永 康
【氏名】古川 壮一
【氏名】荻原 博和
個別代理人の代理人 【識別番号】110000774、【氏名又は名称】特許業務法人 もえぎ特許事務所
審査官 【審査官】小暮 道明
参考文献・文献 特開昭57-102142(JP,A)
特公平2-43461(JP,B2)
特開2007-135427(JP,A)
特開2007-236344(JP,A)
特開2004-154086(JP,A)
特開2006-042796(JP,A)
特開2001-097870(JP,A)
特開2001-128641(JP,A)
調査した分野 A23L
A23C
特許請求の範囲 【請求項1】
甘酒と乳とを配合した原料であって、原料における甘酒の配合割合が20~80%であり、かつ、豆乳を含まない原料を乳酸菌によって発酵させてなる発酵食品であって、乳酸菌がラクトバチルス プランタラム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス カゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトバチルス サケイ(Lactobacillus sakei)、ラクトバチルス ケフィア(Lactobacillus kefir)またはラクトバチルス マリ(Lactobacillus mali)のいずれか一種以上である発酵食品。
【請求項2】
乳酸菌がラクトバチルス プランタラム ML11-11株(Lactobacillus plantarum ML11-11)(受託番号:NITE BP-376)、ラクトバチルス カゼイ亜種ラムノサスIFO03831株(Lactobacillus casei subsp. Rhamnosus IFO03831)、ラクトバチルス サケイ亜種サケイ NBRC15893株(Lactobacillus sakei subsp. sakei NBRC15893)、ラクトバチルス カゼイ NBRC101981株(Lactobacillus casei NBRC101981)、ラクトバチルス ケフィア NBRC15888株(Lactobacillus kefir NBRC15888株)またはラクトバチルス マリ NBRC102159株(Lactobacillus mali NBRC102159)のいずれか一種以上である請求項1に記載の発酵食品。
【請求項3】
甘酒と乳とを配合した原料であって、原料における甘酒の配合割合が20~80%であり、かつ、豆乳を含まない原料を乳酸菌によって発酵させることを含む、請求項1または2に記載の発酵食品の製造方法。
【請求項4】
甘酒と乳とを配合した原料であって、原料における甘酒の配合割合が20~80%であり、かつ、豆乳を含まない原料を乳酸菌によって発酵させることにより、請求項1または2に記載の発酵食品に含まれる甘酒由来の麹臭を低減する方法。
【請求項5】
甘酒と乳とを配合した原料であって、原料における甘酒の配合割合が20~80%であり、かつ、豆乳を含まない原料を乳酸菌によって発酵させることにより、請求項1または2に記載の発酵食品に含まれる乳酸菌の生菌数を高める方法。

発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、甘酒と乳とを配合した原料を乳酸菌によって発酵させてなる発酵食品およびその製造方法に関する。また、甘酒と乳とを配合した原料を乳酸菌によって発酵させることにより、該発酵食品に含まれる甘酒由来の麹臭を低減する方法、ならびに該発酵食品に含まれる乳酸菌の生菌数を高める方法に関する。
【背景技術】
【0002】
甘酒は古来より親しまれてきた米を原料とする発酵食品であるが、チーズ、ヨーグルト等の乳を原料とする発酵食品と比べて、摂取される量が少ない。そこで、甘酒を乳酸菌によって発酵させた発酵食品が開発されているものの(例えば、非特許文献1参照)、甘酒由来の麹臭を改善することが難しく、食品として提供されるに至っていないのが現状である。また、甘酒を原料とする乳酸菌発酵食品中の乳酸菌の生菌数を高めることを目的とする検討はほとんどなされていないのが現状である。
【0003】
豆乳を原料とする発酵食品の提供において、豆乳と甘酒、または豆乳と牛乳と甘酒とを組み合わせて乳酸菌発酵させた乳酸発酵飲料が開発されているが(例えば、特許文献1参照)、甘酒は豆乳の不快臭味を軽減し、上品でまろやかな呈味を付与するために使用されているだけであり、得られた発酵食品における甘酒由来の麹臭や、その改善については全く検討されていない。また、乳酸菌の生菌数を高めることを目的とした豆乳、甘酒、乳の配合に関する検討は全く行われていない。
【0004】
食品の製造に甘酒を利用する方法として、甘酒と乳とを組み合わせて乳酸菌によって発酵させたものをマザースターターとして用い、乳や大豆を発酵させた甘酒チーズや豆乳チーズを製造する方法が開示されている(例えば、特許文献2、3参照)。また、甘酒以外の酒粕や焼酎蒸留残渣について、発酵を効率よく行うことを主な目的として、乳を主成分とする発酵原料に添加する方法が開示されている(例えば、特許文献4、5参照)。しかし、この方法は、13%の脱脂粉乳水溶液に1~2%の酒粕や焼酎蒸留残渣を添加するものでしかない。
従って、いずれの方法においても甘酒、酒粕や焼酎蒸留残渣等自体を発酵食品の主たる原料として使用するものではなく、甘酒の摂取量を増大するために、甘酒を主要な原料として使用しつつ、甘酒由来の麹臭が低減された新たな発酵食品の提供が望まれていた。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2004-154086号公報
【特許文献2】特公昭62-21488号
【特許文献3】特公平2-43461号
【特許文献4】特許第4346559号公報
【特許文献5】特開2009-195251号公報
【0006】

【非特許文献1】第61回日本生物工学会大会トピックスシリーズ集p.22、2009年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、甘酒と乳とを配合した原料を乳酸菌によって発酵させてなる発酵食品の提供を課題とする。また、甘酒と乳とを配合した原料を乳酸菌によって発酵させることにより、該発酵食品に含まれる甘酒由来の麹臭を低減する方法、ならびに該発酵食品中の乳酸菌の生菌数を高める方法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、甘酒と乳とを組み合わせて乳酸菌によって発酵させることにより、甘酒由来の麹臭が低減されること、および発酵後の乳酸菌の生菌数が高められることを見出した。そして、このようにして得られた発酵食品が、甘酒由来の麹臭が低減されているとともに生菌数が高くプロバイオティクスとして優れた特性を有しているだけでなく、タンパク質と炭水化物の栄養バランスが良く、かつ甘味と酸味のバランスも良い嗜好性の高い発酵食品であることを確認し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は次の(1)~(7)の発酵食品および該発酵食品に含まれる甘酒由来の麹臭を低減する方法、ならびに乳酸菌の生菌数を高める方法等に関する。
(1)甘酒と乳とを配合した原料を乳酸菌によって発酵させてなる発酵食品。
(2)乳酸菌がラクトバチルス プランタラム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス カゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトバチルス サケイ(Lactobacillus sakei)、ラクトバチルス ケフィア(Lactobacillus kefir)またはラクトバチルス マリ(Lactobacillus mali)のいずれか一種以上である上記(1)に記載の発酵食品。
(3)乳酸菌がラクトバチルス プランタラム ML11-11株(Lactobacillus plantarum ML11-11)(託番号:NITE P-376)、ラクトバチルス カゼイ亜種ラムノサスIFO03831株(Lactobacillus casei subsp. Rhamnosus IFO03831)、ラクトバチルス サケイ亜種サケイ NBRC15893株(Lactobacillus sakei subsp. sakei NBRC15893)、ラクトバチルス カゼイ NBRC101981株(Lactobacillus casei NBRC101981)、ラクトバチルス ケフィア NBRC15888株(Lactobacillus kefir NBRC15888株)またはラクトバチルス マリ NBRC102159株(Lactobacillus mali NBRC102159)のいずれか一種以上である上記(1)または(2)に記載の発酵食品。
(4)原料における甘酒の配合割合が20~80%である上記(1)~(3)のいずれかに記載の発酵食品。
(5)甘酒と乳とを配合した原料を乳酸菌によって発酵させることを含む、上記(1)~(4)のいずれかに記載の発酵食品の製造方法。
(6)甘酒と乳とを配合した原料を乳酸菌によって発酵させることにより、上記(1)~(4)のいずれかに記載の発酵食品に含まれる甘酒由来の麹臭を低減する方法。
(7)甘酒と乳とを配合した原料を乳酸菌によって発酵させることにより、上記(1)~(4)のいずれかに記載の発酵食品に含まれる乳酸菌の生菌数を高める方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の甘酒由来の麹臭を低減する方法や、乳酸菌の生菌数を高める方法を使用することにより、甘酒を主要な原料とする、さらなる発酵食品の提供が可能となる。本発明によって得られた新たな発酵食品は、長期冷蔵保存しても生菌数が高い食品であることから、プロバイオティクスとして優れた特性を有する保存可能な食品として広く流通することができる。また、本発明の発酵食品を通じ、甘酒および甘酒の原料となる米の消費量の増大につながる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】発酵食品に含まれる各乳酸菌の生菌数を示した図である(実施例1)。
【図2】発酵食品に含まれる各乳酸菌の生菌数を示した図である(実施例1)。
【図3】発酵食品に含まれる各乳酸菌の生菌数を示した図である(実施例1)。
【図4】甘酒と乳とを配合した原料を用いた発酵食品に含まれる各乳酸菌の生菌数を示した図である(実施例2)。
【図5】乳のみを原料とした発酵食品に含まれる各乳酸菌の生菌数を示した図である(実施例2)。
【図6】甘酒のみを原料とした発酵食品に含まれる各乳酸菌の生菌数を示した図である(実施例2)。
【図7】甘酒と乳とを配合した原料を用いた発酵食品に含まれる乳酸菌の生菌数を示した図である(実施例3)。

【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の「発酵食品」には、甘酒と乳とを配合した原料を乳酸菌によって発酵させてなる発酵食品であれば、飲料、乳酸菌発酵食品、ヨーグルト様発酵食品等のいずれの発酵食品も含まれる。主要な原料として甘酒を含みながら、甘酒由来の麹臭が低減されている発酵食品であることが特に好ましい。
本発明の発酵食品の原料として用いる甘酒は、食品として摂取される甘酒であればいずれのものであってもよく、飲料の状態で市販されている甘酒や、乾燥甘酒をお湯等に溶かして甘酒としたものであってもよい。
また、米と米麹を混合して加温することで調製した甘酒そのものや、酒粕からなる甘酒を用いてもよい。米と米麹から調製した甘酒そのものを使用する場合は、麹菌の蛋白分解酵素活性を加熱処理等により適宜失活させることが好ましい。麹菌の蛋白分解酵素活性を失活させることにより、本発明の発酵食品の製造にあたり、原料として加えた乳中のタンパク質の分解を抑え、雑味の原因となるペプチドやアミノ酸の発生を防ぐことができる。麹菌の蛋白分解酵素活性は完全に失活させる必要はなく、あくまでも嗜好性が損なわれない範囲であればよい。
また、本発明の発酵食品の原料として用いる乳は、食品として摂取される乳であればいずれのもであってもよく、牛乳、羊乳や、脱脂粉乳をお湯等で溶かして乳としたもの等であってもよい。
【0013】
さらに、本発明の「発酵食品」に用いる「甘酒と乳とを配合した原料」は、主要な原料として甘酒を含みながら、甘酒由来の麹臭が低減され、また、乳酸菌生菌数が高められた発酵食品が得られものであればいずれの原料も用いることができる。
甘酒と乳とを甘酒/乳=0.25(甘酒20%)~甘酒/乳=4(甘酒80%)となるように組み合わせて配合した原料であることが好ましく、特に甘酒/乳=1(甘酒50%)~甘酒/乳=3(甘酒66%)となるように組み合わせて配合した原料であることが好ましい。
また、甘酒と乳とを配合した原料自体、またはこれを乳酸菌によって発酵させた後に、砂糖、食物繊維、食塩、甘味料、酸味料、香料等の必要とする成分をさらに含ませてもよい。なお、必要とする成分は豆乳以外であることが好ましい。
【0014】
本発明の発酵食品の製造に用いる乳酸菌は、発酵によって甘酒由来の麹臭を低減できる作用を有する乳酸菌であればいずれのものであってもよい。例えば、ラクトバチルス プランタラム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス カゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトバチルス サケイ(Lactobacillus sakei)、ラクトバチルス ケフィア(Lactobacillus kefir)またはラクトバチルス マリ(Lactobacillus mali)等が挙げられ、これらの乳酸菌を一種以上または組み合わせて本発明の発酵食品の製造に用いることができる。
【0015】
さらに、このような乳酸菌として、ラクトバチルス プランタラム ML11-11株(Lactobacillus plantarum ML11-11)(託番号:NITE P-376)、ラクトバチルス カゼイ亜種ラムノサスIFO03831株(Lactobacillus casei subsp. Rhamnosus IFO03831)、ラクトバチルス サケイ亜種サケイ NBRC15893株(Lactobacillus sakei subsp. sakei NBRC15893)、ラクトバチルス カゼイ NBRC101981株(Lactobacillus casei NBRC101981)、ラクトバチルス ケフィア NBRC15888株(Lactobacillus kefir NBRC15888株)またはラクトバチルス マリ NBRC102159株(Lactobacillus mali NBRC102159)のいずれか一種以上が挙げられる。また、ラクトバチルス属菌以外の乳酸菌、例えばラクトコッカス属菌、ストレプトコッカス属菌、ビフィドバクテリウム属菌などに属する菌株を用いることも可能である。
【0016】
本発明の「発酵食品の製造方法」には、甘酒と乳とを配合した原料を乳酸菌によって発酵させることを含み、本発明の発酵食品が製造できる方法であればいずれの方法も含まれる。甘酒と乳とを配合した原料を乳酸菌によって発酵させることのみからなる製造方法であってもよく、さらに、食品として摂取できる甘味料、酸味料等を添加して味を調整する等の、発酵食品として提供するために必要とされる工程を含むものであってもよい。
この「発酵食品の製造方法」に用いる乳酸菌としては、本発明の発酵食品を製造できる乳酸菌であればいずれのものであってもよく、例えば、上記に挙げた乳酸菌などが挙げられる。
本発明の「発酵食品の製造方法」に用いる乳酸菌の原料への添加量は、菌株の種類、種培養の方法などによって異なるが、甘酒と乳とを配合した原料に対して0.5~10%(v/v)の比率で種培養液として添加することが好ましく、特に1~5%(v/v)の比率で添加することが好ましい。
【0017】
本発明の「甘酒由来の麹臭を低減する方法」には、甘酒と乳とを配合した原料を乳酸菌によって発酵させることにより、発酵食品に含まれる甘酒由来の麹臭を低減できる方法であればいずれの方法も含まれる。
ここで「甘酒由来の麹臭の低減」とは、乳酸菌によって発酵させる前の原料を官能評価した場合に感じられる甘酒由来の麹臭が、発酵後のものを官能評価した場合に完全に失われているかまたは明らかに低下している状態のことをいう。
この「甘酒由来の麹臭を低減する方法」に用いる乳酸菌としては、発酵によって甘酒由来の麹臭を低減できる作用を有する乳酸菌であればいずれのものであってもよく、例えば、上記に挙げた乳酸菌などが挙げられる。
【0018】
また、本発明の「乳酸菌の生菌数を高める方法」には、甘酒と乳とを配合した原料を乳酸菌によって発酵させることにより、発酵食品に含まれる乳酸菌の生菌数を高めることができる方法であればいずれの方法も含まれる。
ここで「乳酸菌の生菌数を高める」とは、本発明の発酵食品に含まれる乳酸菌の生菌数が、甘酒のみ、または、乳のみを原料として乳酸菌によって発酵させたものと比べて明らかに高くなる状態のことをいう。
この「乳酸菌の生菌数を高める方法」に用いる乳酸菌としては、甘酒のみ、あるいは、乳のみを原料として乳酸菌によって発酵させたものと比べて、甘酒と乳とを配合した原料を発酵させたものの生菌数が明らかに高くなる特性を有する乳酸菌であればいずれのものであってもよく、例えば、上記に挙げた乳酸菌などが挙げられる。
以下に実施例および試験例を示し、さらに本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの記載に限られるものではない。
【実施例1】
【0019】
<発酵食品の製造>
1.原料の調製
1)甘酒:16gの乾燥甘酒(商品名:乾燥甘酒、森永製菓株式会社)を100mlの温水に溶解して調製したものを用いた。
2)乳:16gのスキムミルク(商品名:北海道スキムミルク、森永製菓株式会社)を140mlの温水に溶解して調製したものを用いた。
3)上記1)25mlおよび2)25mlを配合して甘酒と乳とを配合した原料とした。
【0020】
2.乳酸菌
以下の1)~6)の各乳酸菌株を、MRS液体培地(Difco社)を用いて28℃で24時間前培養したものを用いた。
1)の乳酸菌株は、本発明者らが独自に単離し、寄託したものであり、2)~6)の乳酸菌株は、独立行政法人製品評価技術基盤機構(NBRC)より入手したものであった。
1)ラクトバチルス プランタラム ML11-11株(Lactobacillus plantarum ML11-11)(託番号:NITE P-376)
2)ラクトバチルス カゼイ亜種ラムノサスIFO03831株(Lactobacillus casei subsp. Rhamnosus IFO03831)、
3)ラクトバチルス サケイ亜種サケイ NBRC15893株(Lactobacillus sakei subsp. sakei NBRC15893)、
4)ラクトバチルス カゼイ NBRC101981株(Lactobacillus casei NBRC101981)、
5)ラクトバチルス ケフィア NBRC15888株(Lactobacillus kefir NBRC15888株)
6)ラクトバチルス マリ NBRC102159株(Lactobacillus mali NBRC102159)
【0021】
3.発酵食品の製造
上記1.で調製した原料50mlに、MRS液体培地を用いて28℃、24時間培養した乳酸菌の各培養液を種培養液として1.5ml接種し、30℃で24時間発酵させることで、本発明の発酵食品を製造した。なお、MRS培地の組成は以下の通りであった。
MRS培地:プロテオースペプトン10g、肉エキス10g、酵母エキス4g、ブドウ糖20g、Tween80 1g、リン酸水素二カリウム2g、酢酸ナトリウム5g、クエン酸三アンモニウム2g、硫酸マグネシウム0.1g、硫酸マンガン0.05g、蒸留水999ml、pH6.2
それぞれの発酵食品について5人で官能試験を行い、各発酵食品のpHを測定し、乳酸菌の生菌数を確認した。比較として上記1.1)の乳(50ml)を原料とした発酵食品、または上記1.2)の甘酒(50ml)を原料とした発酵食品も製造し、同様に官能試験、pH測定および生菌数を確認した。
【0022】
1)官能試験
香り(乳香、麹臭、ヨーグルト香)について、香りがしないものを-、香りがするものを香りの強さに応じて、+、++または+++として、-を0点、+を1点、++を2点、+++を3点として各自で評価した。5人の評価結果を集計して5で割った平均値が0から0.5未満の場合を-、0.5以上1.5未満の場合を+、1.5以上2.5未満の場合を++、2.5以上の場合を+++とした。結果を表1に示した。
味(酸味、甘味)について、味がしないものを-、味がするものを味の強さに応じて+、++または+++として各自で評価した。5人の評価結果の集計は、香りの官能評価と同様に行った。結果を表1に示した。
【0023】
【表1】
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【0024】
その結果、甘酒と乳とを配合した原料を用いた本発明の発酵食品は、いずれの乳酸菌を用いた場合でも、ブランクと比べてヨーグルト香が高くなっており、L.sakei以外の乳酸菌では、いずれも甘酒由来の麹臭が低減されていることが確認された。
L.mali、L.kefirを用いたものは、甘酒由来の麹臭が完全に低減されていることから、甘酒を主要な原料に含みながらも、甘酒由来の麹臭を全く感じさせない発酵食品の製造において、これらの乳酸菌が有用であることが示された。また、L.casei、L.plantarum、またはL.Rhamnosusを用いたものは甘酒由来の麹臭がほとんど、またはヨーグルト香と同等程度に低減されており、かつ、酸味と甘味のバランスの良い発酵食品が得られることが示された。
L.sakeiを用いたものは、甘酒由来の麹臭がほとんど低減されていないが、ヨーグルト臭も発生しており、甘酒由来の麹臭を生かしつつほのかにヨーグルト臭を有する発酵食品の製造において、この乳酸菌が有用であることが示された。
甘酒のみを原料として用いた場合は乳のみを原料として用いた場合に比べて、pHの低下が顕著であり、乳酸が多く生成していることが示唆された。甘酒と乳とを配合した原料を用いた場合も、pH低下も甘酒単独とほぼ同様で、やはり乳酸の生成が示唆された。
従って、甘酒と乳とを配合した原料を乳酸菌によって発酵させることによって、甘酒由来の麹臭を低減され、かつ、甘味と酸味のバランスの取れた好ましい発酵食品が製造できることが確認された。
【0025】
2)発酵食品中の生菌数の確認
得られた発酵食品1.0mlを9.0mlの生理食塩水に接種後、10の5乗から6乗倍に希釈したものを0.1mlずつMRS平板培地に塗抹し、28℃で24時間培養した後、培養後の生菌数を計測した。
【0026】
その結果、図1に示したように、L.plantarum(図1ではLPと示した)、またはL.Rhamnosus(図1ではLRと示した)は、乳のみまたは甘酒のみを原料とした発酵食品と比べて、甘酒と乳とを配合した原料を用いた発酵食品の方が、生菌数があきらかに多いことが確認された。また、図2に示したように、L.casei(図2ではLCと示した)、またはL.sakei(図2ではLSと示した)においては、L.caseiでは乳のみを原料とした発酵食品における生菌数も多かったが、甘酒と乳とを配合した原料を用いた発酵食品の方が多く、L.sakeiにおいても甘酒と乳とを配合した原料を用いた発酵食品の方があきらかに多かった。さらに、図3に示したように、L.mali(図3ではLMと示した)、またはL.kefir(図3ではLKと示した)においても甘酒と乳とを配合した原料を用いた発酵食品の方が、生菌数があきらかに高かった。
従って、甘酒と乳とを配合した原料を用いた場合に、乳のみ、または甘酒のみを原料とした発酵食品と比べて、発酵後の生菌数が高い、プロバイオティクスとしての特性の優れた発酵食品が製造できることが確認された。
【実施例2】
【0027】
<発酵食品の保存>
実施例1において製造した、甘酒と乳とを配合した原料を用いた発酵食品を用い、発酵食品の製造直後と2週間、5℃で冷蔵保存した後の生菌数を比較することで、保存における生菌数への影響を調べた。また、比較として乳のみ、または甘酒のみを原料とした発酵食品についても、生菌数への影響を調べた。
【0028】
その結果、乳酸菌の種類によって傾向は異なるものの、甘酒と乳とを配合した原料を用いた発酵食品(図4)、乳のみを原料とした発酵食品(図5)および甘酒のみを原料とした発酵食品(図6)のいずれにおいても、冷蔵保存後の生菌数は発酵直後に比べて変動はわずかであり、保存によっても乳酸菌の生菌数が維持されていることが確認された。
従って、本発明の甘酒と乳とを配合した原料を用いた発酵食品において、既存のヨーグルト等と同様に、冷蔵が必要となる発酵食品においても、生菌数が高く維持された、プロバイオティクスとしての特性の優れた発酵食品を製造できることが確認された。
【実施例3】
【0029】
<発酵食品の製造>
1.原料の調製
1)甘酒:甘酒(商品名:純米・無加糖ストレートあま酒、株式会社宝来屋)をそのまま用いた。
2)乳:16gのスキムミルク(商品名:北海道スキムミルク、森永製菓株式会社)を140mlの温水に溶解して調製したものを用いた。
3)上記1)甘酒および2)乳を、表2に記載したように、甘酒の配合割合が20~80%(V/V)となる割合で配合して、甘酒と乳とを配合した原料とした。
2.乳酸菌
ラクトバチルス プランタラム ML11-11株(Lactobacillus plantarum ML11-11)(託番号:NITE P-376)を、MRS液体培地(Difco社)を用いて28℃で24時間前培養したものを用いた。
【0030】
3.発酵食品の製造
上記1.で調製した各原料50mlに、MRS液体培地を用いて28℃、24時間培養した乳酸菌の培養液を種培養液として1.5ml接種し、30℃で24時間発酵させることで、本発明の発酵食品を製造した。
それぞれの発酵食品について、実施例1と同様に官能試験、pH測定および生菌数の確認を行い、各発酵食品のpHを測定し、乳酸菌の生菌数を確認した。比較として上記1.1)の甘酒(50ml)を原料とした発酵食品(甘酒配合割合100%)も製造し、同様に官能試験、pH測定および生菌数を確認した。官能試験の結果を表2に、生菌数を図7に示した。
【0031】
【表2】
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【0032】
その結果、甘酒の配合割合が20%~80%の発酵食品は、甘酒の配合割合が100%のものと比べて、好ましいヨーグルト香を有すると共に大幅に甘酒由来の麹臭が低減でき、かつ、酸味と甘味のバランスの良い発酵食品であった。
また、図7に示したように、甘酒の配合割合が20%~80%の発酵食品は、甘酒の配合割合が100%の場合と比べて生菌数が高かった。特に甘酒の配合割合が50%~66%の発酵食品が高い生菌数を示した。
従って、甘酒の配合割合が20%~80%となるように乳と組み合わせた原料を乳酸菌によって発酵させることによって、甘酒由来の麹臭を低減され、かつ、甘味と酸味のバランスの取れた好ましい発酵食品が製造できることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明の発酵食品は、甘酒を主要な原料に含みながらも甘酒由来の麹臭が低減されており、タンパク質と炭水化物の栄養バランスが良く、生菌数が高くプロバイオティクスとして優れた特性を有し、かつ甘味と酸味のバランスも良い嗜好性の高い発酵食品である。本発明の発酵食品は長期冷蔵保存しても生菌数が高い食品であることから広く流通することができる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6