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明細書 :情報記録ヘッド、情報記録装置、情報記録方法及び光デバイス

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5812380号 (P5812380)
公開番号 特開2012-022760 (P2012-022760A)
登録日 平成27年10月2日(2015.10.2)
発行日 平成27年11月11日(2015.11.11)
公開日 平成24年2月2日(2012.2.2)
発明の名称または考案の名称 情報記録ヘッド、情報記録装置、情報記録方法及び光デバイス
国際特許分類 G11B   5/31        (2006.01)
G11B   5/02        (2006.01)
G11B   5/65        (2006.01)
FI G11B 5/31 Z
G11B 5/02 T
G11B 5/65
請求項の数または発明の数 11
全頁数 24
出願番号 特願2010-161996 (P2010-161996)
出願日 平成22年7月16日(2010.7.16)
審判番号 不服 2014-016818(P2014-016818/J1)
審査請求日 平成25年7月12日(2013.7.12)
審判請求日 平成26年8月25日(2014.8.25)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】899000057
【氏名又は名称】学校法人日本大学
発明者または考案者 【氏名】中川 活二
【氏名】芦澤 好人
【氏名】大貫 進一郎
【氏名】伊藤 彰義
【氏名】塚本 新
個別代理人の代理人 【識別番号】100067736、【弁理士】、【氏名又は名称】小池 晃
【識別番号】100096677、【弁理士】、【氏名又は名称】伊賀 誠司
参考文献・文献 特開2009-538490(JP,A)
特開2003-157502(JP,A)
特開2006-351091(JP,A)
国際公開第2008/004535(WO,A1)
特開2009-163816(JP,A)
調査した分野 G11B 5/02
G11B 5/31
特許請求の範囲 【請求項1】
記録媒体粒子が分散された記録層を有する記録媒体に情報をレーザ光により記録する情報記録ヘッドであって、
上記記録媒体の記録層に照射する記録光の進行方向を軸とする略回転対称性を持った形状で、かつ、上記記録媒体の記録層に分散されている上記記録媒体粒子より大きなサイズの回転対称性開口を有するプラズモンアンテナを備え、
上記プラズモンアンテナに上記記録光として照射されるレーザ光により励起され、上記プラズモンアンテナに対向して位置される上記記録媒体の記録層に分散されている記録媒体粒子と、上記プラズモンアンテナの回転対称性開口との相互作用により、上記レーザ光の偏光に応じた円偏光又は楕円偏光を上記回転対称性開口のエッジ部分よりも内側の局所的な領域に発生して、上記記録媒体粒子内に直接磁化反転により情報を記録することを特徴とする情報記録ヘッド。
【請求項2】
上記プラズモンアンテナの回転対称性は、4回対称であることを特徴とする請求項1記載の情報記録ヘッド。
【請求項3】
記録媒体粒子が分散された記録層を有する記録媒体と、
上記記録媒体の記録層に照射する記録光の進行方向を軸とする略回転対称性を持った形状で、かつ、上記記録媒体の記録層に分散されている上記記録媒体粒子より大きなサイズの回転対称性開口を有するプラズモンアンテナと、
上記プラズモンアンテナに上記記録光としてレーザ光を照射する光源とを備え、
上記プラズモンアンテナに上記記録光として照射されるレーザ光により励起され、上記プラズモンアンテナに対向して位置される上記記録媒体の記録層に分散されている記録媒体粒子と、上記プラズモンアンテナの回転対称性開口との相互作用により、上記レーザ光の偏光に応じた円偏光又は楕円偏光を上記回転対称性開口のエッジ部分よりも内側の局所的な領域に発生して、上記記録媒体粒子内に直接磁化反転により情報を記録することを特徴とする情報記録装置。
【請求項4】
上記プラズモンアンテナの回転対称性は、4回対称であることを特徴とする請求項3記載の情報記録装置。
【請求項5】
上記光源は、短パルスレーザ光を照射することを特徴とする請求項3記載の情報記録装置。
【請求項6】
上記記録媒体は、上記記録媒体粒子としての1つの磁性粒子を1ビットとして記録するビット担体が複数配置されたビットパターンドメディアであることを特徴とする請求項3記載の情報記録装置。
【請求項7】
上記記録媒体は、絶縁マトリックス中にナノスケールの上記記録媒体粒子としての微小金属粒子を分散させたグラニュラー構造の記録媒体であることを特徴とする請求項3記載の情報記録装置。
【請求項8】
記録媒体粒子が分散された記録層を有する記録媒体に情報をレーザ光により記録する情報記録方法であって、
上記記録媒体の記録層に照射する記録光の進行方向を軸とする略回転対称性を持った形状で、かつ、上記記録媒体の記録層に分散されている上記記録媒体粒子より大きなサイズの回転対称性開口を有するプラズモンアンテナに上記記録光としてレーザ光を照射し、
上記プラズモンアンテナに上記記録光として照射されるレーザ光により励起され、上記プラズモンアンテナに対向して位置される上記記録媒体の記録層に分散されている記録媒体粒子と、上記プラズモンアンテナの回転対称性開口との相互作用により、上記レーザ光の偏光に応じた円偏光又は楕円偏光を上記回転対称性開口のエッジ部分よりも内側の局所的な領域に発生して、上記記録媒体粒子内に直接磁化反転により情報を記録することを特徴とする情報記録方法。
【請求項9】
4回対称の上記プラズモンアンテナに上記記録光として短パルスレーザ光を照射することを特徴とする請求項8記載の情報記録方法。
【請求項10】
レーザ光の照射により磁気効果を変化させる機能を有する光デバイスであって、
上記レーザ光の照射により磁化方向が可変される磁性粒子部と、
上記磁性粒子部に接して配された少なくとも1つの磁性体部と、
上記レーザ光の進行方向を軸とする略回転対称性を持った形状で、かつ、上記磁性粒子部より大きなサイズの回転対称性開口を有するプラズモンアンテナと
を備え、
上記プラズモンアンテナに照射されるレーザ光により励起され、上記プラズモンアンテナに対向して位置される上記磁性粒子部と、上記プラズモンアンテナの回転対称性開口との相互作用により、上記レーザ光の偏光に応じた円偏光又は楕円偏光を上記回転対称性開口のエッジ部分よりも内側の局所的な領域に発生して、上記磁性粒子部の直接磁化反転により、上記磁性粒子部に接して配された磁性体部の磁気作用を変化させることを特徴とする光デバイス。
【請求項11】
上記磁性粒子部に接して配された2つ磁性体部を備え、
上記磁性粒子部と、上記プラズモンアンテナの回転対称性開口との相互作用により、上記回転対称性開口のエッジ部分よりも内側の局所的な領域に上記円偏光又は楕円偏光を発生して、上記磁性粒子部の直接磁化反転により、上記磁性粒子部に接して配された2つの磁性体部間の電気抵抗を変化させることを特徴とする請求項10記載の光デバイス。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体粒子が分散された記録層を有する記録媒体に情報をレーザ光により記録する情報記録ヘッド、情報記録装置、情報記録方法及びレーザ光の照射により磁気効果を変化させる機能を有する光デバイス法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の情報社会においてデジタル化が加速し、大容量の記録装置の要求は益々高まっている。磁気記録装置として現在実用化されているものは、その磁気記録媒体として強磁性多結晶薄膜を有するものが用いられている。
【0003】
これは、グラニュラータイプとも呼ばれるものであり、高い一軸磁気異方性を持つ複数の磁性粒子からなる強磁性多結晶薄膜が媒体に設けられており、記録した情報の1ビットの中に磁性粒子が複数含まれているものである。記録密度が増加していくと、1ビットに含まれる磁性粒子の数が減るため磁束も減少し、ノイズが増加することになる。これまでは磁性粒子のサイズを小さくすることで高密度化を進めてきていたが、粒子サイズをこれ以上小さくすると、磁気情報を保持するエネルギーが不足してしまい、室温程度の熱エネルギーであっても情報が消えてしまうことになる。そこで、高密度化を進めるための一つの方法として、高い磁気安定性を有する記録材料を使うことも研究されている。しかしながら、磁性粒子の安定性が高いと、従来の磁気ヘッドでの記録が不可能になるという問題もある。このため、磁気ヘッドにより記録を行う前に、熱(光)により一時的に磁性粒子の保磁力を低下させて記録を行う光アシスト型の磁気記録装置も提案されている。さらに、より高密度化を目指すべく、トラック長手方向についても磁気記録層を分離して、1つの磁性粒子を1ビットとして記録するビットパターンドメディアが提案されている。これは、1つの磁性粒子ごとに物理的に磁性層が分離されており、ビット担体として磁性体を均等にトラック長手方向に配置した構造である(例えば、 特許文献1参照)。
【0004】
そして、本件出願の発明者等は、1つの磁性粒子を1ビットとして記録するビットパターンドメディアとして、基板上に、均等に微小な凹部が表出されている下地層が積層され、上記微小な凹部が表出されている下地層の表面上に、非晶質磁性膜が積層されてなり、上記下地層は、テトラエトキシシランを原材料とし、面心立方構造状に均等に自己配列された球状ミセルが取り除かれることにより、同一サイズの球状の空孔が面心立方体構造状に均等に形成されてなる酸化珪素からなる層であり、上記非晶質磁性膜が積層される面に、均等に微小な凹部が表出されるように表面処理が施されている磁気記録媒体を先に提案している(例えば、 特許文献2参照)。
【0005】
また、磁気ディスクメモリは、今日のコンピュータ社会を支える重要なファイルメモリシステムであるが、磁性材料の応答速度の物理的限界が近づいており、近い将来、大容量データを適切な速度で記録することが不可能になる。
【0006】
これを打破する新たな手法として、本件出願の発明者等は、円偏光で磁化状態を制御するようにした円偏光による記録方法を提案している(例えば、非特許文献1、 特許文献3参照)。
【0007】
すなわち、磁化可能な媒体と、前記媒体の磁化を選択的に配向するように、前記磁化可能な媒体の磁気スピン系に対して角運動量を付与するように適合された照射系とを備える光磁気スイッチング素子により、反対の磁化またはスピンの領域として情報「ビット」を記録することができる。
【0008】
磁性材料中のスピン状態は、適切な角運動量の照射を、特に円偏光または楕円偏光を使用して操作することができる。有効磁界は、磁区の磁化を配向するために生成され、同時に材料を局所的に加熱するのに使用することができる。
【0009】
円偏光レーザーパルスは、有効磁界としてのスピン軌道結合を介してスピンに作用するが、この効果は逆ファラデー効果として知られている。この磁界の大きさは、第一次近似では温度に応じて変わらない磁気光学定数に比例する。したがって、現象論的には、効果全体は、磁気系の加熱に逆ファラデー効果による有効磁界の印加を加えたものである。キュリー温度近傍において拡散する磁化率のため、スイッチングは非常に効率的である。
【0010】
具体的には、フェムト秒パルスレーザを光源とした円偏光を用い、GdFeCo薄膜に対しパルス長40fs(フェムト秒:10-15秒)の単一パルス照射のみで磁化反転できる。また、その光-スピン間作用が光の進行方向へ磁界を加えたことと等価で、円偏光のヘリシティ(右回りあるいは左回り)の選択により制御可能であり、現象論的に逆ファラデー効果で説明できる。
【先行技術文献】
【0011】

【特許文献1】特開2009-163816号公報
【特許文献2】WO2005/081233号公報
【特許文献3】特表2009-538490号公報
【0012】

【非特許文献1】”All-Optical Magnetic Recording with Circularly Polarized Light”, C. D Stanciu et. al.: Physical Review Letters, Vol. 99, 047601 (2007).
【非特許文献2】”Circularly and elliptically polarized near-field radiation from nanoscale subwavelength apertures”, Erdem Ogut et. al.: Applied Physics Letters, Vol. 96 141104 (2010).
【非特許文献3】「ナノサイズ十字型開口アンテナ近傍の円偏光解析」、太田武志、芦澤好人、中川活二、第33回日本磁気学会学術講演会概要集(2009)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従来の光磁気記録は、光によって温度が上昇することを利用しており書き込み速度が本質的に遅く、また、書き込み領域が小さくなると磁化が不安定になり情報が消えてしまうという問題点がある。
【0014】
本件出願の発明者等が先に提案している円偏光で磁化状態を制御するようにした円偏光による記録方法では、外部磁界無しで円偏光により高速磁化反転させることができるのであるが、現行の技術では、高速記録はできても、記録密度を増加することが難しい。すなわち、高密度記録には、円偏光を局所的に発生する必要があるのにもかかわらず、光の回折限界の物理的制限により波長のオーダーまでしか光を絞ることができない。
【0015】
ところで、円偏光でプラズモン共鳴が起こることが報告されており(例えば、 非特許文献2参照)、局所的な円偏光を作るのに、近接場光の利用が考えられる。
【0016】
本件出願の発明者等は、ナノメートルサイズ十字型開口アンテナ近傍の円偏光解析を行い、記録媒体を配置した状態でナノメートルサイズ十字型開口アンテナ近傍の円偏光に近いモードを形成できることを公表している(例えば、非特許文献3参照)。
【0017】
そこで、本発明の目的は、上述の如き従来の実情に鑑み、円偏光による直接磁化反転により情報を記録するに当たり、高速化と高密度化を同時に実現した情報記録ヘッド、情報記録装置及び情報記録方法を提供することにある。
【0018】
また、本発明の他の目的は、レーザ光の照射により磁気効果を変化させる機能を有する光デバイス法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明では、上述した課題を解決するために、照射される記録光の進行方向を軸とする略回転対称性を持った形状のナノメートルサイズの回転対称性開口と記録媒体粒子との相互作用を利用して上記記録媒体粒子内に局所的に円偏光を発生して直接磁化反転により情報を記録する。
【0020】
すなわち、本発明は、記録媒体粒子が分散された記録層を有する記録媒体に情報をレーザ光により記録する情報記録ヘッドであって、上記記録媒体の記録層に照射する記録光の進行方向を軸とする略回転対称性を持った形状で、かつ、上記記録媒体の記録層に分散されている上記記録媒体粒子より大きなサイズの回転対称性開口を有するプラズモンアンテナを備え、上記プラズモンアンテナに上記記録光として照射されるレーザ光により励起され、上記プラズモンアンテナに対向して位置される上記記録媒体の記録層に分散されている記録媒体粒子と、上記プラズモンアンテナの回転対称性開口との相互作用により、上記レーザ光の偏光に応じた円偏光又は楕円偏光を上記回転対称性開口のエッジ部分よりも内側の局所的な領域に発生して、上記記録媒体粒子内に直接磁化反転により情報を記録することを特徴とする。
【0021】
本発明に係る情報記録ヘッドにおいて、上記プラズモンアンテナの回転対称性は、4回対称であることが好ましい。
【0022】
また、本発明は、情報記録装置であって、記録媒体粒子が分散された記録層を有する記録媒体と、上記記録媒体の記録層に照射する記録光の進行方向を軸とする略回転対称性を持った形状で、かつ、上記記録媒体の記録層に分散されている上記記録媒体粒子より大きなサイズの回転対称性開口を有するプラズモンアンテナと、上記プラズモンアンテナに上記記録光としてレーザ光を照射する光源とを備え、上記プラズモンアンテナに上記記録光として照射されるレーザ光により励起され、上記プラズモンアンテナに対向して位置される上記記録媒体の記録層に分散されている記録媒体粒子と、上記プラズモンアンテナ回転対称性開口との相互作用により、上記レーザ光の偏光に応じた円偏光又は楕円偏光を上記回転対称性開口のエッジ部分よりも内側の局所的な領域に発生して、上記記録媒体粒子内に直接磁化反転により情報を記録することを特徴とする。
【0023】
本発明に係る情報記録装置において、回転対称性は、4回対称であることが好ましい。
【0024】
また、本発明に係る情報記録装置において、上記光源は、短パルスレーザ光を照射するものとすることができる。
【0025】
また、本発明に係る情報記録装置において、上記記録媒体は、1つの磁性粒子を1ビットとして記録するビット担体が複数配置されたビットパターンドメディアとすることができる。
【0026】
さらに、本発明に係る情報記録装置において、上記記録媒体は、絶縁マトリックス中にナノスケールの微小金属粒子を分散させたグラニュラー構造の記録媒体とすることができる。
【0027】
また、本発明は、記録媒体粒子が分散された記録層を有する記録媒体に情報をレーザ光により記録する情報記録方法であって、上記記録媒体の記録層に照射する記録光の進行方向を軸とする略回転対称性を持った形状で、かつ、上記記録媒体の記録層に分散されている上記記録媒体粒子より大きなサイズの回転対称性開口を有するプラズモンアンテナに上記記録光としてレーザ光を照射し、上記プラズモンアンテナに上記記録光として照射されるレーザ光により励起され、上記プラズモンアンテナに対向して位置される上記記録媒体の記録層に分散されている記録媒体粒子と、上記プラズモンアンテナの回転対称性開口との相互作用により、上記レーザ光の偏光に応じた円偏光又は楕円偏光を上記回転対称性開口のエッジ部分よりも内側の局所的な領域に発生して、上記記録媒体粒子内に直接磁化反転により情報を記録することを特徴とする。
【0028】
本発明に係る情報記録方法は、4回対称の上記プラズモンアンテナに上記記録光として短パルスレーザ光を照射するものとすることができる。
【0029】
さらに、本発明は、レーザ光の照射により磁気効果を変化させる機能を有する光デバイスであって、上記レーザ光の照射により磁化方向が可変される磁性粒子部と、上記磁性粒子部に接して配された少なくとも1つの磁性体部と、上記レーザ光の進行方向を軸とする略回転対称性を持った形状で、かつ、上記磁性粒子部より大きなサイズの回転対称性開口を有するプラズモンアンテナとを備え、上記プラズモンアンテナに照射されるレーザ光により励起され、上記プラズモンアンテナに対向して位置される上記磁性粒子部と、上記プラズモンアンテナの回転対称性開口との相互作用により、上記レーザ光の偏光に応じた円偏光又は楕円偏光を上記回転対称性開口のエッジ部分よりも内側の局所的な領域に発生して、上記磁性粒子部の直接磁化反転により、上記磁性粒子部に接して配された磁性体部の磁気作用を変化させることを特徴とする。
【0030】
本発明に係る光デバイスは、上記磁性粒子部に接して配された2つ磁性体部を備え、上記磁性粒子部と、上記プラズモンアンテナの回転対称性開口との相互作用により、上記回転対称性開口のエッジ部分よりも内側の局所的な領域に上記円偏光又は楕円偏光を発生して、上記磁性粒子部の直接磁化反転により、上記磁性粒子部に接して配された2つの磁性体部間の電気抵抗を変化させるものとすることができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、記録媒体の記録層に照射する記録光の進行方向を軸とする略回転対称性を持った形状で、かつ、上記記録媒体の記録層に分散されている上記記録媒体粒子より大きなサイズの回転対称性開口を有するプラズモンアンテナに上記記録光として照射されるフェムト秒パルスレーザ光により励起され、上記プラズモンアンテナの回転称性開口に対向して位置される記録媒体の記録層に分散されている記録媒体粒子と、上記プラズモンアンテナの回転対称性開口との相互作用により、上記プラズモンアンテナの回転対称性開口のエッジ部分よりも内側の局所的な領域に発生して上記記録媒体粒子に、直接磁化反転により情報を記録することによって、高速化と高密度化を同時に実現することができ、従来は、1ミクロン程度の磁区サイズの記録しか行えなかったが、数十ナノメートルサイズでの記録を可能にできる。
【0032】
すなわち、本発明によれば、記録媒体の記録層に分散されている記録媒体粒子と、プラズモンアンテナの上記記録媒体粒子より大きなサイズの回転対称性開口との相互作用により、記録光として上記プラズモンアンテナに照射されるレーザ光により励起される上記レーザ光の偏光に応じた円偏光又は楕円偏光を上記プラズモンアンテナの回転対称性開口のエッジ部分よりも内側の局所的な領域に発生して上記記録媒体粒子に、直接磁化反転により情報を記録することによって、高速化と高密度化を同時に実現した情報記録ヘッド、情報記録装置及び情報記録方法を提供することができる。
【0033】
また、本発明では、プラズモンアンテナに照射されるレーザ光により励起され、上記プラズモンアンテナに対向して位置される磁性体部と、上記プラズモンアンテナの回転対称性開口との相互作用により、
上記レーザ光の偏光に応じた円偏光又は楕円偏光を上記プラズモンアンテナの回転対称性開口のエッジ部分よりも内側の局所的な領域に発生して、直接磁化反転により、磁性粒子部に接して配された磁性体部の磁気作用を変化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明を適用した情報記録装置の概略構成を示す斜視図である。
【図2】上記情報記録装置の構成の要部構成を模式的に示すブロック図である。
【図3】上記情報記録装置における情報記録ヘッドに備えられるプラズモンヘッドのシミュレーションモデルを示す模式図である。
【図4】回転対称性を有する立体形状の立体アンテナの構造例を模式的に示す図である。
【図5】4回対称性アンテナの構造例を模式的に示す図である。
【図6】2回対称性アンテナの構造例を模式的に示す図である。
【図7】4回対称性開口型アンテナの電磁界の時間分布を示す図である。
【図8】上記4回対称性開口型アンテナの開口中央の観測点における磁気媒体方向(+Z方向)のポインチングベクトルS及びX-Y平面内の電界と磁界の位相差θを示す図である。
【図9】十字開口型アンテナ及び円形開口型アンテナにおけるポインチングベクトルのZ方向成分Sの空間分布を示す図である。
【図10】Co連続記録媒体に十字形状の開口(Cross aperture)を対向させた十字開口型アンテナのシミュレーションモデルを示す模式図である。
【図11】上記図10に示した十字開口型アンテナのシミュレーションモデルX-Y面内の電界Eと磁界Hのなす角θの開口部の長辺の長さLに対する依存性を示す図である。
【図12】アンテナ無しの場合、十字開口型アンテナ、円形開口型アンテナのシミュレーションモデルおけるCo連続記録媒体上での各円偏光度Cを評価した結果を示す図である。
【図13】図12におけるA-A’線、A-B線、A-A’線上での各円偏光度Cを示す図である。
【図14】アンテナ無しの場合、十字開口型アンテナ、円形開口型アンテナのシミュレーションモデルおけるCo連続記録媒体上での各電界強度Iを評価した結果を示す図である。
【図15】図14におけるA-A’線、A-B線、A-A’線上での各電界強度Iを示す図である。
【図16】アンテナ無しの場合、十字開口型アンテナ、円形開口型アンテナのシミュレーションモデルおけるCo連続記録媒体上での各性能指数Fを評価した結果を示す図である。
【図17】図16におけるA-A’線、A-B線、A-A’線上での各性能指数Fを示す図である。
【図18】図3に示したプラズモンヘッドにおいて、ビット担体上の観測位置でポインチングベクトルS、電界E、磁界H及びその位相差θをシミュレーションするシミュレーションモデルを示す図である、
【図19】十字開口型アンテナのシミュレーションモデルのX-Z面内における円偏光度S、電界強度I、及び、性能指数Fを示す図である。
【図20】上記十字開口型アンテナのシミュレーションモデルのX-Z面内における円偏光度S、及び、記録媒体方向(+Z方向)の方向余弦S/|S|を示す図である。
【図21】上記十字開口型アンテナのシミュレーションモデルの中心部における記録媒体方向(+Z方向)の位相差分布及び方向余弦S/|S|を示す図である。
【図22】連続記録媒体に対向させた十字開口型アンテナのシミュレーションモデル及びアンテナ無しのシミュレーションモデルの中心部における記録媒体方向(+Z方向)の位相差分布及び方向余弦S/|S|を示す図である。
【図23】連続記録媒体に対向させた十字開口型アンテナのシミュレーションモデル及びアンテナ無しのシミュレーションモデルの中心部における記録媒体方向(+Z方向)の位相差分布及び方向余弦S/|S|を示す図である。
【図24】上記情報記録装置における情報記録ヘッドに備えられるプラズモンヘッドの他のシミュレーションモデルを示す模式図である。
【図25】上記プラズモンヘッドの他のシミュレーションモデルのX-Z面内における円偏光度S’、記録媒体方向(+Z方向)の方向余弦S/|S|、及び、電界強度I’を示す図である。
【図26】上記プラズモンヘッドの他のシミュレーションモデルにおいて、入射円偏光を逆にした場合のX-Z面内における円偏光度S’、記録媒体方向(+Z方向)の方向余弦S/|S|、及び、電界強度I’を示す図である。
【図27】本発明を適用した光磁気抵抗効果デバイスの構造例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。

【0036】
本発明は、例えば図1、図2に示すように、磁性体からなるビット担体15が媒体基板上に複数配置されるビットパターンドメディア10に情報を記録する情報記録装置100に適用される。

【0037】
この情報記録装置100は、ビットパターンドメディア10と情報記録ヘッド20と検出部30と制御部40とを備え、上記ビットパターンドメディア10のビット担体15の配置位置を検出部30により直接検出して、その検出信号を記録のクロック信号として用いて制御部40により記録動作を制御して、情報記録ヘッド20により上記ビットパターンドメディア10のビット担体15に情報を1ビットごとに記録するものである。

【0038】
記録媒体として用いられるビットパターンドメディア10は、磁性体からなるビット担体(記録担体)15が基板上に複数配置されている。ビット担体15は、例えば半導体製造プロセス等により1ビットが1ビット担体に対応するように形成されるものであり、例えば図1の一部拡大図に示されるように、磁性層に凹凸を形成することでビット担体となる磁性領域とそれ以外の領域である非磁性領域に分離されたものである。なお、物理的に凹凸を設けて形成されたビットパターンドメディアに限定されず、1ビット担体となるように構成された媒体であれば、如何なる構造であっても良い。例えば組成や膜構造を変化させて磁気的に分離された媒体等でも構わない。例えば、高分子の自己組織化現象を利用した面心立方構造(Face-Centered Cubic )配列のナノスケール空孔を内部に有するSiO膜を下地層に用い高密度磁性微粒子膜の作製し、この多孔質SiO膜の表面をArイオンエッチングにより周期的に配列したナノメートルサイズの凹凸を表出させたテンプレート基板上に、高充填密度のナノメートルサイズの磁性微粒子を形成した超高密度記録媒体を用いることができる。

【0039】
情報記録ヘッド20は、制御部40により発光タイミングが制御され記録用のレーザ光を出射する半導体レーザを用いた光源部21と、上記光源部21から記録光として出射されるレーザ光により励起され、ビットパターンドメディア10上のビット担体15内部に円偏光を発生させるナノメートルサイズの開口22Aを有するプラズモンアンテナ22とからなる。

【0040】
上記光源部21には、記録用のレーザ光として例えば波長λが780nmのレーザ光を出射する半導体レーザが用いられる。 上記光源部21は、制御部40により発光タイミングが制御され記録用のレーザ光として例えば波長λが780nmのフェムト秒パルスレーザ光を出射する。

【0041】
検出部30は、情報記録ヘッド20によりビット担体15に記録を行なう前に、そのビット担体15の配置位置を検出する。即ち、検出部30は、記録を行おうとするビット担体15の配置位置を、記録を行う前に予め検出しておく。ビット担体15は高精度なプロセスにより製造されるが、記録密度を高めるためにビット担体15の配置ピッチが例えば25nmピッチというように微細になるにつれ、製造誤差による配置位置のずれの影響が無視できなくなってくる。検出部30は、このずれを補償するためにビット担体15の配置位置を検出すべく設けられたものであり、ビット担体15の配置位置を検出し、これに基づきこの配置位置に応じた相関信号を出力する。

【0042】
なお、ビット担体15の配置位置を検出する手法は種々のものが利用できる。一例としては、ビット担体15の配置位置に起因する物理的現象変化を検出するものが挙げられる。物理的現象変化としては、例えばビット担体15に対する光強度変化、静電容量変化、磁気変化、渦電流変化、音波反射時間変化等が挙げられる。例えば、ビット担体15に対して光を照射すると、ビット担体15の配置位置によってその近接場光強度が変化するので、これを検出する。また、静電容量を検出する場合には、ビット担体15の配置位置によって金属板間の静電容量が変化することを利用する。同様に、磁気の変化を磁気センサで検出したり、金属板に生じる渦電流の変化を検出したり、超音波等を照射して反射波の返ってくる時間を計測することで硬度の変化を検出したりすることで、ビット担体15の配置位置を検出することができる。

【0043】
制御部40は、検出部30により得られた相関信号を用いて、情報記録ヘッド20のビット担体15に対する記録のタイミングを制御する。すなわち、ビット担体15の位置を検出した上でその配置位置にタイミングを合わせて情報記録ヘッド20の記録を行う。制御部40は、情報記録ヘッド20による記録タイミングを決定するクロック信号を出力するように構成されれば良く、このクロック信号として、ビット担体15の配置位置の変化に対応する相関信号を用いることで、ビット担体15の配置位置を検出し、これをクロック信号としてそのまま用いることが可能となる。したがって、例えば45nmピッチで配置されているべきビット担体15が、製造誤差により個々のビット担体間の距離が44nmや46nmに変化したとしても、上記情報記録ヘッド20による記録前にこの配置位置の変化を上記検出部40で検出し、正確にビット担体15に対してタイミングを合わせて記録を行うことが可能となる。なお、記録媒体の回転速度と情報記録ヘッド・検出部間の距離との関係により、所定のタイミングだけ遅延させたクロック信号を出力して記録を行えば良い。

【0044】
この情報記録装置100は、上記光源部21から出射される波長λが780nmのフェムト秒パルスレーザ光を上記ナノメートルサイズの開口22Aを有するプラズモンアンテナ22に照射することにより、上記プラズモンアンテナ22を励振して、上記プラズモンアンテナ22とビットパターンドメディア10上のビット担体15との相互作用により局所的に円偏光を発生する。これにより、外部磁界無しで上記ビット担体15を円偏光により直接磁化反転させ、1ビットの情報を記録する。

【0045】
なお、上記光源部21は、情報記録ヘッド20の外部に設け、上記光源部から出射された波長λが780nmのフェムト秒パルスレーザ光を上記プラズモンアンテナ22に照射する導光路を情報記録ヘッド20に設けるようにしてもよい。

【0046】
上記ビットパターンドメディア10上のビット担体15との相互作用により局所的に円偏光を発生するプラズモンアンテナ22には、光の進行方向を軸とする回転対称性を持った形状のナノメートルサイズの開口22Aを有する開口アンテナが用いられる。

【0047】
例えば図3の(A),(B)にシミュレーションモデルを示すように、縦・横それぞれ2000nmの正方形で厚さ35nmの銀(Ag)製の板22Bに長辺L=150nm、短辺W=20nmの長方形を直交させた十字形状の開口(Cross aperture)22Aを設けた十字開口型アンテナが上記プラズモンアンテナ22として用いられる。

【0048】
すなわち、この情報記録装置100における情報記録ヘッド20は、記録媒体粒子が分散された記録層を有する記録媒体に情報をフェムト秒パルスレーザ光により情報を記録するものであって、上記記録媒体の記録層に分散されている上記録媒体粒子すなわちビットパターンドメディア10上のビット担体15より大きなナノメートルサイズで照射される記録光の進行方向を軸とする回転対称性を持った形状の回転対称性開口22Aを有するプラズモンアンテナ22を備え、上記プラズモンアンテナ22に上記記録光として照射されるフェムト秒パルスレーザ光により励起され、上記プラズモンアンテナ22の回転対称性開口22Aに対向して位置される上記記録媒体の記録層に分散されている記録媒体粒子と、上記プラズモンアンテナ22の回転対称性開口22Aとの相互作用により、上記記録媒体粒子内に円偏光を発生して直接磁化反転により情報を記録する。

【0049】
ここで、FDTD法(Finite-difference time-domain method; FDTD method)のシミュレーションソフトウエアとして市販の汎用3次元電磁解析ソフトウエアである富士通株式会社製の「Poynting」を用いて開口アンテナ近傍の電磁界シミュレーションを行ったところ、次のような結果が得られた。

【0050】
シミュレーションモデルでは、入射光を+Z軸方向に入射し、波長λ=780nmの円偏光とし、強度分布が中心ピーク電界1V/mのガウシアン分布とし、ガウス半径780nm(Intensity=1/e)で、最小セルサイズを1×1×1nmとした。

【0051】
ここで、回転対称アンテナには、回転対称性を有する形状の開口アンテナや線状アンテナ、また、例えば、図4の(A)~(D)に示すような回転対称性を有する立体形状の立体アンテナ110A,110B、110C,110Dなどがある。

【0052】
4回対称性アンテナは、その構造例を図5の(A)~(D)に示すように、回転対称性を有する形状に形成された開口アンテナや線状アンテナあるいは立体アンテナを2組、4回対称に配置した構造を有する。
図5の(A)に示す4回対称性アンテナ221A、金属板に4回対称性を持つ開口を設けた4回対称性開口アンテナである。

【0053】
図5の(B)に示す4回対称性アンテナ221Bは、線状アンテナを4回対称性を持つように配置した4回対称性線状アンテナである。

【0054】
図5の(C)に示す4回対称性アンテナ221Cは、回対称性を持つ球状の立体アンテナを4回対称性を持つように配置した4回対称性立体アンテナである。

【0055】
図5の(D)に示す4回対称性アンテナ221Dは、回対称性を持つ球状の立体アンテナを4回対称性を持つように配置した4回対称性立体アンテナである。

【0056】
また、2回対称性アンテナは、その構造例を図6の(A)~(D)に示すように、対向する2組の回転対称アンテナのサイズや形状を変化させた構造を有する。

【0057】
すなわち、図6の(A)に示す2回対称性アンテナ222Aは、金属板に2回対称性を持つように設けたサイズの異なる2組の回転対称開口を有する2回対称性開口アンテナである。

【0058】
図6の(B)に示す2回対称性アンテナ222Bは、サイズの異なる2組の線状アンテナを2回対称性を持つように配置した2回対称性線状アンテナである。

【0059】
図6の(C)に示す2回対称性アンテナ222Cは、サイズの異なる2組の回対称性を持つ球状の立体アンテナを2回対称性を持つように配置した2回対称性立体アンテナである。

【0060】
図6の(D)に示す2回対称性アンテナ222Dは、サイズの異なる2組の回対称性を持つ球状の立体アンテナを2回対称性を持つように配置した2回対称性立体アンテナである。

【0061】
これらは、例えば対称軸に45°程度傾いた方向に電界ベクトルを有する直線偏光を入射する等して、長軸短軸の共鳴条件の違いによる位相差で円偏向を生成することができる。すなわち、上記プラズモンアンテナ22は、原理的には2回対称性を持つアンテナであれば良い。

【0062】
4回対称性開口型アンテナでは、長辺L=150nm、短辺W=20nmの長方形を直交させた十字形状の開口(Cross aperture)を設けた十字開口型アンテナの電磁界の時間分布を図7の(A),(B)に示すように、電界成分はX方向成分EとY方向成分Eの大きさが等しく、磁界成分はX方向成分HとY方向成分Hの大きさが等しく、電界成分と磁界成分の位相差がλ/4ずれている。

【0063】
そして、上記4回対称性開口型アンテナの中央の観測点における磁気媒体方向(+Z方向)のポインチングベクトルS及びX-Y平面内の電界と磁界の位相差θを図8の(A),(B)に示すように、4回対称性開口型アンテナは、S/|S|>0.95のとき、伝搬方向及び電界と磁界の位相差θ
θ=tan-1(E/E)-tan-1(H/H
が一定であり、円偏光を発生するプラズモンアンテナとして用いるのに適している。

【0064】
また、十字開口型アンテナ及び円形開口型アンテナにおけるポインチングベクトルのZ方向成分Sの空間分布を図9に示すように、十字開口型アンテナでは、局所的に高いエネルギーを伝搬する。

【0065】
そこで、図10の(A),(B)に示すように、長辺の長さL、短辺の長さWの長方形を直交させた十字形状の開口(Cross aperture)22A’を銀(Ag)製の板22B’に設けた十字開口型アンテナのシミュレーションモデルについて、L=100~400nm,W=20nmとし、入射光を+Z軸方向に入射し、波長λ=780nmの円偏光とし、強度分布が中心ピーク電界1V/mのガウシアン分布とし、Co連続記録媒体150を媒体とアンテナ間距離FH=5nmとして配置したシミュレーションモデルにおいて、記録媒体上1nmの位置でポインチングベクトルS、電界E、磁界H及びその位相差θを評価し、記録媒体無しの場合と比較した。

【0066】
円偏光モード解析には、電界Eと磁界Hが入射円偏光に同期して回転モードになっていることに加えて、ポインチングベクトルSが安定して記録媒体方向(+Z軸方向)を向いていることに着目した。

【0067】
記録媒体無しの場合、開口部の長辺Lが250nm以上においてポインチングベクトルSの向きが+Z軸方向と-Z軸方向にランダムに変化する現象が現れた。また、開口部の長辺Lが100nm~200nmの範囲では、ポインチングベクトルSが常に+Z軸方向を示し、その方向余弦(S/|S|)は常に0.995以上であった。この時のX-Y面内の電界Eと磁界Hのなす角θの開口部の長辺の長さLに対する依存性を図11に示すように記録媒体無しでは、上記角θの長辺Lに依存し大きく変化している。

【0068】
一方、記録媒体を配置した場合には、解析した範囲内で開口部の長辺の長さLに依らずX-Y面内の電界Eと磁界Hのなす角θは常に90°から130°の範囲を示し、また、その方向余弦(S/|S|)は常に0.995以上であった。

【0069】
以上のように、記録媒体を配置した状態でナノメートルサイズの十字開口型アンテナ近傍において円偏光に近いモードを形成するができる。

【0070】
ここで、光の強度を示すパラメータS、水平優越分を示すパラメータS、+45°優越分を示すパラメータS、円優越分を示すパラメータSを電場の平均値によって表したストークスパラメータS、S、S、S
=<EX2>+<EY2
=<EX2>-<EY2
=<2Ecosr>
=<2Esinr>
を用いて、表1に示すように、どのような偏光であるか、すなわち、右回り円偏光、直線偏光、45°ずれた直線偏光、あるいは、楕円偏光であるかを評価することができる。

【0071】
ここで、Eは電界のX成分、Eは電界のY成分、rは電界のX成分EとY成分Eの位相差、<>は時間平均を表す。

【0072】
【表1】
JP0005812380B2_000002t.gif

【0073】
アンテナ無しの場合、十字開口型アンテナ、円形開口型アンテナのシミュレーションモデルについて、上記ストークスパラメータS、S、S、Sを拡張した次の各式を用いて円偏光度C、電界強度I、性能指数Fを評価した結果を図12~図17に示す。

【0074】
C=<2Esinr>/(<EX2>+<EY2>+<EZ2>)
I=<EX2>+<EY2>+<EZ2
F=C×I=<2Esinr>
ここで、Eは電界のX成分、Eは電界のY成分、Eは電界のZ成分、rは電界のX成分EとY成分Eの位相差、<>は時間平均を表す。

【0075】
図12の(A),(B),(C)は、アンテナ無しの場合、十字開口型アンテナを設けた場合、円形開口型アンテナを設けた場合におけるCo連続記録媒体250上での各円偏光度Cを示し、図13は、図12の(A),(B),(C)におけるA-A’線、A-B線、A-A’線上での各円偏光度Cを示している。

【0076】
図14の(A),(B),(C)は、アンテナ無しの場合、十字開口型アンテナを設けた場合、円形開口型アンテナを設けた場合におけるCo連続記録媒体250上での各電界強度Iを示し、図15は、図14の(A),(B),(C)におけるA-A’線、A-B線、A-A’線上での各電界強度Iを示している。

【0077】
図16の(A),(B),(C)は、アンテナ無しの場合、十字開口型アンテナを設けた場合、円形開口型アンテナを設けた場合におけるCo連続記録媒体250上での各性能指数Fを示し、図17は、図16の(A),(B),(C)におけるA-A’線、A-B線、A-A’線上での各性能指数Fを示している。

【0078】
しかしながら、十字開口型アンテナや円形開口型アンテナでは、開口の範囲内の領域に高いエネルギーを伝搬することができ、特に、十字開口型アンテナでは、局所的に高いエネルギーを伝搬することができるのであるが、開口のエッジ部分に電界強度Iが高くなった領域が形成されてしまい、この開口のエッジ部分の電界強度Iが高くなった領域まで記録となってしまう虞がある。

【0079】
これに対して、上述の如くビットパターンドメディア10上のビット担体15内部に円偏光を発生させるナノメートルサイズの開口22Aを有するプラズモンアンテナ22として、上述の図3の(A),(B)に示した4回対称性開口型アンテナ、すなわち、長辺の長さL、短辺の長さWの長方形を直交させた十字形状の開口(Cross aperture)22Aを銀(Ag)製の板22Bに設けた十字開口型アンテナのシミュレーションモデルについて、L=150nm,W=20nmとし、入射光を+Z軸方向に入射し、波長λ=780nmの円偏光とし、強度分布が中心ピーク電界1V/mのガウシアン分布とし、媒体とアンテナ間距離FH=5nmとして配置したシミュレーションモデルにおいて、図18に示すよう、ビット担体15上1nmの位置でポインチングベクトルS、電界E、磁界H及びその位相差θをシミュレーションし、円偏光度C、電界強度I、性能指数Fを評価した結果を図19~図21に示すように、ビット担体15内部に円偏光を確実に発生することができ、高速、高密度磁気記録を行うことができる。

【0080】
ここで、図19の(A),(B),(C)は、十字開口型アンテナのシミュレーションモデルのX-Z面内における円偏光度S、電界強度I及び、性能指数Fを示し、また、図20の(A),(B)は、上記十字開口型アンテナのシミュレーションモデルのX-Z面内における円偏光度S、及び、記録媒体方向(+Z方向)の方向余弦S/|S|を示し、さらに、図21は、上記十字開口型アンテナのシミュレーションモデルの中心部における記録媒体方向(+Z方向)の位相差分布及び方向余弦S/|S|を示している。

【0081】
なお、連続記録媒体250に対向させた十字開口型アンテナのシミュレーションモデルのX-Z面内における円偏光度S、電界強度I及び、性能指数Fを図22に示すとともに、連続記録媒体250に対向させた十字開口型アンテナのシミュレーションモデル及びアンテナ無しのシミュレーションモデルの中心部における記録媒体方向(+Z方向)の位相差分布及び方向余弦S/|S|を図23に示す。

【0082】
図22、図23に示すように、連続記録媒体250に対向させた十字開口型アンテナのシミュレーションモデル及びアンテナ無しのシミュレーションモデルでは、中心部における記録媒体方向(+Z方向)の方向余弦S/|S|はほぼ一定で、位相差分布が少し変化しているに過ぎないのに対し、ビット担体15に対向させた十字開口型アンテナのシミュレーションモデルでは、図21に示すように、ビット担体15の領域のみ記録媒体方向(+Z方向)の位相差分布及び方向余弦S/|S|が明確に変化している。

【0083】
したがって、上述の如くビットパターンドメディア10上のビット担体15に対向するナノメートルサイズの開口22Aを有するプラズモンアンテナ22では、上記ビット担体15内部に円偏光を確実に発生することができ、高速、高密度磁気記録を行うことができる。

【0084】
すなわち、この情報記録装置100では、ビットパターンドメディア10上のビット担体15より大きなナノメートルサイズで照射される記録光の進行方向を軸とする回転対称性を持った形状の回転対称性開口22Aを有するプラズモンアンテナ22に上記記録光としてフェムト秒パルスレーザ光を照射し、上記プラズモンアンテナ22に上記記録光として照射されるフェムト秒パルスレーザ光により励起され、上記プラズモンアンテナ22の回転対称性開口22Aに対向して位置される上記ビットパターンドメディア10上のビット担体15と、上記プラズモンアンテナ22の回転対称性開口22Aとの相互作用により、上記ビット担体15内に円偏光を発生して直接磁化反転により情報を記録する。

【0085】
従来は、1ミクロン程度の磁区サイズの記録しか行えなかったが、上記プラズモンアンテナ22により数十ナノメートルサイズでの記録を行うことができる。

【0086】
このように、本発明によれば、プラズモンアンテナ22に形成されたナノメートルサイズの開口22Aと記録媒体粒子15との相互作用を利用して局所的に円偏光を発生して直接磁化反転により情報を記録することによって、高速化と高密度化を同時に実現することができる。

【0087】
なお、以上説明した本発明の実施の形態における情報記録装置100では、上述の如くビットパターンドメディア10上のビット担体15に対向するナノメートルサイズの開口22Aを有するプラズモンアンテナ22として十字型開口アンテナすなわち4回対称性開口アンテナを用いたが、原理的には照射される光の進行方向を軸とする2回対称性を持つアンテナであれば良い。

【0088】
また、上記プラズモンアンテナ22に形成されたナノメートルサイズの開口22Aと記録媒体粒子15との相互作用を利用して局所的に楕円偏光を発生して直接磁化反転により情報を記録媒体粒子15に記録することもでき、上記プラズモンアンテナ22は、照射される光の進行方向を軸とする略回転対称性を持つ形状を有するものであればよい。

【0089】
また、上記プラズモンアンテナ22に照射する光には、短パルスレーザ光を用いることができる。

【0090】
また、情報記録装置100では、ビットパターンドメディア10上のビット担体15に対してナノメートルサイズの開口22Aを有するプラズモンアンテナ22により情報を1ビットごとに記録するようにしたが、絶縁マトリックス中にナノスケールの微小金属粒子を分散させたグラニュラー構造の記録媒体の微小金属粒子に対して上記プラズモンアンテナ22により情報を記録するようにしてもよい。

【0091】
この場合、上記プラズモンアンテナ22の開口22Aの領域内に存在する上記グラニュラー構造の記録媒体の複数の微小金属粒子のうち、上記プラズモンアンテナ22のナノメートルサイズの開口22Aに照射される波長λが780nmのフェムト秒パルスレーザ光により励起され、共鳴した微小金属粒子内に円偏光が発生して情報が記録される。

【0092】
また、上記十字開口型アンテナのシミュレーションモデルの中心部において局所的に電界強度を高めるために、中心に近づくに従って幅を狭めた図24の(A),(B)に示すような形状の十字開口を有する十字開口型アンテナのシミュレーションモデルについて、FDTD法(Finite-difference time-domain method; FDTD method)のシミュレーションソフトウエアとして市販の汎用3次元電磁解析ソフトウエアである富士通株式会社製の「Poynting」を用いて開口アンテナ近傍の電磁界シミュレーションを行ったところ、次のような結果が得られた。

【0093】
このシミュレーションモデルでは、入射光を+Z軸方向に入射し、波長λ=780nmの円偏光とし、強度分布が中心ピーク電界1V/mのガウシアン分布とし、ガウス半径780nm(Intensity=1/e)で、最小セルサイズを0.5×0.5×0.5nmとし、長辺の長さL=160nm、短辺の最小幅W1=20nm、最大幅W2=60nmとした開口を直交させた十字形状の開口(Cross aperture)122Aを2000nm×2000nmの正方形の銀(Ag)製の板122Bに設けた十字開口型アンテナのシミュレーションモデルを、直径15nmのCo記録媒体粒子150を10nm離してマトリクス状に配置した記録媒体に対向させた。

【0094】
図25の(A),(B),(C)は、上記十字開口型アンテナのシミュレーションモデルのX-Z面内における円偏光度S’、記録媒体方向(+Z方向)の方向余弦S/|S|、及び、電界強度I’を示す。

【0095】
また、上記十字開口型アンテナのシミュレーションモデルにおいて、入射円偏光を逆にした場合のX-Z面内における円偏光度S’、記録媒体方向(+Z方向)の方向余弦S/|S|、及び、電界強度I’を図26の(A),(B),(C)に示す。

【0096】
この十字開口型アンテナのシミュレーションモデルでは、周辺に位置している記録媒体粒子150における電界強度I’は0.21[(V/m)]であったのに対し、中心に位置する記録媒体粒子150における電界強度I’は0.6[(V/m)]であり、上記十字開口型アンテナのシミュレーションモデルの中心部において局所的に電界強度を高めることができる。

【0097】
なお、以上説明した本発明の実施の形態では、本発明を適用した情報記録ヘッドを備える情報記録装置について説明したが、本発明は上記実施の形態のみに限定されるものではない。

【0098】
すなわち、本発明によれば、レーザ光で粒子の磁化方向を可変できるので、磁化方向を可変する磁性体に、他の磁性体を接し、磁性体間の磁気的相互作用の変化を利用したデバイス、例えば、磁気抵抗素子、磁気トランジスタ、磁気スイッチ等をレーザ光の照射により制御可能な光デバイスとすることができる。

【0099】
ここで、レーザ光の照射により制御可能な光デバイスとした磁気抵抗素子の構成例を図27の(A),(B)に示す。

【0100】
この磁気抵抗素子200は、レーザ光が照射されることにより磁化方向が可変される円柱磁性粒子部210と、この円柱磁性粒子部210に接した二つの磁性体部221,222(これは、磁化方向は上方に固定する)を備え、上記円柱磁性粒子210の端部がプラズモンアンテナ230の十字開口部230Aの中心に位置している。

【0101】
すなわち、この磁気抵抗素子200は、レーザ光の照射により磁気効果を変化させる機能を有する光デバイスであって、上記レーザ光の照射により磁化方向が可変される磁性粒子部210と、上記磁性粒子部210に接して配された2つの磁性体部221,222と、上記磁性粒子部210より大きなサイズで照射されるレーザ光の進行方向を軸とする略回転対称性を持った形状のプラズモンアンテナ230とを備える。

【0102】
そして、この磁気抵抗素子200では、上記プラズモンアンテナ230に照射されるレーザ光により励起され、上記プラズモンアンテナ230に対向して位置される上記磁性粒子部210と、上記プラズモンアンテナ230との相互作用により、上記磁性粒子部210内に円偏光又は楕円偏光を発生して直接磁化反転により、上記磁性粒子部210に接して配された磁性体部221,222の磁気作用を変化させる。上記レーザ光の照射により、上記円柱磁性粒子部210の磁化方向を可変すると、それに接した二つの磁性体部221,222(これは、磁化方向は上方に固定する)の磁化方向に対して、円柱粒子部210の磁化方向が上方に向いているときはAB間の抵抗が小さく、逆方向ではAB間の抵抗が大きい(磁性体によっては、逆の場合もある)。このように、磁化方向が変わることで、外部との磁気的相互作用を可変出来るので、磁化を反転することで機能を発現するあらゆる磁気デバイスの高速動作に本発明の手法を利用できる。
【符号の説明】
【0103】
10 ビットパターンドメディア、
15 ビット担体、
20 情報記録ヘッド、
21 光源、
22A 回転対称性開口
22B 銀(Ag)製の板、
30 検出部、
40 制御部、
100 情報記録装置、
200 磁気抵抗素子、
210 円柱磁性粒子部、
221,222 磁性体部、
230 プラズモンアンテナ
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14
【図16】
15
【図17】
16
【図18】
17
【図19】
18
【図20】
19
【図21】
20
【図22】
21
【図23】
22
【図24】
23
【図25】
24
【図26】
25
【図27】
26