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明細書 :アイソトープ標識化合物及びアイソトープ標識化合物前駆体

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5618042号 (P5618042)
公開番号 特開2011-063574 (P2011-063574A)
登録日 平成26年9月26日(2014.9.26)
発行日 平成26年11月5日(2014.11.5)
公開日 平成23年3月31日(2011.3.31)
発明の名称または考案の名称 アイソトープ標識化合物及びアイソトープ標識化合物前駆体
国際特許分類 C07D 295/14        (2006.01)
A61K  51/00        (2006.01)
G01T   1/161       (2006.01)
C07F   7/22        (2006.01)
FI C07D 295/14 Z
A61K 49/02 C
G01T 1/161 A
C07F 7/22 CSPA
請求項の数または発明の数 4
全頁数 20
出願番号 特願2009-218247 (P2009-218247)
出願日 平成21年9月21日(2009.9.21)
審査請求日 平成24年9月14日(2012.9.14)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304019399
【氏名又は名称】国立大学法人岐阜大学
発明者または考案者 【氏名】桑田 一夫
【氏名】木村 力
【氏名】武藤 淳二
【氏名】古山 浩子
【氏名】鈴木 正昭
【氏名】渡辺 恭良
【氏名】土居 久志
【氏名】佐古 健生
個別代理人の代理人 【識別番号】100118706、【弁理士】、【氏名又は名称】青山 陽
審査官 【審査官】春日 淳一
参考文献・文献 国際公開第2008/023780(WO,A1)
国際公開第2004/035522(WO,A1)
国際公開第2009/072417(WO,A1)
特開2005-120002(JP,A)
特開2009-013126(JP,A)
Suzuki M et al,Chem Eur J,1997年,Vol.3, No.12,p.2039-42
調査した分野 C07D,A61K,A61P
CAplus,REGISTRY(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
下記一般式(a)(式中、R11CH、CH18F及びCF18Fのいずれかであり、R及びRは同一又は異なって、水素原子又は炭化水素基を示す。)、又はその薬学上許容される塩、水和物、若しくは溶媒和物からなることを特徴とするアイソトープ標識化合物。
【化1】
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【請求項2】
下記一般式(b)(式中、R及びRは同一又は異なって、水素原子又は炭化水素基を示す。)で示される請求項1記載のアイソトープ標識化合物。
【化2】
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【請求項3】
下記有機スズ化合物(c)(式中、R及びRは同一又は異なって、水素原子又は炭化水素基を示し、Rはアルキル基を示す。)からなることを特徴とするアイソトープ標識化合物前駆体。
【化3】
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【請求項4】
請求項1又は2に記載のアイソトープ標識化合物を含有することを特徴とするPET用分子プローブ。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、正常なプリオンタンパク質に特異的に結合するアイソトープ標識化合物及びその前駆体に関し、陽電子放射断層撮像法(以下「PET」という)に用いる分子プローブ、プリオンタンパク質のイメージング及び薬物動態解析に好適に用いることができる。
【背景技術】
【0002】
クロイツフェルト・ヤコブ病に代表されるプリオン病はプリオンタンパク質の関与する一群の神経変性疾患の総称であり、脳などの組織に変性した異常型プリオンタンパク質が蓄積することを特徴とする。プリオン病の感染因子はこの異常型プリオンタンパク質であると考えられており、異常型プリオンタンパク質は正常組織に発現するプリオンタンパク質を、異常型プリオンタンパク質へと変換することによって増殖する。このため、プリオン病は、感染症のような側面も併せ持つ。
【0003】
プリオン病の原因が、上述のように異常型プリオンタンパク質による正常組織に発現するプリオンタンパク質の異常型プリオンタンパク質への変換にあるとすれば、この変換を阻害する物質が見つかれば、プリオン病の進行を食い止めることができるはずである。このような考え方から、異常型プリオンタンパク質の増殖を抑制する化合物(以下「抗プリオン活性化合物」という)がプリオン病の治療薬として注目されている。
【0004】
本発明者らは、正常型プリオンに存在する結合ポケットのうち、A-S2ループとヘリックスBのC端側との間にある結合ポケットに焦点を当て、計算機によるドッキングシミュレーションにより、多数の化合物についてのプリオンタンパク質の結合ポケットへの親和力について計算を行った。その計算の結果、結合ポケットによくフィットする化合物として2-pyrrolidin-1-yl-N-[4-[4-(2-pyrrolidin-1-yl-acetylamino)-benzyl]-phenyl]-acetamide(下記化学構造)及びその類縁体を選び、それらを合成した。さらには、それらの化合物が、正常型プリオンから感染型プリオンへの構造変換を抑制する抗プリオン活性化合物であることを見出し、プリオン病の予防薬、治療薬としての有効性を立証した(特許文献1、2)。
【化1】
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【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2005-120002号公報
【特許文献2】特開2009-13126号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1や特許文献2に記載の抗プリオン活性化合物を生体に投与し、プリオンタンパクと特異的に結合する抗プリオン活性化合物を検出することができれば、プリオン病の診断を行うことができると考えられる。しかしながら、抗プリオン活性化合物の生体内での分布については、MRIを用いても検出が困難であった。このため、これまでプリオン病の診断には、生体から取り出した組織を直接観察する方法しかなく、診断検査に対する身体的負担は非常に大きいものであった。また、このようなプリオン病の診断方法は医療従事者の医原性感染の恐れがあり、実用的ではなかった。さらには、抗プリオン活性化合物の吸収、分布、代謝及び排泄等に関する薬物動態解析についても、これまで有効な手法が無かった。
【0007】
このため、上記特許文献1や特許文献2に記載の抗プリオン活性化合物を陽電子を放出するアイソトープで標識し、体内での挙動をPET法によって調べることが考えられる。PET法とは、11Cや18Fなどの陽電子を放出する短寿命放射核で標識されたトレーサーを生体内に投与し、トレーサーにより発生するγ線をPETカメラ(ガンマ線シンチレーターと光電子増倍管からなる検出器)によって計測して、その体内分布をコンピューターにより画像化する方法である。PET法は、小動物からヒトまで含めた生体での薬剤の薬物挙動や標的部位への到達度を、非侵襲的かつ定量的に追跡することができる。抗プリオン活性化合物についてのPET画像を解析することにより、プリオンタンパク質と特異的に結合する抗プリオン活性化合物の非侵襲的イメージングが可能となり、ひいては生物学、医薬品開発、医療などの各分野において極めて有用な情報を得ることができるからである。
【0008】
しかし、これまで、特許文献1や特許文献2に記載の抗プリオン活性化合物を11Cや18Fなどの陽電子を放出する短寿命放射核で標識したトレーサーの合成はなされておらず、PET画像も得られていなかった。その原因として、トレーサーの合成における時間的な制約が挙げられる。すなわち、PET法で使用される短寿命放射核種としては11Cや18Fなどが用いられ、これらの放射核種で標識された化合物がトレーサーとして用いられる。11Cは有機化合物中に存在している炭素原子を利用しているため適用範囲が極めて広く、理想的な放射核種ともいえるが、半減期が20分と短く、合成からPET法での測定までを極めて短時間で行なわなければならない。また、18Fの半減期は110分であり、11Cよりも長いとはいうものの、やはり合成からPET法での測定までを短時間で行なわなければならない。こうした時間的な制約という困難さから、合成方法に制限が加わり、現在に至るまで、特許文献1や特許文献2に記載の抗プリオン活性化合物のPET画像が得られていないのである。
【0009】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであり、短時間で製造することができ、PET法に好適に用いることができ、プリオン病の診断や薬物動態解析が可能な、アイソトープ標識化合物及びその前駆体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のアイソトープ標識化合物は下記一般式(a)(式中、R11CH、CH18F及びCF18Fのいずれかであり、R及びRは同一又は異なって、水素原子、酸素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、メルカプト基、シアノ基、カルボキシ基、カルバモイル基、アルコキシ基、カルボニル基、アシロキシ基、アシル基、置換基を有してもよい炭化水素基、置換基を有してもよい複素環式基、置換基を有してもよいアミノ基、又は互いに結合してヘテロ原子を含んでいてもよい炭化水素環を示す。環Z及び環Zは、それぞれ置換基を有していてもよい、窒素原子を一つ含有する環を示す。)又はその薬学上許容される塩、水和物、溶媒和物若しくはプロドラッグからなることを特徴とする。
【0011】
【化2】
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【0012】
発明者らのPETを用いた試験結果によれば、上記アイソトープ標識化合物は、プリオンタンパク質に選択的に結合する。また、この化合物は、下記化合物(c)(式中、Rはアルキル基を示す。)又は下記化合物(d)(式中、Bはホウ素を示し、Yは2つのアルキル基、2つのOH基、2つのO-アルキル基又はピナコラート基を示す)を前駆体として合成しておき、最終の合成段階で11CHやCH18FやCF18Fを付加させることにより、容易に得ることができる。このため、半減期の短い11Cをトレーサーとしているにもかかわらず、PET画像を得ることが十分に可能となる。
【0013】
【化3】
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【0014】
【化4】
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【0015】
本発明のアイソトープ標識化合物には、塩、水和物、溶媒和物及びプロドラッグが含まれる。ここで、プロドラッグとは、生体内で加水分解されて本発明のアイソトープ標識化合物を生成する化合物をいう。本発明のプロドラッグには、当業者に知られたプロドラッグ化のすべての手法で製造される化合物が含まれる。例えば、カルボキシル基またはアミノ基等を有する場合、それらの基を生体内で容易に加水分解されうるエステル基またはアミド基等に誘導した化合物が、プロドラッグに相当する。具体的にはアイソトープ標識2-アリールプロピオン酸に存在するカルボキシル基を、メチル、エチル等のアルキル、メチルオキシメチル、エチルオキシメチル、2-メチルオキシエチル、2-メチルオキシエチルオキシメチル等のアルキルオキシアルキル、ピバロイルオキシメチル、アセチルオキシメチル、シクロヘキシルアセチルオキシメチル、1-メチルシクロヘキシルカルボニルオキシメチル等のアシルオキシメチル、エチルオキシカルボニルオキシ-1-エチル等のアルコキシカルボニルアルキル、シクロヘキシルオキシカルボニルオキシ-1-エチル等のシクロアルキルオキシカルボニルアルキル等に誘導した化合物が挙げられる。また、アリール基がアミノ基を有している場合は、そのアミノ基をアセトアミド等に誘導した化合物が挙げられる。
【0016】
また、薬学上許容される塩としては、塩基付加塩および酸付加塩が挙げられる。塩基付加塩は、上記RやRにカルボキシ基等の酸基を有する場合に、その塩基付加塩とすることが挙げられる。塩基付加塩としては、ナトリウム塩、カルシウム塩等の無機塩基塩、メグルミン塩、トリスヒドロキシメチルアミノメタン塩等の有機塩基塩が挙げられる。酸付加塩としては、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、硫酸塩、硝酸塩等の無機酸塩、ギ酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、アスコルビン酸塩、マロン酸塩、シュウ酸塩、グリコール酸塩、フタル酸塩、ベンゼンスルホン酸塩等の有機酸塩が挙げられる。
【0017】
前記アイソトープ標識化合物(a)中、環Z及び環Zは、それぞれ置換基を有さない窒素原子を一つ含有する環が好ましく、さらに好ましいのは、前記環Z及び環Zがピロリジン環であることである。
【0018】
また、前記アイソトープ標識化合物(a)中、R、Rは同一又は異なって、置換基を有してもよい脂環式炭化水素基又は置換基を有してもよい芳香族炭化水素基又は互いに結合してヘテロ原子を含んでもよい炭化水素環であることが好ましい。
【0019】
さらに、アイソトープ標識化合物(a)中、特に好ましいのは、下記化学構造式(b)で示されるアイソトープ標識化合物である。
【0020】
【化5】
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【0021】
本発明のアイソトープ標識化合物は、PET用分子プローブとして、好適に用いることができる。そして、この分子プローブを生体に投与してPET画像を撮影することにより、プリオンタンパク質のイメージングや、分子プローブの薬物動態解析を行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明のアイソトープ標識化合物は、正常型プリオンタンパク質と結合して構造変換を抑制する、抗プリオンタンパク活性を有する。このことは、既に本発明者らが出願した特願2009-118076において、アイソトープ標識されていない同様の化合物が、抗プリオンタンパク活性を有することが明らかにされていることから、明白である。

【0023】
本発明のアイソトープ標識化合物は、前述の有機スズ化合物(c)と、11CH、CH18F及びCF18Fのいずれかとを、発明者らが既に開発している方法(Chem.Eur.J.,1997,3(12),2039-2042及び特願2008-335250参照)によってカップリングさせることにより、容易に得ることができる。この方法はStilleカップリングに属する反応であるが、芳香族環に対するSP炭素の導入を、極めて短時間に高収率で行うことができるという特徴を有する。具体的な例を次に挙げる。

【0024】
【化6】
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【0025】
アイソトープ標識化合物5の前駆体となる有機スズ化合物4は、以下のステップに従い、合成することができる。すなわち、ステップ1に示すように、RまたはRに対応する置換基を有するアルデヒドまたはケトンとo-トルイジンおよび2-ヨードアニリン塩酸塩との反応により、メチル基とヨード基を有する化合物1を合成する。そして、ステップ2に示すように、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム存在下で化合物1とビス(トリブチルスズ)との反応から化合物2を合成する。さらに、ステップ3に示すように、トリエチルアミン存在下で化合物2と塩化クロロアセチルとの反応から化合物3を合成する。そして、ステップ4に示すように、炭酸カリウム存在下で化合物3とピロリジンとの反応から化合物4を合成する。

【0026】
【化7】
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【0027】
上記反応式における出発物質としてのRCORにおけるR及びRを適宜選択することにより、ベンゼン間に挟まれた炭素上に様々な炭化水素基や水素を導入することができる。また、置換基を有するケトンや置換基を有する炭素数2以上のアルデヒドを用い、必要に応じて置換基に保護基を導入しておくなどして、ベンゼン間に挟まれた炭素上に置換基を有する炭化水素基を導入することができる。
また、ステップ1における原料として、ベンゼン環に対する置換基の位置の異なる異性体を用いることによって、配位位置が有機スズ化合物4と異なる異性体を合成することもできる。

【0028】
また、本発明のアイソトープ標識化合物は、前述の有機ホウ素化合物(d)を前駆体とし、これを11CH、CH18F及びCF18Fのいずれかと、発明者らが既に開発している方法(WO2008-023780及びChem.Eur.J.,2009,15,4165-4171参照)によってカップリングさせることによっても、得ることができる。この方法は鈴木-宮浦カップリングに属する反応であるが、芳香族環に対するSP炭素の導入を、極めて短時間に高収率で行うことができるという特徴を有する。このため、11CH基やCH18F基やCF18F基を前駆体である有機ホウ素化合物(d)へ迅速に導入することができる。有機ホウ素化合物(d)の合成方法としては、例えば以下のようにして得ることができる。有機ホウ素化合物(d)としては、例えばアリールボロン酸エステルを挙げることができる。この化合物は、下記化学式に示すように、アリールハライドとビス(ピナコラート)ジボロンをパラジウム触媒存在下で反応させて合成することができる。

【0029】
【化8】
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【0030】
さらに具体的には、例えば以下の反応による。

【0031】
【化9】
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【0032】
上記反応式における出発物質としてのパラホルムアルデヒドの代わりに、ケトンや炭素数2以上のアルデヒドを用いれば、ベンゼン間に挟まれた炭素上に様々な炭化水素基を導入することができる。また、さらにはパラホルムアルデヒドの代わりに、置換基を有するケトンや置換基を有する炭素数2以上のアルデヒドを用い、必要に応じて置換基に保護基を導入しておくなどして、ベンゼン間に挟まれた炭素上に置換基を有する炭化水素基を導入することができる。

【0033】
以下、本発明を具体化した実施例について詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。

【0034】
<有機スズ前駆体(4)の合成>
まず、o-トルイジンと2-ヨードアニリンとをパラホルムアルデヒドを用いてカップリングし、下記化合物1’を合成した。

【0035】
【化10】
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【0036】
すなわち、o-トルイジン(429 mg, 4.000 mmol)、パラホルムアルデヒド(120 mg)、2-ヨードアニリン塩酸塩(1.022 g, 4.00 mmol)のメタノール溶液(10 mL)を加熱還流下で18時間撹拌した。反応混合物を水酸化ナトリウム水溶液(ca. 5 mol/L, 10 mL)に加えた後、ジクロロメタン(10 mL)で抽出した。有機層を水(10 mL)で洗浄、硫酸ナトリウムで乾燥、ろ過、濃縮した後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)で精製することにより化合物1’(294 mg, 0.869 mmol, 21.7%)を無色固体として得た。化合物1’の1H, 13C 核磁気共鳴スペクトル、質量分析、元素分析の結果は以下の通りであった。
1H NMR (CDCl3): δ 2.13 (s, 3H), 3.51 (s, 2H), 3.70 (s, 2H), 3.95 (s, 2H), 6.60 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 6.66 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 6.82 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 6.84 (s, 1H), 6.94 (dd, J = 1.7, 8.1 Hz, 1H), 7.45 (d, J = 1.7 Hz, 1H).
13C NMR (CDCl3): δ 17.4, 39.6, 84.5, 114.8, 115.1, 122.6, 127.2, 129.9, 130.9, 131.3, 133.9, 138.8, 142.7, 144.7.
MS (EI): m/z 338 (M+).
Anal. Calcd for C14H15IN2: C, 49.72; H, 4.47; N, 8.28. Found: C, 49.62; H, 4.57, N, 8.12.

【0037】
次に、化合物1’から有機スズ化合物2’を合成した。

【0038】
【化11】
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すなわち、化合物1’(294 mg, 0.869 mmol)、ビス(トリブチルスズ)(754 mg, 1.30 mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(51 mg, 0.044 mmol, 5 mol%)のトルエン溶液(10 mL)を100℃で24時間撹拌した。反応混合物をクロロホルム(10 mL)で希釈した後、その懸濁液をセライトろ過した。ろ液を濃縮した後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル/トリエチルアミン)およびGPC(クロロホルム)で精製することにより化合物2’(294 mg, 0.586 mmol, 67.4%)を無色オイルとして得た。化合物2’の1H核磁気共鳴スペクトル、質量分析、元素分析の結果は以下の通りであった。
1H NMR (CDCl3): δ 0.88 (t, J = 7.3 Hz, 9H), 1.05-1.08 (m, 6H), 1.32 (sextet, J = 7.3 Hz, 6H), 1.49-1.55 (m, 6H), 2.12 (s, 3H), 3.48 (s, 2H), 3.50 (s, 2H), 3.74 (s, 2H), 6.591 (d, J = 8.3 Hz, 1H), 6.593 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 6.83-6.87 (m, 2H), 6.91 (dd, J = 2.2, 8.1 Hz, 1H), 7.04 (d, J = 2.2 Hz, 1H).
MS (EI) m/z: 502 (M+).
Anal. Calcd for C26H42N2Sn: C, 62.29; H, 8.44; N, 5.59. Found: C, 62.13; H, 8.45, N, 5.56.

【0039】
そして、化合物2’を塩化クロロアセチルによってアセチルアミド化して化合物3’を合成した。

【0040】
【化12】
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化合物2’(294 mg, 0.586 mmol)とトリエチルアミン(237 mg, 2.34 mmol)のジクロロメタン溶液(10 mL)に0℃で塩化クロロアセチル(146 mg, 1.29 mmol)を加え、10分撹拌した。反応溶液を濃縮した後、残渣に酢酸エチル(10 mL)を加え、析出した固体を濾別した。ろ液を濃縮した後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル/トリエチルアミン)およびGPC(クロロホルム)で精製することにより化合物3’(318 mg, 0.486 mmol, 82.9%)を無色固体として得た。化合物3’の1H核磁気共鳴スペクトル、質量分析、元素分析の結果は以下の通りであった。
1H NMR (CDCl3): δ 0.87 (t, J = 7.3 Hz, 9H), 1.08-1.12 (m, 6H), 1.31 (sextet, J = 7.5 Hz, 6H), 1.46-1.53 (m, 6H), 2.26 (s, 3H), 3.91 (s, 2H), 4.20 (s, 2H), 4.23 (s, 2H), 7.03 (s, 1H), 7.06 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 7.15 (dd, J = 2.0, 8.1 Hz, 1H), 7.22 (d, J = 2.0 Hz, 1H), 7.59 (d, J = 8.3 Hz, 1H), 7.78 (d, J = 8.3 Hz, 1H), 8.07 (s, 1H), 8.17 (s, 1H).
MS (EI) m/z: 597 [(M-Bu)+].
Anal. Calcd for C30H44Cl2N2O2Sn: C, 55.07; H, 6.78; N, 4.28. Found: C, 55.17; H, 6.72, N, 4.32.

【0041】
さらに化合物3’にピロリジニル基を導入して化合物4’を合成した。

【0042】
【化13】
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化合物3’(318 mg, 0.486 mmol)、ピロリジン(104 mg, 1.46 mmol)、炭酸カリウム(269 mg, 1.94 mmol)のテトラヒドロフラン懸濁液(5 mL)を60℃で12時間撹拌した。反応溶液を濃縮した後、残渣にクロロホルム(10 mL)を加え、析出した固体を濾別した。ろ液を濃縮した後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル/トリエチルアミン)およびGPC(クロロホルム)で精製することにより化合物4’(322 mg, 0.445 mmol, 91.5%)を無色オイルとして得た。化合物4’の1H核磁気共鳴スペクトル、質量分析、元素分析の結果は以下の通りであった。
1H NMR (CDCl3): δ 0.87 (t, J = 7.3 Hz, 9H), 1.07-1.10 (m, 6H), 1.30 (sextet, J = 7.4 Hz, 6H), 1.46-1.52 (m, 6H), 1.83-1.86 (m, 8H), 2.21 (s, 3H), 2.70-2.72 (m, 8H), 3.28 (s, 2H), 3.31 (s, 2H), 3.87 (s, 2H), 6.98 (s, 1H), 7.05 (d, J = 8.3 Hz, 1H), 7.13 (dd, J = 2.0, 8.3 Hz, 1H), 7.18 (d, J = 2.0 Hz, 1H), 7.85 (d, J = 8.3 Hz, 1H), 7.97 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 8.86 (s, 1H), 9.21 (s, 1H).
MS (EI) m/z: 667 [(M-Bu)+].
Anal. Calcd for C38H60N4O2Sn・0.5(H2O): C, 62.30; H, 8.39; N, 7.65. Found: C, 62.51; H, 8.33, N, 7.68.

【0043】
続いて目的化合物である、11Cで標識したアイソトープ標識化合物5’を化14に従って合成した。

【0044】
【化14】
JP0005618042B2_000015t.gif

【0045】
<実験装置、実験方法及び使用した試薬>
11Cで標識したアイソトープ標識化合物5’の合成では、以下の装置及び試薬を用いた。
標識用合成装置は、理化学研究所 分子イメージング科学研究センターに設置してある標準型標識用自動合成装置を用いた。化学薬品は市販のものをそのまま用いた。高速液体クロマトグラフィー用アセトニトリル(ナカライ社製)、脱水N,N-ジメチルホロムアミド(DMF)(関東化学社製)、脱水N-メチル-2-ピロリジノン(NMP)(関東化学社製)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(Aldrich社製)、トリ-o-トリルホスフィン(Aldrich社製)、塩化銅(和光社製)、炭酸カリウム(和光社製)、重炭酸アンモニウム(東京化成社製)を使用した。

【0046】
11CHIの調製
11C核の製造は住友重機械工業社製サイクロトロンCYPRIS HM-12Sを使用し、14N(p,α)11Cの核反応により製造した。[11C]ヨウ化メチルの合成は専用の標識用合成装置を用いて、11CO2ガスを出発物質として、11CO211CH3OH→11CH3Iの順に変換して調製した。

【0047】
11CHIによる高速メチル化
トリスジベンジリデンアセトンジパラジウム(1.6 mg, 1.7 μmol)および、トリ-o-トリルホスフィン(2.1 mg, 6.8μmol)のNMP溶液(0.3 mL)を標識用合成装置の反応容器(A)に準備し、室温に設置した。反応容器(A)中の溶液は、[11C]ヨウ化メチルを吹き込む10-20分前に設置した。また、スズ前駆体4’(2.3 mg, 3.2 μmol)、CuCl(1.7 mg, 17.5 μmol)、およびK2CO3(1.2 mg, 8.8 μmol)のNMP溶液(80 μL)を反応容器(B)に準備し、室温に設置した。続いて反応容器(A)に[11C]ヨウ化メチルを60-80 mL/minのガス流量で吹き込み、その後1分間静置した。得られた溶液を反応容器(B)に移送し、さらに反応容器(A)の内部を少量のNMP溶液(60 μL)を用いて洗浄して、この洗浄液も反応容器(B)に移送した。続いて、反応容器(B)中の混合溶液を80 ℃で5分間加熱した。得られた反応溶液を0.3 mLの洗浄液(アセトニトリル:水=4:1溶液)で希釈した後、綿栓あるいはフィルターを用いてろ過し、分取HPLCにて分取した。分取用カラムはPhenomenex 社製Gemini 5μ C18 110A 10mm×250mm、ガードカラムはPhenomenex 社製 Semiprep Guard Cartridge System (AJO-7220)およびSUMIKA社製スミパックスフイルター PG-ODSを使用した。流量は5ml/minで、移動層は100mM NH4HCO3(pH=7.8):CH3CN(5% H2O添加)=40:60を使用した。UV検出波長254 nmおよびγ線検出器で測定した結果、アイソトープ標識化合物5’の保持時間は約14.3分であった(図1)。分取したアイソトープ標識化合物5’を含むフラクションをエバポレーターを用いて減圧濃縮した。濃縮液は臨床用投与溶液(生理食塩水:4ml、propylene glycol:0.3 ml、Tween80:0.05 ml)を用いて希釈し、無菌バイアルに入れた。
本溶液の一部(20μL)を分析HPLCに供して、目的化合物の同定、純度検定、および比放射能の算出を行った。分析カラムはPhenomenex 社製Gemini 4.6mm×150mm を使用し、カラム温度30℃で分析を行った。流量は1ml/minで、移動層は100mM NH4HCO3(pH=7.8):CH3CN=40:60を使用した。UV検出波長254 nmおよびγ線検出器で測定した結果、アイソトープ標識化合物5’の保持時間は約8.0分であった。なお、アイソトープ標識化合物5’の同定はアイソトープ標識化合物5’の非標識体(5’(a))を用いて行った。アイソトープ標識化合物5’の総放射能は0.5-2.0GBq、[11C]ヨウ化メチルに基づく崩壊補正放射化学収率は20%であった。合成時間は43分、放射化学純度は95%以上で、化学的純度は82%-92%、比放射能は 98-110GBq/μmolであった。

【0048】
また、化合物5’の生成をNMR等による構造解析によって確認すべく、化合物5’のcold体5’(a)を、以下の方法により合成した。

【0049】
ピリジン(95 mg, 1.2 mmol)、4-ジメチルアミノピリジン(1 mg)、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジメチルジフェニルメタン(113 mg, 0.499 mmol)をジクロロメタン(5 mL)に溶解させた。この溶液に0 °Cで臭化ブロモアセチル(222 mg, 1.10 mmol)を加え、反応混合物を25 ℃で3時間撹拌した。析出した固体を濾取した後、ジクロロメタン(5 mL/2回)で洗浄し白色固体(213 mg)を得た。この白色固体(213 mg)のTHF懸濁液(5 mL)に、炭酸カリウム(276 mg, 2.00 mmol)とピロリジン(107 mg, 1.51 mmol)を加え、60 ℃で12時間撹拌した。反応混合物にクロロホルム(10 mL)を加えた後、有機層を水(10 mL)で洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥、濾過、濃縮した後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール)で精製し化合物5’(a)(189 mg, 0.421 mmol, 84.3%)を白色固体として得た。化合物5’(a)の1H, 13C核磁気共鳴スペクトル、質量分析、元素分析の結果は以下の通りであり、前述した化合物5’の化学構造式であることを確認した。
1H NMR (CDCl3): δ 1.85 (quint, J = 3.3 Hz, 8H), 2.20 (s, 6H), 2.72 (br, 8H), 3.30 (s, 4H), 3.85 (s, 2H), 6.97 (s, 2H), 7.04 (dd, J = 1.7, 8.3 Hz, 2H), 7.96 (d, J = 8.3 Hz, 2H), 9.21 (s, 2H).
13C NMR (CDCl3): δ 17.5, 24.1, 40.8, 54.5, 59.5, 121.4, 127.3, 127.7, 130.8, 133.8, 137.3, 168.9.
MS (EI) m/z: 448 (M+).
Anal. Calcd for C27H36N4O2・0.25(H2O): C, 71.57; H, 8.12; N, 12.37. Found: C, 71.63; H, 7.85, N, 12.33.

【0050】
また、化合物5’とはベンゼン環に結合する置換基の配位位置の異なるcold体化合物5’(b)を下記反応スキームにしたがって合成した。

【0051】
【化15】
JP0005618042B2_000016t.gif

【0052】
bis-(4-amino-2-methylphenyl)methane (6)の合成
50 mLナス型フラスコにm-トルイジン塩酸塩 (1.43 g, 10.0 mmol)、メタノール (10 mL) を、m-トルイジン(1.43 g, 10.0 mmol)、パラホルムアルデヒド (0.30 g, 10.0 mmol) を順に加え、加熱還流下で2日間撹拌した。室温に戻したのち、減圧濃縮した。得られた残渣に蒸留水(10 mL)を加え、1N水酸化ナトリウム水溶液を用いて中和した。ジクロロメタン(10 mL×4)で抽出し、有機層を蒸留水、飽和食塩水で順次洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤を濾別し、濾液を減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (シリカゲル 250 g, 展開溶媒;ヘキサン/酢酸エチル = 1/1) で精製し、茶色結晶の(6)(518 mg, 22.9%) を得た。
TLC Rf 0.30 (ヘキサン/酢酸エチル = 1/1)
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 2.17 (s, 6H, CH3), 3.51 (br s, 4H, NH2), 3.70 (s, 2H, CH2), 6.45 (dd, J = 2.4, 8.3 Hz, 2H, Ar-H), 6.55 (d, J = 2.4 Hz, 2H, Ar-H), 6.68 (d, J = 8.3 Hz, 2H, Ar-H).

【0053】
bis-[4-(2-bromo-N-acetamino)-2-methylphenyl]methane (7)の合成
10 mL 二口ナス型フラスコにアルゴン雰囲気下で、化合物(6) (283 mg, 1.25 mmol) 、4-ジメチルアミノピリジン (15 mg, 0.13 mmol) を加え、脱水ジクロロメタン (7 mL) に溶解した。脱水ピリジン (243 mL, 3.01 mmol) を加え、得られた混合溶液を0 °Cに冷却し、臭化ブロモアセチル (239 mL, 2.76 mmol) を滴下し、10分間撹拌した後、室温に戻し5時間撹拌した。析出した固体を濾取し、ジクロロメタン (30 mL)およびジエチルエーテル (20 mL) で洗浄し、白色結晶の化合物(7) (453 mg, 77.3%) を得た。
1H NMR (400 MHz, CD3SOCD3,): δ 2.17 (s, 6H, CH3), 3.80 (s, 2H, CH2), 4.00 (s, 4H, CH2), 6.77 (d, J = 8.3 Hz, 2H, Ar-H,), 7.28 (dd, J = 2.0, 8.3 Hz, 2H, Ar-H,), 7.42 (d, J = 2.0 Hz, 2H, Ar-H,), 10.27 (s, 2H, NH).

【0054】
bis-[4-(2-pyrrolidin-1-yl-N-acetamino)-2-methylphenyl]methane(5’(b))の合成 20 mL 二口ナス型フラスコにアルゴン雰囲気下で7 (902 mg, 1.93 mmol)、炭酸カリウム(1.06 g, 7.71 mmol) を加え、テトラヒドロフラン (10 mL) に混濁させた。ピロリジン (472 mL, 5.78 mmol) を滴下し、加熱還流下で12時間撹拌した。得られた混合溶液を室温に戻し、減圧下で濃縮した。ジクロロメタン (10 mL×4) で抽出し、有機層を蒸留水、飽和食塩水で順次洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤を濾別し、濾液を減圧下で濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (シリカゲル 150 g, 展開溶媒;ジクロロメタン/メタノール = 10/1) で精製し、淡黄色結晶の5’(b) (500 mg, 57.9%) を得た。
TLC Rf 0.35 (ジクロロメタン/メタノール = 10/1)
1H NMR (400 MHz, CDCl3,): δ 1.84-1.87 (m, 8H, CH2), 2,25 (s, 6H, CH3), 2.60-2.69 (m, 8H, CH2), 3.27 (s, 4H, NH2), 3.83 (s, 2H, CH2), 6.84 (d, J = 8.2Hz, 2H, Ar-H), 7.28 (dd, J = 1.9, 8.2 Hz, 2H, Ar-H), 7.44 (d, J = 1.9 Hz, 2H, Ar-H), 9.00 (s, 2H, NH).

【0055】
上記の実施例において、得られたアイソトープ標識化合物(5’)の抗プリオン化合物としての評価は、以下のようにして行った。

【0056】
(評価試験)
[培養細胞]
マウス視床下部神経細胞系列GT1は、マウスプリオンに感染し得る。化合物の抗プリオン作用を評価する目的で、我々はGTFK-1細胞系列を用いた(N. Nishida et al., J. Virol, 74, 320-325 (2000))。これらはGSS由来の(O. Milhavet et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A., 97, 13937-13942 (2000))マウス適合プリオンFukuoka-1株である。

【0057】
[プリオン感染細胞の化合物処理]
GT1-7細胞は、ペニシリンおよびストレプトマイシンを含むDMEM培地(Invitrogen社製)で培養した。3~4日ごとに、細胞をトリプシン処理し、1:5に希釈して継代した。安定にFukuoka-1または22L株に感染したGT1-7細胞については、O.Milhavet et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 97, 13937-13942 (2000)に記載されている。化合物のストック溶液は、10mMのDMSO中に調製し室温で保存した。使用前に、化合物を培地で希釈した。対照細胞を溶媒のみを含む(0.1%)培地で処理した。約2×10の細胞を6ウェルプレートの各ウェルに入れ、15時間後に化合物を添加して薬剤処理を開始した。72時間のインキュベーションの後に、細胞を回収した。

【0058】
[感染型プリオンタンパク質の定量]
回収した細胞を、1×Triton/DOC溶解バッファー(0.5% TritonX-100, 0.5% deoxycholic acid, 150mM NaCl, 50mM Tris HCl[pH7.5])150μl中に溶解させた。タンパク質濃度をBCAプロテインアッセイキット(Pierce社製)で測定し、各細胞溶解液を2mg/mlに標準化した。感染型プリオンタンパク質の産生を分析するため、タンパク質1mgあたり20μgの濃度のプロテイナーゼKを用いて30分間37℃で消化した。消化を阻害剤AEBSF(3mM)で止めた後、サンプルについて15% ポリアクリルアミドゲルを用いてSDS-PAGEを行った。次いで、タンパク質をPVDF膜(Immobilon-P, ミリポア社製)に転写した。ウェスタンブロットによるタンパク質のバンド検出に、抗マウスPrP抗体M-20(SANTA CRUZ社製)を一次抗体として用いた。バンドのシグナルはSuper Signal(Pierce社製)で可視化し、曝露およびシグナルの定量は、膜をLAS-1000 UVmini(富士フイルム社製)でスキャンすることにより行った。

【0059】
なお、評価にあたっては、化合物を添加しないときのProteinaseK耐性プリオンタンパク質のバンド量を100%とし、化合物添加時のProteinaseK耐性プリオンタンパク質のバンド量をその濃度での有効率(%)とし、有効率が50%となるときの化合物濃度をIC50と定義した。その結果、化合物5’のIC50は、2.49±0.26mM(n=3)であり、化合物5’(b)のIC50は、3.51±1.06mM(n=3)であった。

【0060】
-PET撮影-
(PET撮影1)
PET撮影1では、健常ラット頭頚部のPET撮像を行った。以下に詳細を示す。

【0061】
合成例にて得られた11Cで標識された化合物(5’)をプリオン病診断薬(以下、「PETプローブ」という))として、1nmol(約100MBq)を500μLの生理食塩水に溶解し、健康な8週齢のオスのSprague Dawley種ラットにイソフルラン麻酔下で静脈内に投与した。次いで、陽電子断層撮像装置(商品名microPET Focus220 (SIEMENS社製))で当該ラットの頭頚部を撮像した。撮像時間は投与直後から90分間である。
なお、撮像結果からの画像の再構成はASIPro(SIEMENS社製のソフトウェア)を用いて次のように行った。PETプローブの投与直後は当該PETプローブが拡散中である。よって、投与後5分程度の間に撮像した画像で見られるPETプローブの集積は、ソマトスタチン受容体と特異的結合したものよりも血中にある未結合のPETプローブの影響が強い。このため、PETプローブの投与後5分から90分までに得られたデータをMaximum a Posteriori Expectation Maximization法(MAP-EM法:参考文献/Qi J, Leahy R, Resolution and noise properties of MAP reconstruction for fully 3-D PET, IEEE Trans Med Imag vol 19, 493-506(2000))にて画像再構成を行った。再構成した画像を図2及び図3に示す。

【0062】
図2及び図3から、主に、(A)下垂体、(B)甲状腺、(C)松果体、(D)顎下腺、(E)大脳皮質及び(F)脈絡叢においてPETプローブが集積していることが分かった。なお、(A)から(F)中で、焦点となっている臓器は、各画像の十字線の交点上に位置している。

【0063】
また、画像再構成を行って得られた画像を、ASIPro(SIEMENS社製のソフトウェア)を用いて解析し、組織時間—放射活性曲線(tissue Time Activity Curve、以下「tTAC」)を作成した。具体的には、MAP-EM法で得られた画像上で、集積の高い部位を3次元で関心領域(Voxel Of Interest, 以下「VOI」)として設定し、そのVOIを定量性が高いFiltered Back Projection法(FBP法:参考文献/Defrise M, Kinahan P and Michel C, Image Reconstruction Algorithms in PET, chapter 4 in Positron Emission Tomography, eds. Valk PE, Baily DL, Townsend DW and Maisey MN, Springer(2002))にて画像再構成を行ったダイナミックPET画像に適用した。作成されたtTACを図4中に示す。

【0064】
図4に示すように、PETプローブは、上記集積部位では、投与直後から20分まで集積が高くなり、撮像終了までの分まで結合したままの状態であることがtTACから判明した。

【0065】
(PET撮影2)
PET撮影2では、健常ラットでのEx Vivo オートラジオグラフィー(Ex Vivo ARG)を行った。詳細を以下に示す。

【0066】
同様に、合成例にて得られたPETプローブ0.3nmol(約30MBq)を500μLの生理食塩水に溶解し、健康な8週齢のオスのSprague Dawley種ラットにイソフルラン麻酔下で静脈内に投与した。
PET撮影1から得られたtTACにより、組織に十分取り込ませるのに必要な時間が分かっていたため、投与後40分間PETプローブを取りこませることとした。その後、安楽死させ脱血灌流後に脳を取り出し、2mm厚のスライス切片を作って、イメージングプレート(BAS-SR2040、FUJIFILM社製)に20分間露光させた。イメージングプレートをイメージアナライザー(FLA-7000,FUJIFILM社製)にセットし、PETプローブの集積部位を検出した。

【0067】
PET撮影2で得られた画像を図5に示す。図5(A)はスライス切片のスキャナ画像を、図5(B)はイメージアナライザーで取得された画像を示す。左上より右下へかけて、脳の前から後ろへと切片が並べてある。また、下垂体と松果体は通常のスライスでは表れないため、別に取り出して並べてある。

【0068】
脳でのPETプローブの集積部位は、図5(C)の白い点線で示すように、(1)脈絡叢、(2)大脳皮質、(3)下垂体、(4)松果体であり、これはPET撮影1で示されたPET画像(図2及び図3)での集積部位と一致した。

【0069】
上記実施例のアイソトープ標識化合物(5’)では、11CHIを用いて前駆体化合物をメチル化することによって得たが、11CHIの代わりにCH18FIやCF18FIを用いれば、CH18FやCF18Fで標識化された化合物を得ることができる。CH18FXやCF18FX(Xは、I、Br、またはOSOCF等の脱離基である)は、既知の方法(Appl. Radiat. Isot. 2001, 54, 927-933、Appl. Radiat. Isot. 2000, 52, 55-61、Appl. Radiat. Isot. 2002, 57, 347-352、及びJ. Labelled Compd. Radiopharm. 1997, 40, 43-45)によって合成することができる。こうして18Fで標識化された化合物は、11Cで標識化された化合物よりも半減期が長く(11Cの半減期は20分、18Fの半減期は110分)、合成における時間制約や、PET撮影における時間的制約が緩和されるため、好適である。

【0070】
この発明は上記発明の実施の態様及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】分取用HPLCにより分取主された化合物5のピークを示すチャートである。
【図2】PET撮影1におけるラットの脳の下垂体、甲状腺及び松果体に焦点を当てたPET画像である。
【図3】PET撮影1におけるラットの脳の顎下腺、大脳皮質及び脈絡叢に焦点を当てたPET画像である。
【図4】PET撮影1における組織時間—放射活性曲線(tTAC)を示すグラフである。
【図5】PET撮影2で得られたラットの脳のスライス片のスキャナ画像(A)、イメージアナライザーで取得された画像(B)及びPETプローブ像(C)である。

【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、PET用分子プローブとして、医薬産業などにおいて利用することができる。
図面
【図1】
0
【図4】
1
【図2】
2
【図3】
3
【図5】
4