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明細書 :注意欠陥/多動性障害モデルラット

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5668997号 (P5668997)
公開番号 特開2011-036204 (P2011-036204A)
登録日 平成26年12月26日(2014.12.26)
発行日 平成27年2月12日(2015.2.12)
公開日 平成23年2月24日(2011.2.24)
発明の名称または考案の名称 注意欠陥/多動性障害モデルラット
国際特許分類 A01K  67/027       (2006.01)
C12N  15/09        (2006.01)
G01N  33/15        (2006.01)
FI A01K 67/027 ZNA
C12N 15/00 A
G01N 33/15 Z
請求項の数または発明の数 2
全頁数 33
出願番号 特願2009-188152 (P2009-188152)
出願日 平成21年8月14日(2009.8.14)
審査請求日 平成24年7月31日(2012.7.31)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】598015084
【氏名又は名称】学校法人福岡大学
発明者または考案者 【氏名】廣瀬 伸一
【氏名】高崎 浩太郎
個別代理人の代理人 【識別番号】100080160、【弁理士】、【氏名又は名称】松尾 憲一郎
審査官 【審査官】伊達 利奈
参考文献・文献 Genes Brain and Behavior,2008, Vol.7, pp.53-60
Molecular Psychiatry,08.01.2008, Vol.14, pp.546-554
Journal of Neuroscience,2008, Vol.28, No.47, pp.12465-12476
Journal of Muscle Research & Cell Motility,29.04.2009, Vol.30, pp.73-83
Proceedings of the National Academy of Sciences of USA,2006, Vol.103, No.50, pp.19152-19157
Epilepsy Res.,2002年,Vol.48,p.181-186
Hu.Mol.Genet.,1997年,Vol.6, No.6,p.943-947
Biochem.Pharmacol.,2007年,Vol.74,p.1308-1314
Neurobiology of Disease,2005, Vol.20, pp.799-804
Epilepsy Research,05.12.2008, Vol.83, pp.152-156
調査した分野 C12N 15/00-15/90

JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
特許請求の範囲 【請求項1】
ヒトのてんかん遺伝子異常と同じ遺伝子異常を有する注意欠陥/多動性障害 (AD/HD) モデルラットであって、ヒト常染色体優性夜間前頭葉てんかんに関連するニューロンアセチルコリン受容体遺伝子のβ2サブユニットCHRNB2の非ヒト哺乳動物のChrnb2に、変異導入によって、その cDNAの856番のG(グアニン) が C(シトシン)(c.856G>C)または A(アデニン)(c.856G>A)に変異導入した配列番号19または22でそれぞれ表される塩基配列を有することを特徴とする注意欠陥/多動性障害 (AD/HD) モデルラット
【請求項2】
請求項1に記載の注意欠陥/多動性障害 (AD/HD) モデルラットであって、前記変異導入によって前記Chrnb2にc.856G>Cまたはc.856G>Aが変異導入されて、前記β2サブユニットCHRNB2のp.286番と相同のアミノ酸残基Valがそれぞれ、LeuまたはMetに置換されていることを特徴とする注意欠陥/多動性障害 (AD/HD) モデルラット
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
この発明は、注意欠陥/多動性障害モデル非ヒト哺乳動物に関するものである。更に詳細には、この発明は、ヒト常染色体優性夜間前頭葉てんかんに関連する遺伝子と相同の遺伝子異常を有する注意欠陥/多動性障害モデル非ヒト哺乳動物であって、ヒトの注意欠陥/多動性障害に関連した行動障害を示す注意欠陥多動性障害モデル非ヒト動物に関するものである。また、この発明は、注意欠陥/多動性障害モデル非ヒト哺乳動物を使用した注意欠陥/多動性障害予防薬または治療薬のスクリーニング方法ならびに被験薬剤の注意欠陥/多動性障害に対する評価方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
注意欠陥/多動性障害(Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder: AD/HD) は、多動性、不注意、衝動性を症状の特徴とする発達障害の一つと言われていて、注意力を維持しにくく、時間感覚がずれていて、かつ、様々な情報をまとめることが苦手などの特徴がある、主に幼児期から学齢期の児童の数パーセントに認められる精神疾患である。
【0003】
注意欠陥/多動性障害(AD/HD)の発症原因は不明であるが、現在、中枢神経刺激薬塩酸メチルフェニデートがAD/HDの第一選択薬として繁用されている。しかしながら、塩酸メチルフェニデートは、習慣性が強く、頭痛や不眠症等の副作用が報告されている。また、ニコチンスキンパッチ療法がAD/HD症状を減少することが報告されているが(非特許文献1)、ニコチンにも習慣性があるという欠点がある。さらに、ニコチン受容体アゴニストABT-418がAD/HDの不注意症状を改善することが報告されているが(非特許文献2)、適応を取得するには至っていない(例えば、特許文献1参照)。この他、ネフィラセタムは、脳卒中易発症高血圧自然発症ラット (SHRSP) の自発的交替行動を指標とした注意力の側面を包含する短期記憶処理効率の低下を改善し、注意欠陥多動性障害、特にその不注意症状の治療に有効であると記載されている (例えば、特許文献1参照)。しかしながら、今のところAD/HDの治療法は確立されていないのが現状である。
【0004】
AD/HDの原因解明と予防・治療法の確立のためには、この疾患の動物モデルの樹立が急務であり、そのために各種の動物モデルが開発されている。かかるAD/HD動物モデルとしては、例えば、選択交配によって確立されたラット2系統(SHRとNHE)、ジーンターゲティングにより作製されたマウス1系統(DAT-KO)、中性子照射 (neutron irradiation) による染色体欠損で作製されたマウス1系統 (Coloboma mutant mouse)、脳梁離脱 (acallosal) の表現型を示す近交系マウス1系統 (I/LnJ)(例えば、非特許文献3参照)、肝炎・肝癌・ヒトWilson病モデルLEC ラットをWistar系WKAHラットに戻し交配することによって樹立したコンジェニック系統の多動性障害モデルラット(特許文献2)などが知られている。
【0005】
上記各種動物モデルのうち、現在では、高血圧自然発症ラット(SHR)が最もよく利用されている(例えば、非特許文献4参照)。しかしながら、SHRにみられる多動性障害が、ヒトにおける多動性障害を必ずしも反映するものではなく、また遺伝性に関しても未だ不明である(例えば、非特許文献5参照)。また、SHRの後継種である脳卒中易発症高血圧自然発症ラット(SHRSP)は、Y字迷路による自発的交替行動の障害を示し、不注意、多動性および衝動性といったADHDモデルとしての行動学的および薬理学的特徴を有しているとの報告がある (例えば、非特許文献6参照)。
【0006】
上記のような先行技術の現状に鑑み、ヒトのAD/HDにより近似する行動障害を呈するAD/HD動物モデルの樹立が未だに求められている。そこで、本発明者らは、本発明者の一人である廣瀬伸一らがてんかんモデル動物として既に樹立したてんかんモデルラットである、夜間のてんかん発作を特徴とする家族性てんかんの1つである常染色体優性夜間前頭葉てんかんの原因遺伝子異常としてのニューロンアセチルコリン受容体のα4ならびにβ2サブユニットの遺伝子である CHRNA4 ならびに CHRNB2 の遺伝子の変異(例えば、非特許文献7~14参照)を有するラットについて、その行動バターンを調べたところ、非常に驚いたことに、そのてんかんモデルラットがヒトのAD/HDにより近似する行動障害を呈することを見出して、この発明を完成した。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】特開2005-89299号公報
【特許文献2】特開2001-186828号公報
【0008】

【非特許文献1】Psychopharmacol Bull 32 (1996) 67-73,Psychopharmacology 123 (1996) 55-63
【非特許文献2】Am J Psychiatry 156 (1999) 1931-1937
【非特許文献3】Davids, E., et al. 2003. Brain Research Reviews, 42, 1-21
【非特許文献4】Hendley ED, et al. Am J Physiol 1991; 261(2 Pt 2):H583-589; Boix F, et al. Behav Brain Res 1998;94:153-162; Carey MP, et al. Behav Brain Res 1998;94:173-185; Papa M, et al. Behav Brain Res 1998;94:187-195; Papa M, et al. Behav Brain Res 1998;94:197-211
【非特許文献5】Behav Neural Biol 53 (1990) 88-102; Behav Neural Biol 58 (1992) 103-112, Behav Brain Res 94 (1998) 73-82
【非特許文献6】Jpn J Pharmacol 82 (Suppl I) (2000) 230P; Clin Exp Hypertens 22 (2000) 387; Jpn J Pharmacol 85 (Suppl I) (2001) 249P; Clin Exp Hypertens 23 (2001) 427-42
【非特許文献7】Hirose, S., et al., Neurology 53:1749-1753, 1999
【非特許文献8】Steinlein, O.K., et al. Nat Genet 11, 201-203 (1995).
【非特許文献9】Hirose, S., et al. Neurology 53, 1749-1753 (1999).
【非特許文献10】Steinlein, O.K., et al. Epilepsia 41, 529-535 (2000).
【非特許文献11】Steinlein, O.K., et al. Hum Mol Genet 6, 943-947 (1997).
【非特許文献12】De Fusco, M., et al. Nat Genet 26, 275-276 (2000).
【非特許文献13】Phillips, H.A., et al. Am J Hum Genet 68, 225-231 (2001).
【非特許文献14】Bertrand, D., et al. Neurobiol Dis 20, 799-804 (2005)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、この発明は、ヒトのAD/HDにより近似する注意欠陥/多動性障害に関連する行動障害を呈するAD/HDモデル非ヒト哺乳動物を提供することを目的としている。
【0010】
詳細には、この発明は、ヒトのてんかん遺伝子異常と同じ遺伝子異常を有する非ヒト哺乳動物であって、ヒト常染色体優性夜間前頭葉てんかんに関連するニューロンアセチルコリン受容体遺伝子のβ2サブユニットCHRNB2の非ヒト哺乳動物のChrnb2に遺伝子変異が変異導入されている注意欠陥/多動性障害 (AD/HD) モデル非ヒト哺乳動物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、この発明は、ヒトのAD/HDにより近似する注意欠陥/多動性障害に関連する行動障害を呈するAD/HDモデル非ヒト哺乳動物を提供する。
【0014】
この発明は、1つの好ましい態様として、ヒトのてんかん遺伝子異常と同じ遺伝子異常を有する注意欠陥/多動性障害(AD/HD) モデルラットであって、ヒト常染色体優性夜間前頭葉てんかんに関連するニューロンアセチルコリン受容体遺伝子のβ2サブユニットCHRNB2の非ヒト哺乳動物のChrnb2に、変異導入によって、その cDNAの856番のG(グアニン) が C(シトシン)(c.856G>C)または A(アデニン)(c.856G>A)に変異導入した配列番号19または22でそれぞれ表される塩基配列を有することを特徴とする注意欠陥/多動性障害 (AD/HD) モデルラットを提供する。
【0017】
この発明は、更に別の好ましい態様として、上記Chrnb2にc.856G>Cまたはc.856G>Aが変異導入されて、前記β2サブユニットCHRNB2のp.286番と相同のアミノ酸残基Valがそれぞれ、LeuまたはMetに置換されていること;からなる注意欠陥/多動性障害 (AD/HD) モデルラットを提供する。
【発明の効果】
【0021】
この発明に係る注意欠陥/多動性障害 (AD/HD) モデル非ヒト哺乳動物は、ヒトのAD/HDにより近似した注意欠陥/多動性障害に関連する行動障害を呈することから、被験物質の注意欠陥/多動性障害(AD/HD)に対する有効性を確認して注意欠陥/多動性障害(AD/HD)予防薬または治療薬をスクリーニングすることができるとともに、また被験薬剤の注意欠陥/多動性障害(AD/HD)に対する有効性を評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】CHRNA4のSma I/Bpu1102 I 部位におけるエンザイムサイトを示す図。(A)は野生型CHRNA4のエンザイムサイトを示し、(B)はプローブのエンザイムサイトを示す図。
【図2】実施例1で構築した発現ベクターを示す概略図。
【図3】SnaB I/NaeI部位におけるPDGFプロモーターとラットChrna4の構成を示す概略図。
【図4】CHRNB2のHinc II/Sma I 部位におけるエンザイムサイトを示す図。(A)は野生型CHRNB2のエンザイムサイトを示し、(B)はプローブのエンザイムサイトを示す図。
【図5】実施例4で構築した発現ベクターを示す概略図。
【図6】SnaB I/Dra III部位におけるPDGFプロモーターとラットChrnb2の構成を示す概略図。
【図7】トランスジェニックラット(Chrnb2 V287L)の脳波(EEG)を測定した結果を示す図。
【図8】図6の記号A部分の拡大図。
【図9】図6の記号B部分の拡大図。
【図10】自発運動量の測定に使用するオープンフィールド装置を示す図。
【図11】TgラットおよびnonTgラットの自発運動量を示す図。
【図12】TgラットおよびnonTgラットの立ち上がり回数を示す図。
【図13】不安様行動の測定に使用する高架式十字迷路装置を示す図。
【図14】TgラットおよびnonTgラットのオープンアーム滞在時間ならびにオープンアームを横切った回数を示す図。

【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
この発明に係る注意欠陥/多動性障害 (AD/HD) モデル非ヒト哺乳動物は、夜間のてんかん発作を特徴とする家族性てんかんの1つであるヒト常染色体優性夜間前頭葉てんかんに関連するニューロンニコチン性アセチルコリン受容体α4サブユニット (CHRNA4) 遺伝子もしくはβ2サブユニット (CHRNB2) 遺伝子の遺伝子変異を遺伝子組換えし、該遺伝子の塩基配列の1部が、その塩基配列とは異なるが、アミノ酸配列が同一になるプローブを導入した変異遺伝子を有し、ニューロンニコチン性アセチルコリン受容体のα4サブユニット CHRNA4 遺伝子もしくはβ2サブユニット CHRNB2 遺伝子の機能を欠失もしくは欠損している遺伝子組換え非ヒト哺乳動物であって、ヒトのAD/HDに非常に近似する行動障害を呈することを特徴としている。したがって、この発明に係るモデル哺乳動物は、注意欠陥/多動性障害 (AD/HD) モデルとして使用することができる。なお、この注意欠陥/多動性障害 (AD/HD) モデル非ヒト哺乳動物は、本発明者の一人である廣瀬伸一らがてんかんモデル動物として既に樹立したてんかんモデルラットであり、このてんかんモデルラットは既に特願2008-31002号として特許出願をしている。したがって、特願2008-31002号に記載事項は、本件特許出願の1部をも構成するものと見なすことができる。
【0024】
ここで、用語「非ヒト哺乳動物」とは、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ブタ、ウマ、ウシなどのヒト以外の哺乳動物を意味しているが、ラットが抗てんかん薬の開発に永年使用されているという観点からしてより好ましいといえる。また、本明細書においては、説明を簡潔にするために、ラットを例にして説明するが、特にラットに限定されるものではない。
【0025】
現在では、一般的に、遺伝子異常を有する疾患モデル動物は当該技術分野で慣用されている組換え動物作出法で作出することができる。この発明においても、注意欠陥/多動性障害 (AD/HD) モデル非ヒト哺乳動物は、夜間のてんかん発作を特徴とする家族性てんかんの1つであるヒト常染色体優性夜間前頭葉てんかんに対するてんかんモデル動物(つまり、注意欠陥/多動性障害 (AD/HD) モデル非ヒト哺乳動物)を当該技術分野で従来から使用されている組換え動物作出法で作出することができる。
【0026】
そのためには、まず、ヒト常染色体優性夜間前頭葉てんかんに関連するニューロンニコチン性アセチルコリン受容体α4サブユニット (CHRNA4) 遺伝子もしくはβ2サブユニット (CHRNB2) 遺伝子の相同遺伝子がラットなどからPCRクローニングなどの常法に従って単離される。なお、ラットChrna4のcDNAの塩基配列情報は、L31620ヒトCHRNA4 cDNAの塩基配列情報のNM_000744 (NCBI)として、またラットChrnb2のcDNAの塩基配列情報はNM_019297 (NCBI)として登録されている。
【0027】
ラットのニューロンニコチン性アセチルコリン受容体α4サブユニット (Chrna4) 遺伝子のcDNA(野生型)の塩基配列は下記の通りである。なお、下線部分は、この発明においてプローブと置換される部分を示している。また、対応するアミノ酸配列は配列番号30に示すとおりである。
【0028】
(配列番号1)
ATGGCCAATTCGGGCACCGGGGCGCCGCCGCCGCTGCTGCTACTGCGCTGCTGCTGCTCCTAGGGACCGGCCTCTTGCCTGCTAGCAGCCACATAGAGACCCGGGCCCATGCGGAGGAGCGGCTCCTGAAGAGACTCTTCTCCGGTTACAACAAGTGGTCTCGGCCAGTAGCCAATATCTCAGATGTGGTCCTCGTCCGCTTTGGCTTGTCCATTGCTCAGCTCATTGACGTGGACGAGAAGAACCAGATGATGACAACCAACGTGTGGGTGAAGCAGGAGTGGCACGACTACAAGCTGCGCTGGGACCCTGGTGACTACGAGAATGTCACCTCCATCCGCATCCCCTCTGAACTCATCTGGAGGCCTGACATCGTCCTCTACAACAATGCGGATGGAGACTTTGCAGTCACCCACCTGACCAAGGCCCACCTGTTCTATGACGGAAGGGTGCAGTGGACACCCCCAGCCATCTATAAGAGCTCCTGCAGCATCGACGTCACCTTCTTCCCCTTTGACCAGCAGAACTGTACCATGAAGTTTGGATCCTGGACCTACGACAAGGCCAAGATTGACTTAGTGAGCATGCATAGCCGTGTGGACCAACTGGACTTCTGGGAAAGTGGGGAGTGGGTCATCGTGGATGCTGTGGGCACCTACAACACCAGGAAGTACGAGTGCTGTGCCGAGATCTATCCTGACATCACCTATGCCTTCATCATCCGACGGCTGCCGCTATTCTACACCATCAACCTCATCATCCCGTGCCTGCTCATCTCCTGTCTCACCGTGCTGGTCTTCTATCTGCCTTCAGAGTGTGGCGAGAAGGTCACACTGTGCATCTCGGTGCTGCTTTCTCTCACCGTCTTCCTGCTGCTCATCACCGAGATCATCCCGTCCACCTCGCTGGTCATCCCGCTCATCGGCGAGTACCTCCTCTTCACCATGATCTTCGTCACCCTCTCCATCGTCATCACGGTCTTCGTGCTCAATGTGCACCACCGCTCGCCACGCACACACACGATGCCCGCCTGGGTGCGTAGAGTCTTCCTGGACATCGTGCCTCGCCTCCTCTTCATGAAGCGCCCCTCTGTGGTCAAAGACAACTGCCGGAGACTTATTGAGTCCATGCACAAGATGGCCAACGCCCCCCGCTTCTGGCCAGAGCCTGTGGGCGAGCCCGGCATCTTGAGTGACATCTGCAACCAAGGTCTGTCACCTGCCCCAACTTTCTGCAACCCCACGGACACAGCAGTCGAGACCCAGCCTACGTGCAGGTCACCCCCCCTTGAGGTCCCTGACTTGAAGACATCAGAGGTTGAGAAGGCCAGTCCCTGTCCATCGCCTGGCTCCTGTCCTCCACCCAAGAGCAGCAGTGGGGCTCCAATGCTCATCAAAGCCAGGTCCCTGAGTGTCCAGCATGTGCCCAGCTCCCAAGAAGCAGCAGAAGATGGCATCCGCTGCCGGTCTCGGAGTATCCAGTACTGTGTTTCCCAAGATGGAGCTGCCTCCCTGGCTGACAGCAAGCCCACCAGCTCCCCGACCTCCCTGAAGGCCCGTCCATCCCAGCTTCCCGTGTCAGACCAGGCCTCTCCATGCAAATGCACATGCAAGGAACCATCTCCTGTGTCCCCAGTCACTGTGCTCAAGGCGGGAGGCACCAAAGCACCTCCCCAACACCTGCCCCTGTCACCAGCCCTGACACGGGCAGTAGAAGGCGTCCAGTACATTGCAGACCACCTCAAGGCAGAAGACACTGACTTCTCGGTGAAGGAGGACTGGAAATACGTGGCCATGGTCATTGACCGAATCTTCCTCTGGATGTTCATCATTGTCTGCCTTCTGGGCACTGTGGGACTCTTCCTGCCTCCCTGGCTGGCTGCTTGCTGA
【0029】
ラットのニューロンニコチン性アセチルコリン受容体β2サブユニット (Chrnb2) 遺伝子のcDNA(野生型)の塩基配列は下記の通りである。なお、下線部分は、この発明においてプローブと置換される部分を示している。また、対応するアミノ酸配列は配列番号31に示すとおりである。
【0030】
(配列番号2)
ATGGCCGGGCACTCCAACTCAATGGCGCTGTTCAGCTTCAGCCTTCTTTGGCTGTGCTCAGGGGTTTTGGGAACTGACACAGAGGAGCGGCTAGTGGAGCATCTCTTAGATCCCTCCCGCTATAACAAGCTGATTCGTCCAGCTACTAACGGCTCTGAGCTGGTGACTGTACAGCTCATGGTATCATTGGCTCAGCTCATTAGTGTGCACGAGCGGGAGCAGATCATGACCACCAATGTCTGGCTGACCCAGGAGTGGGAAGATTACCGCCTCACATGGAAGCCTGAGGACTTCGACAATATGAAGAAAGTCCGGCTCCCTTCCAAACACATCTGGCTCCCAGATGTGGTTCTATACAACAATGCTGACGGCATGTACGAAGTCTCCTTCTATTCCAATGCTGTGGTCTCCTATGATGGCAGCATCTTTTGGCTACCACCTGCCATCTACAAGAGTGCATGCAAGATTGAGGTGAAGCACTTCCCATTTGACCAGCAGAATTGCACCATGAAGTTTCGCTCATGGACCTACGACCGTACTGAGATTGACCTGGTGCTCAAAAGTGATGTGGCCAGTCTGGATGACTTCACACCCAGCGGGGAGTGGGACATCATCGCACTGCCAGGCCGACGCAACGAGAACCCAGACGACTCCACCTATGTGGACATCACCTATGACTTCATCATTCGTCGCAAACCACTCTTCTACACTATCAACCTCATCATCCCCTGCGTACTCATCACCTCGCTGGCCATCCTGGTCTTCTACCTGCCCTCAGACTGTGGTGAAAAGATGACACTTTGTATTTCTGTGCTGCTAGCACTCACGGTGTTCCTGCTGCTCATCTCCAAGATTGTGCCTCCCACCTCCCTCGATGTACCGCTGGTGGGCAAGTACCTCATGTTTACCATGGTGCTAGTCACCTTCTCCATCGTCACCAGCGTGTGTGTGCTCAATGTGCACCACCGCTCGCCTACCACGCACACCATGGCCCCCTGGGTCAAGGTGGTCTTCCTGGAGAAGCTGCCCACCCTGCTCTTCCTGCAGCAGCCACGCCACCGCTGTGCACGTCAGCGTCTGCGCTTGAGGAGGCGCCAGCGAGAGCGTGAGGGCGCAGGCGCGCTTTTCTTCCGTGAAGGTCCTGCGGCTGACCCATGTACCTGCTTTGTCAACCCTGCATCAGTGCAGGGCTTGGCTGGGGCTTTCCGAGCTGAGCCCACTGCAGCCGGCCCGGGGCGCTCTGTGGGGCCATGCAGCTGTGGCCTCCGGGAAGCAGTGGATGGCGTACGCTTCATTGCGGACCACATGCGAAGTGAGGATGATGACCAGAGTGTGAGGGAGGACTGGAAATACGTTGCCATGGTGATCGACCGCCTGTTCCTGTGGATCTTTGTCTTTGTCTGTGTCTTTGGGACCGTCGGCATGTTCCTGCAGCCTCTCTTCCAGAACTACACTGCCACTACCTTCCTCCACCCTGACCACTCAGCTCCCAGCTCCAAGTGA
【0031】
このようにして得られたcDNAクローンは既知の変異導入法により変異を導入することができる。この発明に使用できる変異導入法としては、当該技術分野で従来から汎用されている部位特異的突然変異導入法などの従来法を使用するのがよい。この部位特異的突然変異導入法は、cDNAに任意の変異を部位特異的に任意の部位に導入することができる。かかるcDNAの部位に部位特異的に導入できる変異としては、特に限定されるものではなく、その変異が欠失、欠損、置換または付加などの改変であってもよい。
【0032】
したがって、この発明においても、部位特異的突然変異導入法を利用して単離ラットChrna4またはChrnb2に所定の変異を導入することができ、その結果変異が導入されたラットの相同遺伝子Chrna4またはChrnb2は、ヒト常染色体優性夜間前頭葉てんかんの発作に関連する機能を有するタンパク質をコードする塩基配列を保持している。
【0033】
なお、本明細書で使用する「相同遺伝子」またはこれに関連する用語は、遺伝学的用語ではある遺伝子の塩基配列において, 祖先を同じくすると考えられる異種の動物での遺伝子で類似の塩基配列をもち、コードされる蛋白も類似した機能を有するものをいう。
【0034】
この発明において、ラットのニューロンニコチン性アセチルコリン受容体サブユニット遺伝子のcDNAは次のようにして調製することができる。
【0035】
具体的には、ラットのcDNAクローンをテンプレートとして既存のラットChrna4 または Chrnb2 の cDNA 配列を基に2種類のプライマー、例えば、下記塩基配列を有するフォワードプライマーとリバースプライマーを設計・作成する。
【0036】
ラットChrna4 の cDNA 配列を基にして作成されるフォワードプライマー(40mer)(配列番号3)とリバースプライマー(38mer)(配列番号4)は次の塩基配列を有する。
配列番号3:AGATCTCGCGAAGCTTCACCATGGCCAATTCGGGCACCGG
配列番号4:AGATCTAGATCAGCAAGCAGCCAGCCAGGGAGGCAGGA
ラットChrnb2の cDNA 配列を基にして作成されるフォワードプライマー(41mer)(配列番号5)とリバースプライマー (40mer) (配列番号6)は次の塩基配列を有する。
配列番号5:AGATCTCGCGACATGGCCGGGCACTCCAACTCAATGGCGCT
配列番号6:ATCGATGGATCCTCACTTGGAGCTGGGAGCTGAGTGGTCA
【0037】
これらのプライマーを用いてPCRを行って、得られたPCR産物を適切なベクターにサブクローニングする。得られるクローンをシークエンスし、Chrna4および Chrnb2 の cDNA の塩基配列を確認する。
【0038】
つぎに、上記のようにして得られたcDNAクローンの任意の部位に変異を導入する。変異導入法としては種々の方法が知られていて、そのいずれもこの発明に適用することができる。特に、部位特異的突然変異導入法などの変異導入法を使用することによって任意の部位に任意の変異を導入することができる。
【0039】
前述したように、CHRNA4 遺伝子の遺伝子異常としては、S280F、S284Lならびに、291-2
92insLが報告されている。また、CHRNB2 遺伝子の遺伝子変異としては、V287L、V287MおよびI312Mが報告されている。
【0040】
そこで、この発明においては、上記のようにしてPCRクローニングで単離したラットChrna4(野生型)(配列番号1)およびラットChrnb2(野生型)(配列番号2)に対して、例えば、CHRNA4 遺伝子の遺伝子異常である、S280F、S284L、もしくは291-292insLまたはCHRNB2 の遺伝子変異であるV287LもしくはV287Mに相当する種特異的な相同遺伝子の変異を上記変異導入法によって変異導入することができる。
【0041】
つまり、変異導入は、適切なセンスプライマーとアンチセンスプライマーを用いて、市販のキットによって所定の変異を所定の変異導入部位に変異を導入することができる。この変異導入に使用することができるセンスプライマーとアンチセンスプライマーは、一般的には20mer~40mer、好ましくは25mer~35merであるのがよい。この場合、制限酵素切断部位が変異導入部位に新たに出現してくるように、プライマー、変異導入部位などを工夫して変異導入を行うのがよい。
【0042】
具体的には、例えば、野生型ラットChrna4にS282F(ヒトではS280F)の変異導入をするには、下記のセンスプライマー(29mer)とアンチセンスプライマー(29mer)を用いて、cDNAの塩基配列845番の C を T (c.845C>T) に、また846番の G を C (c.846G>C) に変異導入することができる。この変異導入によって、CHRNA4の p.282 番と相同のアミノ酸残基SerがPheに置換される。
【0043】
使用できるセンスプライマー(配列番号7)およびアンチセンスプライマー(配列番号8)の塩基配列は次の通りである。
配列番号7: CACACTGTGCATCTTCGTGCTGCTTTCTC
配列番号8:GAGAAAGCAGCACGAAGATGCACAGTGTG
上記変異導入により生成された変異導入ラットcDNAの塩基配列は下記の通りである。
【0044】
(配列番号9)
JP0005668997B2_000002t.gif
【0045】
同様に、野生型ラットChrna4にS286L(ヒトではS284L)の変異導入をするには、下記のセンスプライマー(29mer)とアンチセンスプライマー(29mer)を用いて、cDNAの塩基配列856番の T を C (c.856T>C) に、また857番の C を T (c.857C>T) に変異導入することができる。この変異導入によって、CHRNA4の p.286 番と相同のアミノ酸残基SerがLeuに置換される。
【0046】
使用できるセンスプライマー(配列番号10)およびアンチセンスプライマー(配列番号11)の塩基配列は次の通りである。
配列番号10:CGGTGCTGCTTCTTCTCACCGTCTTCCTG
配列番号11:CAGGAAGACGGTGAGAAGAAGCAGCACCG
【0047】
上記変異導入により生成された変異導入cDNAの塩基配列は下記の通りである。
【0048】
(配列番号12)
JP0005668997B2_000003t.gif
【0049】
同様に、野生型ラットChrna4のcDNAの塩基配列878番と879番の間にGCT (c.878-879insGCT) を挿入することによって、下記センスプライマー(30mer)とアンチセンスプライマー(30mer)を用いて、CHRNA4のp.293番(ヒトでは291番)と相同のアミノ酸残基Leuとp.294番(ヒトでは292番)と相同のアミノ酸残基Ileの間にLeuが挿入される。
【0050】
使用できるセンスプライマー(配列番号13)およびアンチセンスプライマー(配列番号14)の塩基配列は次の通りである。
配列番号13:GTCTTCCTGCTGCTGCTCATCACCGAGATC
配列番号14:GATCTCGGTGATGAGCAGCAGCAGGAAGAC
【0051】
上記変異導入により生成された変異導入cDNAの塩基配列は下記の通りである。
【0052】
(配列番号15)
JP0005668997B2_000004t.gif
【0053】
上記c.878-879insGCTの場合と同様にして、野生型ラットChrna4のcDNAの塩基配列879と880番の間に TTA (c.879-880insTTA) を挿入することによって、CHRNA4のp.293番(ヒトでは291番)と相同のアミノ酸残基Leuとp.294番(ヒトでは292番)と相同のアミノ酸残基Ileの間にLeuが挿入される。
【0054】
(配列番号16)
JP0005668997B2_000005t.gif
【0055】
同様に、例えば、野生型ラットChrnb2にV287Lの変異導入をすることによって、ラット相同遺伝子Chrnb2のcDNAには、配列番号16で表される塩基配列からなるフォワードプライマーおよび配列番号17で表される塩基配列からなるリバースプライマーを用いて、c.856 番目のGがCに (c.856G>C) 置換され、ヒトのニューロンアセチルコリン受容体β2サブユニットCHRNB2と相同のアミノ酸残基p.286番のValがLeuに置換される。
【0056】
使用できるセンスプライマー(30mer)(配列番号17)およびアンチセンスプライマー(30mer)(配列番号18)の塩基配列は次の通りである。
配列番号17:CTCATCTCCAAGATTATGCCTCCCACCTCC
配列番号18:GGAGGTGGGAGGCATAATCTTGGAGATGAG
【0057】
上記変異導入により生成された変異導入cDNAの塩基配列は下記の通りである。
【0058】
(配列番号19)
JP0005668997B2_000006t.gif
【0059】
同様にして、野生型ラットChrnb2にV287Mの変異導入をすることによって、ラット相同遺伝子Chrnb2のcDNAには、配列番号20で表される塩基配列からなるフォワードプライマーおよび配列番号21で表される塩基配列からなるリバースプライマーを用いて、c.856 番目のGがAに (c.856G>A) 置換され、ヒトのニューロンアセチルコリン受容体β2サブユニットCHRNB2と相同のアミノ酸残基p.286番のValがMetに置換される。
【0060】
使用できるセンスプライマー(30mer)(配列番号20)およびアンチセンスプライマー(30mer)(配列番号21)の塩基配列は次の通りである。
配列番号20:CTCATCTCCAAGATTCTGCCTCCCACCTCC
配列番号21:GGAGGTGGGAGGCAGAATCTTGGAGATGAG
上記変異導入により生成された変異導入cDNAの塩基配列は下記の通りである。
【0061】
(配列番号22)
JP0005668997B2_000007t.gif
【0062】
この発明において、上記のように変異導入する変異の種類を、その変異導入部位に位置するコドンの塩基配列に対応するように工夫することによって、その変異導入部位に新たに酵素部位を出現させることができる。
【0063】
例えば、Chrna4については、879-880insTTAを変異導入することにより、制限酵素 Tru9 I (MseI) による切断部位 (T↓TAA) が出現する。また、Chrnb2については、V287LもしくはV287Mを導入することにより、制限酵素 Hinf If による切断部位 (G↓ANTG) が出現する。なお、矢印(↓)は切断箇所を示している。ただし、制限酵素の種類や切断部位などはこれらに限定されるものではなく、変異導入を変えることにより適宜選択することができる。
【0064】
この発明において、上記のcDNAに所定の塩基配列からなるヌクレオチドがプローブとして導入される。導入するプローブは、元の塩基配列とは塩基配列は全くもしくはほぼ全て異なるが、元のアミノ酸配列が同一になるように工夫したヌクレオチドであって、その塩基の数は、一般的には、約30bp~200bp、好ましくは約50bp~150bp、より好ましくは約60bp~120bpであるのがよい。これらヌクレオチドは、DNA合成法などの当該技術分野で慣用されている常法に従って調製することができる。
【0065】
具体的には、例えば、Chrna4 遺伝子の変異導入cDNAに対しては、そのcDNAのc.104 番目から第 c.221 番目までの塩基配列と、その塩基配列は異なるが、アミノ酸配列が同一になるように、下記塩基配列 (118 bp) を有するヌクレオチドをプローブとして作成することができる。
【0066】
(配列番号23)
GGGCTCACGCCGAAGAACGCCTGCTCAAAAGGCTGTTTTCTGGCTATAATAAATGGTCCCGCCCCGTGGCTAACATTTCCGACGTCGTGCTGGTGCGGTTCGGATTATCTATCGCTCA
【0067】
同様にして、例えば、Chrnb2 の変異導入cDNAに対しては、そのcDNAのc.1171 番目から第 c.1232 番目までの塩基配列と、その塩基配列は異なるが、アミノ酸配列が同一になるように、下記塩基配列 (62 bp) を有するヌクレオチドをプローブとして作成することができる。
【0068】
(配列番号24)
AACCCCGCCTCCGTCCAAGGACTCGCCGGCGCCTTTAGGGCCGAACCTACCGCCGCTGGCCC
【0069】
次に、上記のように作成したヌクレオチドプローブをハイブリダイゼイションした後、プローブを制限酵素部位を用いて常法に従って導入する。例えば、配列番号22で表されるプローブを上記塩基配列を有するChrna4の変異導入 cDNA の所定の部位に、pCRII-TOPO ベクター等の適当なベクターのSma IとBpu1102 I (別名Esp I または Cel II)部位に当該技術分野において慣用されているプローブ導入法によって挿入することができる。また、例えば、配列番号22で表されるプローブを、上記塩基配列を有するChrnb2の変異導入 cDNA の所定の部位に、pCRII-TOPO ベクター等の適当なベクターの制限酵素部位の Hinc I とSma Iに当該技術分野において慣用されているプローブ導入法によって挿入することができる。各ステップでシークエンスを行い、塩基配列の確認を行った。
【0070】
ラットChrana4 の変異cDNA (S282F)(なお、ヒトではS280Fである。)に配列番号2で表されるプローブを導入したプローブ導入変異遺伝子cDNA (S282FPB) の塩基配列(配列番号25)は下記の通りである。なお、c.845C>T と c.846G>Cの変異により、下線したように844番目から846番目のTCG が TTC に変異され、またプローブ部分は、下線で示すように、その塩基数が118 bpで、104番目から221番目に位置している。
【0071】
(配列番号25)
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【0072】
ラットChrna4 の変異cDNA (S286L)(なお、ヒトではS284Lである。)に配列番号23で表されるプローブを導入したプローブ導入変異遺伝子cDNA (S284LPB) の塩基配列(配列番号26)は下記の通りである。なお、c.856T>C と c.857C>Tの変異により、下線を引いた856番目から858番目のTCT が CTT に変異され、またプローブ部分は、下線で示すように、塩基数が118 bpで、104番目から221番目に位置している。
【0073】
(配列番号26)
JP0005668997B2_000009t.gif
【0074】
ラットChrana4の変異cDNA (879-880insL)に配列番号23で表されるプローブを導入したプローブ導入変異遺伝子cDNA (S282FPB) の塩基配列(配列番号27)は下記の通りである。なお、c.845C>T と c.846G>Cの変異により、四角(□)で囲ったように844番目から846番目のTCG が TTC に変異され、またプローブ部分は、下線で示すように、118 bpで、104番目から221番目に位置している。ただし、ヒトではS280Fである。
【0075】
(配列番号27)
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【0076】
ラットChrnb2 の変異cDNA に配列番号24で表されるプローブを導入したプローブ導入変異遺伝子cDNA (V286L) の塩基配列(配列番号28)は下記の通りである。
【0077】
(配列番号28)
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【0078】
ラットChrnb2の変異cDNA に配列番号24で表されるプローブを導入したプローブ導入変異遺伝子cDNA (V286M) の塩基配列(配列番号29)は下記の通りである。
【0079】
(配列番号29)
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【0080】
上記のようにして作製したラット上記変異とプローブを導入したラットChrna4またはChrb2のcDNAを用いて、この発明に係るてんかん非ヒト哺乳動物はそれ自体公知の非ヒト哺乳動物作出方法によって常法に従って作出することができる。かかる非ヒト哺乳動物の作出方法としては、目的遺伝子を動物個体に導入するトランスジェニック動物の作出方法、標的遺伝子と目的導入遺伝子とを組換えた遺伝子置換動物の作出方法、目的遺伝子を改変した細胞の核を用いたクローン個体の作製方法などが挙げられる。
本明細書では、目的遺伝子である上記変異遺伝子のcDNAを、例としてラットなどの動物個体の受精卵に導入するトランスジェニック動物の作出方法を挙げて説明する。
【0081】
先ず、ヒト常染色体優性夜間前頭葉てんかんに関連するニューロンニコチン性アセチルコリン受容体のα4サブユニット (CHRNA4) 遺伝子もしくはβ2サブユニット (CHRNB2) 遺伝子の相同遺伝子に該変異を持った変異遺伝子をコードするDNAを有する発現ベクターを作製する。
【0082】
つまり、非ヒト哺乳動物のニューロンニコチン性アセチルコリン受容体α4サブユニット (Chrna4) 遺伝子もしくはβ2サブユニット (Chrnb2) 遺伝子を含むDNAを単離し、このDNA断片に外来遺伝子などを挿入することによって発現ベクターを構築することができる。かかる外来遺伝子としては、マーカー遺伝子が好ましく、特に、ネオマイシン耐性遺伝子などの抗生物質耐性遺伝子が好ましい。抗生物質耐性遺伝子を挿入した場合には、抗生物質を含む培地で培養するだけで相同組換えを生じた細胞株を選抜することができる。また、より効率的な選抜を行うためには発現ベクターにチミジンキナーゼ遺伝子などを結合させておくこともできる。これにより、非相同組換えを起こした細胞株を排除することができる。また、発現ベクターにジフテリアトキシンAフラグメント(DT-A)遺伝子などを結合させると、非相同的な組換えを起こした細胞株を排除することができる。発現ベクターとしては、例えば、pCI-neo、pMCIneo、pXT1、pSG5、pcDNA3.neo、pLITMUS28、pcDNAIamp、pcDNA3などが使用される。
【0083】
上記DNAは、そのDNAを適当なプロモーターの下流に連結した発現ベクターを導入遺伝子として非ヒト哺乳動物に導入するのが好ましい。またプロモーターとしては、上記受容体サブユニットをコードするDNAを導入する非ヒト哺乳動物の細胞内で転写を開始することができるプロモーターであればいずれも用いることができ、例えば、シミアンウイルス40、ポリオーマウイルス、アデノウイルス2、ヒトサイトメガロウイルス、レトロウイルス等のウイルス由来遺伝子などのプロモーターが挙げられる。
【0084】
また、この発明で使用する発現ベクターは、非ヒト動物のニューロンニコチン性アセチルコリン受容体のα4サブユニット (Chrna2) 遺伝子もしくはβ2サブユニット (Chrnb2) の変異遺伝子をコードするDNAの下流に、mRNAの3’末端のポリアデニル化に必要なポリアデニル化シグナルを有していることが好ましい。ポリアデニル化シグナルとしては、例えば、上記のウィルス由来等の各遺伝子に含まれるSV40の後期遺伝子または初期遺伝子等のポリアデニル化シグナルなどが挙げられる。その他、発現ベクターには、目的遺伝子をさらに高発現させるために、各遺伝子のスプライシングシグナル、エンハンサー領域、イントロンの一部をプロモーター領域の5’上流、プロモーター領域と翻訳領域間あるいは翻訳領域の3’下流に連結してもよい。
【0085】
この発明においては、例えば、上記変異とプローブを導入したラット変異Chrna4またはChrnb2のcDNAを発現ベクターに制限酵素部位XhoIとNotIを用いて移行させた後、制限酵素SnaBIとNaeIで切断することができる。例えば、ラット変異Chrna4のcDNAをpCI-neoベクター由来のPDGFプロモーターを持つ発現ベクターに移行する場合には、制限酵素部位X hoI とNot I を用いて移行させ、制限酵素SnaBIとNae Iで切断することができ、また、ラットChrb2のcDNAを移行する場合には、制限酵素部位Xho IとSal Iを用いて移行させ、制限酵素SnaBIとDraIIIで切断することができる。これによって、PDGFプロモーター、ラット変異Chrna4 またはChrnb2のcDNAならびにpoly A部分からなる断片をDNA構築物としてゲル切り出しにより単離・精製することができる。
【0086】
この発明においては、例えば、上記のようにして単離・精製したDNA構築物などを非ヒト哺乳動物の分化全能性細胞に導入することによって非ヒト哺乳動物を作出することができる。使用できる分化全能性細胞としては、例えば、受精卵、初期胚、胚性幹細胞などが使用できる。DNA構築物を導入する受精卵は、例えば、性腺刺激ホルモン(PMS)など排卵誘発剤を腹腔内投与し、雌動物に過剰排卵を誘発させてDNA構築物の導入可能な受精卵を回収し、精管結紮などにより去勢した雄マウスと交配させた偽妊娠雌動物の卵管を摘出して、顕微鏡下で採取することによって得ることができる。
【0087】
次に、得られた受精卵にDNA構築物を導入する。構築物を受精卵に導入する手段としては、種々の方法が知られているが、トランスジェニック動物個体の作出効率や次代への導入遺伝子の伝達効率を考慮した場合、マイクロインジェクション法が好ましい。このように変異遺伝子を注入した受精卵は、仮親の卵管に移植し、個体まで発生させ、体の一部(例えば、尾部先端等)の体細胞からDNAを抽出し、サザン解析やPCR法により導入した遺伝子の存在を確認する。このように体細胞のゲノム中に導入遺伝子が組み込まれた個体を選別することによって目的とするトランスジェニック動物を作製することができる。
【0088】
上記によって導入遺伝子の存在が確認された個体(ヘテロ接合体)を初代(Founder:F0)とすれば、導入遺伝子はその子(F1)の50%に伝達される。さらに、このF1個体の雌雄を交配させることにより、2倍体染色体の両方に導入遺伝子を有する個体(F2)を作出することができる。
【0089】
これに対して、この発明において注意欠陥/多動性障害 (AD/HD) モデル非ヒト哺乳動物の作出に用いるトランスジェニック方法は、内在性遺伝子(Chrna4遺伝子またはChrnb2遺伝子)は正常のままの状態で、新たにその染色体DNAの任意の位置に変異型Chrna4またはChrnb2をコードする変異遺伝子を導入する。このため、この発明のAD/HDモデル動物では、正常なChrna4またはChrnb2と変異型Chrna4またはChrnb2とがそれぞれ共に産生されている。ニューロンニコチン性アセチルコリン受容体は、イオンチャンネル(αサブユニット2個、βサブユニット3個)として機能するタンパク質であるが、このようなイオンチャンネルはいずれかのサブユニットが変異していればチャンネル機能が変更される。
【0090】
この発明の注意欠陥/多動性障害 (AD/HD) モデル非ヒト哺乳動物は、後記の実施例に示すように、ヒト染色体優性夜間前頭葉てんかんと同様に、睡眠中にてんかん発作を自然発症するという優れた特性を有している。
【0091】
なお、目的遺伝子が全ての細胞の染色体上に組み込まれた個体の選択は、通常は、個体を構成する血液組織、上皮組織などの組織の一部からDNAを調製し、そのDNAをシークエンスして、その導入遺伝子が存在することをDNAレベルで確認することによって行われる。しかし、このようにDNAをシークエンスしてかかる組換え個体の選択をするには、手間も時間も、また費用も掛かる繁雑な仕事を行う必要がある。
【0092】
つまり、遺伝子異常を有する疾患モデル動物を作出する場合、相同組換え体を正確に判別する必要がある。従来の疾患モデル動物の作出法では、組換え体を判別するために、その個体の遺伝子の1部をシークエンスする必要があり、かつその導入遺伝子のmRNAを発現する必要があった。しかしながら、その導入遺伝子のmRNAをRT-PCRやin situ hybridizationなどで発現させるのは容易ではない。
【0093】
そこで、この発明においては、上記のように変異遺伝子を変異導入するとともに、その変異遺伝子の1部をプローブと置換することによって組換え体の識別を容易に行うことができるように工夫をしている。また、上記変異導入によって新たな制限酵素切断部位を出現させる場合にも、組換え体の識別を容易に行うことができる。なお、このアプローチは、下記に説明する具体的態様に限定的に適用されるばかりではなく、遺伝子変異や制限酵素などの種類に関係なくあらゆる変異導入に包括的に適用できるものと理解さるべきである。また、この発明においては、このcDNAクローンの部位に部位特異的に導入する変異の種類は特に限定されるものではない。
【0094】
つまり、この発明では、かかる組換え個体の選択を容易に行えるように、前述したように、非ヒト動物のニューロンニコチン性アセチルコリン受容体のα4サブユニット (Chrna4) 遺伝子もしくはβ2サブユニット (Chrnb2) 遺伝子をコードするDNAに、例えば、S280L、S284L、S291-292L、V287L、V287M などの変異を導入して新しく制限酵素切断部位を出現させている。このように新しい制限酵素切断部位を出現させることによって、組換え体の作出に際して、組換え体の識別を容易にすることができる。
【0095】
この発明においては、作成した変異導入 cDNA の1部の塩基配列を、その塩基配列とは実質的には全く異なるが、アミノ酸配列が同一になる塩基配列からなるプローブで置換して元の塩基配列と同一の部位に導入しているので、その導入したプローブの制限酵素を用いることによって、組換え個体を容易に識別することができるばかりではなく、組換え遺伝子から発現する mRNA をラット本来の Chrna4 mRNA または Chrnb2 mRNA と区別して、RT-PCR や in situ hybridization などによって容易に検出することができる。
【0096】
また、例えば、ニューロンアセチルコリン受容体遺伝子のα4サブユニットCHRNB2の相同遺伝子Chrnb2に対して変異 (c.856G>C)または(c.856G>A) 導入することによって、制限酵素切断部位Hinf Ifが出現することから、この切断部位を含む領域を制限酵素Hinf Ifを用いてPCR-RFLP(制限酵素断片長多型)法などにより判別することができる。つまり、目的とする相同組換えが起こっていない個体は、Hinf If部位を有していないことになるから、制限酵素Hinf Ifでは切断が起こらないのに対して、目的とする相同組換えが起こっている個体は、Hinf If部位を有しているから、制限酵素Hinf Ifで切断されることになる。したがって、この発明において、ニューロンアセチルコリン受容体遺伝子のα4サブユニットCHRNA4の相同遺伝子Chrna4またはβ4サブユニットCHRNB2の相同遺伝子Chrnb2に対して制限酵素切断部位を出現させるように変異導入することにより、組換え体を容易に識別することができる。
【0097】
なお、ここで使用されるPCR-RFLP法は、それ自体周知の手法であって、この方法によって、対象となる部位をPCRにより増幅し、増幅産物を所定の制限酵素、例えば、True9IやHinf Ifなどの制限酵素で消化し、消化後のDNA断片のサイズを電気泳動等により、その制限酵素の切断部位の存否を調べることができる。
【0098】
上記のようにして作出されるてんかんモデル非ヒト哺乳動物は、この発明に係る注意欠陥/多動性障害モデル非ヒト哺乳動物としても適用することができる。注意欠陥/多動性障害モデル非ヒト哺乳動物として適用できるかどうかの評価は、例えば、オープンフィールド装置を用いた自発運動量の測定ならびに高架式十字迷路装置を用いた不安様行動の測定などによって行うことができる。
【0099】
この発明において、オープンフィールド装置を使用した自発運動量の測定は、オープンフィールド装置底面の中心に光点が当たるようにデスクライトを設置し、実験動物をケージごと実験環境に置いて馴化させた後、オープンフィールド装置底面の中心に実験動物を置き、その実験動物の腰部が区画の境界を横切った回数ならびに立ち上がり回数(壁面を支えにした場合を含む)を所定時間観察して判定した。
【0100】
この発明において、高架式十字迷路装置を用いた不安様行動の測定は、高架式十字迷路装置のオープンアームの交点の中心に実験動物を置き、実験動物のオープンアームへの進入回数と進入時の滞在時間を測定した。実験動物がオープンアームに侵入したか否かの判定は、実験動物の腰部が完全にオープンアームに入ったときとした。
【0101】
次に、この発明を実施例により更に詳細に説明するが、この発明は下記実施例によって一切限定されるものではなく、また下記実施例はこの発明を具体的に説明するためにだけ例示的に記載するものであって、この発明をいかなる意味においても限定する意図で記載するものではないと理解されるべきである。
【0102】
[実施例1]
まず、Rat Brain QUICK-Clone cDNA (CLONTECH; Mountain View, CA) をテンプレートとして既存のラット Chrna4 の cDNA 配列を元に設計した2つのプライマー、つまり、フォワードプライマー (BN-Rat CHRNA4 cDNA-F):
AGATCTCGCGAAGCTTCACCATGGCCAATTCGGGCACCGG (40mer)(配列番号3)と、リバースプライマー (Rat CHRNA4 cDNA-BX-R):
AGATCTAGATCAGCAAGCAGCCAGCCAGGGAGGCAGGA (38mer) (配列番号4)
とによりPCRを行った。得られたPCR産物を精製し、pCRII-TOPOベクター(Invitorogen; Carlsbad , CA ) にサブクローニングした。得られたクローンをシークエンスし、Chrna4の cDNA の塩基配列を確認した。なお、ラット塩基配列情報はアクセッション番号L31620 (NCBI) として登録されている。
【0103】
得られたクローンにQuikChange Site-Directed Mutagenesis Kit ( STRATAGENE; La Jolla, CA ) を用いて変異の導入を行った。まず、r845T846C-sen:
CACACTGTGCATCTTCGTGCTGCTTTCTC (29mer) (配列番号7)とr845T846C-ant:
GAGAAAGCAGCACGAAGATGCACAGTGTG (29mer) (配列番号8)を用いて、cDNA 塩基配列845番のCをTに、また846番のGをCに変異させた。得られた変異cDNAの塩基配列は配列番号9に表されるとおりである。これによりヒトニューロンアセチルコリン受容体α4サブユニットと相同のアミノ酸残基p.282番のSerがPheに変異した。
このように作成した変異導入のcDNAの c.104からc.221に、この部位と同じアミノ酸配列となるが、元の塩基配列とは全く異なる下記塩基配列を有する118bpのヌクレオチドからなるプローブ(配列番号23)を作成し導入した。
【0104】
(配列番号23)
GGGCTCACGCCGAAGAACGCCTGCTCAAAAGGCTGTTTTCTGGCTATAATAAATGGTCCCGCCCCGTGGCTAACATTTCCGACGTCGTGCTGGTGCGGTTCGGATTATCTATCGCTCA
【0105】
上記のようにしてプローブを導入した変異導入cDNAをハイブリダイゼイションの後、pCRII-TOPO ベクターに挿入中の Chrna4 の cDNA を制限酵素部位のSmaIとBpu1102Iを用いて挿入を行った。各ステップでシークエンスを行い、塩基配列の確認をおこなった。
【0106】
さらに、該当変異(S286L)を有したラット Chrna4 のcDNAを、pCI-neo ベクター由来のPDGF プロモーターを持つ発現ベクターに制限酵素部位XhoIとNotIを用いて移行させたのち、制限酵素SnaBIとNaeIで切断した。PDGF プロモーターとラット Chrna4 のcDNAならびにpoly A部分を有す断端をゲル切り出しにより単離、精製した。この単離・精製したDNAを受精卵に顕微注入し、状態の良好な200個以上の卵を受胚雌動物の卵管に移植し、自然分娩する方法によって組換え体を作出した。
【0107】
[実施例2]
実施例1と同様にして、r856C857T-sen:CGGTGCTGCTTCTTCTCACCGTCTTCCTG (29mer) (配列番号10)とr856C857T-ant:
CAGGAAGACGGTGAGAAGAAGCAGCACCG (29mer) (配列番号11)を用いて、cDNA塩基配列856番のTをCに, 857番のCをTに変異させた。得られた変異cDNAの塩基配列は配列番号12に表されるとおりである。これによりヒトニューロンアセチルコリン受容体α4サブユニットと相同のアミノ酸残基p.286番のSerがLeuに変異した。
【0108】
このように作成した変異導入の cDNA の c.104からc.221に、実施例1と同様に、配列番号23で表される118bpのヌクレオチドからなるプローブを作成し導入した。
【0109】
上記のようにしてプローブを導入した変異導入cDNAを使用して、実施例1と同様にして組換え体を作出した。
【0110】
[実施例3]
実施例1と同様にして、センスプライマーとしてのrCHRNA-878insGCT-sen:
GTCTTCCTGCTGCTGCTCATCACCGAGATC (30mer) (配列番号13)
とアンチセンスプライマーとしてのrCHRNA-878insGCT -ant:
GATCTCGGTGATGAGCAGCAGCAGGAAGAC (30mer) (配列番号14)を用いて、cDNA塩基配列878番と879番目の間にGCTを挿入した。得られた変異cDNAの塩基配列は配列番号15に表されるとおりである。これによりヒトニューロンアセチルコリン受容体α4サブユニットと相同のアミノ酸残基p.293番のLeuとp.294番のIleの間にLeuが挿入された。
【0111】
このようにして作成した変異導入の cDNAを使用して、実施例1と同様にして、組換え体を作出した。
【0112】
[実施例4]
PCRクローニングで単離したラットChrnb2に、変異導入法により、c.856G>Cとc.856G>Aを導入した。つまり、Rat Brain QUICK-Clone cDNA ( CLONTECH Mountain View,CA) をテンプレートとして既存のラットChrnb2のcDNA配列を元に設計した二つのプライマー(BN-Rat CHRNB2 cDNA-F:
AGATCTCGCGACATGGCCGGGCACTCCAACTCAATGGCGCT ( 41mer )(配列番号5)とRat CHRNB2 cDNA-CB-R:
ATCGATGGATCCTCACTTGGAGCTGGGAGCTGAGTGGTCA ( 40mer ) (配列番号6)
とによりPCRを行った。得られたPCR産物を生成しpCRII-TOPO ベクター(Invitorogen Carlsbad , CA) にサブクローニングした。得られたクローンをシークエンスし、Chrnb2のcDNAの塩基配列を確認した。このラット塩基配列情報はアクセッション番号NM_019297 (NCBI)として登録されている。
得られたクローンにQuikChange Site-Directed Mutagenesis Kit (STRATAGENE、 La Jolla, CA)を用いて変異の導入を行った。まず、Rat CHRNB2 m286V/M-F:
CTCATCTCCAAGATTATGCCTCCCACCTCC (30mer)(配列番号17)
とRat CHRNB2 m286V/M-R:GGAGGTGGGAGGCATAATCTTGGAGATGAG (30mer)(配列番号18)を用いて、cDNA塩基配列856番のGをCに変異させた。これによりヒトのニューロンアセチルコリン受容体β2サブユニットと相同のアミノ酸残基p.286番のValがLeuに変異した。
この変異導入の際に、c.856G>Cの導入により、制限酵素切断部位がHinf Ifが出現し、組換え体作出時、組換え体の識別を容易にできるよう考案した。
作成した変異導入のcDNAのc.1171からc.1232に、この部位とおなじアミノ酸配列となるが、基の塩基配列とは全く異なるプローブ(配列番号24)を導入した。
【0113】
(配列番号24)
AACCCCGCCTCCGTCCAAGGACTCGCCGGCGCCTTTAGGGCCGAACCTACCGCCGCTGGCCC
【0114】
なお、この62 bpのヌクレオチドを作成し、ハイブリダイゼイションののち、pCRII-TOPOベクターに挿入中のChrnb2のcDNAを制限酵素部位のHinc IIとSma Iを用いて挿入を行った。各ステップでシークエンスを行い、塩基配列の確認をおこなった。
さらに、該当変異とプローブを有したラットChrnb2のcDNA二種類を、pCI -neo ベクター由来のPDGFプロモーターを持つ発現ベクターに制限酵素部位Xho IとSal Iを用いて移行させたのち、制限酵素SnaBIとDraIIIで切断した。PDGFプロモーターとラットChrnb2のcDNA並びにpoly A部分を有す断端をゲル切り出しにより単離、精製した。この単離したDNAを受精卵に顕微注入し、状態の良好な200個以上の卵を受胚雌動物の卵管に移植し、自然分娩する方法によって組換え体を作出した。
【0115】
[実施例5]
実施例4と同様に、Rat CHRNB2 m286V/L-F:
CTCATCTCCAAGATTCTGCCTCCCACCTCC (30mer)
(配列番号20)とRat CHRNB2 m286V/L-R:
GGAGGTGGGAGGCAGAATCTTGGAGATGAG (30mer)(配列番号21)を用いて、cDNA塩基配列856番のGをAに変異させた。これによりヒトのニューロンアセチルコリン受容体β2サブユニットと相同のアミノ酸残基p.286番のValがMetに変異した。このようにして得られた変異導入cDNAを用いて、実施例4と同様にして組換え体を作出した。
【0116】
[実施例6]
てんかんモデルラットの脳波(electroencephalogram: EEG) 測定
8-10週齢のトランスジェニックラット(Chrnb2 V287L)に対して脳波(EEG)を測定した。ラットをnembutal(大日本住友製薬株式会社)で麻酔し、脳定位固定装置 (SR-5、成重)に固定し、電極をラットの頭蓋骨のbregma からArterial: 2.5 mm, Lateral: 1.5 mmとArterial: -2.5 mm, Lateral: 2.5 mmに、不関電極はラット鼻骨付近の骨の厚い部分に装着し、歯科用セメントで固定した。脳波測定用のテフロン (登録商標) 被覆ステンレス電極を左右大脳半球の前頭葉 (ブレグマよりA= 3. mm、L=0.8 mm) に装着し、歯科用セメントで固定した。不関電極は、小脳部位の上部に埋め込んだ。脳波(EEG) はVideoOption (キッセイコムテック) を用いて、数日間ラットをチャンバー内に入れて自由運動条件下で測定を行い、脳波解析はSleepSign (キッセイコムテック)を用いて行った。
脳波測定結果を図5に示す。図中、異常脳波部分を記号Aおよび記号Bで示し、その記号Aで示した異常脳波部分の拡大図を図6、また記号Bで示した異常脳波部分を図7に示す。この結果から、このラットはてんかんモデルラットとして利用できることが確認された。
【0117】
[実施例7]
オープンフィールド装置を使用した自発運動量の測定
被験動物として4-5ヶ月齢のTgラット(V287M)と、コントロールとしてnonTgラットを各5例ずつ実験に用いた。ラットを、オープンフィールド装置(図10:底面直径60 cm x 高さ50 cm x 入口直径80 cm)を使用して自発運動量の測定を行った。実験は、先ず、実験室の照明を消し、オープンフィールド装置底面の中心に光点が当たるようにデスクライトを設置し、ラットをケージごと実験環境に少なくとも30分間置いて馴化させた。その後、ラットをオープンフィールド装置底面の中心に実験動物を置き、その実験動物の腰部が区画の境界を横切った回数ならびに立ち上がり回数(壁面を支えにした場合を含む)を2分間観察した。その結果を図11および図12にそれぞれ示す。
【0118】
図11に示すように、Tgラット(V287M)の2分間の自動運動量は、コントロールとしてのnonTgラットの2分間の自動運動量に比べて、有意に高かった。この自発運動量の増加は、測定開始から1分間、および1分後から1分間のどの観察時間帯においても観察された。
他方、立ち上がり回数については、図12に示すように、Tgラット(V287M)の立ち上がり回数は、nonTgラットのそれに比べて、測定開始から1分間の回数は有意に増加したが、その後の回数は大差はなかった。また、2分間の総立ち上がり回数は、Tgラット(V287M)とnonTgラットとの間では大した差はなかった。
【0119】
[実施例8]
高架式十字迷路装置を用いた不安様行動の測定
実験に使用した高架式十字迷路装置は図13に示すとおりである。実験動物としては、Tgラット(V287M)と、コントロールとしてのnonTgラットとを使用した。実験は、まず、実験室の照明を消して、高架式十字迷路装置のオープンアームに光点が当たるようにデスクライトを設置し、ラットをケージごとオープンアームに少なくとも30分間置いて訓化させた。その後、ラットをオープンアームの交点の中心に置き、オープンアームへの進入回数と進入時の滞在時間を10分間測定した。実験動物がオープンアームに侵入したか否かの判定は、実験動物の腰部が完全にオープンアームに入ったときとした。その結果を図14にそれぞれ示す。
【0120】
図14に示すように、Tgラットの10分間のオープンアーム滞在時間は、nonTgラットのそれと比較して、有意に増加した。また、Tgラットのアームを横切った回数もnonTgラットと比較して、有意に増加した。
【産業上の利用可能性】
【0121】
この発明に係る注意欠陥/多動性障害 (AD/HD) モデル非ヒト哺乳動物は、ヒトの注意欠陥/多動性障害 (AD/HD) に酷似する行動障害を惹起することから、被験物質のAD/HDに対する有効性を確認してAD/HD予防薬または治療薬をスクリーニングすることができるとともに、被験薬剤のAD/HDに対する有効性を評価することができる。したがって、この発明の被験薬剤の注意欠陥/多動性障害(AD/HD)モデル非ヒト哺乳動物は、AD/HD予防薬または治療薬の研究開発に大いに寄与することができる。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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