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明細書 :Ni基2重複相金属間化合物合金で形成された高温用軸受及びその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5424315号 (P5424315)
登録日 平成25年12月6日(2013.12.6)
発行日 平成26年2月26日(2014.2.26)
発明の名称または考案の名称 Ni基2重複相金属間化合物合金で形成された高温用軸受及びその製造方法
国際特許分類 C22C  19/05        (2006.01)
FI C22C 19/05 Z
請求項の数または発明の数 9
全頁数 20
出願番号 特願2009-175439 (P2009-175439)
出願日 平成21年7月28日(2009.7.28)
審査請求日 平成24年5月30日(2012.5.30)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】505127721
【氏名又は名称】公立大学法人大阪府立大学
【識別番号】505060026
【氏名又は名称】日本ピローブロック株式会社
発明者または考案者 【氏名】高杉 隆幸
【氏名】金野 泰幸
【氏名】藤井 秀和
個別代理人の代理人 【識別番号】100065248、【弁理士】、【氏名又は名称】野河 信太郎
特許請求の範囲 【請求項1】
Al:2~9原子%,V:10~17原子%,(Ta及び/又はW):0.5~8原子%,Nb:0~6原子%,Co:0~6原子%,Cr:0~6原子%,残部Niよりなる合計100原子%の組成の合計重量に対してB:10~1000重量ppmを添加したNi基金属間化合物合金で形成されたことを特徴とする軸受。
【請求項2】
前記Ni基金属間化合物合金において、
Al:2.5~8原子%,V:10~14.5原子%,(Ta及び/又はW):1~5原子%,Nb:0~4原子%である請求項1に記載の軸受。
【請求項3】
前記Ni基金属間化合物合金において、
Ta:0.5原子%以上である請求項1又は2に記載の軸受。
【請求項4】
前記Ni基金属間化合物合金において、
W:0.5原子%以上である請求項1又は2に記載の軸受。
【請求項5】
前記Ni基金属間化合物合金が、
初析L12相と(L12+D022)共析組織とからなる2重複相組織を有する請求項1~4の何れか1つに記載の軸受。
【請求項6】
前記Ni基金属間化合物合金は、
室温でのビッカース硬さが550~1000である請求項1~5の何れか1つに記載の軸受。
【請求項7】
前記Ni基金属間化合物合金は、
室温と900℃のビッカース硬さの差が10~300であるNi基金属間化合物合金で形成された請求項6に記載の軸受。
【請求項8】
内輪と、外輪と、内輪と外輪の間で転動する転動体とから構成され、
前記転動体がセラミック材料で形成され、
前記内輪及び前記外輪の少なくとも一方が、前記Ni基金属間化合物合金で形成された請求項1~7の何れか1つに記載の軸受。
【請求項9】
前記転動体が窒化ケイ素で形成された請求項8に記載の軸受。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、Ni基2重複相金属間化合物合金で形成された軸受及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、構造材料として、Ni3Al-Ni3Nb-Ni3V系金属間化合物合金が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
この金属間化合物合金は、高温での機械的特性が極めて優れているので、軸受といった高温構造材料としての応用が期待されている。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】国際公開第2007/086185号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなNi3Al-Ni3Nb-Ni3V系金属間化合物合金は、そのままでも優れた特性を有しているが、耐摩耗性を必要とする用途、例えば、軸受に用いる場合には、より優れた硬さを有していることが望まれる。特に、軸受は、優れた寿命を備えることが求められる。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、硬さが向上したNi基金属間化合物合金で形成され、高温でも優れた寿命を備える軸受を提供するものである。
【0006】
本発明によれば、Niを主成分とし且つAl:2~9原子%,V:10~17原子%,(Ta及び/又はW):0.5~8原子%,Nb:0~6原子%,Co:0~6原子%,Cr:0~6原子%を含む合計100原子%の組成の合計重量に対してB:10~1000重量ppmを含むNi基金属間化合物合金で形成された軸受が提供される。
【0007】
本発明者らは鋭意検討を行った結果、Ni,Al,Vを含む金属間化合物合金において、Ta及び/又はWの含有量が0.5~8原子%になるようにTaとWのうちの少なくとも一方を含有させることによって、硬さを飛躍的に向上させることができることを見出すとともに、この金属間化合物で形成された軸受が高温でも優れた寿命を有することを見出し、本発明の完成に到った。なお、Ta及び/又はWの含有量とは、TaとWの何れか一方のみが含まれる場合はTa又はWの含有量を意味し、TaとWの両方が含まれる場合はTaとWの含有量の合計を意味する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施形態の軸受の断面図である。
【図2】本発明の他の実施形態の軸受の断面図である。
【図3】(a),(b)は、それぞれ、本発明の一実施形態の金属間化合物合金の2重複相組織を説明するためのTEM写真及び模式図である。
【図4】本発明の効果実証実験における、室温でのビッカース硬さ測定の結果を示すグラフである。
【図5】本発明の効果実証実験における、高温でのビッカース硬さ測定の結果を示すグラフである。
【図6】本発明の効果実証実験における、高温でのビッカース硬さ測定の結果を示すグラフである。
【図7】本発明の効果実証実験における、高温でのビッカース硬さ測定の結果を示すグラフである。
【図8】本発明の効果実証実験における、高温でのビッカース硬さ測定の結果を示すグラフである。
【図9】本発明の効果実証実験における、高温での引張強度測定の結果を示すグラフである。
【図10】スラスト転がり寿命試験機の概念図である。
【図11】試験片の(a)上面図及び(b)断面図である。
【図12】耐熱回転試験前の軸受及びその部品である内輪・外輪の写真である。
【図13】耐熱回転試験後の高温槽内での軸受の状態を示す写真である。
【図14】耐熱回転試験後の軸受の写真である。(a)~(c)は、SUS440Cで形成された軸受であり、(b)~(d)は、実施例試料1で形成された軸受である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の種々の実施形態を例示する。
この発明は、Niを主成分とし且つAl:2~9原子%,V:10~17原子%,(Ta及び/又はW):0.5~8原子%,Nb:0~6原子%,Co:0~6原子%,Cr:0~6原子%を含む合計100原子%の組成の合計重量に対してB:10~1000重量ppmを含むNi基金属間化合物合金で形成されたことを特徴とする軸受である。
この発明の軸受を形成するNi基金属間化合物合金はAl:2.5~8原子%,V:10~14.5原子%,(Ta及び/又はW):1~5原子%,Nb:0~4原子%であってもよい。
また、この発明の軸受を形成するNi基金属間化合物合金がTa:0.5原子%以上であってもよい。W:0.5原子%以上であってもよい。何れの場合であっても金属間化合物合金のビッカース硬さの向上効果が得られ、高温で優れた寿命を備える軸受が提供される。
また、この発明の軸受を形成するNi基金属間化合物合金は初析L12相と(L12+D022)共析組織とからなる2重複相組織を有してもよい。この場合、引張強度の機械的特性が優れた金属間化合物合金が得られるので、強度が優れた軸受が提供される。
また、この発明の軸受を形成するNi基金属間化合物合金は室温でのビッカース硬さが550~1000であってもよい。室温と900℃のビッカース硬さの差が10~300であってもよい。本発明によれば、このようなビッカース硬さを有する金属間化合物合金が容易に得られるので、優れた寿命を備える軸受を容易に得ることができる。
ここで示した実施形態は、互いに組み合わせることができる。
本明細書において、「~」は、両端の点を含む。

【0010】
1.軸受を形成するNi基金属間化合物合金
本発明の一実施形態である軸受を形成するNi基金属間化合物合金は、Niを主成分とし且つAl:2~9原子%,V:10~17原子%,(Ta及び/又はW):0.5~8原子%,Nb:0~6原子%,Co:0~6原子%,Cr:0~6原子%を含む合計100原子%の組成の合計重量に対してB:10~1000重量ppmを含む。
以下、このNi基金属間化合物合金の各構成要素について詳述する。

【0011】
(1)組成
本実施形態のNi基金属間化合物合金は、実質的にNi,Al,V,Ta,W,Nb,Co,Cr,Bのみからなってもよく、これ以外の不純物元素を含んでいてもよい。

【0012】
Niの含有量(含有率)は、例えば、69~78原子%であり、具体的には例えば、69,69.5,70,70.5,71,71.5,72,72.5,73,73.5,74,74.5,75,75.5,76,76.5,77,77.5,78原子%である。Niの含有量は、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。

【0013】
Alの含有量は、2~9原子%であり、具体的には例えば2,2.5,3,3.5,4,4.5,5,5.5,6,6.5,7,7.5,8,8.5又は9原子%である。Alの含有量は、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。

【0014】
Vの含有量は、10~17原子%であり、具体的には例えば10,10.5,11,11.5,12,12.5,13,13.5,14,14.5,15,15.5,16,16.5又は17原子%である。Vの含有量は、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。

【0015】
Al,Vを上記範囲にしたのは、この範囲であれば、Ta及び/又はWの添加によってビッカース硬さの向上効果が得られるからである。
ところで、後述するように本実施形態のNi基金属間化合物合金は、2重複相組織を有することが好ましく、Ni,Al,Vは、2重複相組織の形成のために添加される。Ni,Al,Vが上記範囲の場合、2重複相組織が形成されやすい。
また、Alの含有量は、5.5原子%以上が好ましい。この場合、2重複相組織がさらに形成されやすいからである。

【0016】
本実施形態の軸受を形成するNi基金属間化合物合金は、TaとWの少なくとも一方(つまり、一方又は両方)を含む。
Ta及び/又はWの含有量は、0.5~8原子%であり、具体的には例えば0.5,1,1.5,2,2.5,3,3.5,4,4.5,5,5.5,6,6.5,7,7.5又は8原子%である。Ta及び/又はWの含有量は、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
Ta及び/又はWの含有量を上記範囲にしたのは、この範囲であれば、Ta及び/又はWの添加によってビッカース硬さの向上効果が得られるからであり、また、上限値である8原子%を超える量を添加しても硬さ向上には大きくは寄与しないからである。
Taの含有量は、0~8原子%であり、具体的には例えば0,0.5,1,1.5,2,2.5,3,3.5,4,4.5,5,5.5,6,6.5,7,7.5又は8原子%である。Taの含有量は、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
Wの含有量は、0~8原子%であり、具体的には例えば0,0.5,1,1.5,2,2.5,3,3.5,4,4.5,5,5.5,6,6.5,7,7.5又は8原子%である。Wの含有量は、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。

【0017】
Nb,Co,Crは、それぞれ、任意成分であり、含まれていてもいなくてもよい。Nb,Co,Crが含まれているかどうかに関わらず、Ta又はWの添加によって硬さが向上するからである。Nbは、2重複相組織の強度向上のために添加される。また、Co,Crは、耐酸化性向上のために添加される。

【0018】
Nbの含有量は、0~6原子%であり、具体的には例えば0,0.5,1,1.5,2,2.5,3,3.5,4,4.5,5,5.5,又は6原子%である。Nbの含有量は、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
Coの含有量は、0~6原子%であり、具体的には例えば、0,0.5,1,1.5,2,2.5,3,3.5,4,4.5,5,5.5,6原子%である。Coの含有量は、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
Crの含有量は、0~6原子%であり、具体的には例えば、0,0.5,1,1.5,2,2.5,3,3.5,4,4.5,5,5.5,6原子%である。Crの含有量は、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
Nb,Co,Crの含有量を上記範囲にしたのは、この範囲であれば、Ta及び/又はWの添加によってビッカース硬さの向上効果が得られるからである。

【0019】
Bは、得られる合金の延性向上のために添加される。Bの含有量は、上記の組成の合計重量に対して10~1000重量ppmであり、具体的には例えば、10,50,100,150,200,250,300,350,400,450,500,550,600,650,700,750,800,850,900,950又は1000重量ppmである。Bの含有量は、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
Bの含有量を上記範囲にしたのは、この範囲であれば、Ta及び/又はWの添加によってビッカース硬さの向上効果が得られるからである。

【0020】
(2)微細組織
本実施形態の軸受を形成する金属間化合物合金の微細組織は、特に限定されないが、本実施形態の軸受を形成する金属間化合物合金は、初析L12相と(L12+D022)共析組織とからなる2重複相組織を有していることが好ましい。この場合、引張強度等の機械的特性が高いという利点がある。

【0021】
2重複相組織は、最初に、比較的高い温度において初析L12相とA1相とからなる上部複相組織を形成し、その後、温度を下げることによってA1相をL12相とD022相とに分解させることによって形成することができる。これによって、図3(a)のTEM写真や図3(b)の模式図に示すような初析L12相と(L12+D022)共析組織とからなる2重複相組織が形成される。なお、L12相は、Ni3Al金属間化合物相であり、A1相は、fcc固溶体相であり、D022相は、Ni3V金属間化合物相である。

【0022】
2重複相組織を有する金属間化合物合金は、特許文献1に記載された方法によって作製することができる。但し、特許文献1では、独立したプロセスとして初析L12相とA1相とが共存する温度での熱処理を行うことによって上部複相組織を形成しているが、この熱処理を行う代わりに金属間化合物合金の鋳塊を作製する際に溶湯を徐冷することによっても上部複相組織を形成することができる。徐冷を行った場合、溶湯が凝固した後に初析L12相とA1相とが共存する温度に比較的長い時間滞在することになるので、上記熱処理を行った場合と同様に初析L12相とA1相とからなる上部複相組織が形成されるからである。

【0023】
(3)ビッカース硬さ
本実施形態の軸受を形成する金属間化合物合金の室温でのビッカース硬さは、特に限定されないが、550~1000が好ましい。室温でビッカース硬さは、具体的には例えば550,600,650,700,750,800,900,1000である。このビッカース硬さは、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよく、何れか1つ以上であってもよい。

【0024】
本実施形態の軸受を形成する金属間化合物合金の900℃でのビッカース硬さは、特に限定されないが、550~1000が好ましい。900℃でのビッカース硬さは、具体的には例えば550,600,650,700,750,800,900,1000である。このビッカース硬さは、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよく、何れか1つ以上であってもよい。

【0025】
また、本実施形態の軸受を形成する金属間化合物合金では、室温と900℃のビッカース硬さの差(室温での値-900℃での値)は、特に限定されないが、例えば、10~300であり、具体的には例えば10,20,30,40,50,100,150,200,250,300である。この差は、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
本発明において、「ビッカース硬さ」とは、別段の指示がない限り、荷重300g、保持時間20秒の条件で測定したものを意味する。

【0026】
2.軸受の構成
本発明の軸受は、転がり軸受であってもよいし、また、すべり軸受であってもよい。転がり軸受やすべり軸受であれば特に限定されないが、例えば、玉軸受、ころ軸受、ジャーナル軸受であってもよいし、ラジアル軸受やスラスト軸受であってもよい。
一実施形態として、すべり軸受を挙げると、この軸受は、軸を支える部分(例えば、すべり面)が前記Ni基金属間化合物合金で形成される。この一実施形態の軸受は、高温で硬さを維持できる材料により、軸を支える部分が形成されているので、この発明の軸受は、摩耗しにくい構造となり、その結果、優れた寿命を備えることとなる。
また、他の実施形態として、転がり軸受を挙げると、この軸受は、内輪と、外輪と、内輪と外輪の間で転動する転動体とから構成され、前記転動体がセラミック材料で形成され、前記内輪及び前記外輪の少なくとも一方(つまり、一方又は両方)が、前記Ni基金属間化合物合金で形成される。この実施形態の軸受は、高温でも硬さを維持できる材料により内輪、外輪及び転動体が形成されているので、上記の一実施形態の軸受と同様に、高温であっても摩耗しにくい構造となり、その結果、優れた寿命を備えることとなる。つまり、内輪や外輪などの軌道部品がNi基金属間化合物合金で形成されることが好ましく、転動体がセラミック材料で形成されることが好ましい。ここで、軌道部品とは、軌道面や軌道溝を備える軌道輪をいい、たとえば、転がり軸受の場合、内輪、外輪が該当し、スラスト軸受の場合、軌道盤がこれに該当する。
前記セラミック材料には、例えば、窒化ケイ素が好ましい。ほか、セラミック材料として、炭化ケイ素、アルミナ(酸化アルミニウム)、ジルコニア(酸化ジルコニウム)等の材料であってもよい。線膨張係数が小さく、凝着や損傷が生じにくいため、転動体の材料としてセラミック材料が好適である。このため、転動体がセラミック材料で形成されることにより、優れた寿命を備える軸受が提供される。

【0027】
3.耐熱特性
本発明の一実施形態の軸受は、低温でも用いることができるが、特に、高温で好適に用いることができる。ここで、高温とは、400℃から1000℃までの温度をいう。1000℃よりも高い温度になると、このNi基金属間化合物合金の微細組織構造(例えば、2重複相組織構造)が崩れ、硬さを維持できないことから、1000℃までの温度が好ましい。温度の例を挙げると、例えば、400℃,450℃,500℃,550℃,600℃,650℃,700℃,750℃,800℃,850℃,900℃,950℃,1000℃を挙げることができ、ここに例示した数値のいずれか2つの範囲内であってもよい。ビッカース硬さの観点からすると、SUS440C(Fe-18Cr-1C)との比較により、500℃以上がより好ましく、このNi基金属間化合物合金の材質の観点からすると、600℃以上がさらに好ましい。同様にNi基金属間化合物合金の材質の観点からすると、800℃以下が好ましい。

【0028】
4.軸受の製造方法
まず、軸受を形成するNi基金属間化合物合金の鋳塊を作製する。例えば、上記実施形態の組成になるように各元素の地金を用意し、その後、これらを溶解炉で溶融し鋳型にて凝固させることにより、鋳塊を作製できる。凝固した鋳塊に対して熱処理を行ってもよい。熱処理の条件は、特に限定されないが、例えば、1280℃で3時間の間、熱処理をしてもよい。また、この熱処理を行う代わりに金属間化合物合金の鋳塊を作製する際に溶湯を徐冷してもよい。
次に、得られた金属間化合物合金の鋳塊を所定の形状に加工し、軸受を作製する。例えば、得られた鋳塊を切断し、切削加工することにより所定の形状の軸受を作製できる。ここで鋳塊を切断し、切削加工することを挙げたが、例示にすぎず、これに限られない。例えば、内輪および外輪の形状に直接、溶解・鋳造する方法や、粉末冶金により内輪、外輪を作製してもよい。
最後に、上記内輪および外輪、転動体を用いて軸受を組み立てる。なお、転動体は、内輪と外輪が所定の間隙をなす大きさのものを選定し入手すればよい。

【0029】
以下、本発明の一実施形態について図面を用いて説明する。図面や以下の記述中で示す内容は、例示であって、本発明の範囲は、図面や以下の記述中で示すものに限定されない。

【0030】
図1に、実施形態の例として転がり軸受(玉軸受)を示す。図1は、転がり軸受の断面図である。図1に示す転がり軸受1は、内周面と外周面とを有する内輪2と、内周面と外周面とを有し、前記内輪2の外周面に内周面を向けて配置された外輪3と、内輪2の外周面と外輪3の内周面との間で転動する転動体4と、転動体4が転動可能な状態で転動体4を保持する保持器5から構成されている。内輪2の外周面と外輪3の内周面にはそれぞれ転動体4が転動する軌道面2A、3Aが設けられ、この軌道面2A、3Aで転動体4が転動するように所定の間隙で内輪2と外輪3が設置されている。この転がり軸受1では、内輪2、外輪3がNi基金属間化合物合金で形成され、転動体4が、セラミック材料で形成されている。この内輪2及び外輪3は、例えば、内輪2と外輪3の軌道面2A、3AがNi基金属間化合物合金で形成されてもよいし、また、内輪2、外輪3のいずれか一方、又は軌道面2A、3Aのいずれか一方がNi基金属間化合物合金で形成されてもよい。なお、保持器5には、潤滑機能を持った材料で形成された保持器が好ましい。例えば、グラファイト、軟質金属、セラミック又はこれらの複合体が好ましい。

【0031】
また、図2に、他の実施形態のすべり軸受を示す。図2は、すべり軸受の断面図である。図2に示すすべり軸受1Aは、いわゆる1層構造(ソリッドタイプ)のジャーナル軸受である。円筒形状に形成され、その内周面にすべり面2Bが形成されている。この実施形態の軸受では、すべり面2Bを含む軸受全体がNi基金属間化合物合金で形成されている。軸受全体がNi基金属間化合物合金で形成されてもよいが、例えば、内周面を構成しNi基金属間化合物合金で形成された合金層と、その外周側に鋼で形成された裏金層で構成される、いわゆる2層構造(バイメタルタイプ)のすべり軸受であってもよい。

【0032】
以上の実施形態で示した種々の特徴は、互いに組み合わせることができる。1つの実施形態中に複数の特徴が含まれている場合、そのうちの1又は複数個の特徴を適宜抜き出して、単独で又は組み合わせて、本発明に採用することができる。

【0033】
5.性能試験
以下、本発明の性能試験について説明する。以下の実験では、TaとWの少なくとも一方を含む金属間化合物合金と、どちらも含まない金属間化合物合金のそれぞれについて室温硬さと高温硬さの少なくとも一方を測定し、測定結果を比較することによって、TaとWの少なくとも一方を添加した金属化合物について機械的特性を調べた。そして、TaとWの少なくとも一方を含む金属間化合物合金から作製した軸受について、疲労試験及び耐熱回転試験の評価を行い、本発明の軸受が、高温においても優れた性能を示すことを実証した。

【0034】
A.試料の作製
(1)鋳塊の作製
実施例試料1~6、10~12及び比較例試料1~2については、表1に示す組成になるように表1の元素の地金(それぞれ純度99.9重量%)とBを秤量したものをアーク溶解炉で溶解、鋳造することによって鋳塊からなる試料を作製した。ここで作製した鋳塊のサイズは、30~50mmφサイズの小型ボタン状であり、以下のB.評価(1)に示した室温でのビッカース硬さ測定用試料は、この鋳塊から10mm×5mm×1mmの試験片を切り出して行い、B.評価(2)に示した高温でのビッカース硬さ測定用試料は、10mmφ×5mmの試験片を切り出して行った。アーク溶解炉の雰囲気は、まず、溶解室内を真空排気し、その後不活性ガス(アルゴンガス)に置換した。電極は、非消耗タングステン電極を用い、鋳型には水冷式銅ハースを使用した。
実施例試料7,8,9及び比較例試料3については、表1に示す組成になるように表1の元素の地金(それぞれ純度99.9重量%)とBを秤量したものを真空誘導溶解炉で溶解した後、金型で溶湯を凝固させることによって鋳塊からなる試料を作製した。実施例7,8及び比較例3で作製した鋳塊のサイズは、83mmφ×700mmであり、実施例9で作製した鋳塊のサイズは、77mmφ×280mmであった。以下のB.評価(1)に示した室温でのビッカース硬さ測定用試料は、この鋳塊から10mm×10mm×1mmの試験片を切り出して行い、B.評価(2)に示した高温でのビッカース硬さ測定用試料は、10mmφ×5mmの試験片を切り出して行った。
実施例試料13,14については、表1に示す組成になるように表1の元素の地金(それぞれ純度99.9重量%)とBを秤量したものを真空誘導溶解炉で溶解した後、金型で溶湯を凝固させることによって鋳塊からなる試料を作製した。実施例試料13,14で作製した鋳塊のサイズは、83mmφ×700mmであった。実施例試料13、14はそれぞれ実施例試料7、8と組成が同一であり、下記に述べる軸受の試作のために作製した。B.評価(2)に示した高温でのビッカース硬さ測定及びB.評価(3)に示した高温での引張強度測定は、軸受の試作のための鋳塊から試験片を切り出して行った。
比較例試料4については、表1に示す組成になるように表1の元素の地金(それぞれ純度99.9重量%)とBを秤量したものを真空誘導溶解炉で溶解した後、金型で溶湯を凝固させることによって鋳塊からなる試料を作製した。ここで作製した鋳塊のサイズは、直径80mmφ×長さ190mmであり、以下の実験は、この鋳塊から10mmφ×5mmの試験片を切り出して行った。

【0035】
【表1】
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【0036】
(2)玉軸受の加工
次に、実施例試料13の鋳塊を所定の厚さに切断し、得られた円盤状素材を切削加工して、軸受の内輪及び外輪を製作した。内径・外径及び端面には粗研削加工を施し、内輪と外輪の軌道面には、最終仕上げである超仕上げ研削加工を施した。

【0037】
(3)超高温用玉軸受の組立
さらに、前記製作した内輪と外輪とが所定のすきまをなすように、窒化ケイ素セラミックス球を組み込み、更に、固体潤滑剤保持器を装着して、図1に示す玉軸受を完成させた。

【0038】
B.評価
(1)室温でのビッカース硬さ測定
実施例試料1~6,10~12及び比較例試料1~3について、室温でのビッカース硬さを測定した。実施例試料1~6及び比較例試料1~2については、ビッカース硬さの測定は、1280℃-3時間の熱処理(炉冷)を行う前と行った後に行った。実施例試料10~12については、ビッカース硬さの測定は、1280℃-5時間の熱処理(炉冷)を行う前と行った後に行った。比較例試料3については、ビッカース硬さの測定は、1000℃-10時間の熱処理(炉冷)を行った後に行った。荷重は300gで、保持時間は20秒であった。測定結果を図3に示す。

【0039】
図4において、比較例試料1と、実施例試料1~3,10~11とを比較すると、Ta又はWを添加することによって、熱処理前後の何れにおいてもビッカース硬さの値が比較例1より大きくなったことが分かる。また、実施例試料12においても熱処理後のビッカース硬さの値は、比較例試料1より大きくなったことが分かる。
また、図4において、比較例試料2と、実施例試料4~6とを比較すると、Co及びCrを3原子%ずつ含む試料についても、Ta又はWを添加することによって熱処理前後の何れにおいてもビッカース硬さの値が大きくなったことが分かる。

【0040】
なお、実施例試料3以外の試料では、1280℃-3時間又は1280℃—5時間の熱処理を行うことによってビッカース硬さの値が大きくなった。その理由は、必ずしも明らかではないが、この熱処理を行うことによって初析L12相と(L12+D022)共析組織とからなる2重複相組織が形成されたためであると推測される。

【0041】
(2)高温でのビッカース硬さ測定
実施例試料1,4,5,7~9,13~14及び比較例試料3,4について、高温(300℃,500℃,800℃,900℃)でのビッカース硬さ測定を行った。また、実施例試料9、比較例試料4については上記温度に加えて600℃でも測定を行った。実施例試料1、4、5、7、8及び比較例試料3の測定には、1280℃-3時間の熱処理(炉冷)を行った後の試料を用いた。実施例試料9の測定には、鋳造後の試料で熱処理を行っていない試料を用いた。比較例試料4の測定には、1280℃-3時間の熱処理を行った後に、1000℃-10時間の熱処理(炉冷)を行ったものを用いた。荷重は1kgで,保持時間は20秒であった。測定は還元雰囲気中(Ar+約10%H2)で行い、昇温速度は毎分10℃で行った。なお、上記の高温でのビッカース硬さ測定に用いたものと同一の試験片における常温でのビッカース硬さを、上記の高温での測定に先立って、同一の測定条件(荷重1kg,保持時間20秒)で測定した。

【0042】
測定結果を図5~8に示す。また、図5及び図6には、ステンレス鋼中で最高硬さを示し、耐摩耗性が要求される用途で一般的に使用される材料であるSUS440Cについてのビッカース硬さのデータも合わせて示す。このデータは、上記B.(2)の高温でのビッカース硬さ測定と同じサイズのサンプルを用いて同じ測定条件にて実測したものである。なお、実施例試料13、14は、実施例試料7,8とそれぞれ組成が同じであることから、図8、9では、実施例試料7(13)、実施例試料8(14)と記載している。

【0043】
図5を参照すると、実施例試料1、9では、測定した全温度域において、比較例試料4よりもビッカース硬さの値が高かったことが分かる。また、実施例試料1と実施例試料9のビッカース硬さの差は、最大でも50程度であった。実施例試料1と実施例試料9は、それぞれ、鋳塊の作製方法が異なるだけであるので、鋳塊の作製方法の違いによってビッカース硬さは大きくは変わらないことが分かった。

【0044】
図6を参照すると、実施例試料4及び5では、測定した全温度域において、比較例試料3よりもビッカース硬さの値が高かったことが分かる。従って、Ta又はWを添加したことによるビッカース硬さの向上効果は、測定した全温度域に及ぶことが分かる。

【0045】
また、図5及び図6を参照すると、SUS440Cでは、測定温度の上昇に従ってビッカース硬さの値が急激に低下するのに対し、実施例試料1,4,5又は9では、温度上昇に伴うビッカース硬さの値の低下が非常に小さいことが分かる。また、測定温度が300℃以上の場合は実施例試料1のビッカース硬さの値がSUS440Cよりも大きく、測定温度が500℃以上の場合は実施例試料4又は5のビッカース硬さの値がSUS440Cよりも大きいこと分かる。

【0046】
また、図7を参照すると、実施例試料4と実施例試料7のビッカース硬さの差、実施例試料5と実施例試料8のビッカース硬さの差は、最大でも50であった。実施例試料4と実施例試料7、実施例試料5と実施例試料8は、それぞれ、鋳塊の作製方法が異なるだけであるので、鋳塊の作製方法の違いによってビッカース硬さは大きくは変わらないことが分かった。

【0047】
また、図8を参照すると、SUS440Cでは、測定温度の上昇に従ってビッカース硬さの値が急激に小さくなるのに対し、実施例試料13及び実施例試料14では、測定温度の上昇に伴うビッカース硬さの値はほとんど変化しないことが分かる。SUS440Cと比較すると、実施例試料13及び実施例試料14は、室温ではビッカース硬さの値がそれほど大きいといえないものの、高温では逆にSUS440Cよりもビッカース硬さの値が大きい。500℃以上の場合、実施例試料13、14のビッカース硬さの値がSUS440Cよりも大きいことがわかる。この結果から、実施例試料13及び実施例試料14が高温で優れた機械的特性を有することがわかる。なお、軸受の使用環境を考慮すると、SUS440C等の合金は、高温で酸化による劣化や組織の粗大化が生じることが考えられる。このため、これらの材料で軸受を形成した場合、より低温域で実施例試料の優位性が現れると推定できる。

【0048】
(3)高温での引張強度測定
実施例試料13,14について、室温及び高温(600℃,800℃,900℃)での引張強度測定を行った。この引張試験はすべて真空中で行い、ひずみ速度は1.7×10-4(s-1)とした。
測定結果を図9に示す。また、比較のため市販の高強度型ニッケル超合金展伸材であるUdimet520(56Ni-19Cr-12Co-6Mo-3Ti-2Al-1W,UDIMETは登録商標) ,Waspaloy(56Ni-19Cr-13Co-4Mo-3Ti-1.3Al), Inconel 718(54.0Ni-18.0Cr-3.0Mo-18.5Fe-0.9Ti-0.5Al-5.1Nb+Ta,INCONELは登録商標)の結果も示す。この高強度型ニッケル超合金展伸材のデータは、スペシャルメタル社(Special Metals)のホームページ(http://www.specialmetals.com/index.php)に掲載されているものを用いている。

【0049】
図9を参照すると、実施例試料13,14は、室温では、市販の高強度型ニッケル超合金展伸材とほぼ同等の引張強度を示すものの、600℃以上では、優れた引張強度を示すことがわかる。

【0050】
(4)転がり疲労寿命試験
実施例試料13、14について、転がり疲労寿命試験を行った。具体的には、スラスト転がり寿命試験機を用いた。図10にスラスト転がり寿命試験機の概念図を示す。また図11に試験対象である試験片の上面図及び断面図を示す。このスラスト転がり寿命試験機10は、軸受箱15側から負荷をかけるとともに駆動軸11を駆動させることにより、内輪12を介してボール13を、試験片14のうえで転動させ、どの程度の負荷でどの程度の寿命があるのかを調べる試験機である。
まず、実施例試料13及び14を図11に示すドーナツ円盤状(外径D60mm×内径d20mm×厚さt6mm)に加工し、次いで、スラスト転がり寿命試験機10の軸受箱15にその試験片14を設置し、駆動軸11を回転させた際の転がり試験の結果により評価した。各試験とも試験回数は2回とした。

【0051】
転がり疲労寿命試験の条件
試験の条件は次に示す様に、2種類の軸受型式を用いて行った。
1)軸受型式51305、最大面圧(ボールと試験片間):4.4GPa、3.3GPa、負荷ボール直径:3/8インチ(9.525mm)、負荷ボール軌道径φ38.5mm、回転数1200rpm、潤滑油:スーパーマルパス10(新日本石油製)、潤滑方式:油中、試験室温度:20℃~25℃、で行った。
2)軸受型式51105、最大面圧(ボールと試験片間):3.2GPa、負荷ボール直径:1/4インチ(6.35mm)、負荷ボール軌道径φ33.5mm、回転数1200rpm、潤滑油:スーパーマルパス10(新日本石油製)、潤滑方式:油中、試験室温度:20℃~25℃、で行った。

【0052】
表2及び表3に結果を示す。SUS630(Fe-17Cr-4Ni-4Cu-0.35Nb)の転がり疲労寿命試験の結果も合わせて示す。
表2及び表3を参照すると、負荷250kgfの条件で、SUS630と同等の寿命であることがわかる。特に負荷43kgfでは500時間以上の寿命時間となる結果も得られ、常温において十分使用に耐えることがわかる。

【0053】
【表2】
JP0005424315B2_000003t.gif

【0054】
【表3】
JP0005424315B2_000004t.gif

【0055】
(5)耐熱回転試験
実施例試料13の内輪及び外輪を用いた玉軸受(実施例)について、耐熱回転試験を行った。具体的には、高温の環境下で玉軸受を回転動作させ、その後、その玉軸受の外観や寸法測定から評価した。また、SUS440C(Fe-18Cr-1C)で形成された外輪及び内輪で組み立てた、実施例と同一形状の玉軸受についても、同様の試験を行い、評価した。
試験の条件は、温度:600℃,負荷:60kgf,回転数:166rpmである。玉軸受は、仕様:6206SO(T02)Y3とし、転動体:セラミックボール3/8インチ(9.525mm,品番FYN-SN),保持器:BS10609 UR-06(虹技社製)を用いた。

【0056】
図12に、耐熱回転試験前の軸受及びその部品である内輪・外輪の写真を示す。また、図13に、耐熱回転試験後の高温槽内での軸受の状態を示す。さらに、図14に耐熱回転試験後の軸受を分解したときの内輪及び外輪の写真を示す。図13を参照すると、SUS440Cで形成された軸受は多量の摩耗粉が発生しているのに対し、実施例試料13で形成された軸受は摩耗粉の発生が少ないことがわかる。また、図12、図14を参照すると、SUS440Cで形成された内輪・外輪は、ともに酸化し金属色を失い黒く変色しているが、実施例試料13で形成された内輪・外輪は、内輪が酸化により変色しているものの、外輪の酸化はそれほど進んでいないことがわかる。さらに、図14を参照すると、SUS440Cの内輪・外輪の軌道面に細かい凹凸がみられ、転動痕幅が広いのに対し、実施例の内輪・外輪の軌道面には細かい凹凸があまりみられず、転動痕幅が広くないことがわかる。また、焼き付きも観察されなかった。

【0057】
次に、表4に寸法測定の結果を示す。表4を参照すると、内外輪部材の材質をSUS440Cとした場合よりも、実施例試料13とした場合のほうが、その摩耗量が大幅に小さいことがわかる。図13,図14及び表4の結果から、実施例試料1で形成された軸受は、高温で焼き付きにくく、摩耗しにくいことがわかる。高温になるに従い接触面積が増え、そのため摩擦や摩耗の影響が大きくなると推定されるところ、これらの結果から、実施例試料13で形成された軸受は、特に摩耗特性が優れていると理解できる。さらに高温で硬さが維持されたことから軌道面に欠陥が生じにくいと理解できる。
また、内輪と外輪との摩耗量が軸受の摩耗量であるとし、SUS440Cを基準として軸受の寿命時間を算出すると、実施例試料13で内輪と外輪を形成した実施例は、SUS440Cで内輪と外輪を形成した軸受と同等の摩耗量に達するまでに2072時間を要することが確認できた(表4)。実施例試料13を用いた軸受が、高温環境下できわめて寿命が長く、優れた耐熱性を示すことがわかる。

【0058】
【表4】
JP0005424315B2_000005t.gif

【0059】
C.まとめ
以上の評価結果から分かるように、実施例の軸受を形成する材料は、SUS440C等の一般的な軸受材料と特性が全く異なり、温度が上昇しても機械的特性があまり変化しない。また、この材料で形成された軸受は、常温での転がり疲労寿命試験ではSUS440Cと同等であるものの、高温の環境下での耐熱回転試験では、きわめて寿命が長く、優れた耐熱性を有している。従って、実施例試料で形成された軸受は、高温で寿命が要求される用途に好適に用いることができる。なお、Ni基金属間化合物合金は非磁性の特性を有するから、磁化することによる摩耗粉の軌道輪内への堆積が生じ難く、結果として、摩耗の加速を抑制する性質を有している。また、非磁性であることが求められる用途(例えば、半導体製造装置)でも好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0060】
1 転がり軸受(玉軸受)
1A すべり軸受
2 内輪
2A、3A 軌道面
2B すべり面
3 外輪
4 転動体
5 保持器
10 スラスト転がり寿命試験機
11 駆動軸
12 内輪
13 ボール
14 試験片
15 軸受箱
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図4】
2
【図5】
3
【図6】
4
【図7】
5
【図8】
6
【図9】
7
【図10】
8
【図11】
9
【図3】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13