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明細書 :喉頭鏡

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5413724号 (P5413724)
登録日 平成25年11月22日(2013.11.22)
発行日 平成26年2月12日(2014.2.12)
発明の名称または考案の名称 喉頭鏡
国際特許分類 A61M  16/04        (2006.01)
A61B   1/267       (2006.01)
A61B   1/273       (2006.01)
A61B   1/04        (2006.01)
FI A61M 16/04 Z
A61B 1/26
A61B 1/04 372
請求項の数または発明の数 5
全頁数 13
出願番号 特願2009-207006 (P2009-207006)
出願日 平成21年9月8日(2009.9.8)
審査請求日 平成24年8月6日(2012.8.6)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504147243
【氏名又は名称】国立大学法人 岡山大学
発明者または考案者 【氏名】武田 吉正
【氏名】森田 潔
【氏名】小林 武治
個別代理人の代理人 【識別番号】100080160、【弁理士】、【氏名又は名称】松尾 憲一郎
特許請求の範囲 【請求項1】
把持可能なハンドルの先端に、気管入口部を視認すべく患者の口から挿入して喉頭蓋を挙上させるためのブレードの基端を連設した喉頭鏡において、
前記ブレードの先端部に第1電極を設けると共に、
喉頭蓋の近傍に第2電極を当接可能に構成し、
前記第1電極と前記第2電極との間に低周波電流を通電するように構成したことを特徴とする喉頭鏡。
【請求項2】
前記低周波電流は、周波数10~100Hz、かつ、電流値10mA~100mAのパルスであることを特徴とする請求項1に記載の喉頭鏡。
【請求項3】
前記第1電極は、前記ブレードの先端部を少なくとも被覆する絶縁性を有するカバーを介して配設されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の喉頭鏡。
【請求項4】
前記第2電極は、喉頭蓋の近傍の皮膚面に貼付可能に構成されていることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の喉頭鏡。
【請求項5】
前記ブレードの先端部に撮像部を設けるとともに、前記ハンドルの基端に表示部を傾動可能に設け、前記撮像部により撮像された映像を表示部により表示することを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の喉頭鏡。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、喉頭鏡に関し、特に、麻酔、救急、集中治療分野等において用いられる喉頭蓋を挙上させて気管入口部を視認するために用いられる喉頭鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
麻酔、救急、集中治療分野等では、口腔から気管にチューブを挿入し、呼吸に必要な酸素の通り道である気道の通りを確保すること(気道確保)が一般に行われている。
【0003】
気道確保を行う際には、チューブの挿入に先立ち、気管入口部を視認するために喉頭展開という処置が行われる。すなわち、気管入口部には、喉頭蓋という蓋の部分が存在し、この喉頭蓋により飲食物が気管に入ることが防止されている。気道確保を行う際、喉頭蓋が挙上しない場合、視野が妨げられて気管入口部が視認できないことがある。そこで、喉頭蓋を挙上させて気管入口部を視認するため、喉頭展開が行われる。
【0004】
喉頭展開には、患者の口に挿入可能なブレードを有する喉頭鏡という器具が用いられる。喉頭展開は、具体的には、喉頭鏡のブレードにより舌部を横方向に押しのけ、ブレード先端で喉頭蓋の基端部を押圧して喉頭蓋を挙上させる処置である。
【0005】
従来では、気道確保は医師により行われていたが、喉頭蓋が挙上せず、気道入口部が十分視認できない場合には、医師が技術と勘を頼りに気管入口部を想像することで気道確保を行っていた。
【0006】
そこで、喉頭蓋を容易に挙上させることができる喉頭鏡としてマッコイ喉頭鏡が提案されている(例えば、特許文献1参照)。このマッコイ喉頭鏡は、喉頭蓋の根本に力を加えやすい構造、すなわち、喉頭鏡のブレード先端がヒンジを介して配設されると共に、このブレード先端を屈曲させるためのレバーがハンドルに配設された構造を有している。このマッコイ喉頭鏡では、レバーを操作することによりブレード先端を屈曲させて喉頭蓋の基端部を押圧し、喉頭蓋を機械的に挙上させることができるものである。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】特開2005-319245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、マッコイ喉頭鏡では、上述のとおり喉頭蓋を機械的に挙上させているため、患者の呼吸が停止したような緊急時に気管挿管(口腔から気管にチューブを挿入すること)を行う場合には、緊張等によりレバーに無理な力が加わり、無理な力を加えると喉頭蓋の基部が出血したり、腫れたりして、危機的状況を招くことがある。そのため、マッコイ喉頭鏡の使用可能な状況は限られている。
【0009】
近年、気管挿管は、医師のほか救急救命士にも許可されている。そこで、気管挿管が救急救命士によって行われる場合にも、確実な気管挿管を行うため、気管入口部を直視することが求められている。
【0010】
また、気管挿管チューブ以外にも気管挿管に有用な器具として、例えば、CCDカメラとLCDモニタを内蔵する喉頭鏡も提案されているが、この喉頭鏡は、LCDモニタの画面で口腔内を確認しながら気管挿管を行い、気管入口部を直視することができない。このため、この喉頭鏡は、救急救命士には使用が認められていない。
【0011】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、安全かつ確実に喉頭蓋を挙上させることができ、容易に気管入口部を直視できる喉頭鏡を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、把持可能なハンドルの先端に、気管入口部を視認すべく患者の口から挿入して喉頭蓋を挙上させるためのブレードの基端を連設した喉頭鏡において、前記ブレードの先端部に第1電極を設けると共に、喉頭蓋の近傍に第2電極を当接可能に構成し、前記第1電極と前記第2電極との間に低周波電流を通電するように構成したことを特徴とする喉頭鏡とした。
【0013】
また、請求項2に係る発明は、請求項1に係る喉頭鏡において、前記低周波電流は、周波数10~100Hz、かつ、電流値10mA~100mAのパルスであることとした。
【0014】
また、請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2に係る喉頭鏡において、前記第1電極は、前記ブレードの先端部を少なくとも被覆する絶縁性を有するカバーを介して配設されることとした。
【0015】
また、請求項4に係る発明は、請求項1~3のいずれか1項に係る喉頭鏡において、前記第2電極は、喉頭蓋の近傍の皮膚面に貼付可能に構成されていることとした。
【0016】
また、請求項5に係る発明は、請求項1~4のいずれか1項に係る喉頭鏡において、前記ブレードの先端部に撮像部を設けるとともに、前記ハンドルの基端に表示部を傾動可能に設け、前記撮像部により撮像された映像を表示部により表示することとした。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に係る発明によれば、第1電極及び第2電極を備え、第1電極と第2電極との間に低周波電流を通電し、この低周波電流により喉頭蓋の周囲の筋肉を刺激して収縮させ、喉頭蓋を挙上させるようにしたので、確実な気管挿管ができるだけでなく、救命士が気管挿管できなかった症例(気管が直接視認できなかった症例)にも、気管挿管が可能になり、より多くの患者を救うことが可能になる。
【0018】
また、請求項2に係る発明によれば、前記低周波電流は、周波数10~100Hz、かつ、電流値10mA~100mAのパルスとしたので、患者に過度な負担をかけることなく喉頭展開を行うことができる。
【0019】
また、請求項3に係る発明によれば、前記ブレードの先端部を少なくとも被覆する絶縁性を有するカバーを介して第1電極を配設するようにしたので、ブレードの材質に関わらず、ブレードの先端部に電極を配設することができる。これにより、どのようなブレードを用いる場合にも低周波電流を用いた喉頭展開を行うことができる。
【0020】
また、請求項4に係る発明によれば、第2電極を喉頭蓋の近傍の皮膚面に貼付可能に構成したので、第2電極を患者の喉頭蓋の近傍の皮膚面に貼付し、第1電極と第2電極との間で低周波電流を通電し、この低周波電流により喉頭蓋の周囲の筋肉を収縮させ、喉頭蓋を挙上させることができる。
【0021】
また、請求項5に係る発明によれば、前記ブレードの先端部に撮像部を設けるとともに、前記ハンドルの基端に表示部を傾動可能に設け、前記撮像部により撮像された映像を表示部により表示するようにしたので、気管挿管を行う際には、術者は表示部に表示された映像から患者の気官入口部を視認することができる。したがって、術者は、楽な姿勢で気管入口部を視認することができるため、容易に気管挿管を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本実施形態に係る喉頭鏡の概略構成を示す図である。
【図2】図1のA-A断面図である。
【図3】喉頭鏡の変形例を示す図である。
【図4】喉頭鏡の他の変形例を示す図である。
【図5】本実施形態に係る喉頭鏡の電気的構成を示すブロック図である。
【図6】喉頭鏡の他の変形例を示す図である。
【図7】気管挿管チューブを示す図である。
【図8】本実施形態に係る喉頭鏡の使用状態を示す図である。
【図9】喉頭蓋が変化する様子を示す図である。
【図10】変形例に係る喉頭鏡の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「実施形態」とする)を説明する。

【0024】
図1は本実施形態に係る喉頭鏡の外観斜視図、図2は、図1のA-A断面図である。喉頭鏡1は、図1に示すように、ハンドル10と、このハンドル10に設けられたブレード11とを備えている。ブレード11の先端に形成した喉頭蓋の基端部への当接面には、第1電極12aが配設されている。喉頭鏡1本体とは別体に、第1電極12aと通電する位置に第2電極12bが配設されている。ハンドル10の外周面上には電源スイッチ13が配設されており、このハンドル10の内部には、電源部14及び低周波発生部15が設けられている。

【0025】
ハンドル10は、医者や救命救急士等の患者に対し気道確保を行う者(以下、「術者」という。)が手で握ったときにブレード11を操作しやすいように、握りやすい太さの略円筒状に形成されるとともに、その表面には縦や横や斜めのローレットが形成されている。

【0026】
ハンドル10の先端部10aには接続ケース17を形成し、ケース17内部に軸17aを架設し、このケース17内においてブレード11の基端部11aが折畳み自在に軸17aに枢支されている。

【0027】
ブレード11は、患者の口から喉頭内に挿入されるものであり、図2に示すように、略長方形の板状に形成し、下方に凸状湾曲した舌圧部11bを有している。この舌圧部11bの側端縁には、患者の口腔内で舌片を片方に押しやるための長方形の押圧プレート11cを垂設している。舌圧部11bの先端部11dには、丸棒状の当接凸部11eを突設し、口腔内の喉頭蓋近傍の皮膚組織への当接圧を和らげている。また、ブレード11は、例えば、金属や合成樹脂等の剛性のある素材により形成される。

【0028】
第1電極12aは、上述のとおり舌圧部11bの先端部11dに配設されており、患者の喉頭蓋の基端部の当接面に当接可能に形成されている。また、この第1電極12aは、ブレード11内に埋設された図示しない配線を介して、低周波発生部15に電気的に接続されている。

【0029】
なお、図3に示すように、絶縁性を有するカバー50によりブレード11の表面を覆い、このカバー50を介してブレード11の先端部11dに第1電極12aを配設するようにしてもよい。この場合には、カバー50の表面に配線を形成し、第1電極12aと低周波発生部15とを電気的に接続することで、その先端部11dに電極が配設されていないブレードであっても、低周波電流を用いた喉頭展開を行うことができる。

【0030】
また、カバー50は、上述のとおり絶縁性を有するとともに、可撓性を有する材料、例えば、シリコン樹脂等により形成することが望ましい。このカバー50は、それぞれ形状の異なるブレードに対して用いられるためである。

【0031】
第2電極12bは、表面に粘着性を有するパッド(図示せず)に埋設され、患者の喉頭蓋の近傍の皮膚面に貼付可能に構成されている。この第2電極12bは、配線16を介してハンドル10の基端部10bに接続されており、このハンドル10の内部において低周波発生部15に電気的に接続されている。なお、第2電極12bが接続される位置は、ハンドル10の基端部10bに限定されず、例えば、図示しない外部の電源装置に接続し、この電源装置から低周波電流を供給してもよい。

【0032】
この第2電極12bは、第1電極12aと共にブレード11の先端部11dに配設することもできる。例えば、図4(a)に示すように、ブレード11が伸延する方向と同一の方向に沿って所定間隔をあけて第1電極12a及び第2電極12bを配設してもよく、また、図4(b)に示すように、ブレード11が伸延する方向と直交する方向に沿って所定間隔をあけて第1電極12a及び第2電極12bを配設するようにしてもよい。このように、第1電極12a及び第2電極12bをブレード11の先端部11dに配設することで、喉頭鏡1をコンパクト化することができる。また、喉頭展開を行う際には、上述した喉頭鏡1と同様に、患者の喉頭蓋の周囲の筋肉を介して第1電極12aと第2電極12bとの間に低周波電流を通電することができ、当該筋肉に電気刺激を与えることができ、さらに、喉頭展開を行う際の喉頭鏡1の操作性を向上させることもできる。

【0033】
なお、上述により、第1電極12aがカバー50を介してブレード11の先端部11dに配設される例について説明したが、これと同様に、第2電極12bがカバー50を介してブレード11の先端部11dに配設されるようにしてもよい。

【0034】
電源スイッチ13は、例えば、スライド式のスイッチであり、電源部14からの電源供給をオン/オフする。なお、電源スイッチ13としては、スライドスイッチに限定されず、例えば、ロータリスイッチやプッシュスイッチも利用可能である。

【0035】
電源部14は、低周波発生部15に対して電力を供給するものであり、この電源部14として、例えば、充電用ニッケル水素電池または充電用リチウム電池が用いられる。

【0036】
低周波発生部15は、低周波電流を発生し、第1電極12a及び第2電極12bに対して供給する回路である。この低周波発生部15で発生される低周波電流は、例えば、周波数50Hz,電流値50mAのテタヌス刺激(高頻度反復刺激)を付与するものである。

【0037】
低周波発生部15は、例えば、デジタル信号発生回路、DA変換回路、フィルタ(いずれも不図示)により構成される。デジタル信号発生回路は、低周波電流の波形を定義する波形データを記憶する機能と、その波形データに従ってデジタル信号を出力する機能とを有する回路である。デジタル信号発生回路は、複数種類の波形データを記憶しており、周波数に応じて出力波形を変えることができる。また、DA変換回路は、デジタル信号発生回路から出力されたデジタル信号をアナログ変換して源波形を出力する機能を有する回路である。また、フィルタは、源波形のアンチエイリアシングを行うためのフィルタであり、典型的にはローパスフィルタが用いられる。

【0038】
次に、喉頭鏡1の電気的構成について説明する。図5は、本実施形態に係る喉頭鏡の電気的構成を示すブロック図である。

【0039】
図5に示すように、喉頭鏡1のハンドル10内部において、低周波発生部15は、電源部14を介して電源スイッチ13と接続されている。この低周波発生部15は、ハンドル10とは別体に配設された第1電極12a及び第2電極12bとも接続されている。

【0040】
かかる電気的構成の喉頭鏡1では、電源スイッチ13をオンすると、この電源スイッチ13をオンしている期間、電源部14に対して制御信号を送信する。電源部14は制御信号を受信している期間、低周波発生部15に対して電流(例えば、定電流)を供給する。低周波発生部15は、電流が供給されると、この供給された電流を所定の周波数及び電流値を有するパルスに変換して低周波電流を発生し、この発生した低周波電流を第1電極12a及び第2電極12bに対して供給する。このように、喉頭鏡1では、電源スイッチ13をオンしている期間、第1電極12aと第2電極12bとの間に低周波電流が通電する。なお、所定の周波数及び電流値とは、例えば、周波数50Hz,電流値50mAである。

【0041】
なお、図6に示すように、電源部14及び低周波発生部15に加え、発生する低周波電流の周波数及び電流値を段階的に変更する周波数変換器18及び調整ダイヤル19を配設してもよい。調整ダイヤル19は、例えば、複数の周波数及び電流値が段階的に割り当てられたチャンネルから使用するチャンネルを選択可能に形成されたものである。また、周波数変換器18は、周波数や電流値の異なる複数の低周波電流データを記憶し、調整ダイヤル19で選択されたチャンネルに応じた電流設定信号を低周波発生部15に送信するものである。
低周波発生部15が発生する低周波電流の周波数や電流値を調整するための電子ボリュームであり、低周波発生部15は波数変換器18により調整された周波数や電流値の低周波電流を発生するようになっている。

【0042】
かかる構成の喉頭鏡1では、調整ダイヤル19により使用するチャンネルを選択操作すると、周波数変換器18に対して制御信号を送信する。周波数変換器18は制御信号を受信すると、この制御信号に応じた電流設定信号を低周波発生部15に対して送信する。低周波発生部15は、電流設定信号に応じた低周波電流を発生し、この発生した低周波電流を第1電極12a及び第2電極12bに対して供給する。

【0043】
また、周波数変換器18及び調整ダイヤル19を配設した喉頭鏡1は、波形データの定義しだいで任意の周波数及び電流値の低周波電流を発生することができる。例えば、上述した周波数50Hz,電流値50mAの低周波電流に限らず、段階的に周波数の異なる低周波電流や、段階的に電流値の異なる低周波電流を発生させることもできる。

【0044】
このように、かかる構成の喉頭鏡1によれば、チャンネルに割り当てられた周波数及び電流値の低周波電流を選択的に発生することが可能となる。従って、喉頭展開を行う際には、患者の年齢や体力等に応じた周波数及び電流値の低周波電流を選択することが可能となり、患者に過度の負担をかけることなく喉頭展開を行うことができる。

【0045】
なお、チャンネルに割り当てられた周波数及び電流値の範囲は、例えば、周波数10~100Hz、電流値10mA~100mAであり、例えば、周波数10Hz、電流値10mA毎に段階的に割り当てられている。

【0046】
次に、喉頭鏡1を用いた気道確保の方法について説明する。なお、本実施形態については、気管挿管による気道確保の方法について説明する。気管挿管とは、気管に口または鼻から喉頭を経由して気管挿管チューブ20を挿入して行う気道確保方法である。まず、気管挿管に用いられる気管挿管チューブ20及びスタイレット30について簡単に説明する。

【0047】
気管挿管チューブ20は、図7(a)に示すように、空気が通るエアウェイチューブ21の先端に開口部22を形成し、当該開口部22よりもやや後側には当該エアウェイチューブ21を囲繞するようにカフ部23を形成している。カフ部23は膨縮自在に形成されるとともに、インフレーティングチューブ24の先端が連繋されている。そして、このインフレーティングチューブ24の基端部には空気等の流体を注入するための膨らまし弁25が設けられている。この気管挿管チューブ20の特徴的な点は、気管挿管チューブ20の先端部(開口部22からカフ部23まで)の長さが通常の気管挿管チューブよりも短く形成されており、この開口部22が平坦に切欠きされている点にある。

【0048】
スタイレット30は、図7(b)に示すように、先端に流線形の形状を有するガイド部31を有する。ガイド部31には、ロッド32が接続されている。ロッド32は、気管挿管チューブ20の内径より細い外径の金属管で形成されており、手で簡単に曲げることができるがその曲げた状態を保つこともできる程度の剛性が与えられている。また、ガイド部31は流線形の形状を有しているため、仮にスタイレット30が気管挿管チューブ20の開口部22から抜け出た場合であっても、容易に気管挿管チューブ20内に引き戻せるようになっている。

【0049】
上述した構成の喉頭鏡1、気管挿管チューブ20及びスタイレット30を用いることにより、図8に示すような気管挿管を行うことができる。まず、患者40を仰向けに寝かせた状態で下顎46を挙上させる。

【0050】
次に、患者40の口唇41から喉頭鏡1のブレード11を挿入し、舌部42を横方向(例えば、術者から見て左方向)に押しのけた後、喉頭蓋43の基端部44の当接面に第1電極12aを当接させる。このとき、患者40の喉頭蓋43は図中破線で示すように降下して、気管入口部45を塞いだ状態となっている(図9(a)参照)。そして、この第1電極12aとの間で低周波電流を通電できる位置(例えば、甲状軟骨と輪状軟骨の間上の皮膚)に第2電極12bを貼付する。なお、本実施形態では、喉頭鏡1を挿入した後、第2電極12bを貼付するようにしたが、この順には限定されない。

【0051】
次に、ハンドル10を上方向に持ち上げ、ブレード11の先端部11dにおいて喉頭蓋43の基端部44を押圧するとともに、電源スイッチ13をオンして第1電極12aと第2電極12bとの間に低周波電流を通電する。これにより、電源スイッチ13をオンしている期間、喉頭蓋43の周囲の筋肉に電気刺激が与えられ、当該筋肉が収縮して経時的に喉頭蓋43が挙上し、気管入口部45が視認可能な状態となる(図9(b)参照)。

【0052】
なお、低周波電流の周波数及び電流値としては、周波数50Hz,電流値50mAとする。これにより筋肉に直接刺激を与えることができる。また、低周波電流のエネルギーが低い場合、すなわち、周波数が低く、電流値が低い場合には喉頭蓋の挙上が不十分となる。一方、低周波電流のエネルギーが高い場合、すなわち、周波数が高く、電流値が高い場合には喉頭蓋周辺に火傷等の炎症を生ずるためである。

【0053】
次に、気管入口部に対して気管挿管チューブ20を挿入する。この気管挿管チューブ20の挿入は、スタイレット30のロッド32の形状を患者の気管に合わせて成形し、スタイレット30のガイド部31が気管挿管チューブ20の開口部22から突出するような位置に挿入した状態で行うこととする。

【0054】
上述のとおり、気管挿管チューブ20の開口部22は平坦に切欠きされており、スタイレット30を挿入しない状態で気管挿管チューブ20の挿入を行う場合には、気管入口部に存在する喉頭室に気管挿管チューブ20が引っ掛り、気管挿管チューブ20の挿入が上手く行えないためである。

【0055】
次に、気管内に気管挿管チューブ20を挿入する。スタイレット30を気管挿管チューブ20から引き抜いた後、インフレーティングチューブ24の膨らまし弁25より空気を入れてカフ部23を膨張させ気管挿管チューブを留置する。このとき、気管挿管チューブの開口部22からカフ部23までが気管入口部から気管の末端部分である気管分岐部の間に存在するように気管挿管チューブを留置する必要がある。

【0056】
従来の気管挿管チューブは、開口部22が斜めに切り欠きされているため開口部22からカフ部23までの距離が長く、気管の短い患者(特に小児)では適正な位置に気管挿管チューブを留置することが困難であった。しかし、気管挿管チューブ20では、開口部22が平坦に切り欠きされているため開口部22からカフ部23までの距離が短く、容易に適正な位置に気管挿管チューブを留置することができる。

【0057】
上述のとおり、喉頭鏡1を用いて喉頭展開を行うことで、低周波電流の電気的刺激により喉頭蓋43を挙上させることができる。これにより、高度な技術技量を有していないため一般的な口頭展開により喉頭蓋43を挙上できない場合であっても、安全かつ確実に喉頭蓋43を挙上させることができる。従って、経験の乏しい医師や救急救命士であっても気管入口部を直視することが可能になり、安全な医療を提供することが可能になる。

【0058】
例えば、従来技術に記載したようなマッコイ喉頭鏡を用いて喉頭展開を行うような場合には、上述のとおり、緊張等による誤操作よって喉頭蓋43の基端部44に必要以上に圧力を加え、喉頭蓋基部を障害することが多く、血腫や浮腫で危機的状況を招くことがあったが、喉頭鏡1では、予め設定された低周波電流をスイッチ操作により付与し、電気的に筋肉を収縮させ喉頭蓋を挙上させるため、血腫や浮腫の発生を防止することができる。

【0059】
(変形例)
次に、本実施形態に係る喉頭鏡1の変形例について説明する。図10は変形例に係る喉頭鏡1Aの概略構成を示す図である。

【0060】
喉頭鏡1Aは、撮像部61をブレード11の先端部に有するとともに、表示部60をハンドル10の基端部10bに有しており、気管挿管を行う際には、患者の口腔内を撮像部により撮像し、撮像部61により撮像した映像を表示部に表示するようになっている。これにより、術者が口腔内の様子を容易に把握することができ、気管挿管をさらに容易に行うことができるようしている。さらに具体的な構成について以下説明する。

【0061】
ブレード11Aは、上述したブレード11に加え、固定部材(図示せず)を有し、この固定部材により撮像部61を舌圧部11bの表面に固定している。この固定部材は、例えば、撮像部61を両端から挟持する構成を有している。

【0062】
撮像部61は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)カメラにより構成している。この撮像部61には接続端子が形成されており、この接続端子を介してケーブル65の一端が接続されている。そして、撮像部61により撮像した映像信号を外部に出力できるようになっている。また、撮像部61の近傍には、例えば、LED(Light Emitting Diode)により構成した照射部(図示せず)を配設しており、撮像部61が撮像する撮像領域を照射できるようになっている。

【0063】
接続ケース17Aは、上述した接続ケース17とほぼ同様の構成を有するがケーブル65を接続ケース17Aの内部に挿通するための挿通孔(図示せず)を有する点で異なる。そして、この挿通孔を介してケーブル65の一部をハンドル10Aの内部に収容可能に形成されている。

【0064】
ハンドル10Aは、上述したハンドル10とほぼ同様の構成としているが、ハンドル10Aの基端部10bに表示部60を設けるための取付部62を有している点で異なる。この取付部62はブレード11の伸延方向と反対の方向に伸延するアーム62aを有し、アーム62aは左右方向に延びる軸62bをその先端部に有する。そして、表示部60は、軸62b回りにハンドル10に対して傾動自在に枢設されている。

【0065】
表示部60は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)により構成されている。表示部60にはケーブル65の他端が接続されており、撮像部61により撮像した映像の映像信号を入力し、この映像信号に基づく映像を表示することができるようになっている。

【0066】
かかる構成の喉頭鏡1Aは、上述した喉頭鏡1と同様に喉頭展開を行う際に用いられる。すなわち、患者40の口唇41から喉頭鏡1のブレード11を挿入し、舌部42を横方向に押しのけた後、喉頭蓋43の基端部44の当接面に第1電極12aを当接させる。次に、ハンドル10を上方向に持ち上げ、ブレード11の先端部11dにおいて喉頭蓋43の基端部44を押圧するとともに、電源スイッチ13をオンして第1電極12aと第2電極12bとの間に低周波電流を通電して喉頭蓋43を挙上させる。

【0067】
続いて、気管入口部に対して気管挿管チューブ20を挿入するが、喉頭鏡1Aはブレード11の先端部に撮像部61を有し、ハンドル10の基端部10bに表示部60を有するため、術者は気管入口部の様子を表示部60の表示映像により視認しつつ、気管挿管チューブ20を挿入することができる。これにより、術者は楽な姿勢で容易に気管入口部の様子を視認することができるため、気管挿管チューブ20を容易に挿入することができる。

【0068】
以上、本実施形態及びその変形例を挙げて本発明を説明したが、本発明はこの実施の形態に限定されず、様々な変形が可能である。
【符号の説明】
【0069】
1,1A 喉頭鏡
10,10A ハンドル
10a ハンドルの先端部
10b ハンドルの基端部
11,11A ブレード
11a ブレードの基端部
11b ブレードの舌圧部
11c ブレードの押圧プレート
11d 舌圧部の先端部
11e 当接凸部
12a 第1電極
12b 第2電極
13 電源スイッチ
14 電源部
15 低周波発生部
16 配線
17,17A 接続ケース
17a 軸
18 周波数変換器
19 調整ダイヤル
20 気管挿管チューブ
21 エアウェイチューブ
22 開口部
23 カフ部
24 インフレーティングチューブ
25 膨らまし弁
30 スタイレット
31 ガイド部
32 ロッド
50 カバー
60 表示部
61 撮像部
62 取付部
62a アーム
62b 軸
65 ケーブル
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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