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明細書 :地震予知システム、地震予知方法、地震予知プログラム及び地震予知プログラムを記録した記録媒体

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4867016号 (P4867016)
登録日 平成23年11月25日(2011.11.25)
発行日 平成24年2月1日(2012.2.1)
発明の名称または考案の名称 地震予知システム、地震予知方法、地震予知プログラム及び地震予知プログラムを記録した記録媒体
国際特許分類 G01V   1/00        (2006.01)
FI G01V 1/00 E
請求項の数または発明の数 4
全頁数 20
出願番号 特願2007-510376 (P2007-510376)
出願日 平成18年3月15日(2006.3.15)
国際出願番号 PCT/JP2006/305119
国際公開番号 WO2006/103929
国際公開日 平成18年10月5日(2006.10.5)
優先権出願番号 2005095137
優先日 平成17年3月29日(2005.3.29)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成21年2月4日(2009.2.4)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504133110
【氏名又は名称】国立大学法人電気通信大学
発明者または考案者 【氏名】早川 正士
個別代理人の代理人 【識別番号】100070150、【弁理士】、【氏名又は名称】伊東 忠彦
審査官 【審査官】田中 秀直
参考文献・文献 特開平09-021884(JP,A)
特開2004-239901(JP,A)
特開2003-043153(JP,A)
特開2002-214355(JP,A)
長尾年恭,地震予知研究の新展開,2001年 2月 9日,P.123-132
早川正士,地震に伴う電離層攪乱,電気学会電磁環境研究会資料,2003年 1月17日,(EMC-03-1~14),P.71-75
)A.V.Shvets, M.Hayakawa, O.A.Molchanov, Y.Ando,A study of ionosphericresponse to regional seismic activity by VLF radio sounding,Physics andChemistry of the Earth 29(2004),2004年,P.627-637
A.Rozhnoi, M.S.Solovieva, O.A.Molchanov, M.Hayakawa,Middle latitudeLF(40kHz)phase variations associated with earthquakes for quiet and disturbedgeomagnetic conditions,Physics and Chemistry of the Earth 29(2004),2004年,P.589-598
前川慎光, 早川正士,十勝沖地震におけるVLF 局電波の伝搬異常の解析,電子情報通信学会技術研究報告,2004年10月22日,Vol.104 no.393,P.17-21
調査した分野 G01V 1/00
JSTPlus(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
第1の地震予知方法と、第2の地震予知方法とを併用した地震予知方法であって、
前記第1の地震予知方法は、
所定の送信局より送信された所定の振幅と位相を有するVLF/LF信号と、GPS信号とを受信する信号受信段階と、
受信したVLF/LF信号と、前記GPS信号から生成された基準となる信の位相差を求め、該位相差を記憶する位相差取得段階と、
日出時刻または日没時刻を含む所定の時間帯に記憶した位相差の最小値を求める最小位相差取得段階と、
前記最小値をとった時刻である最小位相差時刻を求める時刻取得段階と、
前記最小位相差時刻の変動に基づき、地震発生を予知する第1の地震予知段階とを有し、
前記第1の地震予知段階は、
所定の期間における前記最小位相差時刻の平均値と標準偏差とを求める統計処理段階と、
前記平均値と前記最小位相差時刻との差分の絶対値が前記標準偏差の2倍を超えるかどうか判断する異常判断段階とを有し、
前記位相差取得段階は、前記GPS信号に基づいて生成された周波数で発振する発振器と、該発振器の出力を90度移相させる移相器と、前記発振器の出力と受信したVLF/LF信号とを乗算する第1の乗算器と、前記移相器の出力と受信したVLF/LF信号とを乗算する第2の乗算器と、第1の乗算器の出力側に設けた第1のローパスフィルタと、第2の乗算器の出力側に設けた第2のローパスフィルタを有する回路により、第1のローパスフィルタの出力及び第2のローパスフィルタの出力に基づいて同相成分と直交成分を検出して、受信したVLF/LF信号の移相を得、
前記第1のローパスフィルタ及び第2のローパスフィルタは、宇宙由来のノイズと、気象由来のノイズとを選別除去し、
前記異常判断段階が前記標準偏差の2倍を超えたと判断すると、地震発生を予知し、
前記第2の地震予知方法は、
前記VLF/LF信号の午後21時から午前3時までの所定の時刻における振幅を求め、該振幅を記憶する振幅取得段階と、
所定の期間の前記振幅の平均値と、前記振幅に基づき、地震発生を予知する第2の地震予知段階とを有し、
前記第2の地震予知段階は、
前記平均値と、前記振幅との差分をとり、その差分の2乗を求める差分取得段階と、
前記所定の期間における前記差分の2乗の平均値と標準偏差とを求める統計処理段階と、
前記差分の2乗が、前記平均値に前記標準偏差の2倍を加えた値を超えるかどうか判断する異常判断段階とを有し、
前記異常判断段階が前記平均値に前記標準偏差の2倍を加えた値を超えたと判断すると、地震発生を予知し、
前記第1の地震予知方法と、前記第2の地震予知方法とを併用したことを特徴とする地震予知方法。
【請求項2】
第1の地震予知システムと、第2の地震予知システムとを併用した地震予知システムであって、
前記第1の地震予知システムは、
所定の送信局より送信された所定の振幅と位相を有するVLF/LF信号と、GPS信号とを受信する信号受信手段と、
受信したVLF/LF信号と、前記GPS信号から生成された基準となる信の位相差を求め、該位相差を記憶する位相差取得手段と、
日出時刻または日没時刻を含む所定の時間帯に記憶した位相差の最小値を求める最小位相差取得手段と、
前記最小値をとった時刻である最小位相差時刻を求める時刻取得手段と、
前記最小位相差時刻の変動に基づき、地震発生を予知する第1の地震予知手段とを有し、
前記第1の地震予知手段は、
所定の期間における前記最小位相差時刻の平均値と標準偏差とを求める統計処理手段と、
前記平均値と前記最小位相差時刻との差分の絶対値が前記標準偏差の2倍を超えるかどうか判断する異常判断手段とを有し、
前記位相差取得手段は、前記GPS信号に基づいて生成された周波数で発振する発振器と、該発振器の出力を90度移相させる移相器と、前記発振器の出力と受信したVLF/LF信号とを乗算する第1の乗算器と、前記移相器の出力と受信したVLF/LF信号とを乗算する第2の乗算器とを有し、第1のローパスフィルタを介した第1の乗算器の出力及び第2のローパスフィルタを介した第2乗算器の出力に基づいて同相成分と直交成分を検出して、受信したVLF/LF信号の移相を得、
前記第1のローパスフィルタ及び第2のローパスフィルタは、宇宙由来のノイズと、気象由来のノイズとを選別除去し、
前記異常判断手段が前記標準偏差の2倍を超えたと判断すると、地震発生を予知し、
前記第2の地震予知システムは、
前記VLF/LF信号の午後21時から午前3時までの所定の時刻における振幅を求め、該振幅を記憶する振幅取得手段と、
所定の期間の前記振幅の平均値と、前記振幅に基づき、地震発生を予知する第2の地震予知手段とを有し、
前記第2の地震予知手段は、
前記平均値と、前記振幅との差分をとり、その差分の2乗を求める差分取得手段と、
前記所定の期間における前記差分の2乗の平均値と標準偏差とを求める統計処理手段と、
前記差分の2乗が、前記平均値に前記標準偏差の2倍を加えた値を超えるかどうか判断する異常判断手段とを有し、
前記異常判断手段が前記平均値に前記標準偏差の2倍を加えた値を超えたと判断すると、地震発生を予知する
ことを特徴とする地震予知システム。
【請求項3】
請求項に記載の地震予知方法をコンピュータに実行させるための地震予知プログラム。
【請求項4】
請求項に記載の地震予知プログラムを記録したコンピュータが読み取り可能な記録媒体。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、地震の予兆として発生する電離層擾乱が既存の超長波(VLF)/長波(LF)に影響を及ぼすことを利用して創作した地震予知システム、地震予知方法、地震予知プログラム及び地震予知プログラムを記録した記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来における地震の予知技術は地殻の移動を検知して地盤内に蓄積された歪みエネルギーを推定することが基本となっていた。すなわち、三角測量法によって地盤の移動を計測して歪みエネルギーの分布状態を算出し、地盤が歪み応力に耐えられなくなって正断層もしくは逆断層を生じる可能性を推測していた。近年に至ってレーザー測量技術が適用されたり歪ゲージの性能が向上したりして地震予知技術が向上したが、本質的には地盤が歪み応力に耐えられなくなる状態を予測するものであるから、危険地域を指定することは出来ても、地震発生の期日については10年単位の予告すら困難であった。すなわち、例えば相模湾トラフに地盤の歪みエネルギーが蓄積されていて断層を生じる危険が有るということは指摘できても、地盤の耐力が限界に達して断層を生じる時期については10年以上の誤差を含んだ予告しかできない。このため有史以来の大地震発生の周期性までが参考に供されている。最近の例としては、阪神大震災に関して予告した者が無かった。
【特許文献1】
特開平8-334569号公報
【特許文献2】
特許第2875398号公報
【非特許文献1】
A.V. Shvets, M.Hayakawa, O.A.Molchanov, and Y.Ando, A study ofionospheric response to regional seismic activity by VLF radio sounding,Physics and Chemistry of the Earth, vol. 29, 627-638, 2004
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
地震発生に先立って岩盤の破壊が始まろうとするとき、地表から空気中へラドンなどが放出され、大気プラズマが形成されると言う現象が知られている。このことを具体的に図を用いて説明する。図1には、地球10と、下部電離層11と、震源12と、擾乱域13とが示されている。擾乱域13は、下部電離層11に局所的に発生した異常電離部分であり、震源の上空に発生するものである。そして、擾乱域13の下部電離層11が降下している。
【0004】
図2に示されるように、送信点20から受信点21へ送信されたVLF波は、下部電離層11と地球10の間の導波管の内を伝播するが、この擾乱域13により、下部電離層が降下しているので伝播距離が短くなり位相が進む。
【0005】
この大気プラズマの本質や、それに伴う電離層擾乱の発生メカニズムについては、目下解明が進められているが、地震発生の数日前の夜間に発光が目視されたり、通信電波が障害を被ったりすることから、前述の大気プラズマの効果や待機の振動などが一原因であると考えられている。前記の電波障害の情況を解析することによって地震の予兆を検知し得るのではなかろうかという着想の下に研究が試みられたが、次に述べるような理由により、電波障害の情況を解析して地震の発生を予知することは出来なかった。すなわち、
a.大気プラズマによる電波障害は、通信電波の映像波形の中に混入するノイズとして、もしくは音声波形の中に混入するノイズとして捉えられていた。従って、ノイズの混入を受ける原波形自体が既に複雑な振幅変調もしくは複雑な周波数変調を受けているのでノイズの選別除去が容易でなく、その上、ノイズ選別除去前の原波形とノイズを含んだ受信波形との比較も困難である。
b.通信電波の中に混入するノイズとしては、地震発生を予告する電離層プラズマに因るノイズの他に、イ.地球電離圏/磁気圏で発生する電波に因るノイズ(以下、宇宙由来のノイズと呼ぶ)、ロ.地球大気圏の気象現象である雷などの空電に由来するノイズ(以下、気象由来のノイズと呼ぶ)、および、ハ.もろもろの電気機器から発生する人工的なノイズが有るので、これらのノイズの中から地殻に由来する電離層プラズマに因るノイズを選別することが困難である。
【0006】
本発明は上述の事情に鑑みて為されたものであって、地震発生の予兆である電離層プラズマに因る電波伝搬の変化を検出して高い確率で地震を予知し得る地震予知システム、地震予知方法、地震予知プログラム及び地震予知プログラムを記録した記録媒体を提供することを目的とする。
課題を解決するための手段
[0007]
[0008]
[0009]
[0010]
[0011]
[0012]
[0013]
[0014]
[0015]
また、上記課題を解決するために、本発明は、第1の地震予知方法と、第2の地震予知方法とを併用した地震予知方法であって、前記第1の地震予知方法は、所定の送信局より送信された所定の振幅と位相を有するVLF/LF信号を受信する信号受信段階と、受信したVLF/LF信号と基準となるVLF/LF信号の位相差を求め、該位相差を記憶する位相差取得段階と、所定の時間帯に記憶した位相差の最小値を求める最小位相差取得段階と、前記最小値をとった時刻である最小位相差時刻を求める時刻取得段階と、前記最小位相差時刻の変動に基づき、地震発生を予知する第1の地震予知段階とを有し、前記第1の地震予知段階は、所定の期間における前記最小位相差時刻の平均値と標準偏差とを求める統計処理段階と、前記平均値と前記最小位相差時刻との差分の絶対値が前記標準偏差の2倍を超えるかどうか判断する異常判断段階とを有し、前記異常判断段階が前記標準偏差の2倍を超えたと判断すると、地震発生を予知し、前記第2の地震予知方法は、前記VLF/LF信号の所定の時刻における振幅を求め、該振幅を記憶する振幅取得段階と、所定の期間の前記振幅の平均値と、
前記振幅に基づき、地震発生を予知する第2の地震予知段階とを有し、前記第2の地震予知段階は、前記平均値と、前記振幅との差分をとり、その差分の2乗を求める差分取得段階と、前記所定の期間における前記差分の2乗の平均値と標準偏差とを求める統計処理段階と、前記差分の2乗が、前記平均値に前記標準偏差の2倍を加えた値を超えるかどうか判断する異常判断段階とを有し、前記異常判断段階が前記平均値に前記標準偏差の2倍を加えた値を超えたと判断すると、地震発生を予知し、前記第1の地震予知方法と、前記第2の地震予知方法とを併用したことを特徴とする。
[0016]
[0017]
[0018]
[0019]
また、上記課題を解決するために、本発明は、前記所定の時間帯は、日出時刻または日没時刻を含むことを特徴とする。
[0020]
[0021]
[0022]
また、上記課題を解決するために、本発明は、前記所定の時刻は、午後21時から午前3時までの時刻であることを特徴とする。
[0023]
また、上記課題を解決するために、本発明は、地震予知方法をコンピュータに実行させるための地震予知プログラム及び該地震予知プログラムを記録したコンピュータが読み取り可能な記録媒体として構成することができる。また、上記課題を解決するために、本発明は、第1の地震予知システムと、第2の地震予知システムとを併用した地震予知システムであって、前記第1の地震予知システムは、所定の送信局より送信された所定の振幅と位相を有するVLF/LF信号を受信する信号受信手段と、受信したVLF/LF信号と基準となるVLF/LF信号の位相差を求め、該位相差を記憶する位相差取得手段と、所定の時間帯に記憶した位相差の最小値を求める最小位相差取得手段と、前記最小値をとった時刻である最小位相差時刻を求める時刻取得手段と、前記最小位相差時刻の変動に基づき、地震発生を予知する第1の地震予知手段とを有し、前記第1の地震予知手段は、所定の期間における前記最小位相差時刻の平均値と標準偏差とを求める統計処理手段と、前記平均値と前記最小位相差時刻との差分の絶対値が前記標準偏差の2倍を超えるかどうか判断する異常判断手段とを有し、前記異常判断手段が前記標準偏差の2倍を超えたと判断すると、地震発生を予知し、前記第2の地震予知システムは、前記VLF/LF信号の所定の時刻における振幅を求め、該振幅を記憶する振幅取得手段と、所定の期間の前記振幅の平均値と、前記振幅に基づき、地震発生を予知する第2の地震予知手段とを有し、前記第2の地震予知手段は、前記平均値と、前記振幅との差分をとり、その差分の2乗を求める差分取得手段と、前記所定の期間における前記差分の2乗の平均値と標準偏差とを求める統計処理手段と、前記差分の2乗が、前記平均値に前記標準偏差の2倍を加えた値を超えるかどうか判断する異常判断手段とを有し、前記異常判断手段が前記平均値に前記標準偏差の2倍を加えた値を超えたと判断すると、地震発生を予知するように構成することができる。また、上記課題を解決するために、本発明は、第1の地震予知方法と、第2の地震予知方法とを併用した地震予知方法であって、前記第1の地震予知方法は、所定の送信局より送信された所定の振幅と位相を有するVLF/LF信号を受信する信号受信段階と、受信したVLF/LF信号と基準となるVLF/LF信号の位相差を求め、該位相差を記憶する位相差取得段階と、日出時刻または日没時刻を含む所定の時間帯に記憶した位相差の最小値を求める最小位相差取得段階と、前記最小値をとった時刻である最小位相差時刻を求める時刻取得段階と、前記最小位相差時刻の変動に基づき、地震発生を予知する第1の地震予知段階とを有し、前記第1の地震予知段階は、所定の期間における前記最小位相差時刻の平均値と標準偏差とを求める統計処理段階と、前記平均値と前記最小位相差時刻との差分の絶対値が前記標準偏差の2倍を超えるかどうか判断する異常判断段階とを有し、前記異常判断段階が前記標準偏差の2倍を超えたと判断すると、地震発生を予知し、前記第2の地震予知方法は、前記VLF/LF信号の午後21時から午前3時までの所定の時刻における振幅を求め、該振幅を記憶する振幅取得段階と、所定の期間の前記振幅の平均値と、前記振幅に基づき、地震発生を予知する第2の地震予知段階とを有し、前記第2の地震予知段階は、前記平均値と、前記振幅との差分をとり、その差分の2乗を求める差分取得段階と、前記所定の期間における前記差分の2乗の平均値と標準偏差とを求める統計処理段階と、前記差分の2乗が、前記平均値に前記標準偏差の2倍を加えた値を超えるかどうか判断する異常判断段階とを有し、前記異常判断段階が前記平均値に前記標準偏差の2倍を加えた値を超えたと判断すると、地震発生を予知し、前記第1の地震予知方法と、前記第2の地震予知方法とを併用するように構成することができる。
また、上記課題を解決するために、本発明は、第1の地震予知システムと、2の地震予知システムとを併用した地震予知システムであって、前記第1の地震予知システムは、所定の送信局より送信された所定の振幅と位相を有するVLF/LF信号を受信する信号受信手段と、受信したVLF/LF信号と基準となるVLF/LF信号の位相差を求め、該位相差を記憶する位相差取得手段と、日出時刻または日没時刻を含む所定の時間帯に記憶した位相差の最小値を求める最小位相差取得手段と、前記最小値をとった時刻である最小位相差時刻を求める時刻取得手段と、前記最小位相差時刻の変動に基づき、地震発生を予知する第1の地震予知手段とを有し、前記第1の地震予知手段は、所定の期間における前記最小位相差時刻の平均値と標準偏差とを求める統計処理手段と、前記平均値と前記最小位相差時刻との差分の絶対値が前記標準偏差の2倍を超えるかどうか判断する異常判断手段とを有し、前記異常判断手段が前記標準偏差の2倍を超えたと判断すると、地震発生を予知し、前記第2の地震予知システムは、前記VLF/LF信号の午後21時から午前3時までの所定の時刻における振幅を求め、該振幅を記憶する振幅取得手段と、所定の期間の前記振幅の平均値と、前記振幅に基づき、地震発生を予知する第2の地震予知手段とを有し、前記第2の地震予知手段は、前記平均値と、前記振幅との差分をとり、その差分の2乗を求める差分取得手段と、前記所定の期間における前記差分の2乗の平均値と標準偏差とを求める統計処理手段と、前記差分の2乗が、前記平均値に前記標準偏差の2倍を加えた値を超えるかどうか判断する異常判断手段とを有し、前記異常判断手段が前記平均値に前記標準偏差の2倍を加えた値を超えたと判断すると、地震発生を予知するように構成することができる。
発明の効果
【0024】
本発明によれば、地震発生の予兆である電離層プラズマに因るノイズを検出して高い確率で地震を予知し得る地震予知システム、地震予知方法、地震予知プログラム及び地震予知プログラムを記録した記録媒体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】大気プラズマと電離層とを示す図である。
【図2】VLF波が擾乱域と地球の間を伝播する様子を示す図である。
【図3】VLF波が伝播する様子を示す図である。
【図4】オメガ発信基地の位置を示す図である。
【図5】対馬オメガ局と観測点(犬吠)とを示す図である。
【図6】犬吠でのVLFデータを示す図である。
【図7】地震予知システムの構成図である。
【図8】クライアントPCとサーバPCのハードウェア構成を示す図である。
【図9】位相と振幅を測定する原理を示す図である。
【図10】地震予知システムのソフトウェア構成を示す図である。
【図11】ターミネータ・タイムの時系列変化を示す図である。
【図12】ターミネータ・タイム法の処理を示すフローチャートである。
【図13】振幅と、振幅の平均の時系列変化を示す図である。
【図14】夜間ゆらぎ量の時系列データを示す図である。
【図15】ゆらぎ量の時系列変化とマグニチュードを示す図である。
【図16】ゆらぎ量を用いた方法の処理を示すフローチャートである。
【図17】ゆらぎ量と地震発生との相互相関関係を時系列で示した図である。
【図18】現在のVLF/LF観測点を示す図である(その1)。
【図19】現在のVLF/LF観測点を示す図である(その2)。
【図20】新潟中越地震で用いたパスを示す図である。
【図21】紀伊半島南東沖地震と新潟中越地震の規模を示す図である。
【図22】ターミネータ・タイムの時系列変化をプロットした図である。
【符号の説明】
【0026】
10 地球
11 下部電離層
12 震源
13 擾乱域
20 送信点
21 受信点
30 垂直アンテナ
31 GPSアンテナ
32 前置増幅部
33 サービスユニット
34 オシレータ部
35 乗算部
35a、35b 乗算器
36 ローパスフィルタ部
36a、36b ローパスフィルタ
37 A/D変換部
38 クライアントPC
39 サーバPC
40 電話回線
41 データ伝送線
43 増幅部
44 90°移相器
47 測定器
60 VLF/LF送信局
61 電離層プラズマ
62 観測点
63 大地
120 演算処理装置
121 インタフェース装置
122 入力装置
123 表示装置
124 ドライブ装置
125 記録媒体
126 補助記憶装置
127 メモリ装置
201 位相差取得部
202 最小位相差取得部
203 振幅取得部
204 最小振幅取得部
205 時刻取得部
206 差分取得部
207 統計処理部
208 異常判断部
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本実施の形態では、一定周波数、一定振幅の長波電波の発信局と受信局とによって、両局を結ぶ監視線を設定する。VLF/LF信号は、図3に示されるように、大出力のVLF/LF送信局60から送信され、電離層プラズマ61と大地31との間の導波管の内を伝播し、観測点62で受信される。
【0028】
受信局は比較的小規模の機器で構成でき消費電力も小さいが、これに比して発信局は大規模設備であり消費電力も大きい。
【0029】
そこで本実施の形態は電波航法援助システムとして既に設置されているオメガシステムの発信基地から送信される電波を利用する。上記のオメガ発信基地は図4に示されるように全世界の各地に配置され、10.2kHz,11.3kHz,12.05kHz,または13.6kHzの一定周波数・一定振幅の長波電波を放射しているから、受信局を設置すれば比較的容易かつ安価に、本発明に係る監視網を構成することができる。
【0030】
なお、図4には数年前に停波したオメガ発信基地を全部記載してあるが、オメガシステムの受信基地は多数有るので、本実施の形態に関連する受信基地のみを記載した。
【0031】
次に、世界で最も顕著な地震に伴う電離層プラズマ擾乱によるVLF伝播異常を紹介する。図5は、対馬オメガ局と観測点(犬吠)とを示す図である。対馬オメガ局と犬吠とを結ぶ大円の近傍に神戸地震(マグニチュード7.2、深さ20km)が1995年1月17日に発生した。犬吠でのVLFデータ(振幅も位相も同様の結果)を図6に示す。
【0032】
図6に示されるグラフは、横軸が時刻を示し、左の縦軸が日付を示し、右の縦軸が位相差を示している。日出と日没時付近において位相差が最小となる時刻をターミネータ・タイムというが、図6中に示されているtmは、日出付近のターミネータ・タイムであり、teは、日没付近のターミネータ・タイムである。
【0033】
この図において、tm、teにおける位相差が、影を受けた部分のようになって、通常とは異なる時間、異なる位相差を示し、異常が示されていることがわかる。この異常は、地震の数日前から地震日までとなっている。そして、このときのtm、teと、所定の期間のtm、teを統計値としたときの平均値との差分の絶対値は、標準偏差(以下、σと表現することがある)の2倍を超えている。
【0034】
その後、多くの事例に対する発明者らの解析から、ターミネータ・タイムの変動に対して同じ基準(2σ)を用いて、マグニチュードが大きく(6.0以上)、浅い(深さ50km)、しかも送信局と観測点とを結ぶ大円の近くに発生する地震に対しては、約80%の確率にて電離層擾乱が発生し、VLF伝播異常が発生することがわかった。更にVLF伝播異常の数日前から約1週間程度の時間遅れがあることもわかっている。
【0035】
そこで本実施の形態では、受信波形から宇宙由来のノイズと、気象由来のノイズとを選別除去する。ここ何年かの研究により宇宙由来のノイズと気象由来のノイズの諸特性(特に継続時間)が良く知られているので、濾波回路にて除去することができる。
【0036】
従来のVLF受信器は、単一の周波数をターゲットとして受信するシステムであった。即ち、ある特定の周波数を送信する局電波は、その周波数に同調した受信器にて受信し、別の周波数を送信する局電波は別の受信器が受信する必要があった。そこで本地震予知システムでは、垂直アンテナにて広帯域(10kHz~50kHz)にて受信し、前置増幅器を通し、サービスユニットへ導入される。
【0037】
この地震予知システムの構成図を図7に示す。図7には、垂直アンテナ30と、GPSアンテナ31と、前置増幅器32と、サービスユニット部33と、クライアントPC38と、サーバPC39と、電話回線40と、データ伝送線41とが示されている。
【0038】
このうち、GPSアンテナ31は、位相測定のための時刻標準としてGPS信号を受信するためのものである。クライアントPC38は、サーバPC39に送信するデータを作成するとともに、そのデータを処理するPCである。サーバPC39は、各観測点で観測したデータを解析するPCである。
【0039】
また、サービスユニット33は、オシレータ部34と、乗算部35と、ローパスフィルタ部36と、A/D変換部37とを含む。オシレータ34は、受信したGPS信号に基づき、オメガ発信基地の周波数と同じ周波数の信号を発生する。乗算部35は、オシレータ34が発生する信号と受信した信号を乗算して同期検波を行う。ローパスフィルタ部36は、同期検波した信号からノイズを除去するために用いられる。A/D変換部37は、クライアントPC38にデータをディジタル信号として送信するために、同期検波した信号をディジタル信号に変換する。
【0040】
クライアントPC38とサーバPC39のハードウェア構成図を、図8を用いて説明する。図8に示されるように、ハードウェア構成は、それぞれバスBで相互に接続されている入力装置122と、表示装置123と、ドライブ装置124と、記録媒体125と、補助記憶装置126と、メモリ装置127と、演算処理装置120と、インタフェース装置121とを含む。
【0041】
入力装置122は、キーボード及びマウスなどで構成され、コンピュータシステムに各種操作信号を入力するために用いられる。表示装置123は、コンピュータシステムを操作するのに必要な各種ウィンドウやデータ等を表示する。インタフェース装置121は、コンピュータシステムをネットワークに接続する為のインタフェースや他の機器を接続するためのインタフェースであり、例えばNIC(Network Interface Card)やモデム、USB(Universal Serial Bus)等で構成される。
【0042】
そして、上記コンピュータシステムを動作させるためのプログラムは、CD-ROM等の記録媒体125によって提供されるか、ネットワークを通じてダウンロードされる。また、記録媒体125は、ドライブ装置124にセットされ、データやプログラムが記録媒体125からドライブ装置124を介して補助記憶装置126にインストールされる。
【0043】
補助記憶装置126は、データやプログラムを格納されると共に、必要なファイル等を格納する。メモリ装置127は、コンピュータシステムの起動時に補助記憶装置126からプログラムを読み出して格納する。演算処理装置120は、メモリ装置127に読み出され格納されたプログラムに従って処理を実行する。
【0044】
以上説明した地震予知システムで、位相と振幅を測定する原理を示したのが図9である。図7で説明した符号と同一の符号については説明を省略する。
【0045】
図9には、アンテナ30と、前置増幅器32と、乗算器35a、35bと、オシレータ34と、ローパスフィルタ36a、36bと、90°移相器44と、測定器47とが示されている。
【0046】
乗算器35a、35bならびに90°移相器44は、図7の乗算部35に対応する。ローパスフィルタ36a、36bは、図7のローパスフィルタ部36に対応する。測定器47は、クライアントPC38に対応する。
【0047】
この図9は、基準となるオシレータ34からの信号(同相)とアンテナで受信したVLF/LF信号とを乗算し、更に、オシレータ34からの信号の位相を90度ずらしたもの(直交)とVLF/LF信号とを乗算して、受信した信号の同相成分と直交成分を検出する。測定器47は、これらの同相成分と直交成分に基づいて、図に示すように、受信した信号の位相θと振幅Aを得る。
【0048】
次に本実施の形態における地震予知システムのソフトウェア構成について、図10を用いて説明する。図10には、位相差取得部201と、最小位相差取得部202と、振幅取得部203と、最小振幅取得部204と、時刻取得部205と、差分取得部206と、統計処理部207と、異常判断部208とが示されている。
【0049】
位相差取得部201は、上記した位相θに基づいて、VLF/LF信号の位相差を求め、その位相差を記憶する。最小位相差取得部202は、所定の時間帯に記憶した位相差の最小値を求める。振幅取得部203は、VLF/LF信号の振幅Aを求め、その振幅を記憶する。最小振幅取得部204は、所定の時間帯に記憶した振幅の最小値を求める。時刻取得部205は、位相差または振幅の最小値をとった時刻を求める。差分取得部206は、所定の期間の振幅の平均値と、ある振幅との差分をとり、その差分の2乗を求める。統計処理部207は、所定の期間の最小位相差時刻、所定の期間の最小振幅時刻、所定の期間の差分の2乗、の3つの統計値における平均値と標準偏差とを求める。異常判断部208は、所定の期間の最小位相差時刻の平均値と、取得した最小位相差時刻との差分の絶対値が標準偏差の2倍を超えるかどうか判断する。また、異常判断部208は、所定の期間の最小振幅時刻の平均値と、取得した最小振幅時刻との差分の絶対値が標準偏差の2倍を超えるかどうか判断する。さらに、異常判断部208は、取得した差分の2乗が、所定の期間の差分の2乗の平均値に標準偏差の2倍を加えた値を超えるかどうか判断する。
【0050】
以上説明した地震予知システムにより、広帯域信号の中から所望のオメガ発信基地の送信信号(例えばオーストラリアNWC局(19.8kHz)、中国北京CHI局(22.2kHz)、ハワイNPM局(21.4kHz)、)の振幅と位相を連続観測する。同様に、日本のJJY局(福島、40kHz)の信号の振幅と位相を測定するようにしてもよい。なお。位相測定のための時刻標準としてGPS信号を受信している。国内多点での観測点からデータは電話回線を通してマスターステーション(電通大)へ毎日伝送され、解析されるシステムになっている。
【0051】
各観測点で観測されるVLF/LF信号(振幅と位相)は、上述したように毎日電通大のマスターステーションへ伝送される。その一日の変化パターン(図6参照)が振幅と位相に対して得られる。本実施の形態ではVLF/LF伝播異常を検出する信号処理法として二種類を採用する。その一つは、ターミネータ・タイムを用いるターミネータ・タイム法と、もう一つは夜間ゆらぎスペクトルを用いる方法である。
【0052】
まず、ターミネータ・タイム法を用いる場合について説明する。図6のVLF信号(例えば振幅)の日変化パターンにおいてターミネータ・タイムを読み取る。ソフトウェアが自動的に読み取り、一日に一ヶ(即ち、tmとte)を得る。例えば、teの毎日のデータを用い、当該日の過去10日間のデータを用いて、teの平均値と分散(標準偏差)を計算する。
【0053】
そして、図11に示すように、平均値とteとの差の絶対値が標準偏差σの2倍を超える日をVLF/LF伝播異常と定義する。この方法によるアルゴリズムを開発し、計算機に自動的に図11を作成する手法を用いる。さらに異常が発生した時には生の元データ(日変化パターン)に立ち帰り、ターミネータ・タイムの異常を確認する。ターミネータ・タイムはtm、teともに同様の処理を行う。また、上述した説明では、位相差を用いるものであったが、振幅を用いても良い。この場合も同様に、振幅が最小となる時刻がターミネータ・タイムである。
【0054】
なお、図11に示されるグラフは、横軸が日付を示し、縦軸がその日付におけるteと平均値との差を示している。
【0055】
このターミネータ・タイム法を用いる場合の処理を、図12のフローチャートを用いて説明する。この処理は地震予知システム全体が実行する処理である。ステップS101で、VLF/LF信号を受信する。ステップS102で位相差(又は振幅)を求め、記憶する。ステップS103で、所定の時間が経過したかどうか判断する。ステップS104で所定の時間内に記憶した位相差(又は振幅)の最小値を求める。ステップS105で、最小値をとった時刻を求め、それをターミネータ・タイムTとする。ステップS106で、所定の期間におけるターミネータ・タイムの平均値と標準偏差σを求める。ステップS107で、平均値とTの差の絶対値が2σを超えているか判断する。超えている場合、ステップS108で異常ありと判断し、地震発生を予知する。超えていない場合は、異常なしと判断する。
【0056】
地震発生の予知は、例えばサーバPCの画面に表示するなどして、観測者に通知するようにする。
【0057】
次に、夜間ゆらぎスペクトルを用いる方法について説明する。この信号処理法は、図6のような日変化パターンにおいて夜間の時刻(地方時21時から3時まで)の変動に注目するものである。観測された日変化パターンに対して次式の操作を行う。
【0058】
【数1】
JP0004867016B2_000002t.gif但し、kは当該日を示し、Nは平均値を取る日数で、通常はN=10日とする。また、A(t)はある日の振幅の日変化パターンを示し、<A(t)>は前N日間の平均日変化パターンを示し、dA(t)はその差分を示している。
【0059】
図13に示されるグラフは、<A(t)>とdA(t)の理解を助けるための説明用のグラフであって、<A(t)>とdA(t)を1時間毎にプロットしたグラフであり、縦軸が振幅を示し、横軸が時刻を示している。<A(t)>は、平均(例えば、10時間の移動平均)である。したがって、グラフでプロットされている<A(t)>の各点は、現時点における値を含む、その10時間前からの平均を示している。またdA(t)は、各時点における移動平均との差を示している。
【0060】
これらのプロセスも計算機でのアルゴリズムが開発されており、毎日dA(t)を計算し、21時から3時までの時間のdA(t)の2乗を毎日計算し、一日のデータとする。すると、ターミネータ・タイムと同様の時系列データが得られる。平均と分散(標準偏差)の作成はターミネータ・タイムのときと同じ方法を用いる。ゆらぎ量が平均値+2σを超えた時を異常とする。地震の前兆と考えられる。ゆらぎ量と地震の相関関係には発明者らの最新の論文である非特許文献1を参照されたい。
【0061】
図14は、夜間ゆらぎ量の時系列データを示すグラフである。このグラフは、縦軸がゆらぎ量を示し、横軸が日付を示している。このグラフにおいて、平均値+2σを超えたものを異常と判断する。
【0062】
次に図15のグラフについて説明する。このグラフは、ゆらぎ量の変化とマグニチュードを示すもので、横軸が日付を示し、左の縦軸がゆらぎ量を示し、右の縦軸がマグニチュードを示す。太線は平均値+2σを示し、細線はゆらぎ量を示し、棒線がマグニチュードを示している。このマグニチュードは、送信局と観測点とを結ぶパスの近傍で発生した地震のマグニチュードである(非特許文献1参照)。この図に示されるように、地震の前にはゆらぎの異常が出ていることがわかる。
【0063】
このゆらぎ量を用いた処理を、図16のフローチャートを用いて説明する。ステップS201で、時刻tにおける振幅Aを求め、記憶される。ステップS202で、所定の期間におけるtでの振幅の平均値と振幅Aの差をとり、その差分をdAとし、その差分dAの2乗を求める。ステップS203で、所定の期間におけるtでの差分dA2乗の平均値と標準偏差σを求める。ステップS204で、差分dA2乗が、平均値+2σを超えているかが判断される。超えている場合、ステップS205で異常ありと判断され、地震発生が予知される。超えていない場合は、異常なしと判断される。
【0064】
地震発生の予知は、例えばサーバPCの画面に表示するなどして、観測者に通知するようにする。
【0065】
次に、地震予知の確度の上昇について説明する。上述したターミネータ・タイムとゆらぎ量との併用により、異常の確度は高めることができる。即ちターミネータ・タイムの異常があり、更にゆらぎ量にも異常が発生している時には、地震前兆としての確率は著しく上昇する。従って、両者を用いることで地震予知の確度を上昇することができる。
【0066】
では次に、いつ地震が発生するかという地震の発生時期について説明する。VLF/LF伝播異常と地震との時間遅れに関しては、図15からもわかる。しかし、より定量的にするため、相互相関関係を用いる。図17はゆらぎ量と地震発生との相互相関関係を時系列にて示したものであり、縦軸が相関係数を示し、横軸が地震発生日を0日とした日付を示している。地震の数日前に相互相関のピークが出現しており、伝播異常の数日後に地震が発生することになる。ターミネータ・タイムの異常ともほぼ同様の時間遅れがある。この時間遅れは、数日から1週間程度である(非特許文献1参照)。
【0067】
次に、地震が発生する場所の決定について説明する。先ず、以上よりVLF/LF伝播異常が検出された時には、いつ発生するかは予知できるが、どこで発生するかに関しては、これまでの解析では、送信局と観測点を結ぶ大円近傍(もう少し定量的に言うと、例えば第5フレネル帯)で発生することが予測される。そこで本実施の形態で用いる手法は多観測点での多送信局受信に基づく手法である。即ち、送信局と観測点とを結ぶ大円の廻りの第5フレネル帯の重なり合いを利用する方法である。
【0068】
現在のVLF/LF観測点を図18、19を用いて説明する。図18は、国内7観測点となるVLF送信局の受信施設を示している。図中の線は観測点とVLF送信局を結ぶ大円を示している。
【0069】
また、図19は、福島県東部の40kHz標準電波(JJY)の送信施設とその観測点を示している。
【0070】
このように、現在VLF/LF観測点は、北から母子里(北海道)、調布、千葉館山、清水、春日井(名古屋)、舞鶴、高知の7地点で、各観測点ではCHI局(中国)、NWC局(オーストラリア)、NPM局(ハワイ)、JJY局(福島)の送信局電波を受信している。
【0071】
図18及び図19において、点線のパス上の地点に地震が発生した場合、点線のパス上の測定点で、受信の異常を検出することになる。
【0072】
したがって、いろいろなパスでの異常の出現状況から、異常を引き起こす電離層擾乱の場所、即ち将来の地震発生位置を決定することができる。このような発明者らのVLF/LFネットワークでは国内の地震に対しては、約100kmの精度がある。
【0073】
また、このVLF/LFネットワークによる将来の地震位置予報法は、本地震予知システムにて初めて提案されたものである。
【0074】
以上説明した地震予知システムと送信局ならびに観測点による新潟中越地震に対する結果を示す。まず、このとき用いたパスを図20に示す。図20は、観測点と送信局とのパスを示すものである。この図において、実線は第5フレネル帯を示し、このフレネル帯に含まれる位置を震源とする地震には反応すると考えられる。
【0075】
図20に示されるように、母子里(HOK)はCHI局(中国)を受信し、調布(CHO)、千葉館山(CBA)でもCHI局を受信し、高知(KOC)もCHI局を受信している。更に、JJY局を高知にて受信するパスを用いる。
【0076】
2004年後半には図21に示される表の様に、二つの大きな地震が発生した。即ち、紀伊半島南東沖地震と新潟中越地震である。ともにマグニチュード6.0を超える地震であるが、前者は海の中という点が、後者と大きく異なる点である。従来の発明者らの研究で、陸上での浅い地震に対しては、電離層は極めて敏感であることがわかってきている。
【0077】
図22は、上述したすべてのパスに対するターミネータ・タイム(tm)の変化をプロットしたものである。このグラフは、横軸が日付を示し、左の縦軸がteを示し、右の縦軸は、マグニチュードを示す。なお、左の縦軸は、プロットされた点に対してはteを示しているが、棒グラフの場合は平均とteの差分を示している。
【0078】
また、左の縦軸に記載されているXXX-YYYは、XXXとYYY間のパスにおけるグラフであることを示している。例えばCHI-HOKは、CHI局と母子里とのパスである。従って、図22には、上のグラフからCHI局と母子里、CHI局と調布、CHI局と千葉館山、CHI局と高知、JJY局と高知のパスに対応するグラフが描かれている。
【0079】
また、図22の一番下のグラフは、太陽電波フラックスで太陽活動を示し、また地磁気活動指標を示しており、地球周辺での地磁気の荒れ具合を表すものである。このグラフにおいて、実線は太陽電波フラックスを示し、棒線表示は地磁気活動指標(Ap)を示している。そして、右の縦軸は太陽電波フラックスに対応し、左の縦軸は棒線表示は地磁気活動指標に対応し、単位はそれぞれナノテラス、フラックスである。
【0080】
新潟中越地震の前には、CHO、CBA観測点でのCHI局に伝播異常が明瞭に出ている。新潟中越地震両パスのすぐ近傍であるためである。北海道母子里-CHIパスには何の変化もない。伝播異常は地磁気活動が低い時に発生しており、地震との関係を示唆している。
【0081】
このように、本実施の形態による地震予知システムは、パスの近傍で発生した地震による伝播異常を正確に把握しており、このようにすることで、地震発生を予知することができる。
【0082】
本件国際出願は、2005年3月29日に出願した日本国特許出願2005-95137号に基づく優先権を主張するものであり、特許出願2005-95137号の全内容を本国際出願に援用する。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14
【図16】
15
【図17】
16
【図18】
17
【図19】
18
【図20】
19
【図21】
20
【図22】
21