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明細書 :レーザー誘起衝撃波を利用した分子の分析方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5320593号 (P5320593)
公開番号 特開2010-236911 (P2010-236911A)
登録日 平成25年7月26日(2013.7.26)
発行日 平成25年10月23日(2013.10.23)
公開日 平成22年10月21日(2010.10.21)
発明の名称または考案の名称 レーザー誘起衝撃波を利用した分子の分析方法
国際特許分類 G01N  15/02        (2006.01)
G01N  21/64        (2006.01)
G01N  21/65        (2006.01)
G01N  21/47        (2006.01)
G01N  21/59        (2006.01)
FI G01N 15/02 F
G01N 21/64 F
G01N 21/65
G01N 21/47 Z
G01N 21/59 Z
G01N 15/02 A
請求項の数または発明の数 6
全頁数 20
出願番号 特願2009-082602 (P2009-082602)
出願日 平成21年3月30日(2009.3.30)
審査請求日 平成24年3月23日(2012.3.23)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504255685
【氏名又は名称】国立大学法人京都工芸繊維大学
発明者または考案者 【氏名】一ノ瀬 暢之
【氏名】永原 哲彦
個別代理人の代理人 【識別番号】100091409、【弁理士】、【氏名又は名称】伊藤 英彦
【識別番号】100096792、【弁理士】、【氏名又は名称】森下 八郎
【識別番号】100091395、【弁理士】、【氏名又は名称】吉田 博由
審査官 【審査官】島田 英昭
参考文献・文献 国際公開第2007/129667(WO,A1)
特開2003-210159(JP,A)
特開2003-344260(JP,A)
特開2005-144538(JP,A)
特開2005-335020(JP,A)
特開2005-287419(JP,A)
特開2005-168495(JP,A)
調査した分野 G01N15/00-15/14
G01N21/00-21/01
G01N21/17-21/83
特許請求の範囲 【請求項1】
測定対象となる被測定分子を含む試料を、加熱により溶解する熱可溶性ゲルの表面または内部に担持させる担持工程と、
前記試料を担持させた熱可溶性ゲルを、溶媒を満たしたキャピラリー中に導入する導入工程と、
前記キャピラリー中に挿入された熱可溶性ゲルを加熱により溶解させる溶解工程と、
前記溶解工程の後、前記溶解した熱可溶性ゲル部分にパルスレーザーを照射して、レーザー誘起衝撃波を発生させる工程と、
前記レーザー誘起衝撃波により発生させた衝撃波により前記溶媒中を移動した前記被測定分子を観測する観測工程と、
前記観測工程により観測した前記被測定分子の移動を基に分子を分析する分析工程とを含む、レーザー誘起衝撃波を利用した分子の分析方法。
【請求項2】
前記分析工程は、前記被測定分子の分子量分布または前記被測定分子の粒径分布を計測する工程を含む、請求項1に記載のレーザー誘起衝撃波を利用した分子の分析方法。
【請求項3】
前記加熱工程は、電熱線による加熱またはCWレーザーによる加熱を含む、請求項1または2に記載のレーザー誘起衝撃波を利用した分子の分析方法。
【請求項4】
前記熱可溶性ゲルは、ゼラチン、寒天、アガロース、合成高分子、および低分子ゲルからなる群のうちのいずれかである、請求項1~3のいずれかに記載のレーザー誘起衝撃波を利用した分子の分析方法。
【請求項5】
前記観測工程は、前記被測定分子の光散乱、ラマン散乱、光吸収のいずれかを観測することにより行なう、請求項1~4のいずれかに記載のレーザー誘起衝撃波を利用した分子の分析方法。
【請求項6】
前記導入工程の前に、前記被測定分子の蛍光ラベル化を行なう工程を含み、
前記観測工程は、蛍光ラベル化された前記被測定分子の観測を行なう、請求項1~5のいずれかに記載のレーザー誘起衝撃波を利用した分子の分析方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
この発明は、レーザー誘起衝撃波を利用した分子の分析方法に関するものであり、特に、マイクロメーターオーダー以下のサイズの分子に対してのレーザー誘起衝撃波を利用した分子の分析方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
微小物体の取り扱い操作、加工は、ナノテクノロジーやバイオテクノロジーに関連して近年特に注目されている分野である。顕微鏡下においてマイクロメーターオーダーの物体をレーザー光により操作することは、レーザーピンセットにより非接触で行うことができ、また、加工については、レーザーアブレーションやレーザーによる重合反応により造形を行うことができる。さらに、微小物体に対して他の物体を接合することや他の物質を注入することは、これら技術の組み合わせのみでは不十分である。レーザー光を顕微鏡の対物レンズにより液体中に集光して発生する衝撃波(レーザー誘起衝撃波)は、物体に強い加速度を与えることができるため、大きな力を必要とする作業を行うための動力として有効と考えられる。
【0003】
ここで、上記に関連した技術が、特開2003-210159号公報(特許文献1)、特開2003-344260号公報(特許文献2)、特開2005-144538号公報(特許文献3)、特開2005-335020号公報(特許文献4)、特開2005-287419号公報(特許文献5)、特開2005-168495号公報(特許文献6)、Appl.Phys.Lett.,84,2940(2004)(非特許文献1)、Appl.Phys.A,79,795(2004)(非特許文献2)に開示されている。
【0004】
均一溶液中の分子を加速し、濃度差を与える方法として電気泳動法や誘電泳動法があるが、電気泳動法では電荷をもつイオンのみしか移動させることができない。これらの泳動法では、移動速度が小さいため、分析等の時間がかかる問題がある。また、吸着や浸透、あるいは分配平衡を用いたクロマトグラフィーは、物質を移動させながら濃度差を与える方法であり、混合物の分離・分析方法として広く用いられている。しかし、この場合には、望ましくない吸着が充填剤の表面で起こるため、分解能を下げる原因となる。一方、超遠心分離法は、高分子量の分子に対して適用され、分子量測定や分離に用いられている。しかし、後者のいずれの方法も原理的に物質の拡散、移動を含むため、高い分離能と高速化あるいは小型化を両立することは困難である。
【0005】
すなわち、従来における電気泳動法や誘電泳動法では、その対象が電荷を持つイオンに限られ、移動速度が小さいことが問題である。また、従来におけるクロマトグラフィーや超遠心分離法では、高い分離能と高速化あるいは小型化を両立することは困難である。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特開2003-210159号公報
【特許文献2】特開2003-344260号公報
【特許文献3】特開2005-144538号公報
【特許文献4】特開2005-335020号公報
【特許文献5】特開2005-287419号公報
【特許文献6】特開2005-168495号公報
【0007】

【非特許文献1】Appl.Phys.Lett.,84,2940(2004)
【非特許文献2】Appl.Phys.A,79,795(2004)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここで、特許文献6に示すように、レーザーによる誘起衝撃波を利用した粒子の検出を行なう際の原理について、簡単に説明する。図28および図29は、この場合におけるレーザー誘起衝撃波を利用した粒子の状態を示す図である。図28は、レーザーによる誘起衝撃波発生直後の状態を示し、図29は、レーザーによる誘起衝撃波発生後所定の時間を経過した状態を示す。ここで、所定の時間とは、数百ナノ秒レベル~数マイクロ秒レベルであり、粒子の粒径については、数nmレベルである。図28を参照して、異なる粒径の粒子102、103を含む溶媒101中の所定の位置104に集光するようにパルスレーザーを照射する。そうすると、パルスレーザーが集光する位置104を基点として衝撃波105が発生する。この衝撃波105は、溶媒101中を図28中の矢印で示す方向に伝播する。ここで、溶媒101中の粒子102、103については、粒径に応じて溶媒101中を移動する移動距離が異なるため、図29に示すように、矢印で示す方向において溶媒101中に粒子102、103の粒径に応じた分布が形成される。具体的には、粒径の大きな粒子102が、粒径の小さな粒子103よりも集光位置104から遠い位置に移動した分布が形成される。なお、この詳細な原理については、特許文献6に記載されている。
【0009】
このような原理を用い、顕微鏡等を用いて液体内にパルスレーザーを集光して発生させた衝撃波により、粒子の加速、移動を行なうことを利用したクロマトグラフィーにおいては、マイクロメーターオーダーの流路、すなわち、粒子を移動させるための展開用流路へ、異なる粒径を有する粒子を含む試料を導入し、衝撃波発生点より試料展開方向に微小スポットを形成させる必要がある。
【0010】
しかし、流路を用いて液体媒体の流れにより試料を移動させると、その間における分子、粒子の拡散や流れの乱れによりスポットの大きさは空間的に広がっていくことが予想される。そうすると、拡散によって、移動させたい方向やその逆の方向に分子が移動し、分子を分離したい方向に分子が滲んでしまうことになり、クロマトグラムとしての分解能が低下することとなる。流路中に分子を注入して衝撃波発生点まで流れで移動させる場合でも拡散が起こるため、小さな体積中に分析した分子を注入しても、衝撃波発生点に至るまでにその空間分布は広くなってしまう。
【0011】
この発明の目的は、容易に、かつ、適切に行なうことができるレーザー誘起衝撃波を利用した分子の分析方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明においてクロマトグラフィーにより分析される試料は、レーザー誘起衝撃波の発生点付近に導入されなければならない。また、レーザー光は、展開用流路中で試料となる分子より展開方向とは逆の位置に照射される。
【0013】
本発明では、まず、試料の前処理として加熱により溶解するゲル、すなわち、熱可溶性ゲルの表面または内部に測定対象となる被測定分子を含む試料溶液あるいは分散液を滴下等により導入し、溶媒のゲル中への浸透あるいは蒸発により試料をゲル表面近傍に担持、固定する。そして、展開用流路として溶媒を満たしたキャピラリーに試料を担持させたゲルを挿入することにより展開用流路への試料導入を行なうものである。そして、熱可溶性ゲルに担持した試料をゲルと共に加熱することにより、試料を溶媒中に遊離させ、遊離させた試料が拡散する前にレーザーを利用した衝撃波を発生させ、試料をキャピラリー中に展開して、分析を行なうものである。
【0014】
すなわち、この発明に係るレーザー誘起衝撃波を利用した分子の分析方法は、測定対象となる被測定分子を含む試料を、加熱により溶解する熱可溶性ゲルの表面または内部に担持させる担持工程と、試料を担持させた熱可溶性ゲルを、溶媒を満たしたキャピラリー中に導入する導入工程と、キャピラリー中に挿入された熱可溶性ゲルを加熱により溶解させる溶解工程と、溶解工程の後、溶解した熱可溶性ゲル部分にパルスレーザーを照射して、レーザー誘起衝撃波を発生させる工程と、レーザー誘起衝撃波により発生させた衝撃波により溶媒中を移動した被測定分子を観測する観測工程と、観測工程により観測した被測定分子の移動を基に分子を分析する分析工程とを含む。

【0015】
このようなレーザー誘起衝撃波を利用した分子の分析方法によると、熱可溶性ゲルの表面または内部に被測定分子を含む試料を担持させるため、溶媒内において、分子を拡散させずに所定の位置に導入することができる。そして、レーザーによる誘起衝撃波を発生させる直前に熱可溶性ゲルを溶解させて、レーザー誘起衝撃波による分子の移動を行なわせることができる。そうすると、レーザー誘起衝撃波を発生させる前の分子の拡散等の影響を受けずに、レーザー誘起衝撃波により分子を移動させて、分子の分析を行なうことができる。この場合、上記した従来の吸着法において用いられる充填剤を用いないため、上記したような望ましくない吸着、すなわち、充填剤の表面での吸着が起こり得ず、高い分解能を達成することができる。したがって、容易に、かつ、適切に分子の分析を行うことができる。
【0016】
また、分析工程は、被測定分子の分子量分布または被測定分子の粒径分布を計測する工程を含む。特に、上記した分子の分析方法によると、分子の分子量分布や粒径分布を適切に計測することができる。
【0017】
さらに好ましくは、加熱工程は、電熱線による加熱またはCW(Continuous Wave)レーザーによる加熱を含む。このような加熱によると、試料を担持した熱可溶性ゲルを効率的に加熱溶解させることができる。
【0018】
さらに好ましい一実施形態として、熱可溶性ゲルは、ゼラチン、寒天、アガロース、合成高分子、および低分子ゲルからなる群のうちのいずれかである。このような熱可溶性ゲルは、安価であり、かつ、取扱い性が良好である。
【0019】
さらに好ましくは、観測工程は、被測定分子の光散乱、ラマン散乱、光吸収のいずれかを観測することにより行なう。このような観測により、より正確に分析を行なうことができる。
【0020】
また、導入工程の前に、被測定分子の蛍光ラベル化を行なう工程を含み、観測工程は、蛍光ラベル化された被測定分子の観測を行なうようにしてもよい。
【発明の効果】
【0021】
このようなレーザー誘起衝撃波を利用した分子の分析方法によると、熱可溶性ゲルの表面または内部に被測定分子を含む試料を担持させるため、溶媒内において、分子を拡散させずに所定の位置に導入することができる。そして、レーザーによる誘起衝撃波を発生させる直前に熱可溶性ゲルを溶解させて、レーザー誘起衝撃波による分子の移動を行なわせることができる。そうすると、レーザー誘起衝撃波を発生させる前の分子の拡散等の影響を受けずに、レーザー誘起衝撃波により分子を移動させて、分子の分析を行なうことができる。この場合、上記した従来の吸着法において用いられる充填剤を用いないため、上記したような望ましくない吸着、すなわち、充填剤の表面での吸着が起こり得ず、高い分解能を達成することができる。したがって、容易に、かつ、適切に分子の分析を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】この発明の一実施形態に係るレーザー誘起衝撃波を利用した分子の分析方法で使用する測定装置の一部を示す概略図である。
【図2】被測定分子を含む試料をキャピラリーに導入する場合における代表的な工程を示すフローチャートである。
【図3】試料が担持された薄膜状のゲルを示す概略図である。
【図4】試料が担持されたゲル薄膜にキャピラリーを突き刺す前の状態を示す図である。
【図5】試料が担持されたゲル薄膜にキャピラリーを突き刺した後の状態を示す図である。
【図6】溶媒を満たしたキャピラリーの内部に試料を担持したゲルを導入した状態を示す図である。
【図7】その一部に電熱線を取り付けたキャピラリーを示す図である。
【図8】この発明の一実施形態に係るレーザー誘起衝撃波を利用した分子の分子量を測定する方法の代表的な工程を示すフローチャートである。
【図9】FITCラベル化した魚ゼラチンのレーザー誘起衝撃波による展開前の蛍光像を示す画像である。
【図10】FITCラベル化した魚ゼラチンのレーザー誘起衝撃波による展開後の蛍光像を示す画像である。
【図11】FITCラベル化した魚ゼラチンのレーザー誘起衝撃波による展開前後の蛍光強度差を示す画像である。
【図12】図11に示す蛍光強度差の画像を積分して得られたクロマトグラムを示す図である。
【図13】FITCラベル化した牛骨ゼラチンのレーザー誘起衝撃波による展開前の蛍光像を示す画像である。
【図14】FITCラベル化した牛骨ゼラチンのレーザー誘起衝撃波による展開後の蛍光像を示す画像である。
【図15】FITCラベル化した牛骨ゼラチンのレーザー誘起衝撃波による展開前後の蛍光強度差を示す画像である。
【図16】図15に示す蛍光強度差の画像を積分して得られたクロマトグラムを示す図である。
【図17】魚ゼラチンおよび牛骨ゼラチンのGPCチャートを示すグラフである。
【図18】Qdot655のレーザー誘起衝撃波による展開前の蛍光像を示す画像である。
【図19】Qdot655のレーザー誘起衝撃波による展開後の蛍光像を示す画像である。
【図20】Qdot655のレーザー誘起衝撃波による展開前後の蛍光強度差を示す画像である。
【図21】Qdot565のレーザー誘起衝撃波による展開前の蛍光像を示す画像である。
【図22】Qdot565のレーザー誘起衝撃波による展開後の蛍光像を示す画像である。
【図23】Qdot565のレーザー誘起衝撃波による展開前後の蛍光強度差を示す画像である。
【図24】Qdot565およびQdot655の混合試料(1:5)のレーザー誘起衝撃波による展開前の蛍光像を示す画像である。
【図25】Qdot565およびQdot655の混合試料(1:5)のレーザー誘起衝撃波による展開後の蛍光像を示す画像である。
【図26】Qdot565およびQdot655の混合試料(1:5)のレーザー誘起衝撃波による展開前後の蛍光強度差を示す画像である。
【図27】図26に示す蛍光強度差の画像を積分して得られたクロマトグラムを示す図である。
【図28】レーザーを利用した誘起衝撃波により粒子を移動させる前の状態を示す図である。
【図29】レーザーを利用した誘起衝撃波により粒子を移動させた後の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、この発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。図1は、この発明の一実施形態に係るレーザー誘起衝撃波を利用した分子の分析方法に用いられる測定装置の一部を示す概略図である。図1を参照して、レーザー誘起衝撃波を利用した分子の分析方法に用いられる測定装置の構成について、簡単に説明する。なお、ここでは、分子の分子量分布を測定する場合について説明する。

【0024】
この発明の一実施形態に係るレーザー誘起衝撃波を利用した分子の分子量分布を測定する方法に用いられる測定装置11は、衝撃波発生用のYAG(Yttrium Aluminium Garnet)レーザー12と、パルスを発生させるパルスジェネレータ13と、パルスジェネレータ13を介してYAGレーザー12の動作を制御するコンピュータ14aと、後述する被測定分子を含む試料の取付けおよび観測を行なう顕微鏡15と、試料観測用のCCD(Charge Coupled Device)カメラ16と、CCDカメラ16により撮影した画像のデータを取り込んで、取り込んだ画像データを基にクロマトグラムを作成するコンピュータ14bとを備える。YAGレーザー12は、1064nmパルスレーザーである。YAGレーザー12により発せられるレーザー光は、顕微鏡15に含まれる後述の対物レンズにより所定の位置に集光される。

【0025】
顕微鏡15には、顕微鏡15の外部に配置されたLED(Light Emitting Diode)17からの光を顕微鏡15内の所定の位置に導く光路18が設けられている。光路18は、ミラーユニット19によって、顕微鏡15に含まれるステージ21までの方向を制御される。また、光路18内に導かれる光のうちの赤外領域の光を吸収する赤外吸収フィルター20も、光路18内に設けられている。顕微鏡15は、後述するキャピラリーを取り付けたサンプル31を固定するステージ21を含む。顕微鏡15には、ステージ21の上部側と下部側に2つの対物レンズ22a、22bが設けられている。ステージ21の上部側に配置される第一の対物レンズ22aは、CCDカメラ16による計測用の対物レンズであり、被測定分子を含む試料を撮影するために用いられる。第一の対物レンズ22aを介して、CCDカメラ16により分子が観測され、CCDカメラ16により撮影された画像がコンピュータ14bに取り込まれる。ステージ21の下部側に配置される第二の対物レンズ22bは、YAGレーザー12によるレーザー光を集光させるために用いられる。すなわち、キャピラリー内部の所定の集光位置を基点としたレーザーによる衝撃波を発生させるために用いられる。第二の対物レンズ22bへのレーザー光の導入は、ミラー23およびスペシャルフィルター24を介して行なわれる。

【0026】
次に、被測定分子を含む試料を顕微鏡15に取り付ける場合について説明する。被測定分子を含む試料は、キャピラリーの内部に導入された後に顕微鏡15に設けられたステージ21に取り付けられる。図2は、被測定分子を含む試料をキャピラリーに導入する場合における代表的な工程を示すフローチャートである。図3、図4、図5および図6は、この場合における試料の導入工程の一部を示す概略図である。

【0027】
図2を参照して、まず、薄膜状とした熱可溶性ゲルを準備する(図2(A))。この場合の熱可溶性ゲルとして、ゼラチン、寒天、アガロース、合成高分子、および低分子ゲルのうちのいずれかを用いる。ここで、測定対象の分子との相互作用を回避するためには、低分子ゲルを用いることが好ましい。以下、熱可溶性ゲルを単にゲルという。

【0028】
次に、この薄膜状のゲルの表面に被測定分子を含む試料溶液を滴下等して配置させる(図2(B))。その後、試料溶液の溶媒は、蒸発あるいはゲル中に浸透する。このようにして、ゲル表面層に被測定対象となる分子を含む試料が担持された薄膜状のゲルを作成する(図2(C))。この状態の概略図を図3に示す。図3を参照して、薄膜状のゲル32の上部側の表面に被測定分子を含む試料33が担持されている。

【0029】
次に、図4を参照して、その内部に水などの溶媒34を満たしたキャピラリー35を準備する。キャピラリー35は、柱状であって、その内部に空洞を有する。すなわち、キャピラリー35は、筒状である。また、キャピラリー35の少なくとも一方端部36側は、開口している。キャピラリー35は、透明であって、キャピラリー35を構成する壁部37を介して、その内部を外部側から視認することができる。すなわち、キャピラリー35の内部に充填された溶媒34等を、その外部から壁部37を介して見ることができる。キャピラリー35の材質は、ガラスや高分子樹脂材料が用いられる。キャピラリー35の内部には、測定する分子に応じた溶媒34が充填されている。

【0030】
その後、溶媒34を充填したキャピラリー35の内部に、ゲル32によって担持された試料33を導入する。具体的には、試料33を担持させたゲル32の上部側から、開口したキャピラリー35の一方端部36を突き刺す(図2(D)、図5)。このようにして、キャピラリー35の内部にゲル32に担持された試料33を導入する(図2(E)、図6)。この場合、導入された試料33は、キャピラリー35の一方端部36側の近傍に配置されることになる。また、キャピラリー35の他方端部(図示せず)からは余剰の溶媒34が排出される。

【0031】
このようにして、ゲル32に担持された試料33を導入したキャピラリー35を準備する。こうすることにより、被測定分子を含む試料33はゲル32によって担持、固定されているため、溶媒34側へ分子が拡散することはない。

【0032】
次に、準備したキャピラリー35を測定装置11に固定する。具体的には、顕微鏡15に設けられたステージ21の上部側の所定の位置に固定するようにして取り付ける。ここで、キャピラリー35は、取り付け部材38を用いて取り付けられる。取り付け部材38の構成について簡単に説明すると、図7を参照して、取り付け部材38は、薄板状であって、その一部に大きな切り欠き39を有する。切り欠き39により、取り付け部材38は、板厚方向から見た場合に、略コの字状となっている。そして、切り欠き39の中央部には、柱状のキャピラリー35を差し込むようにして取り付ける取り付け穴40が設けられている。キャピラリー35は、試料33が導入された一方端部36側と反対側の端部を取り付け穴40に突き刺すようにして取り付けられる。なお、図7の右側部分で、一方端部36の拡大図を示している。

【0033】
キャピラリー35のうち、試料33が導入された一方端部36の外周領域には、電熱線41が巻かれている。端部36は、電熱線41への通電により加熱可能となっている。電熱線41については、上記した2つの対物レンズ22a、22bにおけるレーザー光の集光およびCCDカメラ16による撮影を阻害する位置を避けて巻かれている。

【0034】
次に、この発明の一実施形態に係るレーザー誘起衝撃波を利用した分子の分子量分布の測定方法について説明する。図8は、この場合における分子量分布の測定法方の代表的な工程を示すフローチャートである。図1~図8を参照して、まず、上記したように試料33を担持したゲル32を導入したキャピラリー35を取り付けたサンプル31をステージ21の所定の位置に取り付ける(図8(A))。そして、電熱線41への通電により電熱線41を加熱し、試料33を溶媒34中に溶解させる(図8(B))。

【0035】
その後、レーザーによる誘起衝撃波を発生させる(図8(C))。この場合、分子の移動方向と反対側の位置、具体的にはゲル32が配置されている位置を集光位置とする。そして、被測定分子を衝撃波により溶媒34中を移動させる。この場合、溶媒34は、分子量が小さいため衝撃波により粘性抵抗を受けて移動することはない。すなわち、被測定分子の分子量の大きさに応じて移動量が大きくなるように、分子が移動する。その後、移動させた分子の像について、第一の対物レンズ22aを介してCCDカメラ16により撮影する(図8(D))。撮影した画像を基にクロマトグラムを作成し、試料33中に含まれる被測定分子の分子量分布を測定する(図8(E))。

【0036】
すなわち、この発明に係るレーザー誘起衝撃波を利用した分子の分子量分布の測定方法は、測定対象となる被測定分子を含む試料を、加熱により溶解するゲルの表面に担持させる担持工程と、試料を担持させたゲルを、溶媒を満たしたキャピラリー中に導入する導入工程と、キャピラリー中に挿入されたゲルを加熱により溶解させる溶解工程と、溶解工程の後、溶解した熱可溶性ゲル部分にパルスレーザーを照射して、レーザー誘起衝撃波を発生させる工程と、レーザー誘起衝撃波により発生させた衝撃波により溶媒中を移動した被測定分子を観測する観測工程と、観測工程により観測した被測定分子の移動を基に分子の分子量分布を測定する工程とを含む。


【0037】
このようなレーザー誘起衝撃波を利用した分子の分子量分布の測定方法によると、ゲルの表面に被測定分子を含む試料を担持させるため、溶媒内において、分子を拡散させずにキャピラリー内の所定の位置に導入することができる。そして、レーザーによる誘起衝撃波を発生させる直前にゲルを溶解させて、レーザー誘起衝撃波による分子の移動を行なわせることができる。そうすると、レーザー誘起衝撃波を発生させる前の分子の拡散等の影響を受けずに、レーザー誘起衝撃波により分子を移動させて、分子の分子量分布の測定を行なうことができる。この場合、上記した従来の吸着法において用いられる充填剤を用いないため、上記したような望ましくない吸着、すなわち、充填剤の表面での吸着が起こり得ず、高い分解能を達成することができる。したがって、容易に、かつ、適切に分子の分子量分布の測定を行うことができる。

【0038】
この場合、透明のキャピラリーを用いているため、キャピラリーの内部を容易に外部から視認することができる。すなわち、キャピラリーの内部に導入された被測定分子を含む試料の視認が容易となる。

【0039】
また、この場合、ゲルの表面に被測定分子を含む試料を担持し、キャピラリーを突き刺すようにして被測定分子を含む試料を担持したゲルをキャピラリー内部に導入しているため、簡易な方法および構成でキャピラリー内部に試料を導入することができる。

【0040】
なお、上記構成については、分子の粒径分布を測定する場合についても適用可能である。すなわち、この発明に係るレーザー誘起衝撃波を利用した分子の粒径分布の測定方法は、測定対象となる被測定分子を含む試料を、加熱により溶解するゲルの表面に担持させる担持工程と、試料を担持させたゲルを、溶媒を満たしたキャピラリー中に導入する導入工程と、キャピラリー中に挿入されたゲルを加熱により溶解させる溶解工程と、溶解工程の後、溶解した熱可溶性ゲル部分にパルスレーザーを照射して、レーザー誘起衝撃波を発生させる工程と、レーザー誘起衝撃波により発生させた衝撃波により溶媒中を移動した被測定分子を観測する観測工程と、観測工程により観測した被測定分子の移動を基に分子の粒径分布を測定する工程とを含む。

【0041】
このようなレーザー誘起衝撃波を利用した分子の粒径分布の測定方法によると、ゲルの表面に被測定分子を含む試料を担持させるため、溶媒内において、分子を拡散させずにキャピラリー内の所定の位置に導入することができる。そして、レーザーによる誘起衝撃波を発生させる直前にゲルを溶解させて、レーザー誘起衝撃波による分子の移動を行なわせることができる。そうすると、レーザー誘起衝撃波を発生させる前の分子の拡散等の影響を受けずに、レーザー誘起衝撃波により分子を移動させて、分子の粒径分布の測定を行なうことができる。したがって、容易に、かつ、適切に分子の粒径分布の測定を行うことができる。
【実施例】
【0042】
ここで、この発明の一実施形態に係るレーザー誘起衝撃波を利用した分子の分子量分布の測定方法において、ゼラチンの分子量分布を測定する方法について説明する。まず、魚ゼラチンおよびアルカリ処理を行った牛骨ゼラチンをFITC-I(Fluorescein-4-isothiocyanate)により蛍光ラベル化し、pH10.00の緩衝溶液に加熱溶解させ、被測定分子を含む試料とした。試料を担持するゲルとしてのゼラチン溶液は、厚み約3mmでシャーレに展開し、冷却してゲル化したものを用いた。
【実施例】
【0043】
また、上記した図2~図6に示すように、緩衝溶液を満たした内径140μmのガラスキャピラリーを薄膜状のゲルに突き刺し、キャピラリーの先端部内にゲルを約500μmの長さで導入したものを作成した。キャピラリーは、図7に示すように固定し、測定直前に1.5Vの電圧をかけた電熱線により先端部を加熱し、内部のゼラチンゲルを溶解させた。
【実施例】
【0044】
再び図1を参照して、パルスNd:YAGレーザーの基本波(1064nm、半値幅6ns、60μJ)を、正立型顕微鏡の下方より20倍の対物レンズ(NA=0.46)を用いて、キャピラリー内部のゲル溶解部分(溶解したゼラチン-緩衝溶液界面から試料側におおよそ50μm)に集光、照射を行い、キャピラリー内部で衝撃波を発生させた。ここで、ゼラチン試料は、緩衝溶液側に展開する。
【実施例】
【0045】
展開したゼラチン試料は、青色LED(4W、波長450~500nm)を照明光とし、4倍の対物レンズ(NA=0.16)を集光レンズとする落射照明系によりFITCを励起し、蛍光像を観測した。観測画像を、図9、図10、および図11に示す。図9は、FITCラベル化した魚ゼラチンのレーザー誘起衝撃波による展開前の蛍光像を示す画像である。図10は、FITCラベル化した魚ゼラチンのレーザー誘起衝撃波による展開後の蛍光像を示す画像である。図11は、FITCラベル化した魚ゼラチンのレーザー誘起衝撃波による展開前後の蛍光強度差を示す画像である。このような蛍光強度差を導き出すことにより、観測時における散乱光の影響等を排除し、展開前後の蛍光強度の差をより正確に把握することができる。蛍光像は、対物レンズとリレーレンズにより顕微鏡上部に取り付けた冷却CCDカメラにより撮影された。図9等の中の縦軸および横軸で示す目盛りについて、図9以降の蛍光画像の1ピクセルは、4.17μm×4.17μmに相当する。また、図10において矢印で示す位置は、衝撃波発生点を示す。以下に示す図15、図20、図23および図26中の矢印においても同様である。
【実施例】
【0046】
撮影された蛍光画像は、レーザー照射前の強度との差を取った後、展開方向と垂直に積分され、図12に示すような展開方向に関する試料の濃度分布に対応する蛍光強度分布に変換される。
【実施例】
【0047】
牛骨由来のFITCラベル化ゼラチンを同様にpH10.00の緩衝溶液で満たした内径140μmのキャピラリーの先端に導入、加熱の後、レーザー誘起衝撃波によりキャピラリー中に展開した牛骨ゼラチンの分布をCCDカメラで蛍光観測した。図13、図14、図15に衝撃波発生前後の蛍光画像、および衝撃波発生前後の蛍光画像の差を示す。図13は、FITCラベル化した牛骨ゼラチンのレーザー誘起衝撃波による展開前の蛍光像を示す画像である。図14は、FITCラベル化した牛骨ゼラチンのレーザー誘起衝撃波による展開後の蛍光像を示す画像である。図15は、FITCラベル化した牛骨ゼラチンのレーザー誘起衝撃波による展開前後の蛍光強度差を示す画像である。図16は、図15に示す蛍光強度差の画像を積分して得られたクロマトグラムを示す図である。
【実施例】
【0048】
また、図17は、魚ゼラチンおよび牛骨ゼラチンのGPCチャートを示すグラフである。図17に示すように、魚ゼラチンおよび牛骨ゼラチンのゲル浸透クロマトグラム(GPC:Gel Permeation Chromatography)では、ゼラチンは、コラーゲン三本鎖複合体の分解により得られる、分子量がそれぞれ約10万、約20万、約30万の一本鎖、二本鎖、三本鎖コラーゲンによって構成され、これらの単位タンパク質分子鎖の加水分解により分子量分布が広がる。このGPCチャートを波形分離し、図12、図16のクロマトグラムを波形分離して各成分の比較を行なった。結果を表1に示す。
【実施例】
【0049】
【表1】
JP0005320593B2_000002t.gif
【実施例】
【0050】
タンパク質分子鎖の数が複数あるコラーゲンは、FITC分子が複数ラベル化されているため、蛍光積分強度をタンパク質分子鎖の数で除し、規格化を行なうとGPCによる分析結果がよい一致を示す。
【実施例】
【0051】
次に、この発明の一実施形態に係るレーザー誘起衝撃波を利用した分子の粒径分布の測定方法において、分子の粒径分布を測定する方法について説明する。
【実施例】
【0052】
まず、上記と同様に、魚ゼラチンをpH10.00の緩衝溶液に加熱溶解させた。ゼラチン溶液は、厚み約3mmでシャーレに展開し、冷却してゲル化させた。セレン化カドミウム(CdSe)ナノ粒子(米国Invitrogen社製、Qdot565ITKTMcarboxyl quantum dots:直径4.6nm、Qdot655ITKTMcarboxyl quantum dots:短径6nm、長径12nm、以下それぞれ「Qdot565」、「Qdot655」と略す)の分散液、あるいはそれらの混合物をゲル上に展開し、緩衝溶液を満たした内径140μmのガラスキャピラリーをゲル薄膜に突き刺し、キャピラリーの先端部内にゲルを約500μmの長さで導入したものを用いた。
【実施例】
【0053】
電熱線により先端部を加熱し、内部のゼラチンゲルを溶解させた後、パルスNd:YAGレーザーの基本波(1064nm、半値幅6ns、60μJ)を、正立型顕微鏡の下方より20倍の対物レンズ(NA=0.46)を用いて、キャピラリー内部のゲル溶解部分(溶解したゼラチン-緩衝溶液界面から試料側に約50μm)に集光、照射を行い、キャピラリー内部で衝撃波を発生させた。
【実施例】
【0054】
展開したゼラチン試料は、緑色LED(4W、波長500~540nm)を照明光とし、4倍の対物レンズ(NA=0.16)を集光レンズとする落射照明系によりQdot粒子を励起し、蛍光像を冷却CCDカメラにより観測した。蛍光画像の処理は、ゼラチンの例と同様に行った。
【実施例】
【0055】
図18は、Qdot655のレーザー誘起衝撃波による展開前の蛍光像を示す画像である。図19は、Qdot655のレーザー誘起衝撃波による展開後の蛍光像を示す画像である。図20は、Qdot655のレーザー誘起衝撃波による展開前後の蛍光強度差を示す画像である。図21は、Qdot565のレーザー誘起衝撃波による展開前の蛍光像を示す画像である。図22は、Qdot565のレーザー誘起衝撃波による展開後の蛍光像を示す画像である。図23は、Qdot565のレーザー誘起衝撃波による展開前後の蛍光強度差を示す画像である。図24は、Qdot565およびQdot655の混合試料(1:5)のレーザー誘起衝撃波による展開前の蛍光像を示す画像である。図25は、Qdot565およびQdot655の混合試料(1:5)のレーザー誘起衝撃波による展開後の蛍光像を示す画像である。図26は、Qdot565およびQdot655の混合試料(1:5)のレーザー誘起衝撃波による展開前後の蛍光強度差を示す画像である。図27は、図26に示す蛍光強度差の画像を積分して得られたクロマトグラムを示す図である。
【実施例】
【0056】
図18~図27を参照して、蛍光強度差の画像は、Qdot655がQdot565よりも長い距離に分布していることを示しており、混合物では広い範囲にそれらが分布していることを示している。図27に示すように、移動方向、すなわち、キャピラリー長さ方向の各位置に対して、その垂直方向に対する蛍光の積分強度をプロットしたクロマトグラムを作成すると、Qdot655とQdot565の各成分は、移動距離が異なることが判る。また、混合物がそれぞれの単一試料の場合と同じ移動距離のところに分布することを示すピークが見られたことは、衝撃波によるナノ粒子の分離が行なわれたことを示している。また、波形分離により両者の成分に分け、それらの定量分析が可能であることは、上記したゼラチンの場合と同様である。なお、Qdot655において、100μm付近に負の蛍光強度差を示しているが、図18~図20との比較を行なうと、これは泡の発生によるものであることが判る。すなわち、図20に示される蛍光強度差を参照すれば判るように、矢印で示す点から右側にある黒点は、衝撃波を発生した際に泡が生じたことを意味し、この泡の影響で、蛍光強度差として負の値になっていると推測できる。
【実施例】
【0057】
以上より、この発明に係るレーザー誘起衝撃波を利用した分子の分子量分布の測定方法および粒径分布の測定方法によると、容易に、かつ、適切に分子の分子量分布および粒径分布の測定を行うことができる。
【実施例】
【0058】
なお、上記の実施の形態においては、試料を導入した側のキャピラリーの一方端部に電熱線を巻き付け、電熱線に通電することによりゲルを加熱溶解させることとしたが、これに限らず、例えば、試料を導入した側のキャピラリーの一方端部側に集光するようにCWレーザーを照射するようにして試料を導入した側のキャピラリーの一方端部を加熱し、ゲルを溶解させるようにしてもよい。すなわち、加熱工程は、電熱線による加熱またはCWレーザーによる加熱を含む。このような加熱によると、試料を担持した熱可溶性ゲルを効率的に加熱溶解させることができる。
【実施例】
【0059】
また、上記の実施の形態においては、分子を蛍光ラベル化し、観測工程は、分子から発せられる蛍光を観測することにより行なったが、これに限らず、観測工程は、被測定分子の光散乱、ラマン散乱、光吸収のいずれかを観測することにより行なう。このような観測により、より正確に分析を行なうことができる。
【実施例】
【0060】
なお、上記の実施の形態においては、ゲルの表面に被測定分子を含む試料を担持することとしたが、これに限らず、ゲルの内部に被測定分子を含む試料を担持させるようにしてもよい。具体的には、例えば、ゲルの内部に被測定分子を含む試料を注射器状のもので注入するようにしてもよいし、上記したようにゲルの表面に試料を担持させた後、さらにその上部にゲルを配置するようにしてもよい。こうすることにより、より効果的に測定前、すなわち、レーザーによる誘起衝撃波を利用した分子の移動の前における分子の拡散の抑制を行なうことができる。
【実施例】
【0061】
また、上記の実施の形態においては、分子の分析方法として、分子の分子量分布および分子の粒径分布を測定することとしたが、これに限らず、他の分析方法を行なう際にも有効に適用される。
【実施例】
【0062】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示した実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0063】
この発明に係るレーザー誘起衝撃波を用いた分子の分析方法は、タンパク質等の微小物体についての分子量分布等を容易に、かつ、適切に行なうことが要求される場合に、有効に利用される。
【符号の説明】
【0064】
11 測定装置、12 YAGレーザー、13 パルスジェネレータ、14a,14b コンピュータ、15 顕微鏡、16 CCDカメラ、17 LED 18 光路、19 ミラーユニット、20 赤外吸収フィルター、21 ステージ、22a,22b 対物レンズ、23 ミラー、24 スペシャルフィルター、31 サンプル、32 ゲル、33 試料、34 溶媒、35 キャピラリー、36 端部、37 壁部、38 取り付け部材、39 切り欠き、40 取り付け穴、41 電熱線。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図12】
8
【図16】
9
【図17】
10
【図27】
11
【図28】
12
【図29】
13
【図9】
14
【図10】
15
【図11】
16
【図13】
17
【図14】
18
【図15】
19
【図18】
20
【図19】
21
【図20】
22
【図21】
23
【図22】
24
【図23】
25
【図24】
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【図25】
27
【図26】
28