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明細書 :燃料電池用電極触媒の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5404195号 (P5404195)
公開番号 特開2010-287316 (P2010-287316A)
登録日 平成25年11月8日(2013.11.8)
発行日 平成26年1月29日(2014.1.29)
公開日 平成22年12月24日(2010.12.24)
発明の名称または考案の名称 燃料電池用電極触媒の製造方法
国際特許分類 H01M   4/88        (2006.01)
B01J  31/02        (2006.01)
H01M   8/10        (2006.01)
FI H01M 4/88 C
B01J 31/02 101M
H01M 8/10
請求項の数または発明の数 6
全頁数 8
出願番号 特願2009-137919 (P2009-137919)
出願日 平成21年6月9日(2009.6.9)
審査請求日 平成24年6月8日(2012.6.8)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
発明者または考案者 【氏名】畑 俊充
個別代理人の代理人 【識別番号】110000796、【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
審査官 【審査官】渡部 朋也
参考文献・文献 特開2009-054922(JP,A)
特開平10-120465(JP,A)
特開2004-330181(JP,A)
特開2004-335282(JP,A)
特開2005-174573(JP,A)
特開2006-331689(JP,A)
特表2010-505606(JP,A)
調査した分野 H01M 4/88
B01J 31/02
H01M 8/10
特許請求の範囲 【請求項1】
バイオマスまたはその焼成炭化物の粉末と含窒素化合物を通電加熱することを特徴とする、燃料電池用電極触媒の製造方法。
【請求項2】
前記焼成炭化物が木炭である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記含窒素化合物がメラミンである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
含窒素化合物の比率が、50~85重量%である請求項1~のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記バイオマスが木材チップである請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記焼成炭化物が、バイオマスの炭素化工程の後に粉砕工程を経て製造されたものである、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池用電極触媒の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高効率、無公害の燃料電池の実用化は、地球温暖化、環境汚染問題に対する重要な解決策の一つとして注目されている。とくに昨今、電気自動車(FCEV)や定置用電熱併供システム(CG-FC)に用いられる固体高分子型燃料電池では、その実用化に当たって克服しなければならない問題の一つに白金触媒の使用量の低減が挙げられる。この理由は、燃料電池のカソードで起こる酸素還元反応を促進するために多量の白金触媒を必要とするが、この白金触媒が高コストとなるからである。この問題の解決策として、例えば低白金使用量のカソードの開発(特許文献1参照)や非白金カソード触媒の開発(特許文献2参照)などが提案されている。特許文献1には、合金化による白金の高活性化や反応に有効な状態の白金を担持して白金の量を低減する方法が開示されている。すなわち触媒金属を担持する触媒担体が触媒金属と共有結合可能な原子を含む触媒材料や、窒素原子がドープされたカーボンアロイ微粒子を基材とする燃料電池用電極が提案されている。この特許文献1に記載された発明では、得られた触媒材料は窒素を含んだ炭素を触媒担体に用いることで、触媒金属の粒子の運動が窒素原子との共有結合により束縛されるため触媒材料の作成時或いは電池使用環境下における触媒金属の粒子の凝集、粗大化を防止できるとしている。従って、触媒金属の粒子の動きが束縛されるため隣同士の触媒金属の粒子は凝集しないので、従来に比べ同一の触媒金属の量を電極内に含ませたときに、触媒担体の量の減量は可能となるのである。また、特許文献2は、炭素材料の原料となる有機物として熱硬化性樹種類を用いて、貴金属以外の遷移金属及び窒素が添加された炭素材料を調製し、この炭素材料を用いた燃料電池用電極触媒およびその製造方法が開示されている。また、非特許文献1には、ナノシェル構造を導入して炭素に酸素還元活性を付与する方法が記載されている。更に酸素還元活性の高い場合のナノシェル構造と酸素還元活性の低い場合のナノシェルの構造の記載がある。
【0003】
さらに、特許文献3には、バイオマスから高い導電性能を有する焼結炭を得る方法が開示されている。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2004-207228号公報
【特許文献2】特開2007-26746号公報
【特許文献3】特開平10-120465号公報
【0005】

【非特許文献1】工業材料 2006年10月(vol.54、No10、p45~p46)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、白金触媒に代替可能な性能を有する、バイオマス由来の燃料電池用電極触媒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題に鑑み、検討を重ねた結果、バイオマスまたはその焼成炭化物の粉末を含窒素化合物とともに通電加熱法により熱処理することで、優れた燃料電池用電極触媒が得られることを見出した。
【0008】
本発明は、以下の燃料電池用電極触媒の製造方法を提供するものである。
項1. バイオマスまたはその焼成炭化物の粉末と含窒素化合物を通電加熱することを特徴とする、燃料電池用電極触媒の製造方法。
項2. 前記焼成炭化物が木炭である、項1に記載の方法。
項3. 前記含窒素化合物がメラミンである、項1又は2に記載の方法。
項4. 含窒素化合物の比率が、50~85重量%である項1~4のいずれかに記載の方法。
項5. 前記バイオマスが木材チップである項1~4のいずれかに記載の方法。
項6. 前記焼成炭化物が、バイオマスの炭素化工程の後に粉砕工程を経て製造されたものである、項1~5のいずれかに記載の方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、非常に優れた性能を有する燃料電池用電極触媒を提供できる。本発明で得られる触媒は、金属錯体を用いる必要がないため、コスト及び環境の両面から、白金などの貴金属を用いた従来の触媒よりも優れている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】パルス通電加熱法に用いる装置の概略を示す。
【図2】75重量%メラミンと木材チップの焼成炭化物粉末からパルス通電加熱法により得られた燃料電池用電極触媒を示すSEM像である。
【図3】75重量%メラミンの木質炭素化物のTEM画像を示す。
【図4】メラミン量と酸素還元特性評価の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の方法で得られる燃料電池用電極触媒は酸素還元活性を有する。これは、通電加熱法により得られる焼結物が含窒素多環芳香族構造を有し、そこに組み込まれた3配位の窒素原子を有することが、本発明の優れた触媒活性に重要である。

【0012】
本発明で使用されるバイオマスとは生物系有機資源のことであり、木材,竹,草,コーヒー豆の殻等の植物性残渣,紙,もしくは,パルプ・黒液乾個等のセルロース, ヘミセルロース, リグニンを含む物質のことである。また、このようなバイオマスを含む物質とは例えば上記の紙,バージンパルプもしくは古紙・黒液乾個等と、フェノール系樹脂,オレフィン系樹脂もしくはデンプン系生分解性樹脂等との複合材のことである。これらのバイオマスとしては、資源の有効活用の観点から、例えば間伐材,製材屑,未利用木材,家屋解体材等の廃木材、刈草、ヤシ殻、パームツリー、もしくは、ビール粕,ジュースの絞り滓,焼酎粕,コーヒー滓,おから,モミ殻,キビ殻,フスマ, パルプ廃液等の廃棄物質を用いることが好ましい。

【0013】
本発明の通電加熱法は、減圧状態もしくは窒素気流下などの条件下で発生するガスを取り去りながら実施するのが好ましい。このようにすることで、得られる焼結体は、酸素還元活性を有するものになる。

【0014】
バイオマスまたはそれを予備加熱した焼成炭化物は、必要な場合には、ボールミル、ジェットミル、ビーズミル、摩砕ミル、振動ミル、遊星形ミル、サンドミルなどの粉砕装置を用いて適当な大きさに粉砕し、含窒素化合物と混合し、通電加熱処理するのが望ましい。バイオマスとして木材チップを用いる場合、木材チップは、焼成炭素化を容易にするために適当な大きさ、例えば1辺が1mm~5cm角、好ましくは5mm~3cm角程度の木片チップを好ましく使用することができる。バイオマス又はその焼成炭化物の平均粒子径は、1μm~1000μm程度の範囲内であればよく、例えば25μmを通過せず、150μmを通過するメッシュの篩にかけて調製することができる。

【0015】
バイオマスは、予備加熱処理により焼成炭化物とし、これと含窒素化合物を混合してさらに通電加熱法により熱処理して、2段階で本発明の触媒を得ることができるが、バイオ待つ粉末(例えば木粉)を含窒素化合物と直接混合し、通電加熱工程により1段階で本発明の触媒を得ることもできる。

【0016】
バイオマスを予備加熱/焼成して得られた焼成炭化物は乱雑な結晶配列を有する無定形炭素材料であり難黒鉛化炭素材料であるにも拘らず、含窒素化合物とともに通電加熱により焼結された焼結物は部分的に緻密化されて良質なミクロ黒鉛化構造を有するものとなる。このミクロ黒鉛構造のエッジ中に、3配位の窒素原子が組み込まれることで、酸素還元活性を有するものになる。

【0017】
従って、この通電加熱焼結物は、燃料電池用の触媒用途に用いることが可能になる。

【0018】
本発明において、バイオマスの予備加熱は、無酸素条件下に約300℃~約800℃まで温度域で、1~48時間加熱処理を行なえばよい。この条件での炭素化では低分子化合物が気化し残ったバイオマス中での炭素比率が増加するため、バイオマスが黒くなり、煙が出なくなってくる。

【0019】
バイオマスは、800℃以下の温度で予備加熱することで完全な黒鉛化は進行せず、後で含窒素化合物とともに通電加熱した場合に、窒素原子がミクロ黒鉛構造のエッジ中に組み込まれることを促進する。また、予備加熱によりバイオマスを炭化しておくことで、後に含窒素化合物と焼結したときに、混合物の流動を防ぐことができる。或いは、バイオマスの粉末(例えば木粉)を予備加熱(炭素化)なしに直接含窒素化合物と混合してもよい。この場合、バイオマス粉末由来の水などのガス成分が通電加熱工程においてより多く発生することになるが、このようなガス成分は窒素気流下或いは減圧条件下で除去すればよい。

【0020】
通電加熱法で型内に充填するのはバインダを用いないで焼成炭化物の粉末と含窒素化合物のみを用いるのが好ましい。

【0021】
バイオマスの予備加熱は、約300℃~約800℃の低温度域での焼成により焼成炭化物とされる。そして、焼成炭化物である木炭の粉末を含窒素化合物とともに型内で加圧しながら又は常圧下に直接電圧を加えることにより粉末粒子間にミクロ放電が生じ、これにより、粉末粒子の表面にプラズマが発生してその表面が清浄にされて活性化する。これと同時に、粉末粒子間にジュール熱が発生して粉末粒子同士が熱接合して型に対応する所定形状に成形された状態の焼結体が製造される。つまり、上記通電によりバイオマス粉末または焼成炭化物の粉末原料が内部から加熱され、その加熱された粉末粒子同士の接触が加圧により促進されて互いに接合、すなわち、部分焼結が行われてミクロ黒鉛構造(結晶子)が形成される。このため、従来の電気炉を用いて焼成を行なう場合と比べて、焼結と成形とが同時に行なわれて成形のための特別な装置が不要となる上、電気炉内に入れたり、電気炉外に出したりする工程が省略される。しかも、電気炉で昇温させる場合と比べ、大幅に短時間(数分間)で焼成及び焼結を完了させることができる上、上記の炭素化がより低い温度で生じることになる。加えて、その焼結のための電気エネルギーも大幅に低減させることが可能になる。これにより、バイオマスを含む物質から導電性材料等の用途に用いる焼成炭化物の焼結体を容易に製造することが可能になる。

【0022】
炭素化されたバイオマスは、通電加熱の前に必要に応じて粉砕されて微粒子とされる。

【0023】
バイオマスまたはその焼成炭化物粉末(微粒子)の平均粒子径は、X線小角散乱法により測定した粒子径は、一次粒子として10~300nm程度、好ましくは30~200nm程度である。バイオマスまたはその焼成炭化物の細孔径は、0.3~80nm程度、好ましくは0.5~80nm程度である。

【0024】
バイオマスまたはその焼成炭化物の微粒子が大きすぎると窒素原子の構造中への組み込みが制限され、木質材料が小さすぎると飛散性などで問題を生じる可能性がある。

【0025】
本発明の特徴は、上記のような通電加熱法を含窒素化合物の存在下で行い、窒素原子をミクロ黒鉛構造の特に3価の窒素原子が六角網面の中に組み込まれることが重要である。このような芳香族構造に窒素原子が組み込まれるために、環内の窒素原子、特に芳香環内に窒素原子を有する含窒素化合物が好ましく用いられる。

【0026】
本発明で使用する含窒素化合物としては、メラミン、ピリジン、キノリン、ヒドラジン、ポリアクリロニトリル、メラミン樹脂、ナイロン、ゼラチン、コラーゲンなどを原料として用いることができる。含窒素芳香族化合物、例えばメラミン、ピリジン、アニリン、キノリン、メラミン樹脂、芳香族ナイロンなどが好ましく、メラミン又はメラミン樹脂が特に好ましい。メラミンは、単量体で使用してもよく、加熱により形成される3量体、あるいはメラミン樹脂などの多量体で使用されてもよい。

【0027】
バイオマスの焼成炭化物:含窒素化合物は、これらの混合物を100重量%として、70~5重量%:30~95重量%、好ましくは65~10重量%:35~90重量%、より好ましくは60~15重量%:40~85重量%程度である。含窒素化合物の割合は、該化合物の窒素含量が高い化合物(例えばメラミン)であればより少ない割合でよく、窒素の含量が低い化合物(例えばキノリン)であれば、より多くの割合の含窒素化合物を配合することができる。

【0028】
本発明では、窒素原子が芳香族の3配位の位置に組み込まれる必要があるため、含窒素化合物を比較的多く使用する。

【0029】
以下、本発明の通電加熱プロセスの実施形態を図面に基いて説明する。

【0030】
図1は、本発明の1つの実施形態での通電加熱法に用いる装置を示し、電極(Electrode)に接続された黒鉛棒(パンチ)とダイ(Die)とで囲まれた空間にバイオマスまたはその焼成炭化物粉末と含窒素化合物を充填し、通電加熱する。通電加熱は、1000アンペア以下、好ましくは700~800アンペアの電流、1~10V、好ましくは2~4Vの電圧で実施できる。通電加熱時に焼成炭化物粉末と含窒素化合物には圧力を加えてもよいし、例えば黒鉛棒を除き2つの電極と、2つの電極に接するより長いダイで囲まれる空間にバイオマスの焼成炭化物粉末と含窒素化合物を充填し、通電加熱を行うことで、非加圧下に実施することもできる。通電加熱の圧力条件は、例えば0~50MPa程度である。
【実施例】
【0031】
以下本発明を実施例に基づき説明するが、本発明は以下の実施例において説明した構成に限定されるものではなく、その他本発明構成を逸脱しない範囲において種々の変形、変更が可能である。
実施例1
<木質カーボンアロイカソード触媒の調製>
(試料調製)
木片80gを500℃にて、昇温速度4℃/分、炭化時間60分で予備炭化を行い、得られた木質炭化物を粉砕した。粒度を25~150μm(二次粒子)に調製した木質炭化物に、メラミンが75重量%になるようにメラミンを混合した。
(焼結)
上記の木質炭化物-メラミン混合物0.5gを筒状の黒鉛型に入れ、黒鉛型の中で上下から黒鉛棒を介して、窒素雰囲気下で50MPaの圧力を加え、直流電流を付加することにより加熱速度80℃/分、焼結温度600℃で15分間焼結を行った。焼結終了後室温になるまで放置し焼結物を取り出し粉砕した。
[構造解析]
上記の触媒材料について、SEM及びTEMを用いて構造解析を行った。
図2に、メラミン75重量%の焼結体の粉砕後のSEM像を示す。図2の結果より、炭素の二次粒子の大きさの分布がほぼそろっていることがわかった。図3のTEM観察結果の結果、メラミン75重量%の焼結体を粉砕してできた触媒には、ミクログラファイト層が発達していることがわかった。
[表面積と粒径・空孔径]
窒素ガス吸着により上記触媒の比表面積を測定したところ11m2/gで、X線小角散乱測定により粒径を測定したところ118nm、規格化分散92.1%となった。一方、空孔径は0.26nm、規格化分散86.1%となった。
[触媒の性能評価結果]
図4に、上記測定を行った触媒の酸素還元特性評価結果を示す。評価測定には三極式セルを用い、作用極のGC(グラッシカーボン)上に触媒を担持後、Nafion膜を被覆し、対極に白金線を参照極にAg/AgClを用い、電解質として1 M H2SO4を用いて、作用極を回転数1600 rpmで回転させて酸素還元特性を評価した。図4に上記の条件で作られた触媒材料の電流-電位曲線を示す。
【実施例】
【0032】
メラミン量45%、メラミン量75%では還元電流が、メラミン量25%、メラミン量0%と比べて貴な電位で流れ始める。メラミン量45%の方がメラミン量75%よりも還元電流が貴な電位で流れ始める。メラミン量が75%の方が45%よりも還元電流の増加は急である。メラミン量が45%未満のサンプルと比較するとメラミン量が45%以上のサンプルの方が優れた酸素還元特性を示すことがわかる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3