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明細書 :振動体の周波数検出装置、原子間力顕微鏡、振動体の周波数検出方法およびプログラム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5311405号 (P5311405)
公開番号 特開2011-043483 (P2011-043483A)
登録日 平成25年7月12日(2013.7.12)
発行日 平成25年10月9日(2013.10.9)
公開日 平成23年3月3日(2011.3.3)
発明の名称または考案の名称 振動体の周波数検出装置、原子間力顕微鏡、振動体の周波数検出方法およびプログラム
国際特許分類 G01Q  60/32        (2010.01)
G01R  23/12        (2006.01)
FI G01Q 60/32
G01R 23/12
請求項の数または発明の数 7
全頁数 20
出願番号 特願2009-193606 (P2009-193606)
出願日 平成21年8月24日(2009.8.24)
審査請求日 平成24年8月21日(2012.8.21)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
発明者または考案者 【氏名】大藪 範昭
【氏名】木村 建次郎
【氏名】小林 圭
【氏名】山田 啓文
個別代理人の代理人 【識別番号】100075557、【弁理士】、【氏名又は名称】西教 圭一郎
審査官 【審査官】阿部 知
参考文献・文献 特開2001-116679(JP,A)
特開平05-296761(JP,A)
特開2003-185555(JP,A)
特開2003-185556(JP,A)
特開2004-226238(JP,A)
特開2008-032405(JP,A)
調査した分野 G01Q 10/00-90/00
特許請求の範囲 【請求項1】
振動体が振動する周波数を検出する振動体の周波数検出装置であって、
制御信号に応じた周波数で発振する基準信号を生成し、生成した基準信号と振動体の振動による変位量を表す入力信号とを合成した合成信号を生成する生成部と、
生成部が生成した合成信号の周波数に応じた周波数で発振する発信信号を生成し、生成した発信信号と合成信号との位相差を検出し、検出した位相差に基づいて前記振動体の周波数を示す出力信号を出力する発信部と、
発信部が出力する出力信号が示す周波数が、入力信号の周波数との関係で線形性が成立する出力信号が示す周波数範囲の上限以上または下限以下となったとき、発信部が出力する出力信号が示す周波数が前記周波数範囲の上限未満かつ下限よりも高い周波数となるように基準信号の周波数を変化させる制御信号を生成部に出力する制御部とを含むことを特徴とする振動体の周波数検出装置。
【請求項2】
振動体が振動する周波数を検出する振動体の周波数検出装置であって、
制御信号に応じた周波数で発振する基準信号を生成し、生成した基準信号と振動体の振動による変位量を表す入力信号とを合成した合成信号を生成する生成部と、
生成部が生成した合成信号の周波数に応じた周波数で発振する発信信号を生成し、生成した発信信号と合成信号との位相差を検出し、検出した位相差に基づいて前記振動体の周波数を示す出力信号を出力する発信部と、
前記発信部が出力する出力信号が示す周波数が、入力信号の周波数との関係で線形性が成立する出力信号が示す周波数範囲で一定の周波数となるように基準信号の周波数を変化させる制御信号を生成部に出力する制御部とを含むことを特徴とする振動体の周波数検出装置。
【請求項3】
前記発信部は、前記振動体の周波数を電圧で示す出力信号を出力し、
前記制御部は、
前記出力信号の電圧が前記周波数範囲の上限の周波数を表す電圧以上になったとき、前記出力信号が示す周波数が前記周波数範囲の上限以上の周波数になったと判定し、
前記出力信号の電圧が前記周波数範囲の下限の周波数を表す電圧以下になったとき、前記出力信号が示す周波数が前記周波数範囲の下限以下の周波数になったと判定することを特徴とする請求項1に記載の振動体の周波数検出装置。
【請求項4】
請求項1~のいずれか1つに記載の振動体の周波数検出装置を備え、
前記周波数検出装置によって検出される前記振動体の周波数に基づいて、試料表面と前記振動体との距離を測定することを特徴とする原子間力顕微鏡。
【請求項5】
前記振動体は、カンチレバーであることを特徴とする請求項に記載の原子間力顕微鏡。
【請求項6】
制御信号に応じた周波数で発振する基準信号を生成し、生成した基準信号と振動体の振動による変位量を表す入力信号とを合成した合成信号を生成する生成部と、
生成部が生成した合成信号の周波数に応じた周波数で発振する発信信号を生成し、生成した発信信号と合成信号との位相差を検出し、検出した位相差に基づいて前記振動体の周波数を示す出力信号を出力する発信部とを含む振動体の周波数検出装置によって、振動体が振動する周波数を検出する振動体の周波数検出方法であって、
発信部が出力する出力信号が示す周波数が、入力信号の周波数との関係で線形性が成立する出力信号が示す周波数範囲の上限以上または下限以下となったとき、発信部が出力する出力信号が示す周波数が前記周波数範囲の上限未満かつ下限よりも高い周波数となるように基準信号の周波数を変化させる制御信号を生成部に出力する制御ステップを含むことを特徴とする振動体の周波数検出方法。
【請求項7】
振動体が振動する周波数を検出する振動体の周波数検出装置であって、制御信号に応じた周波数で発振する基準信号を生成し、生成した基準信号と振動体の振動による変位量を表す入力信号とを合成した合成信号を生成する生成部と、生成部が生成した合成信号の周波数に応じた周波数で発振する発信信号を生成し、生成した発信信号と合成信号との位相差を検出し、検出した位相差に基づいて前記振動体の周波数を示す出力信号を出力する発信部と、コンピュータとを含む振動体の周波数検出装置に含まれるコンピュータに、
発信部が出力する出力信号が示す周波数が、入力信号の周波数との関係で線形性が成立する出力信号が示す周波数範囲の上限以上または下限以下となったとき、発信部が出力する出力信号が示す周波数が前記周波数範囲の上限未満かつ下限よりも高い周波数となるように基準信号の周波数を変化させる制御信号を生成部に出力する制御ステップを実行させるためのプログラム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、カンチレバーなどの振動体の共振周波数を検出する周波数検出装置、原子間力顕微鏡、振動体の周波数検出方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
周波数変調方式原子間力顕微鏡(Frequency-Modulation Atomic Force Microscope:略称FM-AFM)は、カンチレバーなどの振動体の先端部に設けられるプローブと試料表面との距離に応じて変化するプローブと試料との間に働く力によって、振動体の共振周波数が変化するという原理を利用して、カンチレバーの共振周波数の変化から、プローブと試料表面との距離を測定するものである。
【0003】
図10は、第1の従来の技術である周波数検出装置90を用いる周波数変調方式原子間力顕微鏡(以下「FM-AFM」という)9の構成を模式的に示す図である。カンチレバー11が共振する共振周波数は、カンチレバー11に設けられたプローブ12と試料表面3との距離に応じて変化する。共振周波数が変動するカンチレバー11の変位は、変位検出計14によって検出され、検出された変位を表す信号として周波数検出装置90に送られる。周波数検出装置90は、変位検出計14から受け取る変位を表す信号から、共振周波数が変動する変動周波数Δfを電圧で表す電気信号を生成し、制御コントローラ15の距離制御部151に送る。
【0004】
Z軸方向移動部(図10では「Z piezo」と記す)16は、圧電素子によって構成され、距離制御部151の指示によって、試料2を載置するテーブル18を鉛直方向、つまりZ軸方向に移動し、プローブ12の先端部と試料表面3との距離を変える。XY軸方向移動部(図10では「XY piezo」と記す)17は、圧電素子によって構成され、XYスキャン部152の指示によって、テーブル18をZ軸に直交する方向に移動し、試料表面3の全面の測定を可能とする。
【0005】
距離制御部151は、周波数検出装置90からの変動周波数Δfを電圧で表す電気信号が一定の電圧になるように、すなわち、プローブ12の先端部と試料表面3との距離が一定になるように、Z軸方向移動部16を制御する。制御コントローラ15は、試料2がXY軸方向に移動するとき、Z軸方向のテーブル18の位置、すなわちプローブ12の先端部と試料表面3との距離を記憶しておき、記憶したZ軸方向の位置をXYZ座標系でプロットすることによって、試料表面3の凹凸を画像として出力することができる。
【0006】
図11は、周波数検出装置90の構成を示す図である。変位検出計14で検出された変動周波数Δfを表す電気信号は、ヘテロダイン回路91の入力端子211に入力される。混合器213は、入力端子211から入力され、ハイパスフィルタ(以下「HPF」という)212を通して高周波成分のみとなった信号と、ローカル発振器214が生成する基準信号、たとえば4.2MHzの基準信号とを合成する。基準信号に合成された変動周波数Δfの信号は、BPF22で必要な周波数成分のみにされ、比較器23で矩形波の信号に変換されて、位相同期(Phase Locked Loop:略称PLL)回路24に送られる。
【0007】
PLL回路24は、排他的論理和回路241によって、比較器23からの矩形波の信号と電圧制御発振器(以下「VCXO」という)244からの信号との位相差を検出し、LPF242によって、変動周波数Δfを電圧で表す電気信号として、第1の出力端子から出力する。変動周波数Δfを電圧で表す電気信号は、ラインフィルタ(以下「LF」という)243によって高周波成分のノイズが除去され、VCXO244に入力される。VCXO244は、水晶発振子を用いた発振器であり、入力される電圧に応じた周波数の矩形波の信号を出力する。
【0008】
VCXO244からの矩形波の信号は、HPF26によって高周波成分のみとされ、混合器27によって、ローカル発振器214からの基準信号と合成されて、基準信号の周波数成分が除かれる。基準信号の周波数成分が除かれた信号は、変動周波数Δfの信号であり、ローパスフィルタ(以下「LPF」という)28によって低周波成分のみとされ、比較器29で矩形波の信号に変換される。比較器29で変換された矩形波の信号は、位相シフタ30で所定の角度だけ位相が遅延され、可変利得増幅器(以下「VGA」という)31で利得が調整される。VGA31で利得が調整された信号は、増幅器32で増幅されて、第2の出力端子から出力され、カンチレバー11を振動させる図示しない圧電素子に正帰還され、カンチレバー11の振動を継続させる。
【0009】
図12は、周波数検出装置90の電圧特性を示す図である。図13は、周波数検出装置90の周波数特性を示す図である。電圧FM-OUTは、第1の出力端子25から出力される電気信号の電圧であり、入力端子211から入力される入力信号の周波数が299,000Hz付近から300,500Hz付近まで、入力信号の周波数にほぼ比例して上昇し、線形性が成立する。しかし、入力信号の周波数が299,000Hz未満および300,500Hz以上では、線形性は成立しないため、プローブ12の先端部と試料表面3との距離を測定することはできない。図13に示した例は、図12に示した電圧FM-OUTを周波数FM-OUTに変換した例である。周波数FM-OUTは、図12に示した電圧FM-OUTと同様の傾向を示しており、入力信号の周波数が299,000Hz未満および300,500Hz以上では、線形性は成立しない。
【0010】
特許文献1に記載される第2の従来の技術である表面形状観測装置は、カンチレバーの振動変位を検出し、PLL回路を介してフィードバックして、カンチレバーの振動振幅が一定になるように制御する。さらに、原子像などの観察対象物が見える前の段階で、PLL回路のフィードバックループを開放状態にし、フィードバック信号を周波数信号から位相信号に切り換えて、高感度化を可能としている非接触原子間力顕微鏡である。
【0011】
特許文献2に記載される第3の従来の技術である非接触原子間力顕微鏡は、カンチレバーの共振周波数をPLL方式の周波数変調(Frequency Modulation:略称FM)復調回路を介してフィードバックして、カンチレバーと試料との距離が一定になるように制御する。そして、コンピュータによって、フィードバックする信号を試料表面の凹凸像として映像化する。アプローチ時と走査時とでFM復調回路のパラメータ、つまりFM復調検出幅を変えることで、凹凸の大きな試料または凹凸の小さな試料を、それぞれに適した分解能で走査することができる。
【先行技術文献】
【0012】

【特許文献1】特開2004-226238号公報
【特許文献2】特開2008-32405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
第1の従来の技術は、入力信号の周波数が299,000Hz付近から300,500Hz付近までは、PLL回路24の線形性が成立するので、プローブ12の先端部と試料表面3との距離を高感度で測定することができる。入力信号の周波数が299,000Hz未満および300,500Hz以上では、線形性が成立しないため、プローブ12の先端部と試料表面3との距離を正確に測定することはできない。また、共振周波数を検出する周波数範囲を広げるためには、電圧特性の傾きを小さくする必要がある。そうすると、周波数検出感度が小さくなり、SN比が悪くなる。ローカル発振器214の基準周波数の設定を変更することは、可能であるが、設定中にカンチレバー11と試料2との衝突の発生を防止するために、カンチレバー11と試料2とを離して設定の変更を行う必要があり、操作性が悪く、かつ時間もかかる。
【0014】
第2の従来の技術は、PLL回路を用いているが、高感度化のためにフィードバックループをオープン状態にするものであり、周波数検出範囲を広げることはできない。また、第3の従来の技術は、FM復調回路のFM復調検出幅をアプローチ時と走査時とで変えるものであるが、走査時の周波数検出の範囲を広げることはできない。
【0015】
本発明の目的は、振動体の共振周波数の検出感度を高く保ったまま、周波数検出範囲を広げることが可能な振動体の周波数検出装置、原子間力顕微鏡、振動体の周波数検出方法およびプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、振動体が振動する周波数を検出する振動体の周波数検出装置であって、
制御信号に応じた周波数で発振する基準信号を生成し、生成した基準信号と振動体の振動による変位量を表す入力信号とを合成した合成信号を生成する生成部と、
生成部が生成した合成信号の周波数に応じた周波数で発振する発信信号を生成し、生成した発信信号と合成信号との位相差を検出し、検出した位相差に基づいて前記振動体の周波数を示す出力信号を出力する発信部と、
発信部が出力する出力信号が示す周波数が、入力信号の周波数との関係で線形性が成立する出力信号が示す周波数範囲の上限以上または下限以下となったとき、発信部が出力する出力信号が示す周波数が前記周波数範囲の上限未満かつ下限よりも高い周波数となるように基準信号の周波数を変化させる制御信号を生成部に出力する制御部とを含むことを特徴とする振動体の周波数検出装置である。
【0017】
また本発明は、振動体が振動する周波数を検出する振動体の周波数検出装置であって、
制御信号に応じた周波数で発振する基準信号を生成し、生成した基準信号と振動体の振動による変位量を表す入力信号とを合成した合成信号を生成する生成部と、
生成部が生成した合成信号の周波数に応じた周波数で発振する発信信号を生成し、生成した発信信号と合成信号との位相差を検出し、検出した位相差に基づいて前記振動体の周波数を示す出力信号を出力する発信部と、
前記発信部が出力する出力信号が示す周波数が、入力信号の周波数との関係で線形性が成立する出力信号が示す周波数範囲で一定の周波数となるように基準信号の周波数を変化させる制御信号を生成部に出力する制御部とを含むことを特徴とする周波数検出装置である。
【0019】
また本発明は、前記発信部は、前記振動体の周波数を電圧で示す出力信号を出力し、
前記制御部は、
前記出力信号の電圧が前記周波数範囲の上限の周波数を表す電圧以上になったとき、前記出力信号が示す周波数が前記周波数範囲の上限以上の周波数になったと判定し、
前記出力信号の電圧が前記周波数範囲の下限の周波数を表す電圧以下になったとき、前記出力信号が示す周波数が前記周波数範囲の下限以下の周波数になったと判定することを特徴とする。
【0020】
また本発明は、前記振動体の周波数検出装置を備え、前記周波数検出装置によって検出される前記振動体の周波数に基づいて、試料表面と前記振動体との距離を測定することを特徴とする原子間力顕微鏡である。
また本発明は、前記振動体がカンチレバーであることを特徴とする。
【0021】
また本発明は、制御信号に応じた周波数で発振する基準信号を生成し、生成した基準信号と振動体の振動による変位量を表す入力信号とを合成した合成信号を生成する生成部と、
生成部が生成した合成信号の周波数に応じた周波数で発振する発信信号を生成し、生成した発信信号と合成信号との位相差を検出し、検出した位相差に基づいて前記振動体の周波数を示す出力信号を出力する発信部とを含む振動体の周波数検出装置によって、振動体が振動する周波数を検出する振動体の周波数検出方法であって、
発信部が出力する出力信号が示す周波数が、入力信号の周波数との関係で線形性が成立する出力信号が示す周波数範囲の上限以上または下限以下となったとき、発信部が出力する出力信号が示す周波数が前記周波数範囲の上限未満かつ下限よりも高い周波数となるように基準信号の周波数を変化させる制御信号を生成部に出力する制御ステップを含むことを特徴とする振動体の周波数検出方法である。
【0022】
また本発明は、振動体が振動する周波数を検出する振動体の周波数検出装置であって、制御信号に応じた周波数で発振する基準信号を生成し、生成した基準信号と振動体の振動による変位量を表す入力信号とを合成した合成信号を生成する生成部と、生成部が生成した合成信号の周波数に応じた周波数で発振する発信信号を生成し、生成した発信信号と合成信号との位相差を検出し、検出した位相差に基づいて前記振動体の周波数を示す出力信号を出力する発信部と、コンピュータとを含む振動体の周波数検出装置に含まれるコンピュータに、
発信部が出力する出力信号が示す周波数が、入力信号の周波数との関係で線形性が成立する出力信号が示す周波数範囲の上限以上または下限以下となったとき、発信部が出力する出力信号が示す周波数が前記周波数範囲の上限未満かつ下限よりも高い周波数となるように基準信号の周波数を変化させる制御信号を生成部に出力する制御ステップを実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、振動体が振動する周波数を検出するにあたって、生成部によって、制御信号に応じた周波数で発振する基準信号が生成され、生成された基準信号と振動体の振動による変位量を表す入力信号とを合成した合成信号が生成される。発信部によって、生成部が生成した合成信号の周波数に応じた周波数で発振する発信信号が生成され、生成された発信信号と合成信号との位相差が検出され、検出された位相差に基づいて前記振動体の周波数を示す出力信号が出力される。そして、制御部によって、発信部が出力する出力信号が示す周波数が、入力信号の周波数との関係で線形性が成立する出力信号が示す周波数範囲の上限以上または下限以下となったとき、発信部が出力する出力信号が示す周波数が前記周波数範囲の上限未満かつ下限よりも高い周波数となるように基準信号の周波数を変化させる制御信号が生成部に出力される。
【0024】
したがって、入力信号の周波数の範囲が、前記周波数範囲の上限または下限、たとえば高感度で検出することができる上限または下限に達したときに、基準信号の周波数を変化させることによって、高感度で検出することができる範囲を移動することができるので、振動体の共振周波数の検出感度を高く保ったまま、周波数検出範囲を広げることができる。また、前記周波数範囲は、入力信号の周波数との関係で線形性が成立する出力信号が示す周波数の周波数範囲に設定されるので、周波数範囲を線形性が成立する状態を維持したまま周波数検出範囲を広げることができる。
【0025】
また本発明によれば、振動体が振動する周波数を検出するにあたって、生成部によって
、制御信号に応じた周波数で発振する基準信号が生成され、生成された基準信号と振動体の振動による変位量を表す入力信号とを合成した合成信号が生成される。発信部によって、生成部が生成した合成信号の周波数に応じた周波数で発振する発信信号が生成され、生成された発信信号と合成信号との位相差が検出され、検出された位相差に基づいて前記振動体の周波数を示す出力信号が出力される。そして、制御部によって、前記発信部が出力する出力信号が示す周波数が、入力信号の周波数との関係で線形性が成立する出力信号が示す周波数範囲で一定の周波数となるように基準信号の周波数を変化させる制御信号が生成部に出力される。
【0027】
また本発明によれば、前記発信部によって、前記振動体の周波数を電圧で示す出力信号が出力される。そして、前記制御部によって、前記出力信号の電圧が前記周波数範囲の上限の周波数を表す電圧以上になったとき、前記出力信号が示す周波数が前記周波数範囲の上限以上の周波数になったと判定され、前記出力信号の電圧が前記周波数範囲の下限の周波数を表す電圧以下になったとき、前記出力信号が示す周波数が前記周波数範囲の下限以下の周波数になったと判定される。したがって、上限下限の判断を発信部が出力する出力信号の電圧に基づいて行うことができる。
【0028】
また本発明によれば、振動体の周波数検出装置を備え、前記周波数検出装置によって検出される前記振動体の周波数に基づいて、試料表面と前記振動体との距離を測定するので、高感度で、かつ、広い周波数検出範囲で観測することができる原子間力顕微鏡を実現することができる。
【0029】
また発明によれば、前記振動体は、カンチレバーであるので、カンチレバーによる試料の観測に適用することができる。
【0030】
また本発明によれば、制御信号に応じた周波数で発振する基準信号を生成し、生成した基準信号と振動体の振動による変位量を表す入力信号とを合成した合成信号を生成する生成部と、生成部が生成した合成信号の周波数に応じた周波数で発振する発信信号を生成し、生成した発信信号と合成信号との位相差を検出し、検出した位相差に基づいて前記振動体の周波数を示す出力信号を出力する発信部とを含む振動体の周波数検出装置によって、振動体が振動する周波数を検出するにあたって、制御ステップでは、発信部が出力する出力信号が示す周波数が、入力信号の周波数との関係で線形性が成立する出力信号が示す周波数範囲の上限以上または下限以下となったとき、発信部が出力する出力信号が示す周波数が前記周波数範囲の上限未満かつ下限よりも高い周波数となるように基準信号の周波数を変化させる制御信号を生成部に出力する。
【0031】
したがって、入力信号の周波数の範囲が、前記周波数範囲の上限または下限、たとえば高感度で検出することができる上限または下限に達したときに、基準信号の周波数を変化させることによって、高感度で検出することができる範囲を移動することができるので、振動体の共振周波数の検出感度を高く保ったまま、広い周波数検出範囲で検出することができる。また、前記周波数範囲は、入力信号の周波数との関係で線形性が成立する出力信号が示す周波数の周波数範囲に設定されるので、周波数範囲を線形性が成立する状態を維持したまま周波数検出範囲を広げることができる。
【0032】
また本発明によれば、振動体の周波数検出装置に含まれるコンピュータに、発信部が出力する出力信号が示す周波数が、入力信号の周波数との関係で線形性が成立する出力信号が示す周波数範囲の上限以上または下限以下となったとき、発信部が出力する出力信号が示す周波数が前記周波数範囲の上限未満かつ下限よりも高い周波数となるように基準信号の周波数を変化させる制御信号を生成部に出力する制御ステップを実行させるためのプログラムとして提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の一実施形態である周波数検出装置10を用いる周波数変調方式原子間力顕微鏡1の構成を模式的に示す図である。
【図2】周波数検出装置10の構成を示すブロック図である。
【図3】条件判断装置40の回路構成を示す図である。
【図4】周波数検出装置10の電圧特性を示す図である。
【図5】周波数検出装置10の周波数特性を示す図である。
【図6】ローカル発振器214が出力する基準信号の周波数の切り換えを示す図である。
【図7】周波数検出装置10の改善された周波数特性を示す図である。
【図8】クリープ現象によるZ軸方向移動部16を構成する圧電素子の厚みの経時変化を示す図である。
【図9】条件判断装置40による条件判断処理を示すフローチャートである。
【図10】第1の従来の技術である周波数検出装置90を用いる周波数変調方式原子間力顕微鏡9の構成を模式的に示す図である。
【図11】周波数検出装置90の構成を示す図である。
【図12】周波数検出装置90の電圧特性を示す図である。
【図13】周波数検出装置90の周波数特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1は、本発明の一実施形態である周波数検出装置10を用いる周波数変調方式原子間力顕微鏡(Frequency-Modulation Atomic Force Microscope:略称FM-AFM)1の構成を模式的に示す図である。FM-AFM1は、カンチレバー11、変位検出計14、周波数検出装置10、制御コントローラ15、Z軸方向移動部(図1では「Z piezo」と記す)16、XY軸方向移動部(図1では「XY piezo」と記す)17およびテーブル18を含んで構成される。本発明に係る振動体の周波数検出方法は、周波数検出装置10で処理される。

【0035】
振動体であるカンチレバー11は、一端がFM-AFM1の図示しない筐体に支持され、他端にプローブ12が設けられる。カンチレバー11は、図示しない圧電素子によって、プローブ12が試料2に近接および離反する方向に振動される。カンチレバー11の共振周波数は、プローブ12の先端部と試料表面3との距離によって変化する。これは、プローブ12の先端部と試料表面3との間に働く原子間力が、距離によって変化するためである。カンチレバー11の共振周波数fは、図示しない圧電素子によるカンチレバー11の共振周波数をf0とし、プローブ12の先端部と試料表面3との距離によって変動する変動分の変動周波数をΔfとすると、f=f0+Δfである。

【0036】
変位検出計14は、共振周波数fで振動するカンチレバー11の変位量を、たとえばレーザ光を利用して検出し、検出した変位量を表す電気信号を生成し、生成した電気信号を入力信号として周波数検出装置10に送る。

【0037】
試料2は、Z軸方向移動部16の鉛直方向上部に固定されるテーブル18に載置される。Z軸方向移動部16は、たとえば圧電素子によって構成され、距離制御部151から指示される電圧に応じて、テーブル18をZ軸方向に移動する。Z軸方向は、鉛直方向であり、テーブル18の面のうち試料2が載置される平面に垂直な方向であり、XY軸は、Z軸方向に直交する平面上の座標軸である。XY軸方向移動部17は、たとえば圧電素子によって構成され、XYスキャン部152から指示される電圧に応じて、Z軸方向移動部16をX軸方向およびY軸方向に移動する。

【0038】
周波数検出装置10は、変位検出計14から受け取る入力信号に基づいて、変動周波数Δfを電圧で表す電気信号を生成し、生成した電気信号を出力信号として制御コントローラ15に送る。周波数検出装置10については、図2で詳述する。

【0039】
制御コントローラ15は、距離制御部151およびXYスキャン部152を含んで構成される。距離制御部151は、周波数検出装置10から受け取る出力信号、つまり変動周波数Δfを電圧で表す電気信号が一定の電圧になるように、すなわち、プローブ12の先端部と試料表面3との距離が一定になるように、Z軸方向移動部16を制御する。Z軸方向移動部16は、距離制御部151からの指示に応じて、テーブル18を上下し、プローブ12の先端部と試料表面3との距離を一定に保つ。

【0040】
XYスキャン部152は、テーブル18をX軸方向およびY軸方向に移動し、試料表面3の全面を走査するように、XY軸方向移動部17を制御する。制御コントローラ15は、テーブル18がXY軸方向に移動するとき、プローブ12の先端部と試料表面3との距離が一定になるように、すなわち、プローブ12の先端部が試料表面3に対して、仮想線19の位置になるようにZ軸方向移動部16を制御する。制御コントローラ15は、プローブ12の先端部と試料表面3との距離が一定になるZ軸方向のテーブル18の位置を記憶する。そして、記憶したZ軸方向の位置をXYZ軸の座標系でプロットすることによって、試料表面3の凹凸を画像として出力することができる。

【0041】
図2は、周波数検出装置10の構成を示すブロック図である。周波数検出装置10は、ヘテロダイン回路21、バンドパスフィルタ(以下「BPF」という)22、比較器23、位相同期(Phase Locked Loop:略称PLL)回路24、第1の出力端子25、ハイパスフィルタ(以下「HPF」という)26、混合器27、ローパスフィルタ(以下「LPF」という)28、比較器29、位相シフタ30、可変利得増幅器(以下「VGA」という)31、増幅器32および第2の出力端子33を含んで構成される。

【0042】
生成部であるヘテロダイン回路21は、入力端子211、HPF212、混合器213およびローカル発振器214を含んで構成される。入力端子211は、変位検出計14からの電気信号が入力信号として入力される端子である。HPF212は、入力端子211からの入力信号に含まれる周波数成分のうち高周波成分のみを通過させるフィルタである。HPF212を通過した信号は、混合器213に送られる。HPF212を通過する高周波成分には、カンチレバー11の共振周波数が含まれる。

【0043】
ローカル発振器214は、制御信号50に応じた周波数で発振する正弦波の基準信号を生成し、生成した基準信号を混合器213および混合器27に送る。ローカル発振器214は、制御信号50が指示されていないとき、予め定める周波数、たとえば4.2MHzの周波数の基準信号を出力する。ローカル発振器214は、上限であることを示す制御信号50を受け取ると、基準信号の周波数を予め定める周波数、たとえば666Hz下げ、下限であることを示す制御信号50を受け取ると、基準信号の周波数を予め定める周波数、たとえば666Hz上げる。上限であることおよび下限であることについては、後述する。

【0044】
混合器213は、HPF212を通過した信号と、ローカル発振器214からの基準信号とを合成する。具体的には、HPF212を通過した信号を基準信号で周波数変調する。混合器213は、合成した合成信号をBPF22に送る。BPF22は、所定の帯域幅の周波数成分のみを通過させるフィルタであり、所定の帯域幅の周波数成分以外の残余の周波数成分が除去された信号が比較器23に送られる。所定の帯域幅は、合成信号の周波数を通過させる帯域である。

【0045】
比較器23は、ヒステリシスを有する比較器であり、入力される信号の電圧が上昇するとき、入力される信号の電圧が予め定める第1の基準電圧に一致すると、ハイレベルの信号を出力し、入力される信号の電圧が低下するとき、入力される信号の電圧が予め定める第1の基準電圧よりも低い予め定める第2の電圧に一致すると、ローレベルの信号を出力する。すなわち、比較器23は、入力される信号を矩形波の信号に変換する。比較器23は、変換した矩形波の信号をPLL回路24に送る。

【0046】
発信部であるPLL回路24は、排他的論理和回路241、LPF242、ラインフィルタ(以下「LF」という)243および電圧制御発振器(以下「VCXO」という)244を含んで構成される。排他的論理和回路241は、比較器23から受け取る矩形波の信号と、VCXO244から受け取る矩形波の信号との排他的論理和を出力する。具体的には、比較器23から受け取る矩形波の信号とVCXO244から受け取る矩形波の信号とがともに、ハイレベルのとき、またはローレベルのとき、ローレベルの信号を出力し、比較器23から受け取る矩形波の信号がハイレベルでVCXO244から受け取る矩形波の信号がローレベルのとき、または比較器23から受け取る矩形波の信号がローレベルでVCXO244から受け取る矩形波の信号がハイレベルのとき、ハイレベルの信号を出力する。すなわち、比較器23から受け取る矩形波の信号と、VCXO244から受け取る矩形波の信号とに位相差があると、変動周波数Δfに比例する位相幅のハイレベルの信号を出力する。

【0047】
LPF242は、排他的論理和回路241から受け取る信号の低周波成分のみを通過させるフィルタ、たとえば抵抗素子とコンデンサとからなる積分回路によって構成されるフィルタである。排他的論理和回路241から受け取る信号は、比較器23から受け取る矩形波の信号と、VCXO244から受け取る矩形波の信号との位相差を表す信号であり、LPF242は、その位相差を積分することになる。すなわち、LPF242は、変動周波数Δfによる位相差を積分して、変動周波数Δfを電圧で表わす電気信号として、第1の出力端子25から出力するとともに、その電気信号をLF243および条件判断装置40に送る。LF243は、LPF242から受け取る信号の高周波成分のノイズを除去し、高周波成分のノイズを除去した信号をVCXO244に送る。変動周波数Δfは、振動体の周波数、つまりカンチレバー11の周波数である。

【0048】
VCXO244は、水晶発振子を用いる電圧制御発振器であり、入力される電気信号の電圧に比例する周波数の矩形波の信号を生成する。VCXO244は、水晶発振子を用いない電圧制御発振器(以下「VCO」という)に比較して、位相ノイズが少ないという利点と、温度特性がよい、つまり周波数の温度ドリフトが小さいという利点とがある。VCXO244は、生成した矩形波の信号を排他的論理和回路241およびHPF26に送る。入力される電気信号の電圧に比例する周波数の矩形波の信号は、発信信号に相当する。

【0049】
HPF26は、VCXO244から受け取る矩形波の信号の高周波成分を通過し、高周波成分を除く残余の周波数成分を除去した信号を混合器27に送る。混合器27は、HPF26から受け取る信号と、ローカル発振器214からの基準信号とを合成する。具体的には、HPF26を通過した信号の周波数成分から基準信号の周波数成分を除去し、復調する。すなわち、混合器27は、入力端子に入力された入力信号、つまり変動周波数ΔfからPLL回路24によって高周波成分が除去された変動周波数Δfで発振する信号をLPF28に送る。LPF28は、混合器27から受け取る信号の低周波成分を通過し、比較器29に送る。比較器29は、ヒステリシスを有する比較器であり、入力される信号を矩形波の信号に変換し、変換した矩形波の信号を位相シフタ30に送る。

【0050】
位相シフタ30は、比較器29から受け取る矩形波の信号の位相を所定の角度だけ遅延し、位相を遅延した矩形波の信号をVGA31に送る。VGA31は、位相シフタ30から受け取る信号の利得を調整し、利得を調整した信号を増幅器32に送る。増幅器32は、VGA31から受け取る信号の出力を増幅し、増幅した信号を第2の出力端子から出力する。第2の出力端子から出力される信号は、カンチレバー11を振動させる前述の図示しない圧電素子に正帰還され、カンチレバー11の振動を継続させる。

【0051】
図3は、条件判断装置40の回路構成を示す図である。制御部である条件判断装置40は、比較器41,42、および接続端子43~47を含んで構成される。接続端子43は、第1の出力端子25に接続され、LPF242からの電気信号、つまり変動周波数Δfを電圧で表わす電気信号が入力される。比較器41は、非反転入力端子が接続端子43に接続され、反転入力端子が接続端子44に接続され、出力端子が接続端子46に接続されている。比較器42は、非反転入力端子が接続端子45に接続され、反転入力端子が接続端子43に接続され、出力端子が接続端子47に接続されている。

【0052】
接続端子44は、上限設定値を表す電圧が入力され、接続端子45は、下限設定値を表す電圧が入力される。上限設定値を表す電圧および下限設定値を表す電圧は、たとえば比較器41,42に供給される直流電圧を抵抗素子で分圧して生成される。

【0053】
比較器41は、接続端子43に入力される電気信号の電圧が上限設定値を表す電圧以上であると、接続端子46からハイレベルの信号を出力し、接続端子43に入力される電気信号の電圧が上限設定値を表す電圧未満であると、接続端子46からローレベルの信号を出力する。すなわち、接続端子46から出力される信号は、ハイレベルのときに、変動周波数Δfが上限値に一致したことを示す。

【0054】
比較器42は、接続端子43に入力される電気信号の電圧が下限設定値を表す電圧よりも高いと、接続端子47からローレベルの信号を出力し、接続端子43に入力される電気信号の電圧が下限設定値を表す電圧以下であると、接続端子47からハイレベルの信号を出力する。すなわち、接続端子47から出力される信号は、ハイレベルのときに、変動周波数Δfが下限値に一致したことを示す。

【0055】
上限信号および下限信号は、制御信号50を構成し、ローカル発振器214に送られる。ローカル発振器214は、上限信号がハイレベルになると、上限であることを示す制御信号50を受け取ったと判断し、基準信号の周波数を予め定める周波数、たとえば666Hz下げる。また、下限信号がローレベルになると、下限であることを示す制御信号50を受け取ったと判断し、基準信号の周波数を予め定める周波数、たとえば666Hz上げる。666Hzは、予め定める周波数範囲である。上限設定値を表す電圧は、予め定める周波数範囲の上限を表す電圧であり、下限設定値を表す電圧は、予め定める周波数範囲の下限を表す電圧である。

【0056】
図4は、周波数検出装置10の電圧特性を示す図である。横軸が入力端子211に入力される入力信号の周波数(Hz)であり、縦軸が第1の出力端子25の電圧である電圧FM-OUT(V)である。図4に示した例は、上限設定値を2V、下限設定値を-2Vに設定したときの例である。

【0057】
図4では、電圧FM-OUTは、たとえば入力信号の周波数が299,000Hzのとき、約-2Vである。電圧FM-OUTは、入力信号の周波数が299,000Hzから上昇し、299,666Hzになるまで、比例して上昇する。電圧FM-OUTは、入力信号の周波数が299,666Hzになると、約2Vになる。すなわち、電圧FM-OUTは、入力信号の周波数が約666Hz上昇する間に、約-2Vから約2Vまで比例して上昇する。

【0058】
条件判断装置40は、電圧FM-OUTが2Vになると、ローカル発振器214の基準周波数を666Hz下げるので、電圧FM-OUTの電圧は、約2Vから約-2Vまで急激に下降する。以降、入力信号の周波数が666Hz上昇するごとに、ローカル発振器214の基準周波数を666Hz下げるので、電圧FM-OUTは、約2Vから約-2Vまで急激に下降する。

【0059】
図5は、周波数検出装置10の周波数特性を示す図である。横軸が入力端子211に入力される入力信号の周波数(Hz)であり、縦軸が第1の出力端子25の電圧を周波数に換算した周波数FM-OUT(Hz)である。図5に示した例は、図4に示した電圧FM-OUTを周波数FM-OUTに変換した例である。

【0060】
図5では、周波数FM-OUTは、たとえば入力信号の周波数が299,000Hzのとき、約-300Hzであり、入力信号の周波数が上昇すると、入力信号の周波数が299,666Hzになるまで、比例して上昇し、入力信号の周波数が299,666Hzになると、約350Hzになる。

【0061】
条件判断装置40は、電圧FM-OUTが2Vになると、ローカル発振器214の基準周波数を666Hz下げるので、周波数FM-OUTは、約-300Hzまで急激に下降する。以降、入力信号の周波数が666Hz上昇するごとに、ローカル発振器214の基準信号の周波数を666Hz下げるので、周波数FM-OUTは、約-300Hzまで急激に下降する。

【0062】
図6は、ローカル発振器214が出力する基準信号の周波数の切り換えを示す図である。横軸が入力端子211に入力される入力信号の周波数(Hz)であり、縦軸がローカル発振器214(図6では、「Local Oscillator」と記す)の周波数(Hz)である。

【0063】
たとえば、ローカル発振器214の周波数は、入力信号の周波数が299,000Hzから299,666Hzまでの間、4,200,000Hz、つまり4.2MHzである。入力信号の周波数が299,666Hz近辺で、電圧FM-OUTが2Vになると、条件判断装置40は、ローカル発振器214の基準周波数を666Hz下げるので、ローカル発振器214の周波数は、4,199,334Hzになり、電圧FM-OUTが-2Vまで下がる。以後、電圧FM-OUTが上昇し、電圧FM-OUTが2Vになるごとに、条件判断装置40は、ローカル発振器214の基準周波数を666Hz下げる。逆に、電圧FM-OUTが低下するときは、電圧FM-OUTが-2Vになるごとに、条件判断装置40は、ローカル発振器214の基準周波数を666Hz上げる。

【0064】
図7は、周波数検出装置10の改善された周波数特性を示す図である。図5に示した周波数特性では、入力信号の周波数が666Hz上昇するごとに、周波数FM-OUTの周波数が666Hz下がるのこぎり状の特性であるが、入力信号の周波数が666Hz上昇するごとに条件判断装置40がローカル発振器214の基準周波数を666Hz下げるので、周波数FM-OUTの周波数は、見かけ上直線的に上昇し、298,000Hz~302,000Hzの範囲で線形性が成立している。

【0065】
すなわち、入力信号の周波数が666Hz上昇するごとにローカル発振器214の基準周波数を666Hz下げるので、感度を保ったまま、FM-OUTの周波数検出範囲を広くすることができる。ここでローカル発振器214の基準信号の補正量は、電圧FM-OUTが設定範囲内になる値であればよい。

【0066】
図8は、クリープ現象によるZ軸方向移動部16を構成する圧電素子の厚みの経時変化を示す図である。横軸は時刻(図8では「Time」と記す:単位は秒(s))であり、縦軸はZ軸方向を制御する圧電素子への印加電圧(図8では「Z output」と記す:単位はボルト(V))である。ローカル発振器214の周波数の調整を手動で行う場合、カンチレバー11を試料2から離して調整を行わなければならない。近接させたまま調整を行うと、カンチレバー11と試料2とが接触し、プローブ12あるいは試料2を損傷する可能性がある。

【0067】
ローカル発振器214の周波数の調整が手動でカンチレバー11を試料2から離した状態で調整され、カンチレバー11を試料2に近接させた後、Z軸方向移動部16の圧電素子は、圧電素子の厚さが経時変化するクリープ現象が発生する。時刻150秒から時刻180秒までの期間Trに圧電素子を縮ませてプローブを試料から離して手動で調整し、時刻180秒にカンチレバー11を試料2に近接させたとき、圧電素子への印加電圧は約-75Vである。カンチレバー11を試料2に近接させた後、時刻180秒から時刻535秒までの期間Tzに、圧電素子への印加電圧は、約-75Vから約-64Vまで幾何級数的に絶対値が減少している。期間Tzでは、圧電素子の伸びはほぼ一定となるが、クリープ現象のため圧電素子を伸ばすのに必要な印加電圧の絶対値は徐々に減少する。

【0068】
FM-AFM1は、共振周波数が変化して、従来の技術であるFM-AFM9では測定できない限界を超えても、周波数検出装置10がローカル発振器214の基準信号の周波数を切り換えるので、ローカル発振器214の周波数の調整を手動で行う必要がない。したがって、クリープ現象による変化が安定するまで待つ必要がなく、測定時間を短縮することができる。また、手動による調整が不要になるので、操作性が格段に向上する。

【0069】
図9は、条件判断装置40による条件判断処理を示すフローチャートである。カンチレバー11を試料2に近づける動作が開始されると、ステップA1に移る。

【0070】
ステップA1では、条件判断装置40は、PLL回路24からの変動周波数Δfを示す電気信号の電圧(以下「PLLの出力」という)を取り込む。ステップA2では、条件判断装置40は、PLLの出力が設定範囲内か否かを判定する。PLLの出力が上限設定値の電圧未満であり、かつ下限設定値の電圧よりも高いと、PLLの出力が設定範囲内であると判定し、ステップA5に進む。PLLの出力が上限設定値の電圧以上、または下限設定値の電圧以下であると、PLLの出力が設定範囲内でないと判定し、ステップA3に進む。

【0071】
ステップA3では、条件判断装置40は、PLLの出力が上限に一致するか否かを判定する。PLLの出力が上限設定値以上になると、変動周波数Δfが上限に一致した、つまりPLLの出力が上限に一致したと判定し、ステップA6に進み、PLLの出力が上限設定値の電圧以上でないと、変動周波数Δfが上限に一致しなかった、つまりPLLの出力が上限に一致しなかったと判定し、ステップA4に進む。ステップA4では、条件判断装置40は、PLLの出力が下限に一致するか否かを判定する。PLLの出力が下限設定値の電圧以下になると、変動周波数Δfが下限に一致した、つまりPLLの出力が下限に一致したと判定し、ステップA7に進み、PLLの出力が下限設定値の電圧以下でないと、変動周波数Δfが下限に一致しなかった、つまりPLLの出力が下限に一致しなかったと判定し、ステップA5に進む。

【0072】
ステップA5では、条件判断装置40は、終了であるか否かを判定する。条件判断装置40は、XYスキャン部152から試料表面3の全面の走査が完了したことを知らされると、終了であると判定し、条件判断処理を終了する。XYスキャン部152から試料表面3の全面の走査が完了したことを知らされていないと、終了でないと判定し、ステップA1に戻る。

【0073】
ステップA6では、条件判断装置40は、ローカル発振器214の基準信号の周波数を所定値分、たとえば666Hz下げて、ステップA5に進む。ステップA7では、条件判断装置40は、ローカル発振器214の基準信号の周波数を所定値分、たとえば666Hz上げて、ステップA5に進む。ステップA3,A6は、第1の制御ステップに相当し、ステップA4,A7は、第2の制御ステップに相当する。

【0074】
上述した実施形態では、Z軸方向移動部16によって、プローブ12の先端部と試料表面3との距離を変化させたが、これに限定されるものではない。たとえば、Z軸方向移動部に代えて、カンチレバー11全体をZ軸方向に移動させる圧電素子からなるカンチレバー移動部を設け、距離制御部151は、カンチレバー移動部を制御して、プローブ12の先端部と試料表面3との距離を変化させてもよい。あるいは、Z軸方向移動部16とカンチレバー移動部とを両方用いて制御することも可能である。

【0075】
また、上述した実施形態では、条件判断装置40を、比較器41,42を用いて構成したが、図9に示した条件判断処理を行うプログラムを記憶する記憶装置と、記憶装置に記憶される条件判断処理を行うプログラムを実行する中央処理装置(以下「CPU」という)とによって構成してもよい。記憶装置は、条件判断処理を行うプログラムを記憶するROM(Read Only Memory)などの半導体メモリであってもよいし、RAM(Random
Access Memory)などの半導体メモリであってもよい。RAMの場合は、他の装置に記憶される条件判断処理を行うプログラムを、通信回線を介してダウンロードしてRAMに記憶するか、あるいは着脱可能な記録媒体に記憶される条件判断処理を行うプログラムを読み込んでRAMに記憶する構成としてもよい。

【0076】
また、上述した実施形態では、周波数検出装置10をFM-AFM1に用いた例を示したが、これに限定されるものではなく、たとえば周波数検出装置10は、水晶発振子などの振動体に析出する膜厚を測定する場合など、周波数が変動する振動体の周波数変化を検出する装置にも広く適用することができる。水晶発振子などの振動体に析出する膜厚を測定する装置に適用する場合は、連続長時間の自動測定が可能となる。

【0077】
また、上述した実施形態では、周波数検出回路10のヘテロダイン回路21では、混合器213によって、HPF212を通過した入力信号とローカル発振器214からの基準信号とを合成するとき、基準信号の周波数に入力信号の周波数を加算したものを用いているが、基準信号の周波数から入力信号の周波数を減算したものを用いてもよい。この場合、接続端子43に入力される電気信号の電圧が上限設定値を表す電圧以上であると、条件判断装置40からの指示によって、ローカル発振器214は、基準信号の周波数を予め定める周波数、たとえば666Hz上げる。また、接続端子43に入力される電気信号の電圧が下限設定値を表す電圧以下であると、条件判断装置40からの指示によって、ローカル発振器214は、基準信号の周波数を予め定める周波数、たとえば666Hz下げる。

【0078】
また、上述した実施形態では、条件判断装置40は、接続端子43に入力される電気信号の電圧が、上限設定値を表す電圧以上または下限設定値を表す電圧以下になると、基準信号の周波数を予め定める周波数分上下するように制御しているが、接続端子43に入力される電気信号の電圧が、上限設定値未満かつ下限設定値より高い範囲で一定の電圧になるように、すなわち接続端子43に入力される電気信号の電圧が示す周波数が一定の周波数になるように、基準信号の周波数を変化させてもよい。

【0079】
このように、振動体、たとえばカンチレバー11が振動する周波数を検出するにあたって、ヘテロダイン回路21によって、制御信号50に応じた周波数で発振する基準信号が生成され、生成された基準信号とカンチレバー11の振動による変位量を表す入力信号とを合成した合成信号が生成される。PLL回路24によって、ヘテロダイン回路21が生成した合成信号の周波数に応じた周波数で発振する発信信号、すなわち入力される電気信号の電圧に比例する周波数の矩形波の信号が生成され、生成された発信信号と合成信号との位相差が検出され、検出された位相差に基づいてカンチレバー11の周波数を示す出力信号が出力される。そして、条件判断装置40によって、PLL回路24が出力する出力信号が示す周波数が、予め定める周波数範囲の上限以上または下限以下となったとき、PLL回路24が出力する出力信号が示す周波数が前記予め定める周波数範囲の上限未満かつ下限よりも高い周波数となるように基準信号の周波数を変化させる制御信号50がヘテロダイン回路21に出力される。したがって、入力信号の周波数の範囲が、予め定める周波数範囲の上限または下限、たとえば高感度で検出することができる上限または下限に達したときに、基準信号の周波数を変化させることによって、高感度で検出することができる範囲を移動することができるので、カンチレバー11の共振周波数の検出感度を高く保ったまま、周波数検出範囲を広くすることができる。

【0080】
さらに、振動体、たとえばカンチレバー11が振動する周波数を検出するにあたって、ヘテロダイン回路21によって、制御信号50に応じた周波数で発振する基準信号が生成され、生成された基準信号とカンチレバー11の振動による変位量を表す入力信号とを合成した合成信号が生成される。PLL回路24によって、ヘテロダイン回路21が生成した合成信号の周波数に応じた周波数で発振する発信信号が生成され、生成された発信信号と合成信号との位相差が検出され、検出された位相差に基づいてカンチレバー11の周波数を示す出力信号が出力される。そして、条件判断装置40によって、PLL回路24が出力する出力信号が示す周波数が予め定める周波数となるように基準信号の周波数を変化させる制御信号50がヘテロダイン回路21に出力される。

【0081】
さらに、前記予め定める周波数範囲は、入力信号の周波数との関係で線形性が成立する出力信号が示す周波数の周波数範囲に設定されるので、線形性が成立する状態を維持したまま、周波数検出範囲を広くすることができる。

【0082】
さらに、PLL回路24は、カンチレバー11の周波数を電圧で示す出力信号が出力される。そして、条件判断装置40によって、前記出力信号の電圧が予め定める周波数範囲の上限の周波数を表す電圧以上になったとき、前記出力信号が示す周波数が予め定める周波数範囲の上限以上の周波数になったと判定され、前記出力信号の電圧が予め定める周波数範囲の下限の周波数を表す電圧以下になったとき、前記出力信号が示す周波数が予め定める周波数範囲の下限以下の周波数になったと判定される。したがって、上限下限の判断をPLL回路部24が出力する出力信号の電圧に基づいて行うことができる。

【0083】
さらに、周波数検出装置10を備え、周波数検出装置10によって検出される前記振動体、たとえばカンチレバー11の周波数に基づいて、試料表面3と前記振動体との距離を測定するので、高感度で、かつ、広い周波数検出範囲で観測することができるFM-AFM1を実現することができる。

【0084】
さらに、振動体は、カンチレバー11であるので、カンチレバー11による試料2の観測に適用することができる。

【0085】
さらに、制御信号50に応じた周波数で発振する基準信号を生成し、生成した基準信号とカンチレバー11の振動による変位量を表す入力信号とを合成した合成信号を生成するヘテロダイン回路21と、ヘテロダイン回路21が生成した合成信号の周波数に応じた周波数で発振する発信信号を生成し、生成した発信信号と合成信号との位相差を検出し、検出した位相差に基づいてカンチレバー11の周波数を示す出力信号を出力するPLL回路24とを含む周波数検出装置10によって、カンチレバー11が振動する周波数を検出するにあたって、図9に示したステップA3,A4,A6,A7では、PLL回路24が出力する出力信号が示す周波数が、予め定める周波数範囲の上限以上または下限以下となったとき、PLL回路24が出力する出力信号が示す周波数が前記予め定める周波数範囲の上限未満かつ下限よりも高い周波数となるように基準信号の周波数を変化させる制御信号50をヘテロダイン回路21に出力する。

【0086】
したがって、入力信号の周波数の範囲が、予め定める周波数範囲の上限または下限、たとえば高感度で検出することができる上限または下限に達したときに、基準信号の周波数を変化させることによって、高感度で検出することができる範囲を移動することができるので、カンチレバー11の共振周波数の検出感度を高く保ったまま、広い周波数検出範囲で検出することができる。

【0087】
さらに、条件判断装置40のCPUに、PLL回路24が出力する出力信号が示す周波数が、予め定める周波数範囲の上限以上または下限以下となったとき、PLL回路24が出力する出力信号が示す周波数が前記予め定める周波数範囲の上限未満かつ下限よりも高い周波数となるように基準信号の周波数を変化させる制御信号50をヘテロダイン回路21に出力する図9に示したステップA3,A4,A6,A7とを実行させるためのプログラムとして提供することができる。
【符号の説明】
【0088】
1,9 FM-AFM
2 試料
3 試料表面
10,90 周波数検出装置
11 カンチレバー
12 プローブ
14 変位検出計
15 制御コントローラ
16 Z軸方向移動部
17 XY軸方向移動部
18 テーブル
21,91 ヘテロダイン回路
22 BPF
23,29,41,42 比較器
24 PLL回路
25 第1の出力端子
26,212 HPF
27,213 混合器
28,242 LPF
30 位相シフタ
31 VGA
32 増幅器
33 第2の出力端子
40 条件判断装置
43~47 接続端子
151 距離制御部
152 XYスキャン部
211 入力端子
214 ローカル発振器
241 排他的論理和回路
243 LF
244 VCXO
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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