TOP > 国内特許検索 > 電磁波発生源可視化装置及び方法 > 明細書

明細書 :電磁波発生源可視化装置及び方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5435631号 (P5435631)
登録日 平成25年12月20日(2013.12.20)
発行日 平成26年3月5日(2014.3.5)
発明の名称または考案の名称 電磁波発生源可視化装置及び方法
国際特許分類 G01R  29/08        (2006.01)
G01R  31/00        (2006.01)
FI G01R 29/08 D
G01R 31/00
G01R 29/08 Z
請求項の数または発明の数 11
全頁数 15
出願番号 特願2009-201568 (P2009-201568)
出願日 平成21年9月1日(2009.9.1)
審査請求日 平成24年8月31日(2012.8.31)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504174135
【氏名又は名称】国立大学法人九州工業大学
発明者または考案者 【氏名】大塚 信也
【氏名】澤田 雅詞
【氏名】山村 洋平
個別代理人の代理人 【識別番号】100108660、【弁理士】、【氏名又は名称】大川 譲
特許請求の範囲 【請求項1】
測定対象領域から電磁波発生源座標に対応する点を含む領域を特定して、表示する電磁波発生源可視化装置において、
直交するX軸及びY軸上に配置した2対の4つのアンテナ、或いは1つのアンテナを共用した3つのアンテナと、
測定対象領域の風景を写す画像カメラと、
X軸及びY軸上に配置したアンテナ対に到達する電磁波を検出する検出部と、
到達した電磁波のそれぞれの時間差Δtx、Δtyを測定して、この各Δtx、Δtyの値により、測定対象領域の範囲を分割した分割領域を特定する信号処理及び解析部と、
前記信号処理及び解析部による解析結果として前記特定された分割領域を、前記画像カメラが写した風景に重畳して表示する表示部と、を備え、
前記信号処理及び解析部には、アンテナ面から電磁波発生可能性がある対象面までの距離が入力され、前記分割されるべき前記測定対象領域の範囲は、X軸及びY軸上のアンテナ間隔lx及びly、及び入力した距離Lにより決定されることから成る電磁波発生源可視化装置。
【請求項2】
前記信号処理及び解析部による解析結果は、アンテナに到達する電磁波の周波数成分をデジタル処理で抽出した周波数毎の評価を含み、前記表示部は、取得した信号の周波数分解した各成分毎の強度を表示する請求項1に記載の電磁波発生源可視化装置。
【請求項3】
前記信号処理及び解析部による解析結果は、特定時間に特定の発生位置で計測した信号検出数を含み、前記表示部は、その頻度情報を画像上に表示する請求項1に記載の電磁波発生源可視化装置。
【請求項4】
計測信号の強度を計測する機能を有し、前記頻度情報の表示機能と併用し、特定時間におけるその発生位置の強度情報を画像上に表示する請求項3に記載の電磁波発生源可視化装置。
【請求項5】
測定対象領域から電磁波発生源座標に対応する点を含む領域を特定して、表示する電磁波発生源可視化方法において、
直交するX軸及びY軸上に配置した2対、或いは1つのアンテナを共用した3つのアンテナと、測定対象領域の風景を撮影する画像カメラを備え、
前記アンテナを測定対象領域に向けて測定し、電磁波発生源があると判定されると、発生可能性がある対象面とアンテナ位置との距離Lを測定或いは推定し、
前記測定対象領域の範囲を、X軸及びY軸上のアンテナ間隔lx及びly、及び測定或いは推定した距離Lにより決定し、
X軸及びY軸上に配置したアンテナ対に到達する電磁波のそれぞれの時間差Δtx、Δtyを測定して、この各Δtx、Δtyの値により、前記測定対象領域の範囲を分割した分割領域を特定し、
前記特定された分割領域を、前記画像カメラが撮影した風景に重畳して表示する、
ことから成る電磁波発生源可視化方法。
【請求項6】
前記アンテナ対の2つのアンテナは、電磁波発生源方向に同方向に向けて配置するか、或いは、互いに内向きに配置される請求項5に記載の電磁波発生源可視化方法。
【請求項7】
前記アンテナ対の2つのアンテナの指向性範囲が重なる範囲を、前記測定対象領域の範囲として、この範囲を分割することにより前記分割領域を特定する請求項6に記載の電磁波発生源可視化方法。
【請求項8】
X軸及びY軸上に配置したアンテナ対に到達する電磁波のそれぞれの時間差Δtx、Δtyの大小関係により、前記測定対象領域の範囲が4分割されて、4象限のどの象限かが特定される請求項7に記載の電磁波発生源可視化方法。
【請求項9】
前記特定された象限のさらなる分割は、X軸及びY軸上に配置したアンテナ対に到達する電磁波のそれぞれの時間差Δtx、Δtyを、領域境界上に発生源があると仮定して求めたアンテナ対に到達する電磁波の時間差Tiと対比して、その大小関係で領域境界の左右あるいは上下どちらの領域にあるかを決定することにより行なう請求項8に記載の電磁波発生源可視化方法。
【請求項10】
前記分割領域の表示は、特定された領域の全面を、他の領域とは異なる表示をするか、或いは、領域内の一部を所定幅及び所定長さで表示する請求項9に記載の電磁波発生源可視化方法。
【請求項11】
前記分割領域の特定に際して、領域境界が特定されたときには、領域境界上を表示する請求項10に記載の電磁波発生源可視化方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象領域から電磁波発生源を特定して、表示する電磁波発生源可視化装置及び方法に関する。
【0002】
本発明が対象とする電磁波発生源としては、放電放射電磁波や放射ノイズ(EMC対応)、携帯電話などである。本発明は、電力機器や電気製品の異常診断(異常有無やその場所評価)や、ノイズ源の有無や発生源・部位の特定、携帯電話の使用者の有無や特定、電波を発信しているものの有無や位置特定に使用することができる。
【背景技術】
【0003】
放電起因の電磁波発生源の標定は、放電源の位置座標やアンテナからの距離を求めることにより行われている。特許文献1は、電磁波発生源からの電磁波の到来角を求めることのできる電波干渉計システムを開示する。この電波干渉計システムは、電磁波源が水平面内にあるときは2本のアンテナで到来角を求め、また、さらに方位角や仰角が必要な場合や、位置座標を求める必要がある場合には、複数組のアンテナ対を用いる。従来手法は、3次元的な発生源の座標やアンテナからの距離を求めるために、アンテナを3つ以上配置して、そのアンテナに到達する時間差に基づき行っている(点標定)。
【0004】
また、非特許文献1は、機器内部での不要電磁波放射源の位置を特定する技術を開示する。このために、機器の周辺に複数の電磁界センサを配置し、機器から放射される不要電磁波の空間分布を観測することで、特に低周波(数10MHz以下)に対して、機器における近傍電磁波放射源の推定を行っている。また、推定された放射源位置を、同時にカメラで撮影された機器の映像上に重ねて表示することも開示するが、位置標定を点で推定する必要がある。
【0005】
しかし、従来手法では、発生源を点で推定するための座標や距離を求めることは容易でなく、またその結果の妥当性を瞬時に判断することは困難である。また、低周波の近傍電磁界を測定しているために、発生源から離れた位置では減衰が大きく測定は電磁界センサ近傍の限られた範囲と制限されることが問題であった。そこで、対象方向における電磁波発生源の有無を評価し、有る場合はどこからどのような強度および周波数成分を有する電磁波が発生しているかを、発生源から離れた位置から広範囲に視覚的に容易にわかる装置の開発が求められていた。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特許第4015384号公報
【0007】

【非特許文献1】八木谷他「低周波電磁波源の位置推定に関する研究」、電子情報通信学会論文誌、Vol.J87-B、No.8、2004年8月、pp.1085-1093
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の電磁波発生位置標定技術は、位置標定を点で推定して、発生の有無や、3次元の座標、アンテナからの距離を表示することであったため、その結果の理解は困難であった。また、推定は電磁界センサ近傍の限られた範囲に制限されることが問題であり、どこからどのような強度および周波数成分を有する電磁波が発生しているかを、発生源から離れた位置から広範囲に測定することができず、その結果の妥当性の判断も容易でなかった。位置標定を点で推定するには、連立方程式を解く必要があり、解析的には解くことは困難である。
【0009】
そこで、本発明は、係る問題点を解決して、UHF帯を含む電磁波の発生源の特定を容易にして、可視化することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の電磁波発生源可視化装置は、測定対象領域から電磁波発生源を特定して、表示する。この電磁波発生源可視化装置は、直交するX軸及びY軸上に配置した2対の4つのアンテナ、或いは1つのアンテナを共用した3つのアンテナと、測定対象領域の風景を写す画像カメラと、X軸及びY軸上に配置したアンテナ対に到達する電磁波を検出する検出部と、到達した電磁波のそれぞれの時間差Δtx、Δtyを測定して、この各Δtx、Δtyの値により、測定対象領域の範囲を分割した分割領域を特定する信号処理及び解析部と、前記信号処理及び解析部による解析結果として前記特定された分割領域を、前記画像カメラが写した風景に重畳して表示する表示部と、から成る。
【0011】
信号処理及び解析部には、アンテナ面から電磁波発生可能性がある対象面までの距離が入力され、前記分割されるべき前記測定対象領域の範囲は、X軸及びY軸上のアンテナ対間隔lx及びly、及び設定された距離Lにより決定される。信号処理及び解析部による解析結果は、アンテナに到達する電磁波の周波数成分をデジタル処理で抽出した周波数毎の評価を含み、前記表示部は、取得した信号の周波数分解した各成分毎の強度を表示する。また、信号処理及び解析部による解析結果は、特定時間に特定の発生位置で計測した信号検出数を含み、前記表示部は、その頻度情報を画像上に表示する。また、計測信号の強度を計測する機能を有し、頻度情報表示機能と併用し、特定時間におけるその発生位置の強度情報を画像上に表示することができる。
【0012】
また、本発明の電磁波発生源可視化方法は、直交するX軸及びY軸上に配置した2対の4つのアンテナ、或いは1つのアンテナを共用した3つのアンテナと、測定対象領域の風景を撮影する画像カメラを備え、前記アンテナを測定対象領域に向けて測定し、電磁波発生源があると判定されると、発生可能性がある対象面とアンテナ位置との距離Lを測定あるいは推定し、前記測定対象領域の範囲を、X軸及びY軸上のアンテナ間隔lx及びly、及び測定或いは推定した距離Lにより決定し、X軸及びY軸上に配置したアンテナ対に到達する電磁波のそれぞれの時間差Δtx、Δtyを測定して、この各Δtx、Δtyの値により、前記測定対象領域の範囲を分割した分割領域を特定し、この特定された分割領域を、前記画像カメラが撮影した風景に重畳して表示する。
【0013】
アンテナ対を構成する2つのアンテナは、電磁波発生源方向に同方向に向けて配置するか、或いは、互いに内向きに配置される。アンテナ対の2つのアンテナの指向性範囲が重なる範囲を、前記測定対象領域の範囲として、この範囲を分割することにより前記分割領域を特定する。X軸及びY軸上に配置したアンテナ対に到達する電磁波のそれぞれの時間差Δtx、Δtyの正負の符号関係により、前記測定対象領域の範囲が各軸で2分割され、対象領域の面としては4分割されて、4象限のどの象限かが特定される。
【0014】
特定された象限のさらなる分割は、X軸及びY軸上に配置したアンテナ対に到達する電磁波のそれぞれの時間差Δtx、Δtyを、領域境界上に発生源があると仮定して求めたアンテナ対に到達する電磁波の時間差Tiと対比して、その大小関係で領域境界の左右、あるいは上下のどちらの領域にあるかを決定することにより行なう。分割領域の表示は、特定された領域の全面を、他の領域とは異なる表示をするか、或いは、領域内の一部を所定幅及び所定長さで表示する。分割領域の特定に際して、領域境界が特定されたときには、領域境界上を表示する。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、最低2組のアンテナ対を用いて、そのアンテナ対に到達する電磁波の時間差に基づき、風景画像を分割し、発生領域を確定することにより、位置標定結果の理解や結果の妥当性判断が可能となる。
【0016】
本発明によれば、電磁波発生位置を風景画像上に表示するため、評価結果の理解がしやすく、結果の妥当性を専門家でなくても判断できる。視覚情報として、電磁波発生源を確認でき、その発生頻度や強度を視覚的に知ることができる。
【0017】
また、位置標定を点でなく面(領域)で行うことにより、連立方程式を解く必要がない。面標定ではあるが、風景画像情報があるために、十分に発生部位の標定が可能であるだけでなく、処理を複雑にすれば(4分割->16分割->64分割->22n(2の2n乗)分割)、点に近い標定も可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の電磁波発生源可視化装置の概略全体構成を示す図である。
【図2】図1に例示の電磁波発生源可視化装置の概略動作を説明する図である。
【図3】アンテナ対配置を示す正面図である。
【図4】一対のアンテナのみの単純化した例を用いて、到達時間差を求める原理を説明する図である。
【図5】直交配置した3つのアンテナからの到達時間差を求める原理を説明する図である。
【図6】一対のアンテナによる検出範囲Wを説明する図である。
【図7】空間分割を説明する図であり、(A)は、X軸方向の2分割を説明する図であり、(B)は、X軸方向及びY軸方向それぞれの分割を説明する図である。
【図8】(A)は、空間16分割(軸上4分割)を説明する図であり、(B)は、空間64分割(軸上8分割)を説明する図である。
【図9】表示画面の空間4分割を説明する図である。
【図10】領域表示と幅表示の組み合わせの表示方法を例示する図である。
【図11】表示画面の空間16分割の表示方法を例示する図である。
【図12】16分割の場合について、領域表示と幅表示を組み合わせた表示方法を例示する図である。
【図13】発生源PDの距離Lと、時間差Δtの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、対象物から電磁波発生があるかないかを評価し、有る場合は画像上にその位置を表示するが、この位置表示を、座標や距離の測定値ではなく、対象面中の領域を特定することで行う。領域の特定はアンテナ対の信号到達差Δtに基づき行う。アンテナ対の間隔laと、対象面までの距離Lと電磁波伝搬速度cが分かれば、対象面を分割した場合の分割境界地点からの到達時間差Tiが一意に求まるため、それらの時間差Tiと計測による信号到達差Δtを比較することで、どの領域かを特定できる。アンテナ面から発生可能性がある対象面までの距離Lは、レーザ計測計やメジャーなどで計測した値、対象装置見取り図や配置図面などから読み取った値、或いはある程度の目安の値を用いる。或いは、発生可能性がある対象面が不明な場合は、アンテナ面から対象面の距離Lを近くから遠くに任意に自動的に変えて入力する。

【0020】
以下、例示に基づき本発明を説明する。図1は、本発明の電磁波発生源可視化装置の概略全体構成を示す図である。本発明が対象とする周波数成分は、基本的にVHF帯からUHF帯である。図示の装置は、主にUHF帯に感度を有する少なくとも3つのアンテナと、アンテナ観測方向の風景を写す画像カメラと、そのアンテナ対からの信号を検出する検出部と、検出されたその両端のアンテナに到達する電磁波の時間差Δtを求めて信号処理及び解析する信号処理及び解析部と、その結果をカメラ画像に重畳して表示する表示部とから構成される。さらに、信号処理及び解析部には、必要に応じて、アンテナから対象物までの距離を測定する測距用機器(レーザ距離計測計やメジャーなど)からの距離信号を入力する。

【0021】
画像カメラは、可視像を測定するCCDカメラ(静止像、動画の測定)を基本としているが、放電発光に起因する紫外光や導電性不良やトラッキングなどによる発熱部位を測定できる紫外線カメラや、赤外線温度カメラを併用することもできる。

【0022】
アンテナは、同一性能のものを直線上に配置した2つを一対とし、そのアンテナ対を最低2組用いる。アンテナ対は直交させる。アンテナは、基本的にX軸、Y軸用に2対(4つ)必要であるが、一つのアンテナを共用すると、3つにすることができる。アンテナ対からの信号を検出する検出部には、A/D変換やしきい値設定、トリガの機能を持たせる。

【0023】
信号処理及び解析部では、アンテナ対の両端のアンテナに到達する電磁波の時間差Δtを求めることが基本となるが、その他に、周波数成分をデジタル処理で抽出し、周波数毎の(例えば、300MHz以下の信号や、1GHz前後の信号など)評価も行う。取得した信号を周波数分解し、各成分毎に表示する。各周波数成分、例えば300MHz~600MHz成分と600MHz~900MHz成分、900MHz~1.2GHz成分の強度を表示して、どこからどのような周波数成分を有する電磁波が発生しているかを確認できる。さらに狹帯域の、例えば測定に対してノイズ成分となる放送波や携帯電話、航空無線などの通信波の搬送波周波数を選定して表示したり、それら周波数をデジタルフィルタリング処理で取り除いて評価することもできる。周波数毎の評価は、原因特定とノイズ識別にも有効である。場所の可視化特定だけでも原因特定やノイズ識別には有効である。

【0024】
また、信号処理及び解析部では、特定時間(例えば、10秒間、3分間、1時間など)における信号検出数(放電発生数N)を計測して、その発生位置の頻度情報を画像上に表示する。これは、周波数別の評価と併用することもできる。例えば、Nが~10、~100、~1000等で色や点滅の速度で表示し区別することができる。また、測定信号の強度を計測する機能を有し、上記の頻度情報表示機能と併用し、特定時間におけるその発生位置の強度情報を画像上に表示する。強度情報としては、電磁波波形の振幅値やその積算値あるいは見かけの換算電荷量の最大値を表示する。

【0025】
表示部は、信号処理及び解析部からのデータを、画像カメラで撮像された画像の上に重ねて表示する。アンテナによる計測方向の可視画像を取得し、その画像上にアンテナにより抽出された領域を表示することで、電磁波発生源を視覚的に領域として特定する。特定領域の表示については後述する。頻度情報については点滅時間で、強度情報については色情報で表示してもよい。特定周波数毎に表示を切り替えてもよい。また、リアルタイム測定だけでなく、オフラインでも測定可能である。オフラインでは、あるしきい値レベル以上の信号を広帯域で取り込んでおき、あとで必要な周波数を解析する。

【0026】
複数箇所の発生源があっても、ランダム発生している場合、数10ns間の差があって、前の電磁波波形との重なりが無ければ問題ない。複数箇所の発生源が同時発生している場合、この測定はエラーとなる可能性がある。但し、常に同時に発生していると考えられず、測定を繰り返す(ある時間測定する)ことにより、ランダム発生のデータが取得できることになる。

【0027】
図2は、図1に例示の電磁波発生源可視化装置の概略動作を説明する図である。まず、対象物体を含む広い範囲を対象として信号発生の有無を調べる。対象物を含む特定方向にアンテナを向けて、対象とする向きに正対して測定し(1)、電磁波源の有無を調べる(2)。しきい値以上の信号が検出部で検出されると、両方のアンテナで検出されたかを確認する。一方であれば、アンテナ配置に基づく発生源と検出アンテナの関係に基づき、両アンテナで検出されるように、アンテナの向きを変える(3)。電磁波発生があると判定されると、レーザ測距計などで測定対象物とアンテナ位置との距離Lを測定するか、又は、目安の距離を推定することも可能である(4)。次に、評価パラメータを入力する(5)。評価パラメータは、画像の分割数[4分割、16分割、…]、測定時間[1回、繰り返し(時間、回数)]、追加評価[周波数、頻度、強度]等である。次に、アンテナ間隔lx及びly、アンテナ向き、及び測定又は推定した距離Lを考慮して、測定対象領域を決定する(6)。lxはX軸方向のアンテナ対の間隔であり、lyはY軸方向のアンテナ対の間隔である。

【0028】
次に、X軸方向及びY軸方向の各アンテナ対に到達する電磁波のそれぞれの時間差Δtx、Δtyを測定して、この各Δtx、Δtyの値により評価して(7)、測定対象領域を分割した分割領域を特定する(8)。この特定された分割領域を表示し、記録する(9)。

【0029】
次に、電磁波発生源可視化装置各部の動作をより詳細に説明する。図3は、アンテナ対配置を示す正面図である。4つ(2対)のアンテナを配置する場合は、(A)配置例1及び(B)配置例2に示すように、四角形の各頂点、或いは各辺の中央に配置する。なお、四角形は正方形でもいいし、長方形とする場合は、長辺を大地と水平にする。アンテナ3つの場合は、(A)配置例1に示すように、四角形の何れか3つの頂点とする。画像カメラ(及び必要に応じて、測距用機器)は、四角形の中心に配置する。

【0030】
次に、電磁波発生源[座標(d,h)]から、各アンテナ対で測定される到達信号時間差ΔtxおよびΔtyを求める原理について説明する。この原理に基づき、到達信号時間差ΔtxおよびΔtyを測定すれば、発生源の座標(d,h)を求めることができる。但し、本発明は、発生源の座標(d,h)を求めることを必要としない。なお、本装置では、Δtxの検討の際には、d軸の座標のみを、Δtyの検討の際にはh軸の座標のみを考慮し、対象とする軸の座標のみで領域分割を行うが、アンテナからの距離が離れると発生源の対象としない軸の座標の影響はなくなる(図13参照)。

【0031】
まず、図4は、一対のアンテナのみの単純化した例を用いて、到達時間差を求める原理を説明する図である。図示のように、距離lxの間隔で一対のアンテナ1及びアンテナ2が配置され、かつ、これと垂直方向に距離Lの位置に発生源があるとする。アンテナ1とアンテナ2を結ぶ線がX軸上にあり、かつ、2つのアンテナの中央を原点とする。発生源のX座標をdとする。伝搬速度をc (光速)とすると、アンテナ1(到達時間:t1)とアンテナ2(到達時間:t2)の電磁波の到達時間差、Δtx(t1-t2)は、以下の式で表される。

【0032】
【数1】
JP0005435631B2_000002t.gif

【0033】
幾何学配置によりアンテナ間の到達時間差が決まる。即ち、距離Lが指定されれば(アンテナ間隔lxは既知)、到達時間差Δtxの測定により、dが決まる。距離Lの測定のために、上述したように、測距用機器を用いることができる。

【0034】
図5は、直交配置した3つのアンテナからの到達時間差を求める原理を説明する図である。アンテナ位置は、表示画面のコーナーに、丸数字で1,2,3の表示をしている。説明を容易にするために、各アンテナ間隔lx、ly=2m、とする。このとき、図4と同様にX軸上に配置されたアンテナ1と2の到達時間差Δtx(t1-t2)は、上記数1に、lx=2を代入することにより、以下のように求まる。dは、発生源のX座標である。

【0035】
【数2】
JP0005435631B2_000003t.gif

【0036】
また、Y軸上に配置されたアンテナ1と3の到達時間差Δty(t1-t3)が、以下のように求まる。hは、発生源のY座標である。

【0037】
【数3】
JP0005435631B2_000004t.gif

【0038】
数2及び数3は、発生源の座標(d,h)から、各アンテナ対で測定される到達信号時間差ΔtxおよびΔtyを表す厳密解である。詳細は後述するように、実際の標定には、h(Y座標の情報)及びd(X座標の情報)ではなく、領域分割のために境界の時間差Tiを求める。本発明は、一対のアンテナによる検出範囲Wの中に位置する発生源座標(d,h)に対応する点を含む領域を特定する。

【0039】
図6は、一対のアンテナによる検出範囲Wを説明する図である。検出範囲Wの大きさは、アンテナの向きにより異なる。図6(A)は2つのアンテナを互いに外向きに配置した例を示し、(B)は発生源方向に正面(同方向)に向けて配置した例を示し、(C)は互いに内向きに配置した例を示している。図中において、各アンテナのそれぞれの指向性範囲を三角形状エリアで示している。アンテナからのある距離Lの位置で、一方のアンテナのみでも検出可能の範囲をWDと表示している。最初の電磁波発生源の有無の検出はこの範囲WDで実施される。また、両アンテナでの検出範囲は、それぞれの指向性範囲が重なる範囲であり、これをWと表示している。位置標定はこの範囲Wで実施する。

【0040】
図6(C)に示すように、アンテナを内向きにした場合、検出範囲Wは、アンテナからの距離Lが変化しても、検出範囲Wは一定であり、アンテナ間隔laに等しい(W=la)。

【0041】
図6(B)及び(A)に示すように、アンテナを正面及び外向きに配置した場合、検出範囲Wの大きさには距離L依存性があり、アンテナからの距離Lの変化につれて検出範囲Wも変化する。アンテナを正面及び内向きに配置すると、両アンテナの指向性範囲の重なりが広くなり、測定可能距離(例えば、距離L=20m)で検出範囲Wが広くなることから、一対のアンテナは内向きから正面までに配置することが望ましい。アンテナを正面に配置した場合、検出範囲Wは、式:W=2Ltan(α/2)-laによって表すことができる。ここで、αはアンテナ指向角度である。なお、アンテナ指向角度は、任意に設計できるが、60度程度としておけばよい。

【0042】
図7は、空間分割を説明する図であり、(A)は、X軸方向の2分割を説明する図であり、(B)は、X軸方向及びY軸方向それぞれの分割を説明する図である。(A)に示すように、間隔laの一対のアンテナALとARから、距離Lだけ離れた位置に、X軸方向に検出範囲Wx(図6に示すWに相当)があると仮定する。同様な間隔laの一対のアンテナをY軸方向にも備えることにより、同じ検出範囲Wyが、図7(B)に示すように、Y軸方向にもあると仮定する。空間4分割は、左右(X軸)、上下(Y軸)それぞれに2分割することにより行われる。この空間4分割は、各アンテナ対の到達時間差Δtに基づき行われる。X軸で考えると(Δtx= tAL - tAR)、アンテナALとARに到達する時間が同時であれば(Δtx=0)、発生源はアンテナの中央の前方に、Δtx>0(tAL>tAR)であればアンテナARの方が近いと言うことで中央からRight(右)側に有ると言うことになる。これをY軸でも行い、最も単純な場合は、4象限のどの象限かが特定される。

【0043】
図7(B)に示す*印が、電磁波発生源の位置であるとする。X軸のアンテナ対で右アンテナの到達時間が速く、Y軸のアンテナ対で上アンテナの到達時間が速い場合、第1象限に発生があると評価される(空間4分割:最も単純な分割)。更に領域分解能を上げるには、詳細は後述するように、各象限のX、Y軸をそれぞれ2分割することにより空間16分割とし、4分割することにより空間64分割となる。図中のハッチングは、空間64分割での位置標定結果を例示している。但し、電磁波発生源の位置は、点*を表示するのでは無く、その点を含む分割領域を表示するものである。

【0044】
図8(A)は、空間16分割(軸上4分割)を説明する図であり、(B)は、空間64分割(軸上8分割)を説明する図である。図示のように、間隔laの一対のアンテナALとARから、距離Lだけ離れた位置に検出範囲Wxがあると仮定する。図7を参照して説明したようにして、各アンテナ対の到達時間差Δtに基づき、4象限のどの象限かは、既に特定された状態にあると仮定する。

【0045】
このようにして特定された象限の中で、空間16分割は、さらに、X軸方向及びY軸方向に2分割することにより行われる。今、上記の空間4分割により、X軸方向については、図8(A)に示す右半分の領域が特定されたと仮定する。この特定された領域のX、Y軸方向それぞれのさらなる2分割は、各アンテナ対の到達時間差Δtを、分割すべき領域境界P2上の時間差T2(一般的にはTi)と対比することにより行う。図8(A)において、検出範囲Wの端位置をP4で示し、この検出範囲Wを半分に分けた中央位置(境界位置)をP2で示している。この場合、中央位置P2に発生源があると仮定した場合の一対のアンテナALとAR間の到達時間差T2を予め求めておく。一般的には、境界位置Piに発生源があると仮定した場合の到達時間差をTiとしている。そして、各アンテナ対の到達時間差Δtを測定し、この測定時間差Δtと、事前に求めた時間差T2を対比して、その大小関係で、境界位置P2の左右どちらの領域(Wx/4)にあるかを決定する。

【0046】
以上、X軸平面について述べたが、実際はY軸方向の高さについても同様に領域を特定する。なお、図7に示す左右半分のどちらの領域(Wx/2)であっても、時間差の絶対値は同じで符号が異なるだけである。中心から左右、あるいは上下の関係は対称である。絶対値表示だと一つの式で表すことができる。領域Wx(或いはWy)の端位置P4及びその1/2の位置P2にそれぞれ発生源があると仮定した場合の一対のアンテナALとAR間の到達時間差T4及びT2は以下の式によって求めることができる。そしてそれぞれの絶対値である測定値|Δt|と|T2|の大小関係で2分割のどちらかが決まる。なお、予め求めた到達時間差T4は、領域近傍かどうかの判断において、利用することができる。測定誤差などで、T4より大きくΔtが評価された場合は、より詳細な表示の際に、領域の外と表示することができる。

【0047】
【数4】
JP0005435631B2_000005t.gif

【0048】
【数5】
JP0005435631B2_000006t.gif

【0049】
図8(B)は、空間64分割を説明する図である。間隔laの一対のアンテナALとARから、距離Lだけ離れた位置に検出範囲Wxがあると仮定する。空間64分割は、上記の空間16分割と同様に行う。空間16分割が、領域Wxの範囲を2分割するのに対して、空間64分割は、Wx/2の範囲を4分割する点でのみ異なっている。領域Wx/2をさらに4分割した位置P1及びP3にそれぞれ発生源があると仮定した場合の一対のアンテナALとAR間の到達時間差T1及びT3は以下の式によって求めることができる(位置P2に発生源があると仮定した到達時間差T2については上述した)。そして測定時間差Δtの絶対値|Δt|と、絶対値|T1|、|T2|、|T3|の大小関係で、どの範囲内に相当するかが決まる。なお、領域分割の際、Δtが、境界となる0、T1、T2、T3、T4に等しいとき、境界上にあると判断する。

【0050】
【数6】
JP0005435631B2_000007t.gif

【0051】
【数7】
JP0005435631B2_000008t.gif

【0052】
同様に、アンテナ間の分割を増やすほど(n分割)、空間の分割はその分割数nの二乗(22n)で細かくなる。アンテナの間隔とアンテナと発生源の幾何学配置に基づく到達時間差により、アンテナ間の画像領域を更に分割できる。分割数を増やすと、標定領域の分解能が上がる。このような分割領域に基づく位置標定は、従来の点標定と異なり、分割領域内では多少の誤差を許容できる利点がある。

【0053】
アンテナから距離が離れると、撮影画像は小さくなる(遠近法)が、距離に応じて撮影画像を大きく表示する機能を備えることができる。画像分割は、アンテナ向き及び距離Lに依存して変化する検出範囲Wを求め(図6参照)、この求めた検出範囲Wを分割する。画像分割の精度は、検出部の測定A/D部(アナログ/デジタル変換部、検出部にオシロスコープを使用する場合は、そのサンプリング周波数)の性能による。高サンプリング機器であれば、精度は上がるが、値段は高くなる。距離が離れると、アンテナ対間の到達時間差は小さくなる。この時間差がどの画像分割の時間Tiと対応するかで領域が決まることになる。例えば、L=20mの距離で、アンテナ距離2mの場合、時間差は0.1ns以上となる。そのため、サンプリングは10GS/s以上が望まれる。

【0054】
次に、図9~図12を参照して、領域分割結果の表示について説明する。

【0055】
特定領域(発生源を含むと評定された領域)の表示は、画像カメラにより撮像した可視像の上に重ねるようにして、その画像面を分割して、例えば、他の領域とは異なる色表示をすることにより行う。

【0056】
図9は、表示画面の空間4分割を示し、(A)~(C)は標定された特定領域を領域表示する場合を示し、(D)~(F)は特定領域内の中央部を幅表示する場合を示し、(G)は、(D)に示す表示幅を説明する図である。図9(A)に示すように、X軸、Y軸を定義する(画面中央が原点)。X軸上に配置されたアンテナ1と2の到達時間差Δtx>0,かつ、Y軸上に配置されたアンテナ1と3の到達時間差Δty>0の場合を、領域表示すると、図9(A)に示すように、X軸及びY軸ライン(境界ライン)のそれぞれの正側を含む標定された領域全面の表示となる。一つの軸の到達時間差がゼロであれば(Δtx=0,Δty>0)、アンテナ間の中央に発生源があるが、その際は図9(B)に示すように、その境界ラインを選択し、その上に、例えば、境界ラインとは異なる色表示により、或いは、境界ラインとは区別できるような幅のラインとして、軸上に領域表示する。Δtx=0,Δty=0の場合、図9(C)に示すように、境界ラインの交点(原点)に、ドット表示する。

【0057】
図9(D)~(F)に示す幅表示の場合、標定された特定領域の全面を表示しない。Δtx>0,かつ、Δty>0の場合、図9(D)に示すように、境界ラインとは離して幅表示する。幅表示することにより、誤差などで隣の領域に表示される誤りを防ぐことができる。幅表示は、例えば、(G)に示すような幅及び長さを有する矩形を、表示領域の中央に表示する。図9(E)は、(B)の場合に対応し、Δtx=0,かつ、Δty>0の場合、Y軸ラインと交差するように幅表示する。また、図9(F)は、(C)の場合に対応し、X軸方向だけでなく、Y軸方向にも時間差ゼロの場合(Δtx=0,かつ、Δty=0)を示し、原点上に、所定幅及び長さを有するラインとして表示する。境界ライン上の表示は、厳密に到達時間差がゼロの場合だけでなく、境界ライン近辺(例えば、30%以内)の位置に相当する時間差の場合にも行う。

【0058】
また、図10は、領域表示と幅表示の組み合わせの表示方法を例示する図である。上述した領域表示と幅表示を組み合わせることにより、より誤りのない表示をすることができる。これによって、(1)どの領域にあって、かつ(2)分割ラインへの近さ、を知ることができる。

【0059】
図11は、図9と同様な表示であるが、表示画面の空間16分割の表示方法を例示する図である。図11(A)~(G)は、それぞれ図9(A)~(G)に対応する。

【0060】
また、図12は、空間16分割の場合について、図10と同様に、領域表示と幅表示を組み合わせた表示方法を例示する図である。上述した領域表示と幅表示を組み合わせることにより、より誤りのない表示をすることができる。

【0061】
領域標定の空間分解能を上げるには、分割数を上げるか当該装置を対象物に近づける。分割数を上げるには、上記の幾何学的配置に基づく時間差による領域分割を更に上げればよい。また、観測領域外の表示も必要に応じてできる。アンテナ指向性により、一方のアンテナだけ感度がある場合、発生源の方向もわかる。これは、アンテナをそちらの方に向けることに役立つ。

【0062】
図13は、発生源PDのアンテナからの距離Lと、X軸アンテナ対への到達時間差Δtの関係を示すグラフであり、発生源のY軸座標位置hの影響を示すものである。発生源の領域標定は標定する軸に対応する情報のみで評価するが、他の軸の位置が影響どのように影響するかを表している。発生源とアンテナの距離が近い場合は、他の軸の位置の影響が時間差に表れるが、おおよそ5m以上離れると影響は無くなり、対象とする軸だけで評価しても良いことが分かる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12