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明細書 :新規DIF-1誘導体

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5476650号 (P5476650)
公開番号 特開2010-180160 (P2010-180160A)
登録日 平成26年2月21日(2014.2.21)
発行日 平成26年4月23日(2014.4.23)
公開日 平成22年8月19日(2010.8.19)
発明の名称または考案の名称 新規DIF-1誘導体
国際特許分類 C07C 235/46        (2006.01)
A61K  31/166       (2006.01)
A61P  43/00        (2006.01)
A61P  35/00        (2006.01)
A61P  35/02        (2006.01)
A61P   3/10        (2006.01)
A61P   3/04        (2006.01)
FI C07C 235/46 CSP
A61K 31/166
A61P 43/00 111
A61P 43/00 105
A61P 35/00
A61P 35/02
A61P 3/10
A61P 3/04
請求項の数または発明の数 4
全頁数 13
出願番号 特願2009-025149 (P2009-025149)
出願日 平成21年2月5日(2009.2.5)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 Biochemical and Biophysical Research Communications 377(2008) 掲載日 2008年10月31日 掲載アドレス http://www.elsevier.com/wps/find/journaldescription.cws_home/622790/bibliographic
審査請求日 平成23年11月30日(2011.11.30)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504145364
【氏名又は名称】国立大学法人群馬大学
発明者または考案者 【氏名】久保原 禅
個別代理人の代理人 【識別番号】100100549、【弁理士】、【氏名又は名称】川口 嘉之
【識別番号】100089244、【弁理士】、【氏名又は名称】遠山 勉
【識別番号】100126505、【弁理士】、【氏名又は名称】佐貫 伸一
審査官 【審査官】目代 博茂
参考文献・文献 特開2005-289891(JP,A)
特開2006-340615(JP,A)
特開2006-290810(JP,A)
Biochemical and Biophysical Research Communications,2008年,377,1012-1017
調査した分野 C07C
CAplus/REGISTRY(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
記式で表わされる化合物又はその塩。
【化1】
JP0005476650B2_000009t.gif

【請求項2】
下記化合物又はその塩を含む、細胞性粘菌分化誘導剤。
【化2】
JP0005476650B2_000010t.gif

【請求項3】
下記化合物又はその塩を含む、腫瘍細胞増殖抑制剤。
【化3】
JP0005476650B2_000011t.gif

【請求項4】
下記化合物又はその塩を含む、糖代謝促進剤。
【化4】
JP0005476650B2_000012t.gif
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、新規化合物、当該化合物を有効成分とする細胞性粘菌分化誘導剤、腫瘍細胞増殖阻害剤および糖代謝促進剤に関する。
【背景技術】
【0002】
土壌微生物であるカビ等の真菌類は薬剤資源として古くから利用されており、人間社会に多大な貢献をしてきた。しかしながら、未だ有効な治療薬が開発されていないウイルス性疾患や難病の存在、薬剤耐性菌の出現などのため、「創薬」に対する社会的ニーズは極めて大きく、新規リード化合物の探索、資源開発が求められている。
同じく土壌微生物である「細胞性粘菌類」(胞子と柄(え)からなる粘菌子実体)と「真菌(カビ)類」は、分類学上の異なる「界(あるいは門)」に属する進化的にかけ離れた微生物群であり、本発明者らは、細胞性粘菌類を「新たな創薬資源」と考え、細胞性粘菌由来の各種薬理活性物質を単離・同定してきた。
粘菌由来の薬理活性物質の1つDIF-1(下記左)は、もともと粘菌自身の柄細胞分化を誘導する粘菌の分化誘導因子として単離された化合物である(非特許文献1)。本発明者はDIF-1やDIF-3(下記右)、さらにはそれらの誘導体が腫瘍細胞増殖阻害効果や糖代謝促進効果等の薬理活性を有することを発見し、報告した(特許文献1,2)。
しかしながら、DIF-1の側鎖にアミドを導入した化合物については合成されておらず、その生物活性も不明であった。
【化1】
JP0005476650B2_000002t.gif

【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】特開2006-340615号公報
【特許文献2】特開2006-290810号公報
【0004】

【非特許文献1】Morris et al. 1987. Nature, vol. 328(6133):p811-814
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、細胞分化誘導効果、腫瘍細胞増殖抑制効果および糖代謝促進効果などの薬理効果を有する新規な化合物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者はさらなるDIF-1誘導体の探索を行った結果、DIF-1のケトン部分をアミドにした化合物(アミド誘導体)の合成に成功し、それらのアミド誘導体が細胞分化誘導効果、腫瘍細胞増殖抑制効果および糖代謝促進効果などの薬理効果を有することを見い出し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明は以下の通りである。
(1)下記一般式(I)で表わされる化合物又はその塩。
【化2】
JP0005476650B2_000003t.gif
式中、R1は炭素数1~10のアルキル基またはフェニル基を示し、R2は炭素数1~10のアルキル基を示し、X1、X2は独立してハロゲンを示す。
(2)R1が炭素数1~6のアルキル基であり、R2が炭素数4~10のアルキル基である、(1)の化合物又はその塩。
(3)R1がメチル基であり、R2が炭素数4~8のアルキル基である、(1)の化合物又はその塩。
(4)X1およびX2が塩素である、(1)~(3)のいずれかの化合物又はその塩。
(5)(1)の化合物であって、R1がメチル基であり、R2が炭素数4~6のアルキル基であり、X1およびX2が塩素である化合物又はその塩を含む、細胞性粘菌分化誘導剤。
(6)(1)の化合物であって、R1がメチル基であり、R2が炭素数4~7のアルキル基であり、X1およびX2が塩素である化合物又はその塩を含む、腫瘍細胞増殖抑制剤。
(7)(1)の化合物であって、R1がメチル基であり、R2が炭素数6~8のアルキル基であり、X1およびX2が塩素である化合物又はその塩を含む、糖代謝促進剤。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】各DIF-1誘導体の細胞性粘菌に対する分化誘導効果を示す図。結果は3回(A)または2回(B)の実験の平均値と標準偏差で示した。**は非添加時(DMSO)に比べてp<0.05で有意であることを示す。A:15μM、B:5,10,20μM。
【図2】各DIF-1誘導体のK562細胞に対する増殖抑制効果を示す図。結果は4回(A)または5回(B)の実験の平均値と標準偏差で示した。*は非添加時(DMSO)に比べてp<0.02で有意であることを示し、**は非添加時(DMSO)に比べてp<0.01で有意であることを示す。A:0.5nM、B:0.1,0.2,0.5,1,2nM。
【図3】各DIF-1誘導体の3T3-L1細胞に対する増殖抑制効果(A)と糖代謝促進効果(B)を示す図。結果は3回(A)または4回(B)の実験の平均値と標準偏差で示した。**は非添加時(DMSO)に比べてp<0.01で有意であることを示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に本発明を詳しく説明する。
本発明の化合物は、一般式(I)で表される。
【化3】
JP0005476650B2_000004t.gif
式中、R1は炭素数1~10のアルキル基またはフェニル基を示す。R1は炭素数1~6のアルキル基であることが好ましく、メチル基であることがより好ましい。
2は炭素数1~10のアルキル基を示す。R2は炭素数4~10のアルキル基であることが好ましく、炭素数4~8のアルキル基であることがより好ましい。
なお、アルキル基は直鎖でもよいし、枝分かれを有してもよいし、環状アルキル基でもよいが、直鎖が好ましい。
1、X2は独立してハロゲンを示し、それぞれCl、Br、Iのいずれでもよい。

【0010】
一般式(I)の化合物としては、下記化合物が特に好ましい。
【化4】
JP0005476650B2_000005t.gif

【0011】
本発明の化合物は下記の手順に従って合成することができる。
【化5】
JP0005476650B2_000006t.gif

【0012】
上記DIF-1[A]、DIF-1[A+1]、DIF-1[A+2]、およびDIF-1[A+3]は、腫瘍細胞に対して増殖抑制効果を有する。したがって、これらの化合物またはその薬学的に許容される塩は、腫瘍細胞増殖阻害剤、さらには、抗腫瘍剤として用いることができる。適用対象となる腫瘍の種類は特に制限されないが、肺癌、悪性リンパ腫(例えば、細網肉腫、リンパ肉腫、ホジキン病等)、消化器癌(例えば、胃癌、胆のう・胆管癌、膵臓癌、肝癌、結腸癌、直腸癌等)、乳癌、卵巣癌、骨軟部肉腫(例えば、骨肉腫等)、膀胱癌、白血病(例えば、慢性骨髄性白血病の急性転化を含む急性白血病等)、腎臓癌、および前立腺癌等が例示される。

【0013】
また、上記DIF-1[A+2]、DIF-1[A+3]、およびDIF-1[A+4]は、モデル正常細胞に対して糖代謝促進作用を有する。したがって、これらの化合物またはその薬学的に許容される塩は、糖取り込み促進剤や血糖降下剤として用いることができ、さらには、糖尿病、肥満などの疾患の治療薬又は予防薬として用いることができる。

【0014】
また、上記DIF-1[A]、DIF-1[A+1]、およびDIF-1[A+2]は、細胞性粘菌に対して分化誘導作用を有する。したがって、これらの化合物またはその薬学的に許容される塩は、細胞性粘菌の分化誘導剤として用いることができる。

【0015】
一般式(I)の化合物の薬学的に許容される塩としては、無機酸付加塩(例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩等)、有機カルボン酸・スルホン酸付加塩(例えばギ酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩等)、あるいは、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム等の金属塩が挙げられる。なお、一般式(I)の化合物は水和物であってもよい。

【0016】
一般式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩は医薬の有効成分として使用することができる。一般式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を含有してなる医薬は、医薬製剤の製造法で一般的に用いられている公知の手段に従って、該化合物またはその薬学的に許容される塩を、そのまま、あるいは薬理学的に許容される担体と混合して、例えば、錠剤(糖衣錠、フィルムコーティング錠を含む)、散剤、顆粒剤、カプセル剤、(ソフトカプセルを含む)、液剤、注射剤、坐剤、徐放剤等の医薬製剤として、経口的または非経口的(例、局所、直腸、静脈投与等)に安全に投与することができる。
一般式(I)の化合物またはその塩の医薬中の含有量は、製剤全体の約0.01ないし約100重量%である。
一般式(I)の化合物またはその塩の投与量は、投与対象、対象臓器、症状、投与方法などにより異なり特に制限されないが、一般的に、患者(体重60kgとして)に対して、一日につき約0.1~100mg、好ましくは約1.0~50mg、より好ましくは約1.0~20mgである。

【0017】
薬理学的に許容される担体としては、例えば固形製剤における賦形剤、滑沢剤、結合剤及び崩壊剤、あるいは液状製剤における溶剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤及び無痛化剤等が挙げられる。更に必要に応じ、通常の防腐剤、抗酸化剤、着色剤、甘味剤、吸着剤、湿潤剤等の添加物を適宜、適量用いることもできる。賦形剤としては、例えば乳糖、白糖、D-マンニトール、デンプン、コーンスターチ、結晶セルロース、軽質無水ケイ酸等が挙げられる。滑沢剤としては、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、コロイドシリカ等が挙げられる。結合剤としては、例えば結晶セルロース、白糖、D-マンニトール、デキストリン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、デンプン、ショ糖、ゼラチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム等が挙げられる。崩壊剤としては、例えばデンプン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、L-ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。溶剤としては、例えば注射用水、アルコール、プロピレングリコール、マクロゴール、ゴマ油、トウモロコシ油、オリーブ油等が挙げられる。溶解補助剤としては、例えばポリエチレングリコール、プロピレングリコール、D-マンニトール、安息香酸ベンジル、エタノール、トリスアミノメタン、コレステロール、トリエタノールアミン、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム等が挙げられる。懸濁化剤としては、例えばステアリルトリエタノールアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルアミノプロピオン酸、レシチン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、モノステアリン酸グリセリン、等の界面活性剤;例えばポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等の親水性高分子等が挙げられる。等張化剤としては、例えばブドウ糖、 D-ソルビトール、塩化ナトリウム、グリセリン、D-マンニトール等が挙げられる。緩衝剤としては、例えばリン酸塩、酢酸塩、炭酸塩、クエン酸塩等の緩衝液等が挙げられる。無痛化剤としては、例えばベンジルアルコール等が挙げられる。防腐剤としては、例えばパラヒドロキシ安息香酸エステル類、クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、デヒドロ酢酸、ソルビン酸等が挙げられる。抗酸化剤としては、例えば亜硫酸塩、アスコルビン酸、α-トコフェロール等が挙げられる。
【実施例】
【0018】
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。もっとも、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0019】
合成例
2,6-bis(benzyloxy)-N-butyl-4-methoxybenzamideの合成
2,6-bis(benzyloxy)-4-methoxybenzaldehyde (100 mg, 0.287 mmol) をtert-BuOH-H2O に3:1で溶解した溶液4mLに、室温で、NaH2PO4・2H2O (67 mg, 0.429 mmol), 2-methyl-2-butene (0.24 mL, 2.27 mmol) および NaClO2 (179 mg, 1.58 mmol) を連続して加えた。2時間撹拌した後、その混合物を1 M 炭酸ナトリウム水溶液 (5 mL)に加え、酢酸エチル (5 mL)で洗浄した。 水層に 1 M HClを加えて酸性にし、酢酸エチル (10 mL) で3回抽出した。有機層を食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムを用いて乾燥させ、濃縮して、粗(crude)2,6-bis(benzyloxy)-4-methoxybenzoic acidを得た。これをCH2Cl2 (3 mL)に溶解し、この溶液にn-Butylamine (80 mL, 0.81 mmol), N,N-diisopropylethylamine (150 mL, 0.86 mmol) および (125 mg, 0.328 mmol) を室温で加えた。3時間撹拌した後、そ
の混合物を0.5 M HCl (10 mL)に加え、酢酸エチル(10 mL)で3回抽出した。有機層をH2O および食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムを用いて乾燥させ、濃縮した。得られた残渣についてシリカゲルクロマトグラフィーを行い、CHCl3-MeOH (49:1) で溶出し、2,6-bis(benzyloxy)-N-butyl-4-methoxybenzamideを得た [96 mg, 0.23 mmol (収率 76 % )]。 他の誘導体は、n-butylamineの代わりに対応するアミンを用いる以外は同様にして合成した。
【実施例】
【0020】
N-butyl-3,5-dichloro-2,6-dihydroxy-4-methoxybenzamide (DIF-1[A])の合成
上記2,6-Bis(benzyloxy)-N-butyl-4-methoxybenzamide (96 mg, 0.23 mmol) と、炭素(30 mg) に付着させた20% Pd(OH)2 をMeOH (5.0 mL) に加え、室温、水素雰囲気下で1時間撹拌した。濾過後、濾液を濃縮して、粗(crude)N-butyl-2,6-dihydroxy-4-methoxybenzamideを得た。これをCHCl3 (3 mL) に溶解し、得られた溶液にsulfuryl chloride (62 mg, 0.46 mmol) とEtOH (60 mL) を室温で加えた。20分間撹拌した後、混合物を濃縮した。得られた残渣についてシリカゲルクロマトグラフィーを行い、CHCl3-MeOH (9:1) で溶出を行い、N-butyl-3,5-dichloro-2,6-dihydroxy-4-methoxybenzamide (DIF-1[A]) [22 mg,
0.071 mmol (収率 31% )]を得た。
【実施例】
【0021】
DIF-1[A]の性状は以下のとおりであった。
黄色無定形固体; 1H NMR (400 MHz, CDCl3) d 10.88 (2H, br.s), 8.19 (1H, br.s), 3.94 (3H, s), 3.43-3.48 (2H, m), 1.57-1.64 (2H, m), 1.37-1.46 (2H, m), 0.96 (3H, t,
J = 7.3 Hz); 13C NMR (100 MHz, CDCl3) d 168.6, 155.6 (2C), 154.4 107.6, 100.5 (2C), 60.9, 39.4, 31.2, 20.1, 13.7; HREIMS m/z 307.0356 [M]+ (化学式C12H15NO435Cl2で計算すると307.0378).
【実施例】
【0022】
DIF-1[A+1]、DIF-1[A+2]、DIF-1[A+3]、DIF-1[A+4]についても同様にして合成し、性状を調べた。
DIF-1[A+1]: 無色無定形固体; HREIMS m/z 321.0514 [M]+ (化学式C13H17NO435Cl2で計算すると321.0535).
DIF-1[A+2]: 無色無定形固体; HREIMS m/z 335.0689 [M]+ (化学式C14H19NO435Cl2で計算すると335.0691).
DIF-1[A+3]: 無色無定形固体; HREIMS m/z 349.0835 [M]+ (化学式C15H21NO435Cl2で計算すると349.0848).
DIF-1[A+4]: 無色無定形固体; HREIMS m/z 363.0991 [M]+ (化学式C16H23NO435Cl2で計算すると363.1004).
【実施例】
【0023】
対照として、下記の化合物も合成して評価を行った。
【化6】
JP0005476650B2_000007t.gif
【実施例】
【0024】
<分化誘導活性の評価>
細胞性粘菌の未分化細胞(アメーバ状)は、適当なin vitro条件下で培養すると、細胞が分泌するDIF-1の作用で柄細胞(細胞壁を有する細胞:位相差顕微鏡観察で簡単に同定できる)に分化する。ところが、DIF-1を合成できない変異株HM44細胞は、同様の条件下で培養しても柄細胞に分化できない。しかし、この株に培地中にDIF-1を補ってやると、DIF-1の濃度に応じた数の細胞が柄細胞に分化する(特開2006-340615号公報)。
このHM44のin vitro culture系を利用して、外から加えた化合物に柄細胞分化誘導能があるか否かを検定した。分化した柄細胞は、位相差顕微鏡観察によって判別し、分化比率に基づいて分化誘導活性を定量化した。
【実施例】
【0025】
具体的には以下の手順に従って試験を行った。
未分化HM44細胞をバクテリアKlebsiella aerogenesと共に寒天培地(4.4 g KH2PO4, 2 g Na2HPO4, 1 g MgSO4・7H2O, 7.5 g glucose, 10 g Bacto-peptone, 1 g Yeast extract, 15 g agarを1 literの水に溶かし加熱後、agarを固めた培地)上で、21℃インキュベーター内にて培養、増殖させた。なお、Klebsiella aerogenesは粘菌の餌として加えた。
次に、増殖した粘菌細胞を塩溶液(10 mM NaCl, 10 mM KCl:以下BSSと呼ぶ)で集め、遠心分離(1500~2500 rpm)によってバクテリアと分離し、BSSを加え何度か洗浄した。集めた細胞を2×105 cells/wellの細胞密度で12-well plateに播き、試験化合物 0.5 nM を含む0.5 mL/wellの塩溶液(5 mM cAMP, 2 mM NaCl, 10 mM KCl, 1 mM CaCl2, 200 μg/ml streptomycin sulfate, 10 mM MES-KOH, pH 6.2)で、21℃で48時間培養した。
培養後、分化した柄細胞を位相差顕微鏡にて観察し、分化比率を算出した。
結果を図1Aに示した。その結果、それぞれ0.5nMのDIF-1[A+1]とDIF-1[A+2]が、DIF-1とほぼ同程度の分化誘導活性を示し、DIF-1[A]もDIF-1の約60%の分化誘導活性を示した。
そこで、図1Bにおいて、DIF-1, DIF-1[A+1], DIF-1[A+2]の分化誘導能について詳細な検討を行い、それぞれのED50が、0.45 nM, 0.35 nM, 0.3 nMであることがわかった。
これらの結果から、DIF-1[A+1]とDIF-1[A+2]がDIF-1のagonistsとして利用できることが示唆された。
【実施例】
【0026】
<K562ヒト白血病細胞に対するDIF誘導体の効果>
ヒト白血病細胞株であるK562細胞(2×104細胞/ml)を12穴プレートに1mlずつ分注し、そこに、15 μM DIF誘導体を加えて、3日間培養した後、細胞数を比較した
。細胞数はこの化合物を加えない場合に対する相対値(%)で示した(図2A)。図2(B)では、DIF-1, DIF-1[A], DIF-1[A+1], DIF-1[A+2]、DIF-1[A+3]について濃度を変えて詳細な検討を行った。以上より、これらの化合物がK562細胞の増殖を強く抑制することがわかった。これらの結果は、DIF-1のamide誘導体が抗白血病薬として利用できる可能性を示唆している。
【実施例】
【0027】
マウス3T3-L1細胞の増殖に対するDIF誘導体の効果
正常細胞のモデルとして、増殖期の3T3-L1細胞を、15 μM DIF誘導体存在下で3日間in
vitro培養し、細胞数を比較した。
その結果、ほとんどのDIF誘導体はこの細胞の増殖をあまり抑制しなかった(図3A)。これらの結果は、DIF誘導体を抗白血病薬として使用した際に懸念される副作用(正常細胞の増殖阻害)が比較的小さいことを期待させる。
【実施例】
【0028】
Confluent状態の3T3-L1細胞の糖代謝に対するDIF誘導体の効果
マウス3T3-L1繊維芽細胞を適当な培地1ml中(12穴のプラスチック容器中)でコンフルエント状態になるまで数日間培養した。次に、DIF-1誘導体の溶剤である0.2%エタノールのみを加えた栄養培地(EtOH)、20 μM DIF誘導体を加えた栄養培地で、それぞれ数時間培養し、培地中のブドウ糖の濃度を測定し、それぞれの細胞の糖代謝の速度を計算し、コントロールに対する比で表した(図3B)。その結果、DIF-1だけでなく、DIF-1[A+2]、DIF-1[A+3]、DIF-1[A+4]の存在下で、細胞の糖代謝速度が上がることが明らかとなった。これらの結果は、DIF-1のamide誘導体も糖尿病や肥満治療薬のリード化合物となる可能性を示している。
【実施例】
【0029】
【表1】
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【産業上の利用可能性】
【0030】
上記一般式(I)で表される化合物は、細胞性粘菌分化誘導剤、抗腫瘍剤や糖代謝促進剤などとして好適に用いることができる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2