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明細書 :活性金属高分散電極触媒の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5581544号 (P5581544)
公開番号 特開2011-040207 (P2011-040207A)
登録日 平成26年7月25日(2014.7.25)
発行日 平成26年9月3日(2014.9.3)
公開日 平成23年2月24日(2011.2.24)
発明の名称または考案の名称 活性金属高分散電極触媒の製造方法
国際特許分類 H01M   4/88        (2006.01)
H01M   4/86        (2006.01)
H01M   4/92        (2006.01)
H01M   4/90        (2006.01)
B01J  23/42        (2006.01)
H01M   8/10        (2006.01)
FI H01M 4/88 K
H01M 4/86 M
H01M 4/92
H01M 4/90 B
B01J 23/42 M
H01M 8/10
請求項の数または発明の数 2
全頁数 12
出願番号 特願2009-184722 (P2009-184722)
出願日 平成21年8月7日(2009.8.7)
審査請求日 平成24年7月17日(2012.7.17)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304023994
【氏名又は名称】国立大学法人山梨大学
発明者または考案者 【氏名】渡辺 政廣
【氏名】内田 裕之
【氏名】山下 壽生
【氏名】矢野 啓
審査官 【審査官】守安 太郎
参考文献・文献 特許第4016077(JP,B2)
特表2007-533862(JP,A)
特開2009-094048(JP,A)
特開2009-043457(JP,A)
特開2006-172996(JP,A)
特開2009-173477(JP,A)
調査した分野 H01M 4/88
H01M 4/90
H01M 4/92
特許請求の範囲 【請求項1】
金属塩及び/又は金属錯体のうち、いずれか1種類からなる触媒前駆体と親水基を有する溶媒および非水溶性溶媒を混合して前記触媒前駆体をナノカプセル内に封じ込める工程と高級脂肪族カルボン酸と高級脂肪族アミンの合計モル量に対し、前記ナノカプセルに含まれる金属塩及び/又は金属錯体からなる触媒前駆体のモル量が0.05~0.9となる割合で混合し、所望の粒径の金属粒子を得るためのナノカプセルの安定化工程と
前記ナノカプセルの溶液を還元して金属粒子を形成する工程と
前記金属粒子を担体と混合した後、担体に担持させる工程と
金属粒子担持担体を500℃以下で加熱して溶媒を除去する工程と
を含む電極触媒の製造方法において
前記金属錯体は白金アセチルアセトナート錯体であり、
前記高級脂肪族カルボン酸と高級脂肪族アミンの組合せとしては、オレイン酸とオレイルアミンの組み合せであることを特徴とする電極触媒の製造方法。

【請求項2】
金属塩及び/又は金属錯体のうち、いずれか1種類からなる触媒前駆体と担体と親水基を有する溶媒及び非水溶性溶媒とを混合して前記触媒前駆体をナノカプセル内に封じ込める工程と
高級脂肪族カルボン酸と高級脂肪族アミンの合計モル量に対し、前記ナノカプセルに含まれる金属塩及び/又は金属錯体からなる触媒前駆体のモル量が0.05~0.9となる割合で混合し、所望の粒径の金属粒子を得るためのナノカプセルの安定化工程と
前記ナノカプセル溶液を還元して金属粒子を形成すると同時にこの金属粒子を担体に担持させる工程と
金属粒子担持担体を500℃以下で加熱して溶媒を除去する工程と
を含む電極触媒の製造方法において
前記金属錯体は白金アセチルアセトナート錯体であり、
前記高級脂肪族カルボン酸と高級脂肪族アミンの組合せとしては、オレイン酸とオレイルアミンの組み合せであることを特徴とする電極触媒の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子型燃料電池などに用いられる電極触媒の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
担持金属触媒は、石油化学、石油精製、環境関連製品あるいは燃料電池などの種々の分野で適用されている。中でも固体高分子形燃料電池は、例えば自動車、定置コジェネレーション、携帯機器用などの電源として研究開発が進められている。
【0003】
電極触媒としては、カーボン、酸化スズ等の導電体からなる担体に白金を主体とする活性金属を担持させたものが用いられている。この電極触媒の性能は、活性金属の粒径、その粒径の分布状態(粒径が揃っているか)、担体上での分散度(担体上に均一に活性金属が分散されているか)に依存し、活性金属の担持量が同一であれば、活性金属の表面積が多いほど即ちその粒径が小さく担体上に高分散されているほど触媒性能が高くなる。また、白金は高価であるため、その使用量を低減するためにも活性金属の微粒子化および担体上に均一に分散されて担持されている(高分散担持)ことが求められている。
【0004】
このような電極触媒の製造方法としては、例えば下記特許文献1に示されるように、塩化白金酸溶液を還元して金属コロイド溶液を調製し、担体に担持させる方法が提案されており、また、下記特許文献2に示されるように、有機保護剤の存在下アルコールで還元することにより微粒子を得る方法が提案されている。下記特許文献3には2種類以上の金属塩または金属錯体を出発物質として、逆ミセル溶液を調整し、微粒子を得る方法が開示されているが、2種類以上の出発物質を用いた場合、粒径の分布状態に問題がある。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2001-224968号公報
【特許文献2】特開2003-226901号公報
【特許文献3】特許4016077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、粒径が小さくて揃ったナノレベルの活性金属が担体上に高分散担持された電極触媒の製造方法を提供することを目的とする。更に活性金属の担体への担持量が多くなると、通常は凝集が起こりやすくなるため、粒径は大きくなってしまい、さらに複数の金属種を用いた場合、その傾向はより顕著となる。
【0007】
本発明では担持量が異なっても常に一定の粒径で且つ担体上に高分散されている電極触媒を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、1種類のみの活性金属の前駆体を安定なナノサイズのカプセルの内部に閉じ込めた状態で還元反応させることによって活性金属粒子を形成させ、その後担体と混合して担持させることで上記課題が達成されることを見出し本発明に至った。
【0009】
さらに、本発明者らは、前記ナノカプセル溶液を調製する際、その中に予め担体を含ませておき、ナノカプセル溶液の還元反応によって形成された活性金属粒子を直ちに担体に担持させることで上記課題が達成されることを見出し本発明に至った。
【0010】
本発明に係る電極触媒の第一の製造方法は、金属塩及び/又は金属錯体の中から選ばれた活性金属の前駆体、親水基を有する溶媒および非水溶性溶媒を混合してナノカプセル溶液を調製する工程と、前記ナノカプセル溶液の安定化のために高級脂肪族カルボン酸及び高級脂肪族アミンを添加する工程と還元性を有する非水溶性液を加え加熱してナノカプセル内部にて金属粒子を形成する工程と、前記金属粒子を担体に担持させる工程と該金属粒子担持担体を500℃以下で加熱して溶媒を除去する工程を含むことを特徴とする。
【0011】
本発明に係る電極触媒の第二の製造方法は、金属塩及び/又は金属錯体の中から選ばれた触媒前駆体、親水基を有する溶媒、非水溶性溶媒および担体を混合して担体を含むナノカプセル溶液を調製する工程と、前記ナノカプセル溶液が安定に存在するために高級脂肪族カルボン酸及び高級脂肪族アミンを添加する工程と該ナノカプセル溶液に還元作用を有する非水溶性液を加え加熱してナノカプセル内部にて金属粒子を形成すると共にこの金属粒子を担体に担持させる工程と該金属粒子担持担体を500℃以下で加熱して溶媒を除去する工程を含むことを特徴とする。即ち、第二の製造方法は、第一の製造方法に比べて一工程省略することができるといった特徴がある。
【0012】
本発明に係る電極触媒の製造方法は、上記製造工程において、ナノカプセル内部にて金属粒子を形成した後、前記金属粒子を担体に担持させた後に、その金属粒子上に残存するナノカプセル成分を除去する工程とを含むことを特徴とする。
【0013】
更に本発明は金属塩及び/又は金属錯体の中から選ばれた活性金属の前駆体、親水基を有する溶媒および非水溶性溶媒を混合してナノカプセル溶液を調製する工程と、前記ナノカプセル溶液が安定に存在するために高級脂肪族カルボン酸及び高級脂肪族アミンを添加する工程において、金属錯体の触媒前駆体(以後Mと記述する)と高級脂肪族カルボン酸(オレイン酸)及び高級脂肪族アミン(オレイルアミン)の合計(以後Sと記述する)の割合(以後λと記述する)即ちλ=M/Sが0.05~0.9であることを特徴とする電極触媒の製造方法を提供することにある。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る電極触媒の製造方法によれば、粒径および粒径の揃った即ちその分布が小さい、高品質なナノレベルの活性金属の粒子が担体上に高分散担持された電極触媒を得ることができる。
【0015】
さらに、金属粒子を形成した後にこの金属粒子を囲みかつナノカプセルを構成する分子を部分的に除去する工程を行うことにより金属粒子が担体に高分散担持されやすくなり、また、金属粒子を担持させた後にその金属粒子上に残存するナノカプセル成分を除去することにより、触媒の活性をより向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施例1におけるPt粒子の分散状態を示す電子顕微鏡写真及び Ptの粒度分布のグラフである。
【図2】実施例2におけるPt粒子の分散状態を示す電子顕微鏡写真及び Ptの粒度分布のグラフである。
【図3】実施例3におけるPt粒子の分散状態を示す電子顕微鏡写真及び Ptの粒度分布のグラフである。
【図4】実施例4におけるPt粒子の分散状態を示す電子顕微鏡写真である。
【図5】金属錯体の触媒前駆体(M)と高級脂肪族カルボン酸及び高級脂肪族アミンの合計(S)の割合(λ=M/S)とPt粒子径の関係を示した図である。
【図6】実施例5および市販触媒におけるPt粒子の分散状態を示す電子顕微鏡写真である。
【図7】実施例触媒におけるPt担持量の変化と粒径分散を示したものである。
【図8】実施例触媒と市販触媒との粒径と粒径分布の比較図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の第一の製造方法について、以下詳細に説明する。
まず、ナノカプセル溶液を調製する。この工程は、親水基を有する溶媒および非水溶性溶媒を混合してナノカプセルを形成し、前記触媒前駆体を該ナノカプセル内に封じ込める工程である。ここで触媒前駆体とは、還元されて金属粒子を形成するための原料となる化合物を示し、具体的には金属塩または金属錯体であり、触媒活性を有する金属の塩または金属錯体のうちの一種類であれば、特に限定されない。前記触媒前駆体としては、白金、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、イリジウム等の貴金属塩、又は前記貴金属の無機又は有機金属錯体が含まれる。触媒活性が特に優れることから、貴金属としては白金が特に好ましい。白金の金属錯体および白金塩としては、アセチルアセナート白金〔Pt(acac)〕、塩化白金酸カリウム(KPtCl)等が好ましく用いられる。さらに、アミン錯体、エチレンジアミン錯体、アセチルアセトナート錯体等の金属錯体が用いられる。

【0018】
前記親水基を有する溶媒としては、例えば水酸基を有する有機溶媒が挙げられ、高級アルコール等が例示される。親水基を有する溶媒は、非水溶性溶媒中でナノカプセルを形成でき、また活性金属前駆体の溶解性に優れ、還元反応時の加熱条件に耐えうるような溶媒が適宜選択して用いられる。すなわち、沸点が150℃~300℃程度の溶媒が好ましく用いられ、例えばヘキサデカンジオール、オクタデカンジオール等が用いられる。

【0019】
前記非水溶性溶媒としては、前記親水基を有する溶媒と混合することでナノカプセルを形成する有機溶媒が挙げられ、例えば高級エーテル、芳香族エーテル、高級エステル等が例示される。非水溶性溶媒においては、金属粒子の形成のための還元反応時の加熱条件等を考慮し、沸点が150℃~300℃程度の溶媒が好ましく用いられ、例えば、ジフェニルエーテル、ジオクチルエーテル、ジノニルエステル等が用いられる。

【0020】
前記親水基を有する溶媒と前記非水溶性溶媒との混合比は、ナノカプセル溶液を形成するよう適宜選択される。例えば、非水溶性溶媒は、親水基を有する溶媒に対しモル比で10~100倍混合する。

【0021】
ナノカプセル溶液を調製する工程において、安定したナノカプセルを形成するためには、さらに高級脂肪族カルボン酸および高級脂肪族アミンを添加することが必要である。このとき、ナノカプセルの安定性を最良にするためには、λ=前記触媒前駆体/(高級脂肪族カルボン酸+高級脂肪族アミン)=0.25~1(モル比)であることが良い。即ち、この値が大きすぎるとナノカプセルの安定性が確保できない、逆に小さすぎると安定過ぎて次の還元工程で金属粒子の形成が十分に進行しないことを詳細なる実験から明らかにし、λが0.05~0.9(モル比)が最も望ましいことを見出した。

【0022】
前記高級脂肪族カルボン酸としては、好ましくは炭素数6~22の化合物が用いられ、オレイン酸、デカン酸、ペンタデカン酸等が例示される。高級脂肪族アミンとしては、好ましくは炭素数6~22の化合物が用いられ、オレイルアミン、デカンアミン、ペンタデカンアミン等が例示される。高級脂肪族カルボン酸と高級脂肪族アミンとしては、オレイン酸とオレイルアミンの組み合せが特にナノカプセルの安定化に優れ好ましく用いられる。

【0023】
これら高級脂肪族カルボン酸および高級脂肪族アミンが加えられたナノカプセル溶液を均一に混合するために、およそ100℃~200℃程度で攪拌することが好ましい。なお、金属塩または金属錯体と親水基を有する溶媒と非水溶性溶媒とを混合する場合、またさらに高級脂肪族カルボン酸および高級脂肪族アミンを混合する場合には、混合液の流動性を向上させるため必要により適宜加温しながら攪拌することが好ましい。また、混合は窒素等不活性ガス下にて行うことが好ましい。

【0024】
次に、前記適切に制御された安定なナノカプセル溶液を得た後、該ナノカプセル溶液に還元作用を有する非水溶性液を加え、加熱してナノカプセル内の金属塩または金属錯体を還元し、金属粒子を得る還元工程を説明する。

【0025】
即ち、本工程においては、ナノカプセルに包含させた金属塩または金属錯体をナノカプセル外部から還元作用を有する非水溶性液(以下、単に還元剤ともいう)を供給して加熱し、還元することにより金属粒子の形成を行うものである。還元剤としては、MBRH、MH(但し、Mはリチウム、ナトリウムまたはカリウムを示し、Rは水素原子または炭化水素基を示し、炭化水素基は直鎖でも分岐でも、飽和でも不飽和でもよい。)、アルコールおよびナフタレンの金属誘導体等を含む非水溶性液が使用される。これらは還元作用を有する物質の有機溶媒溶液でも、それ自体が還元作用を有する有機溶媒そのものであってもよい。好ましくはLiB(CHのテトラヒドロフラン(THF)溶液、LiB(CHHのジエチルエーテル溶液等が用いられる。前記還元剤の添加量は、金属塩量に対し、モル比にて1~3倍量であることが好ましい。還元性を有する非水溶性液の添加は、例えば前記ナノカプセル溶液をスターラー等で攪拌しながら徐々に滴下することにより行われるが、適宜公知の混合手段を用いることができる。

【0026】
還元するための加熱温度は、金属によって異なるが、室温~300℃程度であることが好ましい。例えば、アセチルアセナート白金、1,2-ヘキサデカンジオール、ジフェニルエーテル、オレイン酸およびオレイルアミンからなるナノカプセル溶液にLiB(C2H5)3HのTHF溶液を加える場合は、200℃にて攪拌されているナノカプセル溶液に徐々に該THF溶液を滴下し、260℃程度に昇温させて還元反応を行うことが好ましい。本発明においては、上記金属塩や金属錯体の種類、各種溶媒の種類、還元反応の温度等は所望の金属粒子を作製する条件に合わせて適宜選択される。例えば、各種溶媒の選択は、金属塩の溶解度、形成されるナノカプセルの安定性、還元反応における加熱温度等を考慮して適宜選択される。

【0027】
上述のようにしてナノカプセル内部で形成された金属粒子を、次いで導電性担体に担持させる(担持工程)。好ましくはこの担持工程の前に、ナノカプセル溶液にアルコール、好ましくはエタノール、メタノール等の低級アルコールを含む溶液を混合し、遠心分離して金属粒子を含む沈殿物を分離し、この沈殿物をヘキサン等の有機溶媒に再分散させる洗浄・再分散工程を行う。この工程を行うことにより、還元反応後のナノカプセル溶液中に残存する還元剤等を洗浄除去することができる。また、金属粒子を囲みかつナノカプセルを構成する分子を部分的に除去することができ、ナノカプセルの外側の疎水基によるミセル同士の反発作用を残した状態を維持したまま金属粒子の担体への吸着能を向上させ、担持されやすくすることができると考えられる。すなわち、この洗浄・再分散工程において、金属同士の凝集を避けつつ、担体上に金属粒子を担持させることが出来る。

【0028】
導電性担体は特に限定されず、カーボンブラック、アモルファスカーボン、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、酸化錫、酸化チタンなどのナノ粒子等が例示される。担持させる際には、金属粒子を含有するナノカプセル溶液と担体を混合し、攪拌するなど通常の方法を用いることができる。混合は、アルコール、好ましくはエタノール、メタノール等の低級アルコールに担体を分散させた溶液に、ナノカプセル溶液を滴下しながら行うのが好ましいナノカプセルはその外側に疎水基を有するので、疎水基が有する電荷によって粒子同士が反発して接近し過ぎることなく担体表面に配されるため、金属粒子が高分散担持される。また、金属粒子を担体表面に吸着させた後、次の工程として加熱処理することが好ましい。これにより、金属粒子上に残存するナノカプセル成分を完全に分解除去することができる。この残存するナノカプセル成分には、例えばアルキル基等の疎水基等が含まれる。加熱処理はアルゴン、窒素、ヘリウム等の不活性ガス下にて行うことが好ましい。加熱処理の温度は、金属の種類、原料となる金属塩または金属錯体や試薬の種類によって異なるが、ナノカプセル成分が分解される温度であって分解反応の進行が遅すぎず、かつ金属粒子の凝集が起こる温度より低い範囲とすることが好ましい。例えば、500℃以下、好ましくは250~400℃であることが良い。

【0029】
次に、本発明に係る電極触媒の第二の製造方法について説明する。第二の製造方法は、前記第一の製造方法における触媒前駆体となる金属塩または金属錯体、親水基を有する溶媒および非水溶性溶媒を混合してナノカプセル溶液を調製する工程において、担体を一緒に混合し、担体を含むナノカプセル溶液を調製することを特徴とするものである。このように担体を一緒に混合させることで、次の担持工程においてナノカプセル内部に形成される金属粒子を直ちに担体に担持させることができ、第一の製造方法に比べて実質的に担持工程を省略することができることになる。

【0030】
前記第二の製造方法は、工程において担体を一緒に混合すること以外は基本的には第一の製造方法と同じ方法を用いることができる。したがって、混合される担体の種類も、第一の製造方法の場合と同様、カーボンブラック、アモルファスカーボン、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、酸化錫、酸化チタンなどナノ粒子等の導電性担体を使用することができ、また、金属塩または金属錯体の種類、水酸基を有する溶媒及び非水溶性溶媒等の種類や混合割合、さらには高級脂肪族カルボン酸や高級脂肪族アミンの混合も同様である。還元工程において添加される還元作用を有する非水溶性液の種類や添加量、還元する時の反応温度なども第一の製造方法の場合と同様なので、詳細な説明を省略する。また、得られた金属粒子を担体に担持させる際に、アルコールを含む溶媒でナノカプセルを処理し、さらに金属粒子を担持させた後に担体を加熱する際の条件等も第一の製造方法と同様である。


【0031】
上述のように、上記第二の製造方法は、予め担体をナノカプセル溶液に入れておいて、同一容器内で還元と同時に担持することを可能とするものである。このように、ナノカプセルを形成した溶液の中に担体が含まれることで、金属を固体ではなくナノカプセルを形成したイオンの状態で担体と混在させることにより均一な分散状態となる。即ち、ナノカプセルを形成する金属イオンが溶液中で静電的作用により担体に均一に吸着し且つナノカプセルの状態であるために粒子同士の凝集を抑制することが可能となり、担体上に均一に担持されることになる。

【0032】
以下、本発明の詳細を実施例で記述するが、これに限定されるものではない。

【0033】
まず実施例1~4では第一の製造方法において、カーボンブラック担体に50wt%のPt担持量を担持する際に、Pt前駆体と高級脂肪族カルボン酸(オレイン酸)及び高級脂肪族アミン(オレイルアミン)の合計の割合(λ)を変化させた時の製造方法を示したものである。
【実施例1】
【0034】
ビーカーにPt(acac)0.125mmol(49mg)に1,2-ヘキサデカンジオールを1mmol(260mg)、ジフェニルエーテル12.5mlを加え、スターラーを用いて100℃に昇温して10分間攪拌混合する。これにオレイン酸0.25mmol(0.85ml)およびオレイルアミン0.25mmol(0.80ml)を加えた後、攪拌しながら200℃まで昇温し、そのまま20分間攪拌して、ナノカプセル溶液を得た。得られたナノカプセル溶液に1M LiB(CH・THF溶液1.0ml(1.0mmol)を2分間かけて徐々に滴下し、5分間攪拌した後270℃に昇温し、この温度にて20分間還流加熱して還元反応させ、ナノカプセル内にてPt粒子を得た。その後室温付近まで降温し、白金の担持量がカーボンブラックに対し50wt%となるようにカーボンブラック(Ketjen Black EC、ライオン株式会社製)を混合攪拌し、濾過した後60℃で真空乾燥後、残存した有機溶媒を除去するために窒素ガス中で400℃、4時間加熱し、Pt担持カーボン電極触媒を得た。尚、金属錯体の触媒前駆体と高級脂肪族カルボン酸(オレイン酸)及び高級脂肪族アミン(オレイルアミン)の合計の割合はλ=0.25(=0.125/(0.25+0.25))である。
【実施例2】
【0035】
実施例1と同様であるが、Pt(acac)濃度を0.25mmol(98mg)にした。尚、金属錯体の触媒前駆体と高級脂肪族カルボン酸(オレイン酸)及び高級脂肪族アミン(オレイルアミン)の合計の割合はλ=0.5(=0.25/(0.25+0.25))である。
【実施例3】
【0036】
実施例1と同様であるが、Pt(acac)濃度を0.5mmol(196mg)にした。尚、金属錯体の触媒前駆体と高級脂肪族カルボン酸(オレイン酸)及び高級脂肪族アミン(オレイルアミン)の合計の割合はλ=1.0(=0.5/(0.25+0.25))である。
【実施例4】
【0037】
実施例1と同様であるが、Pt(acac)濃度を0.25 mmol(98mg)、オレイン酸1.0mmol(3.4ml)およびオレイルアミン1.0mmol(3.2ml)にした。尚、金属錯体の触媒前駆体と高級脂肪族カルボン酸(オレイン酸)及び高級脂肪族アミン(オレイルアミン)の合計の割合はλ=0.13(=0.25/(1.0+1.0))である。
【実施例4】
【0038】
上記実施例で得られた電極触媒について、カーボンブラックに担持されたPt粒子の粒子径や分散状態を電子顕微鏡(TEM)で観察した。その結果を実施例に従って以下に示す。
【実施例4】
【0039】
図1(左)に実施例1の電極触媒の電子顕微鏡(TEM)観察結果を示す。また同じ図1の右図はTEM写真からPtの粒径分布を算出した結果を示したものである。
【実施例4】
【0040】
TEM 写真(図1(右))から粒径2nmのPt粒子が凝集せずにカーボンブラック上に高分散担持されていることがよくわかる。また、図1(右)に示したように、Pt粒径の分散度が小さく即ちPt粒子が揃っていることが分かる。
【実施例4】
【0041】
同様に上記実施例2で得られたPt粒子が担持されたカーボンブラックのTEM像と粒径分布をそれぞれ図2(左)と(右)に示す。粒径3.1nmのPt粒子が凝集せずに高分散担持され、粒径の分散度が小さいことが分かった。
【実施例4】
【0042】
同様に、上記実施例3で得られたPt粒子が担持されたカーボンブラックのTEM像と粒径分布をそれぞれ図3(左)と(右)に示す。Pt粒径は実施例1,2に比べ4.5nmと大きくなっていることが分かる。更にPt粒径の分散度が広がっている、即ち粒径が不揃いであることが分かった。
【実施例4】
【0043】
同様に上記実施例4で得られたPt粒子が担持されたカーボンブラックのTEM像と粒径分布をそれぞれ図4(左)と(右)に示す。実施例1~3まではλの値を0.25~1に増加していった場合であるが、本実施例では逆に安定剤をσ=0.13に減少させた場合である。この結果、Pt粒径は3.3nmと小さく、分散度も良好なPt触媒が得られた。
上記実施例1~4で得られた金属錯体の触媒前駆体(M)と高級脂肪族カルボン酸(オレイン酸)及び高級脂肪族アミン(オレイルアミン)の合計(S)の割合(λ)とこの時のPt粒径の関係を図5に示す。λ=0.05を境に2本の直線が得られる。Ptを燃料電池の電極触媒として使用する場合、その粒径は一般的に4nm以下が好ましいので、本結果からλは0.1~0.9となる。従って、金属元素を内包するナノミセルの安定性を、前記λが0.1~0.9になるように規定することにより、触媒活性金属の粒径および粒径の揃った即ちその粒径分布が狭い、高品質なナノレベルの活性金属の粒子が担体上に高分散担持された電極触媒を得ることができる。
【実施例4】
【0044】
次に第二の製造方法について実施例5で以下説明する。第二の製造方法は、触媒前駆体をナノカプセルに包含する工程において既に担体を混合しておくので、第一の製造方法に比べ担持工程が省略できる。
【実施例5】
【0045】
ビーカーにPt(acac)0.25mmol(98mg)に1,2-ヘキサデカンジオールを1mmol(260mg)、ジフェニルエーテル12.5mlを加え、スターラーを用いて100℃に昇温して10分間攪拌混合する。これにオレイン酸0.25mmol(0.85ml)およびオレイルアミン0.25mmol(0.80ml)を加えた後(λ=0.5(0.25/(0.25+0.25))、カーボンブラック(Ketjen Black EC、ライオン株式会社製)をPtの担持量を10.0、19.0、24.3、31.4、42.1、55.9wt%になるように加えて、攪拌しながら200℃まで昇温し、そのまま20分間攪拌して、逆ミセル液を得た。得られた逆ミセル液に1M LiB(CH・THF溶液1.0ml(1.0mmol)を2分間かけて徐々に滴下し、5分間攪拌した後270℃に昇温し、この温度にて20分間還流加熱して還元反応させ、逆ミセル内にてPt粒子を得た。濾過した後60℃で真空乾燥後、残存した有機溶媒を除去するために窒素ガス中で400℃、4時間加熱し、Pt担持カーボン電極触媒を得た。
【実施例5】
【0046】
上記実施例5で得られたPt粒子が55.9wt%担持された場合のカーボンブラックのTEM像と粒径分布を図6に示す。粒子径2.8nm、担持量55.9wt%のPt粒子が凝集せずに高分散担持され、粒径の分散度が小さく且つ担体上に高分散されていることが分かる。このように第二の製造方法でも第一の製造方法と同様に優れたPt電極触媒が得られる。
【実施例5】
【0047】
更に本発明の大きな特徴は前記したように、Ptの担持量が大きく変化してもPt粒径の分布は狭い即ち粒径が小さく、揃っていることにあるが、本実施例で調製したPtの粒径分布を調べると、図7に示したように、担持量が10wt%から55.9wt%と大きく変化しても、Ptの粒径は約3nmと小さく且つその分布は狭いことは明らかである。
【実施例6】
【0048】
担体をグラファイト化カーボンブラックにし、製造法を実施例5と同じにして得た実施例6の電極触媒(Pt/GC)を電子顕微鏡で観察し、Pt粒子の状態を調べた。尚、比較として市販のPt触媒(Pt/GC)も同様に電子顕微鏡観察した。Pt担持量は共に50wt%である。実施例6及び市販の電極触媒のSTEM像を図8に示す。本発明からなる実施例6のPt/GCは均一なPt粒子がカーボン担体上に高分散している。これに対し、従来法である市販のPt粒子は粒子同士の凝集が確認され、粒子サイズも不均一であることが分かる。
【実施例7】
【0049】
実施例6及び市販触媒の電極触媒の性能を調べるため、酸素還元活性評価を回転ディスクリング電極法で行った。参照電極には可逆水素電極(RHE)を用いた。実施例6及び市販触媒をグラファイトカーボンディスク上に分散し、ナフィオンで固定して電極を作製した。これを酸素飽和した0.1M HClO溶液中(25℃)で回転速度1000から2750 rpmの間で、掃引速度5 mV/sで対流ボルタモグラムを測定し、0.70Vでの質量活性を算出した。この結果を表1に示す。市販触媒と比較して、実施例6で作製した触媒の質量活性は大幅に向上していることが明らかである。
【実施例7】
【0050】
【表1】
JP0005581544B2_000002t.gif

【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、燃料電池等に利用される電極触媒の優れた製造方法を提供できる点において産業上の利用可能性を有する。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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