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明細書 :芳香族炭化水素又はケトン化合物を製造する装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5504494号 (P5504494)
公開番号 特開2010-202549 (P2010-202549A)
登録日 平成26年3月28日(2014.3.28)
発行日 平成26年5月28日(2014.5.28)
公開日 平成22年9月16日(2010.9.16)
発明の名称または考案の名称 芳香族炭化水素又はケトン化合物を製造する装置
国際特許分類 C07C   1/207       (2006.01)
C07C  15/04        (2006.01)
C07C  15/06        (2006.01)
C07C  15/073       (2006.01)
C07C  15/08        (2006.01)
C07C  15/02        (2006.01)
C07C  11/04        (2006.01)
C07C  11/06        (2006.01)
C07C  11/08        (2006.01)
C12M   1/00        (2006.01)
B01J  27/02        (2006.01)
B01J  27/10        (2006.01)
B01J  29/40        (2006.01)
B01J  29/46        (2006.01)
B09B   3/00        (2006.01)
C07B  61/00        (2006.01)
FI C07C 1/207 ZAB
C07C 15/04
C07C 15/06
C07C 15/073
C07C 15/08
C07C 15/02
C07C 11/04
C07C 11/06
C07C 11/08
C12M 1/00 H
B01J 27/02 Z
B01J 27/10 Z
B01J 29/40 Z
B01J 29/46 Z
B09B 3/00 A
C07B 61/00 300
請求項の数または発明の数 6
全頁数 12
出願番号 特願2009-048439 (P2009-048439)
出願日 平成21年3月2日(2009.3.2)
審査請求日 平成23年3月9日(2011.3.9)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504258527
【氏名又は名称】国立大学法人 鹿児島大学
発明者または考案者 【氏名】筒 井 俊 雄
個別代理人の代理人 【識別番号】100075812、【弁理士】、【氏名又は名称】吉武 賢次
【識別番号】100091487、【弁理士】、【氏名又は名称】中村 行孝
【識別番号】100094640、【弁理士】、【氏名又は名称】紺野 昭男
【識別番号】100107342、【弁理士】、【氏名又は名称】横田 修孝
【識別番号】100109841、【弁理士】、【氏名又は名称】堅田 健史
審査官 【審査官】小久保 敦規
参考文献・文献 特開昭50-076027(JP,A)
中国特許出願公開第1680257(CN,A)
国際公開第98/019986(WO,A1)
調査した分野 C07C 1/213
C07C 9/02
C07C 11/02
C07C 15/02
C07C 15/24
CASREACT(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
バイオマスから芳香族炭化水素を製造する装置であって、
前記バイオマスを、酸発酵菌により発酵させて、有機酸を生成する第1反応器と、
前記有機酸を、ZSM-5型ゼオライト触媒と350℃以上550℃以下で反応させ、副生成物である水と、生成物である前記芳香族炭化水素とが2相に分離させてなる第2反応器とを備えてなり、
前記バイオマスが、サトウキビの搾りかすであるバガス;イネ、麦の籾殻及び藁並びにこれらの、加水分解又は酵素分解による処理物;食用穀物の調理物及び廃棄物並びにこれらの処理物;木材の製材廃棄物、木材のアルカリ蒸解による処理物であり、
前記有機酸が、酢酸、プロピオン酸、乳酸又は酪酸であり、
前記芳香族炭化水素が、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、又はトリメチルベンゼンである、製造装置。
【請求項2】
前記バイオマスが、スクロース含有糖質バイオマスである、請求項1に記載の製造装置。
【請求項3】
前記ZSM-5型ゼオライト触媒が、Si/Al比が80以上のものである、請求項1又は2に記載の製造装置。
【請求項4】
バイオマスから芳香族炭化水素を製造する方法であって、
前記バイオマスを、酸発酵菌により発酵させて、有機酸を生成し、
前記有機酸を、ZSM-5型ゼオライト触媒と350℃以上550℃以下で反応させ、副生成物である水と、生成物である前記芳香族炭化水素とを2相に分離することを含んでなり、
前記バイオマスが、サトウキビの搾りかすであるバガス;イネ、麦の籾殻及び藁並びにこれらの、加水分解又は酵素分解による処理物;食用穀物の調理物及び廃棄物並びにこれらの処理物;木材の製材廃棄物、木材のアルカリ蒸解による処理物であり、
前記有機酸が、酢酸、プロピオン酸、乳酸又は酪酸であり、
前記芳香族炭化水素が、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、又はトリメチルベンゼンである、製造方法。
【請求項5】
前記バイオマスが、スクロース含有糖質バイオマスである、請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
前記ZSM-5型ゼオライト触媒が、Si/Al比が80以上のものである、請求項4又は5に記載の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、芳香族炭化水素又はケトン化合物を製造する装置(方法)に関する。
【背景技術】
【0002】
現代社会は、エネルギー資源や化学物質資源として石油に大きく依存してきた。しかし、COによる地球温暖化問題及び原油価格の高騰を背景に、再生可能資源の利用によって石油への依存度を低減し、持続可能な社会を構築する必要が高まっている。種々の再生可能資源の中でもバイオマスは、自然界の炭素サイクルを利用する為、大気中のCO濃度を増大させることがなく(カーボンニュートラルという)、また物質資源としても利用可能であるため、その有効な活用が望まれている。
【0003】
石油に代わる資源としてバイオマスを利用するためには、人類社会で必要な基幹化学物質をバイオマスから低コストで高収率に製造する必要がある。また、バイオマスから化学物質への転化過程において、多量の石油エネルギーを消費しては石油の代替とならず、またCOの削減を達成することはできない。従って、過度のエネルギー消費を抑制した、バイオマスの利用を実現することが必要である。
【0004】
バイオマスの転化技術として、これまで例えば、亜臨界水による分解などの熱化学的変換法(特許文献1:特許公開2008-249207)、メタン発酵やエタノール発酵(特許文献2:特許公開2008-182925)などの生物的変換法が知られている。
【0005】
熱化学的変換法では、ガス化の場合、一般に700℃以上の高温で水素や一酸化炭素を含むガスに転化する。このガス化生成物はさらにCOとの分離や精製を経て、メタノール合成原料とし、さらにジメチルエーテルを経て芳香族やオレフィンなどの化学原料となる。また、超臨界水分解ではヒドロキシメチルフルフラール、フルフラール、ジヒドロキシアセトン、グリセルアルデヒドなどの含酸素炭化水素化合物に転化できるが、その用途は限られ、必ずしも基幹化学物質が製造されるわけではない。
【0006】
生物的変換法では、メタン発酵ではメタンとCOが得られるが混合物であるため発熱量が低く、エタノール発酵ではCOとともに得られるエタノールがガソリン代替燃料として期待されているが、エタノールと水の分離に必要なエネルギー消費と生産コストに対して高付加価値生成物とは言いがたく、高付加価値の化学原料とするにはさらに多くの工程が必要となるこのように、バイオマスから付加価値の高い化学物質を短い工程で製造する方法がいまだ十分に確立されていないのが現状である。
従って、今尚、バイオマスを用いて、付加価値の高い基幹化学物質である化学原料を直接製造する方法の開発が急務とされている。

【特許文献1】特開2008-249207
【特許文献2】特開2008-182925
【発明の開示】
【発明の詳細な説明】
【0007】
本発明者は、本発明時において、有機酸をゼオライト触媒で反応(好ましくは水熱反応)することにより、低エネルギーの下、基幹化学物質の一つである芳香族炭化水素又はケトン化合物が得られるとの知見を得た。本発明はかかる知見に基づいてなされたものである。
【発明の詳細な説明】
【0008】
よって、本発明は、芳香族炭化水素又はケトン化合物を製造する装置であって、
有機酸を、ZSM-5型ゼオライト触媒と反応させる反応器を備えてなるものである。また、本発明は、芳香族炭化水素又はケトン化合物を製造する方法であって、有機酸を、ZSM-5型ゼオライト触媒と反応させることを含んでなる、製造方法を提案するものである。
【発明の詳細な説明】
【0009】
また、本発明の好ましい態様によれば、バイオマスから芳香族炭化水素又はケトン化合物を製造する装置であって、
バイオマスと、酸発酵菌とを第1反応器に供給する第1供給器と、
前記バイオマスを、前記酸発酵菌により発酵させて、有機酸を生成する第1反応器と、
生成した有機酸と、ZSM-5型ゼオライト触媒を第2反応器に供給する第2供給器と、
前記有機酸を、ZSM-5型ゼオライト触媒と加温下で反応させる第2反応器を備えてなるものである。
【発明の詳細な説明】
【0010】
また、本発明の別の態様は、バイオマスから芳香族炭化水素又はケトン化合物を製造する方法であって、
バイオマスと、酸発酵菌とを用意し、
前記バイオマスを、前記酸発酵菌により発酵させて、有機酸を生成し、
生成した有機酸と、ZSM-5型ゼオライト触媒とを加温下で反応させることを含んでなるものである。
【発明の詳細な説明】
【0011】
本発明は、有機酸(好ましくはバイオマスから得たもの)を用いて、人類社会で必要な基幹化学物質であり、付加価値の高い化学原料を高収率に製造することができる。より好ましくは、本発明において、水熱反応を十分活用することができるので、原料であるバイオマスから生成物までの各工程を低エネルギ(又はエネルギを使用せず)で行うことができ、生産コストの著しい低減と、優れた生産容易性及び生産効率(収率向上)を達成することが可能となる。
【発明の詳細な説明】
【0012】
(触媒)反応:転換反応(第2反応器)
本発明による装置及び方法は、有機酸を、ZSM-5型ゼオライト触媒と反応させるものであり、その反応は反応器(第2反応器)で行われる。
反応器(第2反応器)は、固定層、流動層、移動層等、固体触媒反応に適したものとすることでき、500℃程度の加温、加圧状態であっても十分耐性を有するものを使用する。反応器は、原料を供給する第1段と、ZSM-5型ゼオライト触媒が存在してなる第2段とを直列に配列した多段階の反応器であってもよい。また、反応器は加温装置を備えてなり、反応が加温下で行われることが好ましい。具体的には、370℃以上500℃以下の温度で加熱される。さらに、反応器はキャリアーガスを供給する部位、他の成分を供給する部位を備えてなるものが好ましくは用いることができる。これらの存在により、反応器にはキャリアーガスとして窒素、スチーム、水素、及びこれらを含有するガス、好ましくは、水素又は水素含有ガスが目的生成物に合わせて導入することが可能となる。また、反応器には、反応器内で水素を発生することのできる化合物、例えば、ギ酸を供給することができる。そして、これらの機器を備えてなることにより、反応器は、必要により多段として、段毎に上記温度範囲内において、異なった温度に設定すること、また、段毎に異なるキャリアーガスを導入すること、これらの組み合わせた反応を実現することができる。そして、反応条件及び供給キャリアーガス、水素供給源等により生成する化学原料を有利に選択することが可能となる。
【発明の詳細な説明】
【0013】
原料
有機酸
本発明は、有機酸を使用する。有機酸は、炭素数2~4の有機酸であり、特に、炭素数2~4のカルボン酸であり、特に、酢酸、プロピオン酸、乳酸、酪酸が好ましくは用いられる。また、これらの酸の一つ以上を含む混合物や溶液たとえば水溶液であってよい。
【発明の詳細な説明】
【0014】
有機酸の調製
本発明の好ましい態様によれば、有機酸が酸発酵菌により発酵させて得られたものが用いられる。
酸発酵菌
酸発酵菌として、有機酸を生成させることのできるいずれの発酵菌も用いることができる。例えば、メタン発酵菌、酢酸発酵菌、乳酸発酵菌、酪酸発酵菌、それらの混合物、それらの一つ以上を含む発酵汚泥が挙げられる。メタン発酵菌あるいはそれを含む混合物や汚泥を用いる場合、嫌気状態にすることなく発酵させることが必要である。
【発明の詳細な説明】
【0015】
酸発酵菌により発酵させて有機酸を得る場合の原料は、有機酸を有意量発生させるものであればいずれのものであってもよいが、好ましくはバイオマスが用いられる。バイオマスはいずれのものであってもよい。本発明の好ましい態様によれば、バイオマスは有機酸を有意量生成しうる糖質バイオマスの利用が好ましい。糖質バイオマスの具体例としては、単糖類(グルコース、フルクトース等)、二糖類(スクロース、マルトース、セルビオース等)、10個以下の単糖が縮合したオリゴ糖及び配糖体、でんぷん及びアルギン酸等の炭水化物、これらの一つ以上を含むバイオマス及びその処理物が挙げられる。
【発明の詳細な説明】
【0016】
「バイオマス」は、例えば、樹木類、草類、穀類、果実類、海藻類等の全ての植物性バイオマスであり、その根、茎、球根、葉なども包含するものである。また、「バイオマスの処理物」とは、バイオマスの一部または全部を、加熱、加圧、爆砕、溶解、抽出、磨砕、機械的分離等の物理的処理;発酵、酵素処理等の生物的処理;加水分解、熱分解、溶媒分解、水熱処理、蒸解、アルカリ処理、酸処理、触媒処理等の化学的処理の一つ以上を施したものが例示される。その具体例としては、サトウキビの搾りかすであるバガス;イネや麦の籾殻や藁およびそれらの酸、加水分解、酵素分解等による処理物;食用穀物などの調理物や廃棄物およびそれらの処理物;木材の製材廃棄物やアルカリ蒸解や濃硫酸などの酸処理物などが挙げられる。
【発明の詳細な説明】
【0017】
ZSM-5型ゼオライト触媒
ZSM-5型ゼオライト触媒は、例えば、ZSM-5、ZSM-11、シリカライト、Si以外の金属元素がFe、Ga、B、Tiなどのメタロシリケート等が挙げられる。好ましくは、Si/Al原子比が50以上のZSM-5、Si/Al原子比が50以上のZSM-11、シリカライト、Si/M原子比が50以上のメタロシリケート(MはFe、Ga、B、Ti)、これらのZSM-5型ゼオライトはカチオンとして、プロトン、アンモニウムイオン、Ca、Ba、Mgなどのアルカリ土類やLa、Ceなどの希土類金属のカチオンの一つ以上を含んでいてよい。また、これらのZSM-5型ゼオライトは、Ni、Fe、W、Pt、Rh、Re、Pd、などの遷移金属やMoなどの金属を、元素あるいは化合物たとえば酸化物の形で担持していてよい。
【発明の詳細な説明】
【0018】
(発酵反応)第1反応器
本発明の装置は好ましくは、上記触媒反応(器)(第2反応器)の前に、発酵反応器(第1反応器)を備えてなるものが提案される。発酵反応(器)は、バイオマス等を供給する第1供給器を備えてなるものである。第1供給器から供給されたバイオマスと、酸発酵菌とを好ましくは攪拌しながら、発酵反応を第1反応器で行う。酸発酵菌を用いた発酵は、30℃以上60℃以下の温度で行うことが好ましい。この発酵反応により、有機酸、特に、酢酸、プロピオン酸、乳酸、酪酸が得られる。反応器は、回分又は連続操作のいずれの方法をも使用することができるものを使用する。
【発明の詳細な説明】
【0019】
本発明の好ましい態様
製造装置(方法)
本願発明による製造装置(製造方法)は、好ましくは、第1反応器に、バイオマスと、酸発酵菌とを第1供給器を介して供給し30℃以上60℃以下で発酵反応を行う。発酵反応で得た有機酸と、ZSM-5型ゼオライト触媒とを第2供給器を介して、第2反応器に供給して、所望の化合物が得られる温度(350℃以上550℃以下)で反応させる。本発明にあっては、生成物が炭化水素類であり、本発明は、水熱反応(分解)を利用するものであるから、同伴または反応で副生する水と生成物はほとんど混じりあわない2相に分離されるため、蒸留などのエネルギー消費の大きい分離は基本的に不要であり、その結果として、経済的で効率の高い製造方法ということができる。
【発明の詳細な説明】
【0020】
生成物
本発明による製造装置(方法)によれば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン等の芳香族炭化水素;プロピレン、ブテン、イソブテン、エチレン等の低級オレフィン炭化水素;アセトン、エチルメチルケトン、ジメチルケトン等のケトン化合物が生成物として得ることが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
1)糖液の酸発酵
生ごみのメタン発酵槽から採取した生汚泥を冷蔵庫で約5℃で保管し、実験に使用する量を分取して24時間室温で放置した後、酸発酵菌汚泥として実験に使用した。所定量の酸発酵菌汚泥と原料の糖を所定濃度含む水溶液200mLを容積300mLの三角フラスコに入れ、ガスの流出管と液の採取管のついたゴム栓を取り付けた。ガスの採取管の出口にはテドラーバッグを、また、液の採取管の出口はゴム製のキャップを取り付けた。三角フラスコ内のガスとしては空気を用いた。この三角フラスコを水温を35℃または55℃に制御した振とう式水槽に設置し、実験を開始した。所定の日数経過後に三角フラスコを水槽から取り出し、発酵液を汚泥からろ過分離し、発酵液中の成分の分析を行った。分析は分離カラムにShimpack SCR-102H、検出器に示差屈折率検出器RID-6Aを装着した高速液体クロマトグラフ(島津製作所製LC-06)を使用し、5mmol/L過塩素酸水を移動層とし、カラム温度50℃にて行った。

【0022】
実施例F-1~2
原料として濃度2%のグルコースおよびスクロース水溶液を用い、酸発酵菌汚泥を20~40g/L使用したときの結果を以下に示す。生成物収率はC収率(生成物の炭素数/原料の炭素数x100)で表す。9~14日後、糖は有機酸に高収率に転化し、総有機酸収率は約63%であった。有機酸として酢酸、乳酸および酪酸が主に生成した。その結果は下記表1に記載した通りであった。
【表1】
JP0005504494B2_000002t.gif

【0023】
実施例F3~6
原料として濃度1~3.33%のグルコースおよびフルクトース水溶液を用い、酸発酵菌汚泥を20~200g/L使用したときの結果を以下に示す。6~14日後の総有機酸収率は約12~約61%であった。生成有機酸として、実施例F-3では酪酸が、F-4では酪酸と酢酸が、F-5では乳酸と酪酸が、F-6では酢酸が主に生成した。その結果は下記表2に記載した通りであった。
【表2】
JP0005504494B2_000003t.gif

【0024】
実施例F7
原料として濃度1%のグルコース水溶液を用い、酸発酵菌汚泥を50g/L使用して発酵実験を行った。F-7aは1回目の発酵で14日後に総有機酸収率は約60%であり、主生成物は酪酸と酢酸であった。このとき生成液から分離した酸発酵菌汚泥を用いてこれに再度グルコース水溶液を加え、2回目の発酵を行った。F-7bは2回目の結果であり、12日後に総有機酸収率約51%、主生成物として1回目と同様に酪酸と酢酸を得た。このことにより、繰り返し発酵を行うことができることがわかる。その結果は下記表3に記載した通りであった。
【表3】
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【0025】
実施例F8~9
原料として濃度10%のグルコース水溶液を用い、酸発酵菌汚泥を75~100g/L使用して発酵実験を行った。12日後、総有機酸収率は約20%であり、主生成物は乳酸と酪酸であった。このことにより、通常の発酵と比べきわめて高濃度の糖液を用いても有機酸に転化できることがわかる。その結果は下記表4に記載した通りであった。
【表4】
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【0026】
2)有機酸のゼオライト転化
内径6mm、長さ600mmのSUS-316製の反応管にゼオライト触媒を所定量充填し、温度コントローラーの付いた電気炉内に設置した。反応管の上部の入口には、プランジャーポンプを用いて原料液を、またボンベからキャリアーガスを導入した。反応管の下部の出口には氷水で冷却した凝縮器を接続し、生成液を回収した。また凝縮器の出口にはテドラーバッグを取り付け、生成ガスを回収した。 生成液の組成はキャピラリカラムを装着したFID検出器付きのガスクロマトグラフ(アジレント製6890)と、同種のキャピラリカラムを装着したガスクロマトグラフ質量分析計(日本電子製JMS9000GC)を用いて分析した。また、生成ガスの組成は、充填カラムとしてシマライト/SM-6、Molecular Sieve 13X、Porapak-Qをそれぞれ装着したガスクロマトグラフを用いて分析した。

【0027】
実施例ZA-1
原料液として実施例F-2で生成した有機酸混合物を用い、触媒としてSi/Al比が27のZSM-5のペレット(バインダーとしてアルミナを20%含有)を使用して、転化反応を1時間行った。反応条件と生成物収率を表に示す。この結果、糖液の酸発酵で得られた酢酸、乳酸、酪酸混合液から、ベンゼン、トルエン、キシレンを主成分とする芳香族化合物と、エチレン、プロピレン、ブテンを主成分とする炭化水素ガスを高収率に得ることができた。 とくに、芳香族は化学原料として重要なベンゼン、トルエン、キシレンが主体であり、重質な芳香族の生成は抑制することができた。また、トリメチルベンゼンではポリイミドの原料として重要な出発物質である1,2,4-トリメチルベンゼンの収率が高く、また、メチルナフタレンでは用途の大きい2-メチルナフタレンの収率が高い特徴を有する。これらの有用な生成物の選択性の高さは、使用したZSM-5の形状選択性が本反応で発揮されたものと考えられる。その結果は下記表5に記載した通りであった。
【表5】
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【0028】
実施例ZA-2~4
原料液として、市販の乳酸の50%水溶液、市販の酪酸、酢酸を用い、触媒としてZSM-5を用いて、転化反応を1時間行った。反応条件と生成物収率を表に示す。この結果、実施例ZA-1と同様、ベンゼン、トルエン、キシレンを主成分とする芳香族化合物と、エチレン、プロピレン、ブテンを主成分とする炭化水素ガスを高収率に得ることができた。その結果は下記表6に記載した通りであった。
【表6】
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【0029】
実施例ZA-5~11
原料液として市販の酢酸を用い、触媒として種々のゼオライトと、Si/Al比の異なるZSM-5を用いて、転化反応を1時間行った。YはY型フォージャサイトである。また、無触媒での反応も行った。その結果は下記表7に記載した通りであった。
【表7】
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【0030】
この結果、無触媒では酢酸はほとんど転化せず、Y型フォージャサイトやモルデナイトではアセトン、メチルエチルケトン(MEK)、ブテン(C4’)は生成したが芳香族は生成しなかった。また、ZSM-5とZSM-5を用いた場合、いずれも、ベンゼン、トルエン、キシレンを主成分とする芳香族化合物と、エチレン、プロピレン、ブテンを主成分とする炭化水素ガスを高収率に得ることができた。とくに、Si/Al比が50以下のZSM-5では高い芳香族収率が得られた。

【0031】
実施例ZA-12~14
実施例ZA-5~7の反応を継続し、約7時間経過後の反応結果を実施例ZA-12~14として示す。表からわかるように、Si/Al比が80以上のZSM-5を用いると、長時間経過後も反応性が維持され、長時間の反応では高い活性と芳香族収率が得られることがわかった。その結果は下記表8に記載した通りであった。
【表8】
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