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明細書 :マキサディランの部分ペプチドを含む神経因性疼痛の治療剤

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5447784号 (P5447784)
公開番号 特開2010-209035 (P2010-209035A)
登録日 平成26年1月10日(2014.1.10)
発行日 平成26年3月19日(2014.3.19)
公開日 平成22年9月24日(2010.9.24)
発明の名称または考案の名称 マキサディランの部分ペプチドを含む神経因性疼痛の治療剤
国際特許分類 A61K  38/00        (2006.01)
A61P  25/04        (2006.01)
A61K  48/00        (2006.01)
A61K  31/7088      (2006.01)
A61P  43/00        (2006.01)
FI A61K 37/02 ZNA
A61P 25/04
A61K 48/00
A61K 31/7088
A61P 43/00 111
請求項の数または発明の数 2
全頁数 16
出願番号 特願2009-059211 (P2009-059211)
出願日 平成21年3月12日(2009.3.12)
審査請求日 平成24年1月30日(2012.1.30)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504258527
【氏名又は名称】国立大学法人 鹿児島大学
発明者または考案者 【氏名】宮田 篤郎
【氏名】清水 隆雄
個別代理人の代理人 【識別番号】100091096、【弁理士】、【氏名又は名称】平木 祐輔
【識別番号】100096183、【弁理士】、【氏名又は名称】石井 貞次
【識別番号】100118773、【弁理士】、【氏名又は名称】藤田 節
【識別番号】100111741、【弁理士】、【氏名又は名称】田中 夏夫
審査官 【審査官】池上 京子
参考文献・文献 The Journal of Pain,2008年,vol.9, no.5,p.449-456
The Journal of Biological Chemistry,2002年,vol.277, no.18,p.16075-16080
調査した分野 A61K 38/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
以下の(i)~(iii)のいずれかのポリペプチドを有効成分とする糖尿病性神経因性疼痛を治療および/または予防するための医薬組成物
(i)配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(ii)配列番号2で示されるアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列を有し、かつ、糖尿病性神経因性疼痛を治療および/または予防する活性を有するポリペプチド、または
(iii)配列番号2で示されるアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有し、かつ、糖尿病性神経因性疼痛を治療および/または予防する活性を有するポリペプチド
【請求項2】
以下のいずれかのポリペプチドをコードする核酸または該核酸を含む発現ベクターを有効成分とする糖尿病性神経因性疼痛を治療および/または予防するための医薬組成物
(i)配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、
ii)配列番号2で示されるアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列を有し、かつ、糖尿病性神経因性疼痛を治療および/または予防する活性を有するポリペプチド、または
(iii)配列番号2で示されるアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有し、かつ、糖尿病性神経因性疼痛を治療および/または予防する活性を有するポリペプチド
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、マキサディランの部分ペプチドを有効成分とする、神経因性疼痛を治療および/または予防するための医薬組成物および当該医薬組成物を用いた神経因性疼痛の治療および/または予防方法に関する。
【背景技術】
【0002】
糖尿病性神経障害は糖尿病患者の合併症のなかで最も早期に自覚症状が出現し、その頻度も高い。その病態は四肢のしびれや感覚障害に始まり、自律神経障害、単神経障害など様々な病像を呈する。これらの神経障害の中には有痛性の神経障害など患者の日常生活レベルを低下させるもの、無自覚性低血糖・突然死など生命予後に関わるものも存在する。糖尿病に特徴的な末梢神経障害は、(1)遠位有意の両側対称性のポリニューロパチーであり、上肢よりも下肢に、特に足、下腿より発現することが多い。(2)糖尿病性神経障害に特徴的な自覚症状は、足の異常感覚、冷感、感覚鈍麻である。(3)障害される神経線維が主に大径有髄神経のときは振動覚閾値の上昇、足指の触覚の低下、運動速度、感覚神経伝導速度の低下、腱反射の低下・消失がみられる。(4)小径神経線維や無髄神経が障害されるときには、温度感覚閾値の上昇、自律神経障害の所見が見られる。
【0003】
糖尿病性神経障害の発症機序は大きく分けて代謝障害説と血管障害説に分けられる。基本的な異常は高血糖であるが、その高血糖によりポリオール経路などの代謝異常が起こり、さらに血管障害が起こってくると考えられている。
【0004】
糖尿病の病態にプロスタサイクリン(PGI2)が関与し、糖尿病のモデル動物および糖尿病患者の血管壁でのプロスタサイクリンが低下していると報告されており、糖尿病の合併症の病態に大きく関与していることが推測されている。
【0005】
今日までに、糖尿病性神経障害、特に糖尿病性神経因性疼痛に対して、様々な治療法および治療薬が開発されており、例えば、血糖コントロール、ならびに、アルドース還元酵素剤、メキシレチン、プロスタグランジンE1、経口プロスタサイクリン誘導体(ベラプロストナトリウム)、三環系抗うつ薬などの治療薬が挙げられる。これらの治療法および治療薬の使用により、糖尿病性神経因性疼痛の症状が改善される一方で、当該治療法および治療薬の使用による副作用も存在する。例えば、急速な血糖コントロールは神経障害の憎悪を引き起こし、また当該薬剤の投与により、発疹、吐き気、倦怠感、めまい等を生じ得る。
従って、依然として、糖尿病性神経因性疼痛を治療・予防するための新規治療法および治療薬の開発が求められている。
【0006】
マキサディランは、南米に生息する吸血砂バエ(Lutzomyia longipalpis)の唾液腺から抽出される血管作動性ペプチドであり、63アミノ酸からなる2つのシステイン結合を含んだ構造を有している(図1)。マキサディランおよびその誘導体は、動物の表皮に適用されたときに、かゆみや疼痛を伴うことなく紅斑をもたらし、有力な血管拡張薬として利用し得ることが知られている(特許文献1)。
【0007】
マキサディランは、下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチド(Pituitary adenylate cyclase-activating polypeptide;PACAP)の受容体であるPAC1の選択的アンタゴニストであり、PACAPアンタゴニストとして一般に知られているPACAP[6-38]よりも、特異性の高いアンタゴニストと考えられている(非特許文献1)。
【0008】
PACAPは、Miyataら(非特許文献2)によって、ヒツジ脳の視床下部から下垂体細胞のアデニル酸シクラーゼを活性化する作用を指標に単離・同定されたペプチドホルモンである。PACAPにはPAC1、VPAC1、VPAC2の3つの受容体がこれまでに同定され、このうち、PAC1がPACAPに選択的な受容体である。PACAPとその受容体の組織分布の解析や、in vitro、in vivoでの薬理学研究から、PACAPの多様な生理的役割が明らかになってきており、現在では、PACAPは内分泌ホルモン作用の他に神経伝達物質・調節因子として多くの機能が報告されている。例えば中枢・末梢神経系において、神経細胞の分化・生存維持や神経分泌系の活性化などに関わっており、神経のシナプス可塑性の調節、神経前駆細胞の分化、グルコース依存的インスリン分泌の促進作用、痛みの調節、その他多くの生理作用があることが報告されている(非特許文献3~8)。
【0009】
特に、PACAPの痛覚との関連性に関しては、これまでに鎮痛作用と発痛作用の2通りの報告がある。本発明者らは、PACAPの髄腔内への投与により、一過性の潜時の後、1時間以上続く持続的な痛みを観察しており、また痛覚過敏を引き起こすことを報告している(非特許文献8)。しかしながら、本発明者らは一方でPACAPの脳室内への投与において、熱刺激に対する痛み、機械的刺激に対する痛み、炎症性の痛みを抑制する鎮痛作用を報告している(非特許文献9)。また、PACAPノックアウトマウスでは、カラゲニンの足底部への投与による炎症性の痛みや、L5脊髄神経節切断による疼痛、髄腔へのNMDA投与による疼痛、慢性炎症性疼痛反応(非特許文献10)が消失していることが報告されている。
一方、マキサディランと神経因性疼痛との関連性に関しては、これまでに明らかにされていなかった。
【先行技術文献】
【0010】

【特許文献1】特開平8-333392号公報
【0011】

【非特許文献1】Moro O., Wakita K., et al., 1999. Functional Characterization of structural alterations in the sequence of the vasodilatory peptide maxadilan yields a pituitary adenylate cyclase-activating peptide type 1 receptor-specific antagonist. J. Biol. Chem. 274, 23103-23110.
【非特許文献2】Miyata A., Arimura A., et al., 1989. Isolation of a novel 38 residue hypothalamic polypeptide which stimulates adenylate cyclase in pituitary cells. Biochem. Biophys. Res. Commun. 164, 567-574.
【非特許文献3】Arimura A., 1998. Perspective on pituitary adenylate cyclase- activating polypeptide (PACAP) in the neuroendocrine, endocrine, and nervous systems. Jpn. J. Physiol. 48, 301-331.
【非特許文献4】Vaudry H., Arimura A., 2003. Pituitary Adenylate Cyclase Activating Polypeptide. Kluwer Academic Publishers, Netherlands
【非特許文献5】Wilson-Gerwing T.D., Verge V.M.K., 2006. Neurotrophin-3 attenuates galanin expression in the chronic constriction injury model of neuropathic pain. Neuroscience. 141, 2075-2085.
【非特許文献6】Ohsawa M., Cristina G., et al., 2002. Modulation of nociceptive transmission by pituitary adenylate cyclase-activating polypeptide in the spinal cord of the mouse. Pain 100, 27-34.
【非特許文献7】Yamamoto T., Tatsuno I., 1994. Antinociceptive effect of intrathecally administered pituitary adenylate cyclase-activating polypeptide (PACAP) on the rat formalin test. Neurosci.lett. 184, 32-35.
【非特許文献8】Shimizu T., Katahira K., et al., 2004. Diverse effects of intrathecal pituitary adenylate cyclase-activating polypeptide on nociceptive transmission in mice spinal cord. Regul. Pept. 123, 117-122.
【非特許文献9】Shimizu T., Imai K., et al., 2005. Supraspinal effects of pituitary adenylate cyclase-activating polypeptide (PACAP) on nociceptive transmission in mice. J. Pharmacol. Sci. 97(1) 203.
【非特許文献10】Mabuchi T., Shintani N., et al., 2004. Pituitary Adenylate Cyclase- Activating Polypeptide Is Required for the Development of Spinal Sensitization and Induction of Neuropathic Pain. J. Neurosci. 24, 7283-7291.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、治療法の確立されていない糖尿病神経因性疼痛の治療薬および当該治療薬を用いた神経因性疼痛の治療法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、マキサディランの部分ペプチドを有効成分とする治療薬が糖尿病性神経因性疼痛の治療および予防に有効であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0014】
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
[1] 配列番号1で示されるアミノ酸配列において、23位~46位のアミノ酸のうちの1~24個のアミノ酸が欠失しているアミノ酸配列からなるポリペプチドを有効成分とする神経因性疼痛を治療および/または予防するための医薬組成物。
[2] ポリペプチドが、
(i)配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、または
(ii)配列番号2で示されるアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列を有し、かつ、神経因性疼痛を治療および/または予防する活性を有するポリペプチド、
である、[1]の医薬組成物。
[3] 以下のいずれかのポリペプチドをコードする核酸または該核酸を含む発現ベクターを有効成分とする神経因性疼痛を治療および/または予防するための医薬組成物:
(a)配列番号1で示されるアミノ酸配列において、23位~46位のアミノ酸のうちの1~24個のアミノ酸が欠失しているアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(b)配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、または
(c)配列番号2で示されるアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列を有し、かつ、神経因性疼痛を治療および/または予防する活性を有するポリペプチド。
[4] 神経因性疼痛が、脳下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチド受容体I型(PAC1受容体)媒介性の神経因性疼痛である、[1]~[3]のいずれかの医薬組成物。
[5] 神経因性疼痛が、糖尿病性神経因性疼痛である、[4]の医薬組成物。
【発明の効果】
【0015】
本発明の医薬組成物により、神経因性疼痛を治療および/または予防することができる。従って、神経因性疼痛および関連する様々な疾患または障害を、副作用を引き起こすことなく、治療することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、マキサディラン、max.d.4およびPACAPの相同性(a)ならびにマキサディランの構造(b)およびmax.d.4の構造(c)を示す図である。
【図2】図2は、対照マウス(STZ非投与群)および糖尿病モデルマウス(STZ投与群)の血糖値を示す図である。STZ非投与群:n=5;STZ投与群(750mg/kg, i.p. 2w ):n=31*:P<0.05【図6】図6は、対照マウス(STZ非投与群)および糖尿病モデルマウス(STZ投与群)の熱刺激に対する解析結果を示す図である。STZ非投与群:n=20;STZ投与群:n=30
【図7】図7は、対照マウス(STZ非投与群)および糖尿病モデルマウス(STZ投与群)における熱刺激に対するmax.d.4の解析結果を示す図である。コントロール max.d.4(-):n=10;コントロールmax.d.4(+):n=10;STZ(+)max.d.4(-):n=17;STZ(+)max.d.4(+):n=13
【図8】図8は、糖尿病モデルマウス(STZ投与群)におけるホルマリン試験の侵害反応に対するmax.d.4の解析結果を示す図である。max.d.4(-):n=14;max.d.4(+):n=15;*:P<0.05【図12】図12は、糖尿病モデルマウス(STZ投与群)におけるmax.d.4の髄腔内投与後のアロディニアの経時的変化を示す図である。コントロールmax.d.4(-):n=7;コントロールmax.d.4(+):n=8;STZ(+)max.d.4(-):n=5;STZ(+)max.d.4(+):n=7;*:P<0.05
【図13】図13は、糖尿病モデルマウス(STZ投与群)におけるmax.d.4の髄腔内投与後のアロディニアに対する用量依存的効果を示す図である。max.d.4(-):n=3;max.d.4(+) 5pmol:n=7;max.d.4(+) 16.7pmol:n=7;max.d.4(+) 50pmol:n=5;*:P<0.05
【図14】図14は、糖尿病モデルマウス(STZ投与群)における皮下投与されたmax.d.4のアロディニアに対する効果を示す図である。コントロール:n=6;max.d.4(+):n=8;*:P<0.05
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、マキサディランの部分ペプチドを有効成分とする、神経因性疼痛を治療および/または予防するための医薬組成物に関する。

【0018】
本発明に用いられるマキサディランは公知であり、南米に生息する吸血砂バエ(Lutzomyia longipalpis)の唾液腺から単離され、配列情報が公開されている。マキサディランのアミノ酸配列情報は、例えばアクセッション番号M77090等として、GenBank等のデータベースに登録されておりこれらを利用することが可能であるが、好ましくは配列番号1に示されるアミノ酸配列を用いる。

【0019】
本発明において、マキサディランの部分ペプチドとは、マキサディランペプチドの一部分であって、神経因性疼痛を治療および/または予防する活性を保持しているペプチドを意味する。本発明において、当該部分ペプチドは、配列番号1で示されるアミノ酸配列において、23位~46位のアミノ酸のうちの1~24個のアミノ酸が欠失しているアミノ酸配列からなり得る。

【0020】
本発明におけるマキサディランの部分ペプチドは、マキサディランと同様にPAC1受容体に結合する。マキサディランは、配列番号1で示されるアミノ酸配列において、10位~22位のアミノ酸配列および47位~63位のアミノ酸配列からなる2つのα-ヘリックス構造を有する。これら2つのα-ヘリックス構造は、当該配列中に含まれるアミノ酸、すなわち、配列番号1で示されるアミノ酸配列の14位のシステインおよび配列番号1で示されるアミノ酸配列の51位のシステイン、の間でジスルフィド結合を形成する(図1)。この2つのα-ヘリックス構造が形成する立体構造により、マキサディランは、PAC1受容体に結合することが可能となる(Moro O, et al, “Functional Characterization of Structural Alterrations in the Sequence of the Vasodilatory Peptide Maxadilan Yields a Pituitary Adenylate Cyclase-activating Polypeptide type 1 Receptor-specific Antagonist”, J Biol Chem. 274, 1999)。

【0021】
本発明におけるマキサディランの部分ペプチドも、配列番号1で示されるアミノ酸配列の10位~22位のアミノ酸配列および47位~63位のアミノ酸配列に相当する部分を保持し、当該部分により形成される2つのα-ヘリックス構造によりPAC1受容体に結合し得る。ただし、本発明におけるマキサディランの部分ペプチドにおいて、当該部分のアミノ酸配列は、ジスルフィド結合を生じる上記2つのシステイン残基が保持され、かつマキサディランの部分ペプチドがPAC1受容体に結合し得る限り、1~数個のアミノ酸の欠失、置換、付加または挿入を有していても良い。「1~数個」の範囲は特には限定されないが、例えば、1から20個、好ましくは1から10個、より好ましくは1から7個、さらに好ましくは1から5個、特に好ましくは1から3個、あるいは1個または2個である。また、本発明におけるマキサディランの部分ペプチドは、PAC1受容体に結合し得る限り、配列番号1で示されるアミノ酸配列の1位~9位のアミノ酸配列に相当する部分に、1~数個のアミノ酸の欠失、置換、付加または挿入を有していても良い。マキサディランは配列番号1で示されるアミノ酸配列の1位と5位のシステインの間でジスルフィド結合を形成し得るが(図1)、本発明におけるマキサディランの部分ペプチドは、当該ジスルフィド結合を保持していても、保持していなくても良い。

【0022】
本発明におけるマキサディランの部分ペプチドは、配列番号1で示されるアミノ酸配列において、23位~46位のアミノ酸のうちの1~24個のアミノ酸が欠失しているアミノ酸配列からなる。好ましくは、当該部位において、4~23個、8~22個、12~21個、16~20個、より好ましくは19個のアミノ酸を欠失している。当該部分にアミノ酸の欠失を含まないマキサディランの全長ペプチドは、神経因性疼痛に対して鎮痛活性を有さない。本発明者らは逆に、マキサディランの全長ペプチドは脊髄への髄腔内投与により痛み様反応や痛覚過敏を引き起こすことを見出した。それに対して、当該部分にアミノ酸の欠失を含むマキサディランの部分ペプチドは、神経因性疼痛に対して鎮痛活性を有し得る。当該知見は本願発明者らによって初めて見出されたものである。

【0023】
本発明の一実施形態において、本発明におけるマキサディランの部分ペプチドは、配列番号1で示されるアミノ酸配列において、24位~42位の19個のアミノ酸を欠いているアミノ酸配列(配列番号2)からなる(図1)。なお、当該配列番号2で示される配列を有するマキサディランの部分ペプチドは、max.d.4またはM65と称される場合がある。本明細書中では、当該配列番号2で示される配列を有するマキサディランの部分ペプチドをmax.d.4と記載する場合がある。

【0024】
また、本発明においてマキサディランの部分ペプチドには、上記部分ペプチド、好ましくは配列番号2に示されるアミノ酸配列に、1~数個のアミノ酸の欠失、置換、付加または挿入を有し、かつPAC1受容体に結合して神経因性疼痛を治療および/または予防する活性を有するペプチドも含まれる。「1から数個」の範囲は特には限定されないが、例えば、1から20個、好ましくは1から10個、より好ましくは1から7個、さらに好ましくは1から5個、特に好ましくは1から3個、あるいは1個または2個である。

【0025】
さらに、本発明においてマキサディランの部分ペプチドには、上記部分ペプチド、好ましくは配列番号2に示されるアミノ酸配列、とBLAST(Basic Local Alignment Search Tool at the National Center for Biological Information(米国国立生物学情報センターの基本ローカルアラインメント検索ツール))等(例えば、デフォルトすなわち初期設定のパラメータ)を用いて計算したときに、80%以上、より好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつPAC1受容体に結合して神経因性疼痛を治療および/または予防する活性を有するペプチドも含まれる。

【0026】
また、本発明においてマキサディランの部分ペプチドは、当該ポリペプチドのC末端またはN末端に標識ペプチドを結合させた融合ペプチドの形態であっても良い。代表的な標識ペプチドには、6~10残基のヒスチジンリピート(Hisタグ)、FLAG、mycペプチド、GFPポリペプチドなどが挙げられるが、これらに限定されない。

【0027】
マキサディランの部分ペプチドは、当業者にとって周知であるように、遺伝子工学的手法を用いて、製造・精製することができる。すなわち、当該ペプチドをコードするDNAまたはその断片を適当なベクターに組込み、このベクターを適当な宿主細胞に導入し、当該ペプチドを発現させることが可能である。宿主細胞としては、E. coli、酵母、SF9、SF21、COS1、COS7、CHO、HEK293など周知の細胞を用いることが可能である。発現されたペプチドは、宿主細胞の培養上清より、ペプチド精製に用いられる公知の方法、例えば、硫安塩析、有機溶媒(エタノール、メタノール、アセトン等)による沈殿分離、イオン交換クロマトグラフィー、等電点クロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー、吸着カラムクロマトグラフィー、基質または抗体などを利用したアフィニティークロマトグラフィー、逆相カラムクロマトグラフィーなどのクロマトグラフィー、精密ろ過、限外ろ過、逆浸透ろ過等の濾過処理など、を1つまたは複数組み合わせて用いて精製することが可能である。

【0028】
本発明はまた、マキサディランの部分ペプチドをコードする核酸、あるいは、マキサディランの部分ペプチドをコードする核酸を含む発現ベクターを有効成分とする、神経因性疼痛を治療および/または予防するための医薬組成物に関する。

【0029】
当該医薬組成物は、遺伝子治療用医薬組成物として利用することが可能であり、マキサディランの部分ペプチドをコードする核酸、マキサディランの部分ペプチドをコードする核酸を含む発現ベクター、または当該核酸または発現ベクターを含む形質転換体、あるいはそれらの組合せを含むことができる。

【0030】
当該医薬組成物中に含有される、マキサディランの部分ペプチドをコードする核酸にはDNAおよびmRNAが含まれる。これらの核酸は導入された標的細胞において転写・翻訳され、マキサディランの部分ペプチドを発現することが可能である。

【0031】
マキサディランの部分ペプチドをコードするDNAおよびmRNAは、当業者にとって周知であるように、遺伝子工学的手法を用いて作製することが可能である。例えば、上記GenBank等のデータベースに登録された公知のヌクレオチド配列情報を利用して、化学合成や、プロモーターおよびDNAまたはRNAポリメラーゼを用いた転写系によってin vitroで合成することができる。

【0032】
マキサディランの部分ペプチドをコードする核酸としては、以下のものが含まれる:
(1)配列番号1で示されるアミノ酸配列において、23位~46位のアミノ酸のうちの1~24個のアミノ酸が欠失しているアミノ酸配列または配列番号2で示されるアミノ酸配列をコードする核酸;
(2)上記(1)の核酸において、1~数個のヌクレオチドの欠失、置換、付加または挿入を有し、かつPAC1受容体に結合して神経因性疼痛を治療および/または予防する活性を有するペプチドをコードする核酸;
(3)上記(1)の核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ神経因性疼痛を治療および/または予防する活性を有するペプチドをコードする核酸;あるいは
(4)上記(1)の核酸とBLAST等(例えば、デフォルトすなわち初期設定のパラメータ)を用いて計算したときに、80%以上、より好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上の相同性を有する塩基配列からなり、かつPAC1受容体に結合して神経因性疼痛を治療および/または予防する活性を有するペプチドをコードする核酸。
ここで、(2)において「1~数個」の範囲は特には限定されないが、例えば、1から20個、好ましくは1から10個、より好ましくは1から7個、さらに好ましくは1から5個、特に好ましくは1から3個、あるいは1個または2個である。また、(3)において、ストリンジェントな条件とは、いわゆる特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件をいい、例えば、ナトリウム濃度が、10mM~300mM、好ましくは20~100mMであり、温度が25℃~70℃、好ましくは42℃~55℃での条件をいう。

【0033】
当該核酸を含むベクターとしては、遺伝子導入に使用することが可能な公知のベクター、例えば、ウイルスベクターおよび非ウイルスベクター、を用いることができる。

【0034】
当該発現ベクターは、当業者に周知である遺伝子工学的手法を用いて、適当なベクターに、上記マキサディランの部分ペプチドをコードする核酸をプロモーターおよび/またはその他の制御配列と機能し得るかたちで連結して挿入することによって作製することができる。「機能し得るかたちで連結して挿入する」とは、当該発現ベクターが導入された細胞において、プロモーターおよび/またはその他の制御配列の制御の下、マキサディランの部分ペプチドが発現されるように、プロモーターおよび/またはその他の制御配列を連結してベクターに組み込むことを意味する。

【0035】
当該核酸または発現ベクターを含む形質転換体も利用することが可能である。上記マキサディランの部分ペプチドをコードする核酸を、一旦、適当な宿主細胞に遺伝子工学的手法を用いて導入し、その形質転換体を被験体に移植し得る。宿主細胞の由来は、自己(auto)、同種異系(allo)、および異種(zeno)のいずれであってもよいが、本発明をヒトの治療に適用する場合、好ましくは自己由来または同種異系由来であり、最も好ましくは自己由来の細胞である。異種供給源としては、ブタやサル、その他の哺乳動物が挙げられる。

【0036】
本発明の医薬組成物を用いて、神経因性疼痛、末期がんにおける癌性疼痛および脊髄損傷など何らかの神経障害後におこる慢性疼痛などを治療および/または予防することが可能であり、好ましくは神経因性疼痛である。本発明の医薬組成物を用いて治療および/または予防し得る神経因性疼痛としては、神経系の損傷あるいは機能異常によって生じる疼痛が挙げられる。好ましくは、PAC1受容体によって媒介される神経因性疼痛である。さらに好ましくは、糖尿病性の神経因性疼痛である。

【0037】
本発明の医薬組成物は、注射および/または移植によって直接患部に対して投与することが可能であり、また、経口投与または非経口投与(例えば、静脈内投与、動脈内投与、注射による局所投与、髄腔、腹腔または胸腔への投与、皮下投与、筋肉内投与、舌下投与、経皮吸収または直腸内投与など)によって、また必要に応じて一般的な遺伝子導入法(例えば、リン酸カルシウム法、DEAEデキストラン法、エレクトロポレーション法、またはリポフェクション法等)を適宜組み合わせて、投与することができる。

【0038】
また、投与経路に応じて適当な剤形とすることができる。具体的には注射剤、懸濁剤、乳化剤、軟膏剤、クリーム剤錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、丸剤、細粒剤、トローチ錠、直腸投与剤、油脂性坐剤、水溶性坐剤等の各種製剤形態に調製することができる。

【0039】
また、医薬組成物の成分として形質転換体を含む場合には、アテロコラーゲンゲルなどの適当な担体に細胞を充填し局所的に注入することも可能である。

【0040】
これらの各種製剤は、通常用いられている賦形剤、増量剤、結合剤、浸潤剤、崩壊剤、表面活性剤、滑沢剤、分散剤、緩衝剤、保存剤、溶解補助剤、防腐剤、着色料、香味剤、および安定化剤などを用いて常法により製造することができる。

【0041】
賦形剤としては、例えば、乳糖、果糖、ブドウ糖、コーンスターチ、ソルビットおよび結晶セルロース、滅菌水、エタノール、グリセロール、生理食塩水、緩衝液などが、崩壊剤としては、例えば澱粉、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、炭酸カルシウム、クエン酸カルシウム、デキストリン、炭酸マグネシウムおよび合成ケイ酸マグネシウムなどが、結合剤としては、例えばメチルセルロースまたはその塩、エチルセルロース、アラビアゴム、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロースおよびポリビニルピロリドンなどが、滑沢剤としては、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコールおよび硬化植物油などが、安定化剤としては、例えばアルギニン、ヒスチジン、リジン、メチオニンなどのアミノ酸、ヒト血清アルブミン、ゼラチン、デキストラン40、メチルセルロース、亜硫酸ナトリウム、メタ亜硫酸ナトリウムなどが、その他の添加剤としては、シロップ、ワセリン、グリセリン、エタノール、プロピレングリコール、クエン酸、塩化ナトリウム、亜硝酸ソーダおよびリン酸ナトリウムなどがそれぞれ挙げられる。

【0042】
医薬組成物の成分として形質転換体を含む場合には、シクロスポリン、アクロリムス水和物、シクロホスファミド、アザチオプリン、ミゾリビン、およびメトトレキセート等、公知の免疫抑制剤を使用しても良い。

【0043】
本発明の医薬組成物に含まれるマキサディランの部分ペプチドまたは当該ペプチドをコードする核酸は、患者の年齢、体重、疾患の重篤度などの要因によって変化し得るが、mRNA、発現ベクター、およびペプチドであれば1回につき体重1kgあたり0.0001mg~100mg、形質転換体であれば約102細胞~約109細胞の範囲から適宜選択される量を含めることができる。

【0044】
さらに、本発明は、本発明の医薬組成物を投与することによる、哺乳動物の神経因性疼痛を治療および/または予防する方法に関する。
哺乳動物としては、非限定的にサル、イヌ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ウサギ、マウス、ラット、モルモット、ハムスター等が挙げられるが、好ましくはヒト、特に糖尿病性神経因性疼痛に罹患しているヒトである。

【0045】
本発明の医薬組成物および治療法の効果は、動物モデルを用いて検証することが可能である。動物モデルとしては、確立された方法に従ってストレプトゾトシン、アロキサン等の薬物で処理して糖尿病を惹起させた動物または遺伝性糖尿病動物(ob/obマウス、db/dbマウス、KKAyマウス、GKラット、ZDFラット、OLETFラットなど)を使用することができる。当該動物に本発明の医薬組成物を投与して、公知の疼痛試験法(例えば、Randall Selitto法、Tail pinch法、von Freyフィラメント試験、Hot plate試験、Tail-flick試験、Plantar試験、ホルマリン試験などが挙げられるがこれらに限定されない)を用いて、当該医薬組成物の投与前後または投与有無における疼痛を数値化して比較し評価することが可能である。当該医薬組成物を投与することにより実験動物における疼痛は、当該医薬組成物を投与する前または投与していない動物の疼痛と比較して、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、99%以上減少し得る。このことは、本発明の医薬組成物が、ヒト糖尿病患者における神経因性疼痛の治療薬として有効である可能性を示す。

【0046】
ヒト糖尿病患者における本発明の医薬組成物および治療法の効果は、公知の疼痛評価法(例えば、VAS(Visual Analogue Scale)法、フェイススケール法、MPQ(McGill Pain Questionnaire)法、VRS(Verbal Rating Scale)法、10段階ペインスケール法など)を用いて、当該医薬組成物の投与前後の疼痛を数値化して比較し評価することが可能である。当該医薬組成物を投与することにより患者における疼痛は、当該医薬組成物を投与する前の疼痛と比較して、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、99%以上減少し得る。

【0047】
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものでない。
(実施例)
【実施例1】
【0048】
max.d.4の調製
max.d.4をコードするプラスミドM65-pGEX-2Tを用いて大腸菌を形質転換し、形質転換体を得た。得られた形質転換体をLB培地(2ml)にて一晩に培養し、さらに300mlのLB培地を加えてOD=0.6~0.8になるまで2~3時間培養した。その後、IPTG液を3ml加えて、さらに4時間培養した。培養物を遠心分離(4℃、10000rpm、10分)し、上清を除去して沈渣を回収した。沈渣よりGST-タグ付きタンパク質を、B-Per GST Fusion Protein Purification kit(Thermo scientific 社)を用いて溶出した。溶出物に1M CaCl2溶液(最終濃度2.5mM )とトロンビン(1Uで100μg処理)を加えて、37℃にて一晩消化した。トロンビン消化物をSep-Pakカラム(Waters社)を用いて精製した後、逆相HPLC[カラム:ミリポア社製 RESORCE RPC;分離条件:AからBへの80分リニアグラディエント;A]水:アセトニトリル:10%TFA=90:10:1;B]水:アセトニトリル:10%TFA=40:60:1]に供しmax.d.4を得た。
【実施例1】
【0049】
得られたmax.d.4を髄腔内投与用および皮下投与用に調製した。
髄腔内投与用には、max.d.4をACSF(人工脳脊髄液)に10pmol/l となるように溶解して調製した。ACSFの組成を以下に示す。
ACSF(人工脳脊髄液)を作製
塩化ナトリウム 4.03g
塩化カリウム 0.112g
塩化カルシウム水和物 0.092g
塩化マグネシウム水和物 0.101g
D-グルコース 0.09g
蒸留水 Fill up to 500ml
合計 500ml
皮下投与用には、生理食塩水中25%デキストラン液100μlに5nmolのmax.d.4を添加し混合して調製した。
【実施例2】
【0050】
糖尿病モデルマウスの作成
750mg/kgのStreptozotocin(SIGMA)(以下STZ)を8~9週齢のddYマウス(日本クレア社から購入)に腹腔内投与し、2週間後にマウスの尾から血液を採取し、小型血糖測定機グルテストEII、自己検査用グルコースキットグルテストセンサーを使用して血糖値を測定した。この時、対照マウス(STZ非投与マウス)の血糖値は平均103mg/dlであるのに対し、糖尿病モデルマウス(STZ投与マウス)の血糖値は平均507mg/dlであり、有意に増加していた(図2)。また、糖尿病モデルマウスでは対照マウスと比較すると体重の減少が確認された(図3)。
STZを投与して2週間後の血糖値が300mg/dl以上のマウスを糖尿病モデルマウスと判断した。
【実施例3】
【0051】
機械的刺激に対する痛みの評価
糖尿病モデルマウスにおける痛覚過敏の検定を行った。また、糖尿病モデルマウスの髄腔内に、max.d.4(50pmol)を投与し1日後に機械的刺激に対する痛みの閾値の変化を観察した。機械的刺激に対する評価はテイルピンチ法を使用し、以下の式を用いてMPE(Maximal possible effect)値によって評価した。
【実施例3】
【0052】
JP0005447784B2_000002t.gif
【実施例3】
【0053】
結果、糖尿病モデルマウス(STZ投与マウス)の機械的刺激に対する閾値は、STZ投与3週後に対照(STZ非投与群)の機械的刺激の閾値と有意な差が確認された(図4)。また、対照群においては、max.d.4(50pmol)の効果は見られたが、糖尿病モデルマウスにおいては、max.d.4 (50pmol)の効果は見られなかった(図5)。
【実施例4】
【0054】
熱刺激に対する痛みの評価
糖尿病モデルマウスの温熱に対する感受性の低下の有無を明らかにする為、STZを投与して4週間後に髄腔内へ、max.d.4(50pmol)を投与し1日後に熱刺激に対する侵害反応を観察した。熱刺激に対する評価は、ホットプレート法により行った。
【実施例4】
【0055】
結果、対照群(STZ非投与群)に対し、糖尿病モデルマウス(STZ投与マウス)における温熱に対する感受性の低下は確認されなかった(図6)。また、max.d.4投与による有意な変化も観察されなかった(図7)。
【実施例5】
【0056】
炎症性の痛みに対する評価
max.d.4が炎症性の痛みに対して効果があるかどうかを検討するためにホルマリンテストを行った。
【実施例5】
【0057】
結果、ホルマリンによって引き起こされる第1相目(ホルマリン投与10分後まで)の痛みにおいては、max.d.4(50pmol, i.t.)投与群で抑制される傾向が認められたが、生理食塩水投与群との比較では有意差はなかった(図8、9)。しかしながら、炎症性の痛みを生じる第2相目(ホルマリン投与11分~60分後)の痛みは、max.d.4投与群において有意( P<0.05 )に抑制される事が確認された(図8、9)。【0058】
非侵害刺激の痛み(アロディニア)の評価
(1)アロディニアの評価
神経因性疼痛であるアロディニアの症状の有無を確認するため、糖尿病モデルマウスにおける非侵害刺激の検討(von Frey試験)を行った。STZを投与する1週前にvon Frey試験を全てのマウスに実施し、非侵害刺激に対する痛みの閾値が同程度になるように4つのグループに分け、糖尿病モデルマウスの髄腔内にmax.d.4を投与し、非侵害刺激に対する痛みの閾値を以下のように計算し、変化を観察した。
50% g threshold = ( 10(Xf + Kδ)) / 10.000
Xf:最後に使用したフィラメントの太さ
K:反応のパターン
δ:刺激間での平均値
【実施例6】
【0059】
結果、STZ(750mg/kg, i.p.)を投与すると1週間後にvon Frey試験による閾値の低下が確認され、3週間後も確認された(図10)。max.d.4(50pmol, i.t.)を投与すると、対照群及び糖尿病モデルマウスにおいて有意な閾値の上昇が確認された。(図11)。
【実施例6】
【0060】
(2)アロディニアに対するmax.d.4の経時的効果の検討
髄腔内へmax.d.4を投与した時の痛みの経時的変化を検討した。max.d.4(50pmol)を髄腔内へ投与すると、3時間後よりも24時間後においてアロディニアの症状がより改善することが確認された(図12)。
【実施例6】
【0061】
(3)アロディニアに対するmax.d.4の用量依存的効果の検討
髄腔内へmax.d.4を投与した時の痛みの用量依存的効果を、5pmol、16.7pmol、50pmolの3段階の投与量において検討した。その結果、用量依存的に、アロディニア症状が改善することが確認された(図13)。
【実施例7】
【0062】
max.d.4の皮下投与による効果の検討
上記実施例6より、max.d.4の髄腔内への投与によって、糖尿病モデルマウスにおけるアロディニアの症状の改善が確認された。そこで、髄腔よりもより簡便な投与法である皮下投与でもアロディニアの症状の改善が確認されるかを検討した。max.d.4はペプチドであるため、max.d.4単体での皮下投与では、すぐに分解されてしまうことが考えられるため、デキストランとmax.d.4を混合して皮下投与した。また、髄腔とは異なり皮下投与は直接神経へ投与しているわけではないため、髄腔の投与量の100倍に相当する5nmolのmax.d.4を投与した。その結果、max.d.4の皮下投与後3時間でアロディニアの症状の改善が有意に確認されたが、24~48時間に改善効果は消失した(図14)。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明により、神経因性疼痛を治療および/または予防することができる。従って、神経因性疼痛および関連する様々な疾患または障害を、副作用を引き起こすことなく、治療および/または予防することが可能となる。
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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