TOP > 国内特許検索 > ナノシートの製造方法 > 明細書

明細書 :ナノシートの製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5376498号 (P5376498)
公開番号 特開2010-106352 (P2010-106352A)
登録日 平成25年10月4日(2013.10.4)
発行日 平成25年12月25日(2013.12.25)
公開日 平成22年5月13日(2010.5.13)
発明の名称または考案の名称 ナノシートの製造方法
国際特許分類 B22F   9/12        (2006.01)
B22F   1/00        (2006.01)
B22F   9/14        (2006.01)
FI B22F 9/12 Z
B22F 1/00 K
B22F 9/14 Z
請求項の数または発明の数 2
全頁数 9
出願番号 特願2008-282530 (P2008-282530)
出願日 平成20年10月31日(2008.10.31)
審査請求日 平成23年10月25日(2011.10.25)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304021288
【氏名又は名称】国立大学法人長岡技術科学大学
発明者または考案者 【氏名】諏訪 浩司
【氏名】新原 ▲こう▼一
【氏名】末松 久幸
【氏名】中山 忠親
【氏名】鈴木 常生
【氏名】浅見 廣樹
【氏名】石原 知
個別代理人の代理人 【識別番号】100091373、【弁理士】、【氏名又は名称】吉井 剛
【識別番号】100097065、【弁理士】、【氏名又は名称】吉井 雅栄
審査官 【審査官】國島 明弘
参考文献・文献 国際公開第2007/024067(WO,A1)
特表2009-506205(JP,A)
特開2007-254841(JP,A)
特開平10-140215(JP,A)
調査した分野 B22F 9/12
B22F 1/00
B22F 9/14
特許請求の範囲 【請求項1】
液体中に設置された断面積0.0001~5mm、長さ5~500mmの長尺形状の金属を、当該金属の気化エネルギーに対して10~100倍の電気エネルギーを用いて0.1μ秒~100μ秒通電加熱することで厚さ1~50nm、大きさ100nm~5μmの多角形状のナノシートを製造することを特徴とするナノシートの製造方法。
【請求項2】
前記金属が銀または銀を50~100mol%含む合金であることを特徴とする請求項1記載のナノシートの製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、簡便で低コストであるナノシートの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
厚さが1μm以下であり、厚さに対して大きな面積を有する板状物質は、表面物性の機能が大きく、ナノシートと称されている。ナノシートを製造する手法として、化学溶液の電気分解、ゾル-ゲル法により得られる酸化ナノシートの還元などがある。たとえば、硝酸銀水溶液とホウ酸水溶液からなる電解質溶液に硝酸を加え、これを定電流電解装置で電析を行い作製した銀ナノシートがある(特許文献1)。
【0003】
しかし、それらの生成プロセスは原理的に化学反応を基本とするものであり、複数の工程から成る煩雑な操作を要する。また、一般に、これらの化学反応を酸またはアルカリなどを添加することを要し、さらには、目的とするナノシートとともに副生成物を生じるため、ナノシートの生成後に残存した酸またはアルカリ、副生成物を分離する操作が必要である。
【0004】
一方、物理反応を伴うナノスケールの材料を合成する手法として、金属材料を通電加熱して材料を得る方法がある。たとえば、exploding wireを用いた銀ナノ粒子の作製がある(F. G. Karioris, B. R. Fish, and G. W. Royster, in Exploding Wires, edited by W. G. Chace and H. K. More (Plenum, NY, 1962), Vol. 2, p. 299.)。この手法では、通電加熱によって形成した金属蒸気が冷却されて固体粒子を形成するために、ナノシートのような形状異方性の高い生成物を得ることは容易ではない。
【0005】
最近、金属の通電加熱によるナノ粒子合成法の発展のために、液体中で金属材料を通電加熱し放電させる手法も報告されている。しかし、依然としてこれまでに、液体中での通電加熱によっても、ナノシートのような形状異方性の高い組成物の作製例は報告されていなかった。
【0006】

【特許文献1】特開2005-179734号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、金属などのナノシートを簡便且つ低コストで製造することのできる新しい技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、水中での金属細線へのパルス通電によって銀のナノシートが作製できることを発見した。さらに研究を重ねた結果、液中での金属細線へのパルス通電によって金属などのナノシートを形成させることのできる技術を確立し本発明を導き出した。
【0009】
すなわち、本発明は、次の構成を採用するものである。
【0010】
液体中に設置された断面積0.0001~5mm、長さ5~500mmの長尺形状の金属を、当該金属の気化エネルギーに対して10~100倍の電気エネルギーを用いて0.1μ秒~100μ秒通電加熱することで厚さ1~50nm、大きさ100nm~5μmの多角形状のナノシートを製造することを特徴とするナノシートの製造方法に係るものである。
【0011】
また、前記金属が銀または銀を50~100mol%含む合金であることを特徴とする請求項1記載のナノシートの製造方法に係るものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明は上述のようにするから、金属などのナノシートを簡便且つ低コストで製造することが可能なナノシートの製造方法となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
好適と考える本発明の実施形態(発明をどのように実施するか)を、本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0014】
本発明では、液体中に設置された金属を、当該金属の気化エネルギーに対して3倍以上の電気エネルギーを用いて通電加熱することを特徴とするものである。当該金属を当該金属の気化エネルギーに対して3倍以上の電気エネルギーを用いて通電加熱することにより、当該金属は短時間で溶解、気化し、場合によってはプラズマ化する。続いて、この気化又はプラズマ化した金属成分は、当該液体中に拡散するとともに、急速に冷却される。このとき、結晶成長を伴って凝固することによって多数のナノシートが形成され、当該液体中に分散する。
【0015】
通電加熱のための電気エネルギーは、当該金属を短時間で十分に気化させるために、当該金属の気化エネルギーに対して3倍以上必要である。より好ましくは、10~100倍である。10倍未満では、材料の種類によっては気化することができても、ナノシートとして生成しない可能性があり、100倍を超えると不経済である。
【0016】
本発明に用いる液体は、原理上限定されるものではないが、ナノシートの用途により、混入すると支障のある液体は避けるべきである。使用する液体として、安全性、経済性の理由からも、特に、水を用いることが好ましい。原料として通電加熱に供する金属のみで、他の反応物質を必要とせず、また、副生成物も生じないことから、生成したナノシート以外の物質を洗浄する必要がないことも本発明の利点の一つである。ナノシートは、何らかの溶媒中に分散したコロイド液やペースト状態でも使用されることがあるため、このような用途のためには、当該溶媒と同一の液体を用いると工業上有利である。
【0017】
本発明において、原料の迅速かつ均質な気化のためには、線材やリボン材などの長尺形状を有する金属に通電することが好ましい。具体的には、断面積0.0001~5mm、長さ5~500mmの寸法を有する金属を原料として用いる。断面積が0.0001mm未満では1回の通電で生成するナノシートの量が少なく、5mmを超えると必要な電気エネルギーが大きくなり、容量の大きな電源が必要となる。長さが5mmより短いと1回の通電で生成するナノシートの量が少なく、長さが500mmを超えると通電による気化が不均質となり易い。
【0018】
原料となる金属に通電する方法は特に限定されるものではないが、高電圧のパルス電流を用いることが好ましい。本発明の製造方法では、通電加熱される原料自体が電気回路の一部となっており、通電加熱による金属の気化及び所定の反応の後は通電が不要である。したがって、通電時間が短すぎると金属の気化が不十分となる可能性があり、通電時間が長すぎても不経済であるため、通電時間が0.1μ秒~10秒のパルス電流を用いることが好ましい。特に好ましくは、通電時間が0.1μ秒~100μ秒のパルス電流を用いることである。
【実施例】
【0019】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0020】
直径0.1~0.2mm、長さ22mmの銀線を、150mlのイオン交換水を封入したチャンバーに設置した。この銀線の気化エネルギーは5.5~22Jである。4~6kVで充電した容量30μFのコンデンサーは細線の気化エネルギーに対して10.9~98.1倍のエネルギーを有しており、これを銀線に接続し、パルス大電流放電によって銀線を2~4μ秒加熱して蒸発させた。発生した蒸気・プラズマは液中での冷却によってシートを生成し、これが液中に分散してコロイドとなった。
【0021】
図1に細線の気化エネルギーの43.6倍で放電して作製したシートの透過型電子顕微鏡写真を示す。作製したシートは一角を約60度とした三角形状を有しており、その一辺の大きさは50~500nmとなっている。この三角形状のシートは互いに接合して一枚の多角形のシートを形成している。図2にこのシートのエネルギー分散型X線分光のスペクトルを示す。このスペクトルからシートは銀であることが確認された。図3はこのシートの制限視野回折像を示す。この回折像はシート表面に対して垂直に電子線を入射した時の面心立方構造の回折パターンを示したものである。このシートはその表面に平行になるように[111]が規則的に整列した結構構造を有している。図4はシートの走査型電子顕微鏡写真を示す。シートの大きさ(最大径)は2μmであり、その厚さは20nmであった。
【0022】
以上から、水中で銀線をパルス通電過熱して発生させた金属蒸気から、[111]に配向した数十ナノメートルの厚さで数十ナノメートルから数ミクロンの大きさのシートを作製できることがわかった。さらに、気化エネルギーの10.9,24.5,98.1倍でも同様なシートが形成されていた。
【0023】
[比較例]
本発明の比較例について図面に基づいて説明する。
【0024】
実施例と同様に、直径0.2mm、長さ22mmの銀線を、150mlのイオン交換水を封入したチャンバーに設置した。この銀線の気化エネルギーは22Jである。2kVで充電した容量30μFのコンデンサーは細線の気化エネルギーに対して2.7倍のエネルギーを有しており、これを銀線に接続しパルス大電流放電によって銀線を2μ秒加熱して蒸発させた。発生した蒸気・プラズマは液中での冷却によってナノスケールの構造物を生成し、これが液中に分散してコロイドとなった。
【0025】
図5にこの透過型電子顕微鏡写真を示す。液中で生成された構造物は球状のナノ粒子であり、ナノシートは得られなかった。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本実施例における生成物の透過型電子顕微鏡写真である。
【図2】本実施例における生成物のエネルギー分散型X線分光のスペクトルである。
【図3】本実施例における生成物の制限視野回折像である。
【図4】本実施例における生成物の走査型電子顕微鏡写真である(写真bは写真aの拡大)。
【図5】比較例における生成物の走査型電子顕微鏡写真である。
図面
【図2】
0
【図1】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4