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明細書 :薄膜太陽電池の評価方法、評価装置および製造方法、並びに透明導電膜電極における直列抵抗の評価方法および評価装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5288557号 (P5288557)
公開番号 特開2011-035272 (P2011-035272A)
登録日 平成25年6月14日(2013.6.14)
発行日 平成25年9月11日(2013.9.11)
公開日 平成23年2月17日(2011.2.17)
発明の名称または考案の名称 薄膜太陽電池の評価方法、評価装置および製造方法、並びに透明導電膜電極における直列抵抗の評価方法および評価装置
国際特許分類 H01L  31/04        (2006.01)
FI H01L 31/04 K
請求項の数または発明の数 13
全頁数 25
出願番号 特願2009-181855 (P2009-181855)
出願日 平成21年8月4日(2009.8.4)
審査請求日 平成24年5月8日(2012.5.8)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504143441
【氏名又は名称】国立大学法人 奈良先端科学技術大学院大学
発明者または考案者 【氏名】冬木 隆
【氏名】谷 あゆみ
個別代理人の代理人 【識別番号】110000338、【氏名又は名称】特許業務法人原謙三国際特許事務所
審査官 【審査官】門 良成
参考文献・文献 特開2007-59907(JP,A)
調査した分野 H01L 31/04
特許請求の範囲 【請求項1】
薄膜太陽電池の性能評価を行う薄膜太陽電池の評価方法であって、
上記薄膜太陽電池を構成する薄膜太陽電池素子に対して、順方向に直流電流を導入する電流導入工程と、
上記電流導入工程によって、上記薄膜太陽電池素子から生じる光の発光強度を測定する発光強度測定工程と、
上記発光強度測定工程によって測定された上記発光強度について、上記薄膜太陽電池素子の横方向の距離に対する変化量を算出する変化量算出工程とを含むことを特徴とする評価方法。
【請求項2】
さらに、上記変化量算出工程において算出した変化量が所定の値より大きい場合には、直列抵抗値が大きいと判定し、所定の値より小さい場合には直列抵抗値が小さいと判定する抵抗値判定工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の評価方法。
【請求項3】
さらに、上記変化量算出工程において算出した変化量に基づいて、上記薄膜太陽電池の直列抵抗値を算出する抵抗値算出工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の評価方法。
【請求項4】
上記電流導入工程において、直流電流の電流値を任意に設定した複数の所定の電流値にて、薄膜太陽電池素子に対して、順方向に直流電流を導入し、
上記発光強度測定工程において、上記複数の所定の電流値に対応する発光強度をそれぞれ測定し、
上記変化量算出工程において、測定された各発光強度について、上記薄膜太陽電池素子の横方向の距離に対する変化量をそれぞれ算出し、
さらに、得られた複数の算出結果について、変化量が実質的にゼロであるかどうかを判断し、実質的にゼロと判断した変化量に対応する電流値を特定する電流値特定工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の評価方法。
【請求項5】
さらに、上記電流値特定工程によって、特定された電流値の中から、最も大きい電流値を上記薄膜太陽電池素子の作動電流の電流値として決定する作動電流決定工程を含むことを特徴とする請求項4に記載の評価方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の評価方法を用いて、薄膜太陽電池素子における透明導電膜電極の直列抵抗を評価する透明導電膜電極における直列抵抗の評価方法。
【請求項7】
薄膜太陽電池の性能評価を行う薄膜太陽電池の評価装置であって、
上記薄膜太陽電池を構成する薄膜太陽電池素子に対して、順方向に直流電流を導入する電流導入手段と、
上記電流導入手段が導入した直流電流によって、上記薄膜太陽電池素子から生じる光の発光強度を測定する発光強度測定手段と、
上記発光強度測定手段が測定した上記発光強度について、上記薄膜太陽電池素子の横方向の距離に対する変化量を算出する変化量算出手段とを備えることを特徴とする評価装置。
【請求項8】
さらに、上記変化量算出手段が算出した変化量が所定の値より大きい場合には、直列抵抗値が大きいと判定し、所定の値より小さい場合には直列抵抗値が小さいと判定する抵抗値判定手段を備えることを特徴とする請求項7に記載の評価装置。
【請求項9】
さらに、上記変化量算出手段が算出した変化量に基づいて、上記薄膜太陽電池の直列抵抗値を算出する抵抗値算出手段を備えることを特徴とする請求項7に記載の評価装置。
【請求項10】
上記電流導入手段は、直流電流の電流値を任意に設定した複数の所定の電流値にて、薄膜太陽電池素子に対して、順方向に直流電流を導入するものであり、
上記発光強度測定手段は、上記複数の所定の電流値に対応する発光強度をそれぞれ測定するものであり、
上記変化量算出手段は、上記発光強度測定手段が測定した各発光強度について、上記薄膜太陽電池素子の横方向の距離に対する変化量をそれぞれ算出するものであり、
さらに、得られた複数の算出結果について、変化量が実質的にゼロであるかどうかを判断し、実質的にゼロと判断した変化量に対応する電流値を特定する電流値特定手段を備えることを特徴とする請求項7に記載の評価装置。
【請求項11】
さらに、上記電流値特定手段が特定した電流値の中から、最も大きい電流値を上記薄膜太陽電池素子の作動電流の電流値として決定する作動電流決定手段を備えることを特徴とする請求項10に記載の評価装置。
【請求項12】
請求項7~11のいずれか1項に記載の評価装置を備え、さらに当該評価装置の結果に基づき、透明導電膜電極における直列抵抗を評価する評価手段を備えることを特徴とする透明導電膜電極における直列抵抗の評価装置。
【請求項13】
請求項1~5のいずれか1項に記載の薄膜太陽電池の評価方法を一工程として含むことを特徴とする薄膜太陽電池の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜太陽電池の性能を評価する評価方法および評価装置に関し、特に、薄膜太陽電池の直列抵抗を評価するための評価方法および評価装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、薄膜太陽電池は、大面積・低コストの太陽電池が実現できる次世代素子として期待されており、さらなる普及に向けて、薄膜太陽電池の変換効率を向上させる技術の開発が進められている。
【0003】
一般的に、太陽電池の変換効率を向上させるためには、太陽光を受光し発電する半導体層および半導体層で発生した電流が流れる電極(特に直列抵抗成分)の性能を主に考慮する必要がある。例えば、より多くの太陽光を受光できる半導体層、より効率的に電流を発生させることができる半導体層、エネルギーの損失が少ない(抵抗値が低い)直列抵抗成分を有する電極の素材や形状の設計など観点から開発が進められている。
【0004】
ここで、薄膜太陽電池の基本的な構造について図2(a)を用いて説明する。図2(a)は、スーパーストレイト型の薄膜太陽電池の構造の一例を示す模式図である。図示のように、薄膜太陽電池7では、光電変換層である半導体層33が、ガラス基板31および上部透明導電膜電極32を透過した太陽光36を受光する。半導体層33で発生した電流(図中、白矢印A)は、下部金属電極34および上部透明導電膜電極32を介して取り出される(図中、黒矢印A’)。
【0005】
このように、上部透明導電膜電極32は、半導体層33で発生した電流を流すだけではなく、太陽光を透過するものでなければならい。太陽光を効率的に透過させるためには、上部透明導電膜電極32は、太陽光が透過する透明な素材で構成され、かつ、その形状を可能な限り薄くしなければならない。そのため、上部透明導電膜電極32は、素材や形状の設計の面で制限されることになり、その結果、金属などで構成される下部電極に比べて、抵抗値が大きくなってしまう。
【0006】
つまり、薄膜太陽電池の場合、従来の結晶系の太陽電池に比べて、その構造上の理由により、電極の直列抵抗成分が薄膜太陽電池の発電効率に与える影響が大きくなる。それゆえ、薄膜太陽電池の開発では、透明導電膜電極の直列抵抗成分を正確に把握し評価することが重要になってくる。
【0007】
従来、透明導電膜電極の直列抵抗成分を評価する様々な技術としては、例えば、薄膜太陽電池素子の製造途中において、ガラス基板に透明導電膜電極を堆積した状態で、透明導電膜電極の抵抗を直接測定して評価する手法などがある。
【0008】
また、薄膜太陽電池素子ではなく、結晶系素子の直列抵抗成分の評価技術として、非特許文献1の技術が報告されている。本非特許文献1には、単結晶シリコン素子に電圧を印加し、素子から発光される光の強度と、その強度を電圧に対して微分した値とを解析して、直列抵抗の抵抗値を算出する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【0009】

【非特許文献1】David Hinken, et. al.,“SERIES RESISTANCE IMAGING OF SOLAR CELLS BY VOLTAGE DEPENDENT ELCTROLUMINESCENCE”Technical Digest of the International PVSEC-17,Fukuoka,Japan,5O-M3-04,2007
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
薄膜太陽電池の直列抵抗成分の評価は、製品化された状態で行われることが望ましい。しかしながら、上述のような透明導電膜電極の抵抗を直接測定する技術は、製品化された薄膜太陽電池には適用することは困難である。また、非特許文献1の技術は、結晶系シリコン素子のエミッタ層(n型あるいはp型半導体層)の抵抗成分の評価方法であり、薄膜系素子に適用することができない。そのため、製品化された状態であっても、薄膜太陽電池の透明導電膜電極の抵抗成分を評価できる技術の開発が強く求められていた。
【0011】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、薄膜太陽電池の直列抵抗成分、特に薄膜太陽電池の透明導電膜電極の直列抵抗成分を評価することが可能な評価方法および評価装置を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意研究の結果、薄膜太陽電池素子に対して、電流を順方向に導通させると、薄膜太陽電池素子の発光強度にばらつきがあるのを発見し、その発光強度のばらつきが薄膜太陽電池素子の直列抵抗成分におけるエネルギー損失に起因するものであることを見出した。この知見に基づいて、本発明者らは、薄膜太陽電池素子に電流を導入し発光させ、その発光強度を指標として、当該薄膜太陽電池素子の直列抵抗を簡単に評価することができるという本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明は、産業上有用な方法またはその利用として、以下の発明を包含するものである。
【0013】
本発明に係る評価方法は、上記課題を解決するために、薄膜太陽電池の性能評価を行う薄膜太陽電池の評価方法であって、上記薄膜太陽電池を構成する薄膜太陽電池素子に対して、順方向に直流電流を導入する電流導入工程と、上記電流導入工程によって、上記薄膜太陽電池素子から生じる光の発光強度を測定する発光強度測定工程と、上記発光強度測定工程によって測定された上記発光強度について、上記薄膜太陽電池素子の横方向の距離に対する変化量を算出する変化量算出工程とを含むことを特徴としている。
【0014】
また、本発明に係る評価装置は、上記課題を解決するために、薄膜太陽電池の性能評価を行う薄膜太陽電池の評価装置であって、上記薄膜太陽電池を構成する薄膜太陽電池素子に対して、順方向に直流電流を導入する電流導入手段と、上記電流導入手段が導入した直流電流によって、上記薄膜太陽電池素子から生じる光の発光強度を測定する発光強度測定手段と、上記発光強度測定手段が測定した上記発光強度について、上記薄膜太陽電池素子の横方向の距離に対する変化量を算出する変化量算出手段とを備えることを特徴としている。
【0015】
また、本発明に係る評価方法は、さらに、上記変化量算出工程において算出した変化量が所定の値より大きい場合には、直列抵抗値が大きいと判定し、所定の値より小さい場合には直列抵抗値が小さいと判定する抵抗値判定工程を含むことが好ましい。
【0016】
また、本発明に係る評価装置は、さらに、上記変化量算出手段が算出した変化量が所定の値より大きい場合には、直列抵抗値が大きいと判定し、所定の値より小さい場合には直列抵抗値が小さいと判定する抵抗値判定手段を備えることが好ましい。
【0017】
また、本発明に係る評価方法は、さらに、上記変化量算出工程において算出した変化量に基づいて、上記薄膜太陽電池の直列抵抗値を算出する抵抗値算出工程を含むことが好ましい。
【0018】
また、本発明に係る評価装置は、さらに、上記変化量算出手段が算出した変化量に基づいて、上記薄膜太陽電池の直列抵抗値を算出する抵抗値算出手段を備えることが好ましい。
【0019】
また、本発明に係る評価方法は、上記電流導入工程において、直流電流の電流値を任意に設定した複数の所定の電流値にて、薄膜太陽電池素子に対して、順方向に直流電流を導入し、上記発光強度測定工程において、上記複数の所定の電流値に対応する発光強度をそれぞれ測定し、上記変化量算出工程において、測定された各発光強度について、上記薄膜太陽電池素子の横方向の距離に対する変化量をそれぞれ算出し、さらに、得られた複数の算出結果について、変化量が実質的にゼロであるかどうかを判断し、実質的にゼロと判断した変化量に対応する電流値を特定する電流値特定工程を含むことが好ましい。
【0020】
また、本発明に係る評価装置は、上記電流導入手段は、直流電流の電流値を任意に設定した複数の所定の電流値にて、薄膜太陽電池素子に対して、順方向に直流電流を導入するものであり、上記発光強度測定手段は、上記複数の所定の電流値に対応する発光強度をそれぞれ測定するものであり、上記変化量算出手段は、上記発光強度測定手段が測定した各発光強度について、上記薄膜太陽電池素子の横方向の距離に対する変化量をそれぞれ算出するものであり、さらに、得られた複数の算出結果について、変化量が実質的にゼロであるかどうかを判断し、実質的にゼロと判断した変化量に対応する電流値を特定する電流値特定手段を備えることが好ましい。
【0021】
また、本発明に係る評価方法は、さらに、上記電流値特定工程によって、特定された電流値の中から、最も大きい電流値を上記薄膜太陽電池素子の作動電流の電流値として決定する作動電流決定工程を含むことが好ましい。
【0022】
また、本発明に係る評価装置は、さらに、上記電流値特定手段が特定した電流値の中から、最も大きい電流値を上記薄膜太陽電池素子の作動電流の電流値として決定する作動電流決定手段を備えることが好ましい。
【0023】
また、本発明に係る透明導電膜電極における直列抵抗の評価方法は、上記薄膜太陽電池素子の評価方法を用いて、薄膜太陽電池素子における透明導電膜電極の直列抵抗を評価することが好ましい。
【0024】
また、本発明に係る透明導電膜電極における直列抵抗の評価装置は、上記薄膜太陽電池素子の評価装置を備え、さらに当該評価装置の結果に基づき、透明導電膜電極における直列抵抗を評価する評価手段を備えることが好ましい。
【0025】
また、本発明に係る製造方法は、上記の薄膜太陽電池の評価方法を一工程として含むことが好ましい。
【0026】
なお、上記評価装置は、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを上記評価装置の各手段として動作させることにより、上記評価装置をコンピュータにて実現させる制御プログラム、及びそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も本発明の範疇に入る。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係る評価方法または評価装置によれば、薄膜太陽電池の直列抵抗成分、特に薄膜太陽電池の透明導電膜電極の直列抵抗成分を評価することができるという効果を奏する。特に、薄膜太陽電池が製品化された状態であっても評価可能である。それゆえ、薄膜太陽電池の開発に有用である。
【0028】
本発明のさらに他の目的、特徴、及び優れた点は、以下に示す記載によって十分わかるであろう。また、本発明の利益は、添付図面を参照した次の説明で明白になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】評価装置の要部構成を示す機能ブロック図である。
【図2】スーパーストレイト型の薄膜太陽電池の構造の一例を示す模式図であって、(a)は、薄膜太陽電池に太陽光を照射した際に発生する電流の向きを示す図であり、(b)は、薄膜太陽電池から光を発光させるために注入した電流の向きを示す図である。
【図3】本発明に係る薄膜太陽電池の評価装置の一実施形態を示す図である。
【図4】変化量の算出および抵抗値の判定/算出に関する評価装置の処理を示すフローチャートである。
【図5】電流値の特定および作動電流の決定に関する評価装置の処理を示すフローチャートである。
【図6】(a)は、薄膜太陽電池に対して、順方向に直流電流200mAが流れるように、電圧8.6Vを印加した場合において、発光している薄膜太陽電池を発光強度測定部12が撮影した画像を示す図である。(b)、(c)は、薄膜太陽電池(試料番号:J24)に対して、それぞれ順方向に直流電流200mA、50mAを導入した場合において、発光強度測定部12が測定した発光強度をグラフで示した図である。
【図7】各電流値における、「Top」および「Bottom」の発光強度を測定した結果を示す図である。
【図8】薄膜太陽電池の発光スペクトルの測定結果を示す図である。
【図9】(a)~(c)は、薄膜太陽電池にそれぞれ20mA、30mA、80mAの電流を導入したときの発光強度測定部が薄膜太陽電池を撮影した画像を示す図である。(d)~(f)は、薄膜太陽電池にそれぞれ20mA、30mA、80mAの電流を導入したときの発光強度測定部が測定した発光強度のグラフを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の一実施形態について図1から図9に基づいて説明する。

【0031】
まず、方法および装置のいずれにも共通する薄膜太陽電池の基本構造について図2を用いて説明する。図2に示す薄膜太陽電池7は、3つの薄膜太陽電池素子7aが連結している例である。図示のように、薄膜太陽電池7は、ガラス基板31、上部透明導電膜電極32、半導体層33および下部金属電極34を備えている。半導体層33は、光電変換層であり、例えば、単結晶シリコン、アモルファスシリコン、多結晶シリコンなどで形成される。下部金属電極34は、半導体層33で発生した電流を外部に供給するための電極であり、例えば、アルミニウム、銀などの金属で形成される。上部透明導電膜電極32は、半導体層33で発生した電流を外部に供給するための電極であり、例えば、ITO(酸化インジウムスズ)膜などで形成される。また、上部透明導電膜電極32は、不図示の外部供給端子に接続している。

【0032】
図2(a)は、薄膜太陽電池7に太陽光36を照射した際に発生する電流の向きを示す図である。図2(a)に示す薄膜太陽電池7では、ガラス基板31側から太陽光36が照射される。太陽光36が薄膜太陽電池7に照射されると、半導体層33は、ガラス基板31および上部透明導電膜電極32を透過した太陽光36を受光する。そして、半導体層33において、受光した太陽光36に応じて電流(図中、白矢印A)が発生し、半導体層33で発生した電流は、下部金属電極34および上部透明導電膜電極32を介して外部に供給される(図中、黒矢印A’)。

【0033】
次に、図2(b)を用いて、薄膜太陽電池7の性能等を評価する際に、薄膜太陽電池7に電流を注入したときの状態を説明する。図2(b)は、薄膜太陽電池7から光35を発光させるために注入した電流の向きを示す図である。注入する電流の向きは、薄膜太陽電池7に太陽光を照射した際に発生する電流と逆の方向である。図2(b)に示す例では、電流は、薄膜太陽電池7の右側から注入する。図示のように、注入した電流は、下部金属電極34から上部透明導電膜電極32を流れ(図中、黒矢印I’)、半導体層33を流れ(図中、白矢印I)、また下部金属電極34から上部透明導電膜電極32へと流れる。

【0034】
このように、半導体層33に電流が流れることによって、半導体層33が発光し、薄膜太陽電池7から光35が照射される。薄膜太陽電池7に電流を注入した際に、薄膜太陽電池7から照射される光35をカメラ等で測定することによって、薄膜太陽電池7の性能等を評価する。

【0035】
なお、薄膜太陽電池素子に太陽光を照射した際に、実際に光電変換により発生する電流を作動電流と称する。この作動電流の値は、薄膜太陽電池素子の材料・組成に応じて、適宜変更可能である。作動電流が薄膜太陽電池7を流れる逆方向を順方向と称する。いわゆる薄膜太陽電池7に対して順方向に直流電流を注入するためにバイアスをかけることである。薄膜太陽電池7を構成する薄膜太陽電池素子7aにおける半導体層33のpn接合のp型領域側に正(+)、n型領域側に負(-)の極性の外部電圧を印加することによって、順方向に直流電流を導入させることになる。例えば、図2(b)に示す例では、黒矢印I’および白矢印Iの方向を順方向とする。また、図2(b)の黒矢印I’が示すように、上部透明導電膜電極32の端部32aから端部32bへ電流が流れる方向を横方向とする。すなわち、「薄膜太陽電池素子の横方向」とは、薄膜太陽電池素子7に光が照射された際に発生する電流が上部透明導電膜電極32を流れる方向(作動電流が上部透明導電膜電極32を流れる方向)と逆方向である。

【0036】
以下、上述した薄膜太陽電池について性能、特に直列抵抗成分の評価方法および評価装置について、順に詳説する。

【0037】
<1.薄膜太陽電池の評価方法>
本発明に係る薄膜太陽電池の評価方法は、薄膜太陽電池の性能評価を行う太陽電池の評価方法であって、少なくとも、上記薄膜太陽電池を構成する薄膜太陽電池素子に対して、順方向に直流電流を導入する電流導入工程と、上記電流導入工程によって、上記薄膜太陽電池素子から生じる光の発光強度を測定する発光強度測定工程と、上記発光強度測定工程によって測定された上記発光強度について、上記薄膜太陽電池素子の横方向の距離に対する変化量を算出する変化量算出工程とを含む方法であればよい。なお、上記工程以外の具体的な工程、材料、条件、使用する機器・装置等は特に限定されるものではなく、従来公知の方法等を好適に利用可能である。

【0038】
ここで、本明細書中、文言「性能評価」とは、薄膜太陽電池モジュールやその構成部材である薄膜太陽電池素子における光導電効果及び/又は光起電力効果についての性能評価の意である。

【0039】
また、本明細書において、文言「薄膜太陽電池」とは、上述したスーパーストレイト型の薄膜太陽電池だけでなく、本発明の作用効果を奏することができる合理的な範囲の従来公知の他の成分・材料・構造の薄膜太陽電池を含む。「薄膜太陽電池素子」とは、光導電効果及び/又は光起電力効果によって光を受けて電流を発生させる最小構成単位の意であり、例えば、5mm×10cmの短冊状のものが挙げられる。薄膜太陽電池素子の集積型として、20枚の薄膜太陽電池素子からなる10cm×10cmの大きさのものがある。また、「薄膜太陽電池モジュール」とは、この薄膜太陽電池素子が複数連結されて構成されているものをいい、例えば、上記薄膜太陽電池素子を180枚連結した、30cm×30cm角のものを挙げることができる。なお、本明細書では「薄膜太陽電池モジュール」の中には、モジュールの集合体である「薄膜太陽電池パネル」を含む。また、単に「薄膜太陽電池」と称した場合は、薄膜太陽電池素子,薄膜太陽電池モジュール,または薄膜太陽電池パネルのいずれか、あるいはその全てを表すものとする。

【0040】
以下、本発明に係る方法の各工程について詳細に説明する。

【0041】
<1-1.電流導入工程>
電流導入工程は、薄膜太陽電池を構成する薄膜太陽電池素子に対して、順方向に直流電流を導入する工程であればよく、その他の具体的な方法、機器、条件等は特に限定されない。

【0042】
電流導入工程において、「順方向に直流電流を導入」とは、いわゆる薄膜太陽電池7に対して順方向に直流電流を注入するためにバイアスをかけることである。電流の注入方法として、例えば、後述の図2に示すように、薄膜太陽電池7の両端に電極をそれぞれ接続し、両電極間にバイアスをかけて薄膜太陽電池7に電流を注入する方法が挙げられる。その他に、半導体層33のp型領域側に正(+)、半導体層33のn型領域側に負(-)の極性の外部電圧を印加するように、下部金属電極34および上部透明導電膜電極32にバイアスをかけて、直流電流を導入する方法であってもよい。

【0043】
本工程において、薄膜太陽電池素子に対して電流を導通させるための装置としては、従来公知の電源等を好適に利用することができ、特に限定されるものではないが、例えば、一般的な定電流源を用いることができる。

【0044】
<1-2.発光強度測定工程>
発光強度測定工程は、上記電流導入工程によって、上記薄膜太陽電池素子から生じる光の発光強度を測定する工程であればよく、その他の具体的な方法、機器、条件等は特に限定されない。

【0045】
発光強度測定工程では、薄膜太陽電池素子からの光の発光強度を測定可能な従来公知の光検出手段を用いることができ、その具体的な構成等は特に限定されるものではない。例えば、CCDカメラ等の従来公知の光検出器を用いることができる。CCDカメラとしては、例えばInGaAs CCDカメラ(Xenics社製、品番XEVA-1.7シリーズ)およびSi CCDカメラ(浜松ホトニクス株式会社製、品番C9299-02)等が挙げられる。

【0046】
また、発光強度測定工程では、波長が約800nm~1600nmの光を測定することが好ましく、波長が約1000nm~1400nmの光を測定することがより好ましい。かかる波長領域の光を測定することにより、直列抵抗成分と関連する発光強度を正確に測定することができる。

【0047】
このようなCCDカメラ等の光検出器を用いて光を検出した場合、太陽電池における発光の様子を画像として観察することができる。つまり、薄膜太陽電池における発光の面内分布を二次元的に一括測定でき、薄膜太陽電池モジュール全面に渡って簡便かつ迅速に評価することができる。

【0048】
すなわち、発光強度測定工程については、その具体的な方法等は特に限定されるものではなく、従来公知の技術を好適に用いることができる。

【0049】
<1-3.変化量算出工程>
変化量算出工程は、上記発光強度測定工程において測定した発光強度について、薄膜太陽電池素子の横方向の距離に対する変化量を算出する工程であればよく、その具体的な方法としては従来公知の技術を好適に用いることができる。例えば、変化量算出工程における具体的な演算として、発光強度の横方向距離に対する発光強度の微分値を算出してもよい。また、発光強度を縦軸とし太陽電池素子の横方向距離を横軸としたグラフを作成し、傾きそのものを変化量としてもよいし、傾きから変化量を算出してもよい。

【0050】
「薄膜太陽電池素子の横方向の距離(横方向距離)」とは、横方向の軸を正とした、薄膜太陽電池素子における距離である。換言すると、薄膜太陽電池素子内における横方向軸上の任意の2点間の距離を意味する。例えば、図2に示す上部透明導電膜電極32の端部32aから端部32bまでの距離である。

【0051】
上述のように、本発明者らは、薄膜太陽電池素子に対して、電流を導通させると、薄膜太陽電池素子内において発光強度が一様ではなく、電流の注入点の発光強度が最も大きく、注入点から横方向の距離に従って発光強度が減衰していることを発見した。このことから、薄膜太陽電池素子に導入した電流が、横方向の距離に従って減少していると考え、その原因が薄膜太陽電池の直列抵抗成分、特に薄膜太陽電池の透明導電膜電極の直列抵抗成分におけるエネルギー損失によるものだと推論した。すなわち、薄膜太陽電池内において、注入点から横方向の距離に従って透明導電膜電極の直列抵抗成分の抵抗値が大きくなり、横方向の距離が進むにつれてその抵抗によるエネルギー損失も大きくなるため、横方向の距離に従って電圧および電流が減少していると考えた。

【0052】
従って、本発明者らは、薄膜太陽電池素子における発光強度の減衰の程度、つまり、電流の注入点から他端までの発光強度の変化量と、薄膜太陽電池の直列抵抗成分、特に薄膜太陽電池の透明導電膜電極の直列抵抗成分の抵抗値とが密接に関係していると考え、発光強度の変化量を算出することによって、薄膜太陽電池の直列抵抗成分、特に薄膜太陽電池の透明導電膜電極の直列抵抗成分の抵抗値(直列抵抗値)を判定および/または算出するという本発明を完成させた。

【0053】
つまり、本発明に係る薄膜太陽電池の評価方法によれば、電流導入工程では、薄膜太陽電池を構成する薄膜太陽電池素子に対して、直流電流を導入する。発光強度測定工程では、電流導入工程において導入した直流電流によって、薄膜太陽電池素子から生じる光の発光強度を測定する。変化量算出工程では、発光強度測定工程において測定した上記発光強度について、薄膜太陽電池素子の横方向の距離に対する変化量を算出する。そのため、算出された変化量に基づいて、薄膜太陽電池の直列抵抗成分を評価することができる。

【0054】
また、本発明に係る薄膜太陽電池の評価方法によれば、薄膜太陽電池素子が直列に複数連結して構成されている薄膜太陽電池モジュールの場合、1度の電流導入にて薄膜太陽電池モジュール全体の性能評価を行うことができる。すなわち、1度の電流導入を実行すれば、薄膜太陽電池モジュールを構成する全薄膜太陽電池素子に電流が流通することになるため、全薄膜太陽電池素子が発光する。この場合、本発明において、ルミネセンス面内分布の瞬時一括測定を行うことも可能である。具体的には、例えば、CCDなどによる二次元一括ならびに一次元ラインスキャナによる大面積対応を挙げることができるが、これに限定されるものではない。すなわち、薄膜太陽電池モジュール全体の発光強度を大型の発光強度測定手段や一次元走査のラインスキャナにて1度に検出すれば、薄膜太陽電池モジュールを構成する全薄膜太陽電池素子の発光強度を瞬時に測定することができ、極めて簡便に評価できる。勿論、小型の発光強度測定手段を用いて、薄膜太陽電池素子1つのみ、若しくは、薄膜太陽電池モジュールの特定の位置の発光強度を測定することも可能である。

【0055】
また、本発明に係る透明導電膜電極の直列抵抗の評価方法によれば、上記薄膜太陽電池素子の評価方法を用いて、薄膜太陽電池素子における透明導電膜電極の直列抵抗を評価する。そのため、評価された薄膜太陽電池の直列抵抗成分に基づいて、薄膜太陽電池素子における透明導電膜電極の直列抵抗を評価することができる。

【0056】
<1-4.抵抗値判定工程>
さらに、本発明に係る薄膜太陽電池の評価方法では、上記変化量算出工程において算出した変化量が所定の値より大きい場合には、直列抵抗値が大きいと判定し、所定の値より小さい場合には直列抵抗値が小さいと判定する抵抗値判定工程を含むことが好ましい。抵抗値判定工程の具体的な方法としては、従来公知の技術を好適に用いることができる。

【0057】
ここで、「所定の値」とは、例えば、本発明に係る評価方法にて予め(または事後的に)算出した標準サンプルの薄膜太陽電池における変化量を挙げることができる。なお、どのような薄膜太陽電池を「標準サンプル」とするかは任意に設定でき、特に限定されるものではない。

【0058】
本発明に係る薄膜太陽電池の評価方法において、抵抗値判定工程を行うことにより、評価対象の薄膜太陽電池の直列抵抗成分の抵抗値が、比較対象の薄膜太陽電池のそれと比べて、大きいか小さいかを判断することができる。それゆえ、判断結果を薄膜太陽電池素子の作製プロセスにフィードバックすることによって、比較対象の薄膜太陽電池と同程度か若しくはそれ以上の素子性能を有する薄膜太陽電池素子を安定的に作製することができる。

【0059】
また、本発明に係る透明導電膜電極の直列抵抗の評価方法において、上記薄膜太陽電池の評価方法を用いることにより、評価対象の薄膜太陽電池における透明導電膜電極の直列抵抗成分の抵抗値が、比較対象の薄膜太陽電池における透明導電膜電極のそれと比べて、大きいか小さいかを判断することができる。

【0060】
<1-5.抵抗値算出工程>
さらに、本発明に係る薄膜太陽電池の評価方法では、上記変化量算出工程において算出した変化量に基づいて、上記薄膜太陽電池の直列抵抗値を算出する抵抗値算出工程を含んでいてもよい。抵抗値算出工程の具体的な方法としては、従来公知の技術を好適に用いることができる。

【0061】
ここで、「所定の値」とは、例えば、本発明に係る評価方法にて予め(または事後的に)算出した複数の標準サンプルの薄膜太陽電池における変化量であり、各変化量は当該標準サンプルの薄膜太陽電池の直列抵抗成分の抵抗値とそれぞれ対応付けられているものを挙げることができる。なお、どのような薄膜太陽電池を「標準サンプル」とするかは任意に設定でき、特に限定されるものではない。

【0062】
抵抗値算出工程における具体的な演算処理については特に限定されないが、例えば、以下の方法が挙げられる。すなわち予め(または事後的に)、複数の所定の標準サンプルの薄膜太陽電池素子についての変化量を算出しておき、さらに当該複数の所定の標準サンプルの薄膜太陽電池素子の直列抵抗値を求めて、上記所定の値を用意しておく。その上で、変化量算出工程において算出した変化量と所定の値とを比較して、変化量と一致する所定の値を特定して、当該特定した所定の値に対応する抵抗値を、薄膜太陽電池の直列抵抗値として算出する方法を挙げることができる。

【0063】
なお、変化量算出工程において実際に算出した変化量と一致する所定の値が存在しない場合、評価対象の薄膜太陽電池における変化量と最も近い所定の値を、「評価対象の薄膜太陽電池における変化量と一致する所定の値」としてもよいし、複数の標準サンプルの薄膜太陽電池における変化量および抵抗値を補間して、評価対象の薄膜太陽電池における変化量と一致する所定の値を算出してもよい。

【0064】
本発明に係る薄膜太陽電池の評価方法において、上記抵抗値算出工程を行うことにより、評価対象の薄膜太陽電池の直列抵抗成分の抵抗値を求めることができる。それゆえ、求めた抵抗値の結果を薄膜太陽電池素子の作製プロセスにフィードバックすることによって、薄膜太陽電池の素子性能の高効率化や高信頼性化を図ることができる。

【0065】
また、本発明に係る透明導電膜電極の直列抵抗の評価方法において、上記薄膜太陽電池の評価方法を用いることにより、評価対象の薄膜太陽電池における透明導電膜電極の直列抵抗成分の抵抗値を求めることができる。

【0066】
<1-6.電流値特定工程>
本発明に係る薄膜太陽電池の評価方法では、上記電流導入工程において、直流電流の電流値を任意に設定した複数の所定の電流値にて、薄膜太陽電池素子に対して、順方向に直流電流を導入し、上記発光強度測定工程において、上記複数の所定の電流値に対応する発光強度をそれぞれ測定し、上記変化量算出工程において、測定された各発光強度について、上記薄膜太陽電池素子の横方向の距離に対する変化量をそれぞれ算出し、さらに、得られた複数の算出結果について、変化量が実質的にゼロであるかどうかを判断し、実質的にゼロと判断した変化量に対応する電流値を特定する電流値特定工程を含むことが好ましい。電流値特定工程は、その具体的な方法としては従来公知の技術を好適に用いることができる。

【0067】
本発明者らは、上述の推論より、変化量が実質的にゼロである場合(電流の注入点と他端との発光強度の差がない場合)、つまり、発光強度が薄膜太陽電池素子内において一様である場合、導入した直流電流が減衰せずに薄膜太陽電池素子を流れていると考えた。すなわち、変化量が実質的にゼロである場合、導入した直流電流が薄膜太陽電池素子の直列抵抗成分の影響を受けない、換言すると、薄膜太陽電池素子の透明導電膜電極の直列抵抗成分においてエネルギーの損失が発生していないことを示すと考えた。

【0068】
従って、本発明者らは、薄膜太陽電池素子における発光強度の変化量と、薄膜太陽電池素子の直列抵抗成分におけるエネルギーの損失とが密接に関係しているとの考えをさらに一歩進めて、発光強度の変化量が実質的にゼロであるかどうかを判断することによって、薄膜太陽電池の直列抵抗成分、特に薄膜太陽電池の透明導電膜電極の直列抵抗成分においてエネルギーの損失が発生しない作動電流を求めるという技術も完成させた。

【0069】
つまり、本発明に係る薄膜太陽電池の評価方法において、上記電流導入工程、上記発光強度測定工程、変化量算出工程および電流値特定工程を行い、特定した電流値が作動電流となるように薄膜太陽電池の構造を設計することによって、発電時に、直列抵抗成分においてエネルギー損失が発生しない薄膜太陽電池を製造することができる。

【0070】
また、本発明に係る透明導電膜電極の直列抵抗の評価方法において、上記薄膜太陽電池の評価方法を用いることにより、特定した電流値が作動電流となるように薄膜太陽電池の構造を設計することによって、発電時に、薄膜太陽電池の透明導電膜電極の直列抵抗成分においてエネルギー損失が発生しない薄膜太陽電池を製造することができる。

【0071】
<1-7.作動電流決定工程>
さらに、本発明に係る薄膜太陽電池の評価方法では、上記電流値特定工程によって、特定された電流値の中から、最も大きい電流値を上記薄膜太陽電池素子の作動電流の電流値として決定する作動電流決定工程を含むこと作動電流決定工程を含むことが好ましい。作動電流決定工程は、その具体的な方法としては従来公知の技術を好適に用いることができる。

【0072】
上記の本発明に係る薄膜太陽電池の評価方法によれば、作動電流決定工程を含むことにより、薄膜太陽電池素子の直列抵抗成分において最もエネルギー損失がなく、かつ発電効率の高い最適な電流値を作動電流とする薄膜太陽電池を設計することができる。そのため、発電時に、直列抵抗成分においてエネルギー損失が発生しない、変換効率の高い薄膜太陽電池を製造することができる。

【0073】
また、本発明に係る透明導電膜電極の直列抵抗の評価方法によれば、上記薄膜太陽電池の評価方法を用いることにより、薄膜太陽電池素子の透明導電膜電極の直列抵抗成分において最もエネルギー損失がなく、かつ発電効率の高い最適な電流値を作動電流とする薄膜太陽電池を設計することができる。そのため、発電時に、透明導電膜電極の直列抵抗成分においてエネルギー損失が発生しない、変換効率の高い薄膜太陽電池を製造することができる。

【0074】
<2.薄膜太陽電池の評価装置>
本発明に係る薄膜太陽電池の評価装置は、薄膜太陽電池の性能評価を行う薄膜太陽電池の評価装置であって、上記薄膜太陽電池を構成する薄膜太陽電池素子に対して、順方向に直流電流を導入する電流導入部(電流導入手段)と、上記電流導入部が導入した直流電流によって、上記薄膜太陽電池素子から生じる光の発光強度を測定する発光強度測定部(発光強度測定手段)と、上記発光強度測定部が測定した上記発光強度について、上記薄膜太陽電池素子の横方向の距離に対する変化量を算出する変化量算出部(変化量算出手段)とを備えるものであればよく、その他の具体的な構成、大きさ、形状等の条件は特に限定されるものではない。

【0075】
以下、上記各部材(各手段)について詳細に説明する。なお、本発明の太陽電池の評価装置は、本発明の太陽電池の評価方法を実行するものであるため、各部材の説明については、上記評価方法における各工程の説明を援用することとし、重複する部分は省略する。

【0076】
<2-1.電流導入部>
電流導入部は、太陽電池素子に対して順方向に直流電流を注入するための、いわゆる直流バイアスを印加することができるものであればよく、その具体的な構成等は特に限定されるものではない。すなわち、本電流導入部は、上記<1-1>および<1-6>欄にて説明した「電流導入工程」を実行するものであればよい。例えば、従来公知の定電流源や定電圧源等を用いることができる。

【0077】
<2-2.発光強度測定部>
発光強度測定部は、順方向バイアスされることによって太陽電池素子が発光した際に、その発光強度を測定することができるものであればよく、その具体的な構成等は特に限定されるものではない。すなわち、本発光強度測定部は、上記<1-2>および<1-6>欄にて説明した「発光強度測定工程」を実行するものであればよい。例えば、CCDカメラやイメージインテンシファイアー等の従来公知の光検出器を好適に用いることができる。

【0078】
<2-3.変化量算出部>
変化量算出部は、発光強度測定部が測定した発光強度について、薄膜太陽電池素子の横方向の距離に対する変化量を算出することができるものであればよく、その具体的な構成等は特に限定されるものではない。すなわち、変化量算出部は、上記<1-3>および<1-6>欄にて説明した「変化量算出工程」を実行するものであればよい。例えば、PCなどの従来公知の演算装置などを好適に用いることができる。

【0079】
したがって、本発明に係る薄膜太陽電池の評価装置は、上記<1>欄で説明した「薄膜太陽電池の評価方法」を実行するためのものと換言できる。

【0080】
また、本発明に係る薄膜太陽電池の評価装置は、ラインスキャナ等の1次元走査機構のほか、2次元走査が可能な機構の走査部(走査手段)を備えていてもよい。かかる走査部を備えることにより、多数の薄膜太陽電池素子を備えた大型の薄膜太陽電池もモジュール全体をスキャニングしながら評価することができる。なお、走査部は、評価装置に設けていてもよいし、また逆に、評価対象の薄膜太陽電池素子に設けてもよい。なお、走査部によるスキャニングを行うことなく、薄膜太陽電池素子の上方から薄膜太陽電池モジュール全体を一度に評価することもできるし、薄膜太陽電池モジュールの一部分のみを評価することも可能である。

【0081】
<2-4.抵抗値判定部>
また、本発明に係る薄膜太陽電池の評価装置では、さらに、上記変化量算出部が算出した変化量が所定の値より大きい場合には、直列抵抗値が大きいと判定し、所定の値より小さい場合には直列抵抗値が小さいと判定する抵抗値判定部(抵抗値判定手段)を備えることが好ましい。

【0082】
上記抵抗値判定部は、その具体的な構成等は特に限定されるものではない。すなわち、抵抗値判定部は、上記<1-4>欄にて説明した「抵抗値判定工程」を実行するものであればよい。例えば、PCなどの従来公知の演算装置などを好適に用いることができる。それゆえ、本抵抗値判定部が行う具体的な内容については上記<1-4>欄を参酌できる。

【0083】
<2-5.抵抗値算出部>
また、本発明に係る薄膜太陽電池の評価装置では、さらに、上記変化量算出部が算出した変化量に基づいて、上記薄膜太陽電池の直列抵抗値を算出する抵抗値算出部(抵抗値算出手段)を備えていてもよい。

【0084】
上記抵抗値算出部は、その具体的な構成等は特に限定されるものではない。すなわち、抵抗値算出部は、上記<1-5>欄にて説明した「抵抗値算出工程」を実行するものであればよい。例えば、PCなどの従来公知の演算装置などを好適に用いることができる。それゆえ、本抵抗値算出部が行う具体的な内容については上記<1-5>欄を参酌できる。

【0085】
<2-6.電流値特定部>
また、本発明に係る薄膜太陽電池の評価装置では、上記電流導入部は、直流電流の電流値を任意に設定した複数の所定の電流値にて、薄膜太陽電池素子に対して、順方向に直流電流を導入するものであり、上記発光強度測定部は、上記複数の所定の電流値に対応する発光強度をそれぞれ測定するものであり、上記変化量算出部は、上記発光強度測定部が測定した各発光強度について、上記薄膜太陽電池素子の横方向の距離に対する変化量をそれぞれ算出するものであり、さらに、得られた複数の算出結果について、変化量が実質的にゼロであるかどうかを判断し、実質的にゼロと判断した変化量に対応する電流値を特定する電流値特定部(電流値特定手段)を備えることが好ましい。

【0086】
上記電流値特定部は、その具体的な構成等は特に限定されるものではない。すなわち、電流値特定部は、上記<1-6>欄にて説明した「電流値特定工程」を実行するものであればよい。例えば、PCなどの従来公知の演算装置などを好適に用いることができる。それゆえ、本電流値特定部が行う具体的な内容については上記<1-6>欄を参酌できる。

【0087】
<2-7.作動電流決定部>
また、本発明に係る薄膜太陽電池の評価装置では、さらに、上記電流値特定部が特定した電流値の中から、最も大きい電流値を上記薄膜太陽電池素子の作動電流の電流値として決定する作動電流決定部(作動電流決定手段)を備えることが好ましい。

【0088】
上記作動電流決定部は、その具体的な構成等は特に限定されるものではない。すなわち、作動電流決定部は、上記<1-7>欄にて説明した「作動電流決定工程」を実行するものであればよい。例えば、PCなどの従来公知の演算装置などを好適に用いることができる。それゆえ、本作動電流決定部が行う具体的な内容については上記<1-7>欄を参酌できる。

【0089】
また、本薄膜太陽電池の評価装置に関しては、上述した以外の事項についても、上記<1>欄で述べた薄膜太陽電池の評価方法に関する記載を適宜参酌・利用することができることはいうまでもない。

【0090】
<2-7.評価装置の概要>
次に、薄膜太陽電池7の直列抵抗を評価する評価装置10の概要について、図3を用いて説明する。図3は、本発明に係る薄膜太陽電池の評価装置10の一実施形態を示す図である。同図に示すように、本実施形態に係る薄膜太陽電池7の評価装置10は、暗箱1、発光強度測定部12、くし型プローブ4、5、直流電源6、電極8、9および演算部20を備えている。また、薄膜太陽電池7を評価対象としている。薄膜太陽電池7は、薄膜太陽電池素子が複数個連結した構成である。なお、薄膜太陽電池7は、薄膜太陽電池素子が複数個連結したモジュールであってもよい。

【0091】
暗箱1は、薄膜太陽電池7の発光強度を測定しやすくするための暗状態を形成するためのものである。なお、暗箱1には、窓穴が形成されている。この窓穴は、鉛直方向に設けられた薄膜太陽電池モジュールあるいはパネルを評価する際に用いられるものである。

【0092】
発光強度測定部12は、CCDカメラからなる発光強度測定手段として機能するものであり、冷却型CCD(-50℃)2と、レンズ3とを備えている。発光強度測定部12は、90°回転可能に形成されている。これにより、鉛直方向に設けられた太陽電池モジュールを評価することができる。なお、上記レンズとしては通常のレンズやズームレンズ(Zoom Lens)を用いることができる。

【0093】
また、発光強度測定部12としてCCDカメラを用いて、サイズの違う薄膜太陽電池7を構成するセル(薄膜太陽電池素子)を評価する場合、下記表1(浜松ホトニクス社製C9299-02)に記載したような性能のCCDカメラを用いることができる。

【0094】
【表1】
JP0005288557B2_000002t.gif

【0095】
具体的には、通常撮影モードでは、図3に示すようにCCDカメラを薄膜太陽電池7の上部に設置して撮影を行うが、モジュール撮影モードの場合は、太陽電池モジュールを暗箱1の外に設置し、CCDカメラを90°回転させて撮影・測定する。

【0096】
なお、通常撮影モードの場合の評価対象となる薄膜太陽電池7のサイズ(セルサイズ)は、例えば、大きさ:約10mm×10mm,20mm×20mm,100mm×100mm,150mm×150mm,160mm×160mm,200mm×200mm、厚さ:0.3mm以下のものを用いることができる。

【0097】
また、本実施の形態では、発光強度測定部12のレンズ3と薄膜太陽電池7との間の距離は、150mm以上400mm以内に設定され、発光強度測定部12は薄膜太陽電池7との間を上下移動可能に設置されることが好ましい。

【0098】
くし型プローブ4および5は、薄膜太陽電池7に電流を印加するための表面コンタクトである。くし型プローブ4および5は、図示するように、くし型形状のプローブであり、薄膜太陽電池7の両端に接続された電極8、9にそれぞれ接続される。くし型プローブ4が電極8に接続され、くし型プローブ5が電極9に接続される。プローブの形状がくし型構造である場合、薄膜太陽電池7に均一に電流を印加することができるため、好ましい。なお、くし状プローブにおける“くし”同士の間隔は、特に限定されないが、例えば、9mmであればよい。また、プローブのくし1本の太さは1mmのものを使用できる。

【0099】
直流電源6としては、通常のDC power supply(薄膜太陽電池素子に対して薄膜太陽電池素子1個当たり電流密度1~50mA/cmで注入が可能なもの)のものを用いることができる。なお、電圧は、薄膜太陽電池素子を評価する場合、薄膜太陽電池1個当たり1~2V程度が好ましい。例えば、薄膜太陽電池素子を180枚連結した薄膜太陽電池モジュールを評価する場合は、180~360V程度であることが好ましい。

【0100】
電極8および9は、薄膜太陽電池7に電流を印加するための電極であり、アルミニウムや銀などの金属で形成される。

【0101】
また、上記くし型プローブ4、5、直流電源6および電極8、9は、電流導入部11として機能する。なお、電極8が、直流電源6のマイナス側のくし型プローブ4と固定接続されており、電極9が、直流電源6のプラス側のくし型プローブ5と固定接続されている。なお、本実施形態では、電流導入部11として、くし型プローブ4、5、直流電源6および電極8、9を用いているが、これに限るものではない。

【0102】
演算部20は、薄膜太陽電池7の性能を評価する演算手段として機能するものである。本実施の形態では、イメージプロセッサー(Image Processor)を用いている。用いるソフトウェアは、本発明の目的を達せられるものであれば、特に限定されるものではないが、例えば、以下のような構成のソフトウェアを用いることが好ましい。
・画像の8bit(2=256階調)または16bit(216=65536階調)保存可能なもの。
・薄膜太陽電子素子の発光特性を検出(撮影)後、画面上で範囲選択して、輝度プロファイルデータを取得・保存できるもの。
・分光可能なもの。
・高感度画像を取得できるもの(image intensifierカメラ)、例えば、逆方向電流印加時のエミッション測定ができるもの。

【0103】
また、以下の構成があれば、より好ましい。
・データを表計算ソフトで読み込み、画像とすると、撮影像の90度回転した状態になっている点を改善したもの。
・ビニングモードの簡易な切り替えが可能なもの。
・発光強度のヒストグラムの自動作成プログラム。
・発光強度の弱い部分(暗い部分)の長さや幅の自動測定。1センチ以上のものの自動検出。
・選択範囲の発光強度の平均値算出。グリッド部分の値を差し引いた平均値も測定できることが好ましい。

【0104】
暗箱1内には、発光強度測定部12、くし型プローブ4、5、電極8、9および薄膜太陽電池7が設置されている。発光強度測定部12は、薄膜太陽電池7の発光特性を検出できる位置に設置されている。本実施の形態の場合、発光強度測定部12は、薄膜太陽電池7の上部に設けられている。

【0105】
<2-8.評価装置の機能>
次に、図1に基づいて、評価装置10の機能について説明する。図1は、評価装置10の要部構成を示す機能ブロック図である。図1に示すとおり、評価装置10は、電流導入部11、発光強度測定部12、演算部20を備える構成となっている。

【0106】
演算部20は、薄膜太陽電池7の性能を評価するために、発光強度測定部12が測定した発光強度を演算するものであり、変化量算出部21、抵抗値判定部22、抵抗値算出部23、電流値特定部24および作動電流決定部25を含む。演算部20は、本実施形態では、イメージプロセッサーを用いているが、これに限るものではなく、従来公知の演算装置等を好適に用いることができる。

【0107】
電流導入部11、発光強度測定部12、変化量算出部21、抵抗値判定部22、抵抗値算出部23、電流値特定部24および作動電流決定部25の具体的な機能は上記<2-1>~<2-7>で説明したとおりであるので、ここでは省略する。

【0108】
なお、評価装置10が記憶部(不図示)を備えていてもよい。記憶部には、上記所定の値に関するデータが記憶されていてもよい。この場合、抵抗値判定部22または抵抗値算出部23は、所定の値を上記記憶部から読み出して、上記抵抗値判定工程または上記抵抗値算出工程の処理を行う。また、これに限らず、所定の値に関するデータを外部記憶装置に記憶しておき、抵抗値判定部22または抵抗値算出部23が上記外部記憶装置から読み出してもよい。

【0109】
<2-9.変化量算出処理および抵抗値判定/算出処理>
次に、評価装置10が行う変化量の算出および抵抗値の判定/算出に関する具体的な処理について図4に基づいて説明する。図4は、変化量の算出および抵抗値の判定/算出に関する評価装置10の処理を示すフローチャートである。

【0110】
まず、電流導入部11が、薄膜太陽電池7に対して順方向に電流を導入する(S1)。導入された電流によって、薄膜太陽電池7が発光し、発光強度測定部12は、薄膜太陽電池7が発光する光を検出し、検出した光の強度(発光強度)を測定する(S2)。

【0111】
次に、変化量算出部21は、発光強度測定部12が測定した発光強度について、横方向の距離に対する変化量を算出する(S3)。そして、抵抗値判定部22は、変化量算出部21の算出した変化量が所定の値より大きい場合には、直列抵抗値が大きいと判定し、所定の値より小さい場合には直列抵抗値が小さいと判定する(S4)。

【0112】
なお、S4において、抵抗値算出部23が、変化量算出部21の算出した変化量に基づいて、薄膜太陽電池の直列抵抗値を算出してもよい。

【0113】
<2-10.電流値特定処理および作動電流決定処理>
次に、評価装置10が行う電流値の特定および作動電流の決定に関する具体的な処理について図5に基づいて説明する。図5は、電流値の特定および作動電流の決定に関する評価装置10の処理を示すフローチャートである。

【0114】
まず、電流導入部11は、任意に設定された複数の所定の電流値の中から、電流値を1つ選択する。電流導入部11は、選択した電流値の電流を、薄膜太陽電池7に対して順方向に導入する(S11)。導入された電流によって、薄膜太陽電池7が発光するため、発光強度測定部12は、薄膜太陽電池7が発光する光を検出し、検出した光の強度(発光強度)を測定する(S12)。

【0115】
次に、変化量算出部21は、発光強度測定部12が測定した発光強度について、横方向の距離に対する変化量を算出する(S13)。

【0116】
そして、変化量算出部21は、任意に設定された複数の所定の電流値全てについて、変化量を算出したかどうかを確認する(S14)。変化量算出部21が任意に設定された複数の所定の電流値全てについて変化量を算出していない場合(S14でNO)、電流導入部11は、任意に設定された複数の所定の電流値の中から、まだ導入していない電流値を1つ選択する(S15)。そして、S11~S13の処理を行う。

【0117】
一方、変化量算出部21が任意に設定された複数の所定の電流値全てについて変化量を算出した場合(S14でYES)、電流値特定部24は、変化量算出部21が算出した変化量が実質的にゼロであるかどうかを判断し、実質的にゼロと判断した変化量に対応する電流値を特定する(S16)。

【0118】
そして、作動電流決定部25は、電流値特定部24が特定した電流値の中から最も大きい値を評価対象の薄膜太陽電池7の作動電流の値として決定する(S17)。

【0119】
以上のように、薄膜太陽電池の評価装置10によれば、薄膜太陽電池の評価方法を簡便かつ確実に実施することができる。この場合、従来の評価装置のように、大型かつ複雑な装置は必要なく、簡便な装備で正確に薄膜太陽電池素子の発光強度を測定して、薄膜太陽電池素子の性能を評価することができる。

【0120】
なお、上述の説明では、主として薄膜太陽電池素子や薄膜太陽電池モジュールの評価装置や評価方法について述べてきたが、本発明はこれに限られるものではなく、薄膜太陽電池モジュールが複数連結された薄膜太陽電池パネルの評価も行うことができる。この場合、必要に応じて、印加する電流の強度や電圧、プローブの形状等を適宜変更できる。例えば、順方向への電流を薄膜太陽電池素子1つあたり、1~80〔mA/cm〕に相当する総電流となるように設定すればよい。また、薄膜太陽電池モジュールの大きさに応じて、暗箱から暗室へ変更してもよい。さらに、上述したように、薄膜太陽電池モジュールを鉛直方向に設置して、図3における発光強度測定部12を90°回転させて撮影に用いてもよい。

【0121】
最後に、上記評価装置10の各ブロックは、ハードウェアロジックによって構成してもよいし、次のようにCPUを用いてソフトウェアによって実現してもよい。

【0122】
すなわち、上記評価装置10は、各機能を実現する制御プログラムの命令を実行するCPU(central processing unit)、上記プログラムを格納したROM(read only memory)、上記プログラムを展開するRAM(random access memory)、上記プログラム及び各種データを格納するメモリ等の記憶装置(記録媒体)などを備えている。そして、本発明の目的は、上述した機能を実現するソフトウェアである評価装置10の制御プログラムのプログラムコード(実行形式プログラム、中間コードプログラム、ソースプログラム)をコンピュータで読み取り可能に記録した記録媒体を、上記評価装置10に供給し、そのコンピュータ(又はCPUやMPU)が記録媒体に記録されているプログラムコードを読み出し実行することによっても、達成可能である。

【0123】
上記記録媒体としては、例えば、磁気テープやカセットテープ等のテープ系、フロッピー(登録商標)ディスク/ハードディスク等の磁気ディスクやCD-ROM/MO/MD/DVD/CD-R等の光ディスクを含むディスク系、ICカード(メモリカードを含む)/光カード等のカード系、あるいはマスクROM/EPROM/EEPROM/フラッシュROM等の半導体メモリ系などを用いることができる。

【0124】
また、評価装置10を通信ネットワークと接続可能に構成し、上記プログラムコードを、通信ネットワークを介して供給してもよい。この通信ネットワークとしては、特に限定されず、例えば、インターネット、イントラネット、エキストラネット、LAN、ISDN、VAN、CATV通信網、仮想専用網(virtual private network)、電話回線網、移動体通信網、衛星通信網等が利用可能である。また、通信ネットワークを構成する伝送媒体としては、特に限定されず、例えば、IEEE1394、USB、電力線搬送、ケーブルTV回線、電話線、ADSL回線等の有線でも、IrDAやリモコンのような赤外線、Bluetooth(登録商標)、802.11無線、HDR、携帯電話網、衛星回線、地上波デジタル網等の無線でも利用可能である。なお、本発明は、上記プログラムコードが電子的な伝送で具現化された、搬送波に埋め込まれたコンピュータデータ信号の形態でも実現され得る。

【0125】
なお、上記薄膜太陽電池の評価装置を備え、さらに当該評価装置の結果に基づき、透明導電膜電極における直列抵抗を評価する評価手段を備える、透明導電膜電極の直列抵抗の評価装置を用いることによって、評価された薄膜太陽電池の直列成分に基づいて、薄膜太陽電池素子における透明導電膜電極の直列抵抗を評価することができる。

【0126】
<3.薄膜太陽電池の製造方法>
上述したように、本発明に係る薄膜太陽電池の評価方法及び評価装置は、従来行うことができなかった、製品レベルでの直列抵抗成分について、簡便かつ正確に評価することができる。

【0127】
さらに、本発明に係る薄膜太陽電池の評価方法又は評価装置は、従来の技術に比べて、例えば、走査プローブ(電子線、レーザ)が不要であり、簡便な測定を行い得る、また大型の設備が不要なため、製品状態(製造工場で完成した状態や設置した状態)で観察・評価を行うことが可能である。

【0128】
また、本発明に係る薄膜太陽電池の評価方法および評価装置を用いることによって、薄膜太陽電池の直列抵抗成分の抵抗値を判定/算出することができ、それに加えて、薄膜太陽電池の直列抵抗成分におけるエネルギーの損失が発生せず、変換効率の高い最適な作動電流を決定することができる。

【0129】
そのため、本発明に係る薄膜太陽電池の評価方法を薄膜太陽電池の製造方法の一工程として組み込むことによって、光の透過率を向上もしくは維持したまま、抵抗値を小さくした直列抵抗成分を有する薄膜太陽電池を製造することができる。それに加えて、発電時に薄膜太陽電池の直列抵抗成分におけるエネルギーの損失が発生せず、変換効率の高い最適な作動電流で動作する薄膜太陽電池を製造することができる。

【0130】
以下実施例を示し、本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。もちろん、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能であることはいうまでもない。さらに、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、それぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例】
【0131】
<実施例1>
まず、薄膜太陽電池に順方向に電流を導入し、発光した薄膜太陽電池モジュールの様子をCCDカメラにより観察した。具体的には、8枚の薄膜太陽電池素子で構成されている薄膜太陽電池モジュール(試料番号:J24)に対して、順方向に直流電流200mAが流れるように、電圧8.6Vを印加し、Si CCDカメラを用いて薄膜太陽電池モジュールの発光の様子を観察した。その結果を図6(a)に示す。電流は、図6(a)に示す各薄膜太陽電池素子の右側から左側に注入した。
【実施例】
【0132】
同図に示すように、各薄膜太陽電池素子の右側(電流を注入した側)が明るくなっており、横方向に進むにつれ発光強度が弱くなっているのがわかる。なお、白っぽく見える部分が強く発光している領域であり、黒く見える部分が発光の弱い領域である。
【実施例】
【0133】
また、このとき、横方向上の薄膜太陽電池モジュールの発光強度を測定した。その結果を図6(b)に示す。図6(b)の横軸は図6(a)の左側から右側への方向(横方向とは逆向き)を正とする距離を示し、縦軸は発光強度を示す。図6(b)を見ると、8個のピークがあることがわかる。発光強度と各薄膜太陽電池素子の位置との関係を考慮すると、その8個のピークは、8枚の各薄膜太陽電池素子に対応している。図6(b)のグラフ内に示した「Top」は、各薄膜太陽電池素子における発光強度の最大値を示し、「Bottom」は、各薄膜太陽電池素子における発光強度の最小値を示す。発光強度の最大値(「Top」)は、図6(a)に示す各薄膜太陽電池素子の右端の発光強度であり、発光強度が最小値(「Bottom」)は、各薄膜太陽電池素子の左端の発光強度となっている。つまり、各薄膜太陽電池素子内において、電流の注入点(右端)が最も発光強度が大きく、注入点から他端(左端)に行くに従って発光強度が減衰している。
【実施例】
【0134】
次に、薄膜太陽電池モジュールに流れる電流が50mAになるように印加する電圧を変更し、先ほどと同様の測定を行った。その結果を図6(c)に示す。図6(c)の横軸は図6(b)と同様に、図6(a)の左側から右側への方向を正とする距離を示し、縦軸は発光強度を示す。図6(c)を見ると、図6(b)と同様に、各薄膜太陽電池素子において、電流を注入した側の発光強度が大きく、横方向の距離に従って発光強度が減衰しているのがわかる。しかしながら、図6(b)と比べて、測定した発光強度が全体的に小さくなっており、ノイズの影響を受けているが横方向に対する変化量は判定可能である。
【実施例】
【0135】
次に、同じ薄膜太陽電池モジュールに様々な電流値の電流を導入し、各電流値における、「Top」および「Bottom」の発光強度を測定した。その結果を図7に示す。図7に示す結果から、Top部は注入電流量に応じて増加するが、Bottom部は直列抵抗の影響を受け、ある電流地異常で飽和してしまう。
【実施例】
【0136】
また、薄膜太陽電池モジュールの発光スペクトルを測定した。その結果を図8に示す。図8の横軸は波長を示し、縦軸は発光強度を示す。図8に示す結果から、薄膜太陽電池モジュールが発光する光は、波長1000nm~1400nm付近にピークを持つことが分かった。
【実施例】
【0137】
<実施例2>
第2の実施例では、波長1000nm~1400nm付近にピークを有する光の検出に有用なInGaAs CCDカメラを用いて、薄膜太陽電池素子の発光強度を測定し、変化量が実質的にゼロとなる電流値を探すことにした。具体的には、薄膜太陽電池モジュール(試料番号:J24)に対して様々な電流値の電流を導入し、InGaAs CCDカメラを用いて、発光した薄膜太陽電池モジュールの様子を上記のCCDカメラにより観察した。まず、薄膜太陽電池モジュールに対して、20mA、30mA、80mAの電流を導入した。その結果を図9(a)~(c)に示す。また、各電流値における、横方向上の薄膜太陽電池モジュールの発光強度を測定した。その結果を図9(d)~(f)に示す。
【実施例】
【0138】
第2の実施例でも、電流の注入は、図9(a)~(c)に示す各薄膜太陽電池素子の右側から左側に対して行った。
【実施例】
【0139】
図9(d)~(f)では、図6(b)および(c)と同様に、横軸は、それぞれ図9(a)~(c)の左側から右側への方向を正とする距離を示し、縦軸は、発光強度を示す。
【実施例】
【0140】
図9(d)~(f)を見ると、導入する電流値が小さいほど、各薄膜太陽電池素子内における、発光強度の横方向距離に対する変化量が小さくなっているのがわかる。発光強度の横方向距離に対する変化量は、「傾き」で表される。図9(d)~(f)に描かれた破線は、その「傾き」を示し、導入する電流値が小さいほど、傾きが緩やかになっているのがわかる。
【実施例】
【0141】
図9(d)を見ると、変化量(傾き)がほぼゼロになっている。このことから、薄膜太陽電池モジュールに20mAの電流を導入した場合、薄膜太陽電池素子の直列抵抗成分におけるエネルギー損失が最も発生していないとわかる。
【産業上の利用可能性】
【0142】
本発明に係る薄膜太陽電池の評価方法等は、薄膜太陽電池モジュールを製造する際に行われる品質検査などに利用することができる。
【符号の説明】
【0143】
7 薄膜太陽電池
7a 薄膜太陽電池素子
10 評価装置
11 電流導入部(電流導入手段)
12 発光強度測定部(発光強度測定手段)
20 演算部
21 変化量算出部(変化量算出手段)
22 抵抗値判定部(抵抗値判定手段)
23 抵抗値算出部(抵抗値算出手段)
24 電流値特定部(電流値特定手段)
25 作動電流決定部(作動電流決定手段)
32 上部透明導電膜電極(透明導電膜電極)
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図7】
5
【図8】
6
【図6】
7
【図9】
8