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明細書 :ロッキングチェア型光蓄電池

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5499323号 (P5499323)
公開番号 特開2011-181385 (P2011-181385A)
登録日 平成26年3月20日(2014.3.20)
発行日 平成26年5月21日(2014.5.21)
公開日 平成23年9月15日(2011.9.15)
発明の名称または考案の名称 ロッキングチェア型光蓄電池
国際特許分類 H01M  14/00        (2006.01)
H01L  31/04        (2014.01)
FI H01M 14/00 P
H01L 31/04 Z
請求項の数または発明の数 7
全頁数 8
出願番号 特願2010-045477 (P2010-045477)
出願日 平成22年3月2日(2010.3.2)
審査請求日 平成24年5月14日(2012.5.14)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504258527
【氏名又は名称】国立大学法人 鹿児島大学
発明者または考案者 【氏名】野見山 輝明
【氏名】堀江 雄二
個別代理人の代理人 【識別番号】100090273、【弁理士】、【氏名又は名称】國分 孝悦
審査官 【審査官】宮澤 尚之
参考文献・文献 特開2008-243573(JP,A)
野見山輝明他,p型とn型の半導体電極の組合せによる光蓄電池,第44回応用物理学関係連合講演会講演予稿集,1997年,第1分冊,第373頁
米村浩一他,液相での酸化チタン/カーボンファイバ電極の作製と光蓄電池への応用,応用物理学会九州支部講演会講演予稿集,1997年,Vol.23,第163頁
吉見公志他,カーボンファイバー上に電着したポリチオフェンによる光蓄電池電極,応用物理学会九州支部講演会講演予稿集,1996年,Vol.22,第115頁
調査した分野 H01M 14/00
H01L 31/04
特許請求の範囲 【請求項1】
ポリアニリンを含むn型光蓄電極と、
p型光蓄電極と、
前記n型光蓄電極及び前記p型光蓄電極に接し、光が照射されると前記n型光蓄電極から離脱し前記p型光蓄電極により吸蔵される陰イオンを含む電解質と、
を有し、
前記n型光蓄電極における前記陰イオンの離脱及び前記p型光蓄電極における前記陰イオンの吸蔵により光蓄電を行うことを特徴とするロッキングチェア型光蓄電池。
【請求項2】
前記電解質は、硫酸イオン又は過塩素酸イオンを含有することを特徴とする請求項1に記載のロッキングチェア型光蓄電池。
【請求項3】
前記n型光蓄電極は、酸化チタンを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のロッキングチェア型光蓄電池。
【請求項4】
前記p型光蓄電極は、ポリチオフェンを含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のロッキングチェア型光蓄電池。
【請求項5】
一方の表面上に前記n型光蓄電極及び前記p型光蓄電極が配置された基板を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のロッキングチェア型光蓄電池。
【請求項6】
前記基板の表面の前記n型光蓄電極及び前記p型光蓄電極が配置された部分は、厚さ方向に対して傾斜した斜面となっていることを特徴とする請求項5に記載のロッキングチェア型光蓄電池。
【請求項7】
互いに平行に配置された第1及び第2の透明導電膜を有し、
前記n型光蓄電極は、前記第1の透明導電膜の前記第2の透明導電膜側の表面上に形成され、
前記p型光蓄電極は、前記第2の透明導電膜の前記第1の透明導電膜側の表面上に形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のロッキングチェア型光蓄電池。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、自然エネルギの利用に好適なロッキングチェア型光蓄電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光エネルギを電気エネルギとして使用するために、光電変換を行う装置等と蓄電池とを組み合わせた光蓄電システムが提案されている。また、簡素化のために光発電及び蓄電を1つの電極が行うように構成された2電極の光蓄電池も提案されている。例えば、光蓄電及び蓄電の機能を合わせ持つ単一物質からなる電極が特許文献1及び2に記載され、光発電する物質が蓄電電極上に担持されて構成された複合電極が特許文献3に記載されている。
【0003】
しかしながら、従来の2電極の光蓄電池では、対極における放電ロスが大きく、十分な光電変換効率を得ることができない。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2002-124307号公報
【特許文献2】特開平10-208782号公報
【特許文献3】特開平9-63657号公報
【特許文献4】特開2006-19189号公報
【特許文献5】特開2006-172758号公報
【特許文献6】特開2004-71682号公報
【特許文献7】特表2009-520861号公報
【特許文献8】特開2008-243573号公報
【特許文献9】特開2009-187760号公報
【特許文献10】米国特許第5762444号
【特許文献11】米国特許第5807411号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、光電変換効率を向上することができるロッキングチェア型光蓄電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るロッキングチェア型光蓄電池は、ポリアニリンを含むn型光蓄電極と、p型光蓄電極と、前記n型光蓄電極及び前記p型光蓄電極に接し、光が照射されると前記n型光蓄電極から離脱し前記p型光蓄電極により吸蔵される陰イオンを含む電解質と、を有し、前記n型光蓄電極における前記陰イオンの離脱及び前記p型光蓄電極における前記陰イオンの吸蔵により光蓄電を行うことを特徴とする。ここで、n型光蓄電極とは、半導体的性質としてn型を示し、所定の電解質と接触した状態で半導体のエネルギギャップ以上のエネルギの光が照射されると、当該電極に予め吸蔵されていた陰イオンを離脱することで蓄電反応を起こす電極である。また、p型光蓄電極とは、半導体的性質としてp型を示し、所定の電解質と接触した状態で半導体のエネルギギャップ以上のエネルギの光が照射されると、電解質中の陰イオンを当該電極内に吸蔵することで蓄電反応を起こす電極である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、n型光蓄電極及びp型光蓄電極の協働作用により、光電変換効率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1の実施形態に係るロッキングチェア型光蓄電池の構造を示す図である。
【図2】第1の実施形態の使用方法の一例を示す図である。
【図3】第1の実施形態における蓄電の機構を示す図である。
【図4】第2の実施形態に係るロッキングチェア型光蓄電池の構造を示す図である。
【図5】実験で使用した電極を含む積層体を示す図である。
【図6】実験で作製した光蓄電池を示す図である。
【図7】放電電流の測定結果を示すグラフである。
【図8】蓄電された電荷の量Qphの変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について添付の図面を参照して具体的に説明する。

【0010】
(第1の実施形態)
先ず、第1の実施形態について説明する。図1は、本発明の第1の実施形態に係るロッキングチェア型光蓄電池の構造を示す図である。図2は、第1の実施形態に係るロッキングチェア型光蓄電池の使用方法の一例を示す図である。

【0011】
本実施形態に係るロッキングチェア型光蓄電池では、電解質3が充填されたパッケージ4内にn型光蓄電極1及びp型光蓄電極2が挿入されている。n型光蓄電極1の材料としては、例えば酸化チタン及びポリアニリンの複合材料が挙げられる。p型光蓄電極2の材料としては、例えばポリチオフェンが挙げられる。電解質3としては、例えば過塩素酸イオン又は硫酸イオンを含む水系電解質又は有機溶媒電解質が挙げられる。即ち、過塩素酸水溶液、過塩素酸リチウムのアセトニトリル溶液、希硫酸等を電解質3として用いることができる。

【0012】
そして、このように構成されたロッキングチェア型光蓄電池のn型光蓄電極1とp型光蓄電極2との間には、例えば、図2(a)に示すように、電球等の負荷11及びスイッチ12が接続される。そして、スイッチ12を非導通の状態にしながら、n型光蓄電極1及びp型光蓄電極2に太陽光等の光を照射すると、n型光蓄電極1において陰イオンの離脱が生じ、p型光蓄電極2において陰イオンの吸蔵が生じる。つまり、図3に示すように、n型光蓄電極1に吸蔵されていた陰イオンAintが離脱して電解質3中で陰イオンA-ionとなり、電解質3中の陰イオンA-ionがp型光蓄電極2に吸蔵されて陰イオンAintとなる。また、このようにして、蓄電が行われる。

【0013】
一方、放電を行う場合には、図2(b)に示すように、スイッチ12を導通の状態とする。この結果、p型光蓄電極2に吸蔵されていた陰イオンAintが離脱して電解質3中で陰イオンA-ionとなり、電解質3中の陰イオンA-ionがn型光蓄電極1に吸蔵されて陰イオンAintとなる。そして、これらに伴い電流が発生する。

【0014】
このような本実施形態によれば、対極が不要であるため、従来のような対極における放電ロスを防止することができる。従って、光電変換効率を向上させることができる。また、n型光蓄電極1及びp型光蓄電極2間を移動する活イオンは1種類であるため、電解質3の組成を簡素なものとすることができ、固体の電解質3を用いることも可能となる。更に、従来の対極を備えた光蓄電池には、多量のイオン及び支持電解質が必要とされるが、これに比べて本実施形態ではイオンの量を低減しても蓄電及び放電を確実に行うことができる。従って、電解質3の量を少量にして光蓄電池を小型化、フィルム化することが可能である。

【0015】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。図4は、本発明の第2の実施形態に係るロッキングチェア型光蓄電池の構造を示す図である。なお、図4(b)は、図4(a)中のI-I線に沿った断面図である。

【0016】
第2の実施形態に係るロッキングチェア型光蓄電池では、図4(b)に示すように、基板50の表面にV字型の複数の溝51aが形成されている。これらの溝51aは互いに同一の方向(第1の方向)に延びており、また、第1の方向に直交する第2の方向に等間隔で溝51aが配置されている。そして、各溝51aにおいて、一方の斜面上にn型光蓄電極51が形成され、他方の斜面上にp型光蓄電極52が形成されている。図4(a)に示すように、n型光蓄電極51及びp型光蓄電極52は交互に配列している。n型光蓄電極51の材料としては、例えば、酸化チタン多孔体及びポリアニリンの複合材料が用いられる。また、p型光蓄電極52の材料としては、例えば、ポリチオフェンが用いられる。更に、n型光蓄電極51及びp型光蓄電極52と接する電解質53も設けられている。

【0017】
このような第2の実施形態では、溝51aに向けて光を照射すれば、n型光蓄電極51及びp型光蓄電極52の双方に光が照射されることとなる。また、n型光蓄電極51及びp型光蓄電極52が溝51aの斜面に沿って形成されているため、基板50の表面が平坦になっている場合と比較して、光が照射される部分の面積を大きく確保することができる。なお、酸化チタン多孔体及びポリアニリンの複合材料、並びにポリチオフェンの表面にはナノレベルの凹凸が存在するため、n型光蓄電極51及びp型光蓄電極52の表面が光軸に対して傾斜していても、この傾斜に伴う光吸収率の低下は僅かである。従って、第2の実施形態によれば、小さな面積で大きな電流を得ることができる。

【0018】
なお、複数の溝51aが延びる方向は互いに同一である必要はなく、また、複数の51aが単一の方向に並んでいる必要もない。また、溝51aの断面形状がV字型である必要もない。更に、基板51の表面に溝51aが形成されずに、基板51の平坦な表面上にn型光蓄電極51及びp型光蓄電極52が配置されていてもよい。

【0019】
次に、本願発明者らが実際に行った実験について説明する。

【0020】
先ず、図5(a)及び(b)に示すように、透明導電膜であるFTO(フッ素ドープ酸化スズ)膜23n及びn型光蓄電極21を含む積層体20n、並びにFTO膜23p及びp型光蓄電極22を含む積層体20pを形成した。

【0021】
積層体20nの形成では、先ず、粒径が30nm程度の酸化チタンのナノ粒子を懸濁させた水溶液に界面活性剤及び分散剤を加えて水性ペーストを作製した。次いで、この水性ペーストをFTO膜23n上に部分的に塗布し、500℃程度で焼成して酸化チタンの多孔質膜を形成した。その後、多孔質膜の部分が浸るようにFTO膜23nをアニリン(C65NH2)の硫酸水溶液に入れて電気化学的に重合させ、酸化チタンの多孔質体及びポリアニリンを含むn型光蓄電極21を形成した。

【0022】
また、積層体20pの形成では、先ず、FTO膜23pをチオフェン(C44S)の有機溶媒溶液に入れて電気化学的に重合させ、FTO膜23p上に部分的にポリアニリンを含むp型光蓄電極22を形成した。有機溶媒溶液としては、アセトニトリル又はベンゾニトリルを用いることができ、この実験では、ベンゾニトリルを用いた。

【0023】
そして、積層体20n及び積層体20pを用いて、図6に示す構造の光蓄電池を作製した。即ち、電解質用空隙24を確保しながら、n型光蓄電極21及びp型光蓄電極22が電解質用空隙24側を向くように積層体20及び積層体20pを重ね合わせた。このとき、FTO膜23n及びFTO膜23pの厚さ方向に直交する方向では、n型光蓄電極21及びp型光蓄電極22の位置をずらした。また、電解質用空隙24には過塩素酸リチウムのアセトニトリル溶液を電解質用空隙24に封入し、この内部に基準極33を挿入した。更に、FTO膜23nとFTO膜23pとの間に、抵抗値が1kΩの負荷31及びスイッチ32を接続した。また、基準極33とFTO膜23nとの間に電圧計34を接続した。更に、負荷31と並列に電圧計35を接続した。

【0024】
光蓄電池の作製後に、次のような処理を順に行った。
(1)スイッチ32を非導通状態として、模擬太陽光(AM1.5)をn型光蓄電極21及びp型光蓄電極22に15分間、照射した。
(2)1分間、暗下に放置した。
(3)スイッチ32を導通状態にして、60分間、放電電流を測定した。
(4)スイッチ32を非導通状態として、15分間、暗下に放置した。
(5)1分間、暗下に放置した。
(6)スイッチ32を導通状態にして、60分間、放電電流を測定した。
なお、放電電流の測定では、負荷31の電圧降下を電圧計35にて測定し、これを電流値に換算した。

【0025】
このような処理により得られた放電電流の測定結果を図7に示す。図7中の実線(光照射あり)が上記の(3)で測定した結果を示し、破線(光照射なし)が上記の(6)で測定した結果を示す。そして、これらの放電電流から放電された電荷の量が求められ、この電荷の量の差から、模擬太陽光(AM1.5)の照射によって蓄電された電荷の量Qph(mC・cm-2)を算出した。

【0026】
また、このような電荷の量Qphの測定を繰り返し行ったところ、図8に示すように、1回目では5mC・cm-2を超える値が得られたが、徐々に低下し、約1.2mC・cm-2まで低下したところで、電荷の量Qphはほとんど低下しなくなった(実施例)。

【0027】
更に、比較のために、積層体20pに代えてFTO膜23pを用いた光蓄電池も作製した。つまり、FTO膜23pを対極として用いた光蓄電池も作製した。そして、この光蓄電池について同様の実験を行ったところ、図8に示すように、電荷の量Qphは0.06mC・cm-2で安定していた(比較例)。

【0028】
この実験から、p型光蓄電極22を用いた場合には、約20倍もの性能向上が見込まれるといえる。
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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