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明細書 :魚臭さを低減化し、風味を向上させた魚醤油の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5240943号 (P5240943)
登録日 平成25年4月12日(2013.4.12)
発行日 平成25年7月17日(2013.7.17)
発明の名称または考案の名称 魚臭さを低減化し、風味を向上させた魚醤油の製造方法
国際特許分類 A23L   1/238       (2006.01)
A23L   1/22        (2006.01)
FI A23L 1/238 B
A23L 1/238 E
A23L 1/22 D
請求項の数または発明の数 4
全頁数 10
出願番号 特願2009-507468 (P2009-507468)
出願日 平成20年3月24日(2008.3.24)
国際出願番号 PCT/JP2008/055427
国際公開番号 WO2008/120598
国際公開日 平成20年10月9日(2008.10.9)
優先権出願番号 2007094775
優先日 平成19年3月30日(2007.3.30)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成22年8月9日(2010.8.9)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504258527
【氏名又は名称】国立大学法人 鹿児島大学
発明者または考案者 【氏名】進藤 穣
【氏名】御木 英昌
個別代理人の代理人 【識別番号】100091096、【弁理士】、【氏名又は名称】平木 祐輔
【識別番号】100118773、【弁理士】、【氏名又は名称】藤田 節
審査官 【審査官】吉田 知美
参考文献・文献 国際公開第2007/026871(WO,A1)
特開2001-017112(JP,A)
特開平11-308983(JP,A)
トッピー魚醤作りませんか/西之表市、鹿大水産学部、種子島漁協が共同研究=新たな地産地消にと期待、技術提供、今月説明会,南日本新聞 朝刊,2007年 1月 6日,南日本新聞記事情報 / G-Search
トッピー魚醤、病院食に/塩分低く栄養士ら検討=鹿児島厚生連病院,南日本新聞 朝刊,2007年 3月19日,南日本新聞記事情報 / G-Search
調査した分野 A23L 1/238
A23L 1/22
A23L 1/23
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
G-Search
特許請求の範囲 【請求項1】
魚介類、蒸煮したさつまいも、麹及び食塩を含み、かつ糖蜜を含まない、混合物を原料として発酵を行なうことを特徴とする魚醤油の製造方法。
【請求項2】
蒸煮したさつまいもの添加量が魚介類に対して5~20%(w/w)である請求項1記載の魚醤油の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された製造方法で製造された魚醤油。
【請求項4】
請求項3に記載された魚醤油を含む調味料。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、魚臭さを低減化した魚醤油の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
魚醤油は、魚介類に多量の食塩を加えてその腐敗を防ぎながら、自己消化酵素等の作用により魚介類中の蛋白質を低分子のペプチド或いはアミノ酸にまで分解することにより製造されるものである。そして、魚醤油の例としては、はたはたやまいわしなどを原料とする「しょっつる」、貝を原料とする「かき醤油」、「はまぐり醤油」などが一般に知られている。
【0003】
しかし、これら魚醤油はそれら原料魚介類の自己消化物による濃厚なうまみを有するものの、一方魚介類に起因する独特の魚臭さを伴うものである。
【0004】
そこで、魚醤油における魚臭さを低減化する魚醤油の製造方法について、種々の方法が提案されている。たとえば、淡水魚を主原料として魚醤油を製造する方法(特許文献1参照)、原料としてオキアミを使用して魚醤油を製造する方法(特許文献2参照)、魚醤油の原料に対しておからを添加する方法(特許文献3参照)、魚醤油に対してトレハロース及び/またはマルチトールを添加する方法(特許文献4参照)、魚醤油に対して酵母をエキスを添加する方法(特許文献5参照)、穀類(玄米、赤米、黒米、ハダカ麦、モチアワ、モチキビ、ヒエ、ハトムギ)、海藻類、野菜類、果物類等を発酵させて得た発酵調味液及び酒類を魚醤油に添加する方法(特許文献6参照)などがある。

【特許文献1】特開2003-199523号公報
【特許文献2】特開2000-295971号公報
【特許文献3】特開平2-117363号公報
【特許文献4】特開平11-308983号公報
【特許文献5】特開平10-271975号公報
【特許文献6】特開2005-102704号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、魚醤油における特有の魚臭さを低減化した魚醤油の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の発明を包含する。
【0007】
(1)魚介類、蒸煮したさつまいも、麹及び食塩を含む混合物を原料として発酵を行なうことを特徴とする魚醤油の製造方法。
【0008】
(2)魚介類、廃糖蜜、蒸煮したさつまいも、麹及び食塩を含む混合物を原料として発酵を行なうことを特徴とする魚醤油の製造方法。
【0009】
(3)蒸煮したさつまいもの添加量が魚介類に対して5~20%(w/w)である(1)または(2)記載の魚醤油の製造方法。
【0010】
(4)蒸煮したさつまいも、または蒸煮したさつまいもと廃糖蜜を仕込み時に添加することを特徴とする(1)乃至(3)のいずれかに記載の魚醤油の製造方法。
【0011】
(5)廃糖蜜の添加量が魚介類に対して5~20%(w/w)である(4)記載の魚醤油の製造方法。
【0012】
(6)(1)乃至(5)のいずれかに記載された製造方法で製造された魚醤油。
【0013】
(7)(6)に記載された魚醤油を含む調味料。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、魚醤油の原料に蒸煮したさつまいも、または蒸煮したさつまいもと廃糖蜜を添加することにより、TMA量及びTMAO量を減じ、魚醤油のまろやかさや旨みを増強しつつ魚醤油特有の魚臭さを低減化することができた。
【0015】
本明細書は本願の優先権の基礎である日本国特許出願2007-94775号の明細書および/または図面に記載される内容を包含する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の魚臭さが低減化された魚醤油の製造方法について詳細に説明する。
【0017】
本発明の魚臭さが低減化された魚醤油は、魚体に、蒸煮大豆と炒った小麦粉に麹菌((株)ビオック,スーパー一紫)を植菌し培養して得られた麹、廃糖蜜、蒸煮したさつまいも及び食塩水を混合し発酵・熟成させた後、火入れをし、布袋でろ過をして製造される。
【0018】
本発明で原料として使用する魚介類としては、魚介類のタンパク質を含むものであれば特に限定されないが、好ましくは、生鮮魚介類、魚体そのもの、切り身、缶詰等の製造工程で生じた魚介類の加工残さい(内臓、鰓、中骨、頭等を含む)、その残さいから内臓や鰓を除去した残さい、魚介類の頭骨、骨等が使用される。魚種としては、トビウオ、マグロ、キビナゴ、ハダカイワシ、ハタハタ、サバ、ニシン、イカ等、貝類としてはあさり、はまぐり等、魚醤油の原料として一般に使用される魚介類であればいずれでも良い。魚介類としては、蒸煮されたものを用いることが好ましい。
【0019】
廃糖蜜としては、サトウキビやビート等から砂糖を製造する工程で結晶化させるときに残るシロップ状の糖液、すなわち、砂糖製造工程で得られる副産物が使用される。廃糖蜜の添加量は原料の魚介類に対して5~20%(w/w)である。
【0020】
また、本発明に使用されるさつまいもとしては紅サツマ等が使用される。蒸煮したさつまいもとしては、好ましくは、さつまいもをスライス(1cm角,厚さ1mm)してレトルト(高温高圧釜)にて105~110℃で15分間蒸煮処理し、その後、マッシュ状にしたものが使用される。蒸煮したさつまいもの添加量は原料の魚介類に対して5~20%(w/w)である。蒸煮したさつまいも及び/又は廃糖蜜は、原料の仕込み時に添加される。
【0021】
本発明に用いられる麹は典型的には醤油麹又は味噌麹であり、醤油麹が特に好ましい。醤油麹は、例えば、蒸煮及び煎炒した大豆又は小麦に、アスペルギルス・オリゼー、アスペルギルス・ソーヤ等の麹菌を接種し、製麹することにより得られる。麹の添加量は、特に限定されないが、使用する魚介類に対して10~50%(w/w)であることが好ましく、20~30%(w/w)であることがより好ましく、約25%(w/w)であることが特に好ましい。
食塩は、食塩水として使用されるのが好ましい。水に対する食塩の濃度は、特に限定されないが、5~25%(w/w)であることが好ましく、10~15%(w/w)がより好ましい。また水の容積を基準にした場合、食塩の添加量は5~25%(w/v)であることが好ましく、10~15%(w/v)がより好ましい。食塩水の添加量は、残さいの重量に対して0.5~2倍量(V/W)であることが好ましく、1~1.5倍量(V/W)がより好ましい。
【0022】
魚介類、蒸煮したさつまいも、麹及び食塩を含む混合物、又は、魚介類、廃糖蜜、蒸煮したさつまいも、麹及び食塩を含む混合物の調製(すなわち「仕込み」)の順序は特に限定されないが、麹は最後に添加することが好ましい。また、食塩を食塩水として添加する場合、35~40℃の温度の食塩水を用いることが好ましい。例えば、魚介類に食塩水を加え、次いで蒸煮したさつまいも及び必要に応じて廃糖蜜を加え、攪拌し、最後に麹を入れ、再度攪拌する。こうして混合物を調製する。得られた混合物の発酵は、28℃~35℃の温度範囲で行うことが好ましく、14日間~1ヶ月間の時間をかけて行うことが好ましい。
【0023】
実施例では、発酵・熟成は2週間行なったが、特にこの期間に限定されるものではない。火入れは85℃、15分間行なったが、特にこの温度、時間に限定されるものではない。
【0024】
本発明において、蒸煮したさつまいも及び/又は廃糖蜜を添加することにより、魚醤油の魚臭さが低減化される作用機構は次の実験結果から、添加した蒸煮したさつまいもに含まれる糖分が発酵工程においてアルコールを産生し(実験例(1)参照)、このアルコールによる魚臭さのマスキングが行われ、さらに、蒸煮されたさつまいもを添加したものは発酵・熟成に際し有機酸が増加することが確認されたことから、有機酸による魚臭さの中和分解が行われたものと想定される。このことは廃糖蜜及び蒸煮されたさつまいもを添加した魚醤油では魚臭さの主たる化学成分として知られているトリメチルアミン(TMA)量及びトリメチルアミンオキサイド(TMAO)量が減少していることからも確認された(実験例(2)参照)。また、魚醤油におけるまろやかさやうま味もトビウオ魚醤油を除いてほとんど影響がないばかりか増強されることが確認された(実験例(3)参照)。
【0025】
次に、本発明の魚醤油含有調味料は、本発明の魚臭さが低減化された魚醤油とダシ汁、香辛料、甘味糖類、食酢、酸味料、酒類、その他の調味料等の原材料とを組み合わせて通常の調味料製造法に準じた方法で調整したものである。
【0026】
ダシ汁は通常の魚節類、例えば鰹節、宗田節、鯖節、鰯節等の粉砕物又はこれらの削り節類、また例えば鰯、鯖等を干して乾燥した煮干し類等を、熱水やアルコール等で抽出して得る通常のダシ汁であり、1種又は2種以上が用いられる。
【0027】
また、必要によりコンブ等の海藻類、しいたけ等のきのこ類のダシ汁が用いられる。また、必要に応じて、魚介類エキス、酵母エキス、ビーフエキス、野菜エキス類等の各種エキス類も用いられる。
【0028】
香辛料は、例えばガーリック、オニオン、オレガノ、タイム、セージ、ジンジャー、レッドペッパー、ペッパー、オールスパイス、クローブ、ナツメグ、カルダモン等が挙げられ、1種又は2種以上が用いられる。
【0029】
甘味糖類は、通常の調味料に用いられるものでよく、例えば、砂糖、麦芽糖、加糖、液糖、ブドウ糖、水飴、デキストリン等であり、さらに、ソルビトール、マルチトール等の糖アルコール等が挙げられ、また、みりんや酒精含有甘味調味料等も好適に用いられ、また必要によりグリチルリチン、ステビオサイド、アスパルテーム等の甘味料も用いられ、これらの甘味糖類、甘味類が1種又は2種以上が用いられる。
【0030】
また、必要によりタンパク質加水分解物、食塩またグリシン、グルタミン酸ナトリウム等のアミノ酸系調味料、イノシン酸ナトリウム、グアニル酸ナトリウム等の核酸系調味料、及びコハク酸ナトリウム等の甘味調味料が挙げられ、1種又は2種以上が用いられる。
【0031】
また、必要により食酢、果汁類やクエン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸、酢酸等の酸味料が1種又は2種以上用いられる。
【0032】
また、必要に応じて清酒、ワイン類の酒類、発酵調味料、ナタネ油、ゴマ油等の食用油類、各種ガム類、乳化剤、香料、着色料等の原材料が1種又は2種以上用いられる。
【0033】
本発明の魚醤油含有調味料は、上記方法で製造された本発明の魚醤油と上記の他の原材料とを混和し、殺菌処理(例えば、80℃、10分等の加熱殺菌)を施すことにより得られる。
【0034】
本発明の魚醤油含有調味料は魚臭さが軽減され、ダシ汁の香気や香辛料の香気が引き立った好ましい風味を有する。また、サツマイモからの生成された有機酸による酸味も有する。
【0035】
(実験例)
実施例で示す方法に準じて蒸煮したさつまいも及び/又は廃糖蜜を添加した或いは添加しないトビウオ魚醤油、キハダマグロ魚醤油、キビナゴ魚醤油及びハダカイワシ魚醤油を調製し、それら魚醤油の酸度の変化、アルコール量、TMA量およびTMAO量の変化量及び魚臭さ、まろやかさ、旨み等についての官能試験を行った。
【0036】
(1)酸度及びアルコール量
<方法>
アルコール量は蒸留法(参考文献:東 和夫;醸造分析「発酵と醸造I」,光琳,東京,2002,313-382)で測定し、酸度I、滴定酸度(酸度I・酸度II)は基準醤油分析法(参考文献:東 和夫;醸造分析「発酵と醸造I」,光琳,東京,2002,313-382)に従って測定した。
【表1】
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【0037】
*1 キビナゴ及びハダカイワシの場合は、残さいでなく、魚体全体を用いた。
【0038】
*2 酸度Iは、酸性アミノ酸と有機酸量を表わす。
【0039】
*3 酸度IIは、中性アミノ酸と塩基性アミノ酸の量を表わす。
【0040】
*4 滴定酸度は酸度Iと酸度IIの和を表す。
【0041】
この表1の結果から、サツマイモ及び/又は糖蜜の添加に伴って、酸度IIに対する酸度Iの百分率が増大し、発酵中における有機酸量の生成が増大したことが分かる。また、アルコール量の生成においても、対照(サツマイモ、糖蜜無添加)に比べ上昇している。
【0042】
(2)TMA量及びTMAO量
<方法>
TMAO及びTMAは微量拡散法(水産生物化学・食品学実験書(斉藤恒行、内山均、梅本滋、河端俊治 編),恒星社厚生閣, 版 p281-286)により定量した。
【表2】
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【0043】
*キビナゴ及びハダカイワシの場合は、残さいでなく、魚体全体を用いた。
【0044】
この表2の結果から、廃糖蜜及び/又は蒸煮したさつまいもを添加した魚醤油は無添加のそれに比してTMA量及び/又はTMAO量が減少していることが分かる。
【0045】
(3)官能試験結果
<方法>
評価項目として、“魚臭さ”、“まろやかさ”、“旨み”及び“醤油香気”を用いた。評価方法は、1を最も弱い、5を最も強いとした5段階評価法で行い、弱いと感じたほど低いポイントをつけることとし、パネラーは20代男性5人、20代女性4人、40代男性1人の計10人で行った。
【表3】
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【0046】
*キビナゴ及びハダカイワシの場合は、残さいでなく、魚体全体を用いた。
【0047】
この表3の結果から、廃糖蜜及び/又は蒸煮したさつまいもを添加した魚醤油は無添加のそれに比して “まろやかさ”、“醤油香気”、及び“旨み”が同等乃至増強され、“魚臭さ”が減少していること(但し、ハダカイワシは除く)が分かる。
【0048】
次に実施例に基づいて本発明を具体的に説明する。但し、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
【0049】
(実施例1)
1)魚原料及び魚種
トビウオ、キハダマグロの内臓や鰓を除去した残さい、キビナゴ、ハダカイワシを用いた。本実験で用いた「残さい」は頭部、中骨及び胸鰭からなる。
【0050】
2)麹の調製
麹の作成は、まず、乾燥大豆(市販品)を大豆重量に対して2倍容量の水に1日浸漬した後、高温高圧釜にて105~110℃で75分間蒸煮処理を行った。次に、大豆重量に対して0.03%(w/w)の麹菌((株)ビオック,スーパー一紫)と大豆と等重量の小麦粉(市販品)を表面が薄茶色になるまで炒ったものを混合した。混合後、インキュベーター内で12時間目までは32℃、12時間後から18時間までは28℃、18時間以降は26℃で大豆の周りに麹菌が付着するまで放置した。
【0051】
3)さつまいもの前処理
魚原料に対して5~20%(w/w)のさつまいも(紅サツマ)スライス(1cm角、厚さ1cm)をレトルト(高温高圧釜)にて105~110℃で15分間蒸煮処理した。その後、マッシュ状にした。
【0052】
4)仕込み・火入れ・ろ過
新潟県農業総合研究所の短期製造法に従って仕込みを行った。キハダマグロの残さいを5cm×5cmの大きさに細砕後、105~110℃の高温高圧釜で15分間蒸煮処理を行った。次に、この残さいに対して25%(w/w)の麹,20%(w/w)の廃糖蜜,試料と等量(v/w)の40℃の塩分15%の食塩水,10%(w/w)の蒸煮したさつまいもを添加し、混合した。混合後、35℃に設定した孵卵機に入れ、1日1回撹拌しながら2週間発酵・熟成させた。発酵・熟成後、85℃の湯せんで15分間火入れをし、布袋でろ過をしてキハダマグロを原料として魚臭さが軽減されたキハダマグロ魚醤油を得た。 なお上記の「試料」とは残さいを指す。
【0053】
(実施例2)
魚介類の原料としてキビナゴの魚体を使用し、蒸煮したさつまいも及び廃糖蜜を添加した以外は実施例1と同様に行い、魚臭さが軽減されたキビナゴ魚醤油を得た。
【0054】
(実施例3)
キハダマグロやキビナゴを原料とした場合、魚臭さが軽減された魚醤油を得たので(表3)、味の面でデンプンを使用した場合とどのように異なるか官能評価を行った。
【0055】
1)魚原料及び魚種
トビウオの内臓や鰓を除去した残さいを用いた。
【0056】
2)麹の調製
実施例1と同様に行なった。
【0057】
3)さつまいもの前処理
実施例1と同様に行なった。
【0058】
4)仕込み・火入れ・ろ過
実施例1と同様に短期製造法に従って仕込みを行った。トビウオの残さいを5cm×5cmの大きさに細砕後、105~110℃の高温高圧釜で15分間蒸煮処理を行った。次に、この残さいに対して25%(w/w)の麹,10~20%(w/w)の廃糖蜜,試料と等量(v/w)の40℃の塩分15%の食塩水,10%(w/w)の蒸煮したさつまいもまたは、10%(w/w)のばれいしょでんぷん(片山化学工業製)、または、10%(w/w)の可溶性でんぷん(ナカライテスク製)を添加し、混合した。各試験区の配合を表4に示す。発酵・熟成、火入れ、およびろ過は実施例1と同様に行なった。
【0059】
5)官能評価
評価項目として、“まろやかさ”、“旨み”、”醤油香気”および”こく”を用いた。評価方法は、1を最も弱い、5を最も強いとした5段階評価法で行い、弱いと感じたほど低いポイントをつけることとし、パネラーは20代男性3人、20代女性1人、40代男性1人の5計人で行った。
【表4】
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【0060】
結果
【表5】
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【0061】
6)ろ過後の魚醤油収量
布袋でのろ過後、魚醤油の重量を測定した。
【0062】
結果
“まろやかさ”、”醤油香気”、”旨み”、”こく”の項目で、糖蜜添加区と糖蜜・さつまいも添加区の差は0.2ポイント以上であり、”旨み”、”こく”の項目では、糖蜜・さつまいも添加区が糖蜜添加区より勝っていた。また、糖蜜・ばれいしょでんぷん添加区および糖蜜・可溶性でんぷん添加区と比較すると、”まろやかさ”、”醤油香気”、”旨み”、”こく”の各項目で、糖蜜・さつまいも添加区は、0.6~1.0ポイント勝っており、蒸煮さつまいもを添加し、発酵させることで、味が良くなる点も認められた。
【0063】
糖蜜・ばれいしょでんぷん区では、ばれいしょでんぷんを加えたため、とろみが発生し、収量が著しく低下した。
【0064】
本明細書で引用した全ての刊行物、特許および特許出願をそのまま参考として本明細書にとり入れるものとする。