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明細書 :正極材料及び固体酸化物形燃料電池

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5212967号 (P5212967)
公開番号 特開2009-026659 (P2009-026659A)
登録日 平成25年3月8日(2013.3.8)
発行日 平成25年6月19日(2013.6.19)
公開日 平成21年2月5日(2009.2.5)
発明の名称または考案の名称 正極材料及び固体酸化物形燃料電池
国際特許分類 H01M   4/86        (2006.01)
H01M   8/12        (2006.01)
FI H01M 4/86 T
H01M 8/12
請求項の数または発明の数 2
全頁数 12
出願番号 特願2007-189973 (P2007-189973)
出願日 平成19年7月20日(2007.7.20)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 平成19年1月22日 日本セラミックス協会基礎科学部会発行の「第45回セラミックス基礎科学討論会講演要旨集」に発表
審査請求日 平成22年5月24日(2010.5.24)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504258527
【氏名又は名称】国立大学法人 鹿児島大学
発明者または考案者 【氏名】平田 好洋
【氏名】鮫島 宗一郎
【氏名】松永 直樹
【氏名】下之薗 太郎
個別代理人の代理人 【識別番号】100090273、【弁理士】、【氏名又は名称】國分 孝悦
審査官 【審査官】前田 寛之
参考文献・文献 特開2007-048653(JP,A)
特開2004-192853(JP,A)
特開2007-088205(JP,A)
調査した分野 H01M 4/86
H01M 8/12
特許請求の範囲 【請求項1】
希土類固溶セリアを電解質とする固体酸化物形燃料電池に用いられる正極材料であって、
前記正極材料がSrRuO3であることを特徴とする正極材料。
【請求項2】
請求項1に記載の正極材料を有することを特徴とする固体酸化物形燃料電池。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、希土類固溶セリアを電解質に用いた固体酸化物形燃料電池の正極材料、及びその正極材料を用いた固体酸化物形燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、化学反応のエネルギーを電気エネルギーへ直接変換することができるデバイスである。この燃料電池は、エネルギー変換効率が高く、水素を燃料に用いると排出ガスとして無害な水蒸気を排出する特徴を有している。そのため、次世代のエネルギーシステムとして活発な研究・開発が行われている。
【0003】
このような燃料電池の中でも、特に、固体酸化物形燃料電池(Solid Oxide Fuel Cell、以下、SOFCと称す)と呼ばれているものは、他の燃料電池に比べてエネルギー変換効率が高く、水素以外の炭化水素、天然ガス、灯油等も燃料として利用できるという特徴を有している。さらに、電池の構成物質がすべて固体であり、電解液の漏れがなく、773K以上で作動させるため、排熱が利用できるなどの特徴も有している。
【0004】
従来、SOFCの電解質には、酸化物イオン導電体であるイットリア安定化ジルコニア(Zr0.92Y0.08O1.96, Yttria-Stabilized Zirconia、以下、YSZと称す)が用いられている。また、カソード(正極)には、ランタンストロンチウムマンガナイト(La1-xSrxMnO3)が用いられ、アノード(負極)には、Ni-YSZサーメット材料が用いられている。なお、高い酸化物イオン電導度を得るために、電池の作動温度は1073~1273Kとしている。
【0005】
2006年度より、新エネルギー・産業技術総合開発機構において、実用化のための耐久試験が行われている。SOFCを普及させるためには、耐久性の向上及び材料コストの低減が要求されており、そのため、作動温度を約873~1073Kに低温化させるための研究が精力的に行われている。その方策として、電解質の薄膜化による電気抵抗の低減、及び高イオン電導率を有する電解質材料の探索が検討されている。
【0006】
そこで、電解質においては、YSZよりも酸化物イオン導電度の高い希土類固溶セリア(Rare earth-Doped Ceria、以下、RDCと称す)が注目されており、これまで、シュウ酸塩共沈法による粉体合成、粉体の焼結挙動、熱膨張および力学的特性、電気伝導度等についての検討が行われている(例えば、非特許文献1~9参照)。
【0007】
さらに、RDCを電解質に用いた単セルを作製して、いくつかの正極材料及び負極材料(Ni-RDCサーメット)について、発電時のオーム抵抗及び過電圧による電圧降下の調査も行われており、全体の電圧降下に占める割合は、正極部で最も大きいことが知られている(例えば、非特許文献10~12参照)。そこで、RDCの電解質に適する正極材料を開発することが必要とされている。
【0008】

【非特許文献1】K. Higashi, K. Sonoda, H. Ono, S. Sameshima and Y. Hirata, "Synthesis and Sintering of Rare Earth-doped Ceria Powder by Oxalate Coprecipitation Method", Journal of Materials Research, 14 (3), 957-967 (1999).
【非特許文献2】Y. Hirata, H. Ono, K. Higashi, K. Sonoda, S. Sameshima and Y. Ikuma, "Microstructure and Electrical Conductivity of Rare Earth-doped Ceria", Ceramic Transactions, 92, 137-148(1999).
【非特許文献3】S. Sameshima, K. Higashi and Y. Hirata, "Sintering and Grain Growth of Rare Earch - doped Ceria Particles", Journal of Ceramic Processing Research, 1 (1), 27-33 (2000).
【非特許文献4】S. Sameshima, T. Ichikawa, M. Kawaminami and Y. Hirata, "Thermal and Mechanical Properties of Rare Earth-doped Ceria Ceramics", Materials Chemistry & Physics, 61, 31-35 (1999).
【非特許文献5】S. Sameshima, H. Ono, K. Higashi, K. Sonoda and Y. Hirata, "Microstructure of Rare Earth - doped Ceria Prepared by Oxalate Coprecipitation Method", Journal of the Ceramic Society of Japan, 108 (11), 985-988 (2000)
【非特許文献6】S. Sameshima, H. Ono, K. Higashi, K. Sonoda, Y. Hirata and Y. Ikuma, "Electrical Conductivity and Diffusion of Oxygen Ions in Rare Earth-doped Ceria", Journal of the Ceramic Society of Japan, 108 (12), 1060-1066 (2000).
【非特許文献7】S. Sameshima, M. Kawaminami and Y. Hirata, "Thermal Expansion of Rare-Earth-Doped Ceria Ceramics", Journal of the Ceramic Society of Japan, 110(7), 597-600 (2002).
【非特許文献8】T. Shimonosono, Y. Hirata, Y. Ehira, S. Sameshima and T. Horita, "Electronic Conductivity Measurement of Gd- and Sm-Doped Ceria Ceramics by Hebb-Wagner Method", Journal of the Ceramic Society of Japan, 112(5), Supplement Edition, S616-S621 (2004).
【非特許文献9】T.Shimonosono, Y. Hirata, S.Sameshima and T.Horita, "Electronic Conductivity of La-doped Ceria Ceramics ", Journal of the American Ceramic Society, 88(8), 2114-2120(2005).
【非特許文献10】Y.Hirata, S.Yokomine, S.Sameshima, T.Shimonosono, S.Kishi and H.Fukudome, "Electrochemical Properties of Solid Oxide Fuel Cell with Sm-Doped Ceria Electrolyte and Cermet Electrodes", Journal of the Ceramic Society of Japan, 113(9), 597-604 (2005).
【非特許文献11】Y.Hirata, S.Sameshima and G.Hiramatsu, "Dominant Factors Controlling Electric Power of Solid Oxide Fuel Cell with Rare Earth-Doped Ceria Electrolyte", Proceedings of the 23rd International Japan-Korea Seminar on Ceramics, 2006, pp.93-96.
【非特許文献12】G.Hiramatsu, Y.Hirata, S.Sameshima, N.Matsunaga, Electrochemical Properties of Perovskite Cathode for Solid Oxide Fuel Cell, Materials Science Forum, 544-545, 985-988(2007).
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
YSZを電解質に用いる場合は、正極材料としてはランタン-マンガン系酸化物(LaMnO3)が適している。一方、RDCを電解質に用いる場合は、正極材料としては電解質と化学反応が起こりにくいSm0.5Sr0.5CoO3(SSC)やLa0.6Sr0.4Co0.2Fe0.8O3(LSCF)がこれまで提案されている。ところが、これらの正極材料では、電子伝導性や酸素との反応性が不十分であり、出力性能が不十分である。
【0010】
本発明は前述の問題点に鑑み、希土類固溶セリアの電解質を用いた固体酸化物形燃料電池において、高性能の正極材料を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の正極材料は、希土類固溶セリアを電解質とする固体酸化物形燃料電池に用いられる正極材料であって、前記正極材料がSrRuO3であることを特徴とする。
【0012】
本発明の固体酸化物形燃料電池は、前記正極材料を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ルテニウム酸ストロンチウムを正極材料に含まれており、従来よりも出力性能を向上させるとともに、正極の性能劣化を抑えることができる。また、ルテニウム酸ストロンチウムは、電解質と化学反応が起こりにくく、電子導電性が高く、さらに酸素との反応性が高い特性を有している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明者は、従来から正極材料として用いられていたSSC(Sm0.5Sr0.5CoO3)に電気導電性の高い酸化ルテニウム(RuO2)を添加したものを正極材料として用いると、3vol%のH2Oを含む水素を燃料とした場合、RuO2の添加により1073Kでの出力密度は112mW/cm2から170mW/cm2に向上することを見いだした。この正極材料を用いると、オーム抵抗は電解質>負極>正極の順に低下する。また、過電圧による電圧降下はオーム抵抗による電圧降下よりも小さくなり、さらに、負極での過電圧による電圧降下より正極による過電圧による電圧降下の方が小さくなる。すなわち、RuO2が優れた正極特性を有していることを見いだした。
【0015】
ところが、RuO2は高温でSSCと反応して、ルテニウム酸ストロンチウム(SrRuO3)とルテニウム酸コバルト(Co2RuO4)とに変化してしまい、長い期間にわたって優れた特性を得つづけることはできない。また、本発明者は、さらに鋭意検討した結果、Co2RuO4は、希土類固溶セリア(GDC)と高温(約1073K)で化学反応を起こすため、正極材料に用いることはできないが、SrRuO3を正極材料として用いると、高温状態でもGDCと化学反応が起こらないことがわかり、本発明を完成するに至った。
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態に係る固体酸化物形燃料電池(SOFC)の構造例を示す概略図である。
このSOFCには、正極1、負極3、及びこれらの間に配置された電解質2が設けられている。正極1は、酸素ガス(O2)と電流中の電子との反応を起こして酸化物イオン(O2-)を生成する。また、正極1の材料はSrRuO3である。電解質2は酸化物イオン導電体からなり、酸化物イオン(O2-)を正極1から負極3へ運搬する機能を有している。また、電解質2の材料はGDC(Ce0.8Gd0.2O1.9)である。負極3は、電解質2から受け取った酸化物イオン(O2-)と水素(H2)とを反応させて水蒸気(H2O)を生成する。また、負極3の材料はNi-GDCサーメット材料である。
【0017】
図2は、正極1上における酸素の還元反応を示す図である。
図2に示すように、酸化物イオンが電解質2へ拡散するまでには異なる2つの過程が存在する。1つ目は、酸素分子が気相拡散で三相界面(Triple Phase Boundary)に運ばれ、三相界面で酸化物イオンが生成されて電解質2へ拡散する過程である。もう一方の過程は、酸素分子が正極1上に解離吸着し、解離吸着した酸素原子(Oad)が三相界面に運ばれる。そして、三相界面に運ばれた酸素原子(Oad(TPB))は、三相界面で酸化物イオンになり、電解質2へ拡散する過程である。この2つの過程により、酸化物イオンが生成される。
【0018】
以上のような構造の固体酸化物形燃料電池において、正極材料として、ルテニウム酸ストロンチウム(SrRuO3)を用いることにより、従来、正極材料として用いられていたLa0.6Sr0.4Co0.2Fe0.8O3(LSCF)よりも出力性能を向上させることができる。また、SrRuO3は、約1073Kの高温状態であってもGDCからなる電解質との化学反応性も小さいため、出力性能が劣化することを抑えることができる。なお、電解質2の厚さをさらに薄くすれば、出力性能はさらに向上する。
【実施例】
【0019】
以下、本発明の正極材料を用いた固体酸化物形燃料電池の製造方法、及び特性評価の実施例について説明する。
【0020】
(固体酸化物形燃料電池の製造方法)
図3は、本実施例におけるSrRuO3粉体の作製方法の流れを示す図である。
図3に示すように、まず、硝酸ストロンチウム水溶液(0.2mol/l)と三塩化ルテニウム水溶液(0.2mol/l)とをSrとRuとのモル比が1:1となるように混合した。そして、混合液をアンモニア水(1mol/l)に混ぜ、凍結乾燥させた。乾燥後、大気中、1273Kで2時間仮焼させて、SrRuO3粉体を作製した。
【0021】
図4は、本実施例におけるCe0.8Gd0.2O1.9(GDC)粉体の作製方法の流れを示す図である。
図4に示すように、硝酸セリウム溶液(0.2mol/l)と硝酸ガドリニウム溶液(0.2mol/l)とをCeとGdとのモル比が4:1となるように混合した。そして、混合物をシュウ酸溶液(0.4mol/l)に混ぜて共沈させた。なお、この時のpHは0.9~1.2であった。次に、共沈した溶液を313Kで乾燥させた。乾燥後、大気中、873Kの温度で1時間仮焼させ、85rpmの回転数で24時間、α-アルミナ製ボールを用いてボールミルで粉砕してCe0.8Gd0.2O1.9(GDC)粉体を作製した。
【0022】
図5は、本実施例におけるNi-GDC粉体の作製方法の流れを示す図である。
図5に示すように、まず、図4に示す手順で作製したGDC粉体を、硝酸ニッケル溶液(1.4mol/l)に混合した。この時、GDCとNiとの比が体積比で70:30になるようにした。そして、混合液を凍結乾燥させた。乾燥後、大気中、873Kで1時間仮焼させて、Ni-GDC粉体を作製した。
【0023】
図6は、比較例として用いるCo2RuO4粉体の作製方法の流れを示す図である。
図6に示すように、まず、硝酸コバルト水溶液(0.2mol/l)と三塩化ルテニウム水溶液(0.2mol/l)とをCoとRuとのモル比が2:1となるように混合した。そして、混合液をアンモニア水(1mol/l)に混ぜ、凍結乾燥させた。乾燥後、大気中、1273Kで1時間仮焼させて、Co2RuO4粉体を作製した。
【0024】
図7は、比較例として用いるLa0.6Sr0.4Co0.2Fe0.8O3(LSCF)粉体の作製方法の流れを示す図である。
図7に示すように、硝酸ランタン水溶液(0.2mol/l)と、硝酸ストロンチウム水溶液(0.2mol/l)と、硝酸コバルト水溶液(0.2mol/l)と、硝酸鉄水溶液(0.2mol/l)とをLa、Sr、Co、及びFeのモル比が6:4:2:8になるように混合した。そして、混合液に炭酸アンモニウムを加え、凍結乾燥させた。乾燥後、大気中、1273Kで1時間仮焼させて、LSCF粉体を作製した。
【0025】
図8は、本実施例における固体酸化物形燃料電池に用いる電解質の作製手順を示す図である。
図8に示すように、まず、図4に示した手順で作製したGDC粉体を一軸方向に49MPaの圧力で成形し、その後、294MPaの圧力で等方加圧を行った。そして、大気中、1773Kの温度で4時間焼結を行った。次に、焼結したGDCを所定の形状に研磨して、固体酸化物形燃料電池に用いる電解質を作製した。
【0026】
図9は、固体酸化物形燃料電池に用いる電極の作製手順を示す図である。
図9に示すように、図3に示した手順で製造したSrRuO3粉体を有機溶媒(体積比で、エタノール:エチレングリコール=9:1)に加え、固体量が15vol%のペーストを作製した。次に、固体酸化物形燃料電池の所定の位置に250μmのメッシュを張り、その上に前記ペーストを塗布した。そして、塗布したペーストを、大気中、1273Kで1時間加熱して、電極を作製した。
【0027】
また、同様の手順によって、図5~7に示したそれぞれの手順で製造したNi-GDC粉体、Co2RuO4粉体、及びLSCF粉体についても同様の手順で電極を作製した。この時、Ni-GDCについては、ペーストを、大気中、1473Kで1時間加熱した。さらに、比較例として、ITO(Indium Tin Oxide)粉体(重量比はIn2O3:SnO2=9:1)についても同様の手順で電極を作製した。なお、ITOの場合は、大気中、1423Kで1時間加熱した。
【0028】
(性能評価)
以上のような手順で作製した電解質、及び電極を用いて電池試験を行った。測定方法としては、図10に示すように、正極(C)側及び負極(A)側にそれぞれ参照極(RC、RA)を設け、電極電位の相対値を測定して、出力密度、正極のオーム抵抗及び過電圧による電圧降下を算出した。この時、電解質には、前述した手順で作製したGDCを用い、負極にはNi-GDCを用いた。また、正極については、SrRuO3、Co2RuO4、LSCF、及びITOの4種類について測定を行った。
【0029】
図11(a)は、873K及び1073Kにおける電流密度に対する端子電圧(出力電圧)の関係を示す図であり、図11(b)は、873K及び1073Kにおける電流密度に対する出力密度(出力電力)の関係を示す図である。
図11(a)に示すように、本実施例で作製したSrRuO3を正極に用いた場合は、端子電圧が最も大きいことがわかる。
【0030】
また、図11(b)に示すように、本実施例で作製したSrRuO3を正極に用いた場合は、1073Kにおける最大出力密度は329mW/cm2であり、873Kにおける最大出力密度は36mW/cm2であった。一方、LSCFを正極に用いた場合は、1073Kにおける最大出力密度は113mW/cm2であり、873Kにおける最大出力密度は12mW/cm2であった。すなわち、従来と比較して、本実施例のSrRuO3を正極材料として用いると、出力性能が約3倍向上したことがわかる。
【0031】
図12及び図13は、それぞれ1073K、873Kにおける電流密度に対する電圧降下の関係を示す図である。図12及び図13において、「Ohmic(オーム抵抗)」は、オーム抵抗による電圧降下を示し、「Overpotencial(過電圧)」は、過電圧による電圧降下を示す。また、「Cathode - reference electrode(正極-参照極)」は、その合計値を示す。
図12に示すように、1073Kでの正極のオーム抵抗(Ohmic)及び過電圧(Overpotential)による電圧降下は、ITO>LSCF>SrRuO3>Co2RuO4の順に小さくなることがわかる。また、図13に示すように、873Kでの正極のオーム抵抗(Ohmic)及び過電圧(Overpotential)による電圧降下は、ITO≒LSCF>SrRuO3>Co2RuO4の順に小さくなることがわかる。すなわち、従来と比較して、本実施例のSrRuO3を正極材料として用いると、オーム抵抗及び過電圧による電圧降下が小さくなり、出力性能が向上したことがわかる。
【0032】
(反応性試験)
次に、電解質であるGDCとの化学反応性についての実験を行った。
図14は、GDC粉体と正極材料の粉体とを混合した試料を作製する手順を示す図である。
図14に示すように、まず、図4に示した手順で作製したGDC粉体と、図3に示した手順で作製したSrRuO3粉体とを体積比が1:1となるように混合した。そして、大気中、1073Kで10時間加熱を行って試料を作製した。同様に、比較例として図4に示した手順で作製したGDC粉体と、図6に示した手順で作製したCo2RuO4粉体との混合試料も同様の手順で作製した。
【0033】
図15は、GDC粉体とSrRuO3粉体とを混合した試料の加熱前及び加熱後のX線回折による定性分析の結果を示す図である。
図15に示すように、加熱前と加熱後とを比較して、GDC及びSrRuO3粉体のピーク比に差はあるものの、新たな化合物の生成は確認できなかった。
【0034】
図16は、GDC粉体とCo2RuO4粉体とを混合した試料の加熱前及び加熱後のX線回折による定性分析の結果を示す図である。
図16に示すように、加熱後においては、新たに酸化コバルト(Co3O4)及びGd2Ru2O7が生成されていることがわかる。これは、高温になると、Co2RuO4と酸素とが反応し、酸化ルテニウム(RuO2)及び酸化コバルト(Co3O4)に分解され、さらに、この分解によって生成された酸化ルテニウムがGDCと反応し、新たにGd2Ru2O7が生成されるためである。
【0035】
以上のように本実施例によれば、正極材料としてルテニウム酸ストロンチウム(SrRuO3)を用いることにより、従来、正極材料として用いられていたLa0.6Sr0.4Co0.2Fe0.8O3(LSCF)よりも出力性能を約3倍向上させることができる。また、SrRuO3は、約1073Kの高温状態であってもGDCからなる電解質との化学反応性も小さいため、出力性能が劣化することを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施形態に係る固体酸化物形燃料電池(SOFC)の構造例を示す概略図である。
【図2】正極上における酸素の還元反応を示す図である。
【図3】本発明の実施例におけるSrRuO3粉体の作製方法の流れを示す図である。
【図4】本発明の実施例におけるCe0.8Gd0.2O1.9(GDC)粉体の作製方法の流れを示す図である。
【図5】本発明の実施例におけるNi-GDC粉体の作製方法の流れを示す図である。
【図6】比較例として用いるCo2RuO4粉体の作製方法の流れを示す図である。
【図7】比較例として用いるLa0.6Sr0.4Co0.2Fe0.8O3(LSCF)粉体の作製方法の流れを示す図である。
【図8】本発明の実施例における固体酸化物形燃料電池に用いる電解質の作製手順を示す図である。
【図9】固体酸化物形燃料電池に用いる電極の作製手順を示す図である。
【図10】本発明の実施例における電極電位の相対値の測定方法を示す図である。
【図11】873K及び1073Kにおける電流密度に対する端子電圧及び出力密度の関係を示す図である。
【図12】1073Kにおける電流密度に対する電圧降下の関係を示す図である。
【図13】873Kにおける電流密度に対する電圧降下の関係を示す図である。
【図14】GDC粉体と正極材料の粉体とを混合した試料を作製する手順を示す図である。
【図15】GDC粉体とSrRuO3粉体とを混合した試料の加熱前及び加熱後のX線回折による定性分析の結果を示す図である。
【図16】GDC粉体とCo2RuO4粉体とを混合した試料の加熱前及び加熱後のX線回折による定性分析の結果を示す図である。
【符号の説明】
【0037】
1 正極
2 電解質
3 負極
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14
【図16】
15