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明細書 :高分子タンニンゲルの製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5344515号 (P5344515)
公開番号 特開2008-285458 (P2008-285458A)
登録日 平成25年8月23日(2013.8.23)
発行日 平成25年11月20日(2013.11.20)
公開日 平成20年11月27日(2008.11.27)
発明の名称または考案の名称 高分子タンニンゲルの製造方法
国際特許分類 C07G  99/00        (2009.01)
C08L  93/00        (2006.01)
FI C07G 99/00 A
C08L 93/00
請求項の数または発明の数 4
全頁数 9
出願番号 特願2007-134407 (P2007-134407)
出願日 平成19年5月21日(2007.5.21)
審査請求日 平成22年4月20日(2010.4.20)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504258527
【氏名又は名称】国立大学法人 鹿児島大学
発明者または考案者 【氏名】門川 淳一
【氏名】松尾 友明
個別代理人の代理人 【識別番号】100091096、【弁理士】、【氏名又は名称】平木 祐輔
【識別番号】100096183、【弁理士】、【氏名又は名称】石井 貞次
【識別番号】100118773、【弁理士】、【氏名又は名称】藤田 節
【識別番号】100101904、【弁理士】、【氏名又は名称】島村 直己
審査官 【審査官】池上 文緒
参考文献・文献 特開平09-176082(JP,A)
特開2004-153086(JP,A)
特開2002-047375(JP,A)
園芸学会雑誌 (2006) vol.75, 別冊2, p.433
Macromolecules (2000) vol.33, no.7, p.2377-2382
調査した分野 C07G 99/00
PubMed
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Thomson Innovation
特許請求の範囲 【請求項1】
高分子タンニン濃度が30~50重量%である高分子タンニン水溶液を過酸化水素及び金属ポルフィリン錯体で処理することを特徴とする高分子タンニンゲルの製造方法。
【請求項2】
高分子タンニンが縮合型タンニンである請求項1記載の方法。
【請求項3】
縮合型タンニンがカキタンニンである請求項2記載の方法。
【請求項4】
金属ポルフィリン錯体が鉄-プロトポルフィリン錯体である請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、酵素類似反応を用いる高分子タンニンゲルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、プラスチック等の有機材料の多くは石油などの化石資源を原料に製造されているが、その供給量には限りがある。このため、化石資源に代わる有機資源として天然高分子の利用が期待されている。
【0003】
タンニンは、植物の幹、皮、葉、実等から抽出される天然物であり、一般に皮なめし剤として用いられている環境に優しい物質である。タンニンには、ピロガロール系の加水分解型タンニンとカテコール系の縮合型タンニンがある。加水分解型タンニンは比較的低分子であることも手伝って、漢方薬など多くの植物材料から単離、同定が進み、基礎的な研究がほとんどこの型のタンニンだけを用いてなされていた。一方、縮合型タンニンは明確には同定されていなかった。縮合型タンニンは植物の樹皮や渋柿等に含まれ、抗酸化性やラジカル消去能を持ち、重金属と結合するなどの機能を有している。次式:
【0004】
【化1】
JP0005344515B2_000002t.gif
に例示するように縮合型タンニンは、ポリフェノールの一種であるカテキン類が互いにC-C結合で結ばれ、酸や酸素によってこの縮合が更に進行した高分子構造を有している。しかし、水への溶解性や強度のなさから用途が限られており、ほとんどが未利用資源となっている。このため、これを材料の素材として有効利用できれば、有用な資源となると考えられ、すでにホウ酸塩、リン酸塩等とアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩とを用いたゲル化(特許文献1)、架橋剤を用いての化学的架橋によるゲル化(非特許文献1)が報告されている。しかし、この場合、ゲル化のために多量の無機塩や架橋剤を用いなければならず、他の架橋方法によるゲル化が望ましい。ここで高分子タンニンは一種のポリフェノールであるので、酸化還元酵素による架橋反応が可能と考えられるが、高分子タンニンは強力なタンパク質凝集作用を持つために酵素との反応を阻害してしまう(例えば、非特許文献2)。
【0005】
金属ポルフィリン錯体は、従来より酸化反応触媒として用いられており、例えば特許文献2には、ヒドロキノン等のフェノール類を、金属ポルフィリン錯体の存在下、酸化剤で酸化してp-ベンゾキノン類を製造する方法が開示されている。また、鉄-プロトポルフィリン錯体は、過酸化水素存在下、酵素類似の酸化還元反応を触媒し、フェノール類の酸化重合などに用いられている(非特許文献3及び4)。
【0006】
しかしながら、金属ポルフィリン錯体を高分子タンニンの架橋反応の触媒に用いることは報告されていない。
【0007】

【特許文献1】国際公開第2006/085541号パンフレット
【特許文献2】特開平9-176082号公報
【非特許文献1】Y. Nakano, K. Takeshita, T. Tsutsumi, Wat. Res., 2001, 35, 496-500
【非特許文献2】農業および園芸、第75巻、第1号(2000年)第3~13頁、果実のタンニンと関連化合物の化学と利用[1]
【非特許文献3】M. Akita, et al., Biotechnol. Lett., 2001, 23, 1827-1831
【非特許文献4】J.A. Akkara et al., Macromolecules, 2000, 33, 2377-2382
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、多量の無機塩や架橋剤を用いずに高分子タンニンゲルを製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題に鑑み研究を重ねた結果、本発明者らは、高分子タンニンを、金属ポルフィリン錯体の存在下、過酸化水素と反応させることにより高分子タンニンのゲル化に成功し、本発明を完成した。
【0010】
即ち、本発明の要旨は以下のとおりである。
(1)高分子タンニン水溶液を過酸化水素及び金属ポルフィリン錯体で処理することを特徴とする高分子タンニンゲルの製造方法。
(2)高分子タンニンが縮合型タンニンである前記(1)に記載の方法。
(3)縮合型タンニンがカキタンニンである前記(2)に記載の方法。
(4)金属ポルフィリン錯体が鉄-プロトポルフィリン錯体である前記(1)~(3)のいずれかに記載の方法。
(5)高分子タンニン水溶液中の高分子タンニン濃度が5~50重量%である前記(1)~(4)のいずれかに記載の方法。
(6)前記(1)~(5)のいずれかに記載の方法によって得られるゲル。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、多量の無機塩や架橋剤を用いずに高分子タンニンゲルを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
タンニンは、植物の幹、皮、葉、実等から抽出される天然物であり、環境に優しい物質である。タンニンには、ピロガロール系の加水分解型タンニンとカテコール系の縮合型タンニンがある。
【0013】
本発明に用いる高分子タンニンとは、植物の幹、皮、葉、実等から熱水やアルコール等で抽出されるポリフェノール重縮合体であり、渋みを呈し、多くのタンパク質と強く結合して沈殿を生じるものをいい、通常分子量は約2千~約100万であり、好ましくは分子量1万以上のものを用いる。本発明においては、加水分解型及びカテコール系の縮合型のいずれの高分子タンニンを用いてもよいが、カテコール系の縮合型タンニンが好ましい。高分子タンニンとしては、例えばケブラチョタンニン、ミモザタンニン、ワットルタンニン等の心材や樹皮に含まれる高分子タンニン;バナナ、リンゴ、カキ等の未熟果実に含まれる高分子タンニン;キャロブ豆、ブドウ等の未熟なサヤや種子に含まれる高分子タンニンが挙げられる。
【0014】
一般に「タンニン」と呼ばれる緑茶や紅茶に含まれるカテキン等のポリフェノールは低分子であるため、皮の鞣し作用はほとんどなく、タンパク質との結合も弱く、分子量もカテキンが290で、大きなものでも400から500であり、本発明に用いる高分子タンニンとは異なる。
【0015】
前記高分子タンニンは、原料から抽出後、通常は乾燥して粉末として用いられる。下記の実施例では、前記粉末の高分子タンニンを水に溶解したものを前記高分子タンニン水溶液として用いたが、原料からの抽出液をそのまま高分子タンニン水溶液として用いてもよい。
【0016】
高分子タンニンの原材料(例えば、カキタンニンでは柿渋)には、高分子タンニン以外に有機酸、アミノ酸等が含まれているため、必要に応じて精製して、これらの不純物を除去したものを用いてもよい。
【0017】
本発明において、高分子タンニン水溶液における高分子タンニン濃度は、通常1~50重量%であり、力学的特性の点から、好ましくは5~50重量%、更に好ましくは10~50重量%、最も好ましくは30~50重量%である。高分子タンニン濃度が低い場合には、流動性のあるゲルができ、高分子タンニン濃度10~50重量%の範囲では、過酸化水素の添加量によって流動性のあるゲルや硬いゲルが得られる。
【0018】
本発明においては、高分子タンニン水溶液を過酸化水素及び金属ポルフィリン錯体で処理することにより、高分子タンニンゲルを製造することができる。
【0019】
本発明に用いる金属ポルフィリン錯体としては、好ましくは、金属プロトポルフィリン錯体、金属デューテロポルフィリン錯体、金属ジアセチルデューテロポルフィリン錯体、金属メソポルフィリン錯体、金属ジホルミルポルフィリン錯体、金属テトラフェニルポルフィリン錯体、金属オクタエチルポルフィリンが挙げられる。また、中心金属は、鉄又はコバルト、特に鉄(III)が好ましい。
【0020】
好ましい金属ポルフィリン錯体の具体例としては、
次式:
【化2】
JP0005344515B2_000003t.gif
で示されるヘミン及びヘマチンが挙げられる。
【0021】
過酸化水素は、通常10~30w/v%水溶液として用いられる。過酸化水素の反応溶液中の濃度は、金属ポルフィリン錯体1mmol当たり、通常44~220mmol、好ましくは132~220mmolである。
【0022】
処理温度は、通常10~30℃、好ましくは20~25℃であり、処理時間は、通常8~48時間、好ましくは12~24時間である。
【0023】
高分子タンニンの水溶液中の濃度や架橋の程度を調節することにより、目的に応じて、高分子タンニンの流動性のあるゲル又は硬いゲルを適宜製造することができる。
【0024】
本発明には、必要に応じ本発明の効果を損なわない範囲で、各種添加剤を用いることができる。
【実施例】
【0025】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0026】
以下の実施例において、カキタンニンとしては丸善製薬株式会社(尾道、広島県)から入手した、精製したカキタンニン粉末を用いた。
【0027】
(実施例1)
水10mlに精製したカキタンニンを5~50重量%溶解させた高分子タンニン水溶液にヘマチン(0.01g,0.016mmol)を加え、30w/v%過酸化水素水0.2~0.5mlを滴下し、室温で12時間撹拌することにより反応させた(表1)。
【0028】
【表1】
JP0005344515B2_000004t.gif

【0029】
タンニンのモル濃度は典型的な構造に基づいて算出した。破断応力及び破断歪率の値は、小型卓上試験機((株)東京試験機、リトルセンスター)を用いた圧縮試験によって測定した。ゲルを直径25mm、高さ10mm程度の円柱状にカットしたサンプルを調製し、圧縮速度1mm/分で測定を行った。ゲルが破断したところで測定を終了した。
【0030】
タンニン濃度が5重量%では流動性のあるゲルが得られ、それ未満の濃度ではゲル化しなかった。また、50重量%より高濃度ではタンニン水溶液自身の粘度が非常に高く、反応を行うことが困難であった。タンニン濃度10~50重量%の範囲では、過酸化水素の添加量によって流動性を持つゲルや硬いゲルなどが得られたが、調製したゲルの中でも力学的特性に優れていると判断できたタンニン濃度30~50重量%のゲルについて圧縮試験を行った(図1~3)。
【0031】
図1~3に示したタンニン濃度30、40及び50重量%で圧縮試験を行った結果のとおり、それぞれの濃度において過酸化水素の使用量を変化させてもゲルの破断応力と破断歪率にそれほど変化はなかった。破断応力はタンニン濃度が高くなると大きくなった。破断歪率はタンニン濃度30重量%より40重量%では大きくなったが、50重量%ではほとんど変化がなかった。
【0032】
(実施例2)
水10mlに精製したカキタンニン5gを溶解させた高分子タンニン水溶液にヘマチン(0.01g,0.016mmol)を加え、30w/v%過酸化水素水0.2mlを滴下し、室温で1時間反応させた後、薄い容器に移し、更に12時間反応させて流動性のあるゲルを調製した。このゲルを自然乾燥することで、比較的強度のある材料が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明の方法によって得られるゲルは、抗菌性、抗酸化性、消臭性、抗ウイルス、抗ダニ性ゲルとして利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】タンニン濃度30重量%における高分子タンニンゲルの応力-歪曲線を示す図である。
【図2】タンニン濃度40重量%における高分子タンニンゲルの応力-歪曲線を示す図である。
【図3】タンニン濃度50重量%における高分子タンニンゲルの応力-歪曲線を示す図である。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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