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明細書 :光蓄電池及び光蓄電電極の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5181173号 (P5181173)
公開番号 特開2008-243573 (P2008-243573A)
登録日 平成25年1月25日(2013.1.25)
発行日 平成25年4月10日(2013.4.10)
公開日 平成20年10月9日(2008.10.9)
発明の名称または考案の名称 光蓄電池及び光蓄電電極の製造方法
国際特許分類 H01M  14/00        (2006.01)
H01L  31/04        (2006.01)
FI H01M 14/00 P
H01L 31/04 Z
請求項の数または発明の数 2
全頁数 9
出願番号 特願2007-082111 (P2007-082111)
出願日 平成19年3月27日(2007.3.27)
審査請求日 平成22年2月26日(2010.2.26)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504258527
【氏名又は名称】国立大学法人 鹿児島大学
発明者または考案者 【氏名】野見山 輝明
【氏名】堀江 雄二
個別代理人の代理人 【識別番号】100090273、【弁理士】、【氏名又は名称】國分 孝悦
審査官 【審査官】前田 寛之
参考文献・文献 特開2005-209458(JP,A)
調査した分野 H01M 14/00
H01L 31/04
特許請求の範囲 【請求項1】
光蓄電電極と、
対極と、
前記光蓄電電極と前記対極との間に設けられた電解質と、
前記光蓄電電極と前記対極との接続を切り替えるスイッチと、
を有し、
前記光蓄電電極は、
導電性高分子膜と、
前記導電性高分子膜内に分散し、光が照射されると前記電解質と前記導電性高分子膜との間に酸化還元反応を誘発する複数の光触媒粒子と、
を有し、
前記スイッチがOFFの状態で光が照射されると、少なくとも前記電解質から陽イオンを前記導電性高分子膜内に取り込むかもしくは前記導電性高分子膜内から陰イオンを前記電解質に放出し、その後、光が照射されていない状態で前記スイッチがONの状態にされると、少なくとも前記取り込まれた陽イオンを前記電解質に放出するかもしくは前記放出した陰イオンを前記導電性高分子膜内に取り込むことを特徴とする光蓄電池。
【請求項2】
請求項1に記載の光蓄電池が有する光蓄電電極の製造方法であって、
導電性モノマーを含有する溶液と光触媒粒子とを混合する工程と、
前記導電性モノマーを重合することにより、前記光触媒粒子を内包する導電性高分子膜を形成する工程と、
を有することを特徴とする光蓄電電極の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、光エネルギの有効利用に好適な光蓄電池及び光蓄電電極の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光エネルギを電気エネルギとして使用するために、光電変換を行う装置等と蓄電池とを組み合わせた光蓄電システムが提案されている。このような光蓄電システムでは、例えば、図11に示すように、電解液103が充填されたパッケージ107内に光発電電極101、対極102及び蓄電極106が挿入されている。また、対極102に負荷104が接続され、光発電電極101の接続先を、蓄電極106及び電球104から選択するスイッチ105が設けられている。蓄電の際には、スイッチ105が蓄電極106に接続され、放電の際には、スイッチ105が電球104に接続される。このような光蓄電システムは、非特許文献1に記載されている。
【0003】
このような光蓄電システムに対し、簡素化のために光発電及び蓄電を1つの電極が行うように構成された2電極の光蓄電池が提案されている。例えば、光蓄電及び蓄電の機能を合わせ持つ単一物質からなる電極が特許文献1及び2に記載され、光発電する物質が蓄電電極上に担持されて構成された複合電極が特許文献3に記載されている。
【0004】
しかしながら、上述の単一物質からなる電極では、蓄電に伴って半導体的性質の変化が起こり、光発電効率が低下してしまう。また、複合電極では、この欠点は克服されるが、光発電する物質が蓄電電極上に担持されただけであるため、光発電する部分と蓄電する部分との接触面積が小さく、十分な効率を得ることが困難である。
【0005】

【特許文献1】特開2002-124307号公報
【特許文献2】特開平10-208782号公報
【特許文献3】特開平9-63657号公報
【非特許文献1】T. Miyasaka et al., Appl. Phys. Lett. vol. 85, No.17, 2004, pp. 3932-3934
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、蓄電性能を向上させ、また、容易に製造することができる光蓄電電極を用いた光蓄電池及び光蓄電電極の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、以下に示す発明の諸態様に想到した。
【0008】
本発明に係る光蓄電池は、光蓄電電極と、対極と、前記光蓄電電極と前記対極との間に設けられた電解質と、前記光蓄電電極と前記対極との接続を切り替えるスイッチと、を有し、前記光蓄電電極は、導電性高分子膜と、前記導電性高分子膜内に分散し、光が照射されると前記電解質と前記導電性高分子膜との間に酸化還元反応を誘発する複数の光触媒粒子と、を有し、前記スイッチがOFFの状態で光が照射されると、少なくとも前記電解質から陽イオンを前記導電性高分子膜内に取り込むかもしくは前記導電性高分子膜内から陰イオンを前記電解質に放出し、その後、光が照射されていない状態で前記スイッチがONの状態にされると、少なくとも前記取り込まれた陽イオンを前記電解質に放出するかもしくは前記放出した陰イオンを前記導電性高分子膜内に取り込むことを特徴とする。
【0009】
本発明に係る光蓄電電極の製造方法は、前記光蓄電池が有する光蓄電電極の製造方法であって、導電性モノマーを含有する溶液と光触媒粒子とを混合する工程と、前記導電性モノマーを重合することにより、前記光触媒粒子を内包する導電性高分子膜を形成する工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、光触媒粒子の触媒作用により、電解質と導電性高分子膜との間に酸化還元反応が誘発されるので、蓄電効率を向上させることができる。また、室温下で製造することができ、その工程も従来のものよりも簡便なものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、添付の図面を参照して具体的に説明する。図1Aは、本発明の実施形態に光蓄電電極を示す模式図である。
【0013】
本実施形態に係る光蓄電電極1では、基板1c上に導電性高分子膜1aが形成され、導電性高分子膜1a中に光触媒粒子1bが分散している。また、複数の光触媒粒子1bのうちの一部は、導電性高分子膜1aの表面から外部に露出している。基板1cとしては、例えば、可撓性のある樹脂基板が挙げられる。導電性高分子膜1aとしては、例えば、ポリアニリン膜、ポリピロール膜、ポリチオフェン膜等が挙げられる。また、光触媒粒子1bとしては、例えば、TiO2粒子、CdS粒子、ZnO粒子、ZrSe粒子、WO3粒子等の酸化物及びカルコゲン化合物が挙げられる。
【0014】
図2Aは、光蓄電電極の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を示す図であり、図2Bは、ポリアニリン膜のSEM写真を示す図であり、図2Cは、TiO2粒子のSEM写真を示す図である。図2Aに示すように、光蓄電電極では、図2Bに示すポリアニリン膜と図2Cに示すTiO2粒子とが複合化されている。
【0015】
次に、光蓄電電極1の使用方法について説明する。図1Bは、光蓄電電極1を備えた光蓄電池の構成を示す模式図である。
【0016】
この光蓄電池では、電解液3が充填されたパッケージ7内に光蓄電電極1及び対極2が挿入されている。また、光蓄電電極1にスイッチ5が接続されている。そして、スイッチ5と対極2との間に、電球等の負荷4が接続される。対極2としては、例えば炭素繊維が挙げられる。電解液3としては、例えば希硫酸が挙げられる。
【0017】
このように構成された光蓄電池において蓄電を行う場合には、図3Aに示すように、スイッチ5を非導通の状態にしながら、光蓄電電極1に太陽光等の光を照射する。光蓄電電極1に光が照射されると、光触媒粒子1bにおいて電子及び正孔が励起され、これらが電解液3と導電性高分子膜1aとの間に酸化還元反応を誘発する。この結果、導電性高分子膜1aを構成するポリアニリン等の高分子の主鎖に、電解液3中の水素イオン(プロトン)が取り込まれる。また、重合時に高分子の主鎖中に取り込まれた硫酸イオン等のアニオンが脱離することもある。このようにして、蓄電が行われる。
【0018】
一方、放電を行う場合には、図3Bに示すように、スイッチ5を導通の状態とする。この結果、導電性高分子膜1aに取り込まれていた水素イオン(プロトン)が電解液3中に放出されたり、硫酸イオン等のアニオンが高分子の主鎖中に取り込まれたりする。これらに伴い電流が発生する。
【0019】
このように、本実施形態では、光発電を行う光触媒粒子1bが、蓄電を行う導電性高分子膜1a中に分散しているため、これらの間の接触面積が大きい。従って、従来の2電極の光蓄電電極と比較して、高い性能を得ることができる。
【0020】
次に、光蓄電電極1を製造する方法について説明する。図4は、光蓄電電極1を製造する第1の方法を示す模式図であり、図5は、光蓄電電極1を製造する第2の方法を示す模式図である。
【0021】
第1の方法では、先ず、基板11の表面に塩化第2鉄又は過硫酸アンモニウム等の酸化剤を塗布し、これを乾燥させることにより、酸化剤層12を形成する。次に、基板11の酸化剤層12側に筒16を密着させ、筒16の上部から光触媒粒子13を懸濁させた導電性モノマーを含有するモノマー溶液15を注ぎ、暗中に4時間~5時間程度放置する。これにより、図4に示すように、基板11上に光触媒粒子1bが沈殿すると共に、酸化剤層12が水分を含んで重合開始剤として機能するようになる。この結果、酸化剤層12の作用により導電性モノマーが重合し、光触媒粒子13を内包する導電性高分子膜14が形成される。導電性高分子膜14が導電性高分子膜1aに相当し、光触媒粒子13が光触媒粒子1bに相当し、基板11が基板1cに相当し、これらから光蓄電電極1が構成される。
【0022】
第2の方法では、先ず、導電性基板21に筒16を密着させ、筒16の上部から光触媒粒子13を懸濁させた導電性モノマーを含有するモノマー溶液15を注ぎ、暗中に4時間~5時間程度放置する。これにより、図5に示すように、導電性基板21上に光触媒粒子1bが沈殿する。次いで、モノマー溶液15中に電極22を挿入し、電極22を負極とし、導電性基板21を正極として、これらの間に定電流を流す。この結果、光触媒粒子13を内包する導電性高分子膜14が形成される。導電性高分子膜14が導電性高分子膜1aに相当し、光触媒粒子13が光触媒粒子1bに相当し、導電性基板21が基板1cに相当し、これらから光蓄電電極1が構成される。
【0023】
このように、第1及び第2の方法のいずれにおいても、光蓄電電極1を室温下で製造することができる。つまり、加熱炉等を用いずとも光蓄電電極1を製造することができる。また、製造に際して大型化を阻害する要因はないので、設備さえ整えば、面積が大きい光蓄電電極1を容易に製造することが可能である。
【0024】
なお、上述の光蓄電池では、パッケージ7内に電解液3が充填されているが、図6に示すように、電解液3を用いずに、光蓄電電極1と対極2との間に固体電解質6を配置してもよい。固体電解質6としては、例えば、プロトン伝導性を有するパーフルオロスルフォン酸等のフッ素系ポリマー等を用いることができる。この場合、光蓄電池の小型化及びフィルム化が可能となる。また、固体電解質6の代わりにイオン性液体を用いてもよい。イオン性液体としては、例えば、ジメチルイミダゾリウム等のアルキルイミダゾリウム塩類等を用いることができる。
【0025】
ここで、本願発明者等が行った実験の結果について説明する。
【0026】
(第1の実験)
第1の実験では、先ず、上述の光蓄電池と同様の構成の光蓄電池を作製した。導電性高分子膜1aとしてポリアニリン膜を用い、光触媒粒子1bとしてTiO2粒子を用い、対極2として炭素繊維を用い、電解液3として希硫酸を用いた。希硫酸の濃度は、1mol/dm3とした。そして、7200秒間の光照射を行った後の放電電流を測定した。また、光照射を行わずに自己放電を生じさせた場合の自己電流を測定した。この結果を図7に示す。
【0027】
図7に示すように、光照射を行った場合の放電電流(○)が自己電流(●)よりも高かった。このことは、光蓄電電極により蓄電が行われたことを証明している。
【0028】
(第2の実験)
第2の実験では、第1の実験で作製した光蓄電池を用いて、光の照射時間と蓄電された電荷の量との関係を調べた。なお、蓄電された電荷の量としては、光照射を行った場合に放電された総電荷量から光照射を行わなかった場合に自己放電された総電荷量を減算して得られる電荷量を求めた。この結果を図8に示す。
【0029】
図8に示すように、光照射時間の増加に伴って光蓄電電化量が増加した。このことは、作製した光蓄電池が正常に動作したことを証明している。
【0030】
(第3の実験)
第3の実験では、第1の実験で作製した光蓄電池を用いて、導電性高分子膜1aを構成するポリアニリンに含まれる窒素原子の状態を分析した。図9に示すように、ポリアニリンに含まれる窒素原子は、結合状態が相違するイミン基窒素、アミン基窒素及びイオン化窒素の3種の状態をとり得る。第3の実験では、X線光電子分光法によりこれらの3種の状態の各比率を分析した。この結果を図10に示す。
【0031】
図10に示すように、側鎖に水素をもたないイミン基窒素の比率が光照射時間の増加に伴って減少した。また、イオン化窒素の減少量とアミン基窒素の増加量がほぼ等しかった。このことは、光照射時間の増加に伴って、水素イオン(プロトン)がポリアニリンの主鎖に取り込まれていることを示している。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1A】本発明の実施形態に光蓄電電極を示す模式図である。
【図1B】光蓄電電極1を備えた光蓄電池の構成を示す模式図である。
【図2A】光蓄電電極のSEM写真を示す図である。
【図2B】ポリアニリン膜のSEM写真を示す図である。
【図2C】TiO2粒子のSEM写真を示す図である。
【図3A】蓄電時の光蓄電池を示す模式図である。
【図3B】放電時の光蓄電池を示す模式図である。
【図4】光蓄電電極1を製造する第1の方法を示す模式図である。
【図5】光蓄電電極1を製造する第2の方法を示す模式図である。
【図6】光蓄電電極1を備えた他の光蓄電池の構成を示す模式図である。
【図7】第1の実験の結果を示すグラフである。
【図8】第2の実験の結果を示すグラフである。
【図9】ポリアニリンの構造を示す図である。
【図10】第3の実験の結果を示すグラフである。
【図11】従来の光蓄電システムを示す図である。
【符号の説明】
【0033】
1:光蓄電電極
1a:導電性高分子膜
1b:光触媒粒子
1c:基板
2:対極
3:電解液
4:負荷
5:スイッチ
6:固体電解質
7:パッケージ
11:基板
12:酸化物層
13:光触媒粒子
14:導電性高分子層
15:モノマー溶液
16:筒
21:導電性基板
22:電極
図面
【図1A】
0
【図1B】
1
【図2A】
2
【図2B】
3
【図2C】
4
【図3A】
5
【図3B】
6
【図4】
7
【図5】
8
【図6】
9
【図7】
10
【図8】
11
【図9】
12
【図10】
13
【図11】
14