TOP > 国内特許検索 > 金属回収方法および金属回収装置 > 明細書

明細書 :金属回収方法および金属回収装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4695206号 (P4695206)
公開番号 特開2011-001596 (P2011-001596A)
登録日 平成23年3月4日(2011.3.4)
発行日 平成23年6月8日(2011.6.8)
公開日 平成23年1月6日(2011.1.6)
発明の名称または考案の名称 金属回収方法および金属回収装置
国際特許分類 C25C   1/00        (2006.01)
C22B  59/00        (2006.01)
C22B   3/42        (2006.01)
C22B  58/00        (2006.01)
C25C   7/06        (2006.01)
B01J  20/24        (2006.01)
FI C25C 1/00 301Z
C22B 59/00
C22B 3/00 M
C22B 58/00
C25C 7/06 301Z
B01J 20/24 B
請求項の数または発明の数 10
全頁数 16
出願番号 特願2009-145361 (P2009-145361)
出願日 平成21年6月18日(2009.6.18)
審査請求日 平成22年11月25日(2010.11.25)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304024430
【氏名又は名称】国立大学法人北陸先端科学技術大学院大学
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】日立化成工業株式会社
発明者または考案者 【氏名】金子 達雄
【氏名】金子 麻衣子
【氏名】河添 宏
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】100107641、【弁理士】、【氏名又は名称】鎌田 耕一
【識別番号】100115152、【弁理士】、【氏名又は名称】黒田 茂
審査官 【審査官】瀧口 博史
参考文献・文献 国際公開第2008/062574(WO,A1)
特開平11-70384(JP,A)
特開平1-247584(JP,A)
特開2003-164768(JP,A)
特開昭48-56588(JP,A)
調査した分野 C25C 1/00
B01J 20/24
C22B 3/24
C22B 58/00
C22B 59/00
C25C 7/06
特許請求の範囲 【請求項1】
(i)イオンが移動可能な物質に接するように配置された第1および第2の電極の間に、前記第1の電極がカソードとなるように電圧を印加する工程を含み、
前記物質は、金属のイオンを吸着した高分子を含有する吸着剤を含み、
前記高分子が、スイゼンジノリから抽出される高分子と同じ構成単位を含む高分子であり、
前記(i)の工程において、前記第1の電極は前記吸着剤に接するように配置されており、
前記(i)の工程において、前記電圧を印加することによって前記第1の電極の表面に前記金属を析出させる、金属回収方法。
【請求項2】
前記吸着剤が、前記高分子を含むゲルである、請求項1に記載の金属回収方法。
【請求項3】
前記吸着剤が、イオン透過膜と前記イオン透過膜によって保持された前記高分子とを含む、請求項1に記載の金属回収方法。
【請求項4】
前記(i)の工程ののちに、
(ii)前記金属が析出した前記第1の電極を前記吸着剤から離して、前記第1の電極の表面から前記金属を回収する工程をさらに含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の金属回収方法。
【請求項5】
前記(i)の工程は、
(i-a)前記イオンを含む溶液と前記吸着剤とを接触させる工程と、
(i-b)前記(i-a)の工程を経た前記吸着剤に接するように前記第1の電極が配置され且つ前記物質に接するように前記第2の電極が配置された状態で、前記第1の電極がカソードとなるように前記第1および第2の電極に電圧を印加することによって前記第1の電極の表面に前記金属を析出させる工程と、を含む、請求項1~4のいずれか1項の記載の金属回収方法。
【請求項6】
金属のイオンを吸着可能な高分子を含有する吸着剤と、第1および第2の電極とを含み、
前記第1の電極が前記吸着剤に接するように配置可能であり、
前記高分子が、スイゼンジノリから抽出される高分子と同じ構成単位を含む高分子である、金属回収装置。
【請求項7】
前記吸着剤が、前記高分子を含むゲルである、請求項6に記載の金属回収装置。
【請求項8】
前記吸着剤を含む物質であってイオンが移動可能な物質が配置された容器をさらに含み、
前記第2の電極が前記物質に接するように配置可能である、請求項6または7に記載の金属回収装置。
【請求項9】
前記イオンを含む溶液が流れる流路であって前記溶液が前記吸着剤に接触するように前記容器に接続された流路とをさらに含む、請求項6または7に記載の金属回収装置。
【請求項10】
前記第1の電極と第2の電極との間に直流電圧を印加するための電源をさらに含む、請求項6~9のいずれか1項に記載の金属回収装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、金属回収方法および金属回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レアメタルなどの金属は埋蔵量が限られているため、資源を有効にリサイクルすることが重要である。また、重金属などの有害金属については、工場などから排出される廃液から回収することが必要になる。
【0003】
溶液中の金属イオンを吸着する方法として、藻類を用いた方法が提案されている。たとえば、クロレラなどを用いて希土類元素のイオンを吸着する方法が提案されている(特許文献1)。また、淡水性藍藻類であるスイゼンジノリから抽出される高分子が金属イオンを吸着することが報告されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開平6-212309号公報
【特許文献2】国際公開WO2008/062574号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献には吸着された金属を回収する方法は開示されていない。そのため、金属を有効に再利用するためには、吸着された金属を回収する方法を見出すことが必要とされていた。
【0006】
このような状況に鑑み、本発明は、金属イオンを吸着した吸着剤から金属を回収するための新規な方法および装置を提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために検討した結果、本件発明者らは、サクランのゲルを用いることによって溶液に溶解している金属を効率よく回収できることを見出した。本発明は、この新たな知見に基づく発明である。
【0008】
すなわち、本発明の金属回収方法は、(i)イオンが移動可能な物質に接するように配置された第1および第2の電極の間に、前記第1の電極がカソードとなるように電圧を印加する工程を含み、前記物質は、金属のイオンを吸着した高分子を含有する吸着剤を含み、前記高分子が、スイゼンジノリから抽出される高分子と同じ構成単位を含む高分子であり、前記(i)の工程において、前記第1の電極は前記吸着剤に接するように配置されており、前記(i)の工程において、前記電圧を印加することによって前記第1の電極の表面に前記金属を析出させる。
【0009】
また、本発明の金属回収装置は、金属のイオンを吸着可能な高分子を含有する吸着剤と、第1および第2の電極とを含み、前記第1の電極が前記吸着剤に接するように配置可能であり、前記高分子が、スイゼンジノリから抽出される高分子と同じ構成単位を含む高分子である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、溶液に溶解している金属を簡単に回収できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】サクランの構造について一例の一部を示す図である。
【図2A】本発明の装置の一例を模式的に示す図である。
【図2B】図2Aに示した装置の動作状態を示す図である。
【図2C】本発明の装置の他の一例を模式的に示す図である。
【図3】本発明の装置のその他の一例を模式的に示す図である。
【図4】サクランのハイドロゲルの写真である。
【図5】サクランおよびサクランの架橋ゲルについて、金属イオンの吸着率を示すグラフである。
【図6】実施例で行った、金属の回収の実験を模式的に示す図である。
【図7】カソードのうち、(a)析出物が少ない部分および(b)析出物が多い部分のXPSスペクトルを示す図である。
【図8】サクランのセミIPNゲルについて、金属イオンの吸着量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、本発明は、以下の実施形態および実施例に限定されない。以下の説明では、特定の数値や特定の材料を例示する場合があるが、本発明の効果が得られる限り、他の数値や他の材料を適用してもよい。

【0013】
[金属回収方法]
金属を回収するための本発明の方法は、イオンが移動可能な物質に接するように配置された第1および第2の電極の間に、第1の電極がカソード(陰極)となるように電圧を印加する工程(i)を含む。イオンが移動可能な物質は、金属のイオンを吸着した高分子を含有する吸着剤を含む。工程(i)において、第1の電極は吸着剤に接するように配置されている。工程(i)における電圧印加によって、第1の電極の表面に上記金属が析出する。

【0014】
以下では、工程(i)で用いられる、イオンが移動可能な物質を「物質(I)」という場合があり、吸着剤中の高分子を「高分子(P)」という場合がある。また、以下では、本発明の方法で回収される金属を「金属(M)」という場合があり、金属(M)のイオン(陽イオン)を「金属イオン(MI)」という場合がある。

【0015】
なお、電極が物質(I)に接している状態の典型的な一例では、電極が物質(I)の中に配置されている。また、電極が吸着剤に接している状態の典型的な一例では、電極が吸着剤の中に配置されている。本発明の典型的な一例では、第1の電極が吸着剤の中に配置されており、第2の電極が物質(I)の中に配置されている。

【0016】
工程(i)の電圧印加によって、カソードとなる第1の電極の表面で金属イオン(MI)が還元されるため、第1の電極の表面に金属(M)が析出する。一方、アノードとなる第2の電極の表面では、水の電気分解による水素イオンおよび酸素ガスの発生や、および/または、陰イオンの吸着・酸化が生じる。

【0017】
本発明の方法によれば、吸着剤に吸着された金属イオン(MI)を回収できる。金属イオン(MI)を含む溶液に吸着剤を接触させて金属イオン(MI)を吸着剤に吸着させ、吸着された金属イオン(MI)を回収することによって、溶液中の金属イオン(MI)を回収することが可能である。

【0018】
本発明の方法において、金属イオン(MI)の種類によって吸着効率が変化する高分子(P)を用いることによって、特定の金属元素を選択的に回収することが可能である。たとえば、後述するサクランは、3価の金属イオンを選択的に吸着しやすい傾向を有し、特に希土類元素(たとえばネオジム、ジスプロシウム、ガドリニウム、セリウム、ユーロピウム)の3価の金属イオンを吸着しやすい傾向を有する。

【0019】
金属(M)に特に限定はない。金属(M)の例には、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、遷移金属元素(希土類元素を含む)、12族の金属元素、13族の金属元素、14族の金属元素が含まれる。これらの中でも希土類金属元素は埋蔵量が少ないため、回収して再利用することが特に重要である。

【0020】
物質(I)は、吸着剤のみからなるものであってもよいし、吸着剤と他の物質(たとえば電解液)とによって構成されてもよい。工程(i)において、第2の電極は吸着剤に接するように配置されていてもよいし、吸着剤以外の物質(I)に接するように配置されてもよい。ただし、第1の電極と第2の電極とは共に、イオンが移動可能なように連続している物質(I)に接するように配置される。別の観点では、第1の電極と第2の電極とは、それらの間で電気分解が可能となるように物質(I)に接している。そして、少なくとも第1の電極は吸着剤に接するように配置される。一例では、吸着剤は電解液に接するように配置され、第1の電極が吸着剤に接するように配置され、第2の電極が電解液に接するように配置される。

【0021】
通常、工程(i)では、第1の電極と第2の電極との間に直流電圧が印加される。印加される電圧の大きさに限定はなく、電極の種類や金属(M)の種類に応じて選択される。一例では、印加される電圧が1ボルト~50ボルトの範囲にあってもよい。

【0022】
[吸着剤]
吸着剤に含まれる高分子(P)は、金属イオン(MI)を吸着可能な官能基を含む。高分子(P)は、第1の官能基と、第1の官能基よりも水分子を吸着しやすく且つ第1の官能基よりも金属イオン(MI)を吸着しにくい第2の官能基を含んでもよい。たとえば、高分子(P)は、水分子よりも金属イオン(MI)を吸着しやすい第1の官能基と、金属イオン(MI)よりも水分子を吸着しやすい第2の官能基とを含んでもよい。ここで、水分子を吸着することには、水分子を含むオキソニウムイオン(H3+)を吸着することも含まれる。金属(M)の種類にもよるが、第1の官能基の例にはカルボキシル基が含まれ、第2の官能基の例には硫酸基やスルホン酸基が含まれる。第1の官能基と第2の官能基とを含む高分子(P)を用いた場合、第1の官能基が金属イオン(MI)を吸着し、第2の官能基が水を吸着する。そのため、金属イオン(MI)を吸着しても高分子(P)の膨潤状態が維持される。すなわち、高分子(P)が金属イオン(MI)を吸着しても、吸着剤中で電気分解が可能な状態が維持される。

【0023】
高分子(P)は、後述する硫酸化ムラミン酸を構成単位として含む高分子(たとえば多糖類)であってもよい。また、高分子(P)は、硫酸化ムラミン酸と、後述するウロン酸とを含む高分子(たとえば多糖類)であってもよい。これらの割合の一例は、後述するサクランにおける割合の一例と同じである。

【0024】
本発明の効果が得られる限り高分子(P)の分子量に限定はないが、一例では、高分子(P)の重量平均分子量は1万~2000万の範囲にあってもよい。

【0025】
高分子(P)の好ましい一例は、スイゼンジノリ(Aphanothece sacrum)から抽出される高分子と同じ構成単位を含む高分子である。たとえば、高分子(P)は、6-デオキシ糖(および/またはペントース)、ウロン酸、ヘキサピラノース、硫酸化ムラミン酸といった単糖を構成単位として含む多糖類であってもよい。そのような高分子(P)の一例は、スイゼンジノリから抽出される高分子(以下、「サクラン」という場合がある)である。スイゼンジノリからサクランを抽出する方法の一例については、国際公開WO2008/062574号パンフレットに記載されている。

【0026】
一例では、80℃の0.1N-NaOH水溶液にスイゼンジノリを入れて数時間攪拌することによってスイゼンジノリからサクランを抽出できる。また、他の一例では、スイゼンジノリの水分散液をオートクレーブ中において135℃で30分間加熱することによってスイゼンジノリからサクランを抽出できる。抽出されたサクランは、遠心分離、ろ過、アルコール洗浄などによって精製してもよい。また、スイゼンジノリからサクランを抽出する前に、スイゼンジノリを凍結したのち融解させ、その後に色素を除去する工程を行ってもよい。

【0027】
サクランは、6-デオキシ糖(および/またはペントース)、ウロン酸、ヘキサピラノース、硫酸化ムラミン酸といった単糖を構成単位として含む多糖類である。それらが連結されている状態の一例を図1に示す。なお、図1に示す構成単位(単糖)の配列は一例であり、構成単位の配列は図1の配列に限定されない。

【0028】
サクランを構成する単糖の割合および平均分子量は、スイゼンジノリの採取時期や採取場所によって変化する。一例のサクランでは、全構成単位に占める硫酸化ムラミン酸の割合が1モル%~30モル%の範囲にあり、全構成単位に占めるウロン酸の割合が1モル%~50モル%の範囲にある。また、一例のサクランの重量平均分子量は、1万~2000万の範囲にある。

【0029】
工程(i)で用いられる吸着剤は、高分子(P)を含むゲル(ハイドロゲル:親水性ゲル)であってもよい。そのようなゲルの例には、高分子(P)を架橋することによって得られるゲルや、他のゲル中に高分子(P)を分散させることによって得られるゲルが含まれる。以下、サクランを用いたゲルの作製方法について、2つの例を説明する。

【0030】
ゲルを作製する方法の第1の例では、サクランに含まれる官能基(たとえばカルボキシル基や水酸基)同士を架橋することによってゲルを作製する。たとえば、官能基同士を架橋する化合物をサクランの水溶液に添加することによってゲルを作製できる。カルボキシル基同士を架橋する化合物の例には、ジアミン(たとえばL-(D-)リジン、カダベリン、スペルミン、アジポイルジヒドラジド)、ジエポキシ化合物(たとえばポリエチレングリコールジグリシジルエーテル)が含まれる。また、水酸基同士を架橋する化合物の例には、ジビニルスルホンなどのジビニル化合物が含まれる。

【0031】
ゲルを作製する方法の第2の例では、サクラン以外の材料で形成されたゲルの内部にサクランを配置させる。第2の方法で得られるゲルの例には、セミ相互侵入高分子網目(semi-IPN)構造を有するゲルが含まれる。サクランが配置されるゲルの例には、ポリビニルアルコールを架橋することによって得られるハイドロゲルが含まれる。

【0032】
また、吸着剤は、担体に高分子(P)を担持させることによって得られる吸着剤であってもよい。また、吸着剤は、担体と高分子(P)の官能基の一部とを反応させることによって得られる吸着剤であってもよい。担体の例には、微粒子(たとえばシリカゲルやポリスチレン系微粒子、アクリル系微粒子、メラミン樹脂系微粒子)が挙げられる。高分子(P)がカルボキシル基を含有する高分子(たとえばサクラン)である場合、カルボキシル基と反応する基(たとえばアミノ基)を表面に備える担体を用いてもよい。

【0033】
工程(i)で用いられる吸着剤は、イオン透過膜とイオン透過膜によって保持された高分子(P)とを含んでもよい。イオン透過膜は、金属イオン(MI)を透過させる一方で高分子(P)を透過させない膜である。イオン透過膜には、たとえば、イオンは透過させるが分子量が500以上の高分子を透過させない膜を用いることができる。そのようなイオン透過膜の例には、セロハン膜が含まれる。また、イオン透過膜として、精密ろ過膜や限外ろ過膜を用いることもできる。これらのろ過膜の例には、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリオレフィン、ポリビニルアルコールなどの有機系膜や、シリカ、ゼオライト、アルミナ、カーボンなどの無機系膜が含まれる。これらの膜は、対象、特性、寿命、コストなどの条件に基づいて選定すればよい。

【0034】
イオン透過膜を用いる吸着剤の一例は、袋状にしたイオン透過膜の内部に高分子(P)を配置することによって得られる。イオン透過膜の内部に配置される高分子(P)は、ゲルまたはゲル状であってもよい。

【0035】
別の観点では、本発明で用いられる吸着剤は、電解液中に入れたときに高分子(P)が電解液に拡散しないことを特徴とするものであってもよく、たとえば固化された吸着剤であってもよい。さらに別の観点では、本発明の吸着剤は、電解液中に入れたときに電解液に拡散しない膨潤体であってもよい。

【0036】
[第1および第2の電極]
本発明の効果が得られる限り、第1および第2の電極に特に限定はない。第1および第2の電極には、導電性を有する材料を用いて形成され且つ電圧印加時に溶出しない電極を適用できる。導電性を有する材料の例には、金属や炭素材料(たとえばグラファイトや活性炭)が含まれる。第1の電極と第2の電極とは同じでもよいし異なってもよい。金属(M)が析出する第1の電極には炭素材料からなる電極を用いてもよく、第2の電極には水の電気分解が生じやすい電極(たとえば白金電極や表面が白金でコートされた金属電極)を用いてもよい。本発明の方法では、複数の第1の電極を用いてもよいし、複数の第2の電極を用いてもよい。また、第1および第2の電極の形状は、装置の設計に応じて選択でき、棒状、平板状、円筒状、または網目状などであってもよい。本発明の方法では、平板状の第1および第2の電極を、それらが対向するように交互に配置してもよい。

【0037】
本発明の方法の一例では、工程(i)ののちに、金属(M)が析出した第1の電極を吸着剤(P)から離して、第1の電極の表面から金属(M)を回収する工程(ii)をさらに含んでもよい。たとえば、析出した金属(M)を物理的に第1の電極からこそぎ落とすことによって金属(M)を回収してもよい。また、第1の電極の表面に析出した金属(M)を、電解精錬などの方法によって回収してもよい。

【0038】
本発明の方法の一例では、工程(i)が以下の工程(i-a)および工程(i-b)を含んでもよい。工程(i-a)では、金属イオン(MI)を含む溶液(以下、「溶液(S)」という場合がある)と、高分子(P)を含む吸着剤とを接触させる。工程(i-a)によって、金属イオン(MI)を高分子(P)に吸着させる。通常、溶液(S)中における金属イオン(MI)の濃度よりも吸着剤中における金属イオン(MI)の濃度の方が高くなる。そのため、工程(i-a)は、溶液(S)と吸着剤とを接触させることによって金属イオン(MI)を濃縮する工程であると考えることが可能である。すなわち、工程(i-a)によって、単位体積当たりに存在する金属イオン(MI)の量を増加させることができる。

【0039】
工程(i-b)では、工程(i-a)を経た吸着剤に接するように第1の電極が配置され且つ物質(I)に接するように第2の電極が配置された状態で、第1の電極がカソードとなるように第1および第2の電極に電圧を印加する。この電圧印加によって、第1の電極の表面に金属(M)を析出させる。工程(i-b)は、吸着剤を溶液(S)と接触させたまま行ってもよいし、吸着剤を溶液(S)から離して行ってもよい。

【0040】
吸着剤はカートリッジ式にしてもよく、たとえば、吸着剤を充填したカラムを用いてもよい。カートリッジに含まれる吸着剤中の高分子(P)が金属イオン(MI)をある程度吸着した時点で新しいカートリッジに取り替えることによって、金属(M)の回収を効率よく行うことができる。取り替えられたカートリッジの吸着剤に対して工程(i)を行うことによって、第1の電極の表面に金属(M)を析出させることができる。なお、それぞれのカートリッジは電極を備えてもよいし、備えなくてもよい。

【0041】
本発明の一例では、工程(i)において、金属イオン(MI)を含む溶液(S)に吸着剤が接触していてもよい。工程(i)において、高分子(P)に吸着されている金属イオンが還元されると、溶液(S)中の金属イオン(MI)が吸着剤中に拡散して高分子(P)に吸着される。高分子(P)に吸着された金属イオン(MI)は電圧印加によって還元される。このようにして、溶液(S)中の金属イオン(MI)が第1の電極の表面に析出する。

【0042】
本発明の方法の一例では、工程(i)において、第1および第2の電極に加えて第3および第4の電極を吸着剤に接するように配置してもよい。第3および第4の電極は、それらを結ぶ線が第1の電極と第2の電極とを結ぶ線と交差するように配置される。一例では、第3の電極と第4の電極とを結ぶ線と、第1の電極と第2の電極とを結ぶ線とが、それぞれの中央近傍で直交するように電極が配置される。工程(i)において、第3の電極と第4の電極との間に交流電圧を印加してもよい。第3の電極と第4の電極との間に交流電圧を印加することによって、原子量が相対的に大きい金属元素(移動しにくい金属元素)のイオンが選択的に第3の電極と第4の電極との中間付近に集まる。このようにして集まった金属元素のイオンを第1の電極に析出させることによって、原子量が相対的に大きい金属元素を選択的に回収できる。たとえば、希土類元素や重金属を選択的に回収することが可能となる。

【0043】
[金属回収装置]
本発明の金属回収装置は、溶液(S)中に存在している金属イオン(MI)を回収する装置である。この金属回収装置によれば、本発明の金属回収方法を容易に実施できる。なお、本発明の金属回収方法について説明した事項は本発明の金属回収装置に適用でき、本発明の金属回収装置について説明した事項は本発明の金属回収方法に適用できる。

【0044】
本発明の金属回収装置は、金属のイオンを吸着可能な高分子(P)を含有する吸着剤と、第1および第2の電極とを含む。そして、第1の電極は、吸着剤に接するように配置可能である。吸着剤、高分子(P)、第1および第2の電極については上述したため、重複する説明を省略する。吸着剤は保持部材で保持されていてもよい。本発明の効果が得られる限り保持部材に限定はなく、貫通孔が形成された樹脂製の容器や、樹脂からなるメッシュ状の保持部材を用いてもよい。

【0045】
本発明の装置は、物質(I)を保持するための容器を必ずしも必要としない。たとえば、金属イオン(MI)を含む溶液(S)中に、第1の電極が配置された吸着剤と第2の電極とを浸漬して電圧を印加することによって、溶液(S)中の金属イオン(MI)を回収することが可能である。

【0046】
一方、本発明の装置は、吸着剤を含み且つイオンが移動可能な物質(I)が配置された容器をさらに含んでもよい。第2の電極は、物質(I)に接するように配置可能である。この場合、本発明の装置は、金属イオン(MI)を含む溶液(S)が流れる流路であって、溶液(S)が吸着剤に接触するように上記容器に接続された流路を含んでもよい。この構成によれば、流路を流れる溶液(S)中の金属イオンを連続的に回収できる。

【0047】
本発明の装置は、第1の電極と第2の電極との間に直流電圧を印加するための電源を含んでもよい。電源は、コンセントからの交流電力を直流電力に変換するAC-DCコンバータであってもよいし、その他の電源であってもよい。

【0048】
本発明の装置は、電圧の印加を制御するためのコントローラを備えてもよい。そのようなコントローラの一例は、上述した工程を行うためのプログラムが記録されたメモリと、そのプログラムを実行して装置を制御するための演算処理装置とを備える。

【0049】
また、本発明の装置は、交流電圧が印加される第3および第4の電極を備えてもよい。その場合、本発明の装置は、交流電圧を印加するための電源を備えてもよい。

【0050】
本発明の装置では、吸着剤が配置される容器が取り替え可能なカートリッジ式になっていてもよい。別の観点では、本発明は、吸着剤を含むカートリッジと、そのカートリッジ内の高分子(P)が吸着している金属イオン(MI)を回収するための回収装置とを用いた金属回収システムに関する。回収装置は、上述した第1および第2の電極と電源とを含む。

【0051】
以下では、図面を参照しながら本発明の方法および装置の一例について説明する。以下の説明では、同様の部分について同一の符号を付して重複する説明を省略する場合がある。なお、以下の図面では、すべての価数の金属イオン(MI)を「M+」と表し、すべての価数の陰イオンを(A-)と表す。

【0052】
[実施形態1]
実施形態1の装置100を図2Aに示す。なお、図2Aおよび図2Bのハッチングは省略する。装置100は、容器10、サクランのゲル(吸着剤)11、複数の第1の電極21、複数の第2の電極22、および電源23を備える。ゲル11は容器10内に配置されている。第1の電極21および第2の電極22は、ゲル11内に配置されている。第1の電極21および第2の電極22は、ゲル11内から取り出し可能である。第1の電極21と第2の電極22とは、電源23に接続されている。サクランのゲル11は金属イオンを吸着している。

【0053】
第1の電極21と第2の電極22との間には、電源23によって、第1の電極21がカソード(陰極)となるように電圧が印加される。その結果、図2Bに示すように、サクランに吸着されている金属イオン(M+)は還元されて金属(M)となって第1の電極21の表面に析出する。一方、アノード(陽極)である第2の電極22では、酸素ガスと水素イオンとが発生する。金属(M)が析出した第1の電極21は、ゲル11から取り出されて金属(M)が回収される。

【0054】
金属(M)が回収されたゲル11は、金属イオンが溶解している溶液に接触させることによって、金属イオンを再び吸着することが可能である。金属イオンの吸着と電圧印加による金属(M)の回収とを交互に繰り返すことによって、より多くの金属(M)を回収することが可能である。

【0055】
[実施形態2]
実施形態2では、連続的に金属イオンを回収する方法および装置の一例について説明する。実施形態2の装置100aを図2Cに示す。

【0056】
図2Cの装置100aは、容器20、サクランのゲル11、流路12、複数の第1の電極21、複数の第2の電極22、および電源(図示せず)を備える。容器20の上部は開口しており、底面には複数の貫通孔(図示せず)が形成されている。ゲル11は容器20内に保持される。流路12は、槽12aと、槽12aに接続された流入路12bと排出路12cとを含む。金属イオン(MI)が溶解している溶液25は、流入路12bから槽12aに送られ、その後、排出路12cから排出される。

【0057】
容器20の底面は槽12aと接している。槽12aを流れる溶液25は、容器20の底面に形成された貫通孔を介して容器20内に浸透可能である。第1の電極21および第2の電極22は、ゲル11内に配置されている。第1の電極21は、ゲル11内から取り出し可能である。第1の電極21および第2の電極22は、電源に接続されている。

【0058】
装置100aを用いた金属回収方法について説明する。金属イオン(MI)を含む溶液25は、流入路12bから槽12aに送られる。溶液25の一部が容器20内に浸透することによって、および、槽12aに存在する溶液25中の金属イオンが容器20内のゲル11中に拡散することによって、金属イオン(MI)がゲル11に吸着される。その結果、金属イオン(MI)は、溶液25中よりも濃縮されてゲル11に保持される。

【0059】
第1の電極21と第2の電極22との間には、電源によって、第1の電極21がカソードとなるように直流電圧が印加される。その結果、図2Bと同様に、金属(M)が第1の電極21の表面に析出する。複数の第1の電極21は、順番にゲル11から引き抜かれ、その表面に析出した金属(M)が回収される。この構成によれば、溶液25から連続的に金属(M)を回収することが可能である。金属イオン(MI)の濃度が低下した溶液25は、排出路12cから排出される。排出路12cから排出された溶液25は、再度、流入路12bから槽12aに通してもよい。この構成によれば、溶液25からより多くの金属(M)を回収できる。

【0060】
[実施形態3]
実施形態3では、イオン透過膜を用いた方法および装置について説明する。実施形態3の装置を図3に示す。

【0061】
図3の装置100bは、容器10、イオン透過膜31、サクランを含む吸着剤32、電解液33、第1の電極21、第2の電極22、および電源23を備える。容器10内には電解液33が配置され、電解液33の中にはイオン透過膜31が配置され、イオン透過膜31の中には吸着剤32が配置される。吸着剤32および電解液33は、イオンが移動可能な物質(I)を構成する。第1の電極21は吸着剤32の中に配置され、第2の電極32は電解液33の中に配置される。吸着剤32が金属イオン(MI)を吸着している状態で、第1の電極21がカソードとなるように第1の電極21と第2の電極22との間に電圧を印加することによって、金属(M)が第1の電極の表面に析出する。
【実施例】
【0062】
以下では、実施例によって本発明の例を説明する。
【実施例】
【0063】
[サクランの抽出]
スイゼンジノリからサクランを抽出した一例について説明する。まず、スイゼンジノリを凍結させた後に融解させた。この操作によって、スイゼンジノリの細胞から水溶性の色素を溶出させ、その色素を水洗によって除去した。次に、アセトンを用いてスイゼンジノリを洗浄することによって、脂溶性の色素(クロロフィルなど)を除去した。
【実施例】
【0064】
次に、洗浄後のスイゼンジノリを、80℃の0.1N-NaOH水溶液中に入れて5時間攪拌した。これによって、スイゼンジノリに含まれる多糖類(サクラン)を溶出させた。次に、そのNaOH水溶液をガーゼでろ過することによって不純物を除去した。ろ過されたNaOH水溶液を、HClを用いてpHが約7~8になるまで中和した。
【実施例】
【0065】
次に、中和された水溶液を、アセトンと水との混合溶媒(体積比でアセトン:水=70:30)に加え、攪拌することによってサクランを回収・精製した。このサクランを水に溶解させて水溶液を調製し、その水溶液をアセトンに加えて脱水した。このようにして、繊維化したサクランが得られた。収率は、対乾燥原料比で50~80重量%であった。
【実施例】
【0066】
[サクランの構造解析]
上記のようにして得られたサクランについて、紫外-可視分光スペクトル測定、光電子分光分析(XPS)、赤外吸収スペクトル測定、FT-ICR質量分析(FT-ICR-MS)、およびガスクロマトグラフ質量分析(GS-MS)といった方法で分析を行った。その結果、(1)重量平均分子量が1600万程度であること、および、(2)構成単位として複数種の単糖を含むこと、が明らかになった。サクランを構成する単糖には、6-デオキシ糖(および/またはペントース)、ウロン酸、ヘキサピラノース、硫酸化ムラミン酸が含まれる。より具体的には、サクランを多段階で加水分解することによって得られた糖残基は、グルコース、マンノース、ガラクトース、フコース、グルクロン酸、ガラクツロン酸、ラムノース、キシロース、ガラクトサミン、N-アセチルムラミン酸、およびアラビノースであった。サクランの中において、これら糖残基の一部には、硫酸基、カルボキシル基、アミノ基といった官能基が結合している。
【実施例】
【0067】
サクランを構成する単糖の割合については、スイゼンジノリの産地や採取する季節によって変動がある。一例のサクランは、全糖残基の22モル%にカルボキシル基が結合しており、全糖残基の10モル%に硫酸基が結合している。
【実施例】
【0068】
サクランはカルボキシル基と硫酸基とを含み、金属イオンはカルボキシル基に優先的に吸着されると考えられる。親水基としてカルボキシル基のみを含む高分子の場合、カルボキシル基が金属イオンを吸着すると水和状態を維持できなくなる場合がある。しかし、サクランはカルボキシル基に加えて硫酸基を含むため、カルボキシル基が金属イオンを吸着しても、高水和状態を維持する。そのため、サクランのハイドロゲルでは、金属イオンを吸着した状態でも電気分解が可能である。
【実施例】
【0069】
[サクランのハイドロゲル]
サクランのカルボキシル基同士をジアミンで架橋することによって、ハイドロゲルを作製した。まず、サクランの水溶液(濃度:1重量%)を作製した。次に、サクランに対して10モル%となるL-リジンをサクランの水溶液に添加した。次に、サクランの水溶液を遠心分離器にかけることによって脱気を行った。
【実施例】
【0070】
次に、サクランの重量に対して3倍の重量の水溶性カルボジイミドをサクランの水溶液に添加した。次に、サクランの水溶液を遠心分離器にかけることによって脱気を行った。その後、4℃で3日間静置することによって反応を進行させた。次に、得られた反応生成物を、蒸留水中に4日間浸漬した。このようにして、サクランを用いたハイドロゲルを得た。得られたハイドロゲルの写真を、図4に示す。
【実施例】
【0071】
サクランのハイドロゲルについて、金属イオンの吸着性を調べる実験を行った。まず、濃度が異なる5種類の金属イオン水溶液を調製した。金属イオンは、ガドリニウムイオン(Gd3+)またはインジウムイオン(In3+)とした。金属イオン水溶液の濃度は、10-3M(mol/L)、2.5×10-3M、5.0×10-3M、または10-2Mとした。
【実施例】
【0072】
次に、10mlの金属イオン水溶液にサクランのハイドロゲル(体積:1cm3)を浸漬し、金属イオンの吸着が平衡に達するまで(具体的には5日間)静置した。その後、金属イオン水溶液の上澄み液を採取して、ICP発光分析法によって、上澄み液の金属イオン濃度を測定した。その測定結果から、サクランのハイドロゲルに吸着された金属イオンの量を算出した。また、比較対象として、ゲル化していないサクランを、サクランのハイドロゲルに含まれるサクランと同じ量だけ金属イオン水溶液に浸漬し、サクランに吸着された金属イオンの量を算出した。測定結果を図5に示す。
【実施例】
【0073】
図5の縦軸の吸着率は、サクランに含まれる硫酸基の数に対する吸着された金属イオンの数を示す。硫酸基と金属イオンとが完全に結合していると仮定すると、金属イオンは3価であるため、3個の硫酸基に1個の金属イオンが吸着されることになる。その場合、吸着率は0.33となる。しかし、ハイドロゲルでは、金属イオン濃度が高い領域において吸着率が0.33よりもずっと高くなった。また、ゲル化していないサクランに比べてゲル化したサクランは、金属イオンの吸着率が非常に高かった。ガドリニウムイオンとインジウムイオンとを比較すると、希土類元素であるガドリニウムのイオンの方が吸着率が高い傾向が見られた。これらの結果から、ゲル化したサクランを用いることによって、高い効率で金属イオン(特に希土類元素のイオン)を回収可能なことが分かった。
【実施例】
【0074】
[金属イオンの回収]
上述した方法によってサクランのハイドロゲルを作製した。このハイドロゲル(1cm3)を、ネオジムイオン(Nd3+)の水溶液(濃度:10-2M)10mlに、室温で5日間浸漬した。このようにして、ネオジムイオンを吸着したハイドロゲルを得た。
【実施例】
【0075】
次に、図6の装置を用いてハイドロゲルからネオジムイオンを回収した。図6の装置は、容器20、電源23、炭素棒61(第1の電極)、白金電極62(第2の電極)、および筒63(保持部材)を含む。容器20の内部には、純水64が配置されている。筒63の下部と容器20との間には隙間があるため、筒63の内部のハイドロゲルと筒63の外部の純水64との間でイオンが移動可能である。
【実施例】
【0076】
炭素棒61と白金電極62との間に、炭素棒61がカソード(陰極)となるように10ボルトの電圧を印加した。そして、室温で1週間、10ボルトの電圧印加を続けた。その結果、炭素棒61の表面に白い物質が析出した。また、その白い物質が析出するのに伴って、ハイドロゲルが膨潤した。
【実施例】
【0077】
析出物を分析するために、炭素棒のうち、白い物質が少ない部分と白い物質が多い部分とについて、光電子分光分析(XPS)を行った。測定結果を図7(a)および図7(b)に示す。図7(a)は白い物質が少ない部分の結果であり、図7(b)は白い物質が多い部分の結果である。図7(a)および(b)の結果から、白い物質はネオジムであることがわかった。なお、ネオジムが析出するのに伴ってハイドロゲルが膨潤したのは、ネオジムイオンを吸着していたカルボキシル基が、ネオジムイオンを放出するのに伴って水和したためであると考えられる。
【実施例】
【0078】
[サクランのセミIPNゲル]
他の物質からなるハイドロゲルの内部にサクランを配置したセミIPNゲルを作製した。まず、ポリビニルアルコールの5重量%水溶液10mlと、サクランの1重量%水溶液10mlとを混合した。得られた水溶液に、グルタルアルデヒド(1,5-ペンタンジア-ル)を添加した。添加したグルタルアルデヒドの量はビニルアルコール単位の1モル%とした。その後、水溶液に1N塩酸を加えることによって水溶液のpHを2~3程度にし、24時間以上放置した。このようにして、サクランのハイドロゲル(セミIPNゲル)を得た。
【実施例】
【0079】
得られたハイドロゲルを、濃度が異なる金属イオンの水溶液に浸漬し、金属イオンの吸着量を調べた。金属イオンには、ネオジムイオン(Nd3+)およびインジウムイオン(In3+)を用いた。測定結果を図8に示す。
【実施例】
【0080】
図8の縦軸は、マイナス電荷1モルあたりに吸着された金属イオンのモル数を示している。カルボキシル基同士を架橋させることによって得られたハイドロゲルに比べて、セミIPNゲルの方が吸着効率が高かった。また、インジウムイオンに比べて、希土類元素のイオンであるネオジムイオンの方が吸着効率が高かった。カルボキシル基同士を架橋させることによって得られるハイドロゲルと同様に、セミIPNゲルでも、本発明の方法および装置で金属イオンを回収することが可能である。なお、セミIPNゲルの方が金属イオンの吸着効率が高かった理由は明確ではないが、セミIPNゲルの方がカルボキシル基の量が多いためである可能性がある。
【実施例】
【0081】
以上、本発明の実施の形態について例を挙げて説明したが、本発明は、上記実施の形態に限定されず本発明の技術的思想に基づき他の実施形態に適用できる。
【実施例】
【0082】
たとえば、上記の例では電気分解によって金属を還元する方法について説明したが、金属イオン(MI)が吸着された高分子(P)を含有する吸着剤に還元剤を加えることによって金属イオン(MI)を還元してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明は、金属イオンを回収する方法および装置に利用でき、たとえば溶液中に存在する金属イオンを回収する方法および装置に利用できる。別の観点では、本発明は、溶液中に存在する金属イオンの濃度を減少させる方法および装置としても利用できる。本発明によれば、特定の金属を選択的に回収することも可能である。
【符号の説明】
【0084】
10、20 容器
11 ゲル(吸着剤)
12 流路
21 第1の電極
22 第2の電極
23 電源
25 溶液
31 イオン透過膜
32 吸着剤
33 電解液
61 炭素棒(第1の電極)
62 白金電極(第2の電極)
63 筒
64 純水
100、100a、100b 装置(金属回収装置)
図面
【図1】
0
【図2A】
1
【図2B】
2
【図2C】
3
【図3】
4
【図4】
5
【図5】
6
【図6】
7
【図7】
8
【図8】
9