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明細書 :マンナン類含有食材のペースト化方法及びマンナン類含有食材のペースト化剤

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B1)
特許番号 特許第4931094号 (P4931094)
登録日 平成24年2月24日(2012.2.24)
発行日 平成24年5月16日(2012.5.16)
発明の名称または考案の名称 マンナン類含有食材のペースト化方法及びマンナン類含有食材のペースト化剤
国際特許分類 A23L   1/212       (2006.01)
C12P  19/14        (2006.01)
FI A23L 1/212 A
C12P 19/14 Z
請求項の数または発明の数 7
全頁数 10
出願番号 特願2010-255752 (P2010-255752)
出願日 平成22年11月16日(2010.11.16)
審査請求日 平成23年10月7日(2011.10.7)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
発明者または考案者 【氏名】天野良彦
【氏名】水野正浩
【氏名】義元孝司
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】100088306、【弁理士】、【氏名又は名称】小宮 良雄
【識別番号】100126343、【弁理士】、【氏名又は名称】大西 浩之
審査官 【審査官】吉森 晃
参考文献・文献 特開昭61-162150(JP,A)
再公表特許第2005/099481(JP,A1)
特開2007-185113(JP,A)
特公昭39-010221(JP,B1)
特公昭39-007972(JP,B1)
特開平07-322831(JP,A)
特開平04-117244(JP,A)
特開昭59-166095(JP,A)
特開2008-271826(JP,A)
日本食品科学工学会第58回大会講演集,2011年,p.129, 3Hp3
調査した分野 A23L 1/212-1/218
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
AGRICOLA/FSTA/Foodline/Foods Adlibra(DIALOG)
要約 【課題】従来、簡単に軟化できず農業廃棄物として処理されていた、マンナン類を含有する里芋の親芋を簡単にペースト化できるマンナン類含有食材のペースト化方法を提供する。
【解決手段】里芋の親芋等のマンナン類含有の食材を澱粉の糊化温度以上に加熱を施しつつ、酵素剤としてのアクレモニウム属菌類由来のアクレモニウムセルラーゼ製剤を添加し、前記食材をペースト化することを特徴とする。
【選択図】 なし
特許請求の範囲 【請求項1】
マンナン類含有の食材としての里芋にアクレモニウムセルラーゼ含有の酵素剤を添加し、前記里芋をペースト化することを特徴とするマンナン類含有食材のペースト化方法。
【請求項2】
前記里芋をペースト化する際に、前記里芋中の澱粉の糊化温度以上で且つ120℃未満の温度で加熱処理することを特徴とする請求項1に記載のマンナン類含有食材のペースト化方法。
【請求項3】
前記酵素剤が、アクレモニウム属菌類由来のアクレモニウムセルラーゼ製剤であることを特徴とする請求項1に記載のマンナン類含有食材のペースト化方法。
【請求項4】
前記里芋をペースト化する際に、前記里芋に機械的力を加えることを特徴とする請求項1に記載のマンナン類含有食材のペースト化方法。
【請求項5】
前記里芋が、その親芋であることを特徴とする請求項1に記載のマンナン類含有食材のペースト化方法。
【請求項6】
マンナン類含有の食材としての里芋をペースト化するペースト化剤に、アクレモニウムセルラーゼ含有の酵素剤が含有されていることを特徴とするマンナン類含有食材のペースト化剤。
【請求項7】
前記酵素剤が、アクレモニウム属菌類由来のアクレモニウムセルラーゼ製剤であることを特徴とする請求項6に記載のマンナン類含有食材のペースト化剤。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、マンナン類含有食材に酵素剤を添加してペースト化するマンナン類含有食材のペースト化方法及びマンナン類含有食材のペースト化剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
マンナン類含有食材として代表的な里芋は健康食品として知られており、里芋のペーストを種々の食品中に配合することも知られている。例えば、下記特許文献1には、里芋のペーストを白餡と混合した餡の製造方法が記載されている。この製造方法では、里芋等のペーストと白餡とを加熱混合する際に、里芋のペースト中の澱粉が糊化して増粘することを防止すべく、澱粉分解酵素を添加することが記載されている。また、下記特許文献2には、里芋等をペースト状とした澱粉貯蔵植物加工物に、澱粉分解酵素を添加して液状化した後、噴霧乾燥して粉末状とする澱粉貯蔵植物粉末の製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】特開平7-313088号公報
【特許文献2】特開2010-4866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前掲の特許文献では、いずれも里芋等をペースト化することが必要であるが、里芋等を機械的にペースト化するには、里芋等を生又は加熱後、細かく砕く、すりつぶす、或いは裏ごしにかける等の煩雑な手間が必要である。しかも、本発明者等の検討によれば、里芋等の澱粉含有の食材では、澱粉の糊化温度以上に加熱しつつ攪拌等の機械的力を加えると、急激に粘度が上昇して団子状となって、その取り扱いが困難となる。
【0005】
本発明は前記課題を解決するためになされたもので、マンナン類を含有する食材としての里芋を簡単にペースト化できるマンナン類含有食材のペースト化方法及びマンナン類含有食材のペースト化剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の目的を達成するためになされた、特許請求の範囲の請求項1に記載されたマンナン類含有食材のペースト化方法は、マンナン類含有の食材としての里芋にアクレモニウムセルラーゼ含有の酵素剤を添加し、前記里芋をペースト化することを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載されたマンナン類含有食材のペースト化方法は、請求項1に記載されたものであって、前記里芋をペースト化する際に、前記里芋中の澱粉の糊化温度以上で且つ120℃未満の温度で加熱処理することを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載されたマンナン類含有食材のペースト化方法は、請求項1に記載されたものであって、前記酵素剤が、アクレモニウム属菌類由来のアクレモニウムセルラーゼ製剤であることを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載されたマンナン類含有食材のペースト化方法は、請求項1に記載されたものであって、前記里芋をペースト化する際に、前記里芋に機械的力を加えることを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載されたマンナン類含有食材のペースト化方法は、請求項1に記載されたものであって、前記里芋が、その親芋であることを特徴とする。
【0011】
前記の目的を達成するためになされた、特許請求の範囲の請求項6に記載されたマンナン類含有食材のペースト化剤は、マンナン類含有の食材としての里芋をペースト化するペースト化剤に、アクレモニウムセルラーゼ含有の酵素剤が含有されていることを特徴とする。
【0012】
請求項7に記載されたマンナン類含有食材のペースト化剤は、請求項6に記載されたものであって、前記酵素剤がアクレモニウム属菌類由来のアクレモニウムセルラーゼ製剤であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、マンナン類含有食材としての里芋を煩雑な手間をかけずに簡単にペースト化できる。しかも、里芋の組織(細胞壁)を充分に破壊でき、得られたペーストの食感を良好にできる。更に、アクレモニウムセルラーゼ含有の酵素剤との反応時間を調整することによって種々の粘度のペーストを簡単に得ることができる。里芋の親芋を用いた場合にも、簡単にペースト化でき、里芋の親芋の有効利用を図ることができる。里芋の親芋は、小芋よりも硬く、簡単に軟化できず、従来、殆どが農業廃棄物として廃棄処分されていたものを、食料源とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】里芋の親芋にアクレモニウムセルラーゼ含有の酵素剤を添加した浸漬液に所定時間浸漬した親芋の形状等を説明する写真である。
【図2】里芋の親芋にアクレモニウムセルラーゼ含有の酵素剤を添加した浸漬液に浸漬した親芋の固さの経時変化を説明するグラフである。
【図3】里芋の親芋にアクレモニウムセルラーゼ含有の酵素剤を添加した浸漬液に所定時間浸漬し超音波処理を施した後、篩を通過した粒子の粒度分布を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの形態に限定されるものではない。

【0016】
本発明のマンナン類含有食材のペースト化方法は、マンナン類含有の植物性食材に、植物繊維を分解する酵素としてセルロース加水分解酵素であるアクレモニウムセルラーゼ含有の酵素剤の水懸濁液を添加し、前記食材をペースト化するというものである。このマンナン類含有食材のペースト化方法によれば、マンナン類含有の食材として、従来、硬くて簡単に軟化できなかった里芋の親芋を用いても、親芋に加熱・攪拌を施しつつアクレモニウムセルラーゼ含有の酵素剤を添加することによって、親芋を簡単にペースト化できる。

【0017】
マンナン類含有の食材としては、里芋、特に里芋の親芋を好適に用いることができる。里芋の親芋は、小芋よりも硬く、簡単に軟化できず、従来、殆ど農業廃棄物として廃棄処分されていたものである。このため、里芋の親芋を食材として利用することによって、親芋の有効利用を図ることができる。また、マンナン類含有の食材としては、マンナン類含有の加工食品、例えばマンナン類含有のゼリーにも適用し、ゼリーの粘度を調整することも可能である。

【0018】
マンナン類含有の食材としての里芋は、水洗して付着している土等を洗い流した後、表皮を剥いてそのまま、或いは粗粉砕してペースト化剤を添加する。里芋を粗粉砕することによって、そのペースト化速度を速くできる。その際に、攪拌等の機械力を食材に加えることによって、更にペースト化を促進できる。この攪拌等の機械力は、ペースト化剤を添加する前から里芋に付与していてもよく、ペースト化剤を添加した後に施してもよい。また、予め里芋に加熱処理を施して、里芋に付着している雑菌を殺菌しておくことが好ましい。

【0019】
添加するペースト化剤には、アクレモニウムセルラーゼ含有の酵素剤が含有されている。この酵素剤としては、アクレモニウム属菌類由来のアクレモニウムセルラーゼ製剤を用いることが好ましい。かかる酵素剤は、他の活性、例えばペクチナーゼ活性を有する複合酵素剤であってもよい。更に、市販されているアクレモニウムセルラーゼ含有の酵素剤であってもよい。市販されているアクレモニウムセルラーゼ含有の酵素剤としては、例えば協和化成株式会社製の「アクレモセルラーゼKM」(商品名)を用いることができる。この「アクレモセルラーゼKM」は、Acremonium celluloyticusより生産されたものであって、マンナナーゼやペクチナーゼ活性も併有している。

【0020】
アクレモニウムセルラーゼ含有の酵素剤は、里芋やその芋を、その貯蔵多糖と細胞壁成分を同時に分解してペースト化することができる。かかる酵素剤は、里芋の組織(細胞壁)を崩壊し可溶化する活性が強いため、里芋とアクレモニウムセルラーゼ含有の酵素剤とは、室温下で反応させても、里芋を充分に軟化して簡単な機械的力でペースト化できる。アクレモニウムセルラーゼ含有の酵素剤は、その耐熱性に優れており、里芋と酵素剤とを加熱処理することによって、里芋のペースト化速度を速くできる。加熱処理としては、里芋中の澱粉を糊化する温度以上で且つ100℃未満の温度で加熱処理することが好ましい。加熱処理温度が、澱粉の糊化温度未満では、里芋のペースト化速度を大幅に迅速化でき難い傾向にある。加熱処理温度が、100℃以上では、酵素剤が失活するおそれがある。澱粉の糊化温度は、一般的に65℃以上である。このような温度下では、従来の殆どの酵素剤は失活するが、アクレモニウムセルラーゼ含有の酵素剤では活性を保持できる。本発明で用いるアクレモニウムセルラーゼ含有の酵素剤は、澱粉の糊化温度以上でも活性を呈する高温活性型の酵素剤であるため、従来の低温活性型の酵素剤に比較して、里芋のペースト化速度を向上できる。

【0021】
この酵素剤との反応時間は、最終的に得ようとするペーストの粘度によって調整する。サラサラのミルク状ペーストを得るには、反応時間を比較的長くする。また、流動性を有する粘調ペーストを得るには、ミルク状ペーストが得られる反応時間よりも短時間とする。反応の終了は、酵素剤を失活させることによって行う。酵素剤の失活は、得られたペーストを100℃以上、好ましくは120℃以上の温度に昇温して5分程度加熱することによって達成できる。酵素剤の失活は、酸性雰囲気下で効率よく行うことができる。このため、アクレモニウムセルラーゼ含有の酵素剤を酢酸等の酸性溶液と共に食材に添加することが好ましい。

【0022】
得られたペーストは、必要に応じて目開き1.5mm程度のパルパーフィニッシャー等を用い裏ごしして、表皮等の繊維を取り除いてもよい。このペーストでは、原料に用いた里芋の組織(細胞壁)が充分に崩壊及び可溶化されており、その口当たりは滑らかなものである。
【実施例】
【0023】
以下、本発明の実施例を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0024】
(実施例1)
里芋の親芋から切り出した厚さ8mmのスライス片(約10g)を生の状態で載置したシャーレ上に、協和化成株式会社製の酵素剤「アクレモセルラーゼKM」の0.1%濃度の透明な浸漬液(以下、アクレモ含有浸漬液と称することがある)を10ml注ぎ込み、このアクレモ含有浸漬液に生スライス片を室温下(30℃)で24時間浸漬した。また、生スライス片を加熱処理(蒸し器で15分間ボイル)した加熱スライス片も、同様にしてアクレモ含有浸漬液に24時間浸漬した。アクレモ含有浸漬液に24時間浸漬した生スライス片と加熱スライス片との状態を図1(a)に示す。図1(a)に示す両スライス片は、その周縁部分が崩れ始めており、アクレモ含有浸漬液も白濁している。図1(a)に示す生スライス片と加熱スライス片とを、スパチュラで軽く攪拌した状態を図1(b)に示す。図1(b)に示す生スライス片は、軽い攪拌によって、その周片部が更に一層崩れている。また、図1(b)に示す加熱スライス片は、スライス片が断片化されてペースト状に近くなっている。
【実施例】
【0025】
(比較例)
実施例1のアクレモ含有浸漬液を、協和化成株式会社製の「TP-5」(Trichoderma sp.により生産されるセルラーゼ、ヘミセルラーゼ、及びAspergillus sp.により生産されるエステラーゼ配合)、新日本化学工業株式会社製の「スミチームAC」(Aspergillus niger由来のセルラーゼ含有)、新日本化学工業株式会社製の「スミチームMC」(Aspergillus niger由来のペクチナーゼ含有)の酵素剤、及び「スミチームAC」と「スミチームMC」とを等量混合した混合酵素剤の各々を含有する浸漬液に代えた他は、実施例1と同様に生スライス片と加熱スライス片とを浸漬液に24時間浸漬した。24時間浸漬したいずれの試験区の生スライス片と加熱スライス片の崩れ程度は、実施例1の24時間浸漬した生スライス片と加熱スライス片とに比較して極端に小さかった。
【実施例】
【0026】
(実施例2)
里芋の親芋からコルクボーラを用いてコルク栓状の柱状体を切り出した。この柱状体を、3mlの水のみの浸漬液、アクレモ含有浸漬液、及び新日本化学工業株式会社製の「スミチームAC」と「スミチームMC」とを等量混合した混合酵素剤を1%濃度含有する混合酵素含有浸漬液の各々に室温下(30℃)で所定時間浸漬した後、遠心分離機を用いて5000rpmで10分間遠心を施し、発生した沈殿物の量及び柱状体の形状を観察した。その結果を表1に示す。表1から明らかなように、アクレモ含有浸漬液の水準が、親芋を効率的に軟化しペースト化できることが判る。
【実施例】
【0027】
【表1】
JP0004931094B1_000002t.gif
【実施例】
【0028】
(実施例3)
実施例2において、親芋から切り出した柱状体の固さ変化を調査した。柱状体の固さは、アクレモ含有浸漬液に所定時間浸漬した後、遠心分離機を用いて5000rpmで10分間遠心を施して残留した柱状体について、プランジャー付のレオメータを用いて測定した。その結果を図2に示す。図2から明らかなように、柱状体の固さは浸漬6時間後から急激に低下している。このため、親芋の組織に変化が起きていることを示唆している。尚、図2に示す応力は、荷重/プランジャー面積の値である。
【実施例】
【0029】
(実施例4)
実施例2において、アクレモ含有浸漬液に、親芋から切り出した柱状体を24時間浸漬した水準の縣濁液を希釈して顕微鏡観察した。顕微鏡視野中には、球状の細胞は全く認められなかった。また、細胞死を起こしている細胞中の核酸を染色するアクリルオレンジを用いて、この縣濁液を染色した。染色した縣濁液を顕微鏡観察したところ、染色された核酸が多数存在していた。このことから、親芋の細胞は、アクレモ含有浸漬液に24時間浸漬することによって、その細胞壁がバラバラに崩壊されていることが判る。
【実施例】
【0030】
(実施例5)
アクレモ含有浸漬液に所定時間浸漬して酵素処理を施した里芋の親芋0.1gに2mの水を添加した後、超音波処理を5分間施して親芋を分散した分散液を得た。この分散液を目開きが500μmの篩を通し、篩を通過した分散液中の粒子の粒度分布を調査した。アクレモ含有浸漬液への浸漬時間が1時間の親芋と24時間の親芋とについての粒度分布の測定結果を図3に示す。図3に示す粒度分布では、浸漬時間が1時間の親芋の平均粒径は450~550μmである。また、浸漬時間が24時間の親芋の平均粒径は20μmである。浸漬時間が長くなるほど、親芋の細胞壁等が細化されている。このため、アクレモ含有浸漬液への浸漬時間が24時間の親芋は、浸漬時間が1時間の親芋に比較して、得られたペーストの食感が良好になると推察される。
【実施例】
【0031】
(実施例6)
里芋の親芋に加熱処理(蒸し器で15分ボイル)を施した後、アクレモ含有浸漬液に3時間浸漬した。アクレモ含有浸漬液で浸漬処理を施した親芋を、下記に示すように調整した人工胃液と人工腸液とを配合して調整した人工消化液に浸漬した後、ロ紙(東洋ロ紙No2)でろ過して得た残渣量を測定し消化率を算出した。この場合の消化率は66.1%であった。また、加熱処理のみを施した親芋の消化率を算出したところ、34.6%であった。このように、親芋をアクレモ素含有浸漬液に浸漬することによって、その消化率の向上も期待できる。
(1)人工胃液
0.4gの塩化ナトリウムと0.64gの精製ペプシンを取り、1.41mlの塩酸を加えた200mlの塩酸水溶液に加えて溶かす。ペプシンは最後に加えるが、解けにくい場合には、超音波処理すると簡単に溶解する。
(2)人工腸液
1.36gのリン酸-カリウムを50mlの水に溶解する。0.2モルの水酸化ナトリウム15.4mlと蒸留水100mlを加える。2gのパンクレアチンを溶解し、0.2モルの塩酸または水酸化ナトリウムを用いて、pHを6.8にあわせる。最終的に200mlにメスアップして、人工腸液とする。
【実施例】
【0032】
(実施例7)
実施例6で人工消化液に浸漬処理した後に得られた残渣を酸加水分解し、その糖組成を液体クロマトグラフィーで分析した。その結果を下記表2に示す。表2には、生親芋の糖組成も参考として示す。表2から明らかなように、ラムノース、マンノース、アラビノース、ガラクト—ス及びガラクツロン酸などのヘミセルロース由来の糖質が減少している。これらは酵素処理することによって分解され、消化液側に流出したものと考えられる。これらの糖質は、粘性の高い多糖類であるペクチンやマンナンを構成している単糖類と考えられる。
【実施例】
【0033】
【表2】
JP0004931094B1_000003t.gif
【実施例】
【0034】
(実施例8)
里芋の親芋20kgを水洗し、ざっと皮を剥いた後、粉砕装置で粗粉砕を施した。粗粉砕した親芋を二重窯に入れて攪拌機で攪拌しながら蒸気加熱を行った。この蒸気加熱では、二重窯の間に蒸気を導入して親芋を加熱したが、親芋には水分が含まれているため、焦げることなく加熱処理を施すことができた。蒸気加熱を開始してから10分ほどで、里芋の粉砕物が澱粉の糊化温度以上の70℃近傍に到達した。そのとき、里芋の粉砕物は急激に粘性が発現して団子状体となった。親芋中の澱粉が糊化するためである。この団子状体に加熱を施しつつ、予め酢0.1%(芋の重量に対して)を含有する溶液に協和化成株式会社製の「アクレモセルラーゼKM」を懸濁した酵素液を添加した。この酵素液の添加量は、「アクレモセルラーゼKM」が親芋に対して0.1%となる量とした。酵素液を添加すると、団子状態の芋の塊は1分ほどで流動性を呈する芋ペーストとなった。更に、加熱を行い約100℃で10分間ほどの加熱で、酵素を失活させた。加熱を停止した流動性を呈する芋ペーストは、目開き1.5mmのパルパーフィニッシャーによって表皮等を取り除くことができた。
【実施例】
【0035】
(実施例9)
実施例8において、酵素液を添加した団子状態の芋の塊に30分間ほど保温して酵素反応を持続させると、粘性がほとんど失われたミルク状の液体となった。このミルク状液体から、実施例8と同様のパルパーフィにシャーを用いて表皮等を簡単に取り除くことができた。このように、加熱時間を調整することによって、粘度の異なる芋ペーストを簡単に得ることができる。このミルク状の芋分解液も沸騰状態で10分間ほど加熱することによって「アクレモセルラーゼKM」の酵素活性を失活することができる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明によって得られたペーストは、調味料等を加えて嚥下障害等がある患者に直接摂取させてもよい。この場合、嚥下障害等の障害程度に応じてペーストの粘度を簡単に変更できる。また、得られたペーストは、米粉を原料に用いた麺やパン、菓子のつなぎに好適に用いることができる。更に、マンナン含有のゼリー食品に対しても、本発明を適用して、ゼリー食品の粘度を簡単に調整できる。
図面
【図2】
0
【図3】
1
【図1】
2