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明細書 :広帯域離散スペクトル発生装置、及び、その周波数制御方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5099696号 (P5099696)
公開番号 特開2009-229918 (P2009-229918A)
登録日 平成24年10月5日(2012.10.5)
発行日 平成24年12月19日(2012.12.19)
公開日 平成21年10月8日(2009.10.8)
発明の名称または考案の名称 広帯域離散スペクトル発生装置、及び、その周波数制御方法
国際特許分類 G02F   1/37        (2006.01)
H01S   3/10        (2006.01)
FI G02F 1/37
H01S 3/10 C
請求項の数または発明の数 3
全頁数 9
出願番号 特願2008-076556 (P2008-076556)
出願日 平成20年3月24日(2008.3.24)
審査請求日 平成23年3月24日(2011.3.24)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504133110
【氏名又は名称】国立大学法人電気通信大学
発明者または考案者 【氏名】桂川 眞幸
【氏名】鈴木 隆行
個別代理人の代理人 【識別番号】100067736、【弁理士】、【氏名又は名称】小池 晃
【識別番号】100096677、【弁理士】、【氏名又は名称】伊賀 誠司
【識別番号】100106781、【弁理士】、【氏名又は名称】藤井 稔也
【識別番号】100113424、【弁理士】、【氏名又は名称】野口 信博
【識別番号】100116126、【弁理士】、【氏名又は名称】山口 茂
審査官 【審査官】山本 貴一
参考文献・文献 特開2000-174371(JP,A)
特開2000-235203(JP,A)
特表平11-502368(JP,A)
平井雅尊, 鈴木隆行, 桂川眞幸,キャリアエンベロープ-オフセットを制御した広帯域ラマンサイドバンド光の発生,日本物理学会講演概要集,2007年 8月21日,Vol.76, No.2 第2分冊,p.151, 21aRH-2
鈴木隆行, 平井雅尊, 桂川眞幸,ラマンサイドバンド光の超広帯域化と自発的搬送波位相の固定,応用物理学会学術講演会講演予稿集,2007年 9月 4日,Vol.68th, No.3,p.1099, 6a-Y-11
調査した分野 G02F 1/35-1/39
H01S 3/00,3/10,3/109,3/13,
5/14,5/40,5/50

JSTPlus(JDreamII)
JST7580(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
二波長の励起レーザー光を出射するレーザー光源と、
上記レーザー光源から出射された二波長の励起レーザー光が入射される光共振器と、
上記光共振器を通過した二波長の励起レーザー光の光強度を検出し、その検出出力に基づいて、上記レーザー光源から出射される二波長の励起レーザー光の周波数を制御する制御部と、
上記制御部により周波数が制御された上記二波長の励起レーザー光が上記レーザー光源から入射される非線形媒質を含む広帯域離散スペクトル生成用セルとを備え、
上記制御部により、上記レーザー光源から出射される二波長の励起レーザー光の周波数を上記光共振器の共振周波数に周波数ロックし、上記二波長の励起レーザー光の差周波数を上記光共振器のフリースペクトルレンジ(FSR:Free Spectal Range)の整数倍とし、且つ、上記二波長の励起レーザー光の周波数を上記二波長の励起レーザー光の差周波数の整数倍とし、上記広帯域離散スペクトル生成用セルにより、上記二波長の励起レーザー光の上記非線形媒質における差周波数に対応する周波数のコヒーレンスな屈折率変化を誘起して、広帯域離散スペクトルを発生することを特徴とする広帯域離散スペクトル発生装置。
【請求項2】
上記広帯域離散スペクトル生成用セルは、非線形媒質としてラマン媒質を含むことを特徴とする請求項1記載の広帯域離散スペクトル発生装置。
【請求項3】
二波長の励起レーザー光が入射される非線形媒質を含む広帯域離散スペクトル生成用セルにより、上記二波長の励起レーザー光の上記非線形媒質における差周波数に対応する周波数のコヒーレンスな屈折率変化を誘起して、広帯域離散スペクトルを発生する広帯域離散スペクトル発生装置の周波数制御方法であって、
上記二波長の励起レーザー光を出射するレーザー光源から出射された二波長の励起レーザー光を光共振器に入射させ、
上記光共振器を通過した二波長の励起レーザー光の光強度を検出し、その検出出力に基づいて、上記レーザー光源から出射される二波長の励起レーザー光の周波数を制御し、
上記レーザー光源から出射される二波長の励起レーザー光の周波数を上記光共振器の共振周波数に周波数ロックし、上記二波長の励起レーザー光の差周波数を上記光共振器の自由スペクトル間隔(FSR:Free Spectal Range)の整数倍とし、且つ、上記二波長の励起レーザー光の周波数を上記二波長の励起レーザー光の差周波数の整数倍とすることを特徴とする広帯域離散スペクトル発生装置の周波数制御方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、二波長の励起レーザー光の上記非線形媒質における差周波数に対応する周波数のコヒーレンスな屈折率変化を誘起して、広帯域離散スペクトルを発生する広帯域離散スペクトル発生装置、及び、その周波数制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、気体分子の振動や回転状態を断熱的に励起し、特定の二準位間に最大値に迫る高いコヒーレンスを持つ分子を高密度に生成することが可能となった。高いコヒーレンスを持つ分子集団は対応する量子状態間の遷移周波数で周期的に屈折率変化をする媒質として振る舞い、通過する光を高効率に変調できる。この結果、ラマンサイドバンド光と呼ばれる広帯域な離散スペクトルが生成される。
【0003】
ラマンコヒーレンスの生成には、ラマン遷移に対応する周波数差を持つ二種類のレーザー光を同時に入射する。周波数差をラマン遷移の共鳴周波数からわずかに離調することで、断熱的に二準位間の重ね合わせ状態を生成できる。高いコヒーレンスを持つ分子集団による光変調では、周波数の変換効率が高いため、全てのラマンサイドバンド光が励起光と同軸に発生するという特徴を持つ。これはフーリエ合成による超短パルス生成にも有利に働き、超短パルス発生の現実的な新手法として注目されている。
【0004】
また、フェムト秒の超短パルス光は、非線形光学応答を利用した非破壊、非侵襲の物質測定、ガラスや金属や半導体の超精細加工、細胞の切削や操作などに利用できるだけでなく、光の干渉性を利用して物体内部を撮像するOCT(Optical Coherence Tomography)や多光子顕微鏡の光源、X線に代わる検査用電磁波となる波長30μm~3nmのテラヘルツ波発生装置などへの応用が期待されている。
【0005】

【特許文献1】特開2005-251810号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、一般的なフェムト秒パルス光源には、チタンサファイア結晶を用いたモード同期法を採用している。このスペクトルは繰返し周期に対応したコム形状を形成するが、個々の周波数の絶対値は、結晶や共振器内の屈折率分散、さらにはパルスの繰返し周期など多くの要因の複合的な結果として決まっている。コムの周波数間隔で周波数ゼロの付近まで考慮すると、周波数軸上のオフセット(搬送周波数オフセット(CEO:Carrier Envelope Offset)が定義できる。この量は光コム計測で重要であるばかりでなく、超短パルス生成時のパルス毎の電場位相のずれとも対応する。CEOをゼロにすることで、常に同一の電場波形を持つ超短パルス列を生成できる。CEOをゼロにするためにはコムスペクトルの周波数の絶対値を厳密に制御する必要がある。しかし、絶対周波数は前述のとおりの複雑な要因で決まるため、レーザー発振前にあらかじめ装置を正しく設計することは困難である。このため現在では、発振後のレーザー光で実測されたCEOを、レーザー装置に直接フィードバックする手法がとられている。
【0007】
一方、2つの狭帯域レーザー光を起源とし多数の離散スペクトルを形成する手法を用い、フェムト秒パルスを生成する手法が確立しつつある。この手法ではパルスの繰返し周期が電気制御の限界を大きく超えるという利点がある。さらに、元のレーザー光の絶対周波数を制御すれば任意の周波数の離散スペクトルを生成でき、原理的にはCEOの制御も可能である。しかし、現実に必要な周波数精度は、現状の波長計の精度を超えており、周波数標準を参照する等の高度な周波数測定・安定化が不可欠である。また現状ではCEOの実測も高速には行えず、従来手法を応用することはできない。
【0008】
そこで、本発明の目的は、上述の如き従来の実情に鑑み、広帯域離散スペクトルから生成される超短パルスの周波数を制御するために、スペクトルの広帯域化以前に周波数を指定し、しかも、単純な光共振器を参照するだけで、その絶対周波数を制御した所望の広帯域離散スペクトルを発生することができる広帯域離散スペクトル発生装置、及び、その周波数制御方法を提供することにある。
【0009】
本発明のさらに他の目的、本発明によって得られる具体的な利点は、以下において図面を参照して説明される実施に形態から一層明らかにされる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、広帯域離散スペクトル発生装置であって、二波長の励起レーザー光を出射するレーザー光源と、上記レーザー光源から出射された二波長の励起レーザー光が入射される光共振器と、上記光共振器を通過した二波長の励起レーザー光の光強度を検出し、その検出出力に基づいて、上記レーザー光源から出射される二波長の励起レーザー光の周波数を制御する制御部と、上記制御部により周波数が制御された上記二波長の励起レーザー光が上記レーザー光源から入射される非線形媒質を含む広帯域離散スペクトル生成用セル、上記制御部により、上記レーザー光源から出射される二波長の励起レーザー光の周波数を上記光共振器の共振周波数に周波数ロックし、上記二波長の励起レーザー光の差周波数を上記光共振器の自由スペクトル間隔(FSR:Free Spectal Range)の整数倍とし、且つ、上記二波長の励起レーザー光の周波数を上記二波長の励起レーザー光の差周波数の整数倍とし、上記広帯域離散スペクトル生成用セルにより、上記二波長の励起レーザー光の上記非線形媒質における差周波数に対応する周波数のコヒーレンスな屈折率変化を誘起して、広帯域離散スペクトルを発生する。
【0011】
本発明に係る広帯域離散スペクトル発生装置において、上記広帯域離散スペクトル生成用セルは、例えば、非線形媒質としてラマン媒質を含む。
【0012】
さらに、本発明は、二波長の励起レーザー光が入射される非線形媒質を含む広帯域離散スペクトル生成用セルにより、上記二波長の励起レーザー光の上記非線形媒質における差周波数に対応する周波数のコヒーレンスな屈折率変化を誘起して、広帯域離散スペクトルを発生する広帯域離散スペクトル発生装置の周波数制御方法であって、上記二波長の励起レーザー光を出射するレーザー光源から出射された二波長の励起レーザー光を光共振器に入射させ、上記光共振器を通過した二波長の励起レーザー光の光強度を検出し、その検出出力に基づいて、上記レーザー光源から出射される二波長の励起レーザー光の周波数を制御し、上記レーザー光源から出射される二波長の励起レーザー光の周波数を上記光共振器の共振周波数に周波数ロックし、上記二波長の励起レーザー光の差周波数を上記光共振器の自由スペクトル間隔(FSR:Free Spectal Range)の整数倍とし、且つ、上記二波長の励起レーザー光の周波数を上記二波長の励起レーザー光の差周波数の整数倍とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、レーザー光源から出射された二波長の励起レーザー光を光共振器に入射させ、上記光共振器を通過した二波長の励起レーザー光の光強度を検出し、その検出出力に基づいて、上記レーザー光源から出射される二波長の励起レーザー光の周波数を制御し、上記レーザー光源から出射される二波長の励起レーザー光の周波数を上記光共振器の共振周波数に周波数ロックし、上記二波長の励起レーザー光の差周波数を上記光共振器の自由スペクトル間隔(FSR:Free Spectal Range)の整数倍とし、且つ、上記二波長の励起レーザー光の周波数を上記二波長の励起レーザー光の差周波数の整数倍とする。すなわち、光共振器の共振周波数に周波数ロックした2台のレーザーの出力を合成し、ラマン過程を経て高次のサイドバンドを発生させる。サイドバンド間の周波数間隔は基本となる2つのレーザー周波数の差に完全に一致し、そのため全ての周波数成分が自由スペクトル間隔の整数倍となる。さらに、レーザー周波数がその周波数差の整数倍となるように共振器モードを選択すると、搬送周波数オフセットを原理的にゼロにできる。また、共振器への周波数ロックが維持する限り最適な周波数を生成する条件が継続するため、熱膨張等による共振器の自由スペクトル間隔の変化に対しても強力な手法となる。
【0014】
したがって、本発明では、2つの周波数成分由来の広帯域光発生において、スペクトルの広帯域化以前に周波数を指定できる上に、単純な光共振器を参照するだけで、励起光を光共振器の共振周波数にロックすることでき、これより、その絶対周波数を制御した所望の広帯域離散スペクトルを発生することができ、広帯域離散スペクトルから生成される超短パルスの周波数を制御することが可能となり、また、全てのスペクトル線を特定の周波数の整数倍に限定でき、超短パルス列中の個々の電場波形も固定にも応用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0016】
本発明は、例えば図1に示すような構成の広帯域離散スペクトル発生装置10に適用される。
【0017】
この広帯域離散スペクトル発生装置10は、二波長の励起レーザー光を出射するレーザー光源11と、上記レーザー光源11から出射された二波長の励起レーザー光が入射される光共振器12と、上記光共振器12を通過した二波長の励起レーザー光の光強度を検出し、その検出出力に基づいて、上記レーザー光源11から出射される二波長の励起レーザー光の周波数を制御する制御部13と、上記制御部13により周波数が制御された上記二波長の励起レーザー光が上記レーザー光源11から入射される非線形媒質14Aを含む広帯域離散スペクトル生成用セル14とを備える。
【0018】
上記レーザー光源11は、第1の周波数f1のレーザー光を発生する第1のレーザー光源11Aと、第2の周波数f2のレーザー光を発生する第2のレーザー光源11Bと、上記第1のレーザー光源11Aにより発生された第1の周波数f1のレーザー光と上記第2のレーザー光源11Bにより発生された第2の周波数f2のレーザー光を混合して二波長の励起レーザー光として出射する光学系11Cからなる。
【0019】
上記レーザー光源11から出射された二波長の励起レーザー光が入射される上記光共振器12の共振周波数は、自由スペクトル間隔(FSR:Free Spectal Range)刻みに等間隔であり、上記レーザー光源11から出射された二波長の励起レーザー光の周波数f1,f2が上記FSRの整数倍に一致している場合に、上記光共振器12を通過する二波長の励起レーザー光の光量が最大となる。
【0020】
上記制御部13は、上記光共振器12を通過した二波長の励起レーザー光の光強度を検出し、その検出出力に基づいて、上記第1のレーザー光源11Aと第2のレーザー光源11Bを制御し、上記レーザー光源11から出射される二波長の励起レーザー光の周波数を上記光共振器12の共振周波数に周波数ロックし、上記二波長の励起レーザー光の差周波数(Δf=f1-f2)を上記光共振器12のFSRの整数倍とし、且つ、上記二波長の励起レーザー光の周波数を上記二波長の励起レーザー光の差周波数の整数倍とする制御を行う。
【0021】
そして、上記広帯域離散スペクトル生成用セル14は、上記二波長の励起レーザー光の上記非線形媒質14Aにおける差周波数に対応する周波数のコヒーレンスな屈折率変化を誘起して、広帯域離散スペクトルを発生する。
【0022】
すなわち、この広帯域離散スペクトル発生装置10では、光共振器12の共振周波数にそれぞれ周波数ロックした上記第1のレーザー光源11Aにより発生された第1の周波数f1のレーザー光と上記第2のレーザー光源11Bにより発生された第2の周波数f2のレーザー光を混合した二波長の励起レーザー光を上記広帯域離散スペクトル生成用セル14に入射させることにより、ラマン過程を経て高次のサイドバンドを発生させ、広帯域離散スペクトルを発生させる。
【0023】
ここで、同一の光共振器12を基準に2つの周波数成分を生成すると、それぞれが自由スペクトル間隔(FSR)の整数倍になるだけでなく、その周波数差も同様にFSRの整数倍となる。このように周波数制御した2つのレーザー光を用いて発生させた広帯域光は、その全ての周波数成分がFSRの整数倍となり、搬送周波数オフセットもFSRの整数倍に限定される。
【0024】
2つの周波数成分は、その周波数差の整数倍に選ぶことが可能であり、搬送周波数オフセットを原理的にゼロにできる。
【0025】
この広帯域光の第二高調波や高次高調波の周波数は全て、基準となる光共振器12のFSRの整数倍となる。搬送周波数オフセットをゼロにした場合、第二高調波も高次高調波も搬送周波数オフセットがゼロとなり、全体として元の周波数差と同じ間隔の広大な櫛スペクトルを形成する。
【0026】
この広帯域離散スペクトル発生装置10では、二波長レーザー光を起源とした広帯域離散スペクトルの生成において、もととなる二波長の励起レーザー光の周波数f1,f2を光共振器12の共振周波数に制御することで、全てのスペクトル線の絶対周波数を制御する。図2の(A)に示すように、光共振器12の共振周波数は自由スペクトル間隔(FSR)刻みに等間隔であるため、このようにして実現するレーザー周波数はFSRの整数倍を持つ。このとき、上記二波長の励起レーザー光の差周波数(Δf=f1-f2)もFSRの整数倍となるため、ラマンサイドバンド光発生のような非線形過程を通して得られるサイドバンド光は、図2の(B)に示すように、全てFSRの整数倍となる。さらに、図3の(A)に示すように、上記二波長の励起レーザー光の差周波数(Δf=f1-f2)でスペクトルを分割した際にゼロ周波数付近に現れるオフセット(搬送周波数オフセット、CEO)もFSRの整数倍となる。CEOをゼロにすることと超短パルス列中の個々のパルスの電場波形を同一のものに固定することとは同義であり、最適な共振器モードを周波数ロックに利用すれば、図3の(B)に示すように、自動的にCEOをゼロにできる。
【0027】
ここで、図1に示した広帯域離散スペクトル発生装置10において、石英で作成したFSRが1.94GHzの光共振器12にPDH法を用いてロックした二波長レーザー光を注入同期ナノ秒レーザシステムのシード光とした実験装置を構築し、非線形媒質14Aとして、ラマン媒質(パラ水素)を用い、その回転状態(J=0→2)を励起したところ、励起光の周波数をロックする共振モードを変化させる毎にCEOが変化している様子が観測された。
【0028】
励起光の波長は、806.3480nm(Ω-1)、783.9496nm(Ω)付近の共振器モードを選び、周波数差を10.6225THzとした。そして、BBO結晶を用い第二高調波(2Ω-1)を発生させ、励起光と同軸に水素セルに入射し、発生した広帯域ラマンサイドバンド光をプリズムで分け、励起光及び第二高調波由来のサイドバンド光がオーバーラップする次数の光を高速光検出器(phtotube)で観測したところ、その時間波形にはCEOに対応するビート信号が観測され、励起光の周波数をロックする共振モードを変化させる毎にCEOが変化している様子が観測された。
【0029】
上記実験装置において、ΔFSR/FSRは3×10-8であって、このΔFSR/FSRの精度で、ロックすべき共振器モードを理想的な35:36の整数比で表される一組に選ぶことができ、CEOを最も0に近づけることができることが確認された。
【0030】
光共振器12を用いたCEO周波数の制御は、例えば、図4のフローチャートに示す手順に従って行われる。
【0031】
すなわち、CEO周波数を制御するにあたり、予め、光共振器12の縦モード間隔(FSR:Free Spectral)を測定しておく(ステップS1)。
【0032】
上記実験装置20において、石英で作成した光共振器12は、FSRは、1.94GHzであった。
【0033】
次に、設定可能な周波数差(Δω=FSRの整数倍)を見積もる(ステップS2)。
【0034】
上記実験装置20では、ラマン媒質に水素分子を用いた場合、設定可能な周波数差(Δω=FSRの整数倍)は、10.6225THzとした。
【0035】
次に、設定可能な周波数差(Δω=FSRの整数倍)から設定すべき2つの周波数f1,f2を見積もる(ステップS3)。
【0036】
上記実験装置20では、35倍および36倍を選び、2つの周波数f1,f2はそれぞれ372THzおよび382THz付近である。
【0037】
次に、波長計(等)を参照しながら目的の周波数付近でレーザー発振させる(ステップS4)。
【0038】
波長計の測定精度は1MHz~10MHzなので、GHz間隔の共振器モードを同定できる。
【0039】
そして、元の光共振器12に共振するポイントにロックする(ステップS5)。
【0040】
なお、ステップS1~ステップS3は、周波数ロックに使用する光共振器12を用意すれば、ただ一度の測定で決定することができる。
【0041】
上述の如き構成の広帯域離散スペクトル発生装置10では、光共振器12の共振周波数に周波数ロックした2台のレーザーの出力を合成し、ラマン過程を経て高次のサイドバンドを発生させることにより、サイドバンド間の周波数間隔は基本となる2つのレーザー周波数の差に完全に一致し、そのため全ての周波数成分が自由スペクトル間隔の整数倍となる。そして、レーザー周波数がその周波数差の整数倍となるように共振器モードを選択すると、搬送周波数オフセットを原理的にゼロにできる。また、光共振器12への周波数ロックが維持する限り最適な周波数を生成する条件が継続するため、熱膨張等による共振器の自由スペクトル間隔の変化に対しても強力な手法となる。
【0042】
このように、光共振器12を基準にして周波数を制御すれば、正確な周波数測定が不可能でも、その絶対値を限定でき、さらに搬送周波数オフセットまで制御できる。光共振器12への周波数ロックの条件さえ維持すれば、搬送周波数オフセットをゼロに固定し続けることができ、電場波形の固定された超短パルス列が実現できる。
【0043】
したがって、光共振器12を基準に周波数を制御することにより、その絶対値を特定の周波数の整数倍に限定でき、これにより波長計等の測定値の分解能を大きく超えた周波数精度が容易に実現できる。
【0044】
すなわち、二波長の励起レーザー光が入射される非線形媒質14Aを含む広帯域離散スペクトル生成用セル14により、上記二波長の励起レーザー光の上記非線形媒質14Aにおける差周波数に対応する周波数のコヒーレンスな屈折率変化を誘起して、広帯域離散スペクトルを発生する広帯域離散スペクトル発生装置10において、上記二波長の励起レーザー光を出射するレーザー光源11から出射された二波長の励起レーザー光を光共振器12に入射させ、上記光共振器12を通過した二波長の励起レーザー光の光強度を検出し、その検出出力に基づいて、上記レーザー光源11から出射される二波長の励起レーザー光の周波数を制御し、上記レーザー光源11から出射される二波長の励起レーザー光の周波数を上記光共振器12の共振周波数に周波数ロックし、上記二波長の励起レーザー光の差周波数を上記光共振器12のFSRの整数倍とし、且つ、上記二波長の励起レーザー光の周波数を上記二波長の励起レーザー光の差周波数の整数倍とすることにより、CEOをゼロにすることにより、第二高調波も高次高調波もCEOがゼロとなり、全体として元の周波数差と同じ間隔の広大な櫛スペクトルを形成することができる。

【0045】
なお、本発明は、以上の実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が可能であることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明適用した広帯域離散スペクトル発生装置の全体構成を示す構成図である。
【図2】上記広帯域離散スペクトル発生装置における励起光及び全サイドバンド光の周波数制御の概念図である。
【図3】上記広帯域離散スペクトル発生装置におけるCEOを0にした励起光及び全サイドバンド光の周波数制御の概念図である。
【図4】上記広帯域離散スペクトル発生装置における光共振器を用いたCEO周波数の制御手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0047】
10 広帯域離散スペクトル発生装置、11、11A,11B レーザー光源、12 光共振器12、13 制御部、14 広帯域離散スペクトル生成用セル、14A 非線形媒質
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3