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明細書 :水素/空気二次電池

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5626872号 (P5626872)
公開番号 特開2012-064477 (P2012-064477A)
登録日 平成26年10月10日(2014.10.10)
発行日 平成26年11月19日(2014.11.19)
公開日 平成24年3月29日(2012.3.29)
発明の名称または考案の名称 水素/空気二次電池
国際特許分類 H01M  12/08        (2006.01)
H01M  12/02        (2006.01)
H01M   4/90        (2006.01)
FI H01M 12/08 K
H01M 12/08 S
H01M 12/02
H01M 4/90 X
請求項の数または発明の数 8
全頁数 23
出願番号 特願2010-208630 (P2010-208630)
出願日 平成22年9月16日(2010.9.16)
審査請求日 平成25年7月31日(2013.7.31)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503027931
【氏名又は名称】学校法人同志社
【識別番号】000164438
【氏名又は名称】九州電力株式会社
発明者または考案者 【氏名】盛満 正嗣
【氏名】高野 浩二
個別代理人の代理人 【識別番号】100095603、【弁理士】、【氏名又は名称】榎本 一郎
審査官 【審査官】小森 重樹
参考文献・文献 国際公開第2002/017428(WO,A1)
特開2006-196329(JP,A)
特開平07-272771(JP,A)
特開平11-307140(JP,A)
特開平11-121030(JP,A)
近藤貴仁、土永悠貴、長田尚己、高野浩二、盛満正嗣,水素吸蔵合金を用いる空気二次電池の構造と充放電特性,第50回電池討論会講演要旨集,社団法人電気化学会電池技術委員会,2009年11月30日,p.239
長田尚己、高野浩二、盛満正嗣,水素-空気二次電池の電解液保持構造と充放電サイクル特性,第51回電池討論会講演要旨集,社団法人電気化学会電池技術委員会,2010年11月 8日,p.138
調査した分野 H01M 12/08
H01M 12/02
H01M 4/90
特許請求の範囲 【請求項1】
電池容器内に配設される空気極と、前記空気極に対向して前記電池容器内に配設される水素吸蔵合金を用いた負極と、前記空気極と前記負極との間に配設され電解液を保持する電解液保持体と、を備えた水素/空気二次電池であって、
充電反応により減少する電解液の供給又は放電反応により増加する電解液の貯蔵を行う電解液貯蔵部を前記電池容器内に前記空気極及び前記負極と分離して形成し、前記電解液保持体の少なくとも一部が前記電解液貯蔵部内の前記電解液に浸漬して、前記電解液の供給と貯蔵が、前記電解液保持体を介して、前記空気極-前記負極間と前記電解液貯蔵部との間で行われることを特徴とする水素/空気二次電池。
【請求項2】
前記空気極が、ニッケルと、イリジウムを含むパイロクロア型酸化物と、結着剤と、を含有してなることを特徴とする請求項1に記載の水素/空気二次電池。
【請求項3】
前記イリジウムを含む前記パイロクロア型酸化物が、ビスマスイリジウム酸化物であることを特徴とする請求項2に記載の水素/空気二次電池。
【請求項4】
前記負極に対向して2つの前記空気極が配設され、前記電解液保持体が前記負極と各々の前記空気極との間にそれぞれ配設されていることを特徴とする請求項1乃至3の内いずれか1項に記載の水素/空気二次電池。
【請求項5】
複数の前記電解液保持体の少なくとも一部が共通の前記電解液貯蔵部内の前記電解液に浸漬していることを特徴とする請求項4に記載の水素/空気二次電池。
【請求項6】
複数の前記電解液保持体が共通の前記電解液貯蔵部内で連結されていることを特徴とする請求項5に記載の水素/空気二次電池。
【請求項7】
前記負極及び前記負極に対向する1つ又は2つの前記空気極の長手方向が水平方向と平行に配置される電極対が、前記電池容器内に複数組積層されていることを特徴とする請求項1乃至6の内いずれか1項に記載の水素/空気二次電池。
【請求項8】
前記負極及び前記負極に対向する1つ又は2つの前記空気極の長手方向が鉛直方向と平行に配置される電極対が、前記電池容器内に複数組並設されていることを特徴とする請求項1乃至6の内いずれか1項に記載の水素/空気二次電池。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、大気中の酸素を正極活物質、水素吸蔵合金中の水素を負極活物質、アルカリ性水溶液を電解液とし、放電で水を生成し、充電で水が分解する反応を利用する水素/空気二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
空気電池は、大気中の空気を正極活物質とする電池であり、市販されている亜鉛/空気一次電池がよく知られている。亜鉛/空気一次電池と類似な構造を有する空気電池には、負極活物質にアルミニウムや鉄を用いる電池があり、いずれも一次電池としての機能は確認されているが、実用化には至っていない。
一方、空気電池は機械式充電型の亜鉛/空気二次電池を除いて、二次電池としてはいまだ実用化されていない。機械式充電型の亜鉛/空気二次電池とは、電池内部の反応としては放電だけを行うもので、放電後の亜鉛負極を外部に取り出し、新しい亜鉛負極と取り替えることで再利用できるものである。したがって、一般に知られる二次電池のように、電池内での反応によって再充電することで繰り返し利用できるものではない。上記のような亜鉛、アルミニウム、鉄などを負極活物質に用いる空気電池は、通常アルカリ性の水溶液を電解液として用いている。
【0003】
一方、アルカリ性水溶液を電解液とする空気電池には、負極活物質に水素を用いる電池も開発されている。
例えば、本発明者らは、ニッケル粉末と、イリジウムを含むパイロクロア型酸化物と、結着剤を混合してなる空気極と、水素吸蔵合金を用いた負極を備えた空気二次電池を(特許文献1)および(非特許文献1)に開示した。以下では、この二次電池を水素/空気二次電池と記す。
【0004】
水素/空気二次電池の充放電反応は次式によって表される。
放電:4MH+O2→4M+2H2
充電:4M+2H2O→4MH+O2
なお、式中のMは水素吸蔵合金であり、MHは水素を吸蔵した状態の水素吸蔵合金を意味する。
上記の反応式の通り、放電では負極で水素吸蔵合金から水素が放出され、空気極で酸素が還元されて水が生成する。このとき、電解液に用いられているアルカリ性水溶液中で水が増加する。
反対に、充電ではアルカリ性水溶液中の水が分解して、負極では水素が吸蔵され、空気極では酸素が発生する。発生した酸素は空気極内の空隙を通って大気中に放出される。
すなわち、水素/空気二次電池は、水のみを活物質とする二次電池であり、充放電電気量に依存して電解液中の水の物質量が変化することが特徴である。これは水素/空気二次電池に特有の電池反応であり、水素吸蔵合金以外の負極を用いる空気電池や、空気電池以外のすべての一次電池、二次電池で水のみを活物質とするものはない。
例えば、(特許文献2)~(特許文献4)には空気電池が開示さているが、これらは電解液に有機溶媒やイオン液体を用いるものや、負極活物質にリチウムを用いるものであり、電解液中の水を電池の活物質とする空気電池ではなく、後述するように、本発明が解決しようとする課題のポイントである電解液中の水の物質量の変化に関する課題は生じない。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2006-196329号公報
【特許文献2】特開2010-103064号公報
【特許文献3】特開2010-103059号公報
【特許文献4】特開2009-289616号公報
【0006】

【非特許文献1】M.Morimitsu,T.Konodo,N.Osada,K.Takano,Electrochemistry,Vol.78,No.5,pp.493-496(2010)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
(特許文献1)の水素/空気二次電池は、空気極と負極とアルカリ性水溶液で充放電が可能な簡単な構成で、高エネルギー密度、高出力密度を有し、かつ積層化による大容量化が容易である。しかし、本特許の発明者は様々な研究を行った結果、この電池では充電で電解液中の水が減少するため、空気極と負極の間の電解液量が少ない場合や、いわゆる電池セパレータと呼ばれる電解液保持体を用いて空気極と負極の間の電解液を保持している場合には、電解液の減少が空気極と負極の間で均一に起こらないと充電電圧が増加することを見出した。すなわち、電解液の減少が不均一な場合には、空気極と負極の間で水の分解が速い部分と遅い部分が生じることで、負極および/または空気極上での反応分布が不均一となり、反応抵抗が増加することで充電電圧が増加する。また、このような現象は、特に電極面積の大きな電池において顕著であることも見出した。さらに、放電では電解液中の水が増加するため、この電解液の増加分が、空気極と負極の間の空間または電解液保持体内に保持可能な量を超えると、空気極と負極の極間の増加や電解液の増加によるひずみを生じて、放電電圧が低下することを見出した。このような影響は、特に電池の容量を大きくすると顕著であることや、これが電解液の漏洩につながる原因となることも見出した。
【0008】
すなわち、従来の水素/空気二次電池では、充放電を繰り返し行うと放電電圧が低下したり、充電電圧が高くなったりして、その後の充放電が困難になるという課題があった。また、放電電流を大きくすると放電容量が極端に小さくなり、充電電流を大きくすると満充電に至る以前の段階で、充電電圧が高くなって充電が継続できなくなるという課題があった。さらに、非常に高い電流で放電すると、空気極を通して電解液が漏洩するという課題があった。そして、特に、電極面積を大きくしたり、電池容量を大きくしたりすると、充放電特性が悪くなるという課題があった。
よって、水素/空気二次電池の充放電サイクル特性、再充電性、耐久性を向上させるために、充電時に増加する電解液量と放電時に減少する電解液量を制御できるような構造が要望されていた。
【0009】
本発明は上記課題を解決するもので、充電や放電の間の電圧の大きな変化を抑制し、充放電サイクル特性に優れ、電解液の漏洩がなく、再充電性や耐久性に優れ、特に負極や空気極の電極面積や電池容量が大きい場合や、さらには放電電流や充電電流が大きな作動の場合においても、安定した充放電を行うことができる動作安定性、高品質性、長寿命性に優れた水素/空気二次電池の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記従来の課題を解決するために本発明の水素/空気二次電池は、以下の構成を有している。電池容器内に配設される空気極と、前記空気極に対向して前記電池容器内に配設される水素吸蔵合金を用いた負極と、前記空気極と前記負極との間に配設され電解液を保持する電解液保持体と、を備えた水素/空気二次電池であって、充電反応により減少する電解液の供給又は放電反応により増加する電解液の貯蔵を行う電解液貯蔵部を前記電池容器内に前記空気極及び前記負極と分離して形成し、前記電解液保持体の少なくとも一部が前記電解液貯蔵部内の前記電解液に浸漬して、前記電解液の供給と貯蔵が、前記電解液保持体を介して、前記空気極-前記負極間と前記電解液貯蔵部との間で行われる構成を有している。
この構成により、以下のような作用が得られる。
(1)充電反応により減少する電解液の供給又は放電反応により増加する電解液の貯蔵を行う電解液貯蔵部を電池容器内に空気極及び負極と分離して形成し、電解液保持体の少なくとも一部が電解液貯蔵部内の電解液に浸漬していることにより、放電時には空気極と負極の間で生成する水による圧力上昇により、電解液保持体を介して空気極と負極の間で放電によって増加した分の電解液を電解液貯蔵部に貯蔵することが可能となり、また充電時には空気極と負極の間で減少する水による圧力低下を利用して、電解液貯蔵部から電解液保持体を介して充電によって減少した分の電解液を空気極と負極の間に供給することが可能となる。
(2)また、これによって空気極と負極の間では電解液保持体に保持された電解液量を常に一定に保つことができる。
(3)また、上記のような電解液の供給と貯蔵が、電解液保持体を介して、空気極-負極間と電解液貯蔵部との間で行われるため、空気極からの電解液の漏洩を抑制することが可能となる。
(4)また、上記のような電解液の供給と貯蔵が、電解液保持体を介して、空気極-負極間と電解液貯蔵部との間で行われるため、空気極-負極間に存在する電解液量を電解液保持体の空隙率を変えることで調整が可能となり、必要最適量の電解液量を空気極と負極の間に常に保持することができる。
(5)また、上記のような電解液の供給と貯蔵が、電解液保持体を介して、空気極-負極間と電解液貯蔵部との間で行われるため、空気極-負極間に存在する電解液量を電解液保持体の空隙率と厚みを変えることで調整が可能となり、電池の充放電容量の大小に関わらず必要最適量の電解液量を空気極と負極の間に常に保持することができる。
【0011】
ここで、電池容器内には少なくとも1対の空気極と負極が配置される。電池容器内において空気極と負極は水平に配設してもよいし、鉛直に配設してもよい。また、電池容器内には、空気極と負極の間にアルカリ性水溶液である電解液を保持した電解液保持体が配設される。空気極の電解液保持体と反対の側は、放電に必要な酸素の空気極への取り込みもしくは充電で発生する酸素の空気極からの散逸が可能なように電池容器に形成された通気路がある。この通気路は単に電池容器に形成された開口部でもよい。また、電池容器には電解液貯蔵部が設けられ、電解液保持体の一部が電解液貯蔵部内の電解液に浸漬している。この電解液貯蔵部は、充電反応により減少する電解液を供給または放電反応により増加する電解液を貯蔵できるように、電池の充放電容量に適した体積となっている。さらに、電解液貯蔵部と電解液保持体の間では電解液の流れが確保され、これによって放電の際には空気極と負極の間で生成した水によって電解液が増加するが、これは電解液保持体を介して電解液貯蔵部に貯蔵され、充電の際には空気極と負極の間で水の分解によって電解液が減少するが、これは電解液保持体を介して電解液貯蔵部から空気極と負極の間に補充される。
【0012】
空気極は、空気極に導電性を付与する導電性物質と、触媒と、結着剤を基本として構成される。これらは混合された状態で一体に形成され、さらに放電時に外部へ電力を出力し、かつ充電時には外部電源から電力を入力することを容易にするための集電体と一体に形成される。導電性物質には炭素や金属などが使用できるが、アルカリ性水溶液中での酸素還元および酸素発生に対して安定であるものが好ましい。炭素材料してはグラファイト、グラッシーカーボン、フラーレン、カーボンナノチューブ、その他の構造の炭素などが挙げられるが、特に高温で熱処理され耐酸化性に優れたグラファイトなどが好ましい。さらに、導電性物質としては炭素材料に比べて、ニッケルがより好ましい。このような導電性物質は、粒子、粉末、繊維、チューブ、多孔質体など様々な形状のものが使用できる。
【0013】
触媒には、酸素還元と酸素発生に対する活性を有するものが使用される。例えば、白金や銀のような貴金属、金属酸化物、金属硫化物、金属窒化物、金属炭化物、金属酸化物や金属硫化物や金属炭化物や金属炭化酸化物などの一部を窒素置換したもの、金属と酸素と窒素と炭素の複合酸化物(MeCxyz:ただし、Meは金属または合金、Cは炭素、Nは窒素、Oは酸素で、x、y、zは組成比を示す)などのように酸素還元に対して触媒活性を有する酸素還元触媒と、酸化イリジウムや酸化ルテニウムのような酸化物、金属硫化物、金属複合酸化物などのように酸素発生に対して触媒活性を有する酸素発生触媒を、ともに用いて空気極に酸素還元活性と酸素発生活性を付与することができる。また、酸素還元活性と酸素発生活性をともに有する二元機能性の金属、合金、化合物を用いることもできる。そのような二元機能性を有する物質としては、例えばパイロクロア型、ペロブスカイト型、スピネル型などに分類される複合酸化物などが挙げられる。
【0014】
結着剤は、空気極内部に空気の流路が形成できるように電解液に対して撥水性を有し、また導電性物質を相互に結着させながらその間隙に空気の流通を許容することを可能にするものであって、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)などの樹脂系材料などを用いることができる。また、導電性物質と、触媒と、結着剤を混合して一体に形成する際には、出発物質として、このような結着剤を適当な溶液中に分散させた分散溶液を用いることもできる。
【0015】
集電体には網状、繊維状、多孔質体などの種々の形状の金属や導電性有機物などを用いることができるが、その形状については大気中の酸素を取り込む開口部を有することが必要である。集電体の材料としてはニッケルなどが好ましい。なお、導電性物質、触媒、結着剤、集電体に用いる材料・構造・形状は、上記に述べたようなそれぞれの機能を発揮するものであれば、特に上記に挙げたものに限定されるものではない。
【0016】
導電性物質と触媒と結着剤を一体とする方法には、プレス法や押し出し法などの一般に空気極を作製する際に用いられる方法が利用できる。例えば、導電性物質、触媒、結着剤が粉末状または粒子状であれば、これらを乾式または湿式で混合した後、ロールプレス機を用いて薄板状に成形することで作製できる。また、特定の型に混合物を入れて成型加工により作製することができる。また、導電性物質が発泡ニッケルなどの多孔質体である場合には、触媒と結着剤を多孔質体内部に導入し、その後導電性物質全体を加圧することで一体に成形することができる。また、集電体は上記に述べた空気極の成形の段階で一体としても、導電性物質、触媒、結着剤を一体に形成した後に、さらにこれを集電体と一体としてもよい。さらに、空気極を作製する際には、上記のような成形もしくは一体化の過程の後に、加熱処理を行ってもよい。
【0017】
負極に用いる水素吸蔵合金については、La-Ni系合金、La-Nd-Ni系合金、La-Gd-Ni系合金、La-Y-Ni系合金、La-Co-Ni系合金、La-Ce-Ni系合金、La-Ni-Ag系合金、La-Ni-Fe系合金、La-Ni-Cr系合金、La-Ni-Pd系合金、La-Ni-Cu系合金、La-Ni-Al系合金、La-Ni-Mn系合金、La-Ni-In系合金、La-Ni-Sn系合金、La-Ni-Ga系合金、La-Ni-Si系合金、La-Ni-Ge系合金、La-Ni-Al-Co系合金、La-Ni-Al-Mn系合金、La-Ni-Al-Cr系合金、La-Ni-Al-Cu系合金、La-Ni-Al-Si系合金、La-Ni-Al-Ti系合金、La-Ni-Al-Zr系合金、La-Ni-Mn-Zr系合金、La-Ni-Mn-Ti系合金、La-Ni-Mn-V系合金、La-Ni-Cr-Mn系合金、La-Ni-Cr-Zr系合金、La-Ni-Fe-Zr系合金、La-Ni-Cu-Zr系合金、並びに、上記合金中のLa元素をミッシュメタルで置き換えた合金、また、Ti-Zr-Mn-Mo系合金やZr-Fe-Mn系合金、Mg-Ni系合金等のTi、Fe、Mn、Al、Ce、Ca、Mg、Zr、Nb、V、Co、Ni、Cr元素の2組以上の組合せからなる合金等の水素吸蔵合金、更には、Ti、V、Zr、La、Pd、Pt等の水素化物を形成する(水素吸蔵性を有する)金属、又は上記合金や金属の水素化物(水素を吸蔵した物質)などを用いることができるが、水素の吸蔵と放出が可能な材料であれば、特に上記の組成に限定されるものではない。
【0018】
電解液保持体にはアルカリ性水溶液を電解液に用いる電池、例えば、亜鉛/空気一次電池、ニッケル/水素二次電池、アルカリ電池、アルカリマンガン電池、ニッケル/カドミウム電池などで利用されている様々な電池セパレータの材料などを用いることができる。このような材料は、例えば、特開平7-272771号公報、特開平11-293564号公報、特開2007-154402号公報、特開2007-284845号公報、特開2009-224100号公報、特公表2009-516781号公報、特開2010-70870号公報などに開示されている。具体的な例としては、セロハンなどのイオン透過性フィルム、またはポリプロピレンやポリエチレンなどのフィルム、ポリビニルアルコール系繊維、セルロース系繊維、ポリアミド系繊維、ポリオレフィン系繊維、エチレン-ビニルアルコール系共重合体繊維を、単独、または混合、または積層してなる不織布、TiO2、K2Ti613、ZrO2、Al23、SiO2またはBNなどの無機化合物を多孔性樹脂シートに充填した複合膜、などが挙げられる。また、これらの材料については、極細繊維、芯鞘型複合繊維、親水化処理を施したものなども用いられる。電解液保持体は、空気極と負極を隔離し、電解液を保持できる機能を有していればよく、したがって電解液を保持した状態でイオン伝導性またはイオン透過性を持ち、耐アルカリ性と電解液吸液性を有するものであれば、特に上記に限定されるものではない。
なお、本発明の水素/空気二次電池では、負極に水素吸蔵合金以外の金属または合金を用いる他の一次電池または二次電池のような負極でのデンドライト成長などによる負極と空気極の間の短絡は生じないため、これを意図した機能である、いわゆるセパレート性は、本発明の水素/空気二次電池の電解液保持体に必ずしも必要とするものではない。
【0019】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の水素/空気二次電池であって、前記空気極が、ニッケルと、イリジウムを含むパイロクロア型酸化物と、結着剤と、を含有してなる構成を有している。
この構成により、請求項1で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)イリジウムを含むパイロクロア型酸化物とニッケルとの間における電子的および化学的な相互作用によって、酸素発生と酸素還元に対する高い触媒能が得られ、空気極内部における酸素発生と酸素還元をいずれも円滑に進行させることができる。
(2)イリジウムを含むパイロクロア型酸化物とニッケルとの組み合わせによって、空気極で副反応として生じる可能性があるニッケル自身の酸化や還元が抑制されることによって、ニッケルの消耗が低減され、炭素粉末を用いた空気極や、ニッケルと他の金属系および/または酸化物系の触媒とを混合した構成を有する空気極に比べて、酸素発生・還元サイクルに対する耐久性を向上させることができる。
(3)イリジウムを含むパイロクロア型酸化物とニッケルは、湿式または乾式のいずれの方法でも結着剤との混合、成形が容易であり、特別な装置を用いず空気極を製造することができる。
(4)白金などの高価な貴金属を触媒に用いないことから、これらに対して空気極のコストを低減できる。
【0020】
ここで、イリジウムを含むパイロクロア型酸化物とは、パイロクロア型酸化物のモル組成を表す一般的な表現であるA227-x(但し、-1≦x≦1)において、Bサイトの元素がイリジウムである酸化物であり、Aサイトの元素としてはビスマスや鉛などが挙げられる。ただし、Bサイトのイリジウムの一部を他の元素で部分的に置換したものも当然ながら含まれる。
イリジウムを含むパイロクロア型酸化物は、ニッケル上に担持されているかおよび/またはアルカリ性水溶液と空気との両方に対してニッケルとともに接触した状態にあり、酸素還元および酸素発生のいずれに対しても高い触媒活性を有する。
【0021】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の水素/空気二次電池であって、前記イリジウムを含む前記パイロクロア型酸化物が、ビスマスイリジウム酸化物である構成を有している。
この構成により、請求項2で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)ビスマスイリジウム酸化物は、イリジウムを含むパイロクロア型酸化物の中でも、特にニッケルとの組合せにおいて、空気極における充電時の酸素発生や放電時の酸素還元に対して触媒活性が高く、かつ高い電流密度や高温での作動においても充放電サイクルに対して高い耐久性を有する。
(2)鉛イリジウム酸化物のような他のパイロクロア型酸化物に対して、鉛のような有毒成分を含まないため、電池の製造・使用・廃棄・処分において安全性が高くなる。
(3)ビスマスイリジウム酸化物は、硝酸ビスマスのようなビスマス化合物と塩化イリジウム酸のようなイリジウム化合物を出発原料とし、共沈法と呼ばれる方法により前駆体物質を合成してから加熱処理するという簡単な方法で得られることから、空気極を構成する活性の高い触媒を容易に得ることができる。
【0022】
ここで、ビスマスイリジウム酸化物とは、さきに示したパイロクロア型酸化物の組成式においてBi2Ir27-xで示される酸化物である。ただし、Aサイトのビスマスおよび/またはBサイトのイリジウムの一部を他の元素で部分的に置換したものも当然ながら含まれる。
【0023】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3の内いずれか1項に記載の水素/空気二次電池であって、前記負極に対向して2つの前記空気極が配設され、前記電解液保持体が前記負極と各々の前記空気極との間にそれぞれ配設された構成を有している。
この構成により、請求項1乃至3の内いずれか1項で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)負極に対向して2つの空気極が配設されることにより、負極の両側を電池反応に利用することが可能となり、単電池としてより高い電流での充放電が可能になるとともに、放電電圧の分極を小さくすることができる。
(2)負極に対向して1つの空気極を配設する場合に比べて、電池内部におけるデッドスペースを削減することができる。
【0024】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の水素/空気二次電池であって、複数の前記電解液保持体の少なくとも一部が共通の前記電解液貯蔵部内の前記電解液に浸漬している構成を有している。
この構成により、請求項4で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)複数の電解液保持体の少なくとも一部が共通の電解液貯蔵部内の電解液に浸漬していることにより、電池容器内の電解液貯蔵部の構造を簡単にすることができる
(2)電解液貯蔵部が共通ではなく各電解液保持体に対して配置されている場合に比べて、電解液貯蔵部の容積を小さくすることが可能で、電池容器全体の体積も減少し、体積当たりのエネルギー密度や出力密度を向上させることができる。
【0025】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の水素/空気二次電池であって、複数の前記電解液保持体が共通の前記電解液貯蔵部内で連結されている構成を有している。
この構成により、請求項5で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)複数の電解液保持体が共通の電解液貯蔵部内で連結されていることにより、複数の電解液保持体が2つ以上の空気極に対して、電解液貯蔵部を介して一体となり、電解液保持体の部材点数を少なくすることができる。
(2)空気極と負極の間にある電解液保持体中の電解液量を、複数の空気極と負極の間に対して均一に保つことが可能となり、各々の空気極と負極の間に存在する電解液量のバランスが崩れることを防ぎ、各々の空気極と負極の間の極間電圧が異なることを抑制することができる。
【0026】
請求項7に記載の発明は、請求項1乃至6の内いずれか1項に記載の水素/空気二次電池であって、前記負極及び前記負極に対向する1つ又は2つの前記空気極の長手方向が水平方向と平行に配置される電極対が、前記電池容器内に複数組積層されている構成を有している。
この構成により、請求項1乃至6の内いずれか1項で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)負極及び負極に対向する1つ又は2つの空気極の長手方向が水平方向と平行に配置される電極対が、電池容器内に複数組積層されていることによって、単電池としての最大放電可能電流、出力密度、エネルギー密度を向上させることができる。
(2)単一容器内に複数の電極対が積層されていることによって、単一の電極対からなる電池を複数接続する場合に比べて、電池全体で占める容積を減少させることができる。
【0027】
請求項8に記載の発明は、請求項1乃至6の内いずれか1項に記載の水素/空気二次電池であって、前記負極及び前記負極に対向する1つ又は2つの前記空気極の長手方向が鉛直方向と平行に配置される電極対が、前記電池容器内に複数組並設されている構成を有している。
この構成により、請求項1乃至6の内いずれか1項で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)負極及び負極に対向する1つ又は2つの空気極の長手方向が鉛直方向と平行に配置される電極対が、電池容器内に複数組並設されていることによって、単電池としての最大放電可能電流、出力密度、エネルギー密度を向上させることができる。
(2)単一容器内に複数の電極対が並設されていることによって、単一の電極対からなる電池を複数接続する場合に比べて、電池全体で占める体積を減少させることができる。
(3)空気極と負極を鉛直に配置することによって、放電によって空気極と負極の間で生成する水による圧力上昇と、充電によって空気極と負極の間で減少する水による圧力低下とともに、重力沈降と毛管現象との相互作用が加わることで、充放電時における空気極と負極間での水の減少・増加に対応して、電解液貯蔵部から空気極と負極の間の電解液保持体に電解液をより適切なタイミングで供給でき、または空気極と負極の間の電解液保持体から電解液貯蔵部へ電解液をより適切なタイミングで貯蔵できる。
【発明の効果】
【0028】
以上のように、本発明の水素/空気二次電池によれば、以下のような有利な効果が得られる。
請求項1に記載の発明によれば、以下のような有利な効果が得られる。
(1)空気極と負極の間の電解液量の増加または減少を電解液保持体と電解液貯蔵部によって調整し、空気極と負極の間の電解液量を常に一定に保つことができることから、放電にともなう空気極と負極の間の電解液量の増加による電解液の電池容器からの漏洩、電解液量の増加による電池抵抗の増大、電解液量の増加による電極上での反応分布の不均一化による電極反応抵抗の増大、負極の水素吸蔵合金に吸蔵された水素の放電時における利用率の低下を抑制できる。
(2)(1)の効果とともに、充電時にともなう空気極と負極の間の電解液量の減少による負極や空気極の電極反応抵抗の増大、電極上での反応分布の不均一化による電池抵抗の増大、負極の水素吸蔵合金に吸蔵される水素量の減少を抑制できる。
(3)(1)および(2)の効果にともなって、電池の放電容量および充電容量の増加、水素吸蔵合金の利用率の向上、全電池抵抗の低減が可能となり、電池の出力密度およびエネルギー密度を向上させることができる。
(4)さらに、(1)および(2)の効果にともなって、電解液の漏洩や電池反応に伴う発熱が抑制され、電池の安全性を向上させることができる。
(5)さらに、(1)および(2)の効果にともなって、電池の充放電サイクル特性が向上し、電池寿命を長くすることができる。
(6)さらに、空気極と負極の間に必要最適量の電解液を保持することができ、かつ電池の充放電容量の大小に関わらず必要最適量の電解液を保持することができることから、多様な電池容量や電池サイズに対して、上記に述べた効果を発揮することができる。
【0029】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の効果に加えて以下のような有利な効果が得られる。
(1)酸素発生と酸素還元に対する高い触媒性が得られ、空気極内部における酸素発生と酸素還元をいずれも円滑に進行させることができることから、導電性物質としてのニッケルと触媒としてのイリジウムを含むパイロクロア型酸化物を用いる場合以外に比べて、充電及び放電における空気極の抵抗を低減できる。
(2)(1)の効果とともに、空気極の抵抗が低減できることによって電池抵抗が減少し、電池の電圧効率およびエネルギー効率を向上することができる。
(3)導電性物質としてニッケル以外の物質を用いる場合や、触媒にイリジウムを含むパイロクロア型酸化物以外の物質を用いる場合に比べて、導電性物質自身の酸化還元による消耗を抑制することができる。
(4)導電性物質としてニッケル以外の物質を用いる場合や、触媒にイリジウムを含むパイロクロア型酸化物以外の物質を用いる場合に比べて、触媒自身の酸化還元による消耗を抑制することができる。
(5)(3)および(4)の効果とともに、空気極の耐久性が向上され、電池の寿命を長くすることができる。
【0030】
請求項3に記載の発明によれば、請求項2に記載の効果に加えて以下のような有利な効果が得られる。
(1)イリジウムを含むパイロクロア型酸化物の中でも、ビスマスイリジウム酸化物は特に酸素発生や酸素還元に対する触媒活性が高く、高い電流密度や高温での作動においても充放電サイクルに対して空気極が高い耐久性を有することから、電池の充放電可能な最大電流を向上させることが可能となり、また使用温度範囲を広くすることができる。
(2)(1)の効果とともに、電池の充放電可能な最大電流が向上することから、電池の最大出力をより高くすることが可能となる。
(3)(1)および(2)の効果とともに、高電流、高温での作動においても耐久性に優れた電池を提供することができる。
(4)ビスマスイリジウム酸化物は、鉛イリジウム酸化物のような有害物質を含まないことから、電池の製造・使用・廃棄・処分において安全性が高くなることによって、定置用電源、家庭用電源、移動体用電源、電気自動車・ハイブリッド自動車用電源、電動バイク用電源などにおいて、ライフサイクルにおける安全性やリサイクル性の高い二次電池を提供することが出来る。
(5)(4)の効果とともに、補聴器用電源やモバイル機器用電源など人体に近い位置で使用される機器の電源として用いる場合においても、安全性が高い二次電池を提供することができる。
【0031】
請求項4に記載の発明によれば、請求項1乃至3の内いずれか1項に記載の効果に加えて以下のような有利な効果が得られる。
(1)単電池としてより高い電流での充放電が可能になるとともに、充放電時の分極を小さくすることができることから、充放電可能な最大電流が向上し、かつ電池のエネルギー密度や出力密度を高くすることができる。
(2)(1)の効果とともに、負極に対向して1つの空気極を配設する場合に比べて、電池内部におけるデッドスペースを削減することができることから、電池のエネルギー密度や出力密度をさらに向上させることができる。
【0032】
請求項5に記載の発明によれば、請求項4に記載の効果に加えて以下のような有利な効果が得られる。
(1)電池容器内の電解液貯蔵部の構造を簡素化してその容積を小さくすることができることから、電池全体の体積も減少し、体積当たりのエネルギー密度や出力密度が高く、高密度に実装することができると共に高出力性に優れる。
【0033】
請求項6に記載の発明によれば、請求項5に記載の効果に加えて以下のような有利な効果が得られる。
(1)電解液保持体の部材点数が少なく、複数の空気極と負極の間に対して電解液保持体中の電解液量を均一に保つことができ、各々の空気極と負極の間に存在する電解液量のバランスが崩れることを防ぎ、極間電圧が異なることを抑制することができ、出力の均一性、安定性に優れる。
【0034】
請求項7に記載の発明によれば、請求項1乃至6の内いずれか1項に記載の効果に加えて以下のような有利な効果が得られる。
(1)複数の空気極と負極を配置し、大きな電極面積と電池容量を確保することにより、単電池としての出力特性、エネルギー密度を向上させることができ、再充電性と耐久性に優れる。
【0035】
請求項8に記載の発明によれば、請求項1乃至6の内いずれか1項に記載の効果に加えて以下のような有利な効果が得られる。
(1)複数の空気極と負極を配置し、大きな電極面積と電池容量を確保することにより、単電池としての出力特性を向上させることができ、再充電性と耐久性に優れる。
(2)充放電時における空気極と負極の間での水の減少・増加に対応して、電解液保持体と電解液貯蔵部との間で、電解液をより適切なタイミングで供給または貯蔵して電解液保持体に保持される電解液量を常に一定に保ち、安定した充放電を行うことができ、動作安定性、高品質性、長寿命性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施の形態1の水素/空気二次電池の要部断面模式図
【図2】本発明の実施の形態1の水素/空気二次電池の変形例の要部断面模式図
【図3】本発明の実施の形態2の水素/空気二次電池の要部断面模式図
【図4】本発明の実施の形態2の水素/空気二次電池の変形例の要部断面模式図
【図5】本発明の実施の形態3の水素/空気二次電池の要部断面模式図
【図6】本発明の実施の形態4の水素/空気二次電池の要部断面模式図
【図7】本発明の実施の形態5の水素/空気二次電池の要部断面模式図
【図8】本発明の実施の形態6の水素/空気二次電池の要部断面模式図
【図9】水素/空気二次電池の充放電電圧のサイクル依存性を示す図
【図10】水素/空気二次電池の放電曲線を示す図
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の実施の形態における水素/空気二次電池について、図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1の水素/空気二次電池の要部断面模式図である。
図1中、1は本発明の実施の形態1の水素/空気二次電池、1aは水素/空気二次電池1の電池容器、2はニッケルと、イリジウムを含むパイロクロア型酸化物であるビスマスイリジウム酸化物と、結着剤と、を混合して形成され、電池容器1a内に水平に配設された空気極、3は空気極2に対向して電池容器1a内に水平に配設された水素吸蔵合金を用いた負極、4は空気極2と負極3との間に配設されアルカリ性水溶液である電解液を保持する電解液保持体、5は空気極2の電解液保持体4と反対の側に、放電に必要な酸素の空気極2への取り込み若しくは充電で発生する酸素の空気極2からの散逸が可能なように電池容器1aに形成された通気路、6は電池容器1の長手方向の一端に形成された電解液貯蔵部であり、電解液保持体4の一部が電解液貯蔵部6内の電解液に浸漬し、電解液保持体4と電解液貯蔵部6の間では電解液の流れが確保されている。

【0038】
放電の際には空気極2と負極3の間で生成した水によって電解液が増加するが、これは電解液保持体4を介して電解液貯蔵部6に貯蔵され、充電の際には空気極2と負極3の間で水の分解によって電解液が減少するが、これは電解液保持体4を介して電解液貯蔵部6から補充される。この結果、空気極2と負極3の間では電解液保持体4に保持される電解液量が常に一定に保たれるようになる。
尚、電解液貯蔵部6は、充電反応により電解液が減少する電解液保持体4に十分な電解液を供給し、放電反応により電解液保持体4で増加する電解液を確実に貯蔵できるように、電池の充放電容量に適した体積となっている。
通気路5は単に電池容器1に形成された開口部でもよい。

【0039】
次に、本発明の実施の形態1の水素/空気二次電池の変形例について説明する。尚、実施の形態1と同様のものについては、同じ符号を付して説明を省略する。
図2は本発明の実施の形態1の水素/空気二次電池の変形例の要部断面模式図である。
図2において、実施の形態1の変形例における水素/空気二次電池1Aが実施の形態1と異なるのは、電池容器1aに電解液保持体4の両端部が電解液と浸漬するように2つの電解液貯蔵部6が形成されている点である。
これにより、放電によって空気極2と負極3の間で生成する水による圧力上昇と、充電によって空気極2と負極3の間で減少する水による圧力低下を利用して、放電時には電解液保持体4で増加した分の電解液を両端の電解液貯蔵部6に貯蔵することができ、また充電時には電解液保持体4で減少した分の電解液を両端の電解液貯蔵部6から供給することができる。この結果、空気極2と負極3の間では電解液保持体4に保持される電解液量が常に一定に保たれるようになる。

【0040】
以上のように構成された実施の形態1における水素/空気二次電池によれば、以下の作用を有する。
(1)充電反応により減少する電解液の供給又は放電反応により増加する電解液の貯蔵を行う電解液貯蔵部を電池容器内に有し、電解液保持体の少なくとも一部が電解液貯蔵部内の電解液に浸漬していることにより、放電時には空気極と負極の間で生成する水による圧力上昇により、電解液保持体を介して空気極と負極の間で放電によって増加した分の電解液を電解液貯蔵部に貯蔵することが可能となり、また充電時には空気極と負極の間で減少する水による圧力低下を利用して、電解液貯蔵部から電解液保持体を介して充電によって減少した分の電解液を空気極と負極の間に供給することが可能となる。
(2)また、これによって空気極と負極の間では電解液保持体に保持された電解液量を常に一定に保つことができる。
(3)また、上記のような電解液の供給と貯蔵が、電解液保持体を介して、空気極-負極間と電解液貯蔵部との間で行われるため、空気極からの電解液の漏洩を抑制することが可能となる。
(4)また、上記のような電解液の供給と貯蔵が、電解液保持体を介して、空気極-負極間と電解液貯蔵部との間で行われるため、空気極-負極間に存在する電解液量を電解液保持体の空隙率を変えることで調整が可能となり、必要最適量の電解液量を空気極と負極の間に常に保持することができる。
(5)また、上記のような電解液の供給と貯蔵が、電解液保持体を介して、空気極-負極間と電解液貯蔵部との間で行われるため、空気極-負極間に存在する電解液量を電解液保持体の空隙率と厚みを変えることで調整が可能となり、電池の充放電容量の大小に関わらず必要最適量の電解液量を空気極と負極の間に常に保持することができる。
(6)イリジウムを含むパイロクロア型酸化物とニッケルとの間における電子的および化学的な相互作用によって、酸素発生と酸素還元に対する高い触媒能が得られ、空気極内部における酸素発生と酸素還元をいずれも円滑に進行させることができる。
(7)イリジウムを含むパイロクロア型酸化物とニッケルとの組み合わせによって、空気極で副反応として生じる可能性があるニッケル自身の酸化や還元が抑制されることによって、ニッケルの消耗が低減され、炭素粉末を用いた空気極や、ニッケルと他の金属系および/または酸化物系の触媒とを混合した構成を有する空気極に比べて、酸素発生・還元サイクルに対する耐久性を向上させることができる。
(8)イリジウムを含むパイロクロア型酸化物とニッケルは、湿式または乾式のいずれの方法でも結着剤との混合、成形が容易であり、特別な装置を用いなくても空気極を製造することができる。
(9)白金などの高価な貴金属を触媒に用いないことから、これらに対して空気極のコストを低減できる。
(10)空気極を形成するビスマスイリジウム酸化物は、イリジウムを含むパイロクロア型酸化物の中でも、特にニッケルとの組合せにおいて、空気極における充電時の酸素発生や放電時の酸素還元に対して触媒活性が高く、かつ高い電流密度や高温での作動においても充放電サイクルに対して高い耐久性を有する。
(11)鉛イリジウム酸化物のような他のパイロクロア型酸化物に対して、鉛のような有毒成分を含まないため、電池の製造・使用・廃棄・処分において安全性が高くなる。
(12)ビスマスイリジウム酸化物は、硝酸ビスマスのようなビスマス化合物と塩化イリジウム酸のようなイリジウム化合物を出発原料とし、共沈法と呼ばれる方法により前駆体物質を合成してから加熱処理するという簡単な方法で得られることから、空気極を構成する活性の高い触媒を容易に得ることができる。

【0041】
(実施の形態2)
実施の形態2における水素/空気二次電池について説明する。尚、実施の形態1と同様のものについては、同じ符号を付して説明を省略する。
図3は本発明の実施の形態2の水素/空気二次電池の要部断面模式図であり、図4は本発明の実施の形態2の水素/空気二次電池の変形例の要部断面模式図である。
図3において、実施の形態2の水素/空気二次電池1Bが実施の形態1と異なるのは、空気極2、負極3、電解液保持体4が鉛直方向に配置されている点であり、図3では電解液貯蔵部6がこれらの下方に配置されている。なお、図には示していないが、図3の上下を逆にして電解液貯蔵部6が上となるように配置したものも、本実施の形態2に含まれる。
また、図4において、実施の形態2の変形例の水素/空気二次電池1Cが実施の形態2と異なるのは、電池容器1aに電解液保持体4の両端部が電解液に浸漬するように2つの電解液貯蔵部6が形成されている点であり、実施の形態1の変形例における水素/空気二次電池1Aを鉛直に配置したものに相当する。

【0042】
以上のように構成された実施の形態2における水素/空気二次電池によれば、実施の形態1の作用に加え、以下の作用を有する。
(1)空気極と負極を鉛直に配置することによって、放電によって空気極と負極の間で生成する水による圧力上昇と、充電によって空気極と負極の間で減少する水による圧力低下とともに、重力沈降と毛管現象との相互作用が加わることで、充放電時における空気極と負極間での水の減少・増加に対応して、電解液貯蔵部から空気極と負極の間の電解液保持体に電解液をより適切なタイミングで供給でき、または空気極と負極の間の電解液保持体から電解液貯蔵部へ電解液をより適切なタイミングで貯蔵できる。

【0043】
(実施の形態3)
実施の形態3における水素/空気二次電池について説明する。尚、実施の形態1又は2と同様のものについては、同じ符号を付して説明を省略する。
図5は本発明の実施の形態3の水素/空気二次電池の要部断面模式図である。
図5において、実施の形態3の水素/空気二次電池1Dが実施の形態2の変形例と異なるのは、負極3の両側に対向して2つの空気極2が配設され、電解液保持体4が負極3と各々の空気極2との間にそれぞれ配設されている点である。なお、図5の構成を一組として、1つの電池容器1aの中に複数組を並設することもできる。このとき、隣接する空気極2の間では通気路5を共通化することができる。
尚、本実施の形態では、負極3、空気極2、電解液保持体4を電池容器1a内で鉛直方向に配置したが、実施の形態1と同様に水平方向に配置する構造としてもよい。

【0044】
以上のように構成された実施の形態3における水素/空気二次電池によれば、実施の形態2の作用に加え、以下の作用を有する。
(1)負極に対向して2つの空気極が配設されることにより、負極の両側を電池反応に利用することが可能となり、単電池としてより高い電流での充放電が可能になるとともに、放電電圧の分極が小さくなることで、エネルギー密度および出力密度を向上させることができる。
(2)負極に対向して1つの空気極を配設する場合に比べて、電池内部におけるデッドスペースを削減することができる。

【0045】
(実施の形態4)
実施の形態4における水素/空気二次電池について説明する。尚、実施の形態1乃至3と同様のものについては、同じ符号を付して説明を省略する。
図6は本発明の実施の形態4の水素/空気二次電池の要部断面模式図である。
図6において、実施の形態4の水素/空気二次電池1Eが実施の形態3と異なるのは、2つの電解液保持体4a,4bの両端部がそれぞれ共通の電解液貯蔵部6内の電解液に浸漬している点である。なお、図6の構成を一組として、1つの電池容器1aの中に複数組を並設することもできる。このとき、隣接する空気極2の間では通気路5を共通化することができる。
尚、本実施の形態では、負極3、空気極2、電解液保持体4a,4bを電池容器1a内で鉛直方向に配置したが、実施の形態1と同様に水平方向に配置する構造としてもよい。

【0046】
以上のように構成された実施の形態4における水素/空気二次電池によれば、実施の形態3の作用に加え、以下の作用を有する。
(1)複数の電解液保持体の少なくとも一部が共通の電解液貯蔵部内の電解液に浸漬していることにより、電池容器内の電解液貯蔵部の構造を簡単にすることができる。
(2)電解液貯蔵部が共通ではなく各電解液保持体に対して配置されている場合に比べて、電解液貯蔵部の容積を小さくすることが可能で、電池全体の体積も減少し、体積当たりのエネルギー密度や出力密度を向上させることができる。

【0047】
(実施の形態5)
実施の形態5における水素/空気二次電池について説明する。尚、実施の形態1乃至4と同様のものについては、同じ符号を付して説明を省略する。
図7は本発明の実施の形態5の水素/空気二次電池の要部断面模式図である。
図7において、実施の形態5の水素/空気二次電池1Fが実施の形態4と異なるのは、2つの電解液保持体4a,4bが共通の電解液貯蔵部6内で連結部4cによって連結されて一体化されている点である。なお、電解液保持体4a、4bと接続部4cはもとより一体であるものであってもよい。また、図7の構成を一組として、1つの電池容器1aの中に複数組を並設することもできる。このとき、隣接する空気極2の間では通気路5を共通化することができる。
尚、本実施の形態では、負極3、空気極2、電解液保持体4a、4bを電池容器1a内で鉛直方向に配置したが、実施の形態1と同様に水平方向に配置する構造としてもよい。

【0048】
以上のように構成された実施の形態5における水素/空気二次電池によれば、実施の形態4の作用に加え、以下の作用を有する。
(1)2つの電解液保持体が共通の電解液貯蔵部内で連結されていることにより、2つの電解液保持体が2つの空気極に対して、電解液貯蔵部を介して一体となり、電解液保持体の部材点数を少なくすることができる。
(2)空気極と負極の間にある電解液保持体中の電解液量を、2つの空気極と負極の間に対して均一に保つことが可能となり、各々の空気極と負極の間に存在する電解液量のバランスが崩れることを防ぎ、各々の空気極と負極の間の極間電圧が異なることを抑制することができる。

【0049】
(実施の形態6)
実施の形態6における水素/空気二次電池について説明する。尚、実施の形態1乃至5と同様のものについては、同じ符号を付して説明を省略する。
図8は本発明の実施の形態6の水素/空気二次電池の要部断面模式図である。
図8において、実施の形態6の水素/空気二次電池1Gが実施の形態5と異なるのは、実施の形態5の水素/空気二次電池1Fにおける負極3及び負極3に対向する2つの空気極2の長手方向が鉛直方向と平行に配置される電極対が、電池容器1a内に2組並設され、電解液保持体4b同士が共通の電解液貯蔵部6内で連結部4dによって連結されて蛇行状に一体化され、隣接する2つの空気極2の間に電池容器1aの外部と連通する共通の通気路5aが形成されている点である。
これにより、各々の空気極2と負極3の間の極間電圧のばらつきを抑制して、均一化することができる。

【0050】
本実施の形態では、上記のように全ての電解液保持体4a,4bを連結部4c,4dで接続し、共通の電解液貯蔵部6で電解液に浸漬するようにしたが、実施の形態3乃至5の水素/空気二次電池1D~1Fの構成を電池容器1a内に並設してもよい。
また、本実施の形態では、電池容器1a内に並設する電極対の数が2組の場合について説明したが、電極対の数は、適宜、選択することができる。
また、負極3、空気極2、電解液保持体4a、4bを電池容器1a内で鉛直方向に配置したが、実施の形態1と同様に水平方向に配置する構造としてもよい。なお、電解液保持体4a、4bと接続部4c、4dはもとより一体であるものであってもよい。

【0051】
以上のように構成された実施の形態5における水素/空気二次電池によれば、実施の形態5の作用に加え、以下の作用を有する。
(1)負極及び負極に対向する2つの空気極の長手方向が鉛直方向と平行に配置される電極対が、電池容器内に2組並設されていることによって、単電池としての最大放電可能電流、出力密度、エネルギー密度を向上させることができる。
(2)単一容器内に複数の電極対が並設されていることによって、単一の電極対からなる電池を複数接続する場合に比べて、電池全体で占める体積を減少させることができる。
(3)空気極と負極を鉛直に配置することによって、放電によって空気極と負極の間で生成する水による圧力上昇と、充電によって空気極と負極の間で減少する水による圧力低下とともに、重力沈降と毛管現象との相互作用が加わることで、充放電時における空気極と負極間での水の減少・増加に対応して、電解液貯蔵部から空気極と負極の間の電解液保持体に電解液をより適切なタイミングで供給でき、または空気極と負極の間の電解液保持体から電解液貯蔵部へ電解液をより適切なタイミングで貯蔵できる。
【実施例】
【0052】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
Bi(NO33・5H2OとH2IrCl6・6H2Oを同じ濃度となるように75℃の蒸留水に溶解し、攪拌・混合してから、2mol/LのNaOH水溶液を加えた。
その際、浴温度は75℃で、酸素バブリングを行いながら3日間攪拌した。これによって生じた沈殿物を含む溶液を85℃で保持して蒸発乾固させてペースト状とした。このペースト状のものを蒸発皿に移し、120℃、12時間乾燥させてから乳鉢で粉砕した後に、空気雰囲気中で600℃、2時間焼成した。次に、焼成物中に含まれる副生成物を除去するために、70℃の蒸留水を用いて吸引ろ過し、パイロクロア型のビスマスイリジウム酸化物を単離した。さらに、これを120℃、12時間乾燥させた後に、乳鉢を用いて粉砕してビスマスイリジウム酸化物粉末を得た。
このようにして得られたビスマスイリジウム酸化物粉末、ニッケル粉末(純度99.8%、粒径10~20μm)、市販のPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)粒子を重量比で20:70:10となるように混合して粘土状とした後、常温で30分程度乾燥させたものを集電体となるニッケル網上に100kg/cm2でディスク状(直径13mm、厚さ0.3mm)にプレス成形してから、窒素雰囲気中370℃で13分間熱処理して空気極を作製した。
【実施例】
【0053】
水素吸蔵合金(MmNi4.10Mn0.40Al0.10Co0.50、容量密度310mAh/g)とニッケル粉末(純度99.8%,平均粒径3~7μm)とポリエチレンを重量比2:3:0.12で混合後、5t/cm2でディスク状にプレス成形し、さらに真空加熱炉で150℃で60分間熱処理して、空気極とほぼ同じ面積の負極(理論容量31mAh)を作製した。負極にはリードとしてニッケルリボンを抵抗溶接した。
上記の空気極および負極と、電解液保持体として市販のアルカリ電池用セパレータ(ユアサメンブレンシステムズ製、登録商標名:ユミグラフター)と、電解液として7mol/LのKOH水溶液を用い、図3に示した構造の水素/空気二次電池を、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)を電池容器の材料に使って作製した。PTFE容器には電解液貯蔵部となる空間を配置し、その内部に電解液5mLを注入した。また、電解液保持体の面積は、空気極および負極よりも大きくし、かつ電解液貯蔵部内の電解液に電解液保持体の一部が浸漬するようにした。なお、空気極のリードにはニッケル線を使用した。
【実施例】
【0054】
(比較例1)
電池容器に電解液貯蔵部となる空間を設けず、かつ電解液保持体を空気極および負極とほぼ同じ面積にしたことを除いて、実施例1と同じ水素/空気二次電池を作製した。尚、電解液保持体に保持された電解液は約60μLであった。
【実施例】
【0055】
実施例1及び比較例1の電池を室温、2mAで充放電し、充電時および放電時の電池電圧を記録した結果を図9に示す。
図9中、横軸は充放電のサイクル数(回)であり、縦軸は放電時及び充電時の電池電圧(V)である。
実施例1では、300サイクル以上の充放電で可能であり、平均放電電圧0.9~0.73V(白丸参照)、平均充電電圧1.5V(灰色丸参照)の安定な電圧を示した。
これに対し、比較例1では、初期の充放電試験では実施例1とほぼ同じ放電電圧と充電電圧を示した(白四角、灰色四角参照)が、10サイクルで充放電が終了し、11サイクルからは充放電ができなくなった。比較例1の電池を解体した結果、電解液保持体にはほとんど電解液が残っていないことがわかった。
以上の結果から、充放電時の電解液保持体における電解液(水)の減少、増加に対し、電解液貯蔵部からの電解液の供給及び電解液貯蔵部への電解液の貯蔵を行うことにより、電解液保持体に保持される電解液量を略一定に保つことができ、安定した充放電を繰り返し行うことが可能となり、動作安定性、高品質性、長寿命性に優れる水素/空気二次電池を実現できることが明らかとなった。
【実施例】
【0056】
(実施例2)
実施例1と同じ方法で作製したビスマスイリジウム酸化物粉末と、ニッケル粉末(純度99.8%、粒径10~20μm)、市販のPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)粒子を重量比で20:70:10となるように混合し、ニッケル網とともにロールプレス機で加圧した後、窒素雰囲気中370℃で13分間熱処理して、角型の空気極(45mm×45mm,厚さ0.2mm)を作製した。また、実施例1と同じ水素吸蔵合金を用いて、これを発泡ニッケル内にEVA(エチルビニルアセテート)とともにロールプレスして成形し、空気極とほぼ同じ面積の負極(理論容量600mAh)を作製した.なお、水素吸蔵合金と発泡ニッケルとEVAの重量比は1:1:0.01とした。
上記の空気極および負極と、電解液保持体として市販のアルカリ電池用セパレータ(ユアサメンブレンシステムズ製、登録商標名:ユミグラフター)と不織布、電解液として7mol/LのKOH水溶液を用い、図2に示した構造の水素/空気二次電池を、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)を電池容器の材料に使って作製した。PTFE容器には電解液貯蔵部となる空間を配置し、その内部に電解液5mLを注入した。また、電解液保持体の面積は、空気極および負極よりも大きくし、かつ電解液貯蔵部内の電解液に電解液保持体の一部が浸漬するようにした。なお、空気極のリードにはニッケル線を使用した。
【実施例】
【0057】
(比較例2)
電池容器に電解液貯蔵部となる空間を設けず、かつ電解液保持体を空気極および負極とほぼ同じ面積にしたことを除いて、実施例2と同じ水素/空気二次電池を作製した。尚、電解液保持体に保持された電解液は約1mLであった。
【実施例】
【0058】
実施例2及び比較例2の電池を室温、一定電流で充放電したときの放電時の電池電圧を記録した結果を図10に示す。なお、実施例2は50mA、比較例2は30mAでの結果である。
実施例2では、50mAでの放電に対して10時間もの放電が可能であり、安定した放電電圧が得られた。これに対して、比較例2では実施例2よりも低い電流で放電したにも関わらず放電時間は7.5時間であった。このとき実施例2の放電電気量は508mAh、比較例2の放電電気量は219mAhであり、実施例2は比較例2に対して2倍以上の放電が可能となった。また、体積エネルギー密度は実施例2が308Wh/L、比較例2は115Wh/Lであり、実施例2では比較例2に対してエネルギー密度が2.7倍に向上した。また、安定な放電電圧が得られる放電可能な限界電圧を0.1Vとして、放電可能な最大電流値を測定した結果、実施例2は600mA、比較例2は150mAであり、比較例2に対して実施例2は放電可能な最大電流値が4倍に向上した。さらに、負極の水素吸蔵合金の利用率は実施例2が84%、比較例2が29%であり、利用率が約3倍に向上した。
以上の結果から、充放電時の電解液保持体における電解液(水)の減少、増加に対し、電解液貯蔵部からの電解液の供給及び電解液貯蔵部への電解液の貯蔵を行うことにより、電解液保持体に保持される電解液量を略一定に保つことができ、安定した放電を行うことが可能となり、これによって放電可能な最大電流値、出力、エネルギー密度が向上し、動作安定性、高品質性、長寿命性とともに放電特性に優れる水素/空気二次電池を実現できることが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、充電や放電の間の電圧の大きな変化を抑制し、充放電サイクル特性に優れ、電解液の漏洩がなく、再充電性や耐久性に優れ、特に負極や空気極の電極面積や電池容量が大きい場合や、さらには放電電流や充電電流が大きな作動の場合においても、安定した充放電を行うことができる動作安定性、高品質性、長寿命性に優れた水素/空気二次電池を提供し、パソコン、携帯電話、携帯音楽プレーヤー、携帯ビデオプレーヤー、携帯書籍端末などのモバイル機器の電源、電気自動車、ハイブリッド自動車、電動バイク、電動自転車、ショベルカーなどの電動作業機械や電動建設機械などの動力用または補助用電池、自動車用、家庭用、業務用、産業用の燃料電池の電力貯蔵用・出力調整用電池、太陽光発電、風力発電、水力発電、原子力発電などの電力貯蔵・出力調整用電池などに用いることができる。
【符号の説明】
【0060】
1,1A,1B,1C,1D,1E,1F,1G 水素/空気二次電池
1a 電池容器
2 空気極
3 負極
4,4a,4b 電解液保持体
4c,4d 接続部
5,5a 通気路
6 電解液貯蔵部
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
3
【図5】
4
【図6】
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【図7】
6
【図8】
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【図9】
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【図10】
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