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明細書 :セルラーゼ測定試薬およびセルラーゼの測定方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5359169号 (P5359169)
公開番号 特開2010-088349 (P2010-088349A)
登録日 平成25年9月13日(2013.9.13)
発行日 平成25年12月4日(2013.12.4)
公開日 平成22年4月22日(2010.4.22)
発明の名称または考案の名称 セルラーゼ測定試薬およびセルラーゼの測定方法
国際特許分類 C12Q   1/34        (2006.01)
FI C12Q 1/34
請求項の数または発明の数 3
全頁数 7
出願番号 特願2008-261575 (P2008-261575)
出願日 平成20年10月8日(2008.10.8)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 平成20年5月1日 社団法人日本分析化学会発行の「第69回分析化学討論会講演要旨集」において文書をもって発表
特許法第30条第1項適用 平成20年5月15日 「第69回分析化学討論会」に発表
審査請求日 平成23年9月15日(2011.9.15)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】505089614
【氏名又は名称】国立大学法人福島大学
【識別番号】591061208
【氏名又は名称】株式会社三菱化学アナリテック
発明者または考案者 【氏名】高貝慶隆
【氏名】小玉賢志
個別代理人の代理人 【識別番号】100097928、【弁理士】、【氏名又は名称】岡田 数彦
審査官 【審査官】高山 敏充
参考文献・文献 特開2000-245499(JP,A)
特表平11-511789(JP,A)
ANALYTICAL SCIENCES,2000年,Vol. 16,pp.1249-1254
調査した分野 C12Q 1/00-3/00
CAplus/MEDLINE/WPIDS/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
セルロースの構成グルコースの水酸基に反応基を介して金属錯体を結合した金属錯体結合型セルロースから成ることを特徴とするセルラーゼ測定試薬。
【請求項2】
金属錯体が金属フタロシアニンである請求項1に記載のセルラーゼ測定試薬。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のセルラーゼ測定試薬にセルラーゼを作用させてセルロースのグリコシド結合を加水分解し、生成する加水分解物に固定された金属錯体中の金属の濃度に基づき、セルラーゼの濃度を測定することを特徴とするセルラーゼの測定方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明はセルラーゼ測定試薬およびセルラーゼの測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バイオエネルギー関連技術において、セルロースを糖化させるセルラーゼに大きな注目が集まっている。現在は、サトウキビ、トウモロコシ等を主原料とする糖分からエタノール・メタノールへと変換されているが、穀物などの食資源にエネルギー源を依存することは望ましい姿とは言えない。そこで、近年、食資源の代替として、植物、木材、綿、紙などの主成分であるセルロースを利用することが考えられているが、工業化に至っていない。この理由として、高性能なセルラーゼ(セルロースを分解する酵素)を生産する微生物の発見に至っていないことがある。更に、この理由として、セルラーゼ測定技術が乏しいことが挙げられる。
【0003】
従来、セルラーゼの測定方法の1つとして、セルロースを染色した後にセルラーゼで加水分解し、溶出してきた染色物について、光度法で測定する方法(非特許文献1)、フローインジェクション分析法(FIA法)で測定する方法(非特許文献2)が知られている。
【0004】

【非特許文献1】M.Leisola他、Anal.Biochem.,70,592-599(1976)
【非特許文献2】P.J.Worsfold他、J.Biotechnol.,14,81-87(1990)
【0005】
ところで、セルラーゼを生産する微生物のスクリーニングにおいては、有能な微生物を見落とさないようにするための観点から、特に、高感度でセルラーゼを測定することが重要であるが、光度法やFIA法を利用した上記の従来法は、セルラーゼの測定感度の点で不十分である。また、上記の方法においては、分解物が一定の化学種でないことや溶出した色素がセルラーゼと再会合して吸収波長がシフトするという問題がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、その目的は、高感度で迅速にセルラーゼを測定し得るセルラーゼ測定試薬およびセルラーゼの測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明の第1の要旨は、セルロースの構成グルコースの水酸基に反応基を介して金属錯体を結合した金属錯体結合型セルロースから成ることを特徴とするセルラーゼ測定試薬に存する。
【0008】
そして、本発明の第2の要旨は、上記のセルラーゼ測定試薬にセルラーゼを作用させてセルロースのグリコシド結合を加水分解し、生成する加水分解物に固定された金属錯体中の金属の濃度に基づき、セルラーゼの濃度を測定することを特徴とするセルラーゼの測定方法に存する。
【発明の効果】
【0009】
本発明のセルラーゼ測定試薬およびセルラーゼの測定方法は、金属を指標として利用するため、例えばppbレベルでセルラーゼによるセルロースの加水分解物を測定することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0011】
先ず、本発明のセルラーゼ測定試薬について説明する。本発明のセルラーゼ測定試薬は金属錯体結合型セルロースから成る。
【0012】
セルロースは、β-1、4-グルカン構造を有する多糖類であり、その具体例としては、高等植物由来のセルロース[例えば、木材繊維(針葉樹、広葉樹などの木材パルプ等)、種子毛繊維(コットンリンター、ボンバックス綿、カポック等)、ジン皮繊維(例えば、麻、コウゾ、ミツマタ等)、葉繊維(例えば、マニラ麻、ニュージーランド麻など)等の天然セルロース繊維(パルプ繊維)等]、動物由来のセルロース(ホヤセルロース等)、バクテリア由来のセルロース、化学的に合成されたセルロース(再生セルロース(レーヨン、セロファン等))等が挙げられる。
【0013】
本発明で使用するセルロースは、上記のようなセルロースに限定されず、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース誘導体であってもよい。また、取扱時の形状は、紙状、繊維状、綿状などの何れであってもよい。
【0014】
金属錯体は、金属原子を中心として、周囲に配位子が結合した構造を持つ化合物であり、配位子としては、フタロシアニン、ポルフィリン、サレン、キノン、エチレンジアミン等の窒素を含む配位子が好ましく、金属としては、Co、Fe、Cr、Mn、Cu、Mg、Vから成る群より選択される少なくとも一種が好ましい。これらの中では、フタロシアニンブルーと呼ばれ、反応染料の1つとして知られている銅フタロシアニンが好ましい。
【0015】
本発明において、金属錯体結合型セルロースは、セルロースの構成グルコースの水酸基に反応基を介して金属錯体を結合した構造を有し、次のようにして得られる。
【0016】
すなわち、金属錯体にグルコースの水酸基と反応し得る官能基を有する反応基を導入し、当該金属錯体とセルロースとを反応させる。従来よりセルロース用反応染料は数多く知れており、本発明においては、セルロース用反応染料として使用されている反応基と同様の反応基を制限なく使用することが出来る。例えば、セルロースのヒドロキシル基と共有化学結合の形成下に反応し得る基として、特開平8-48897号公報の段落番号0023に記載されている基を何れも使用し得る。金属錯体に導入する前記の反応基の数は、1つに限定されず、複数個であってもよい。反応基の道入は、金属錯体および反応基の種類に従い、従来公知の方法に準拠して容易に行うことが出来る。銅フタロシアニン反応染料の一例としては、銅フタロシアニンテトラスルホン酸ナトリウム、銅フタロシアニントリスルホン酸ナトリウム、銅フタロシアニンジスルホン酸ナトリウム、銅フタロシアニンモノスルホン酸ナトリウム及びこれらの混合物などが挙げられる。
【0017】
本発明のセルラーゼ測定試薬(金属錯体結合型セルロース)において、金属錯体の割合は、金属錯体結合型セルロース1.0g当たり通常10~50μmolであり、セルロースのグルコース400~800個当たり通常1個である。
【0018】
本発明において、金属錯体として銅フタロシアニンを使用する場合は、セルロース用反応染料として既に市販されているフタロシアニンブルー(C.I.Reactive Blue 21)を利用することが出来る。フタロシアニンブルーで染色された綿は「青綿(ブルーコットン)」と呼ばれて市販されている。
【0019】
次に、本発明に係るセルラーゼの測定方法について説明する。本発明の測定方法は、セルラーゼ測定試薬にセルラーゼを作用させてセルロースのグリコシド結合を加水分解し、生成する加水分解物に固定された金属錯体中の金属の濃度に基づき、セルラーゼの濃度を測定することを特徴とする。
【0020】
セルラーゼによるセルロースそれ自体の加水分解は周知であり、主としてグルコース2分子がβ-1、4-結合でつながったセロビオースが生成する。加水分解の条件、すなわち、基質(セルラーゼ測定試薬)及びセルラーゼの濃度、反応温度などは、特に制限されず、セルロースそれ自体の加水分解と同様の条件を採用することが出来る。
【0021】
本発明のセルラーゼ測定試薬(金属錯体結合型セルロース)の加水分解は、基質の初めの濃度を種々に設定してそれぞれについての初期反応速度を求め、基質初濃度に対してプロットすると、ミカエル・メンテンの式に従って、飽和曲線が得られる。このことから、本発明のセルラーゼ測定試薬(金属錯体結合型セルロース)の加水分解は酵素反応によって支配されていることを確認することが出来る。
【0022】
本発明に係るセルラーゼの測定方法はセルラーゼによるセルロースの加水分解物を測定するという間接法であり、その際に加水分解物に固定された金属を指標として利用する。上記の金属は金属錯体の形で存在するため、塩として存在する金属と異なり、加水分解物から溶出する恐れは全くない。また、金属錯体は、セルロースの構成グルコースの水酸基に反応基を介して結合しているため、加水分解物に強固に固定されており、加水分解物の濃度測定の指標として完全に利用することが出来る。
【0023】
次に、加水分解物に固定された金属錯体中の金属の濃度分析について説明する。一般に、ICP法やフレームレス原子吸光法は元素分析に利用され、その際、分析試料の溶液化のため、高温に加熱して試料を灰化し(試料中から有機化合物等の主成分を除去し)、硝酸溶液に溶解するという前処理を行う。このことから、ICP法やフレームレス原子吸光法は無機イオンの分析に使用する分析手段であるという先入観がある。
【0024】
しかしながら、本発明者らが加水分解物に固定された金属錯体中の金属の濃度測定にICP法やフレームレス原子吸光法を利用したところ、酵素を含む試料であっても、何ら問題なく、ppbレベルでの金属の測定が可能であった。従って、加水分解物に固定された金属錯体中の金属の濃度分析法としては、ICP法やフレームレス原子吸光法が推奨される。また、本発明において、測定試料は、加水分解物の水溶液として得られるため、そのまま使用することが出来、ICP法やフレームレス原子吸光法を採用しながら試料の前処理を必要としない利点がある。
【0025】
セルラーゼを生産する微生物のスクリーニングにおいては、高感度でセルラーゼを測定することが重要であり、相対的な濃度で足り、絶対的な濃度は必ずしも必要ではない。しかしながら、検量線法を採用し、その際、検量線の作成および試料の実測について、金属錯体とセルロースとを一定の条件下で反応して得られたセルラーゼ測定試薬(金属錯体結合型セルロース)を使用し、セルラーゼによるセルラーゼ測定試薬の加水分解を一定の条件下で行うならば、高い定量性でセルラーゼの絶対濃度を容易に測定することが出来る。
【0026】
本発明は、セルラーゼによる加水分解の基質として、例えば、従来公知の材料である「青綿」を利用することにより、セルロースの加水分解物(セルラーゼ)の濃度の高感度で測定法を達成したものである。酵素は選択的な触媒作用を持つタンパク質を主成分とする生体高分子物質であるため、銅のような重金属によって酵素活性が阻害されるのではないかとの危惧がある。また、安定した加水分解物は得られないのではないかとの危惧や金属錯体はセルラーゼに結合するのではないかといった危惧もある。斯かる観点からすれば、本発明は極めて意外とも言える発明であり、本発明の工業的価値は顕著である。
【実施例】
【0027】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例により限定されるものではない。
【0028】
実施例1:
(1)セルラーゼ測定試薬(金属錯体結合型セルロース)の調製:
炭酸ナトリウム:2.0g、硫酸ナトリウム:5.0g、C.I.Reactive Blue:21:0.6gを溶かした水溶液100mLに脱脂綿5.0gを添加し、攪拌しながら30℃で35分反応させた。その後、70℃にて60分間で反応させ、反応の後、ジメチルスルホキシド、メタノール-アンモニア(50:1v/v)混合溶液で洗浄し、乾燥させて金属錯体結合型セルロースを得た。この金属錯体結合型セルロースにおいて、金属錯体の割合は、金属錯体結合型セルロース1.0g当たり30μmolであり、セルロースのグルコース約600個当たり1個であった。
【0029】
(2)セルラーゼの測定方法:
濃度の異なる複数のセルラーゼ水溶液を調製して試料とした。20mLサンプル管に各10mLを加え、恒温槽にて45℃の一定温度に保持した。その後、上記のセルラーゼ測定試薬0.02gを加え、1時間振とうした。振とうの後、上澄み溶液を分取し、フレームレス原子吸光光度計(日立ハイテクノロジー社製「 Z-2000型」)にて、試料溶液を20μL注入し、銅の分析を行った。
【0030】
上記の測定結果に基づき、セルラーゼ濃度と放出された銅濃度との関係をプロットし第1図に示す結果を得た。セルラーゼ濃度と放出された銅濃度には明確な相関性が見られた。
【0031】
実施例2:
実施例1における銅の分析において、フレームレス原子吸光光度計に代えてICP発光分光分析装置(パーキンエルマー社製 「Optima5300DV型」)を使用した他は、実施例1と同様に行った。その結果、銅の分析値は、フレームレス原子吸光光度計を使用した実施例1と同様の値であった。なお、ICP発光分光分析装置における測定条件は次の通りである。すなわち、試料溶液と80ppbイットリウム内標準溶液(5%硝酸溶液)をオンライン内標準添加法にて流路内にて混合した。その際の吸引流速は0.25mL/minとした。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】セルラーゼ濃度と放出された銅濃度との関係示すグラフの一例
図面
【図1】
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