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明細書 :SalmonellaHadarを検出するためのオリゴヌクレオチドとそれらを用いた血清型迅速同定法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5224541号 (P5224541)
公開番号 特開2011-062136 (P2011-062136A)
登録日 平成25年3月22日(2013.3.22)
発行日 平成25年7月3日(2013.7.3)
公開日 平成23年3月31日(2011.3.31)
発明の名称または考案の名称 SalmonellaHadarを検出するためのオリゴヌクレオチドとそれらを用いた血清型迅速同定法
国際特許分類 C12N  15/09        (2006.01)
C12Q   1/68        (2006.01)
FI C12N 15/00 ZNAA
C12Q 1/68 A
請求項の数または発明の数 8
全頁数 27
出願番号 特願2009-215692 (P2009-215692)
出願日 平成21年9月17日(2009.9.17)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 動物衛生研究成果情報 No.8(平成21年8月31日)独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構動物衛生研究所発行第5~6ページに発表
特許法第30条第1項適用 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構動物衛生研究所ホームページhttp://niah.naro.affrc.go.jp/publication/seikajoho2/2008/niah08003.html(平成21年9月11日)に発表
特許法第30条第1項適用 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構動物衛生研究所ホームページhttp://niah.naro.affrc.go.jp/publication/seikajoho2/2008/niah08003-e.html(平成21年9月11日)に発表
審査請求日 平成23年8月10日(2011.8.10)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】501203344
【氏名又は名称】独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
発明者または考案者 【氏名】秋庭 正人
【氏名】楠本 正博
【氏名】岩田 剛敏
個別代理人の代理人 【識別番号】100102978、【弁理士】、【氏名又は名称】清水 初志
【識別番号】100102118、【弁理士】、【氏名又は名称】春名 雅夫
【識別番号】100160923、【弁理士】、【氏名又は名称】山口 裕孝
【識別番号】100119507、【弁理士】、【氏名又は名称】刑部 俊
【識別番号】100142929、【弁理士】、【氏名又は名称】井上 隆一
【識別番号】100148699、【弁理士】、【氏名又は名称】佐藤 利光
【識別番号】100128048、【弁理士】、【氏名又は名称】新見 浩一
【識別番号】100129506、【弁理士】、【氏名又は名称】小林 智彦
【識別番号】100130845、【弁理士】、【氏名又は名称】渡邉 伸一
【識別番号】100114340、【弁理士】、【氏名又は名称】大関 雅人
【識別番号】100121072、【弁理士】、【氏名又は名称】川本 和弥
審査官 【審査官】三原 健治
参考文献・文献 Res.Vet.Sci.,Vol.81(2006)p.340-344
BMC Microbiology,Vol.8,No.178(2008)p.1-8
Curr.Opin.Biotechnol.,Vol.20(Apr.2009)p.149-157
動物衛生研究所研究報告,No.114(Jan.2008)p.45-50
J.Clin.Microbiol.,Vol.42,No.4(2004)p.1734-1738
Vet.Microbiol.,Vol.61(1998)p.215-227
調査した分野 C12N 15/00-15/90
C12Q 1/68
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
WPI
特許請求の範囲 【請求項1】
以下(a)に記載のPCR産物の種類、及び、以下(b)に記載のPCR産物の種類を比較する工程を含む被検サルモネラの血清型を同定する方法であって、前記工程において比較したPCR産物の種類が一致したときに、被検サルモネラの血清型がSHであると判定される方法;
(a)血清型がSHである対照サルモネラのゲノムDNAを鋳型とし、少なくとも下記(i)又は(ii)に記載のセットをプライマーセットとするPCRによって増幅されるPCR産物の種類であって、対照サルモネラに特異的なPCR産物の種類、及び
(b)被検サルモネラのゲノムDNAを鋳型とし、(a)と同じセットをプライマーセットとするPCRによって増幅されるPCR産物の種類;
(i)下記(1)から(3)に記載のセット
(1)配列番号:9に記載の塩基配列を含むオリゴヌクレオチド、及び、配列番号:10に記載の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドのセット、
(2)配列番号:11に記載の塩基配列を含むオリゴヌクレオチド、及び、配列番号:12に記載の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドのセット、
(3)配列番号:13に記載の塩基配列を含むオリゴヌクレオチド、及び、配列番号:14に記載の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドのセット、
(ii)下記(1)から(4)に記載のセット
(1)配列番号:1に記載の塩基配列を含むオリゴヌクレオチド、及び、配列番号:2に記載の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドのセット、
(2)配列番号:9に記載の塩基配列を含むオリゴヌクレオチド、及び、配列番号:10に記載の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドのセット、
(3)配列番号:11に記載の塩基配列を含むオリゴヌクレオチド、及び、配列番号:12に記載の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドのセット、
(4)配列番号:13に記載の塩基配列を含むオリゴヌクレオチド、及び、配列番号:14に記載の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドのセット。
【請求項2】
PCRがマルチプレックスPCRである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
以下(5)から(7)に記載の3組のセット
(5)配列番号:9に記載の塩基配列を含むオリゴヌクレオチド、及び、配列番号:10に記載の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドのセット、
(6)配列番号:11に記載の塩基配列を含むオリゴヌクレオチド、及び、配列番号:12に記載の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドのセット、
(7)配列番号:13に記載の塩基配列を含むオリゴヌクレオチド、及び、配列番号:14に記載の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドのセット
【請求項4】
以下(1)及び(5)から(7)に記載の4組のセット
(1)配列番号:1に記載の塩基配列を含むオリゴヌクレオチド、及び、配列番号:2に記載の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドのセット、
(5)配列番号:9に記載の塩基配列を含むオリゴヌクレオチド、及び、配列番号:10に記載の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドのセット、
(6)配列番号:11に記載の塩基配列を含むオリゴヌクレオチド、及び、配列番号:12に記載の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドのセット、
(7)配列番号:13に記載の塩基配列を含むオリゴヌクレオチド、及び、配列番号:14に記載の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドのセット
【請求項5】
請求項3または4に記載のセットを含むサルモネラの血清型判別用キット。
【請求項6】
血清型SHのサルモネラのゲノムDNAを鋳型とし、請求項3または請求項4に記載されるセットをプライマーセットとするPCRによって増幅されるDNA断片。
【請求項7】
PCRがマルチプレックスPCRである、請求項に記載のDNA断片。
【請求項8】
以下(1)から(10)を含むセット:
(1)配列番号:1に記載の塩基配列を含むオリゴヌクレオチド、及び、配列番号:2に記載の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドのセット、
(2)配列番号:3に記載の塩基配列を含むオリゴヌクレオチド、及び、配列番号:4に記載の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドのセット、
(3)配列番号:5に記載の塩基配列を含むオリゴヌクレオチド、及び、配列番号:6に記載の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドのセット、
(4)配列番号:7に記載の塩基配列を含むオリゴヌクレオチド、及び、配列番号:8に記載の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドのセット、
(5)配列番号:9に記載の塩基配列を含むオリゴヌクレオチド、及び、配列番号:10に記載の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドのセット、
(6)配列番号:11に記載の塩基配列を含むオリゴヌクレオチド、及び、配列番号:12に記載の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドのセット、
(7)配列番号:13に記載の塩基配列を含むオリゴヌクレオチド、及び、配列番号:14に記載の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドのセット
(8)配列番号:15に記載の塩基配列を含むオリゴヌクレオチド、及び、配列番号:16に記載の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドのセット、
(9)配列番号:17に記載の塩基配列を含むオリゴヌクレオチド、及び、配列番号:18に記載の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドのセット、
(10)配列番号:19に記載の塩基配列を含むオリゴヌクレオチド、及び、配列番号:20に記載の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドのセット。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、血清型特異的遺伝子の多重検出によるサルモネラ血清型の迅速同定法に関する。
【背景技術】
【0002】
サルモネラ感染は家畜生産の阻害要因であるのみならず、畜産物を介してヒトに食中毒を起こすことから、公衆衛生上の脅威ともなっている。サルモネラは飼料を介して家畜に伝播するため、飼料安全法で有害微生物と規定されている。このため、農林水産消費安全技術センター・肥飼料安全検査部では飼料のサルモネラ汚染のモニタリング調査を継続的に実施している。分離されたサルモネラが、家畜伝染病予防法で「家畜伝染病」または「届出伝染病」と規定される主要6血清型(Gallinarum、Typhimurium、Dublin、Enteritidis、Choleraesuis、Abortusequi)であるか否かでその後の対応が異なるため、血清型の特定が必須であるが、現行のサルモネラ血清型別法では判定までに約2週間を必要とする。このため、飼料から上記6血清型のサルモネラが検出されても、その判定結果が出るまでに当該飼料が消費されてしまう可能性が高い。また、2004年にと畜場法が改正され、監視伝染病に含まれる病原体が分離された場合、枝肉を全廃棄することが明記された。このため、食肉衛生検査所では、肉眼病変の認められた材料について上記6血清型が分離されるか否かを検査する必要性が生じた。検査結果が出るまでに約2週間を必要とし、この間、枝肉を保留する必要があるため、公衆衛生上大きな問題となっている。以上のことから、飼料検査及び食肉衛生検査の現場で、主要なサルモネラ血清型の迅速同定法開発が強く求められている。人や家畜から分離される主要なサルモネラ血清型の迅速同定法が実用化されれば、家畜保健衛生所における日常検査、血清型別不能菌の同定、スクリーニング検査等へも応用可能であり、畜産物の安全・安心を確保する上で極めて有効なツールとなる。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】特開2007-274934
【0004】

【非特許文献1】Kim H.J. et al. 2006. Identification of Salmonella enterica serovar Typhimurium using specific PCR primers obtained by comparative genomics in Salmonella serovars. J. Food Prot. 69: 1653-1661.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
サルモネラは生化学的性状、DNAの相同性等から1属2菌種6亜種に分類されている。この国際命名規約上の分類とは別にサルモネラでは菌体(O)抗原と鞭毛(H)抗原の組み合わせによる血清型分類が早くから確立しており、現在までに2,500を越す血清型が報告されている。通常、サルモネラの分離、同定に1週間、さらに血清型別を行うと1週間、すなわち血清型の特定までに合計2週間を必要とする。
農林水産消費安全技術センターや各県の食肉衛生検査所では1週間でサルモネラを分離、同定し、O群血清型まで決定している。本発明者らは、この時点でPCR法等の手法を併用し、血清型に特異的な遺伝子を検出することで、従来2週間を要していた検査時間を1週間に短縮することが可能と考えた。即ち本発明は、サルモネラを検出するためのオリゴヌクレオチドとそれらを用いた血清型迅速同定法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
2,500を超えるサルモネラ血清型のうち、1,500以上の血清型が亜種Iに分類され、この中に人や家畜にしばしば感染症を引き起こす血清型のほとんどが含まれる。したがって我々が日常遭遇するサルモネラは互いに遺伝的類似度が極めて高く、これが塩基配列の違いを利用した血清型判定法開発の障壁となってきた。一方、細菌の全ゲノム塩基配列の最初の報告から10年以上が経過し、配列の報告された細菌は数百にのぼる。サルモネラでも、すでに20を超える菌株の全ゲノム塩基配列が参照可能である。
そこで本発明では、サルモネラ主要血清型に特異的な遺伝子をin silico(コンピューター上)で網羅的に抽出し、本発明者らが所有している3,700株を超えるサルモネラ野外分離株を利用して、その特異性を検証することにより、PCR法を応用したサルモネラ血清型の迅速同定法開発を試みた。
【0007】
具体的にはin silicoでの比較ゲノム解析により血清型Salmonella Typhimurium(ST)、Salmonella Hadar(SH)、Salmonella Infantis(SI)の3血清型に特異性の高い遺伝子を、それぞれ3つ選び出した。これらの遺伝子とサルモネラ属特異的であることが公知であるinvAの4遺伝子を同時に検出するマルチプレックスPCRの系を確立した。上記3血清型同定法としてのマルチプレックスPCR法の特異性を、野外分離株を用いて検証したところ、当該血清型であれば3つの血清型特異的遺伝子全てが増幅されるが、他の血清型で3遺伝子陽性となる例は一部の例外を除いて認められなかった。つまり本発明の方法は十分な特異性を有していることが示された。サルモネラが分離された時点でこのマルチプレックスPCR法を用いることにより、これら3血清型を分離培養開始から1週間で同定することが可能となった。
【0008】
本発明はこのような知見に基づくものであり、より詳細には、以下の〔1〕から〔24〕に記載の発明に関する。
〔1〕以下(1)から(10)に記載のいずれか1組のセット;
(1)配列番号:1に記載の塩基配列を含むオリゴヌクレオチド、及び、配列番号:2に記載の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドのセット、
(2)配列番号:3に記載の塩基配列を含むオリゴヌクレオチド、及び、配列番号:4に記載の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドのセット、
(3)配列番号:5に記載の塩基配列を含むオリゴヌクレオチド、及び、配列番号:6に記載の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドのセット、
(4)配列番号:7に記載の塩基配列を含むオリゴヌクレオチド、及び、配列番号:8に記載の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドのセット、
(5)配列番号:9に記載の塩基配列を含むオリゴヌクレオチド、及び、配列番号:10に記載の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドのセット、
(6)配列番号:11に記載の塩基配列を含むオリゴヌクレオチド、及び、配列番号:12に記載の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドのセット、
(7)配列番号:13に記載の塩基配列を含むオリゴヌクレオチド、及び、配列番号:14に記載の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドのセット、
(8)配列番号:15に記載の塩基配列を含むオリゴヌクレオチド、及び、配列番号:16に記載の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドのセット、
(9)配列番号:17に記載の塩基配列を含むオリゴヌクレオチド、及び、配列番号:18に記載の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドのセット、
(10)配列番号:19に記載の塩基配列を含むオリゴヌクレオチド、及び、配列番号20に記載の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドのセット。
〔2〕〔1〕の(2)から(4)に記載の3組のセット。
〔3〕〔1〕の(5)から(7)に記載の3組のセット。
〔4〕〔1〕の(8)から(10)に記載の3組のセット。
〔5〕〔1〕の(2)から(7)に記載の6組のセット。
〔6〕〔1〕の(2)から(4)及び(8)から(10)に記載の6組のセット。
〔7〕〔1〕の(5)から(10)に記載の6組のセット。
〔8〕〔1〕の(2)から(10)に記載の9組のセット。
〔9〕〔1〕の(1)から(4)に記載の4組のセット。
〔10〕〔1〕の(1)及び(5)から(7)に記載の4組のセット。
〔11〕〔1〕の(1)及び(8)から(10)に記載の4組のセット。
〔12〕〔1〕の(1)から(7)に記載の7組のセット。
〔13〕〔1〕の(1)から(4)及び(8)から(10)に記載の7組のセット。
〔14〕〔1〕の(1)及び(5)から(10)に記載の7組のセット。
〔15〕〔1〕の(1)から(10)に記載の10組のセット。
〔16〕〔1〕から〔15〕のいずれかに記載のセットを含むサルモネラの血清型判別用キット。
〔17〕以下(a)に記載のPCR産物の種類、及び、以下(b)に記載のPCR産物の種類を比較する工程を含む被検サルモネラの血清型を同定する方法であって、前記工程において比較したPCR産物の種類が一致したときに、被検サルモネラの血清型がSTであると判定される方法;
(a)血清型がSTである対照サルモネラのゲノムDNAを鋳型とし、少なくとも〔2〕又は〔9〕に記載のセットをプライマーセットとするPCRによって増幅されるPCR産物の種類であって、対照サルモネラに特異的なPCR産物の種類、及び
(b)被検サルモネラのゲノムDNAを鋳型とし、(a)と同じセットをプライマーセットとするPCRによって増幅されるPCR産物の種類。
〔18〕以下(a)に記載のPCR産物の種類、及び、以下(b)に記載のPCR産物の種類を比較する工程を含む被検サルモネラの血清型を同定する方法であって、前記工程において比較したPCR産物の種類が一致したときに、被検サルモネラの血清型がSHであると判定される方法;
(a)血清型がSHである対照サルモネラのゲノムDNAを鋳型とし、少なくとも〔3〕又は〔10〕に記載のセットをプライマーセットとするPCRによって増幅されるPCR産物の種類であって、対照サルモネラに特異的なPCR産物の種類、及び
(b)被検サルモネラのゲノムDNAを鋳型とし、(a)と同じセットをプライマーセットとするPCRによって増幅されるPCR産物の種類。
〔19〕以下(a)に記載のPCR産物の種類、及び、以下(b)に記載のPCR産物の種類を比較する工程を含む被検サルモネラの血清型を同定する方法であって、前記工程において比較したPCR産物の種類が一致したときに、被検サルモネラの血清型がSIであると判定される方法;
(a)血清型がSIである対照サルモネラのゲノムDNAを鋳型とし、少なくとも〔4〕又は〔11〕に記載のセットをプライマーセットとするPCRによって増幅されるPCR産物の種類であって、対照サルモネラに特異的なPCR産物の種類、及び
(b)被検サルモネラのゲノムDNAを鋳型とし、(a)と同じセットをプライマーセットとするPCRによって増幅されるPCR産物の種類。
〔20〕PCRがマルチプレックスPCRである、〔17〕~〔19〕のいずれかに記載の方法。
〔21〕血清型STのサルモネラのゲノムDNAを鋳型とし、〔1〕の(1)から(4)からなる群より選択される少なくとも1組のセットをプライマーセットとするPCRによって増幅されるDNA断片。
〔22〕血清型SHのサルモネラのゲノムDNAを鋳型とし、〔1〕の(1)及び(5)から(7)からなる群より選択される少なくとも1組のセットをプライマーセットとするPCRによって増幅されるDNA断片。
〔23〕血清型SIのサルモネラのゲノムDNAを鋳型とし、〔1〕の(1)及び(8)から(10)からなる群より選択される少なくとも1組のセットをプライマーセットとするPCRによって増幅されるDNA断片。
〔24〕PCRがマルチプレックスPCRである、〔21〕~〔23〕のいずれかに記載のDNA断片。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、サルモネラを検出するためのオリゴヌクレオチドとそれらを用いた血清型迅速同定法が開発された。従来、サルモネラの血清型特定には2週間程度の時間を要していたため、血清型が特定される前に検査対象である飼料や食肉が消費されてしまう危険性があった。本発明を利用することにより、サルモネラの血清型特定に要する時間を1週間以上短縮することが可能であるため、このような危険性を回避することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】マルチプレックスPCR法による血清型STの同定を示す写真である。Lane 1, 100 bp DNA Ladder; Lane 2, T1; Lane 3, T2; Lane 4, T3; Lane 5, T4; Lane 6, S1; Lane 7, S2; Lane 8, S3; Lane 9, S4
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明者らは、in silicoでサルモネラ血清型ST、SH、SIに特異的な遺伝子を解析したところ、これらの血清型に特異的な遺伝子を見出すことに成功した。また本発明者らは、これらの血清型を特異的に検出可能なマルチプレックスPCR用プライマーを見出すことに成功した。本発明はこのような知見に基づき、以下(1)から(10)に記載のいずれか1組のオリゴヌクレオチドのセットを提供する。
(1)配列番号:1に記載の塩基配列を含むオリゴヌクレオチド、及び、配列番号:2に記載の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドのセット、
(2)配列番号:3に記載の塩基配列を含むオリゴヌクレオチド、及び、配列番号:4に記載の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドのセット、
(3)配列番号:5に記載の塩基配列を含むオリゴヌクレオチド、及び、配列番号:6に記載の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドのセット、
(4)配列番号:7に記載の塩基配列を含むオリゴヌクレオチド、及び、配列番号:8に記載の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドのセット、
(5)配列番号:9に記載の塩基配列を含むオリゴヌクレオチド、及び、配列番号:10に記載の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドのセット、
(6)配列番号:11に記載の塩基配列を含むオリゴヌクレオチド、及び、配列番号:12に記載の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドのセット、
(7)配列番号:13に記載の塩基配列を含むオリゴヌクレオチド、及び、配列番号:14に記載の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドのセット、
(8)配列番号:15に記載の塩基配列を含むオリゴヌクレオチド、及び、配列番号:16に記載の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドのセット、
(9)配列番号:17に記載の塩基配列を含むオリゴヌクレオチド、及び、配列番号:18に記載の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドのセット、
(10)配列番号:19に記載の塩基配列を含むオリゴヌクレオチド、及び、配列番号20に記載の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドのセット。

【0012】
本発明において「含む」という文言の代わりに、「からなる」という文言を使用できる。

【0013】
本発明のオリゴヌクレオチドのセットは、サルモネラの血清型の同定に用いるPCRプライマー、特にマルチプレックスPCR用のプライマーとして有用である。マルチプレックスPCRにより、一度に複数のPCR産物を検出することが可能である。

【0014】
例えば、サルモネラの血清型がSTであるか否かを判別するために用いられるオリゴヌクレオチドのセット(プライマーセット)としては、上記(1)から(10)からなる群より選択される少なくとも(2)から(4)に記載のセット、又は少なくとも(1)から(4)に記載のセットが例示できる。

【0015】
例えば、サルモネラの血清型がSHであるか否かを判別するために用いられるオリゴヌクレオチドのセット(プライマーセット)としては、上記(1)から(10)からなる群より選択される少なくとも(5)から(7)に記載のセット、又は少なくとも(1)及び(5)から(7)に記載のセットが例示できる。

【0016】
例えば、サルモネラの血清型がSIであるか否かを判別するために用いられるオリゴヌクレオチドのセット(プライマーセット)としては、上記(1)から(10)からなる群より選択される少なくとも(8)から(10)に記載のセット、又は少なくとも(1)及び(8)から(10)に記載のセットが例示できる。

【0017】
例えば、サルモネラの血清型がSTであるか、SHであるか、またはそのいずれでもないかを判別するために用いられるオリゴヌクレオチドのセット(プライマーセット)としては、上記(1)から(10)からなる群より選択される少なくとも(2)から(7)に記載のセット、又は少なくとも(1)から(7)に記載のセットが例示できる。

【0018】
例えば、サルモネラの血清型がSTであるか、SIであるか、またはそのいずれでもないかを判別するために用いられるオリゴヌクレオチドのセット(プライマーセット)としては、上記(1)から(10)からなる群より選択される少なくとも(2)から(4)及び(8)から(10)に記載のセット、又は少なくとも(1)から(4)及び(8)から(10)に記載のセットが例示できる。

【0019】
例えば、サルモネラの血清型がSHであるか、SIであるか、またはそのいずれでもないかを判別するために用いられるオリゴヌクレオチドのセット(プライマーセット)としては、上記(1)から(10)からなる群より選択される少なくとも(5)から(10)に記載のセット、又は少なくとも(1)及び(5)から(10)に記載のセットが例示できる。

【0020】
例えば、サルモネラの血清型がSTであるか、SHであるか、SIであるか、またはそのいずれでもないかを判別するために用いられるオリゴヌクレオチドのセット(プライマーセット)としては、上記(1)から(10)からなる群より選択される少なくとも(2)から(10)に記載のセット、又は(1)から(10)に記載のセットが例示できる。

【0021】
すなわち本発明は、上記(1)から(10)に記載のいずれか1組のセットに加え、以下(A)から(N)に記載のセットを提供する。
(A)上記(2)から(4)に記載の3組のセット。
(B)上記(5)から(7)に記載の3組のセット。
(C)上記(8)から(10)に記載の3組のセット。
(D)上記(2)から(7)に記載の6組のセット。
(E)上記(2)から(4)及び(8)から(10)に記載の6組のセット。
(F)上記(5)から(10)に記載の6組のセット。
(G)上記(1)から(4)に記載の4組のセット。
(H)上記(1)及び(5)から(7)に記載の4組のセット。
(I)上記(1)及び(8)から(10)に記載の4組のセット。
(J)上記(1)から(7)に記載の7組のセット。
(K)上記(1)から(4)及び(8)から(10)に記載の7組のセット。
(L)上記(1)及び(5)から(10)に記載の7組のセット。
(M)上記(2)から(10)に記載の9組のセット。
(N)上記(1)から(10)に記載の10組のセット。

【0022】
なお上記(1)のセットをプライマーとするPCRにより、サルモネラ特異的遺伝子であるinvA遺伝子を検出することが出来る。すなわち上記(1)のセットは、被検菌がサルモネラであるか否かを検出する、又は被検菌がサルモネラであること確認するためのプライマーセットとして有用である。また上記(1)のセットはPCR反応の陽性コントロールとしても有用である。

【0023】
また本発明は、サルモネラの血清型を同定するための試薬やサルモネラの血清型を同定するためのキットを提供する。このような試薬やキットには、少なくとも次の構成要素(i)が含まれる。
(i)上記(1)から(10)に記載の少なくとも1組のセット

【0024】
上記試薬やキットには、前記構成要素(i)に加え、さらに次のような付加的な要素(ii)又は(iii)を含むことができる。
(ii)DNAポリメラーゼ:本発明の試薬やキットは、鋳型依存性の相補鎖合成反応を触媒するDNAポリメラーゼを含むことができる。PCRなどの公知の核酸合成反応に利用されている種々のDNAポリメラーゼは、本発明に利用することができる。
(iii)ヌクレオチド基質:本発明の試薬又やキットは、核酸の相補鎖合成反応の基質として利用されるヌクレオチド類を含むことができる。具体的には、dCTP、dGTP、dTTP、およびdATPの少なくとも一つ、通常はこれらの全て(dNTP)をキットに含むことができる。これらのヌクレオチド類は、天然の構造のみならず、誘導体を利用することもできる。蛍光物質や結合性リガンドで修飾したヌクレオチド類が公知である。上記試薬やキットには、PCRによる増幅産物の有無や、PCRにより増幅されたPCR産物のサイズが記載された書類を添付することができる。また、PCRにより増幅されたPCR産物のサイズ情報を機械読み取り可能なデータとし、それを格納した記録媒体として、試薬やキットに加えることもできる。

【0025】
例えば、被検サルモネラの血清型がSTであるか否かを同定するために用いられる試薬やキットとしては、上記(1)から(10)から選択される少なくとも(2)から(4)に記載のセット、又は少なくとも(1)から(4)に記載のセットを含む試薬やキットが例示できる。

【0026】
例えば、被検サルモネラの血清型がSHであるか否かを同定するために用いられる試薬やキットとしては、上記(1)から(10)から選択される少なくとも(5)から(7)に記載のセット、又は少なくとも(1)及び(5)から(7)に記載のセットを含む試薬やキットが例示できる。

【0027】
例えば、被検サルモネラの血清型がSIであるか否かを同定するために用いられる試薬やキットとしては、上記(1)から(10)から選択される少なくとも(8)から(10)に記載のセット、又は少なくとも(1)及び(8)から(10)に記載のセットを含む試薬やキットが例示できる。

【0028】
例えば、被検サルモネラの血清型がSTであるか、SHであるか、又はそのいずれでもないかを判定するために用いられる試薬やキットとしては、上記(1)から(10)から選択される少なくとも(2)から(7)に記載のセット、又は少なくとも(1)から(7)に記載のセットを含む試薬やキットが例示できる。

【0029】
例えば、被検サルモネラの血清型がSTであるか、SIであるか、又はそのいずれでもないかを判定するために用いられる試薬やキットとしては、上記(1)から(10)から選択される少なくとも(2)から(4)及び(8)から(10)に記載のセット、又は少なくとも(1)から(4)及び(8)から(10)に記載のセットを含む試薬やキットが例示できる。

【0030】
例えば、被検サルモネラの血清型がSHであるか、SIであるか、又はそのいずれでもないかを判定するために用いられる試薬やキットとしては、上記(1)から(10)から選択される少なくとも(5)から(10)に記載のセット、又は少なくとも(1)及び(5)から(10)に記載のセットを含む試薬やキットが例示できる。

【0031】
例えば、被検サルモネラの血清型がST、SH、SIのいずれであるか、又はそれらのいずれでもないかを判定するために用いられる試薬やキットとしては、上記(1)から(10)から選択される少なくとも(2)から(10)に記載のセット、又は(1)から(10)に記載のセットを含む試薬やキットが例示できる。

【0032】
また本発明は、本発明のオリゴヌクレオチドのセットのうち少なくとも1組のセットを用いたサルモネラの血清型の同定方法に関する。本発明において「少なくとも1組」には、3組、4組、6組、7組、8組、9組、又は10組の組み合わせが含まれる。すなわち本発明は、以下(I)から(VII)に記載のサルモネラの血清型の同定方法に関する。本発明においてPCRは、マルチプレックスPCR法であることが好ましい。

【0033】
(I)
以下(a)に記載のPCR産物の種類、及び、以下(b)に記載のPCR産物の種類を比較する工程を含む被検サルモネラの血清型を同定する方法であって、前記工程において比較したPCR産物の種類が一致した場合に、被検サルモネラの血清型が対照サルモネラの血清型(ST)であると判定される方法。
(a)STである対照サルモネラのゲノムDNAを鋳型とし、上記(1)から(10)からなる群より選択される少なくとも(2)から(4)に記載のセット、又は少なくとも(1)から(4)に記載のセットをプライマーセットとするPCRによって増幅されるPCR産物の種類であって、対照サルモネラに特異的なPCR産物の種類、及び
(b)被検サルモネラのゲノムDNAを鋳型とし、(a)と同じセットをプライマーセットとするPCRによって増幅されるPCR産物の種類。

【0034】
(II)
以下(a)に記載のPCR産物の種類、及び、以下(b)に記載のPCR産物の種類を比較する工程を含む被検サルモネラの血清型を同定する方法であって、前記工程において比較したPCR産物の種類が一致した場合に、被検サルモネラの血清型が対照サルモネラの血清型(SH)であると判定される方法。
(a)SHである対照サルモネラのゲノムDNAを鋳型とし、上記(1)から(10)からなる群より選択される少なくとも(5)から(7)に記載のセット、又は少なくとも(1)及び(5)から(7)に記載のセットをプライマーセットとするPCRによって増幅されるPCR産物の種類であって、対照サルモネラに特異的なPCR産物の種類、及び
(b)被検サルモネラのゲノムDNAを鋳型とし、(a)と同じセットをプライマーセットとするPCRによって増幅されるPCR産物の種類。

【0035】
(III)
以下(a)に記載のPCR産物の種類、及び、以下(b)に記載のPCR産物の種類を比較する工程を含む被検サルモネラの血清型を同定する方法であって、前記工程において比較したPCR産物の種類が一致した場合に、被検サルモネラの血清型が対照サルモネラの血清型(SI)であると判定される方法。
(a)SIである対照サルモネラのゲノムDNAを鋳型とし、上記(1)から(10)からなる群より選択される少なくとも(8)から(10)に記載のセット、又は少なくとも(1)及び(8)から(10)に記載のセットをプライマーセットとするPCRによって増幅されるPCR産物の種類であって、対照サルモネラに特異的なPCR産物の種類、及び
(b)被検サルモネラのゲノムDNAを鋳型とし、(a)と同じセットをプライマーセットとするPCRによって増幅されるPCR産物の種類。

【0036】
(IV)
以下(a)に記載のPCR産物の種類、及び、以下(b)に記載のPCR産物の種類を比較する工程を含む被検サルモネラの血清型を同定する方法であって、前記工程において比較したPCR産物の種類が一致した場合に、被検サルモネラの血清型が、PCR産物の種類が一致した対照サルモネラの血清型(ST又はSH)であると判定される方法。
(a)ST又はSHである対照サルモネラのゲノムDNAを鋳型とし、上記(1)から(10)からなる群より選択される少なくとも(2)から(7)に記載のセット、又は少なくとも(1)から(7)に記載のセットをプライマーセットとするPCRによって増幅されるPCR産物の種類であって、対照サルモネラに特異的なPCR産物の種類、及び
(b)被検サルモネラのゲノムDNAを鋳型とし、(a)と同じセットをプライマーセットとするPCRによって増幅されるPCR産物の種類。

【0037】
(V)
以下(a)に記載のPCR産物の種類、及び、以下(b)に記載のPCR産物の種類を比較する工程を含む被検サルモネラの血清型を同定する方法であって、前記工程において比較したPCR産物の種類が一致した場合に、被検サルモネラの血清型が、PCR産物の種類が一致した対照サルモネラの血清型(SH又はSI)であると判定される方法;
(a)SH又はSIである対照サルモネラのゲノムDNAを鋳型とし、上記(1)から(10)からなる群より選択される少なくとも(5)から(10)に記載のセット、又は少なくとも(1)及び(5)から(10)に記載のセットをプライマーセットとするPCRによって増幅されるPCR産物の種類であって、対照サルモネラに特異的なPCR産物の種類、及び
(b)被検サルモネラのゲノムDNAを鋳型とし、(a)と同じセットをプライマーセットとするPCRによって増幅されるPCR産物の種類。

【0038】
(VI)
以下(a)に記載のPCR産物の種類、及び、以下(b)に記載のPCR産物の種類を比較する工程を含む被検サルモネラの血清型を同定する方法であって、前記工程において比較したPCR産物の種類が一致した場合に、被検サルモネラの血清型が、PCR産物の種類が一致した対照サルモネラの血清型(ST又はSI)であると判定される方法;
(a)ST又はSIである対照サルモネラのゲノムDNAを鋳型とし、上記(1)から(10)からなる群より選択される少なくとも(2)から(4)及び(8)から(10)に記載のセット、又は少なくとも(1)から(4)及び(8)から(10)に記載のセットをプライマーセットとするPCRによって増幅されるPCR産物の種類であって、対照サルモネラに特異的なPCR産物の種類、及び
(b)被検サルモネラのゲノムDNAを鋳型とし、(a)と同じセットをプライマーセットとするPCRによって増幅されるPCR産物の種類。

【0039】
(VII)
以下(a)に記載のPCR産物の種類、及び、以下(b)に記載のPCR産物の種類を比較する工程を含む被検サルモネラの血清型を同定する方法であって、前記工程において比較したPCR産物の種類が一致したときに、被検サルモネラの血清型が、PCR産物の種類が一致した対照サルモネラの血清型(ST、SH、又はSI)であると判定される方法。
(a)ST、SH、及びSIからなる群より選択される対照サルモネラのゲノムDNAを鋳型とし、上記(1)から(10)からなる群より選択される少なくとも(2)から(10)に記載のセット、又は(1)から(10)に記載の10組のセットをプライマーセットとするPCRによって増幅されるPCR産物の種類であって、対照サルモネラに特異的なPCR産物の種類、及び
(b)被検サルモネラのゲノムDNAを鋳型とし、(a)と同じセットをプライマーセットとするPCRによって増幅されるPCR産物の種類。

【0040】
本発明の方法では、PCR産物の種類が一致した場合に、被検サルモネラの血清型が、PCR産物の種類が一致した対照サルモネラの血清型であると判定される。
また、PCR産物の種類が一致しない場合に、被検サルモネラの血清型が対照サルモネラの血清型ではないと判定される。

【0041】
本発明において「PCR産物の種類」とは、PCR産物の有無又は分子サイズによって分類されたPCR産物のパターンを意味し、「PCR産物の種類」は「PCRパターン」と表現することができる。
また「プライマーセット」は「プライマー対」と表現することも出来る。
また、例えば「配列番号:1に記載の塩基配列を含むオリゴヌクレオチド、及び、配列番号:2に記載の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドのセット」(上記(1)に記載のセット)は「配列番号:1に記載の塩基配列を含むプライマー、及び、配列番号:2に記載の塩基配列を含むプライマーからなるプライマーセット(プライマー対)」と表現することも出来る。本発明のその他のセット(上記(2)から(10)に記載のセット)も同じように表現することができる。

【0042】
本発明における「対照サルモネラに特異的なPCR産物の種類」は「対照サルモネラの血清型に特異的なPCR産物の種類」と表現することもできる。

【0043】
本発明における対照サルモネラは、そのサルモネラのゲノムDNAを鋳型とし、上記(1)から(10)からなる群より選択される、本明細書に記載の特定のセットをプライマーセットとするPCRによって増幅されるPCR産物の種類であって、対照サルモネラに特異的なPCR産物の種類が検出されるサルモネラである。対照サルモネラとしては、例えば、ST、SH、SIからなる群より選択される少なくとも1つのサルモネラが挙げられるが、これらに限定されるものではない。

【0044】
STの全ゲノム配列は、アクセッション番号NC_003197で特定される配列として知られている。またSTの特徴は、「McClelland,M., Sanderson,K.E., Spieth,J., Clifton,S.W., Latreille,P., Courtney,L., Porwollik,S., Ali,J., Dante,M., Du,F., Hou,S., Layman,D., Leonard,S., Nguyen,C., Scott,K., Holmes,A., Grewal,N., Mulvaney,E., Ryan,E., Sun,H., Florea,L., Miller,W., Stoneking,T., Nhan,M., Waterston,R. and Wilson,R.K. Complete genome sequence of Salmonella enterica serovar Typhimurium LT2, Nature 413 (6858), 852-856 (2001)」に開示されている。またSH及びSIの全ゲノム塩基配列情報はそれぞれ、ftp://ftp.sanger.ac.uk/pub/pathogens/Salmonella/HADAR.dbs、ftp://ftp.sanger.ac.uk/pub/pathogens/Salmonella/SIN.dbsで参照可能である。

【0045】
本発明において、被検サルモネラとしては、サルモネラの特徴を有する細菌、サルモネラの可能性がある細菌、遺伝的にサルモネラに近縁な細菌が例示できるが、これらに制限されない。サルモネラはグラム陰性通性嫌気性桿菌であり、通常周毛によって運動するが、非運動性の血清型または変異菌株がある。すなわち本発明の被検サルモネラは、運動性の血清型及び非運動性の血清型または変異菌株を含む。また大部分の菌株は以下の性状を示す。本発明の被検サルモネラには、以下に示す特徴、性状を示すサルモネラが含まれる。
・ブドウ糖からガスを産生する。
・オキシダーゼ、インドール、フェニルアラニンデアミナーゼ陰性。
・リシンデカルボキシラーゼ、オルニチンデカルボキシラーゼ、硫化水素陽性の性状を示す。

【0046】
またヒトや家畜にサルモネラが感染すると、感染したヒトや家畜はチフス症、敗血症、肺炎、流産、急性胃腸炎、下痢等の症状を示す。本発明の被検サルモネラには、ヒトや家畜にこのような症状を引き起こすサルモネラが含まれる。

【0047】
サルモネラの血清型は生化学的性状、DNAの相同性等から、Salmonella entericaSalmonella bongoriの1属2種とし、S. entericaの下に6亜種を設ける分類法によって分類される。本発明における「血清型」はKauffman-Whiteの様式に従って菌体(O)抗原と鞭毛(H)抗原の組み合わせにより決定される血清型を意味する。参考文献としては9th edition Antigenic Formulas of the Salmonella Serovars, 2007, Patrick A.D. Grimont & Francois-Xavier Weill (http://www.pasteur.fr/sante/clre/cadrecnr/salmoms/WKLM_2007.pdf)が挙げられる。

【0048】
本発明における「同定」は、「型別」、「検出」、「識別」、「判別」、「特定」、「鑑定」、又は「判定」と表現することもできる。

【0049】
また上記(I)から(VII)の発明は、以下のように表現することも出来る。以下に上記(I)の発明を例に示すが、(II)から(VII)の発明もまた同様に表現することが出来る。
以下(a)に記載のPCR産物、及び、以下(b)に記載のPCR産物の同一性を決定する工程を含む被検サルモネラの血清型を同定する方法であって、前記工程においてPCR産物が同一であったときに、被検サルモネラの血清型が対照サルモネラの血清型(ST)であると判定される方法。
(a)STである対照サルモネラのゲノムDNAを鋳型とし、上記(1)から(10)からなる群より選択される少なくとも(2)から(4)に記載のセット、又は少なくとも(1)から(4)に記載のセットをプライマーセットとするPCRによって増幅されるPCR産物であって、対照サルモネラに特異的なPCR産物、及び
(b)被検サルモネラのゲノムDNAを鋳型とし、(a)と同じセットをプライマーセットとするPCRによって増幅されるPCR産物。
PCR産物が同一である場合、対照サルモネラの血清型と被検サルモネラの血清型が同一であると判定される。

【0050】
また上記(I)から(VII)の発明は、以下のように表現することも出来る。以下に上記(I)の発明を例に示すが、(II)から(VII)の発明もまた同様に表現することが出来る。
以下(a)に記載のPCR産物の種類、及び、以下(b)に記載のPCR産物の種類を比較する工程を含む、以下(b)に記載のPCR産物の種類が以下(a)に記載のPCR産物の種類と一致するか否かを判定する方法。
(a)STである対照サルモネラのゲノムDNAを鋳型とし、上記(1)から(10)からなる群より選択される少なくとも(2)から(4)に記載のセット、又は少なくとも(1)から(4)に記載のセットとするPCRによって増幅されるPCR産物の種類であって、対照サルモネラに特異的なPCR産物の種類、及び
(b)被検サルモネラのゲノムDNAを鋳型とし、(a)と同じセットをプライマーセットとするPCRによって増幅されるPCR産物の種類。
PCR産物の種類同士が一致すると判定された場合、対照サルモネラの血清型が被検サルモネラの血清型(例えばST)であると判定される。

【0051】
以下に本発明の方法を例示するが、これに限定されるものではない。
本発明においては、まず、ST、SH及びSIから選択される対照サルモネラそれぞれのゲノムDNAを鋳型とし、上記(1)から(10)からなる群より選択される、本明細書に記載の特定のセットをプライマーセットとするPCRによって増幅されるPCR産物の種類を検出する(以下、PCR産物Xと称する)。次いで、血清型が未知の所望のサルモネラのゲノムDNAを鋳型とし、対照サルモネラの場合と同一のセットをプライマーセットとするPCRによって増幅されるPCR産物の種類(以下、PCR産物Yと称する)を検出する。血清型が未知の所望のサルモネラを被検サルモネラとする。次いで、PCR産物XとPCR産物Yを比較する。比較したPCR産物が一致したときに、対照サルモネラの血清型が、被検サルモネラの血清型であると判定される。

【0052】
具体的には、まず、上記(1)から(10)からなる群より選択される本明細書に記載の特定のセット(プライマーセット)を合成する。プライマーは、その塩基配列情報に従って化学的に合成することができる。任意の塩基配列を有するオリゴヌクレオチドを合成する方法が公知である。たとえば、オリゴヌクレオチドは、DNA合成装置(DNA synthesizer)によって合成することができる。具体的には、現在、ホスホロアミダイト法やホスホン酸エステル法などの原理に基づく、DNA合成装置が実用化されている。これらのDNA合成装置は、与えられた塩基配列にしたがって、固相上に、ヌクレオチドモノマーをひとつずつ化学的に連結する。全ての反応工程は自動化されていて、目的とする塩基配列情報を入力することで合成が開始される。したがって、このようなDNA合成装置に対して、設計したプライマーの塩基配列を与えることによって、目的とするDNAを合成することができる。

【0053】
次いで、ST、SH及びSIから選択される対照サルモネラそれぞれについて、ゲノムDNAを鋳型とし、合成したプライマーセットを用いてPCRを行う。本発明においては、好ましくは、まず対照サルモネラのゲノムDNAの調製(ゲノムDNAの抽出)を行う。サルモネラからのゲノムDNAの抽出は、当業者においては一般的に公知の方法、例えば、セチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)法(Murray and Thompson, Nucleic Acids Research 8, p.4321-4325, 1980)等によって行うことができる。また、DNeasy(登録商標) Plant Mini Kit(QIAGEN)等を利用してゲノムDNAを抽出することができる。また、ゲノムDNAの抽出処理を行わず、例えば、直接細胞破砕液等を用いてPCRを実施することも可能である。
PCR法としては、例えば、マルチプレックスPCR法が挙げられる。

【0054】
次いで、PCR産物の有無、又はPCRによって増幅されたPCR産物の分子サイズを測定する。PCR産物の有無、又はPCRによって増幅されたPCR産物の分子サイズの測定方法としては、当業者に周知の方法が挙げられる。ポリアクリルアミドゲル電気泳動を用いる方法、アガロースゲル電気泳動を用いる方法、フラグメントアナライザーを用いる方法、マイクロチップ電気泳動装置(Multina, 島津)が例示できるが、これらに限定されるものではない。

【0055】
PCR産物の分子サイズを測定する場合、具体的には、PCR産物を蛍光ラベルした後にキャピラリー電気泳動で分離、分離された各々のPCR産物の分子サイズを測定する。あるいは、PCR産物を(ポリアクリルアミドゲル/アガロースゲルで)電気泳動で分離し、分離された各々のPCR産物の分子サイズを測定する。通常、予めサイズが既知のDNA断片(例えば、サイズマーカー)を対照として、分離された各々のPCR産物の分子サイズ(例えば、分子量や長さ)を測定する。次いで、分子サイズによってPCR産物を分類し、PCR産物の種類を特定する。特定されたPCR産物の種類は、対照サルモネラの血清型に特異的である。

【0056】
次いで、被検サルモネラのゲノムDNAを鋳型とし、合成したプライマーセットを用いてPCRを行う。被検サルモネラのゲノムDNAを鋳型とするPCR産物の同定は、対照サルモネラと同一の実験方法及び実験条件で行われることが好ましい。

【0057】
本発明において、ST、SHおよびSIからなる群より選択されるいずれかの対照サルモネラに特異的なPCR産物の種類としては、本実施例に記載の方法によって得られるPCR産物の種類が例示できるが、これに限定されない。例えば、これら対照サルモネラに特異的なPCR産物の種類としては、本実施例と異なるPCR条件によって増幅されたPCR産物を本実施例と同じ分離方法及び分離条件で分離したときに検出されるPCR産物の種類に相当するPCR産物の種類でもよいし、本実施例と同じPCR条件又は異なるPCR条件によって増幅されたPCR産物を本実施例と異なる分離方法及び分離条件で分離したときに検出されるPCR産物の種類に相当するPCR産物の種類でもよい。

【0058】
さらに本発明は、STのゲノムDNAを鋳型とし、上記(1)から(4)からなる群より選択される少なくとも1組のセットをプライマーセットとするPCRによって増幅されるPCR産物を提供する。このようなPCR産物は、ST特異的なPCR産物である。当該PCR産物は、サルモネラの血清型がSTであるか否かの判定に有用である。
上記(1)から(4)からなる群より選択される少なくとも1組のセットとして、(2)から(4)に記載の3組のセット及び(1)から(4)に記載の4組のセットが例示できるが、これらに限定されない。

【0059】
さらに本発明は、SHのゲノムDNAを鋳型とし、上記(1)及び(5)から(7)からなる群より選択される少なくとも1組のセットをプライマーセットとするPCRによって増幅されるPCR産物を提供する。このようなPCR産物は、SH特異的なPCR産物である。当該PCR産物は、サルモネラの血清型がSHであるか否かの判定に有用である。
上記(1)及び(5)から(7)からなる群より選択される少なくとも1組のセットとして、(5)から(7)に記載の3組のセット及び、(1)及び(5)から(7)に記載の4組のセットが例示できるが、これらに限定されない。

【0060】
また本発明は、SIのゲノムDNAを鋳型とし、上記(1)及び(8)から(10)からなる群より選択される少なくとも1組のセットをプライマーセットとするPCRによって増幅されるPCR産物を提供する。このようなPCR産物は、SI特異的なPCR産物である。当該PCR産物は、サルモネラの血清型がSIであるか否かの判定に有用である。
上記(1)及び(8)から(10)からなる群より選択される少なくとも1組のセットとして、(8)から(10)に記載の3組のセット及び、(1)及び(8)から(10)に記載の4組のセットが例示できるが、これらに限定されない。
本発明においてPCRは、好ましくはマルチプレックスPCRである。
【実施例】
【0061】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明は、これら実施例に制限されるものではない。
方法
遺伝子データベース上に公開されている血清型ST、SH、及びSIの全ゲノム塩基配列を用いて、STとSH、STとSI、SHとSIの間で比較ゲノム解析を実施し、非共通領域に含まれる遺伝子を血清型特異的遺伝子の候補とした。遺伝子データベースを用いて相同性検索を実施することで血清型特異的遺伝子の絞り込みを行い、各血清型について3つの遺伝子を選び出した。これらの遺伝子とサルモネラの細胞内侵入性に関与するinvA遺伝子の4遺伝子を同時に検出するマルチプレックスPCR法の確立を試みた。invA遺伝子はサルモネラ属特異的であることが知られており、本遺伝子を同時に検出することで、被検菌がサルモネラ属に含まれることを示すことができる。また、本遺伝子の増幅サイズを最も大きく設定することでdNTPsの消費を増やし、非特異的増幅を抑える効果も期待できる。
次に過去30年間にわたって収集した約3,700株の野外分離サルモネラの中から異なる事例に由来するST125株(表1-1、1-2)、SH19株(表2)、SI55株(表3)、それ以外の117血清型(表4-1、4-2)から各1株を選び、これらのゲノムDNAを鋳型として上記遺伝子を同時に検出するマルチプレックスPCR法を実施し、野外分離サルモネラにおける血清型特異的遺伝子候補保有率を調べることで本法の特異性を検証した。
【実施例】
【0062】
結果と考察
オーソログ解析に基づく比較ゲノム解析の結果、ST、SH、及びSIで、それぞれ533、297、268の非一致ORFを抽出した。これら遺伝子のうち挿入配列と考えられる領域から1遺伝子を選び、相同性検索を実施し、他のサルモネラで登録の少ない遺伝子をST、SH、SIで、それぞれ3個ずつ選び出した。表5にこれらの遺伝子及びinvA遺伝子をマルチプレックスPCR法で検出するためのプライマーと増幅産物の塩基配列等を示した。STを同定するマルチプレックスPCRではinvA、TMP1、TMP2、及びTMP3の4遺伝子領域を標的とした。同様にSHではinvA、HMP1、HMP2、及びHMP3の4遺伝子領域を、SIではinvA、IMP1、IMP2、及びIMP3の4遺伝子領域を標的とした。条件検討の結果、マルチプレックスPCRはDNAポリメラーゼ(KOD FX; 東洋紡)1 U、dNTPs 各0.4 mM、プライマー各0.3 μM(4ペア)、テンプレートDNA 100 ngを含む50μlの反応系で行い、サイクル条件は熱変成98℃、10秒、アニール52℃、30秒、伸長反応68℃、30秒を35サイクルとした。増幅産物は2 %アガロースゲル中で電気泳動することにより、そのサイズを確認した。
【実施例】
【0063】
ST同定用マルチプレックスPCRでは、供試したST125株において3つの血清型特異的遺伝子が全て増幅陽性であったのに対し、ST以外の117血清型では血清型O4: i: -でのみ3遺伝子陽性の結果が得られた(図1、表6)。本血清型はSTの単相変異株と考えられ、本法ではSTと識別できないものと考えられた。非ST 117株における各遺伝子の陽性率はTMP1で13.7 %、TMP2で21.4 %、TMP3で9.4 %であった(表6)。SH同定用マルチプレックスPCRでは、供試したSH 19株全てにおいて3遺伝子陽性であったのに対し、SH以外の117血清型では3遺伝子陽性の株は認められなかった。非SH 117株における各遺伝子の陽性率はHMP1で0.9 %、HMP2で3.4 %、HMP3で0.9 %であった(表7)。SI同定用マルチプレックスPCRでは、供試したSI55株全てにおいて3遺伝子陽性であったのに対し、SI以外の117血清型では3遺伝子陽性の株は認められなかった。非SI 117株における各遺伝子の陽性率はIMP1で6.0 %、IMP2で0 %、IMP3で4.3 %であった(表8)。以上の結果から、これらのマルチプレックスPCR法は上記3血清型の同定法として用いるための十分な特異性を有しているものと考えられた。
【表1-1】
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【表1-2】
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【表2】
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【表3】
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【表4-1】
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【表4-2】
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【表5】
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【表6】
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【表7】
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【表8】
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図面
【図1】
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