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明細書 :植物種子の病原菌検査方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4633645号 (P4633645)
公開番号 特開2007-209292 (P2007-209292A)
登録日 平成22年11月26日(2010.11.26)
発行日 平成23年2月16日(2011.2.16)
公開日 平成19年8月23日(2007.8.23)
発明の名称または考案の名称 植物種子の病原菌検査方法
国際特許分類 C12Q   1/04        (2006.01)
A01C   1/00        (2006.01)
C12Q   1/24        (2006.01)
C12Q   1/68        (2006.01)
FI C12Q 1/04
A01C 1/00 L
C12Q 1/24
C12Q 1/68 A
請求項の数または発明の数 7
全頁数 11
出願番号 特願2006-034755 (P2006-034755)
出願日 平成18年2月13日(2006.2.13)
審査請求日 平成19年11月19日(2007.11.19)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】506050134
【氏名又は名称】独立行政法人 種苗管理センター
発明者または考案者 【氏名】佐藤 仁敏
個別代理人の代理人 【識別番号】100119002、【弁理士】、【氏名又は名称】鈴木 敦
審査官 【審査官】清水 晋治
参考文献・文献 白川隆,増菌法を併用した種子からの高感度検出法の開発,スイカ果実汚斑細菌病の防除技術の開発,2002年,p.24-34
佐藤仁敏,ISTA(国際種子検査協会)の種子病害標準検査法,植物防疫,2003年12月 1日,第57巻,第12号,p.16-20
Journal of industrial microbiology & biotechnology. 2001, Vol.27, No.2, p.129-134
調査した分野 C12Q 1/00-3/00
PubMed
JSTPlus/JST7580(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
種子伝染性病原菌を保有する植物種子の検出を発芽後の幼苗により多量に処理する検査において、植物種子が配置された発芽用資材を密閉容器内に収納し、植物種子が発芽した後に、密閉容器内に抽出用液を添加して、発芽後植物種子の幼苗と発芽用資材と抽出用液を混合撹拌した混合液を検査材料とすることを特徴とする植物種子の検査方法。
【請求項2】
前記発芽用資材が吸水性の高い紙、及び/又は吸水性の高い紙の裁断片よりなる請求項1に記載の植物種子の検査方法。
【請求項3】
前記植物種子の発芽、及び幼苗の生育を、前記密閉容器内の空気を外気と交換させることによる請求項1又は請求項2に記載の植物種子の検査方法。
【請求項4】
前記植物種子の発芽、及び幼苗の生育を、水、又は0.001~0.03Mのリン酸緩衝液を発芽用資材に吸水させることによる請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の植物種子の検査方法。
【請求項5】
前記抽出用液が、水、又は0.001~0.03Mのリン酸緩衝液である請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の植物種子の検査方法。
【請求項6】
前記検査材料を用いた病原菌の検出が、培養のコロニーの識別、及び/又は血清学的手法、及び/又は遺伝子診断法による請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の植物種子の検査方法。
【請求項7】
前記植物種子がウリ科植物である請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の植物種子の検査方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、植物種子の病原菌検査方法に関し、更に詳細には植物種子が保有する種子伝染性病原菌の検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
植物の病原菌は、空気伝染、接触伝染、雨水伝染等により蔓延し、特に農作物において大きな被害をもたらす。中でも病害発生の第一次伝染源として重要な種子伝染性の病原菌は、汚染率が極わずかなロットの種子からも大きな被害をもたらし、特に多数の苗を養成する共同育苗や接木栽培等において、甚大な被害をもたらすことがある。これら種子伝染する植物病原菌としては、ウリ科植物の果実汚斑細菌病、イネの褐条病等極めて多数に及び、その被害も少なくない。
【0003】
例えば前記ウリ科作物の果実汚斑細菌病は、グラム陰性の好気性細菌(Acidovorax avenae subsp. citrulli)で、主に種子伝染することが知られており、ウリ科植物全般に病原性を有している。本病の発生は、わずか0.01%の汚染率を示すロットの種子でも甚大な被害を引き起こし、ロット種子中に1個の生きた病原細菌が存在するだけでも病気が発生するとの報告もある。
【0004】
又、前記イネの褐条病菌は、グラム陰性の好気性細菌(Acidovorax avenae subsp. avenae)で、主に種子伝染することが知られている。本病が育苗期のイネ苗に発生すると、鞘葉に暗褐色条斑が現れて生育が劣り、苗は不揃いになり、ひどいときには幼苗が腐敗する。本病原細菌は、他のイネ科作物であるアワやトウモロコシ等にも感染する。
【0005】
これら種子伝染性病害の感染源は、主に当該病原菌に汚染された種子である。このため種苗会社では、種子を生産販売するにあたり、種子伝染性病害に感染した種子を回避するために、多数の種子ロットを主に海外の種子検査施設に依頼して、病原菌に汚染されていないことを確認しているが、その検査に要する経費は莫大である。
【0006】
従来の汚染種子の検出方法としては、温室内、又はプラスチック箱内の培養土に播種して、発芽後の幼苗に現れる病徴で評価するgrow-out test、又はsweatboxgrow-out testがある。又、種子を溶液に浸して攪拌洗浄した種子洗浄液をそのまま、あるいは一定温度及び期間で培養した溶液を作製し、これを試料に用いた培養コロニーの鑑定、又は血清学的検出法、遺伝子診断法、又はこれら方法を幾つか組み合わせたものがある(例えば非特許文献1を参照。)。
【0007】
前記grow-out testは、種子伝染性病原の生育に適した一定の温度並びに湿度の温室管理を適正に行う必要がある。又この方法を改良したsweatbox grow-outtestは、人工環境下で実施すため、常に適正な環境制御が行われているが、少なくとも10000粒以上の種子を検査する必要があるため、検査に要する施設は設備的に、又コスト的にも大きな負担であった。又、検査対象の種子は発芽率が常に100%とは限らず、汚染種子が発芽しない場合には、当該ロットは健全と評価されるという問題があった。
【0008】
更に、種子伝染性病原菌は一般に作物種に対する病原性の強弱により幾つかの系統が存在するが、そのために汚染種子由来の発芽苗が無病徴の場合も、当該ロットの種子は健全と評価されるという問題があった。
【0009】
一方、健全と評価された検査済みのロットから病害の発生が確認される場合や、検査施設によって同一ロットの判定結果が異なる場合も散見された。このため、精度の高い種子検査技術の開発、及び国内検査の早期実施等が強く要望されていたところである。
【0010】

【非特許文献1】農林水産省農林水産技術会議事務局編集「スイカ果実汚斑細菌病の防除技術の開発」2002年12月、農林水産省農林水産技術会議事務局発行
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、多量の種子のなかに微量に混入した種子伝染性病原菌汚染種子を、精確且つ効率的に検出する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は密閉容器内において対象種子を発芽させた後に、発芽後の種子、発芽用資材、及び抽出用液を、混合撹拌した混合液を検査材料することにより、容易に多量の種子に対し病原菌の検出が可能となることを見出して本発明に至った。即ち本発明は以下の通りである。
<1> 本発明は、種子伝染性病原菌を保有する植物種子の検査において、植物種子が配置された発芽用資材を密閉容器内に収納し、植物種子が発芽した後に、密閉容器内に抽出用液を添加して、発芽後植物種子の幼苗と発芽用資材と抽出用液を混合撹拌した混合液を検査材料とすることを特徴とする植物種子の検査方法であり、前記発芽用資材が吸水性の高い紙、及び/又は吸水性の高い紙の裁断片よりなるものが好ましい。
<2> さらに本発明は、前記植物種子の発芽、及び幼苗の生育を、前記密閉容器内の空気を外気と交換させることにより、水、又は0.001~0.03Mのリン酸緩衝液を発芽用資材に吸水させることによることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、従来のgrow-out test等で用いられた土壌、又は培養土を必要とせず、一般に使用されるペーパータオル等の吸水性の高い紙を発芽用資材として用い、供試種子を収納した容器を所定温度の室内に蔵置し、該室内を高湿度に保つことにより、容器内の病原細菌濃度を高めることができるため、極めて経済的に、微量に混入した汚染種子のロットからの検出を可能とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、発芽用資材の上に配置した植物種子を、密閉容器内において給水させ、発芽させた後に、発芽後の植物種子の幼苗と抽出用液とを混合撹拌した混合液を検査材料とすることを特徴とする、種子伝染性病原菌を保有する植物種子の検査方法である。以下にその具体的実施の形態を説明する。
【0015】
前記植物種子の発芽は、発芽用資材の上に検査用種子を配置し、該発芽用資材を吸水させて行う。発芽用資材は水分を保持するものであれば、綿布、パルプ、砂、ポリエステル製品等のいずれの素材をも用いることができる。中でも密閉容器内への発芽用資材の定置、及び発芽用資材の混合撹拌の観点からは、パルプ、濾紙、ペーパータオル等の吸水性の高い紙がより好ましい。
【0016】
前記発芽用資材の大きさは供試する検査用種子の大きさ、及び供試数に応じ任意に選択できる。又発芽用資材の厚さは、検査用種子の大きさに応じた必要保有水分に対応できる厚さとするが、前記吸水性の高い紙を用いるときは、該紙を重ねて用いることにより対応できる。又供試種子が大粒種子の場合は、前記吸水性の高い紙をシュレッダー等で細かく裁断したものが、発芽した種子の倒伏防止等の観点から、発芽用資材として特に好ましい。
【0017】
前記発芽用資材の吸水は、直接発芽用資材に蒸留水、又はリン酸緩衝液(以下吸水用液という。)を注与して行う。該リン酸緩衝液の濃度は、0.001~0.03Mが好ましく、0.04Mでは発芽後の生育に障害を来たすため好ましくない。前記注与量は、発芽用資材が保持できる飽和量の、7~9割程度とすることが好ましい。
【0018】
前記吸水された発芽用資材の上に、検査用種子を配置する。種子の配置量は、発芽資材の面積、及び検査用種子の大きさに応じて変えることができ、種子が相互に重ならないように配置する。
【0019】
前記検査用種子を配置した発芽用資材を吸水させて、密閉容器内に収納するが、容器内に収納後に発芽用資材を吸水させてもよい。該密閉容器の構造は、発芽用資材を収納することができる袋状又は箱型形状で、ポリエチレン等の柔軟性を有する樹脂製の容器が好ましい。
【0020】
前記密閉容器は、通常時は外気から遮断され、必要時には適宜外気の給排気、及び給水を可能とする構造が好ましい。具体的には前記樹脂製の容器に、開閉が可能な密閉ジッパーを備えることが好ましい。該密閉容器の大きさは、発芽用資材のサイズに合わせた任意の大きさとすることができる。
【0021】
前記発芽用資材を収納した密閉容器を、対象病原菌の増殖に適した温度に管理された恒温室等に搬入した後に、コンプレッサー等で容器内に外気を注入したうえで、開閉ジッパーを完全に密閉して静置する。
【0022】
前記密閉容器はその後、対象病原菌が充分に増殖する期間、例えばウリ科作物の果実汚斑細菌病においては10日~14日間、前記恒温室等に静置される。該密閉容器内は、病原菌の増殖に適する高温と、高湿度が維持される一方で、発芽した種子の生育の促進及び腐敗等の防止に必要な新鮮外気が供給される環境条件を維持する。
【0023】
前記新鮮外気の提供は、密閉容器の開閉ジッパーを開いた後、発芽苗を破損しないように容器を手で押す操作等により密封容器内の空気を外部に排気し、直ちにコンプレッサー等で外気を注入して密封容器を膨らました後、開閉ジッパーを完全に密閉することにより行う。
【0024】
検査種子が発芽して子葉が展開する頃、密閉容器に抽出用液を加える。該抽出用液は、前記吸水用液と同様に蒸留水又は0.001~0.03Mリン酸緩衝液が好ましい。該抽出用液と発芽種子と発芽用資材とを、混合機等で良く混合攪拌し、この混合撹拌後の混合液を検査材料とする。該抽出用液の添加量は、発芽用資材の大きさに応じて適宜加減するが、容器を軽く手で押さえると、発芽資材から該抽出用液が滲出する状態の添加量が好ましい。
【0025】
前記検査材料を試料とし、(1)半選択培地に検査試料液を塗布、培養後、生育するコロニーの識別、(2)ELISA等の血清学的手法、(3)PCR等の遺伝子診断法、等の定法の検出法又は診断法で、病原菌を検定する。
【0026】
本発明を1ロット当たり数万粒の種子検査において実施するときは、種子サンプル全体を分割して本発明に適合する種子数のサブサンプルを作成し、サブサンプルごとに本発明による検査材料を作成し、該検査材料を上記検出法又は診断法により検定し、サブサンプルの集合として種子サンプル全体を評価する。例えば、1ロット当たり10,000粒について検査が要求される検査では、500粒を1つのサブサンプルとして設定し、作成された20サブサンプルを検定する。検定したサブサンプルの中に1つでも当該菌が検出された場合には、その種子ロットは汚染種子ロットと評価される。
【実施例】
【0027】
本発明の更に具体的内容を以下の実施例により説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
病原菌として、ウリ科植物全般に病原性を有する、果実汚斑細菌病菌(Acidovoraxavenae subsp. citrulli)を用いた。該果実汚斑細菌病菌は,農林水産省横浜植物防疫所より入手したスイカ果実汚斑細菌病菌(菌株名:WM-A)である。
【0028】
発芽用資材として、9.5 cm×13 cmのペーパータオル(クレシア(株)社製、商品名:キムタオル)を4枚重ねたものを使用した。又密閉容器として、密閉ジッパー付きポリエチレン袋(生産日本(株)社製、商品名:ユニパックG-8)を使用した。
【0029】
前記ペーパータオルに吸水用液として、蒸留水(1区)及び0.01M(2区)、0.02M(3区)、0.04M(4区)と濃度の異なる3種類のリン酸緩衝液(pH7.4)をそれぞれ20 ml注水した。
【0030】
前記注水後の発芽用資材1~4区のそれぞれに、50粒の大玉系スイカ種子(X種苗会社の種子を使用。)と、50粒のアールス系メロン種子(Y種苗会社の種子を使用。)を配置した。前記50粒のうち、それぞれ2粒の種子に合計16cfu(colonyformation unit)の果実汚斑細菌病菌を接種した。配置は発芽用資材の全体に、種子が重ならないように均一とし、前記接種した種子は発芽用資材の中央に配置した。
【0031】
前記種子を配置した発芽用資材の上を、発芽用資材と同様の1枚のペーパータオルを用い、該ペーパータオルを前記吸水用液と同様の蒸留水又はリン酸緩衝液で吸水させたうえで覆い、該ペーパータオルで覆った発芽用資材を前記密閉容器内に収納した。該密閉容器にコンプレッサーを用いて外気を注入して膨らませ、その後にジッパーを閉め密封し、温度28℃の恒温器(日本医化器械製作所(株)、商品名:EZ NK式人工気象器)に、10日間蔵置した。
【0032】
前記蔵置の間、3日又は4日毎に密閉容器の開閉ジッパーを開いた後に、発芽苗を破損しないように容器を手で押す操作をすることにより、既存空気を排気させ、コンプレッサーを用いて新鮮外気を供給した。
【0033】
前記蔵置後に、前記密閉容器を開封して、抽出用液として40mlの0.01Mリン酸緩衝液(pH7.4)を加え、密閉容器を混合機(IUL社製、製品名:マスティケーター)内に挿入し、該混合機を連続的に1分間作用させて、発芽種子と発芽用資材とを十分に混和した。
【0034】
前記混和後に、密閉容器から発芽用資材、種子、発芽苗、及び抽出用液の混合液を取り出し、該混合液を0.01Mリン酸緩衝液(pH7.4)を用いて10~1,000,000倍まで、10倍ごとに希釈した液を作製し、これを果実汚斑細菌病菌用半選択培地(AacSM)に塗布して40℃で3日間ないし4日間培養した。そして、果実汚斑細菌病菌の出現コロニー数をカウントし、混合液1ml当たりのコロニー数(cfu/ml)を算出し、果実汚斑細菌病菌の菌濃度とした。結果を表1に示す。表1においてPBはリン酸緩衝液を示す。
【0035】
【表1】
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【0036】
表1から明らかなように、吸水用液として用いたいずれの溶液の場合においても、スイカ及びメロン共に果実汚斑細菌病菌の増殖が認められ、いずれの溶液区及び作物においても果実汚斑細菌病菌の濃度は混合液1ml当たり1×10cfu以上に達し、本方法で十分果実汚斑細菌病菌に種子感染した種子の検出が可能であることが明らかとなった。但し,0.04Mリン酸緩衝液を用いた場合には、メロン種子の発芽後における苗の生育が遅延する傾向が認められたことから、蒸留水及び0.01M~0.02Mリン酸緩衝液(pH7.4)を用いることが好ましかった。
【0037】
<実施例2>
実施例1に用いた吸水用液に替えて0.01Mリン酸緩衝液(pH7.4)を、密閉容器の蔵置温度28℃に替えて、20℃(1区)、25℃(2区)、28℃(3区)、30℃(4区)、35℃(5区)に設定した以外は実施例1と同様にして、実施例2を行った。結果を表2に示す。
【0038】
【表2】
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【0039】
表2から明らかなように、設定した20~35℃の温度帯で果実汚斑細菌病菌の増殖が認められた。特に菌の増殖に良好な温度帯は、スイカの場合は25~30℃の温度帯、メロンの場合は28~35℃の温度帯であった。これらの区における果実汚斑細菌病菌濃度は、いずれも、混合液1ml当たり1×108cfu以上に達し、果実汚斑細菌病菌に感染した種子の検出が十分可能であることが明らかとなった。
【0040】
<実施例3>
実施例1に用いたスイカ種子50粒及びメロン種子各50粒に替えて、スイカ種子250粒に、9.5 cm×13 cmのペーパータオル4枚重ねに替えて15cm×19cmのペーパータオル8枚重ねに、ペーパータオルに吸水させた0.01Mリン酸緩衝液(pH7.4)を20mlに替えて100mlに、ポリエチレン袋をユニパックG-8に替えてユニパックJ-8に、ポリエチレン袋の蔵置期間を10日間に替えて14日間に、該抽出用液の0.01Mリン酸緩衝液(pH7.4)40mlに替えて80mlに、接種する果実汚斑細菌病菌の菌数を16cfuに替えて、0.2cfu(1区)、2.0cfu(2区)、20.0cfu(3区)、無接種(4区)を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例3を行った。
【0041】
1~3区は各区とも5反復、無接種区の4区は3反復を行い、「果実汚斑細菌病菌が検出された反復数/試験を行った反復数」を検出率とした。結果を表3に示す。
【0042】
【表3】
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【0043】
表3に示すように、検査種子数を250粒に増加した場合でも果実汚斑細菌病菌を検出することができた。特に、接種菌数が2.0cfu以上の場合では、全ての反復区で果実汚斑細菌病菌を安定して検出することができた。又、いずれの接種区においても最終的に検査に用いられる混合液中の菌濃度は2.4×106cfu/ml以上と高率に増殖されていることが判る。例えば2.0cfuを接種した区では、混合時に添加した80mlの該抽出溶液量が混合液全体量とみなした場合、算出される果実汚斑細菌病菌の増殖率は435万倍であった。
【0044】
実施例4>
実施例3に用いたスイカ種子250粒に替えて、アールス系メロン種子250粒(1区)、キュウリ種子250粒(2区)、カボチャ種子200粒(3区)に、果実汚斑細菌病菌の接種に替えて、各区ともに果実汚斑細菌病菌に汚染された種子を1粒混合した区と無処理区とをそれぞれ設けた。又、混合液の段階希釈液を半選択培地培地へ塗布してコロニーのカウントに替え、混合液の原液を半選択培地(AacSM)に画線の後にコロニーの判別及びELISA法、PCR法により検出する以外は実施例3と同様に、実施例4を行った。半選択培地、ELISA法、PCR法により検出率を実施例3と同様に測定した、結果を表4に示す。
【0045】
前記果実汚斑細菌病菌の汚染種子の作成は、非特許文献1の記載に基づき実施した。すなわち、果実汚斑細菌病菌を懸濁した溶液の中に種子を浸漬し、真空デシケーター中で30分間真空状態に保った後、通風乾燥して汚染種子とした。実施例4で用いたメロン、キュウリ、カボチャの各種子は、いずれも1×105cfu/mlの細菌懸濁液に浸漬した。
【0046】
前記ELISA法及びPCR法は、前記非特許文献1の記載に基づき実施した。すなわち、ELISA法は、混合液を遠心分離によって細菌を回収し、1/10量の、0.05%Tween 20を添加したELISA用の食塩加用0.02Mリン酸緩衝液(pH7.4)に懸濁した試料を用い、DAS-ELISA法で行った。又、PCR法は、混合液をから遠心分離によって細菌を回収し、これを2回の0.01Mリン酸緩衝液(pH7.4)で洗浄後1/10量の0.01Mリン酸緩衝液(pH7.4)に懸濁し、30分間の煮沸処理した試料をPCRテンプレートにしてPCRを行った。
【0047】
【表4】
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【0048】
表4に示す結果のように、ELISA法及びPCR 法により供試したメロン、キュウリ、カボチャの全てのウリ科作物から本病原細菌を検出することができた。
【0049】
実施例5>
実施例4に用いたアールス系メロン種子250粒、キュウリ種子250粒、カボチャ種子200粒に替えて、スイカ種子500粒(1区)、アールス系メロン種子600粒(2区)に、発芽用資材の15cm×19cmのペーパータオル8枚重ねに替えて、27cm×33cmのペーパータオル1枚重ねの上に、シュレッダーで細かく裁断したペーパータオル30gを均一に敷いたものを用いた。又、吸水用液として0.01Mリン酸緩衝液(pH7.4)100mlに替えて280mlに、ポリエチレン袋をユニパックJ-8に替えてユニパックL-8を用いた。又、該抽出用液の0.01Mリン酸緩衝液(pH7.4)80mlに替えて200mlに、混合液の判定方法を半選択培地(AacSM)でのコロニー判別、ELISA法、PCR法に替え、PCR法により検出する以外は実施例4と同様に、実施例5を行った。
【0050】
前記果実汚斑細菌病菌の汚染種子は、実施例4で行った方法に従って作成した。実施例5で用いた汚染スイカ種子は1×107cfu/mlの細菌懸濁液に、汚染メロン種子は1×105cfu/mlの細菌懸濁液に、それぞれ浸漬した。
【0051】
前記PCR法は、混合液をから遠心分離によって細菌を回収し、これを2回の0.01Mリン酸緩衝液(pH7.4)で洗浄後1/10量の0.01Mリン酸緩衝液(pH7.4)に懸濁し、30分間の煮沸処理した試料液を再び遠心分離し、その遠心上清液に0.1ml当たり5mgの不溶性PVP(ポリビニルピロリドン)を加え、混合後の遠心上清液をPCRテンプレートに用いた。結果を表5に示す。
【0052】
【表5】
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【0053】
表5に示す結果のように、発芽用資材にシュレッダーで細かく裁断したペーパータオルを用いた場合でも、又、スイカ種子を500粒に、メロン種子を600粒に、それぞれ配置する種子数を増加した場合でも、PCR 法により果実汚斑細菌病菌を安定して検出することができた。
【0054】
<実施例6>
国内で流通している種子を対象とし、実際に種子検査を実施した。実施例1に用いたスイカ種子50粒及びアールス系メロン種子の50粒に替えて、市販のメロン品種A(1区)及び品種B(2区)の種子(いずれの品種もZ種苗会社の種子を使用。)それぞれ100粒に、0.01Mリン酸緩衝液(pH7.4)20mlに替えて40mlに、ポリエチレン袋の蔵置期間10日間に替えて14日間に、果実汚斑細菌病菌の接種に替えて無接種にした以外は実施例1と同様にして実施例6を行った。結果を表6に示す。
【0055】
【表6】
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【0056】
表6に示す結果のように、供試した品種A(1区)では4つの反復区から果実汚斑細菌病菌が検出された。当該メロン品種Aの種子は、現実に果実汚斑細菌病の発生をみたメロン栽培農家の使用したメロン品種、種子ロットと同一のものであったことから、本方法は市場に流通する、自然に感染した種子の検査に有効であることが確認された。
【0057】
<実施例7>
病原菌として、イネに病原性を有するイネ褐条病菌(Acidovorax avenae subsp. avenae)を用いた。
実施例3に用いたスイカ種子250粒に替えてイネ種子300粒に、15cm×19cmのペーパータオル8枚重ねに替えて15cm×19cmのペーパータオル1枚の上におおよそ幅0.4cm、長さ4.5cmに細断したペーパータオル11.0gを均一に敷くことに、0.01Mリン酸緩衝液(pH7.4)100mlに替えて110mlに、該抽出用液の0.01Mリン酸緩衝液(pH7.4)80mlに替えて60mlに、果実汚斑細菌病菌の接種に替えてイネ褐条病菌に汚染されたイネ種子1粒を混入することに、混合液の段階希釈液を半選択培地培地へ塗布してコロニーのカウントに替え混合液の原液をPCR法により検出とした以外は実施例3と同様に、実施例7を行った。汚染種子混入区6反復の他に、対象として非混入区を3反復行い、実施例3と同様に果実汚斑細菌病菌検出率を調査した。
【0058】
PCR法は、混合液を遠心分離して細菌を回収し、これを0.01Mリン酸緩衝液(pH7.4)で2回洗浄した後に1/10量の滅菌蒸留水に懸濁し、15分間の煮沸処理を行った。この試料液を再び遠心分離し、その遠心上清液に0.1ml当たり5mgの不溶性PVP(ポリビニルピロリドン)を加え、混合後の遠心上清液をPCRテンプレートに用いた。PCRは、「W.Y.Song et. al. 2004 Detection of Acidovorax avenae ssp. avenae in rice seedsusing bio-PCR. Journal of Phytopathology 152, 667-676.」に従って行った。
【0059】
前記褐条苗菌の汚染種子は、実施例4で行った方法に従って作成した。実施例7で用いた汚染イネ種子は1×104cfu/mlの細菌懸濁液に浸漬した。結果を表7に示す。
【0060】
【表7】
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【0061】
表7に示すように、イネ種子300粒にイネ褐条病菌に汚染された種子1粒を混入させた場合でも、イネ褐条病菌を検出することが可能であった。本実施例においても、実施例1その他のウリ科種子と果実汚斑細菌病菌の組み合わせと同様に、蔵置した密閉容器内でイネ褐条病菌が発芽後のイネ幼苗上で高率に増殖し、汚染種子の検出が可能であった。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明によれば、病原細菌の増殖に最適な条件である温度と高湿度の下で、検査対象種子を腐敗なく発芽、生育させ、種子に存在する病原菌を発芽生育した植物体に大量に増殖させることができ、既知の診断法(選択培地、血清学的方法、遺伝子診断法)に供試する材料を容易に得ることができた。本発明の種子伝染性病原菌の検査方法によれば、種子伝染性病原菌を対象とした種子検査を効率的におこなうことができる。