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明細書 :電力供給システム、及びそのための可動体と固定体

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5170054号 (P5170054)
公開番号 特開2011-083132 (P2011-083132A)
登録日 平成25年1月11日(2013.1.11)
発行日 平成25年3月27日(2013.3.27)
公開日 平成23年4月21日(2011.4.21)
発明の名称または考案の名称 電力供給システム、及びそのための可動体と固定体
国際特許分類 H02J  17/00        (2006.01)
H01G   2/00        (2006.01)
FI H02J 17/00 C
H01G 1/16
請求項の数または発明の数 10
全頁数 26
出願番号 特願2009-233909 (P2009-233909)
出願日 平成21年10月7日(2009.10.7)
審査請求日 平成24年10月5日(2012.10.5)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304036743
【氏名又は名称】国立大学法人宇都宮大学
発明者または考案者 【氏名】船渡 寛人
【氏名】原川 健一
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】100107364、【弁理士】、【氏名又は名称】斉藤 達也
審査官 【審査官】宮本 秀一
参考文献・文献 特開2005-079786(JP,A)
特開2003-347896(JP,A)
特開2000-031741(JP,A)
特開平08-046483(JP,A)
特開2004-071850(JP,A)
調査した分野 G06K 17/00-19/10、
H01G 2/00、 2/08、 2/12、 2/22- 2/24、
H02J 17/00、
H03H 11/00-11/54、
H04B 5/00- 5/06
特許請求の範囲 【請求項1】
電力供給領域に配置された固定体から、電力被供給領域に配置された可動体を介して、所定の負荷に対して電力を供給するための電力供給システムであって、
前記固定体は、
交流電源と、
前記電力供給領域と前記電力被供給領域との相互の境界面に対する近傍位置に配置されるものであって、前記交流電源から交流電力の供給を受ける第1の送電電極及び第2の送電電極と、を備え、
前記可動体は、
前記第1の送電電極又は前記第2の送電電極に対して前記境界面を挟んで対向状かつ非接触に配置される第1の受電電極及び第2の受電電極、を備え、
前記第1の送電電極に対向するように前記第1の受電電極又は第2の受電電極のいずれか一方が配置されることで第1の結合コンデンサが構成されると共に、前記第2の送電電極に対向するように前記第1の受電電極又は第2の受電電極のいずれか他方が配置されることで第2の結合コンデンサが構成され、
前記固定体又は前記可動体は、
前記第1の結合コンデンサ又は前記第2の結合コンデンサの少なくとも一方に直列接続されたアクティブキャパシタと、
前記アクティブキャパシタを制御するアクティブキャパシタ制御手段と、を備え、
前記アクティブキャパシタ制御手段は、前記第1の結合コンデンサと前記第2の結合コンデンサと前記アクティブキャパシタとの合成キャパシタンスの送電周波数における交流インピーダンスが、前記第1の結合コンデンサと前記第2の結合コンデンサとの合成キャパシタンスの送電周波数における交流インピーダンスに対して十分小さくなるように、前記アクティブキャパシタに負のキャパシタンスを発生させる、
電力供給システム。
【請求項2】
前記アクティブキャパシタと前記アクティブキャパシタ制御手段とを、前記固定体に設けた、
請求項1に記載の電力供給システム。
【請求項3】
前記固定体は、
前記交流電源から前記第1の結合コンデンサと前記第2の結合コンデンサを経て当該交流電源に帰還する線路上に、前記アクティブキャパシタ及びアクティブキャパシタ制御手段を備えると共に、当該線路を流れる電流を検出する電流検出手段を備え、
前記アクティブキャパシタ制御手段は、前記電流検出手段にて検出された電流が最大点近傍となるように、前記アクティブキャパシタを制御し、
前記可動体は、
前記第1の結合コンデンサと前記第2の結合コンデンサの間に接続された前記負荷を備える、
請求項2に記載の電力供給システム。
【請求項4】
前記固定体は、
前記交流電源から前記第1の結合コンデンサと前記第2の結合コンデンサを経て当該交流電源に帰還する線路に対して、調整用電流制限抵抗又は回路線路を選択的に接続する固定体側切替え手段と、
少なくとも、前記第1の結合コンデンサ、前記第2の結合コンデンサ、及び前記アクティブキャパシタの合成電圧を検出する電圧検出手段と、
前記可動体との間で通信を行う固定体側通信手段と、を備え、
前記可動体は、
前記第1の結合コンデンサと前記第2の結合コンデンサを接続する線路に対して、前記負荷又は調整用短絡線路を選択的に接続する可動体側切替え手段と、
前記固定体との間で通信を行う可動体側通信手段と、を備え、
前記アクティブキャパシタ制御手段は、
初期モードにおいては、前記固定体側切替え手段を介して前記調整用電流制限抵抗36を接続した後、前記固定体側通信手段と前記可動体側通信手段の通信を介して前記可動体側切替え手段により前記調整用短絡線路を接続し、
前記初期モード後の調整モードにおいては、前記電圧検出手段にて検出された電圧に基づいて、当該電圧が所定電圧以下となるように、前記アクティブキャパシタを制御し、
前記調整モード後の電力供給モードにおいては、前記固定体側通信手段と前記可動体側通信手段の通信を介して前記可動体側切替え手段により前記負荷を接続した後、前記固定体側切替え手段を介して前記回路線路を接続する、
請求項2に記載の電力供給システム。
【請求項5】
前記アクティブキャパシタ制御手段は、
前記初期モードにおいては、前記交流電源の電圧を所定の初期電圧値に制御し、
前記電力供給モードにおいては、前記交流電源の電圧を前記初期電圧値よりも大きな所定の充電電圧値に制御する、
請求項4に記載の電力供給システム。
【請求項6】
前記アクティブキャパシタ制御手段は、前記電力供給モードにおいて、所定の調整開始状態になった場合には前記調整モードの制御を行い、所定の電力供給不要状態になった場合には前記初期モードの制御を行う、
請求項4又は5に記載の電力供給システム。
【請求項7】
前記第1の結合コンデンサ又は前記第2の結合コンデンサの各々に、前記アクティブキャパシタが直列接続された、
請求項1から6のいずれか一項に記載の電力供給システム。
【請求項8】
前記アクティブキャパシタは、直流電源から供給された直流電流をスイッチングするスイッチング部、前記スイッチング部をパルス幅変調制御するパルス幅変調制御部、及び前記スイッチング部から出力されたパルス信号をアナログ信号に変換して出力するフィルタ部とを有するスイッチングアンプを備える、
請求項1から7のいずれか一項に記載の電力供給システム。
【請求項9】
電力被供給領域に配置され、電力供給領域に配置された固定体から供給された電力を所定の負荷に供給する可動体であって、
前記固定体に配置されたものであって交流電力が供給される第1の送電電極又は第2の送電電極に対して、境界面を挟んで対向状かつ非接触に配置される第1の受電電極及び第2の受電電極であって、前記第1の送電電極に対向するように前記第1の受電電極又は第2の受電電極のいずれか一方が配置されることで第1の結合コンデンサを構成されると共に、前記第2の送電電極に対向するように前記第1の受電電極又は第2の受電電極のいずれか他方が配置されることで第2の結合コンデンサが構成される、第1の受電電極及び第2の受電電極と、
前記第1の結合コンデンサ又は前記第2の結合コンデンサの少なくとも一方に直列接続されたアクティブキャパシタと、
前記アクティブキャパシタを制御するアクティブキャパシタ制御手段と、を備え、
前記アクティブキャパシタ制御手段は、前記第1の結合コンデンサと前記第2の結合コンデンサと前記アクティブキャパシタとの合成キャパシタンスの送電周波数における交流インピーダンスが、前記第1の結合コンデンサと前記第2の結合コンデンサとの合成キャパシタンスの送電周波数における交流インピーダンスに対して十分小さくなるように、前記アクティブキャパシタに負のキャパシタンスを発生させる、
可動体。
【請求項10】
電力供給領域に配置され、電力被供給領域に配置された可動体を介して所定の負荷に対して電力を供給する固定体であって、
交流電源と、
前記可動体に配置された少なくとも一組の受電電極に対して、前記電力供給領域と前記電力被供給領域との相互の境界面を挟んで対向状かつ非接触に配置されることにより、これら受電電極との間に第1の結合コンデンサ及び第2の結合コンデンサを構成する第1の送電電極及び第2の送電電極と、
前記第1の結合コンデンサ又は前記第2の結合コンデンサの少なくとも一方に直列接続されたアクティブキャパシタと、
前記アクティブキャパシタを制御するアクティブキャパシタ制御手段と、を備え、
前記アクティブキャパシタ制御手段は、前記第1の結合コンデンサと前記第2の結合コンデンサと前記アクティブキャパシタとの合成キャパシタンスの送電周波数における交流インピーダンスが、前記第1の結合コンデンサと前記第2の結合コンデンサとの合成キャパシタンスの送電周波数における交流インピーダンスに対して十分小さくなるように、前記アクティブキャパシタに負のキャパシタンスを発生させる、
固定体。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
この発明は、各種の負荷に対して電力供給を行うための電力供給システム、及びそのための可動体と固定体に関する。
【背景技術】
【0002】
床面上に配置された各種の負荷に対して給電を行う電力供給システムは、一般に、床面に露出するように設けた電極を負荷の底面に設けた電極に接触させて給電する接触式の電力供給システムと、床の内部に非露出状に設けた電極を負荷の電極に接触させることなく給電する非接触式の電力供給システムとに大別できる。
【0003】
このうち、従来の非接触式の電力供給システムは、例えば特許文献1に開示されている。このシステムは、走行路に沿って移動する負荷(地上可動体)に対して電力供給を行うもので、走行路に沿って誘導線を配置すると共に、地上可動体にはコイルが巻き付けられた鉄心を設けて構成されている。そして、誘導線に高周波電流を流し、この誘導線を一次側とすると共にコイルを二次側とする電磁誘導を行うことで、地上可動体に給電を行なう。
【0004】
また、他の非接触式の電力供給システムとして、ワイヤレス電力伝送シートが非特許文献1に開示されている。このワイヤレス電力伝送シートは、送電用のコイル、電力制御用のMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)スイッチ、受電機器の位置検出用のコイル、及び位置検出用コイルを用いた位置検出を行う有機トランジスタを、印刷技術を用いてプラスチックフィルム上に形成することで構成されている。このワイヤレス電力伝送シートでは、当該シートに対する電子機器の接近に伴う位置検出用コイルのインダクタンスの変化を有機トランジスタによって検出することにより、電子機器の接近位置を特定する。そして、この特定された位置に対応する送電用コイルをMEMSスイッチで選択し、当該選択された送電用コイルから電力を伝送する。
【0005】
しかしながら、このような従来の非接触式の電力供給システムでは、電力伝送効率を高めるためには、誘導線とコイルを相互に近接させたり、誘導線への通電によって生じる磁束をコイルの中心軸に通過させるようにこれら誘導線とコイルの位置合せを行う必要がある等、位置上の制約が多かった。従って、走行路の如き固定的な経路でしか給電を行うことができず、床面上を自由に移動する必要があるロボットの如き可動体に対して給電を行うことができないという問題があった。また、磁路を形成するために鉄心の如き磁性体を用いる必要があり、重量が大きくなると共に、磁性体を交流励磁したときに磁歪が生じることで騒音を発生させるという問題があった。また、従来のワイヤレス電力伝送シートでも、電力伝送効率を高めるためには、送電コイルの位置と電子機器の受電コイルの位置とを合わせる必要があり、やはり位置上の制約が多かった。さらに、スイッチを多用しているため、信頼性が低下する可能性があった。この他、非接触式の電力供給システムとしては、電磁波による給電を行うことも考えられるが、人体への悪影響や電子機器の誤作動を回避する観点から厳しい規制があり、オフィス空間のように人がいる場所への導入が困難であった。
【0006】
このような点に鑑みて、本願発明者等は、電磁誘導や電磁波ではなく、直列共振を利用して非接触給電を行うことができる電力供給システムを提案した(特許文献2参照)。図12は、このような従来の電力供給システムの回路図である。この電力供給システムは、電力供給領域100に配置された固定体101から、電力被供給領域102に配置された可動体103を介して、負荷104に対して電力を供給するための電力供給システムである。固定体101は、電力供給領域100と電力被供給領域102との相互の境界面(例えば床面)111に対する近傍位置に配置される第1の送電電極105及び第2の送電電極106を備える。可動体103は、境界面に対する近傍位置に配置されるものであって、第1の送電電極105又は第2の送電電極106に対して対向状かつ非接触に配置される第1の受電電極107と第2の受電電極108を備える。そして、これら第1の送電電極105及び第2の送電電極106と第1の受電電極107及び第2の受電電極108とを組み合わせて結合コンデンサ109が構成されており、この結合コンデンサ109と、固定体101に設けたコイル110とにより直列共振回路を形成して、固定体101から可動体103へ高効率で電力供給を行う。
【0007】
この電力供給システムでは、固定体101に、スイッチングによって周波数を制御可能な交流電源115を設けており、この交流電源115によって、所望の直列共振周波数の交流電力を第1の送電電極105と第2の送電電極106に供給している。この電力供給システムによれば、第1の送電電極105及び第2の送電電極106を電力被供給領域102に露出させる必要がないため、人がいる場所への導入が容易になる。また、第1の送電電極105及び第2の送電電極106と第1の受電電極107及び第2の受電電極108とを所望のキャパシタ容量が生じる程度の距離で対向配置させれば電力供給ができるため、電磁誘導方式のように厳密な位置合わせを行う必要がなくなり、ロボットの如き可動体103に対しても給電を行うことができる。
【先行技術文献】
【0008】

【特許文献1】特開平9-93704号公報
【特許文献2】特開2009-89520号公報
【0009】

【非特許文献1】Sekitani,T.ら、「nature materials」、第6巻、413-417頁、2007年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記特許文献2に記載の電力供給システムは、直列共振回路を形成して直列共振条件下で電力供給を行っているので、直列共振回路が必要になるために固定体が大型化したり、直列共振条件を維持するために電力周波数が限定されるという問題があった。
【0011】
このような点に鑑みて、本発明は、固定体を小型化できると共に、電力周波数が限定されることなく、非接触にて電力供給を行うことができる、電力供給システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、請求項1に記載の電力供給システムは、電力供給領域に配置された固定体から、電力被供給領域に配置された可動体を介して、所定の負荷に対して電力を供給するための電力供給システムであって、前記固定体は、交流電源と、前記電力供給領域と前記電力被供給領域との相互の境界面に対する近傍位置に配置されるものであって、前記交流電源から交流電力の供給を受ける第1の送電電極及び第2の送電電極と、を備え、前記可動体は、前記第1の送電電極又は前記第2の送電電極に対して前記境界面を挟んで対向状かつ非接触に配置される第1の受電電極及び第2の受電電極、を備え、前記第1の送電電極に対向するように前記第1の受電電極又は第2の受電電極のいずれか一方が配置されることで第1の結合コンデンサが構成されると共に、前記第2の送電電極に対向するように前記第1の受電電極又は第2の受電電極のいずれか他方が配置されることで第2の結合コンデンサが構成され、前記固定体又は前記可動体は、前記第1の結合コンデンサ又は前記第2の結合コンデンサの少なくとも一方に直列接続されたアクティブキャパシタと、前記アクティブキャパシタを制御するアクティブキャパシタ制御手段と、を備え、前記アクティブキャパシタ制御手段は、前記第1の結合コンデンサと前記第2の結合コンデンサと前記アクティブキャパシタとの合成キャパシタンスの送電周波数における交流インピーダンスが、前記第1の結合コンデンサと前記第2の結合コンデンサとの合成キャパシタンスの送電周波数における交流インピーダンスに対して十分小さくなるように、前記アクティブキャパシタに負のキャパシタンスを発生させる。
【0013】
また、請求項2に記載の電力供給システムは、請求項1に記載の電力供給システムにおいて、前記アクティブキャパシタと前記アクティブキャパシタ制御手段とを、前記固定体に設けた。
【0014】
また、請求項3に記載の電力供給システムは、請求項2に記載の電力供給システムにおいて、前記固定体は、前記交流電源から前記第1の結合コンデンサと前記第2の結合コンデンサを経て当該交流電源に帰還する線路上に、前記アクティブキャパシタ及びアクティブキャパシタ制御手段を備えると共に、当該線路を流れる電流を検出する電流検出手段を備え、前記アクティブキャパシタ制御手段は、前記電流検出手段にて検出された電流が最大点近傍となるように、前記アクティブキャパシタを制御し、前記可動体は、前記第1の結合コンデンサと前記第2の結合コンデンサの間に接続された前記負荷を備える。
【0015】
また、請求項4に記載の電力供給システムは、請求項2に記載の電力供給システムにおいて、前記固定体は、前記交流電源から前記第1の結合コンデンサと前記第2の結合コンデンサを経て当該交流電源に帰還する線路に対して、調整用電流制限抵抗又は回路線路を選択的に接続する固定体側切替え手段と、少なくとも、前記第1の結合コンデンサ、前記第2の結合コンデンサ、及び前記アクティブキャパシタの合成電圧を検出する電圧検出手段と、前記可動体との間で通信を行う固定体側通信手段と、を備え、前記可動体は、前記第1の結合コンデンサと前記第2の結合コンデンサを接続する線路に対して、前記負荷又は調整用短絡線路を選択的に接続する可動体側切替え手段と、前記固定体との間で通信を行う可動体側通信手段と、を備え、前記アクティブキャパシタ制御手段は、初期モードにおいては、前記固定体側切替え手段を介して前記調整用電流制限抵抗36を接続した後、前記固定体側通信手段と前記可動体側通信手段の通信を介して前記可動体側切替え手段により前記調整用短絡線路を接続し、前記初期モード後の調整モードにおいては、前記電圧検出手段にて検出された電圧に基づいて、当該電圧が所定電圧以下となるように、前記アクティブキャパシタを制御し、前記調整モード後の電力供給モードにおいては、前記固定体側通信手段と前記可動体側通信手段の通信を介して前記可動体側切替え手段により前記負荷を接続した後、前記固定体側切替え手段を介して前記回路線路を接続する。
【0016】
また、請求項5に記載の電力供給システムは、請求項4に記載の電力供給システムにおいて、前記アクティブキャパシタ制御手段は、前記初期モードにおいては、前記交流電源の電圧を所定の初期電圧値に制御し、前記電力供給モードにおいては、前記交流電源の電圧を前記初期電圧値よりも大きな所定の充電電圧値に制御する。
【0017】
また、請求項6に記載の電力供給システムは、請求項4又は5に記載の電力供給システムにおいて、前記アクティブキャパシタ制御手段は、前記電力供給モードにおいて、所定の調整開始状態になった場合には前記調整モードの制御を行い、所定の電力供給不要状態になった場合には前記初期モードの制御を行う。
【0018】
また、請求項7に記載の電力供給システムは、請求項1から6のいずれか一項に記載の電力供給システムにおいて、前記第1の結合コンデンサ又は前記第2の結合コンデンサの各々に、前記アクティブキャパシタが直列接続された。
【0019】
また、請求項8に記載の電力供給システムは、請求項1から7のいずれか一項に記載の電力供給システムにおいて、前記アクティブキャパシタは、直流電源から供給された直流電流をスイッチングするスイッチング部、前記スイッチング部をパルス幅変調制御するパルス幅変調制御部、及び前記スイッチング部から出力されたパルス信号をアナログ信号に変換して出力するフィルタ部とを有するスイッチングアンプを備える。
また、請求項9に記載の可動体は、電力被供給領域に配置され、電力供給領域に配置された固定体から供給された電力を所定の負荷に供給する可動体であって、前記固定体に配置されたものであって交流電力が供給される第1の送電電極又は第2の送電電極に対して、境界面を挟んで対向状かつ非接触に配置される第1の受電電極及び第2の受電電極であって、前記第1の送電電極に対向するように前記第1の受電電極又は第2の受電電極のいずれか一方が配置されることで第1の結合コンデンサを構成されると共に、前記第2の送電電極に対向するように前記第1の受電電極又は第2の受電電極のいずれか他方が配置されることで第2の結合コンデンサが構成される、第1の受電電極及び第2の受電電極と、前記第1の結合コンデンサ又は前記第2の結合コンデンサの少なくとも一方に直列接続されたアクティブキャパシタと、前記アクティブキャパシタを制御するアクティブキャパシタ制御手段と、を備え、前記アクティブキャパシタ制御手段は、前記第1の結合コンデンサと前記第2の結合コンデンサと前記アクティブキャパシタとの合成キャパシタンスの送電周波数における交流インピーダンスが、前記第1の結合コンデンサと前記第2の結合コンデンサとの合成キャパシタンスの送電周波数における交流インピーダンスに対して十分小さくなるように、前記アクティブキャパシタに負のキャパシタンスを発生させる。
また、請求項10に記載の固定体は、電力供給領域に配置され、電力被供給領域に配置された可動体を介して所定の負荷に対して電力を供給する固定体であって、交流電源と、前記可動体に配置された少なくとも一組の受電電極に対して、前記電力供給領域と前記電力被供給領域との相互の境界面を挟んで対向状かつ非接触に配置されることにより、これら受電電極との間に第1の結合コンデンサ及び第2の結合コンデンサを構成する第1の送電電極及び第2の送電電極と、前記第1の結合コンデンサ又は前記第2の結合コンデンサの少なくとも一方に直列接続されたアクティブキャパシタと、前記アクティブキャパシタを制御するアクティブキャパシタ制御手段と、を備え、前記アクティブキャパシタ制御手段は、前記第1の結合コンデンサと前記第2の結合コンデンサと前記アクティブキャパシタとの合成キャパシタンスの送電周波数における交流インピーダンスが、前記第1の結合コンデンサと前記第2の結合コンデンサとの合成キャパシタンスの送電周波数における交流インピーダンスに対して十分小さくなるように、前記アクティブキャパシタに負のキャパシタンスを発生させる。
【発明の効果】
【0020】
請求項1に記載の電力供給システム、請求項9に記載の可動体、あるいは請求項10に記載の固定体によれば、送電電極と受電電極とを相互に非接触状態としたまま電力供給を行うことができ、送電電極を電力被供給領域に露出させる必要がないため、送電電極が人体に触れることによる感電の危険性をなくすことができ、心理的な不安も解消することができるので、オフィス空間のように人がいる場所への導入が容易になる。特に、この電力供給システムによれば、第1の結合コンデンサと第2の結合コンデンサとアクティブキャパシタとの合成キャパシタンスの送電周波数における交流インピーダンスが、第1の結合コンデンサと第2の結合コンデンサとの合成キャパシタンスの送電周波数における交流インピーダンスに対して十分小さくなるように、アクティブキャパシタに負のキャパシタンスを発生させるので、第1の結合コンデンサと第2の結合コンデンサとアクティブキャパシタとの合成キャパシタンスを、アクティブキャパシタンスで発生させる負のキャパシタンスの作用で、等価的に、非常に容量の大きなキャパシタンスとして振る舞わせることが可能になる。このため、直列共振を用いることなく、電界結合により高効率で電力供給を行うことが可能となる。このため、直列共振回路が不要になるので、固定体を小型化できると共に、直列共振条件を維持するために電力周波数が限定されるという問題も回避できる。
【0021】
また、請求項2に記載の電力供給システムによれば、前記アクティブキャパシタと前記アクティブキャパシタ制御手段とを前記固定体に設けたので、様々な可動体にアクティブキャパシタ等を設ける必要がなくなり、可動体については従来と同様に簡易に構成することができる。
【0022】
また、請求項3に記載の電力供給システムによれば、電流検出手段にて検出された電流が最大点近傍となるように、アクティブキャパシタを制御することで、比較的簡易な構成により、アクティブキャパシタを制御して、交流電源と負荷の間の交流インピーダンスを小さくして短絡状態に近づけることが可能になる。つまり、等価的に非接触接合部の電極を物理距離よりも非常に狭くするような作用がある。この作用により、電界結合による高効率な電力供給を行うことが可能となる。
【0023】
また、請求項4に記載の電力供給システムによれば、固定体に対する可動体の配置状態等に状態に応じて初期モード、調整モード、電力供給モードの各モードを切り替えることで、電力供給システムの安全性を維持しつつ、アクティブキャパシタを制御して効率的に電力供給を行うことが可能となる。
【0024】
また、請求項5に記載の電力供給システムによれば、電力供給を行わない初期モードにおいては交流電源の電圧を小さくし、電力供給を行う電力供給モードにおいては交流電源の電圧を大きくすることで、電力供給システムの安全性を維持しつつ、アクティブキャパシタを制御して効率的に電力供給を行うことが可能となる。
【0025】
また、請求項6に記載の電力供給システムによれば、電力供給モードの制御を行っている場合であっても、調整が必要になった場合には調整モードの制御を行い、電力供給が遮断された場合には初期モードの制御を行うので、固定体に対する可動体の配置状態等に状態に応じた最適なモードでの制御を行うことができる。
【0026】
また、請求項7に記載の電力供給システムによれば、第1の結合コンデンサ又は前記第2の結合コンデンサの各々にアクティブキャパシタが直列接続されているので、第1の結合コンデンサ又は前記第2の結合コンデンサの一方のみにアクティブキャパシタを直列接続した場合に比べて、各アクティブキャパシタンスに印加される電圧を小さくすることが可能となる。
【0027】
また、請求項8に記載の電力供給システムによれば、アクティブキャパシタをスイッチングアンプにて構成することで、アクティブキャパシタをリニアアンプにて構成する場合に比べて、熱損失等として生じる電力損失を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】各実施の形態に係る電力供給システムを簡略化して示す回路図である。
【図2】図1の変形例に係る電力供給システムを簡略化して示す回路図である。
【図3】実施の形態1に係る電力供給システムを適用した居室の斜視図である。
【図4】図3の固定体及び可動体の回路図である。
【図5】リニアアンプを用いて構成されたアクティブキャパシタの回路図である。
【図6】スイッチングアンプを用いて構成されたアクティブキャパシタの回路図である。
【図7】初期モードにおける固定体及び可動体の回路図である。
【図8】シミュレーション対象である従来の電力供給システムの回路図である。
【図9】シミュレーション対象である実施の形態1に係る電力供給システムの回路図である。
【図10】シミュレーション対象である変形例に係る電力供給システムの回路図である。
【図11】実施の形態2に係る固定体及び可動体の回路図である。
【図12】従来の電力供給システムに係る固定体及び可動体の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る電力供給システム、及びそのための可動体と固定体の各実施の形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。まず、〔I〕各実施の形態に共通の基本的概念を説明した後、〔II〕各実施の形態の具体的内容について説明し、〔III〕最後に、各実施の形態に対する変形例について説明する。ただし、これら各実施の形態によって本発明が限定されるものではない。

【0030】
〔I〕各実施の形態に共通の基本的概念
まず、各実施の形態に共通の基本的概念について説明する。各実施の形態に係る電力供給システムは、電力供給領域に配置された固定体から、電力被供給領域に配置された可動体に対して、電力を供給するための電力供給システムである。電力供給領域や電力被供給領域の具体的構成は任意であり、例えば、一般住宅やオフィスビルの如き建屋の内部空間や、電車や飛行機の如き乗り物の内部空間、あるいは、屋外空間を含む。以下では、電力供給領域と電力被供給領域とを相互に区画する面を境界面と称する。例えば、電力被供給領域を建屋の居室とすると共に、電力供給領域を居室の床部とした場合、床部の上面(床面)が境界面になる。

【0031】
固定体は、当該固定体の内部に電源を備えたものと、当該固定体の外部の電源から供給された電力を可動体に供給するものを含む。この固定体は、電力供給領域に配置されるものであるが、恒久的に移動不能に固定されるものに限定されず、不使用時には電力供給領域から取り外すことができたり、当該電力供給領域の内部の任意位置に移動可能なものを含む。特に、固定体の全体が常時固定的であるものに限定されず、例えば、固定体の一部の構成要素の位置を必要に応じて調整することで、当該構成要素と可動体との相対的な位置関係を変更可能なものを含む。

【0032】
可動体は、電力被供給領域に固定的に配置して使用されるもの(静止体)と、電力被供給領域の内部において必要に応じて移動するもの(移動体)とを含む。この可動体の機能や具体的構成は特記する点を除いて任意であるが、例えば、静止体としては、コンピュータや家電の如き機器を挙げることができ、移動体としては、ロボットや電気自動車を挙げることができる。

【0033】
このように構成される電力供給システムは、固定体から可動体に対して電力を非接触で供給する。この非接触電力供給は、概略的には、境界面を介して配置されたコンデンサを用いて行われる。すなわち、固定体に設けた送電電極と、可動体に設けた受電電極とを、境界面を挟んで相互に非接触状に対向配置することで、コンデンサ(あるいはキャパシタ。以下、「結合コンデンサ」と表記する)を構成する。このような結合コンデンサを少なくとも2つ設けて送電路に配置し、この2つの結合コンデンサを介して電界型の送電を行う。この構成によれば、固定体の送電電極を電力被供給領域に露出させる必要がないため、電力供給システムの安全性や耐久性を高めることができる。また、送電電極を複数配置することで、可動体が移動した場合においても当該可動体に対して継続的に電力供給を行うことができ、可動体の移動の自由度を確保することができる。

【0034】
特に、各実施の形態に係る電力供給システムの特徴の一部は、送電電極に接続されたアクティブキャパシタと、このアクティブキャパシタを制御するアクティブキャパシタ制御手段とを備え、このアクティブキャパシタ制御手段を用いて、上記2つの結合コンデンサとアクティブキャパシタとの合成キャパシタンスを、アクティブキャパシタンスで発生させる負のキャパシタンスの作用で非常にキャパシタンス(=等価的に電極間隔が非常に狭くするような作用)の大きなコンデンサとして振る舞わせ、この合成キャパシタンスの送電周波数における交流インピーダンスが、2つの結合コンデンサのみの合成キャパシタンスの送電周波数における交流インピーダンスに対して(実際には負荷の交流インピーダンスに対して)十分小さくなるように(例えば、好ましくは10分の1程度、より好ましくは100分の1程度)となるように、アクティブキャパシタを制御する点にある。この構成により、直接共振を用いることなく、電界結合による非接触な電力供給が可能になるという利点を得ることができる。

【0035】
図1は、各実施の形態に係る電力供給システムを簡略化して示す回路図である。この図1において、電力供給システム1は、固定体2と可動体3を、境界面4を介して相互に非接触状に配置して構成されている。固定体2は、交流電源5、第1の送電電極6、第2の送電電極7、及びアクティブキャパシタ8を備えて構成されている。可動体3は、第1の受電電極9、第2の受電電極10、及び負荷11を備えて構成されている。第1の送電電極6又は第2の送電電極7のいずれか一方(図1では第1の送電電極6)に対応する位置には、第1の受電電極9又は第2の受電電極10のいずれか一方(図1では第1の受電電極9)が配置されており、これらによって第1の結合コンデンサ12が構成されている。また、第1の送電電極6又は第2の送電電極7のいずれか他方(図1では第2の送電電極7)に対応する位置には、第1の受電電極9又は第2の受電電極10のいずれか他方(図1では第2の受電電極10)が配置されており、これらによって第2の結合コンデンサ13が構成されている。

【0036】
この図1の構成において、アクティブキャパシタ8のキャパシタンスが負となるように、当該アクティブキャパシタ8を制御することで、第1の結合コンデンサ12のキャパシタンス、第2の結合コンデンサ13のキャパシタンス、及びアクティブキャパシタ8のキャパシタンスの合成キャパシタンスを、仮想的な巨大コンデンサのキャパシタンスとして振る舞わせることが可能になり、送電周波数における第1の結合コンデンサ12のキャパシタンスと第2の結合コンデンサ13のキャパシタンスとアクティブキャパシタ8のキャパシタンスによる合成キャパシタンスの交流インピーダンスを、第1の結合コンデンサ12のキャパシタンスと第2の結合コンデンサ13のキャパシタンスによる合成キャパシタンスの交流インピーダンスに比べて(実際には負荷の交流インピーダンスに比べて)、十分に小さくでき、電源と負荷の間を短絡状態に近づけることが可能になる。つまり、等価的に非接触接合部の電極を物理距離よりも非常に狭くするような作用がある。この作用により、直列共振を用いることなく、電界結合により高効率で電力供給を行うことが可能となる。

【0037】
すなわち、図1の構成において、第1の結合コンデンサ12のキャパシタンスと第2の結合コンデンサ13のキャパシタンスとをそれぞれC、アクティブキャパシタ8のキャパシタンスをC、これら第1の結合コンデンサ12のキャパシタンスC、第2の結合コンデンサ13のキャパシタンスC、及びアクティブキャパシタ8のキャパシタンスCの合成キャパシタンスをCとすると、この合成キャパシタンスCは以下の式(1)で表わされる。

【0038】
【数1】
JP0005170054B2_000002t.gif

【0039】
ここで、合成キャパシタンスCをキャパシタンスCのk倍とするためには、式(1)より、キャパシタンスCを、以下の式(2)に示されるように決定すればよいことが判る。

【0040】
【数2】
JP0005170054B2_000003t.gif

【0041】
このことから、k>1とするためには、キャパシタンスCを負の値とすればよいことが判る。例えば、キャパシタンスC=5nF、キャパシタンスC=-2.51nFとすれば、式(1)より、合成キャパシタンスC=627.5nFとなり、合成キャパシタンスCを大きくすることができることが判る。

【0042】
図2は、図1の変形例に係る電力供給システムを簡略化して示す回路図である。この図2において、電力供給システム14は、図1とほぼ同様に構成されているが、固定体2は、図1のアクティブキャパシタ8に代えて、第1の送電電極6に対して接続された第1のアクティブキャパシタ15と、第2の送電電極7に対して接続された第2のアクティブキャパシタ16とを備えて構成されている。

【0043】
この図2の構成においても、第1のアクティブキャパシタ15のキャパシタンスと第2のアクティブキャパシタ16のキャパシタンスとの合成キャパシタンスが負となるように、当該第1のアクティブキャパシタ15及び当該第2のアクティブキャパシタ16を制御することで、第1の結合コンデンサ12のキャパシタンス、第2の結合コンデンサ13のキャパシタンス、第1のアクティブキャパシタ15のキャパシタンス、及び第2のアクティブキャパシタ16のキャパシタンスとアクティブキャパシタ16のキャパシタンスの合成キャパシタンスを、仮想的な非常にキャパシタンスの大きなコンデンサとして振る舞わせることが可能になり、送電周波数における交流インピーダンスを負荷に比べて十分に小さくできるので、直列共振を用いることなく、高効率で電力供給を行うことが可能となる。

【0044】
すなわち、図2の構成において、第1の結合コンデンサ12のキャパシタンスと第2の結合コンデンサ13のキャパシタンスとをそれぞれC、第1のアクティブキャパシタ15のキャパシタンスと第2のアクティブキャパシタ16のキャパシタンスとをそれぞれC、これら第1の結合コンデンサ12のキャパシタンスC、第2の結合コンデンサ13のキャパシタンスC、第1のアクティブキャパシタ15のキャパシタンスC、及び第2のアクティブキャパシタ16のキャパシタンスCの合成キャパシタンスをCとすると、この合成キャパシタンスCは以下の式(3)で表わされる。

【0045】
【数3】
JP0005170054B2_000004t.gif

【0046】
ここで、合成キャパシタンスCをキャパシタンスCのk倍とするためには、式(3)より、キャパシタンスCを、以下の式(4)に示されるように、決定すればよいことが判る。

【0047】
【数4】
JP0005170054B2_000005t.gif

【0048】
このことから、k>1とするためには、キャパシタンスCを負の値とすればよいことが判る。例えば、キャパシタンスC=5nF、キャパシタンスC=-5.1nFとすれば、式(3)より、合成キャパシタンスC=255nFとなり、合成キャパシタンスCを大きくすることができるので、非常にキャパシタンスの大きなコンデンサとして振る舞わせることが可能になることが判る。

【0049】
なお、これまで説明したことから明らかなように、固定体2に設けるアクティブキャパシタは、図1のように単一のアクティブキャパシタ8としてもよく、あるいは図2のように複数の第1のアクティブキャパシタ15と第2のアクティブキャパシタ16としてもよく、あるいは、3つ以上のアクティブキャパシタを設けることも可能であるが、以下の各実施の形態では、単一のアクティブキャパシタとした場合について主に説明する。また、アクティブキャパシタ8は、固定体2ではなく、可動体3に設けると共に第1の結合コンデンサ12及び又は第2の結合コンデンサ13に直列接続するように配置してもよい。以下の各実施の形態では、アクティブキャパシタ8を固定体2に設けた場合について主に説明する。

【0050】
〔II〕各実施の形態の具体的内容
次に、電力供給システムの各実施の形態の具体的内容について説明する。

【0051】
〔実施の形態1〕
最初に、実施の形態1について説明する。この実施の形態1は、初期モード、調整モード、及び電力供給モードの3つのモードにより、アクティブキャパシタを制御する形態である。

【0052】
(構成)
図3は本実施の形態1に係る電力供給システムを適用した居室の斜視図である。本実施の形態1では、電力供給領域(ここでは床板21の下方空間)20に配置された固定体30から、電力被供給領域(ここでは居室)22の内部を移動する可動体(ここではロボット)50に対して電力を供給する例を示すもので、これら固定体30及び可動体50を備えて本形態の電力供給システムが構成されている。ここでは、電力供給領域20の上方に敷設された床板21が電力供給領域20と電力被供給領域22との相互間の境界面に相当し、この床板21を介して後述する結合コンデンサ60、61(図3には図示せず)が構成される。

【0053】
(構成-固定体)
次に、固定体30の構成について説明する。図4は図3の固定体30及び可動体50の回路図である(図3の構成では、固定体30の上方に可動体50を設けているが、図4及び後述する図7~図11では、図示の便宜上、固定体30を図示左側、可動体50を図示右側にそれぞれ示す)。この固定体30は、概略的には、交流電源31、第1の送電電極32、第2の送電電極33、及びアクティブキャパシタ34を、線路35にて図示のように接続して構成されている。また、線路35上における交流電源31とアクティブキャパシタ34との間には、調整用電流制限抵抗36、回路線路37、及び固定体側切替え部38が図示のように接続されている。さらに、固定体30は、電圧検出部39、アクティブキャパシタ制御部40、自動調整制御部41、及び固定体側通信部42を備える。

【0054】
交流電源31は、交流電力の供給源である。図4の例では、1つの固定体30のみを示すと共に、当該1つの固定体30に対して1つの交流電源31を設けているが、実際には図3に示したように電力供給領域20には複数の固定体30を設けることが想定され、この場合には、これら複数の固定体30に対して1つの共通の交流電源31から交流電力を供給するようにしてもよく、あるいは、各固定体30に対してそれぞれ交流電源31を設けてもよい。

【0055】
図4において、第1の送電電極32及び第2の送電電極33は、それぞれ平板状の導電体であり、床板21の近傍位置において、当該床板21に対して略平行になるように配置されている。これら第1の送電電極32及び第2の送電電極33は、床板21に対して接触させてもよく、あるいは、床板21に対して微小距離を隔てて配置してもよい。いずれの場合においても、これら第1の送電電極32及び第2の送電電極33の電力被供給領域22側の面は、床板21によって完全に覆われており、これら第1の送電電極32及び第2の送電電極33が電力被供給領域22に対して非露出状となっている。なお、以下では、これら第1の送電電極32と第2の送電電極33とを相互に区別する必要がない場合には、これらを単に「送電電極32、33」と総称する。

【0056】
アクティブキャパシタ34は、後述する第1の結合コンデンサ60と後述する第2の結合コンデンサ61とアクティブキャパシタの合成キャパシタンスをアクティブキャパシタで発生させる負のキャパシタンスの作用で、非常にキャパシタンスの大きなコンデンサとして振る舞わせるものであり、アクティブキャパシタ制御部40によって動的に容量制御が可能な可変キャパシタである。このアクティブキャパシタ34に関しては、図2を参照して説明したように、第1の送電電極32と第2の送電電極33の各々に対して別々のアクティブキャパシタ34を接続してもよいが、ここでは、図1を参照して説明したように、1つのアクティブキャパシタ34のみを第1の結合コンデンサ60に対して直列接続している。ただし、このアクティブキャパシタ34は、第1の結合コンデンサ60に代えて第2の結合コンデンサ61に対して直列接続してもよい。このアクティブキャパシタ34の具体的な構成例については後述する。

【0057】
調整用電流制限抵抗36は、後述する初期モードにおいて線路35に接続されることで、線路35を流れる電流を制限するものである。この調整用電流制限抵抗36の抵抗値は、電圧検出部39の検出が十分に可能な範囲で電流ができる限り小さくなるように高い抵抗を選択する。

【0058】
回路線路37は、後述する電力供給モードにおいて調整用電流制限抵抗36に代えて線路35に接続されることで、調整用電流制限抵抗36による電流制限を解除するものである。

【0059】
固定体側切替え部38は、調整用電流制限抵抗36と回路線路37を線路35に対して選択的に切替え接続する固定体側切替え手段であり、自動調整制御部41からの制御によって、初期モードにおいては調整用電流制限抵抗36を線路35に接続し、後述する電力供給モードにおいては回路線路37を線路35に接続する。

【0060】
電圧検出部39は、少なくとも、後述する第1の結合コンデンサ60、後述する第2の結合コンデンサ61、及びアクティブキャパシタ34の合成電圧を検出する電圧検出手段であり、ここでは、調整用電流制限抵抗36及び回路線路37とアクティブキャパシタ34との間の位置と、第2の送電電極33と交流電源31との間の位置における電位を検出する。

【0061】
アクティブキャパシタ制御部40は、アクティブキャパシタ34を制御するアクティブキャパシタ制御手段であり、後述する第1の結合コンデンサ60と後述する第2の結合コンデンサ61とアクティブキャパシタ34の合成交流インピーダンスを負荷53に比べて十分に小さくするため、アクティブキャパシタ34のキャパシタンスが負となるように、当該アクティブキャパシタ34を制御する。ただし、アクティブキャパシタ34のキャパシタンスの大きさを、第1の結合コンデンサ60と第2の結合コンデンサ61の合成キャパシタンスの大きさに完全に一致させると、理論的には、第1の送電電極32又は第2の送電電極33と後述する第1の受電電極51又は後述する第2の受電電極52とを相互に完全に短絡させることになり、最大効率の送電が実現可能であるが、アクティブキャパシタ34と送電電極32、33及び受電電極51、52の合成キャパシタンスが負となると回路が不安定になる可能性があるので、合成キャパシタンスが正となる範囲で調整することが好ましい。この調整範囲は、合成キャパシタンスの交流インピーダンスが負荷53のインピーダンスに比べて十分に小さくなる範囲で、かつ制御の偏差や経時変化で合成キャパシタンスが確実に負とならないように決定する。

【0062】
自動調整制御部41は、初期モード、調整モード、及び電力供給モードの3つのモードに応じて、アクティブキャパシタ制御部40を介してアクティブキャパシタ34を制御すると共に、固定体側切替え部38を介して調整用電流制限抵抗36と回路線路37を線路35に対して選択的に切替え接続する。また、自動調整制御部41は、初期モード、調整モード、及び電力供給モードの3つのモードに応じて、交流電源31における電圧を調整する。この自動調整制御部41の具体的な構成は任意であるが、例えば、自動調整制御部41は、図示しないCPU(Central Processing Unit)及びROM(Read Only Memory)を備えて構成されており、自動調整制御プログラムを解釈及び実行することによって、後述する制御が行われる。

【0063】
固定体側通信部42は、可動体50との間で通信を行う固定体側通信手段であり、具体的には、可動体側通信部57との間において、線路35を介した電力線通信(PLC:Power Line Communication)を行う。ただし、この他にも任意の通信方式を採用することができ、例えば、RF無線通信をMACプロトコルにて行うようにしてもよい(可動体側通信部57においても同様)。

【0064】
(構成-可動体)
次に、可動体50の構成について説明する。可動体50は、概略的には、第1の受電電極51、第2の受電電極52、及び負荷53を、線路54にて図示のように接続して構成されている。また、線路54上には、調整用短絡線路55、可動体側切替え部56、及び可動体側通信部57が図示のように接続されている。

【0065】
第1の受電電極51及び第2の受電電極52の各々は、固定体30から供給された電力を受電するものであり、それぞれ平板状の導電体として構成されている。以下では、これら第1の受電電極51と第2の受電電極52とを相互に区別する必要がない場合には、これらを単に「受電電極51、52」と総称する。これら受電電極51、52は、床板21に直接的に接触する位置又は微小間隔を隔てた位置で、当該床板21に対して略平行に配置される。

【0066】
この状態において第1の受電電極51又は第2の受電電極52のいずれか一方(図4では第1の受電電極51)は、床板21を挟んで第1の送電電極32に対向配置されて第1の結合コンデンサ60を構成する。また、第1の受電電極51又は第2の受電電極52のいずれか他方(図4では第2の受電電極52)は、床板21を挟んで第2の送電電極33に対向配置されて第2の結合コンデンサ61を構成する。ただし、可動体50の向きにより、第1の受電電極51が第2の送電電極33に対向配置されて第1の結合コンデンサ60を構成し、第2の受電電極52が第1の送電電極32に対向配置されて第2の結合コンデンサ61を構成することもある。以下では、これら第1の結合コンデンサ60と第2の結合コンデンサ61とを相互に区別する必要がない場合には、これらを単に「結合コンデンサ60、61」と総称する。ここで、電力被供給領域22には送電電極32、33は露出していないため、これら送電電極32、33と受電電極51、52とは相互に非接触状態で配置されることになる。

【0067】
負荷53は、固定体30から供給された交流電力にて駆動され、所定機能を発揮するものである。例えば、可動体50が図3に示す如きロボットとして構成された場合、負荷53としては、当該ロボットに内蔵されたモータや制御ユニットが該当する。この他、負荷53の具体的構成は任意であり、例えば、可動体50の外部の機器との相互間で通信信号の送受を無線又は有線にて行う通信機器、各種情報に関する情報処理を行なう情報処理機器、電力被供給領域22における所定の検知対象の検知を行なって当該検知結果に関する信号を所定機器に出力するセンサ、あるいは、可動体50の外部の機器に対する電力の送受を行う電源(例えば二次電池)として構成することができる。なお、負荷53は、必ずしも可動体50の内部に設ける必要はなく、可動体50の外部に負荷53を設けると共に、当該負荷53に対して可動体50を介して電力供給を行うようにしてもよい。また、図4においては負荷53を1つのみ示しているが、相互に直列又は並列に接続された複数の負荷53に対して電力供給を行ってもよい。

【0068】
調整用短絡線路55は、後述する初期モードにおいて線路54に接続されることで、第1の受電電極51と第2の受電電極52とを相互に短絡する。

【0069】
可動体側切替え部56は、調整用短絡線路55と負荷53を線路54に対して選択的に切替え接続する可動体側切替え手段であり、可動体側通信部57からの制御によって、初期モードにおいては調整用短絡線路55を線路54に接続し、電力供給モードにおいては負荷53を線路54に接続する。

【0070】
可動体側通信部57は、固定体30との間で通信を行う可動体側通信手段であり、具体的には、固定体側通信部42との間において、線路54を介した電力線通信を行う。

【0071】
(構成-床板)
送電電極32、33と受電電極51、52との相互間に介在する床板21については、結合コンデンサ60、61を構成し得る誘電材料にて構成される。このような誘電材料としては、例えばフッ素樹脂を採用することができる。この誘電材料は、床板21に用いる場合以外にも、送電電極32、33における受電電極51、52側の面や、受電電極51、52における送電電極32、33側の面にコーティングすることもできる。また、このように床板21に使用する材料や、送電電極32、33や受電電極51、52のコーティングに使用する材料には、送電電極32、33と受電電極51、52の相互間の所要の絶縁性を保持するための絶縁性能を持たせることが好ましい。

【0072】
(構成-アクティブキャパシタの構成例)
次に、図4のアクティブキャパシタ34の構成例について説明する。このアクティブキャパシタ34に加わる電圧vと電流iは、以下の式(5)によって表わされる。

【0073】
【数5】
JP0005170054B2_000006t.gif

【0074】
この式(5)の関係から、図5の回路図に示すようにアクティブキャパシタ34を構成することができる。このアクティブキャパシタ34は、線路35から取得した基準電流が入力される積分回路34a、この積分回路34aから入力を受けるキャパシタ34b、及び線路35への出力を行うリニアアンプ34cを図示のように接続して構成されている。

【0075】
あるいは、リニアアンプ34cに代えてPWM(Pulse Width Modulation)制御を受けるスイッチングアンプを使用することもできる。図6にはスイッチングアンプを用いたアクティブキャパシタ34の回路図を示す。このアクティブキャパシタ34は、図5のリニアアンプ34cに代えて、スイッチングアンプ34dを備えて構成されている。このスイッチングアンプ34dは、直流電源34eから供給された直流電流を、トランジスタとダイオードを複数図示のように組み合わせて構成されたスイッチング部34fにてスイッチングすることでパルス信号を生成し、このパルス信号をフィルタ部34gでアナログ信号に変換して出力する。スイッチング部34fのスイッチング周波数は、キャパシタ34bから出力された電圧指令信号に基づいてパルス幅変調制御部34hにて制御される。このようにスイッチングアンプ34dを用いたアクティブキャパシタ34によれば、リニアアンプ34cを用いたアクティブキャパシタ34に比べて、熱損失等として生じる電力損失を低減することが可能となる。

【0076】
(制御)
次に、図4の電力供給システムにおいて行われる制御について説明する。この制御では、初期モード、調整モード、電力供給モードの3つのモードを切り替えることで電力供給を行う。なお、特記する場合を除いて、各制御は自動調整制御部41によって行われるものとする。

【0077】
(制御-初期モード)
最初に、初期モードの制御について説明する。この初期モードは、主として、電力供給前に行われるモードである。例えば、電力供給システムが起動された直後には、当該初期モードの制御が行われる。この初期モードにおいて、自動調整制御部41は、固定体側切替え部38に制御信号を出力し、この固定体側切替え部38を介して、図7の回路図に示すように、調整用電流制限抵抗36を線路35に接続する。また、自動調整制御部41は、交流電源31における電圧を、調整用の所定の電圧v1(後述する電力供給モードにおける電圧v2よりも小さな電圧)に調整する。電圧v1は、可動体50への通信に必要な限りで、あるいは可動体50が配置されたかどうかの検出が可能な範囲で、できる限り小さくする。

【0078】
さらに、自動調整制御部41は、固定体側通信部42に制御信号を出力することで、この固定体側通信部42から可動体側通信部57に初期モード設定信号を送信させる。この初期モード設定信号を受信した可動体側通信部57は、可動体側切替え部56に制御信号を出力し、可動体側切替え部56を介して、調整用短絡線路55を線路54に接続する。

【0079】
なお、このような可動体側切替え部56による調整用短絡線路55の線路54への接続は、固定体側通信部42と可動体側通信部57との相互間の通信に依存することなく、可動体50側のみの判断で行うようにしてもよい。例えば、固定体側通信部42からの信号が所定時間以上連続して得られない場合や、受電電極51、52に対する電力供給が所定時間以上連続して得られない場合、あるいは、負荷53における何らかの異常が検知センサ等にて検知された場合に、可動体側切替え部56が調整用短絡線路55を線路54に接続するようにしてもよい。特に、初期モードにおいては、可動体50が固定体30に対向するように配置される前であり、固定体側通信部42と可動体側通信部57との間の通信を行うことができない場合が考えられるので、この通信に依存する必要がない制御方法を採用することがより好ましい。

【0080】
(制御-調整モード)
次に、調整モードの制御について説明する。例えば、この調整モードは、主として、初期モードの後であって、電力供給を実際に開始する直前に行われるモードである。例えば、可動体50が固定体30に対向するように配置された場合には、当該調整モードの制御が行われる。なお、可動体50が固定体30に対向するように配置されたか否かを判定する方法としては種々の方法が考えられるが、例えば、可動体側通信部57から所定間隔で電力供給要求信号を送信し、この電力供給要求信号を固定体側通信部42が受信した場合に、自動調整制御部41は、可動体50が固定体30に対向するように配置されたと判断するようにしてもよい。

【0081】
この調整モードにおいて、自動調整制御部41は、電圧検出部39にて検出されている電圧が所定の電圧よりも小さくなるように、アクティブキャパシタ制御部40を介してアクティブキャパシタ34を制御する。例えば、自動調整制御部41は、電圧検出部39にて検出された電圧と所定の電圧との差分値を算定し、この差分値を含む制御信号をアクティブキャパシタ制御部40に送信する。アクティブキャパシタ制御部40は、この制御信号に含まれる差分値に応じてアクティブキャパシタ34を制御する。ここで、所定の電圧とは充電時の電圧よりも十分小さく、アクティブキャパシタ34の調整が可能な範囲(=電圧検出部39及びアクティブキャパシタ制御部40の限界)で可能な限り小さくする。このような制御を行うことで、第1の結合コンデンサ60と第2の結合コンデンサ61とアクティブキャパシタ34の合成キャパシタンスの交流インピーダンスが、負荷53のインピーダンスに比べて十分に小さくなり、かつ合成キャパシタンスが正の領域となるように、アクティブキャパシタ34のキャパシタンスを調整することができる。

【0082】
(制御-電力供給モード)
次に、電力供給モードの制御について説明する。例えば、この電力供給モードは、主として、調整モードの後であって、電力供給を実際に開始している際に行われるモードである。例えば、調整モードにおけるアクティブキャパシタ34の制御が完了した後に、当該電力供給モードの制御が行われる。

【0083】
この電力供給モードにおいて、自動調整制御部41は、固定体側通信部42に制御信号を出力することで、この固定体側通信部42から可動体側通信部57に電力供給モード設定信号を送信させる。この電力供給モード設定信号を受信した可動体側通信部57は、可動体側切替え部56に制御信号を出力し、可動体側切替え部56を介して、図4に示すように、負荷53を線路54に接続する。

【0084】
このように負荷53を線路54に接続した後、自動調整制御部41は、固定体側切替え部38に制御信号を出力し、この固定体側切替え部38を介して、回路線路37を線路35に接続する。次いで、自動調整制御部41は、交流電源31における電圧を、電力供給用の所定の電圧v2に調整し、電力供給を開始する。

【0085】
(制御-電力供給モードにおける調整開始状態での制御)
このように電力供給モードへの切り替えを行った後、所定の調整開始状態になった場合には、自動調整制御部41は、調整モードへ復帰する制御を行う。ここで、調整開始状態とは、調整モードへ復帰すべき状態であって、例えば、線路35を流れる電流が所定値より小さくなった状態である。すなわち、自動調整制御部41は、線路35を流れる電流を図示しない電流検出部で検出し、この電流が所定値より小さくなった場合には、固定体30に対して可動体50の位置がずれた可能性があるとして、調整モードへの切り替えを行う。つまり、自動調整制御部41は、電圧検出部39にて検出されている電圧が所定の電圧よりも小さくなるように、アクティブキャパシタ制御部40を介してアクティブキャパシタ34を再度制御する。

【0086】
(制御-電力供給モードにおける電力供給不要状態での制御)
あるいは、電力供給モードへの切り替えを行った後、所定の電力供給不要状態になった場合には、自動調整制御部41は、初期モードへ復帰する制御を行う。ここで、電力供給不要状態とは、固定体30から可動体50への電力供給が不要になった状態であり、例えば、アクティブキャパシタ34を制御しても、電圧検出部39にて検出されている電圧を所定の電圧よりも小さくできない場合や、可動体50が固定体30に対向する位置から離れた位置に移動した場合(例えば、固定体側通信部42からの信号が所定時間以上連続して得られない場合や、受電電極51、52に対する電力供給が所定時間以上連続して得られない場合)である。この場合には、自動調整制御部41は、固定体側切替え部38に制御信号を出力し、この固定体側切替え部38を介して、調整用電流制限抵抗36を線路35に接続する。また、自動調整制御部41は、交流電源31における電圧を、調整用の所定の電圧v1に調整する。さらに、自動調整制御部41は、固定体側通信部42から可動体側通信部57に初期モード設定信号を送信させることで、調整用短絡線路55を線路35に接続させる。ただし、可動体50が固定体30に対向する位置から離れた位置に移動した場合には、固定体側通信部42と可動体側通信部57との間の通信を行うことができないため、上述したように、可動体50側のみの判断で、調整用短絡線路55を線路35に接続するようにしてもよい。

【0087】
(シミュレーション結果)
次に、電力供給のシミュレーション結果について説明する。図8に示すように、結合コンデンサ51、52を用いる一方、アクティブキャパシタ34を用いていない従来の電力供給システムにおいて、交流電源31の発振周波数を100kHz、電圧を141v(0p値)、結合コンデンサのキャパシタンスを5nF、負荷53の抵抗を100Ωとした場合(その他の条件は図示記載の通り。後述する図9、10も同じ)における、結合コンデンサ51、52にかかる電圧、負荷53にかかる電圧、及び負荷53で消費される電力をそれぞれ計算し、負荷53への供給電力を計算した。この結果、負荷53には15V程度の電圧しか印加できず、負荷53への供給電力も実効値で約3W程度に止まった。

【0088】
これに対して、図9に示すように、結合コンデンサ51、52に加えてアクティブキャパシタ34を用いた本実施の形態1に係る電力供給システムにおいて、アクティブキャパシタ34に関する点を除いた各条件を上記図8の場合と同一とした上で、アクティブキャパシタ34のキャパシタンスを-2.51nFとした場合には、交流電源31の電圧と同じ電圧141vを負荷53に印加することができ、負荷53への供給電力も実効値で約100Wにすることができた。このことにより、アクティブキャパシタ34を用いた電界結合による非接触電力供給が可能なことが確認された。なお、図9及び後述する図10においては、アクティブキャパシタ34を可動体50に配置した例を示しているが、上述したように、固定体30に配置しても同様である。

【0089】
さらに、図10に示すように、結合コンデンササ51、52の各々にアクティブキャパシタ34a、34bを接続した電力供給システムにおいて、各アクティブキャパシタ34a、34bに関する点を除いた各条件を上記図8の場合と同一とした上で、各アクティブキャパシタ34a、34bのキャパシタンスを-5.1nFとした場合には、図9の場合と同様に、交流電源31の電圧と同じ電圧141vを負荷53に印加することができ、負荷53への供給電力も実効値で約100Wにすることができた。このことにより、アクティブキャパシタ34a、34bを用いた電界結合による非接触電力供給が可能なことが確認された。さらに、各アクティブキャパシタ34a、34bに印加される電圧は、図9に示す場合にアクティブキャパシタ34に印加される電圧の1/3程度となり、アクティブキャパシタ34a、34bに大きな電圧を印加することを回避できる点で好ましいことが確認された。

【0090】
次いで、結合コンデンサ51、52とアクティブキャパシタ34との合成キャパシタンスの送電周波数における交流インピーダンスを、結合コンデンサ51、52の合成キャパシタンスの送電周波数における交流インピーダンスに対して、どの程度小さくする必要があるのかを算定する。図9においては、式(1)に基づき、結合コンデンサ51、52とアクティブキャパシタ34の合成キャパシタンスは627.5nF、この合成キャパシタンス627.5nFの送電周波数における交流インピーダンスは1/(ω*627.5nF)となり(なお、ω=送電周波数、以下同じ)、結合コンデンサ51、52の合成キャパシタンスは2.5nF、この合成キャパシタンス2.5nFの送電周波数における交流インピーダンスは1/(ω*2.5nF)となり、これら交流インピーダンスの比は251倍となる。また、図10においては、式(3)に基づき、結合コンデンサ51、52とアクティブキャパシタ34の合成キャパシタンスは250nF、この合成キャパシタンス250nFの送電周波数における交流インピーダンスは1/(ω*250nF)となり、結合コンデンサ51、52の合成キャパシタンスは2.5nF、この合成キャパシタンス2.5nFの送電周波数における交流インピーダンスは1/(ω*2.5nF)となり、これら交流インピーダンスの比は100倍となる。これらのことから、結合コンデンサ51、52とアクティブキャパシタ34との合成キャパシタンスの送電周波数における交流インピーダンスを、結合コンデンサ51、52の合成キャパシタンスの送電周波数における交流インピーダンスに対して、100分の1程度にすることが好ましい。但し、結合コンデンサ51、52とアクティブキャパシタ34との合成キャパシタンスの送電周波数における交流インピーダンスを、結合コンデンサ51、52の合成キャパシタンスの送電周波数における交流インピーダンスに対して、上記した制限範囲内において小さくする程、送電効率は向上するため、100分の1より小さくすることがより好ましい。

【0091】
(実施の形態1の効果)
このように実施の形態1によれば、送電電極32、33と受電電極51、52とを相互に非接触状態としたまま電力供給を行うことができ、送電電極32、33を電力被供給領域22に露出させる必要がないため、送電電極32、33が人体に触れることによる感電の危険性をなくすことができ、心理的な不安も解消することができるので、オフィス空間のように人がいる場所への導入が容易になる。特に、この電力供給システムによれば、第1の結合コンデンサ60のキャパシタンス、第2の結合コンデンサ61のキャパシタンス、及びアクティブキャパシタ34のキャパシタンスの合成キャパシタンスを、キャパシタンスが非常に大きなコンデンサとして振る舞わせることが可能になり、送電周波数における交流インピーダンスを負荷53に比べて十分に小さくできるため、直列共振を用いることなく、電界結合により高効率で電力供給を行うことが可能となる。このため、直列共振回路が不要になるので、固定体30を小型化できると共に、直列共振条件を維持するために電力周波数が限定されるという問題も回避できる。

【0092】
また、アクティブキャパシタ34とアクティブキャパシタ制御部40とを固定体30に設けたので、様々な可動体50にアクティブキャパシタ34等を設ける必要がなくなり、可動体50については従来と同様に簡易に構成することができる。

【0093】
また、固定体30に対する可動体50の配置状態等に状態に応じて初期モード、調整モード、電力供給モードの各モードを切り替えることで、電力供給システムの安全性を維持しつつ、アクティブキャパシタ34を制御して効率的に電力供給を行うことが可能となる。

【0094】
また、電力供給を行わない初期モードにおいては交流電源31の電圧を小さくし、電力供給を行う電力供給モードにおいては交流電源31の電圧を大きくすることで、電力供給システムの安全性を維持しつつ、アクティブキャパシタ34を制御して効率的に電力供給を行うことが可能となる。

【0095】
また、電力供給モードの制御を行っている場合であっても、調整が必要になった場合には調整モードの制御を行い、電力供給が遮断された場合には初期モードの制御を行うので、固定体30に対する可動体50の配置状態等に状態に応じた最適なモードでの制御を行うことができる。

【0096】
また、第1の送電電極32又は前記第2の送電電極33の各々にアクティブキャパシタ34が直列接続されているので、第1の送電電極32又は前記第2の送電電極33の一方のみにアクティブキャパシタ34を直列接続した場合に比べて、各アクティブキャパシタ34に印加される電圧を小さくすることが可能となる。

【0097】
また、アクティブキャパシタ34をスイッチングアンプ34dにて構成することで、アクティブキャパシタ34をリニアアンプ34cにて構成する場合に比べて、熱損失等として生じる電力損失を低減することが可能となる。

【0098】
〔実施の形態2〕
次に、実施の形態2について説明する。この形態は、実施の形態1の構成を一層簡素化した電力供給システムに関する形態である。なお、実施の形態2の構成は、特記する場合を除いて実施の形態1の構成と略同一であり、実施の形態1と略同一の構成については、この実施の形態1で用いたものと同一の符号及び/又は名称を必要に応じて付して、その説明を省略する。

【0099】
(構成-固定体)
最初に、固定体の構成について説明する。図11は実施の形態2に係る固定体70及び可動体80の回路図である。この固定体70は、概略的には、交流電源31、第1の送電電極32、第2の送電電極33、及びアクティブキャパシタ34を、線路35にて図示のように接続して構成されている。また、線路35上における交流電源31とアクティブキャパシタ34との間には、電流検出部71が図示のように接続されている。さらに、固定体70は、アクティブキャパシタ制御部72を備える。

【0100】
電流検出部71は、交流電源31からアクティブキャパシタ34に流れる電流を検出する電流検出手段である。

【0101】
アクティブキャパシタ制御部72は、アクティブキャパシタ34を制御するアクティブキャパシタ制御手段であり、第1の結合コンデンサ60と第2の結合コンデンサ61の合成キャパシタンスとアクティブキャパシタンス34の合成キャパシタンスの交流インピーダンスが、負荷53のインピーダンスに比べて十分に小さく、かつ合成キャパシタンスが正の領域とするため、アクティブキャパシタ34のキャパシタンスが負となるように、当該アクティブキャパシタ34を制御する。その他、特記する構成を除いて、アクティブキャパシタ制御部72は、図4のアクティブキャパシタ制御部42と同様に構成されている。

【0102】
(構成-可動体)
次に、図11の可動体80の構成について説明する。可動体80は、第1の受電電極51、第2の受電電極52、及び負荷53を、線路54にて図示のように接続して構成されている。

【0103】
(制御)
次に、図11の電力供給システムにおいて行われる制御について説明する。ここでは、アクティブキャパシタ制御部72は、電流検出部71にて検出された電流が安定動作する範囲で最大点近傍となるように、アクティブキャパシタ34を制御する。この場合は、実施の形態1のような複数モードにより制御を行うことはできないが、実施の形態1より簡易な構成で、実施の形態1と同様に電界結合による高効率な電力供給を行うことが可能となる。ここで「最大点近傍」とは、送電電極32、33及び受電電極51、52とアクティブキャパシタ34の合成キャパシタンスによる交流インピーダンスが、負荷53のインピーダンスに比べて十分に小さくなるような状態である。アクティブキャパシタ34により合成キャパシタンスを大きくする場合は、合成キャパシタンスが負となると回路が不安定領域となるため、合成キャパシタンスが正となるような範囲でのみ制御する必要がある。

【0104】
(実施の形態2の効果)
このように実施の形態2によれば、電流検出部71にて検出された電流が安定動作する範囲で最大となるように、アクティブキャパシタ34を制御することで、比較的簡易な構成により、アクティブキャパシタ34を制御して、送電電極32、33及び受電電極51、52とアクティブキャパシタ34の合成キャパシタンスの交流インピーダンスを、負荷53のインピーダンスに比べて十分に小さくすることが可能になり、電界結合による高効率な電力供給を行うことが可能となる。

【0105】
〔III〕各実施の形態に対する変形例
以上、本発明に係る各実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成及び手段は、特許請求の範囲に記載した各発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。以下、このような変形例について説明する。

【0106】
(解決しようとする課題や発明の効果について)
まず、発明が解決しようとする課題や発明の効果は、前記した内容に限定されるものではなく、発明の実施環境や構成の細部に応じて異なる可能性があり、上述した課題の一部のみを解決したり、上述した効果の一部のみを奏することがある。さらに、本発明によって、上述していない課題を解決したり、上述していない効果を奏することもある。

【0107】
(アクティブキャパシタについて)
アクティブキャパシタの具体的な構成、数、及び配置位置に関しては、公知の技術を適用し、上記実施の形態で説明した内容から適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0108】
1、14 電力供給システム
2、30、70、101 固定体
3、50、80、103 可動体
4 境界面
5、31、115 交流電源
6、32、105 第1の送電電極
7、33、106 第2の送電電極
8 アクティブキャパシタ
9、51、107 第1の受電電極
10、52、108 第2の受電電極
11、53、104 負荷
12、60 第1の結合コンデンサ
13、61 第2の結合コンデンサ
15 第1のアクティブキャパシタ
16 第2のアクティブキャパシタ
20、100 電力供給領域
21 床板
22、102 電力被供給領域
34 アクティブキャパシタ
34a 積分回路
34b キャパシタ
34c リニアアンプ
34d スイッチングアンプ
34e 直流電源
34f スイッチング部
34g フィルタ部
34h パルス幅変調制御部
35、54 線路
36 調整用電流制限抵抗
37 回路線路
38 固定体側切替え部
39 電圧検出部
40、72 アクティブキャパシタ制御部
41 自動調整制御部
42 固定体側通信部
55 調整用短絡線路
56 可動体側切替え部
57 可動体側通信部
71 電流検出部
109 結合コンデンサ
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11